【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
1.CON型ゼオライト触媒(アルミノシリケート)の合成
[実施例1]
(結晶性ボロシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.81g、1.05M N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド(以下「TMMAOH」と略記する。)水溶液1.18g及び水1.99gを混合し、これにホウ酸0.0825gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.405gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0081g加えて、撹拌することにより反応混合物(以下、「原料ゲル」ということがある。)を調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下170℃、9日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロシリケート)を0.397g得た。
【0070】
(B除去及びAl導入)
得られたボロシリケートのゼオライト骨格内のホウ素を抜き、アルミニウムに置換することを目的として、以下の操作(ポスト処理)を行った。2N硝酸水溶液20mlに得られたボロシリケート0.2gを加え、還流下100℃で20時間撹拌した。その後、ゼオライトを濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させ、プロトン型ゼオライト粉末(シリケート)を得た。得られた粉末全量を、硝酸アルミニウム・9水和物0.0031gを溶解した水溶液20gに加え、還流下100℃で2日間撹拌した。その後、ゼオライトを濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させてプロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.154g得た。
【0071】
[実施例2]
(結晶性ボロジンコシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.54g、1.05M TMMAOH水溶液0.79g及び水1.43gを混合し、これにホウ酸0.0275g及び酢酸亜鉛0.0041gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下170℃、7日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロジンコシリケート)を0.213g得た。
【0072】
(B、Zn除去及びAl導入)
得られたボロジンコシリケートのゼオライト骨格内のホウ素、亜鉛を抜き、アルミニウムに置換することを目的として、ポスト処理を行った。ポスト処理の方法は実施例1と同様の方法で実施し、プロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.162g得た。
【0073】
[実施例3]
(結晶性ボロジンコシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.45g、1.05M TMMAOH水溶液0.79g及び水1.43gを混合し、これにホウ酸0.011g及び酢酸亜鉛0.0082gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下170℃、7日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロジンコシリケート)を0.228g得た。
【0074】
(B、Zn除去及びAl導入)
得られたボロジンコシリケートのゼオライト骨格内のホウ素、亜鉛を抜き、アルミニウムに置換することを目的として、ポスト処理を行った。ポスト処理の方法は実施例1と同様の方法で実施し、プロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.151g得た。
【0075】
[実施例4]
(結晶性ボロアルミノシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.36g、1.05M TMMAOH水溶液0.79g及び水0.72gを混合し、これにホウ酸0.011g及び硫酸アルミニウム0.0109gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下200℃、2日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロアルミノシリケート)を0.260g得た。
【0076】
(B除去及びAl導入)
得られたボロシリケートのゼオライト骨格内のホウ素を抜き、アルミニウムに置換することを目的として、ポスト処理を行った。2N硝酸水溶液25mlに得られたボロアルミノシリケート0.25gを加え、還流下100℃で20時間撹拌した。その後、ゼオライトを濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させ、プロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を得た。得られた粉末全量を、硝酸アルミニウム・9水和物0.0010gを溶解した水溶液20gに加え、還流下100℃で2日間撹拌した。その後、ゼオライトを濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させてプロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.175g得た。
【0077】
[比較例1]
1.0M水酸化ナトリウム0.54g、1.05M TMMAOH水溶液0.79g及び水1.33gを混合し、これにホウ酸0.055g及び硫酸アルミニウム0.0030gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下170℃、10日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロアルミノシリケート)を0.260g得た。
得られた粉末を2N硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、1時間のイオン交換を行い、その後濾過した。濾過した粉末を再び2N硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、1時間のイオン交換を行い、その後、濾過、乾燥してアンモニウム型ゼオライトを得た。その後空気雰囲気下、600℃で焼成してプロトン型ゼオライト(アルミノシリケート)を得た。
【0078】
[比較例2]
(結晶性ボロシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.9g、1.05M TMMAOH水溶液1.58g及び水7.72gを混合し、これにホウ酸0.022gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.54gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0108g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、静置した状態において150℃、21日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロシリケート)を0.438g得た。
【0079】
(B除去及びAl導入)
得られたボロシリケートのゼオライト骨格内のホウ素を抜き、アルミニウムに置換することを目的として、以下のポスト処理を行った。0.01M塩酸水溶液40mlに得られたボロシリケート0.4gを加え、還流下100℃で24時間撹拌した。その後、ゼオライトを濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させ、プロトン型ゼオライト粉末(シリケート)を得た。得られた粉末全量を、硝酸アルミニウム・9水和物0.70gを溶解した水溶液17.5gに加え、還流下100℃で12時間撹拌した。その後、ゼオライトを濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させてプロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.328g得た。
【0080】
[比較例3]
1.0M水酸化ナトリウム0.45g、1.05M TMMAOH水溶液0.79g及び水1.43gを混合し、これにホウ酸0.011g及び硫酸アルミニウム0.0038gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、静置した状態において170℃、7日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロアルミノシリケート)を0.213g得た。その後のイオン交換及び焼成を実施例5と同様に行うことによりプロトン型ゼオライト(アルミノシリケート)を得た。
【0081】
[比較例4]
実施例4において、水熱合成後に得られたナトリウム型ゼオライト粉末(ボロアルミノシリケート)を、比較例1と同様にイオン交換、焼成することによりプロトン型ゼオライト(アルミノシリケート)を得た。
【0082】
[比較例5]
実施例4において、硝酸処理、濾過、乾燥後に得られたプロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)をそのままゼオライト触媒とした。
【0083】
[実施例5]
(結晶性ボロシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.45g、1.32M TMMAOH水溶液0.63g及び水1.99gを混合し、これにホウ酸0.011gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下170℃、4日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロシリケート)を0.214g得た。
【0084】
(B除去及びAl導入)
得られたボロジンコシリケートのゼオライト骨格内のホウ素、亜鉛を抜き、アルミニウムに置換することを目的として、ポスト処理を行った。ポスト処理の方法は実施例1と同様の方法で実施し、プロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.155g得た。
【0085】
[実施例6]
(結晶性ボロゲルマノシリケートの合成)
1.0M水酸化ナトリウム0.45g、1.32M TMMAOH水溶液0.63g及び水1.99gを混合し、これにホウ酸0.011g、酸化ゲルマニウム0.028gを加えて撹拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ(Cab−O−Sil M−7D CABOT製)0.27gを加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてBEA型ボロシリケートを0.0054g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下170℃、5日間加熱した。生成物を濾過、水洗した後、100℃で一晩乾燥させた。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末(ボロゲルマノシリケート)を0.201g得た。
【0086】
(B、Ge除去及びAl導入)
得られたボロゲルマノシリケートのゼオライト骨格内のホウ素、ゲルマニウムを抜き、アルミニウムに置換することを目的として、ポスト処理を行った。ポスト処理の方法は実施例1と同様の方法で実施し、プロトン型ゼオライト粉末(アルミノシリケート)を0.162g得た。
【0087】
2.ゼオライト触媒(アルミノシリケート)の評価
実施例1〜6、比較例1〜5に係るアルミノシリケートについて、以下の評価を行った。
【0088】
<元素分析>
元素分析は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)により行った。測定には島津製作所社製ICPE−9000を用いた。実施例1〜6、比較例1〜5について、合成したアルミノシリケートの組成を表2に示す。
【0089】
<X線回折測定>
合成したアルミノシリケートのX線回折(XRD)測定は、リガク社製のRINT UltimaIIIを用いて行った。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、40mA)、読込幅は0.02°、走査速度は20.0°/minとした。測定により得られたXRDパターンを
図2に示す。
図2から、実施例1〜4及び比較例1〜5に係るアルミノシリケートは、いずれもCON型構造を有するゼオライトであることが確認された。
【0090】
また、実施例5〜6に係るアルミノシリケートのX線回折(XRD)測定は、PANalytical社製のX‘Pert Pro MPDを用いて行った。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、30mA)、読込幅は0.016°、走査速度は4.0°/minとした。測定により得られたXRDパターンを
図5に示す。
図5から、実施例5〜6に係るアルミノシリケートは、いずれもCON型構造を有するゼオライトであることが確認された。
【0091】
<半値幅の解析>
半値幅の解析のためのX線回折(XRD)測定は、PANalytical社製のX‘Pert Pro MPDを用いて行った。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、30mA)、読込幅は0.016°、走査速度は4.0°/minとした。この測定条件で得られたXRDパターンから求めた「(130)面のピークの半値幅」および「(510)面のピークの半値幅」を表2に示す。
表2で示す通り、平均一次粒子径が小さいサンプルは半値幅が大きい傾向にあることが分かる。比較例2に関しては、平均一次粒子径が大きいにもかかわらず半値幅が比較的大きくなっているが、本サンプルは一部多結晶を含んだ粒子を平均一次粒子径として測定していたため、このような結果になったと考えられる。
【0092】
<
27Al−MAS−NMR>
27Al−MAS−NMRは、アルミノシリケートをNMR用試料管にサンプリング後、塩化アンモニウム飽和水溶液を張ったデシケータ中に一晩以上放置し、十分に吸湿させた後で、密栓して1.0M塩化アルミニウム水溶液を標準物質(−0.10ppm)として下記表1の条件で測定したものである。測定により得られた
27Al−MAS−NMRスペクトルにおいて、45ppm以上70ppm以下の範囲における信号強度の積分強度面積(A
1)に対する57.5ppm以上70ppm以下の範囲における信号強度の積分強度面積(A
2)の割合((A
2/A
1)×100(%))を求めた。結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
<走査型電子顕微鏡>
走査型電子顕微鏡(SEM)測定は、日立ハイテクノロジーズ社製のS−5200を用いて行った。得られたSEM像から無作為に一次粒子50個を抽出し、その粒子の長径を測定し、粒径とした。求めた粒径の相加平均をもって平均一次粒子径とした。結果を表2に示す。また、参考までに、
図4に実施例1に係るゼオライト触媒についてのSEM画像を示す。
図4に示す通り、実施例1に係るゼオライト触媒は、細かな一次粒子が凝集して二次粒子を形成している。
【0095】
<低級オレフィンの製造>
実施例1〜6、比較例1〜5で得られたCON型ゼオライト触媒を用いて、低級オレフィンの製造を行った。
反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径4mmの石英反応管に、実施例1〜6、比較例1〜5で得られたCON型構造を有するゼオライト100mgをそれぞれ充填した。メタノール50.0モル%、ヘリウム50.0モル%の混合ガスをメタノールの重量空間速度が15時間−1となるように反応器に供給し、450℃、0.1MPa(絶対圧)で反応を行った。反応開始から1時間又は2時間毎(実施例1に関しては2時間又は4時間毎)にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。反応開始から2時間後のメタノール転化率、エチレン選択率、プロピレン選択率、ブテン選択率を表2に示す。尚、ここでいうメタノール転化率とはジメチルエーテルを含まないメタノール単独での転化率である。また、表2に記載の触媒寿命L
1、触媒寿命L
2は、それぞれメタノール転化率が95%以上および90%以上を維持する時間として定義した。
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示す通り、実施例1〜3、実施例5及び比較例1〜5の結果を比較すると、積分強度面積に係る割合((A
2/A
1)×100(%))が大きく、平均一次粒子径の小さなゼオライトは触媒寿命が長いことが分かる。また、実施例4、実施例6のゼオライトについては平均一次粒子径が比較的大きいため、実施例1〜3と比較すると触媒寿命は短いが、ほぼ同等の平均一次粒子径を持つ比較例4、5と比較すると、触媒寿命が長いことが分かる。実施例5については、平均一次粒子径が大きいにもかかわらず実施例1〜3に匹敵する寿命を示している。これは積分強度面積に係る割合((A
2/A
1)×100(%))が実施例1〜3よりも大きいためだと考えられる。これらは積分強度面積に係る割合((A
2/A
1)×100(%))が大きいゼオライトの触媒寿命が長いことを意味している。
【0098】
次に、本発明の別の側面について説明する。
別の側面は、以下の[1]〜[10]である。以下において、「本実施形態」とは[1]〜[10]の発明の実施形態を指す。
[1]下記(1)〜(2)を満たすCON型ゼオライト。
(1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでCONである。
(2)ケイ素とアルミニウムを含み、そのケイ素に対するアルミニウムのモル比が0.04以上である。
[2]Polymorph Bの結晶を有する[1]に記載のCON型ゼオライト。
[3]ケイ素に対するアルミニウムのモル比が0.08より大きい[1]または[2]に記載のCON型ゼオライト。
[4]ケイ素源と、アルミニウム源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、有機構造規定剤及び水とを含む混合物の水熱合成により、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでCONであるゼオライトを製造する方法であって、前記混合物中のケイ素に対するアルミニウムのモル比が0.01より大きいことを特徴とするCON型ゼオライトの製造方法。
[5]Polymorph Bの結晶を有するゼオライトを製造する方法である[4]に記載のCON型ゼオライトの製造方法。
[6]混合物中のケイ素に対するアルミニウムのモル比が0.08以上である[4]または[5]に記載のCON型ゼオライトの製造方法。
[7][4]〜[6]に記載のCON型ゼオライトの製造方法により得られるCON型ゼオライト。
[8][1]〜[3]又は[7]に記載のCON型ゼオライトを含有する低級オレフィン又は芳香族炭化水素製造用触媒。
[9][1]〜[3]又は[7]に記載のCON型ゼオライトを含有する吸着材。
[10][1]〜[3]又は[7]に記載のCON型ゼオライトを含有する排ガス処理用触媒。
【0099】
本実施形態は、アルミニウム含有量の多いCON型ゼオライトの製造方法、及び該方法で製造され、従来のホウ素を主原料として二段階で合成した場合よりも触媒性能・安定性の高いCON型ゼオライト、及びその用途に関するものである。
【0100】
ゼオライトはその骨格構造に由来する細孔による分子ふるい効果やイオン交換能、触媒能、吸着能などの特性をもっており、現在、吸着材、イオン交換剤、工業触媒、環境触媒として幅広く利用されている。
【0101】
CON型ゼオライトは、酸素10員環と二種類の酸素12員環の細孔を有するゼオライトの一つであり、International Zeolite Association(以下これを、「IZA」と略称することがある。)が定める構造コードでCONに分類されるトポロジーを有する。CON型ゼオライトは、異なるサイズの大きな細孔を有することから、低級オレフィン及び芳香族製造用触媒、吸着材、排ガス処理用触媒として期待されている。
【0102】
CON型ゼオライトとしては、ボロケイ酸塩としてのCIT‐1([B]‐CON)、SSZ−33([B]‐CON)、アルミノケイ酸塩としてのSSZ‐26([Al]‐CON)、ゲルマノケイ酸塩としてのITQ‐24([Ge]‐CON)が知られている。
【0103】
CIT−1は、ホウ素を主成分とするCON型ゼオライトであり、Polymorph Bの単一成分である。一般的な製造方法としては、米国特許5512267号が基本になるものであり、ここでは、具体的な製造方法として、フュームドシリカとホウ酸ナトリウムを原料として、有機構造規定剤としてN,N,N−トリメチル−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド、アルカリ源としてNaOHを加え、175℃、7日間水熱合成することにより、ホウ素を含有するCIT−1ゼオライト(Si/B
2比50)を得ている。米国特許5512267号の特許請求の範囲では、T原子にケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、ガリウム、鉄、チタン、バナジウム、その混合組成での合成が可能だとしているが、実際には実施例は実質全てが、ケイ素とともにホウ素を主成分として含有する[B]‐CONである。また、実施例でのアルミニウムを含有する[Al]‐CON合成では、[B]‐CONを合成した後、硝酸アルミニウム水溶液でのイオン交換により、アルミニウムを導入する手法を取っている。
【0104】
Am.Chem.Soc.Catal.,5,4268(2015)、特開2013‐245163では、ホウ素とともに少量のアルミニウムを含むボロアルミノケイ酸塩の水熱合成による直接の製造方法が開示されている。具体的には、ホウ素を主成分としてSi/B
2比50において、硫酸アルミニウムを添加して、Si/Al
2比200〜400で水熱合成を行うことで、Si/B
2比50〜74、Si/Al
2比218〜310の[B,Al]‐CONを製造できることを開示している。しかしながら、Si/Al
2比が200未満の組成では、[B,Al]‐CONを製造できないというデータが示されている。このことからも裏付けられる通り、CIT‐1がホウ素を主成分としてのみ合成可能であるゼオライトであるということは、このCIT‐1が発明されてから20年が経過する今の技術常識である。
【0105】
SSZ‐33は、CIT‐1と同様に、ホウ素を主成分とするCON型ゼオライトであるが、積層様式の異なるPolymorph A/B(70:30)の連晶である。その製造方法は、米国特許4963337号で開示され、フュームドシリカとホウ酸ナトリウムを原料として、有機構造規定剤として、N,N,N‐トリメチルトリシクロ[5.2.1.0
2,6]‐デカン‐アンモニウムハイドロキサイドを用いて合成することで、Si/B
2比30〜50のボロケイ酸塩を合成できることが記載されている。CIT‐1と同様に、実施例でのアルミニウムの導入は、水熱合成によりボロケイ酸塩を得た後、硝酸アルミニウム水溶液でのイオン交換により行っている。
【0106】
一方、SSZ‐26は、アルミニウムを主成分とするCON型ゼオライトであるが、積層様式の異なるPolymorph A/B(85:15)の連晶である。その製造方法は、米国特許4910006号で開示され、具体的な製造方法として、フュームドシリカ、Y型ゼオライトを原料として、有機構造規定剤としてヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン‐8,11‐ジアンモニウムカチオンを用いて合成することで、Si/Al
2比25〜35のアルミノケイ酸塩を得ている。
【0107】
また、ITQ‐24は、ゲルマニウムを主成分とするCON型ゼオライトであり、CIT-1とは積層様式の異なるPolymorph Cの単一成分である。その製造方法は、J.Am.Chem.Soc.,125,7820(2003)で開示され、具体的な製造方法として、テトラエトキシシランと酸化ゲルマニウム、アルミニウムイソプロポキサイドを原料として、有機構造規定剤としてヘキサメトニウムハイドロキサイドを加え、175℃、15日間水熱合成することにより、ケイ素とともにゲルマニウムを主成分とする[Ge,Al]‐CON(Si/Ge
2=10,Si/Al
2=37)を得ている。
【0108】
上述の通り、CON型構造を有するゼオライトとして、CIT‐1、SSZ‐26、SSZ‐33、ITQ‐24が挙げられるが、それらは構成元素が異なるだけでなく、Polymorph特性が異なるため、それぞれXRDパターンで特徴づけられ、異なる物質として扱われる。
【0109】
しかしながら、上記の公知の方法には諸種の問題があり、必ずしも満足する結果は得られていない。
米国特許5512267号、特開2013−245163号公報及びAm.Chem.Soc.Catal.,5,4268(2015)に開示された方法では、ケイ素とホウ素を主成分とするCON型ゼオライト(CIT‐1)であるため、アルミニウム含有量の多いCON型ゼオライトを得るためには、初めにボロケイ酸塩を合成し、その後のポスト処理により、アルミニウムを導入するという二段階の工程を経る必要があり、そのため製造コストが高くなるという課題があった。また、ボロケイ酸塩のホウ素含有量(Si/B
2モル比50程度)の上限があるため、それ以上のアルミニウムを骨格内に導入することができないという課題があった。さらに、ゼオライト骨格へのAl挿入が不完全となる場合があり、骨格外のアルミニウム種が多くなる傾向があり、アルミニウム種の安定性が低いゼオライトになりやすい傾向がある。
【0110】
また、米国特許4963337号に開示された方法では、上述のCIT‐1と同様、ケイ素とホウ素を主成分とするCON型ゼオライト(SSZ‐33)であるため、アルミニウム含有量の多いCON型ゼオライトを得るためには、水熱合成工程とポスト処理工程の二段階の製造工程が必要となり、またアルミニウム導入量にも上限があった。また、使用する有機構造規定剤が非常に複雑な構造で高価なため、製造コストが高くなるという課題があった。さらに、有機構造規定剤で規定される結晶構造が、Polymorph A/Bの混晶となることが避けられないという課題があった。
【0111】
米国特許4910006号に開示された方法では、ケイ素とアルミニウムを主成分とするCON型ゼオライト(SSZ‐26)であるため、比較的アルミニウム含有量の高いCON型ゼオライトを製造することができるが、アルミニウム導入量の範囲がSi/Al
2比25〜35と狭い範囲に限定されてしまうという課題があった。また、SSZ‐33と同様、使用する有機構造規定剤が非常に複雑な構造で高価なため、製造コストが高くなるという課題があった。さらに、有機構造規定剤で規定される結晶構造が、Polymorph A/Bの混晶となることが避けられないという課題があった。
【0112】
J.Am.Chem.Soc.,125,7820(2003)に開示された方法では、ケイ素とゲルマニウムを主成分とするCON型ゼオライト(ITQ‐24)であるため、アルミニウム導入量は限定され、また、加水分解を受けやすいゲルマニウム種を多く含むため、骨格の安定性が低いという課題があった。
【0113】
本発明の別の側面では、水熱合成により一段階で、アルミニウム含有量の多いCON型ゼオライトを製造する方法と、この方法により製造された、従来のCON型ゼオライトよりも触媒性能の高いCON型ゼオライトと、このCON型ゼオライトよりなる触媒を提供することを課題とする。また、加えて、本発明の別の側面は、Al含有量を幅広く自由に調整できるCON型ゼオライトの製造方法を提供することにあり、さらには、Al/Si比が0.04以上のCON型ゼオライトを提供することを課題とする。
【0114】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水熱合成の原料混合物中のケイ素とアルミニウムの比率を特定の範囲に制御することにより、従来存在し得なかったアルミニウム含有量の高いCON型ゼオライトを得ることができ、その収率も高いこと、また、この方法により製造したCON型ゼオライトが、従来のホウ素を主成分とする[B]-CON型ゼオライトのポスト処理によりアルミニウムを導入した[Al]-CON型ゼオライトよりも、触媒活性及び吸着特性に優れていること、そして、任意のAl/Si比のCON型ゼオライトを製造することができ、Al/Si比0.04以上のCON型ゼオライトの製造も可能であることを見出し、本発明の別の側面に到達した。
【0115】
本発明の別の側面によれば、高価な構造規定剤を使用せずに、一段階の水熱合成により、アルミニウム含有量の多いCON型ゼオライトを製造することができる。しかも、本発明の別の側面により得られるアルミニウム含有量の多いCON型ゼオライトは、従来のホウ素を主原料として二段階で合成したCON型ゼオライトより、触媒活性、吸着特性に優れ、低級オレフィン及び芳香族製造用触媒、吸着材、排ガス処理用触媒、特に炭化水素の吸着剤として好適に用いることができる。また、本発明の別の側面の製造方法により、Al/Si比が0.04以上のCON型ゼオライトを製造することができ、これを炭化水素の吸着剤として使用することで、優れた吸着能を有する吸着剤とすることができる。また、得られるCON型ゼオライトのAl含有量を幅広く調整することができる。
【0116】
以下に本発明の別の側面を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明の別の側面は、その要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0117】
以下、本発明の別の側面(以下、本実施形態とも称する)について詳細に説明する。
1.本実施形態のCON型ゼオライト
(構造)
本実施形態のゼオライトは、CON型構造を有する。CON型のゼオライトについては、既出の第1の実施形態と同様である。
【0118】
その構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定する場合には、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じるため、IZAの規定に記載されたCON構造の各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
第1の形態におけるCON型のゼオライトの各ピークの強度比やピーク位置についても、10%程度の幅は許容される。
【0119】
本実施形態のCON型ゼオライトは、Polymorph Bの結晶を有していてもよく、さらには、Polymorph Bの単一結晶であってもよい。Polymorph Bの結晶とは、例えば下記表3A及びBに示す格子面間隔d(Å)を有する結晶である(表3A:有機構造規定剤を含む状態,表3B:有機構造規定剤を含まない状態)。格子面間隔は、製造方法等の違いにより、表3A及びBの数値から、2θとして±0.3°、各格子面間隔dに対して±2%程度の幅は許容される。格子面間隔の測定方法は、後述の実施例の通りである。表3Aに示す格子面間隔のうち、Polymorph Bの結晶形であるCIT-1を同定する上で主要な格子面間隔dは、9.86Å(9.77)、6.26Å(6.26)、5.84Å(5.79)5.67Å(5.68)、4.91Å(4.88)、4.54Å(4.51)、3.73Å(3.72)、3.68Å(3.66)である(括弧内の数値は、表3Bの有機構造規定剤を含まない状態での値)。本実施形態のCON型ゼオライトは、これらの8つ面間隔のうち、少なくとも6つ以上、好ましくは7つ以上、より好ましくは8つ全て一致するものである。また、表3A及びBに示す全格子面間隔のうち、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上一致するものである。
本実施形態のCON型ゼオライトにおけるPolymorph Bの含有割合は特に限定されるものではないが、重量基準で25%以上でもよく、50%以上でもよく、75%以上でもよく、100%でもよい。
【表3A】
【表3B】
【0120】
ここで、上表のXRDピーク強度比と、実際のXRDパターンにおけるI/I
0×100で示されるXRDピークの数値との関係は下表3Cに示す通りである。上記表3A及びBにおいて、I及びI
0は以下のとおりである。
I :各格子面間隔dにおけるX線回折強度
I
0 :XRDパターンにおいて最大のXRDピーク強度を有するX線回折強度
【表3C】
【0121】
(構成成分)
本実施形態のCON型ゼオライトは、ケイ素と酸素以外の成分としてアルミニウムを含み、T原子中にケイ素原子とアルミニウム原子を90mol%以上含む。また、T原子中に、ホウ素、ガリウム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種の元素M(以下、単に「元素M」という。)を含んでいてもよい。
本実施形態のゼオライトは、T原子中にケイ素以外にアルミニウムを主成分として含有するため、酸強度の高い活性点を発現し、メタノールや炭化水素の転換反応の活性点として働くため、触媒性能に優れる。炭化水素等の吸着材として用いる場合、アルミニウム量が多い方が、吸着量が多く、脱離温度が高くなる傾向にあるため好ましい。また、自動車等の排気ガス処理用のSCR触媒として用いる場合、アルミニウム量の多い触媒の方が、特にスタート時の低温での動作時の排ガス処理効率に優れる。
【0122】
本実施形態のゼオライトとしては、好ましくはT原子がケイ素とアルミニウムからなるアルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、ガロアルミノケイ酸塩、フェリアルミノケイ酸塩、ボロガロアルミノケイ酸塩、ボロフェリアルミノケイ酸塩であり、より好ましくはアルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、フェリアルミノケイ酸塩であり、さらに好ましくはT原子がケイ素とアルミニウムからなるアルミノケイ酸塩、ケイ素とアルミニウムとホウ素からなるボロアルミノケイ酸塩である。
【0123】
また、本実施形態のゼオライトは、前記の元素以外に、その他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、特に限定されないが、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)等が挙げられる。これらの構成元素は1種類でも2種類以上でもよい。
【0124】
(ケイ素に対するアルミニウムのモル比)
本実施形態のゼオライトのケイ素に対するアルミニウムのモル比(Al/Si)は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.08より大きいことであり、通常0.30以下、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.13以下、特に好ましくは0.10以下である。前記Al/Siモル比が上記の範囲にあることで、酸強度の高い酸点が十分量となり、有機化合物原料の転化反応において、高い有機化合物の吸着能、高い転化活性及びオレフィン相互変換活性が得られる。またコーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。また、吸着材として用いる場合でも、前記Al/Siモル比が上記の範囲にあることで、Al由来の吸着サイトが多くなるため、高い吸着能が得られる。さらに、吸着能が高いことで、脱離温度が高くなり、低温下での脱着を抑制することができる。例えば、炭化水素等の吸着材、特に、自動車エンジンから排出される炭化水素を吸着する吸着材(ハイドロカーボントラップ材)として用いた場合、内燃機関の低温開始の間(低温の間)、排出される炭化水素成分を多く吸着しておくことができる。また、SCR触媒として用いる場合でも、前記Al/Siモル比が上記の範囲にあることで、触媒としての活性点が多いため、窒素酸化物を含む排ガスに対して高い浄化性能を持つことが利点である。例えば、トラックでは700℃以下と比較的低温で、水蒸気を含むガス雰囲気下でSCR触媒として用いるため、水蒸気による骨格内Alの脱Alは進行しにくい。従って窒素酸化物を含む排ガスの浄化性能が優先され、ゼオライト骨格中の活性点が多い、すなわちAl/Siモル比が大きいゼオライトの使用が望まれる。一方、Al/Siモル比が小さいゼオライトは、ゼオライト骨格中のAl量が少ないことから水蒸気を含む高温のガス雰囲気下でも構造が崩壊しにくい利点がある。ディーゼル乗用車やガソリン車では800℃以上で水蒸気を含むガス雰囲気下にSCR触媒として用いるため、高い水蒸気耐性を求められる。従って、Al/Siモル比が小さいゼオライトの使用が望まれる。なかでも、Al/Siモル比が0.04以上のCON型ゼオライトは過去に得られたことがなく、新規な物質である。これらを総合して、骨格内のAlの脱離の影響が小さく、有機化合物原料の転化反応、吸着材、排ガス処理用触媒として高い触媒性能及び吸着性能を得るためには、Al/Siモル比は好ましくは、0.04以上0.13以下、より好ましくは0.05以上0.10以下である。
【0125】
(ケイ素に対するホウ素のモル比)
本実施形態のゼオライトのケイ素に対するホウ素のモル比(B/Si)は、通常0以上、好ましくは0.00002以上、より好ましくは0.0002以上、さらに好ましくは0.0004以上、特に好ましくは0.0008以上、通常0.04以下、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.004以下、特に好ましくは0.002以下である。前記B/Siモル比が上記の範囲にあることで、一般的に、アルミニウムの方がホウ素よりも骨格からの脱離が起こりにくいため、B/Siモル比が低い、すなわち、ホウ素含有量が相対的に低減されたものである方が、骨格からの脱離による構造崩壊を抑制できるため好ましい。
【0126】
(アルミニウムに対するホウ素のモル比)
本実施形態のゼオライトの結晶内に含まれるホウ素含有量は、特に限定されるものではないが、少ない方が好ましく、アルミニウムに対するホウ素のモル比(B/Al)は、通常1.0以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.002以下、特に好ましくは0.0002以下である。一般的に、アルミニウムの方がホウ素よりも骨格からの脱離が起こりにくいため、B/Alモル比が低い、すなわち、ホウ素含有量が相対的に低減されたものである方が、骨格からの脱離による構造崩壊を抑制できるため好ましい。
【0127】
本実施形態のゼオライトのSi、Al、M(B,Fe,Ga)の含有量は、通常、ICP元素分析や蛍光X線分析で測定できる。蛍光X線分析は、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のケイ素原子、アルミニウム、ガリウム、鉄原子の含有量を求めることができる。なお、ホウ素元素の蛍光X線強度は比較的小さいため、ホウ素原子の含有量はICP元素分析で測定することが好ましい。
【0128】
(フッ素含有量)
本実施形態のゼオライトの結晶内に含まれるフッ素含有量は、特に限定されるものではないが、少ない方が好ましく、通常5000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは0ppmである。ゼオライトの結晶内に含まれるフッ素含有量を上記の範囲とすることで、十分な比表面積が得られ、また、炭化水素成分の高い結晶内拡散性が得られ、有機化合物原料の転化活性が高くなる。
【0129】
(全酸量)
本実施形態のゼオライトの全酸量(以下、全酸量という)は、前記ゼオライトの結晶細孔内に存在する酸点の量と、前記ゼオライトの結晶外表面酸点の量(以下、外表面酸量という)の総和である。全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.10mmol/g以上、好ましくは0.30mmol/g以上、より好ましくは0.40mmol/g以上、さらに好ましくは0.50mmol/g以上、特に好ましくは0.60mmol/g以上である。また、通常1.5mmol/g以下、好ましくは1.2mmol/g以下、より好ましくは1.0mmol/g以下、さらに好ましくは0.90mmol/g以下、特に好ましくは0.80mmol/g以下である。全酸量を上記の範囲とすることで、有機化合物原料の転化活性が担保されるとともに、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性を維持することができる点で好ましい。また、吸着材として用いた場合には、前記全酸量が上記の範囲にあることで、吸着サイトが多くなるため、高い吸着能が得られる。SCR触媒として用いる場合でも、触媒としての活性点が多くなり、窒素酸化物を含む排ガスに対して高い浄化性能を持つことが利点である。
【0130】
なお、ここでの全酸量は、アンモニア昇温脱離(NH
3−TPD)における脱離量から算出される。具体的には、前処理としてゼオライトを真空下500℃で30分間乾燥させた後、前処理したゼオライトを100℃で過剰量のアンモニアと接触させて、ゼオライトにアンモニアを吸着させる。得られたゼオライトを100℃で真空乾燥する(または、100℃で水蒸気と接触させる)ことにより、該ゼオライトから余剰アンモニアを除く。次いでアンモニアの吸着したゼオライトを、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100−600℃におけるアンモニア脱離量を質量分析法で測定する。ゼオライト当たりのアンモニア脱離量を全酸量とする。但し、本実施形態における全酸量は、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。この「240℃」は、ピークトップの位置の判断のみに用いる指標であって、240℃以上の部分の面積を求めるという趣旨ではない。ピークトップが240℃以上の波形である限り、当該「波形の面積」は、240℃以外の部分も含む全面積を求める。240℃以上にピークトップを有する波形が複数ある場合には、それぞれの面積の和とする。
【0131】
本実施形態の全酸量には、ピークトップを240℃未満に有する弱酸点由来の酸量は含めないものとする。これは、TPDプロファイルにおいて、弱酸点由来の吸着と物理吸着との区別が容易ではないためである。
【0132】
(外表面酸量)
本実施形態のゼオライトの結晶外表面酸量は、特に限定されるものではないが、ゼオライトの全酸量に対して、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりゼオライト細孔特有の形状選択性が得られ難くなり、選択性が低下する傾向がある。前記ゼオライトの外表面酸量を、上記範囲に調整する方法としては、特に限定はされないが、通常、前記ゼオライトの外表面のシリル化、水蒸気処理、熱処理等の方法が挙げられる。また、ゼオライトを成形する際にバインダーと前記ゼオライトの外表面酸点を結合させる、といった方法が挙げられる。
【0133】
外表面酸量は、4−プロピルキノリン、4−ブチルキノリン等のゼオライト細孔内に入らない大きさのプローブ分子をゼオライト表面の酸点に吸着させ、次いで昇温により吸着した分子を触媒から脱離させたときの触媒重量当たりのプローブ分子の量(脱離量)から算出される。具体的に外表面酸量とは、前処理として真空下500℃で1時間乾燥させた後、200℃‐240℃の減圧条件下でプローブ分子の蒸気と接触吸着させ、200℃‐240℃での排気、及びヘリウム流通により余剰プローブ分子を除いて得られたゼオライトの、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100℃−600℃におけるプローブ分子の脱離量を質量分析法で測定する。但し、本実施形態における外表面酸量は、全酸量同様、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。
【0134】
(イオン交換サイト)
本実施形態のゼオライトのイオン交換サイトは、特に限定されない。通常、プロトンであるか(以下、「プロトン型」「H型」ともいう)、一部がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属;等の金属イオンである。イオン交換サイトは、細孔空間における金属占有容積低減による分子拡散性向上の観点からは、好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウム、カルシウムであり、より好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはプロトン、ナトリウムであり、特に好ましくはプロトンである。以下、例えばNaイオンで交換されているものを「Na型」ということがある。なお、アンモニウム(NH
4)でイオン交換されたものは、反応条件の高温下でアンモニアが脱離するため、通常プロトン型と同等に扱う。
【0135】
(アルカリ金属/アルカリ土類金属含有量)
本実施形態のゼオライト中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量としては、特に限定されないが、通常0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量を上記の範囲とすることで、ゼオライトの酸量や細孔空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる点で好ましい。また熱的/水熱的安定性が高くなり、劣化を抑制することができる点でも好ましい。
【0136】
(平均一次粒子径)
本実施形態のゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、通常0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.20μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下、特に好ましくは0.40μm以下である。上記範囲とすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高くなり、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高い点で好ましい。
【0137】
なお、本実施形態における平均一次粒子径とは、粒界が確認されない最小粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に50個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。粒子径は粒子の投影面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)とした。尚、本実施形態においては、一次粒子は単体の粒子として存在していなくてもよく、凝集等により二次粒子を形成していてもよい。二次粒子を形成していたとしても、SEM又はTEM画像において二次粒子の表面の一次粒子を判別可能である。
【0138】
(BET比表面積)
本実施形態のゼオライトのBET比表面積は、特に限定されるものではないが、通常300m
2/g以上、好ましくは400m
2/g以上、より好ましくは500m
2/g以上であり、通常1000m
2/g以下、好ましくは800m
2/g以下、より好ましくは750m
2/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。なお、BET比表面積は、JIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。吸着ガスとして窒素を使用し、1点法(相対圧:p/p
0=0.30)でBET比表面積を求められる。
【0139】
(細孔容積)
本実施形態のゼオライトの細孔容積は、特に限定されるものではないが、通常0.10ml/g以上、好ましくは0.15ml/g以上、より好ましくは0.20ml/g以上であり、通常0.50ml/g以下、好ましくは0.40ml/g以下、より好ましくは0.35ml/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、炭化水素成分の吸着が促進され、触媒活性が高くなるため好ましい。細孔容積は相対圧法により得られる窒素の吸着等温線から求める値であることが好ましい。
【0140】
(
29Si−NMR)
本実施形態のCON型ゼオライトが、結晶性に優れていることは、バルクとしてのSi/Al
2比と、焼成後の
29Si−NMRにて求めたSi/Al
2比の差が小さいことによっても示される。すなわち、焼成後のCON型ゼオライトの元素分析で求めたSi/Al
2比は、水熱合成時あるいは焼成により、骨格が壊れてしまった部分のケイ素とアルミニウムを含んだバルクとしてのSi/Al
2比であり、それに対し、焼成後の
29Si−NMRにて求めたSi/Al
2比は、焼成後もゼオライト骨格中に保たれているケイ素とアルミニウムの比である。通常、脱アルミニウムの方が起こりやすいため、
29Si−NMR(Si/Al
2比)/XRF(Si/Al
2比)を%で表せば、100%以上となる傾向にある。特に、水熱合成後のポスト処理により二段階でAlを骨格に導入したCON型ゼオライトでは、バルクとしてのアルミニウム量が多くなるものの、骨格自体への取り込みは制限され、骨格外のAlが多く存在するものであった。
【0141】
一方、本実施形態のCON型ゼオライトはSi/Al
2比が低いにもかかわらず、結晶性が良いため焼成によっても脱Alが起きにくい。これは使用時の耐久性が高いことにつながる特性であり、このゼオライトを触媒として使用するときに好ましい特性である。具体的には
29Si−NMRにより求めた焼成後のゼオライトのSi/Al
2比とバルクとしてのSi/Al
2比との比、式で表せば{
29Si−NMR(Si/Al
2比)/元素分析(Si/Al
2比)}を%で表して、下限値として好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは100%以上であり、上限値としては好ましくは200%以下、より好ましくは180%以下、さらに好ましくは160%以下、特に好ましくは140%以下である。
【0142】
(
27Al−NMR)
一般に、ゼオライトの結晶中のアルミニウム(Al)は、そのほとんどが骨格中に取り込まれた4配位のアルミニウム(以下、「4配位Al」とする。)又は骨格外に存在する6配位のアルミニウム(以下、「6配位Al」とする。)である。4配位Alが多いほどブレンステッド酸点(Bronsted acid)が多くなる。そのため、本実施形態のCON型ゼオライトは、4配位Alが多いことが好ましい。本実施形態のCON型ゼオライトは、4配位Alと6配位Alとの合計に対する4配位Alの比率(以下、「4配位Al比率」とする。)は通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。4配位Al比率は結晶中のアルミニウムにおける4配位Alの割合であるため、その値は100%以下となる。ここでの4配位Al比率は以下の式から求まる値である。
4配位Al比率(%)= {4配位Al/(4配位Al+6配位Al)}×100
上記式において4配位Alは
27Al−NMRにおける55±5ppmに頂点を有するピークの面積、及び、6配位Alは
27Al−NMRにおける0±5ppmに頂点を有するピークの面積である。
【0143】
2.CON型ゼオライトの製造方法
本実施形態のCON型ゼオライトの製造方法は、ケイ素源と、アルミニウム源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、有機構造規定剤及び水とを含む混合物の水熱合成により、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでCONであり、かつ前記混合物中のケイ素に対するアルミニウムのモル比が0.01より大きいことを特徴とする。また、Polymorph Bの結晶を有するゼオライトを製造することが好ましい。
本実施形態のCON型ゼオライトは、上記の特徴を除いてはゼオライトの水熱合成の常法に従って製造することができる。すなわち、ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、および有機構造規定剤、水、必要に応じて種結晶、を含む結晶前駆体の混合物を調製し、これを水熱合成する方法で合成することができる。
以下、製造方法の一例を記載する。
【0144】
(混合物の成分)
(a)ケイ素源
本実施形態で用いるケイ素源は特に限定されず、微粉シリカ、シリカゾル、シリカゲル、二酸化珪素、水ガラスなどのシリケート、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシド、珪素のハロゲン化物などが挙げられる。また、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのシリカ含有ゼオライトやシリコアルミノホスフェートをケイ素源として用いてもよい。
これらケイ素源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのケイ素源のうち、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、微粉シリカ、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトなどが用いられ、より好ましくは反応性の面で、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトが用いられる。
【0145】
(b)アルミニウム源
本実施形態で用いるアルミニウム源は特に限定されず、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。また、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのアルミニウム含有ゼオライトやアルミノホスフェートをアルミニウム源として用いてもよい。
これらアルミニウム源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのアルミニウム源のうち、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトが用いられ、より好ましくは反応性の面で、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトが用いられる。
【0146】
(c)アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源
本実施形態の水熱合成に供する混合物中に含まれるアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素としては特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらは1種が単独に含まれていても、2種以上が含まれていてもよいが、アルカリ性が高く、特に溶解性の原料を使用した際にゼオライトの結晶化が起こりやすい面でアルカリ金属元素を含むことが好ましい。
【0147】
アルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源としては、その水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸水素塩、炭酸塩などが挙げられる。これらの化合物のうち、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩は、水溶液状態で塩基性を示すものである。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの水酸化物、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウムなどの炭酸水素塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。これらのうち、アルカリ性が高く、原料の溶解、続くゼオライトの結晶化を促進させる効果がある点で、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムであり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
これらのアルカリ金属源、アルカリ土類金属源は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0148】
(d)有機構造規定剤
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下、有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)としては、テトラエチルアンモニウムカチオン(TEA)やテトラプロピルアンモニウムカチオン(TPA)などの公知の各種の物質を使用することができる。また、例えば米国特許5512267号に記載の窒素含有系有機構造規定剤として、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムカチオンを使用することができる。このほか、N,N,N−トリメチル−(+)−cis−ミルタニルアンモニウムカチオン、ヘキサメトニウムカチオン、ペンタエトニウムカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオン等を含んでいてもよい。
【0149】
また、リン含有系有機構造規定剤としてテトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような公知の各種物質を使用することができる。
しかし、前述の通り、リン化合物は、合成されたゼオライトを焼成してSDAを除去する時に有害物質である五酸化二リンを発生する可能性があるため、好ましくは窒素含有系有機構造規定剤である。
上記アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンは、本実施形態のCON型ゼオライトの形成を阻害しないアニオンを伴うものである。前記アニオンは、特に限定はされないが、具体的には、Cl
−、Br
−、I
−などのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩等が用いられる。中でも、水酸化物イオンが特に好適に用いられる。
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0150】
(e)水
通常は、イオン交換水を用いる。
【0151】
(f)種結晶
本実施形態において、水熱合成に供する混合物中に種結晶を添加してもよい。この種結晶としては、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるbea、bre、lau、melのいずれかを骨格中に含むゼオライトが好ましい。具体的には、
*BEA型、CON型、IFR型、MSE型、STT型、BOG型、BRE型、HEU型、IWR型、IWW型、RRO型、STI型、TER型、ASV型、ATO型、BCT型、DFO型、EZT型、ITH型、LAU型、MSO型、OSI型、‐RON型、SAO型、TUN型、UOZ型、DON型、MEL型、MFI型、MWW型、SFG型が挙げられ、より好ましくは
*BEA型、CON型、IFR型、MSE型、STT型であり、さらに好ましくは
*BEA型、CON型、MSE型、特に好ましくはCON型である。
【0152】
CON型ゼオライトとしては、特に限定されるものではないが、ホウ素を含むB‐CON、アルミニウムを含むAl‐CON、ホウ素とアルミニウムを含むB,Al‐CON、ホウ素と鉄を含むB,Fe‐CON、ホウ素とガリウムを含むB,Ga‐CON、ゲルマニウムを含むGe‐CON、ゲルマニウムとホウ素を含むGe,B‐CON、ゲルマニウムとアルミニウムを含むGe,Al‐CON等が挙げられ、好ましくはB‐CON、B,Al‐CON、Al‐CONであり、より好ましくはB‐CON、B,Al‐CONであり、さらに好ましくはB,Al‐CONである。骨格中にホウ素及び/またはアルミニウムを含むCON型ゼオライトを用いると効率的に結晶化させることができる点で好ましい。
【0153】
種結晶は、1種のみを用いてもよく、構造や組成の異なるものを組み合わせて用いてもよい。種結晶として用いるゼオライトの組成は、混合物の組成に大きく影響を与えるものでなければ、特に限定されるものではない。
種結晶として用いるゼオライトの粒子径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径として、通常0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下である。種結晶の平均一次粒子径を上記範囲とすることで、前記混合物中での種結晶の溶解性が高くなり、副生物の生成を抑制し、CON型相の結晶化を効率的に促進することができる。
【0154】
また、種結晶としては、水熱合成後に焼成を行っていない構造規定剤を含むゼオライト、焼成を行って構造規定剤を含まないゼオライトのいずれを用いてもよい。結晶核として効果的に作用するためには、結晶化初期段階で溶解し過ぎない方が好適であるため、構造規定剤を含むゼオライトを用いることが好ましい。ただし、アルカリ濃度が低い条件や、合成温度が低い条件などでは、構造規定剤を含むゼオライトの溶解性が十分でない場合があり、その場合には、構造規定剤を含まないゼオライトを用いることが好ましい。
種結晶は、適当な溶媒、例えば水に分散させて混合物に添加してもよいし、分散させずに直接添加してもよい。
【0155】
(g)その他の元素M源
本実施形態におけるCON型ゼオライトは、構成元素としてケイ素、酸素、アルミニウム、およびアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素以外に、ホウ素、ガリウム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種の元素M(以下、単に「元素M」という。)を含んでいてもよい。
【0156】
水熱合成時の混合物中には、元素M源を含んでいてもよい。元素M源としては特に限定されず、例えば、これらの元素の硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシド、元素M含有ゼオライトなどから選ばれる。
これらの元素M源のうち、反応性の面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシドが好ましく、コスト面、作業面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物がより好ましい。
【0157】
ホウ素源としては、通常、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酸化ホウ素、ホウ素含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくはホウ酸、ホウ酸ナトリウムであり、より好ましくはホウ酸である。
また、ガリウム源としては、通常、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム、リン酸ガリウム、水酸化ガリウム、ガリウム含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸ガリウム、硝酸ガリウムであり、より好ましくは硫酸ガリウムである。
鉄源としては、通常、硝酸鉄、硫酸鉄、酸化鉄、塩化鉄、水酸化鉄、鉄含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸鉄、硝酸鉄であり、より好ましくは硫酸鉄である。
【0158】
これらの元素M源は、1種を単独で用いてもよく、同一の元素のものの2種以上を組み合わせて用いてよく、また、異なる元素のものの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、混合物中に、その他の金属(鉛、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、クロム、コバルトなど)源を含んでいてもよい。これらは混合物中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0159】
(混合物の組成)
本実施形態において、水熱合成に供される混合物(スラリーないしゲル)の好適な組成は次の通りである。
なお、以下の組成は、種結晶を添加する場合には、種結晶に含まれるケイ素、アルミニウム、元素M、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、構造規定剤、水(吸着水)は含めずに算出される値である。
【0160】
混合物中のケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比(Al/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0.01より大きく、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.04以上、特に好ましくは0.06以上であり、最も好ましくは0.08以上であり、通常0.30以下、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下、特に好ましくは0.10以下である。ケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比を上記の範囲とすることで、CON型を指向し易くなり、合成収率が向上する。また、触媒として用いた場合に、Al由来の酸点により有機化合物原料を効率的に転換することができるため好ましい。
【0161】
混合物中のケイ素原子に対するアルカリ金属原子とアルカリ土類金属原子の合計のモル比[(アルカリ金属原子+アルカリ土類金属原子)/Si]は、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.30以上であり、通常0.60以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.45以下、さらに好ましくは0.40以下、特に好ましくは0.35以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、アルミニウムのCON型ゼオライト骨格への取り込みが十分なものとなり、合成収率が向上する。また、副生成物の生成を抑制することができ、またCON相への結晶化速度を高めることができる点で好ましい。
【0162】
混合物中のアルミニウム原子に対する前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比[(アルカリ金属原子+アルカリ土類金属原子)/Al]は、特に限定されるものではないが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時のアルミニウムに対するアルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、CON型ゼオライトが得られやすい点で好ましい。
【0163】
混合物中の有機構造規定剤の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素原子に対する有機構造規定剤のモル比(有機構造規定剤/Si)は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.15以上であり、通常0.60以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.25以下である。混合物中の有機構造規定剤を上記の範囲とすることで、混合物中での核発生を促し、CON型ゼオライトの結晶化が促進され、収率良く合成できる点で好ましい。また、高価な有機構造規定剤の使用量を抑えられ、ゼオライトの製造コストを低減できる点で好ましい。
【0164】
混合物中のアルミニウム原子に対する、前記有機構造規定剤、前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比[(有機構造規定剤+アルカリ金属+アルカリ土類金属)/Al]は、特に限定されるものではないが、通常1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上であり、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時のアルミニウムと有機構造規定剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、CON型ゼオライトが得られやすい点で好ましい。
【0165】
混合物中の有機構造規定剤中には、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムカチオンが含まれていることが好ましい。全有機構造規定剤中のN,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムカチオン(以下、「TMMA」とする。)のモル比[TMMA/全有機構造規定剤(TMMA+その他)]としては、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.80以上であり、上限は1.0である。TMMAの割合が多い方が、CON型構造の結晶化が進行し易い点で、好ましい。
【0166】
混合物中の水の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素に対するH
2Oのモル比(H
2O/Si)として、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。混合物中の水の割合を上記の範囲とすることで、結晶化を促進することができる。また、反応器当たりの生産性を高めることができる。反応時の粘度上昇による撹拌混合性の低下や廃液処理コストを抑えることができる点で好ましい。
【0167】
混合物中に添加する種結晶の量は、特に限定されないが、本実施形態で添加する種結晶以外の混合物に含まれるケイ素(Si)がすべてSiO
2であるとした時のSiO
2に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、また、上限は特に限定されないが、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。種結晶の量を上記の範囲とすることで、CON型構造を指向する前駆体量が十分なものとなり、結晶化を促進することができる。また、生成物中に含まれる種結晶由来の成分量が抑えられ、生産性を高めることができるため、生産コストを低減することができる。
【0168】
(反応前混合物の調製)
本実施形態の製造方法においては、以上述べた、ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、有機構造規定剤、及び水を混合し得られた反応前混合物を水熱合成する。これらの原料の混合順序は、特に限定されないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にケイ素源、アルミニウム源を添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、及び有機構造規定剤を混合してアルカリ溶液を調製した後、ここへアルミニウム源、ケイ素源、必要に応じて種結晶、の順番で添加して混合することが好ましい。
【0169】
(熟成)
上記のようにして調製された反応前混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成してもよい。特にスケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となりやすい。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、反応混合物をより均一な状態に改善することが好ましい。熟成温度は通常100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常14日以下、好ましくは7日以下、さらに好ましくは3日以下である。
【0170】
(水熱合成工程)
上記混合物を、反応容器中で加熱することにより(水熱合成)、CON型ゼオライトを製造することができる。
加熱温度(反応温度)は特に限定されず、通常120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、通常220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは185℃以下である。反応温度を上記の範囲とすることで、CON型ゼオライトの結晶化時間を短縮することができ、ゼオライトの収率が向上する。また、異なる構造のゼオライトの副生を抑制できる点で好ましい。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0171】
加熱温度(反応温度)まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。
【0172】
加熱時間(反応時間)は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、また上限は、通常30日間以下、好ましくは10日間以下、より好ましくは7日以下、さらに好ましくは5日間以下である。反応時間を上記の範囲とすることで、CON型ゼオライトの収率を向上させることができ、また、異なる構造のゼオライトの副生を抑制できる点で好ましい。
【0173】
反応時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた混合物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えてもよい。
【0174】
(CON型ゼオライトの回収)
上記の水熱合成後、生成物であるCON型ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
【0175】
水熱合成反応液から分離回収したSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用した有機構造規定剤等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後、焼成等を行って有機構造規定剤等を含有しないゼオライトを得ることができる。製造効率の点で、焼成による除去が望ましい。
本実施形態のCON型ゼオライトを触媒(触媒担体も含む)や吸着材等の用途で使用する場合、必要に応じてこれらを除去した後に使用に供する。
【0176】
焼成温度は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃であり、また上限は、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下である。焼成温度を上記の範囲とすることで、構造規定剤を効率的に除去することができ、ゼオライトの細孔容積が十分に大きくなる。また、ゼオライトの骨格崩壊や結晶性の低下を抑制することができる。
【0177】
焼成時間は、構造規定剤が十分に取り除かれれば特に限定されないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、また上限は、通常24時間以内である。
焼成は、酸素が含まれている雰囲気で行うのが好ましく、通常、空気雰囲気で行われる。
【0178】
本実施形態のCON型ゼオライトの用途としては特に制限はないが、触媒、吸着材、分離材料などとして、好適に用いられる。特に、炭化水素吸着材、自動車等の排ガス浄化用触媒等に好適に用いられる。特にAl/Si比が0.04以上のCON型ゼオライトは高い吸着性能・触媒活性が得られる。
【0179】
3.低級オレフィン及び芳香族炭化水素の製造方法
本実施形態は、有機化合物原料から低級オレフィン及び芳香族炭化水素を製造する方法としての側面も有する。すなわち、エチレンやプロピレン等の低級オレフィンのインターコンバージョンによる低級オレフィン製造や脱水素環化反応を伴う芳香族炭化水素製造に好適に使用できる。また、メタノールやジメチルエーテル等のオキシジェネートを含む原料の転換による低級オレフィン製造(MTO:Methanol to Olefin)及び芳香族炭化水素製造(Methanol to Aromatics)にも好適に使用できる。
【0180】
(エチレン)
本実施形態の原料であるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られるエチレン、メタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン、その他の公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。また、エタノールは脱水により直ちにエチレン変換されるため、エタノールをそのまま原料として用いてもよい。
【0181】
(メタノール、ジメチルエーテル)
本実施形態の原料であるメタノール、ジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来のCO/水素の混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いてもよい。
なお、反応原料としては、メタノールのみを用いてもよく、ジメチルエーテルのみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。メタノールとジメチルエーテルを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
【0182】
反応原料としては、エチレンとともに、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を混合していてもよい。これらを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
【0183】
(反応器)
本実施形態における反応様式としては、有機化合物原料が反応域において気相であれば特に限定されないが、固定床反応器、移動床反応器や流動床反応器が選ばれる。また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でもよいし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
【0184】
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ‐アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填してもよい。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給してもよい。
【0185】
(基質濃度)
反応器に供給する全供給成分中の、有機化合物原料の合計濃度(基質濃度)に関して特に制限はないが、全供給成分中、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さら好ましくは30モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、通常95モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、重質炭化水素成分やパラフィン類の生成を抑制することができ、低級オレフィン及び芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。また反応速度を維持できるため、触媒量を抑制することができ、反応器の大きさも抑制可能となる。
従って、このような好ましい基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤で反応基質を希釈することが好ましい。
【0186】
(希釈剤)
反応器内には、有機化合物原料の他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でもヘリウム、窒素、水(水蒸気)が共存しているのが、分離が良好であることから好ましい。
このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。
また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応器に供給してもよい。
【0187】
(重量空間速度)
ここで言う重量空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料である有機化合物の流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成形に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量は有機化合物原料(エチレンおよび/またはメタノールおよび/またはジメチルエーテルなど)の合計の流量(重量/時間)である。
【0188】
重量空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.01Hr
−1以上、好ましくは0.1Hr
−1以上、より好ましくは0.3Hr
−1以上、さらに好ましくは0.5Hr
−1以上であり、通常50Hr
−1以下、好ましくは20Hr
−1以下、より好ましくは10Hr
−1以下、さらに好ましくは5.0Hr
−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、反応器出口ガス中の未反応の有機化合物原料の割合を減らすことができ、重質炭化水素成分やパラフィン類等の副生成物を減らすことができるため、低級オレフィン及び芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。また、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を抑えることができ、反応器の大きさを抑えられるため好ましい。
【0189】
(反応温度)
反応温度は、有機化合物原料が触媒と接触して、低級オレフィン及び芳香族炭化水素を生成する温度であれば、特に制限されるものではないが、通常250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上であり、通常650℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは500℃以下である。反応温度を上記範囲にすることで、コーキングを抑制しつつ、生産性を高めることができる。さらに、ゼオライト骨格からの脱アルミニウムが抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。なお、ここでの反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
【0190】
(反応圧力)
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。反応圧力を上記範囲にすることで低級オレフィン及び芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。
【0191】
(原料分圧)
有機化合物原料の合計の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.005MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。原料の分圧を上記範囲にすることでコーキングを抑制することができ、低級オレフィン及び芳香族炭化水素の収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
【0192】
(転化率)
本実施形態において、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上であり、通常100%以下である。また、エチレンの転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は50%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、通常100%未満、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
【0193】
通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、有機化合物原料の転化率は、低下する傾向にあるため、一定時間反応させた触媒は、再生処理に供する必要がある。上記の転化率の範囲で運転する方法としては、特に制限されない。
例えば、固定床反応器で反応を行う場合には、複数個の反応器を並列に備え、転化率が上記の好ましい範囲から低下した際には、触媒と反応原料との接触を停止し、該触媒を再生工程に供する。固定床反応器においては、反応時間及び再生時間を適宜調整する、すなわち、運転における反応工程と再生工程とを切り替える時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
また、流動床反応器で反応を行う場合には、反応器に対して触媒の再生器を付設し、反応器から抜き出した触媒を連続的に再生器に送り、再生器において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら、反応を行うことが好ましい。触媒の反応器内での滞留時間と再生器内での滞留時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
【0194】
有機化合物原料の転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、空気、水素を用いて再生することが好ましい。
【0195】
(反応生成物)
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物である、エチレン、プロピレン及びブテン等の低級オレフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスが得られる。前記混合ガス中の目的成分の濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
反応条件によっては反応生成物中に未反応原料が含まれるが、未反応の原料が少なくなるような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易に、好ましくは不要になる。
【0196】
(生成物の分離)
反応器出口ガスとしての、反応生成物である低級オレフィン及び芳香族炭化水素、未反応原料、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えばよい。
【0197】
4.吸着材
本発明の別の側面は、無機ガスや炭化水素成分の吸着材としての側面も有する。具体的には、炭化水素ガス、特に炭化水素の燃焼の間に形成されるような排気ガスのための吸着材としての使用に関し、より具体的には、内燃機関の低温開始動作の間に形成される炭化水素ガスの吸着に関する。
【0198】
車両についての将来の低排出標準は、自動車製造業者および触媒製造業者に低温開始炭化水素排出の減少に焦点を当てるように強いている。これは、炭化水素排出の多くの部分は、低温開始期間の間に発生するためである。したがって、内燃機関を装備する車両の低温開始動作の間の排出の制御は必須である。Freshな触媒は、比較的低温およそ170℃で作動し始めるが、長年使用された触媒は、作動開始温度が上昇し、およそ200℃〜220℃で作動する。これらの触媒は、そのような温度に到達するのに、通常、少なくとも1〜2分を必要とし、この低温領域において、炭化水素排出の約70% が発生する。すなわち、触媒式変換器中の触媒が、不完全燃焼の炭化水素を最終燃焼生成物に効果的に変換し得ないより低温では、炭化水素吸着材が、エンジンから排出される炭化水素を、吸着することにより、それらがその触媒式変換器に到達する前にトラップする(ハイドロカーボントラップ,HCトラップ)ことが望まれる。脱着温度としては、触媒の活性化温度以上であることが好ましい。
【0199】
ハイドロカーボントラップ材としての重要な要件は、その吸着材の吸着能、すなわち吸着された炭化水素が脱着され、触媒式変換器へ通される脱着温度、およびその吸着材の水熱安定性である。
【0200】
これまでに、ハイドロカーボントラップ材としては、BEA型構造を有するゼオライトが種々検討されてきた。しかし、BEA型ゼオライトは、水熱安定性が十分でなく、長期間の使用により、吸着能の低下が進行することが分かっている。よって、内燃機関の低温開始の間(触媒が活性化されるまでの間)、排出される炭化水素成分を吸着してトラップしておくことができるハイドロカーボントラップ材が望まれている。
【0201】
本実施形態のCON型ゼオライトは、自動車搭載という限られた空間、またエンジン運転条件に伴う広範囲の排ガス環境にも耐えうる高い吸着能、高い水熱安定性を有する。したがって、ハイドロカーボントラップ材として好適に使用することができる。
【0202】
ハイドロカーボントラップ材としての利用において、本実施形態のCON型ゼオライトを単独で用いてもよく、または、他のゼオライトと混合して用いてもよい。
また、本実施形態のCON型ゼオライトを含む吸着材は、シリカ、アルミナ及び粘土鉱物等のバインダーと混合して成形して用いてもよい。粘土鉱物としては、カオリン、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、アタパルジャイト、タルク等が挙げられる。ハニカム等の基材に塗布して用いてもよい。具体的には、例えば、本実施形態のCON型ゼオライトを含む触媒とシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーとを混合したスラリーを調製し、コージェライト等の無機物で作製された基材の表面に塗布して用いてもよい。
【0203】
吸着の対象となるガスとしては、例えば、ガソリンエンジン自動車、ディーゼルエンジン自動車等の内燃機関の排ガスに含まれるガスである。具体的には、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、水素、水、硫黄化合物、窒素酸化物等の無機ガス、ハイドロカーボンガスが挙げられる。ハイドロカーボンガスに関しては、特にメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、n‐ヘプタン及びイソオクタンなどの炭素数1〜20程度のアルカン類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン及びメチルヘキセン等の炭素数2〜20程度のアルケン類、ベンゼン、トルエン、キシレン及びトリメチルベンゼン等の芳香族類などの吸着に、本実施形態のCON型ゼオライトは有効である。上記の対象となるガスのうち、1種の炭化水素のみに用いてもよく、複数の炭化水素が混合されている状態に用いても良い。本実施形態のCON型ゼオライトを用いれば、これら複数種のガスを同時に吸着することができる。
【0204】
本実施形態のCON型ゼオライトを含む吸着材を使用する際の、吸着材と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、通常100hr
−1以上、好ましくは1,000hr
−1以上であり、更に好ましくは5,000hr
−1以上であり、通常500,000hr
−1以下、好ましくは400,000hr
−1以下、更に好ましくは200,000hr
−1以下である。
【0205】
本実施形態のCON型ゼオライトを含む吸着材を使用する際の温度としては特に限定されるものではないが、温度は通常50℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上、通常800℃以下、好ましくは600℃以下、更に好ましくは400℃以下、特に好ましくは300℃以下で用いられる。
【0206】
5.排ガス処理用触媒
本実施形態のCON型ゼオライトを自動車排気浄化触媒等の排ガス処理用触媒として用いる場合、本実施形態のCON型ゼオライトはそのままで用いてもよく、必要に応じて金属を含有させたCON型ゼオライトを用いてもよい。金属を含有させる方法として具体的には、含浸、液相または固相のイオン交換などの方法が挙げられる。また前述のように水熱合成前に金属(単体でも化合物でもよい)を加えることにより金属を含有させたゼオライトを直接合成してもよい。金属を含有させたゼオライトにおける金属の存在状態としては、骨格構造に含まれる場合と、含まれない場合がある。また、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形を行って使用することもできる。また、塗布法や、成形法を用いて所定の形状に成形して用いることもでき、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
【0207】
本実施形態のCON型ゼオライトを含む触媒の成形体を塗布法によって得る場合、通常、本実施形態のCON型ゼオライトとシリカ、アルミナ等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された成形体の表面に塗布し、焼成することにより作製され、好ましくはこの際にハニカム形状の成形体に塗布することにより、ハニカム状の触媒を得ることができる。ここでは排ガス処理用触媒を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよい。
【0208】
本実施形態のCON型ゼオライトを含む触媒の成形体を成形によって得る場合、通常、CON型ゼオライトをシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことができ、好ましくはこの際にハニカム形状に成形することにより、ハニカム状の触媒を得ることができる。
【0209】
本実施形態のCON型ゼオライトを含む本実施形態の触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒等のNOxの選択的還元触媒として有効である。
【0210】
また、本実施形態のCON型ゼオライトにSi及びAl以外の金属を含有させてなる排ガス処理用触媒も、NOxの選択的還元触媒として、特に有効である。このような排ガス処理用触媒として、ゼオライトに含有させる金属元素としては遷移金属が好ましく、中でも、鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の中の群から選ばれる。更に好ましくは、鉄または銅の中から選ばれる。これらの金属の2種以上を組み合わせて含有させてもよい。そして最も好ましくはCu(銅)である。Si及びAl以外の金属元素の含有量は、Si及びAl以外の金属元素を含有させてなるCON型ゼオライト全量中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。
特にゼオライトに含有させる金属元素が銅(Cu)であった場合には、触媒中の含有量として、0.1重量%以上、10重量%以下が好ましく、より好ましい範囲は上述のとおりである。
【0211】
本実施形態のCON型ゼオライトに、上記の金属を含有させる方法としては、特に限定されないが、一般的に用いられるイオン交換法、含浸担持法、沈殿担持法、固相イオン交換法、CVD法、噴霧乾燥法等、好ましくは、固相イオン交換法、含浸担持法、噴霧乾燥法により、CON型ゼオライトに金属を担持させる方法が好ましい。
【0212】
金属原料としては特に限定されず、通常、上記金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましく、より具体的には例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩酸塩等が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いてもよい。
金属原料としては、金属種、或いは化合物種の異なるものの2種以上を併用してもよい。
【0213】
CON型ゼオライトに上記金属を担持させた後は、好ましくは300℃〜900℃、より好ましくは350℃〜850℃、さらに好ましくは400℃〜800℃で、1秒〜24時間、好ましくは10秒〜8時間、さらに好ましくは30分〜4時間程度焼成することが好ましい。この焼成は必ずしも必要ではないが、焼成を行うことにより、ゼオライトの骨格構造に担持させた金属の分散性を高めることができ、触媒活性の向上に有効である。
【0214】
本実施形態によって得られた触媒の比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなることから、300〜1000m
2/gが好ましく、より好ましくは350〜800m
2/g、更に好ましくは450〜750m
2/gである。なお、触媒の比表面積は、BET法により測定される。
【0215】
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、触媒使用時には、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用してもよい。具体的には、本実施形態の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【0216】
本実施形態のCON型ゼオライトは、窒素酸化物浄化用触媒用途以外に、例えば、本実施形態の窒素酸化物浄化用触媒を用いて窒素酸化物の浄化を行った後段の工程において、窒素酸化物浄化で消費されなかった余剰の還元剤(例えばアンモニア)を酸化する酸化触媒用途に用いることができる。このように、本実施形態のCON型ゼオライトを含む触媒は酸化触媒として余剰の還元剤を酸化し、排ガス中の還元剤を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、本実施形態のCON型ゼオライトを該担体として使用したり、また、窒素酸化物の選択的還元触媒として使用される、例えば鉄及び/又は銅を担持した本実施形態のCON型ゼオライトに、更に該白金族等の金属を担持して使用することもできる。
【0217】
本実施形態の触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、排ガスの空間速度は通常100hr
−1以上、好ましくは1,000hr
−1以上であり、更に好ましくは5,000hr
−1以上であり、通常500,000hr
−1以下、好ましくは400,000hr
−1以下、更に好ましくは200,000hr
−1以下であり、温度は通常100℃以上、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは150℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下、更に好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下で用いられる。
【0218】
以下に実施例Aを挙げて本発明の別の側面をより具体的に説明するが、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0219】
なお、以下の調製例Aにおいて、合成で得られたゼオライトの結晶のX線回折(XRD)パターンは、PANalytical社製のX’Pert Pro MPDを用いて得た。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、30mA)、読込幅は0.016°、走査速度は4.0°/minである。また、粒子の形状は、Zeiss社製の走査電子顕微鏡(ULTRA55)を用いて、導電処理を行った試料を、加速電圧3kVで観察を行った。合成したゼオライトの組成は、ICP元素分析は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)により行った。蛍光X線分析(XRF)には、島津製作所社製Rayny EDX‐700を用いた。
【0220】
<調製例A>
水酸化ナトリウム(97質量%以上,キシダ化学製)2.57g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド(以下「TMMAOH」と略記する。)水溶液(14.8質量%,和光純薬工業製)288g、ホウ酸(キシダ化学製)2.47g、硫酸アルミニウム(51.0〜57.5質量%,キシダ化学製)0.407gを混合し、これにシリカ源としてシリカゾルSI−30(SiO
2 30.6質量%,Na
2O0.37質量%,日揮触媒化成製)197gを加えて、十分に撹拌した。さらに加えたSiO
2に対して2質量%のBEA型ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比30、東ソー製HSZ-931HOA)1.20gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、250rpmで撹拌しながら、170℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末58.9gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、SiO
2/Al
2O
3比は595、SiO
2/B
2O
3比は50であった。
【0221】
<実施例A1>
水酸化ナトリウム0.155g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)4.16g、水3.65gを混合し、Y型ゼオライトCBV720(SiO
2/Al
2O
3比 30、ZEOLYST社製)0.960g、コロイダルシリカSI−30(SiO
2 30質量%、Na
2O 0.4質量%、日揮触媒化成社製)0.990gを加えて、2時間撹拌した。さらに加えたSiO
2に対して20質量%のCIT−1ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比595,SiO
2/B
2O
3比50)0.240gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、160℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.98gを得た。生成物のXRDパターン(表4)から、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。SEM画像より、平均一次粒子径は0.20μmであった。
空気流通下、600℃、6時間の焼成により有機構造規定剤を除去した後、
29Si−NMRより求められたSiO
2/Al
2O
3比は32であった。
【表4】
【0222】
<実施例A2>
水酸化ナトリウム0.160g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)4.16g、水4.33gを混合し、Y型ゼオライトCBV760(SiO
2/Al
2O
3比 60、ZEOLYST社製)1.24gを加えて、2時間撹拌した。さらに加えたSiO
2に対して20質量%のCIT−1ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比595,SiO
2/B
2O
3比50)0.240gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、160℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.86gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0223】
<実施例A3>
Y型ゼオライトとしてCBV780(SiO
2/Al
2O
3比 80、ZEOLYST社製)1.23gを用いた以外は、実施例A2と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A2と同様の方法で行い、白色粉末0.71gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0224】
<実施例A4>
水酸化カリウム0.198g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)1.39g、水2.23gを混合し、Y型ゼオライトHSZ-360HUA(SiO
2/Al
2O
3比 15、東ソー社製)0.510g、コロイダルシリカSI−30 0.492gを加えて、2時間撹拌した。さらに加えたSiO
2に対して20質量%のCIT−1ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比595,SiO
2/B
2O
3比50)0.120gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、180℃で2日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.64gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0225】
<実施例A5>
水酸化カリウム0.231g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)0.693g、水1.69gを混合し、水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で53.5質量%、Aldrich社製)0.095g、コロイダルシリカSI−30 1.97gを加えて、2時間撹拌した。さらに加えたSiO
2に対して20質量%のCIT−1ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比595,SiO
2/B
2O
3比50)0.120gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、180℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.72gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0226】
<実施例A6>
水酸化アルミニウム0.076gを添加した以外は、実施例A5と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A5と同様の方法で行い、白色粉末0.66gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。SEM画像より、平均一次粒子径は0.10μmであった。
【0227】
<実施例A7>
種結晶として、加えたSiO
2に対して10質量%のCIT−1ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比595,SiO
2/B
2O
3比50)0.060gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.61gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0228】
<実施例A8>
水酸化カリウム0.165g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)1.73g、水0.985gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.65gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0229】
<実施例A9>
水酸化カリウム0.198g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)1.39g、水1.22gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.66gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0230】
<実施例A10>
種結晶として、加えたSiO
2に対して10質量%のCIT−1ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3比595,SiO
2/B
2O
3比50)0.060gを添加した以外は、実施例A9と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A9と同様の方法で行い、白色粉末0.56gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0231】
<実施例A11>
水酸化ナトリウム0.030g、水酸化カリウム0.198g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)0.693g、水1.70gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.60gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0232】
<実施例A12>
水酸化カリウム0.165g、水酸化セシウム(三津和化学社製)0.088g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)1.39g、水1.22gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.67gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0233】
<実施例A13>
水酸化カリウム0.132g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)2.08g、水0.757g、水酸化アルミニウム0.064gを添加した以外は、実施例A5と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A5と同様の方法で行い、白色粉末0.62gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。SEM画像(
図7)より、平均一次粒子径は0.20μmであった。
空気流通下、600℃、6時間の焼成により有機構造規定剤を除去した後、
29Si−NMRより求められたSiO
2/Al
2O
3比は29であった。
【0234】
<実施例A14>
水酸化カリウム0.198g、N,N,N−トリメチル−(−)−cis−ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(30.8質量%)1.39g、水1.22g、水酸化アルミニウム0.048gを添加した以外は、実施例A5と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A5と同様の方法で行い、白色粉末0.51gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0235】
<実施例A15>
水酸化アルミニウム0.032gを添加した以外は、実施例A14と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A14と同様の方法で行い、白色粉末0.47gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0236】
<実施例A16>
種結晶として、実施例A8で得られたAl−CIT−1ゼオライト0.120gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.65gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0237】
<実施例A17>
コロイダルシリカSI−30の代わりにフュームドシリカ Aerosil200を0.601g、水3.03gを添加した以外は、実施例A6と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A6と同様の方法で行い、白色粉末0.60gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
【0238】
<比較例A1>
水酸化アルミニウム0.010gを添加した以外は、実施例A14と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例A14と同様の方法で行い、白色粉末0.35gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がcristobalite相と一部CON相の混相であることを確認した。
実施例A1〜A17、比較例A1の合成条件、合成結果を表5に示す。
【0239】
【表5】
【0240】
なお、実施例A1〜A17、比較例A1において合成に使用した原料の詳細は、以下のとおりである。
NaOH(キシダ化学製),KOH(キシダ化学製),CsOH(三津和化学製)、カタロイドSI−30(シリカ濃度:30.6重量%、日揮触媒化成社製)
また収率(重量%)は以下の式で計算した。
(収率)=(SDAを含むCON型ゼオライトの重量(g))/{(製造時に添加するケイ素原料、アルミニウム原料をそれぞれAl
2O
3、SiO
2に換算した重量(g))+種結晶ゼオライトの重量(g))}×100
【0241】
(ハイドロカーボントラップ材性能評価)
本実施形態のCON型ゼオライトの吸着特性を調べるため、トルエンの昇温脱離(temperature−programmed desorption ; TPD) を使用し、脱離してくるトルエンを質量分析計にて検出した。約100mgのゼオライトサンプルをPtボートに秤量し、石英管にセットし、50cc/minのヘリウム流通下、20℃/minで300℃まで昇温し、そのまま2時間保持することで、ゼオライトの吸着水を除去し、50℃に降温後、RP(ロータリーポンプ)及びTMP(ターボ分子ポンプ)で排気した。次いで、50℃にて、減圧状態の石英管にトルエンを導入し、15分間吸着させた。その後、前脱離処理として、50cc/minのヘリウム流通下、10℃/minで90℃まで昇温し、そのまま10分間保持した(前脱離処理工程)。トルエン昇温脱離は、50cc/minのヘリウム流通下、20℃/minで90℃から390℃まで昇温し、その後10分間保持することで、その間に発生したトルエンを質量分析計にて検出した。トルエン吸着量は以下の通り算出した。昇温脱離では、トルエンとともに水成分が検出されたため、標準物質としてシュウ酸カルシウム(CaC
2O
4・H
2O)の質量分析測定より、m/z=18ピーク面積から上記脱水量を求めるための換算係数を算出した。さらに、トルエンを吸着させた標準サンプルを調製し、その90℃〜390℃の範囲のTG−DTS減量を測定し、昇温脱離におけるm/z=18ピーク面積から求められた脱水量以外の減量をトルエン脱離量として、m/z=91のピーク面積からトルエン脱離量を求める換算係数を算出した。これらの換算係数を用いて、CON型ゼオライトの昇温時のトルエンの脱離量を算出した。
【0242】
<実施例A18>
実施例A1で得られたCON型ゼオライト(Si/Al
2=31)を、空気流通下、600℃で6時間焼成を行い、Na型のCON型ゼオライトを得た。次いで、1M硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCON型ゼオライトを得た。NH
3‐TPDより求められる全酸量は、1.1mmol/gであった。ハイドロカーボントラップ材としての吸着性能評価を、上記のトルエン昇温脱離測定により実施した。さらに、水熱安定性を評価するため、800℃、H
2O/Air=10/90体積%、5時間の水蒸気処理を行い、同様にトルエン昇温脱離測定を実施した。その結果を表6及び
図8に示す。
【0243】
<比較例A2>
プロトン型のBEA型ゼオライト(Si/Al
2=25,触媒学会参照触媒、JRC−Z−HB25)について、実施例A18と同様に、水蒸気処理前後でトルエン昇温脱離測定を実施した。その結果を表6及び
図9に示す。
【0244】
<実施例A19>
実施例A5で得られたCON型ゼオライト(Si/Al
2=19)を、実施例A18と同様に処理し、プロトン型のCON型ゼオライトを得た。NH
3‐TPDより求められる全酸量は、0.75mmol/gであった。ハイドロカーボントラップ材としての性能評価を、上記の通りトルエンの昇温脱離測定により実施した。その結果を表6及び
図10に示す。
【0245】
<比較例A3>
調製例Aと同様の組成、合成条件で水熱合成を行い、[B,Al]‐CIT‐1(Si/Al
2=513,Si/B
2=48)を調製し、実施例A18と同様に処理し、プロトン型のCON型ゼオライトを得た。ハイドロカーボントラップ材としての性能評価を、上記の通りトルエンの昇温脱離測定により実施した。その結果を表6及び
図10に示す。
【0246】
【表6】
【0247】
実施例A18では、Si/Al
2=31のCON型ゼオライトにおいて、Fresh状態で2.2mmol/g、水蒸気処理後で1.4mmol/gのトルエン脱離量(以下、「吸着量」と表記する)を示した。一方、比較例A2では、Si/Al
2=25のBEA型ゼオライトにおいて、Fresh状態で2.1mmol/g、水蒸気処理後で1.0mmol/gのトルエン吸着量を示した。トルエン吸着量を水蒸気処理前後で比較すると、比較例A2では48%まで低下しているのに対し、実施例A18は64%維持していた。これより、実施例A18のCON型ゼオライトの方が、同等のトルエン吸着量を示したBEA型ゼオライトと比較して、高い水蒸気安定性を有することが分かる。
また、実施例A19では、Si/Al
2=19のCON型ゼオライトにおいて、Fresh状態でトルエン吸着量1.9mmol/g、脱離終了温度390℃を示した。一方、公知の方法により調製した比較例A3のSi/Al
2=513のCON型ゼオライトにおいて、トルエン吸着量1.7mmol/g、脱離終了温度280℃を示した。トルエン吸着量及び脱離終了温度について比較すると、実施例A18及びA19のCON型ゼオライトの方がトルエン吸着量が多く、かつ脱離終了温度が高いことが分かる。
【0248】
以上の結果から、本実施形態のCON型ゼオライトは、高い吸着量、及び高い水蒸気安定性を有することから、吸着材、特に炭化水素成分の吸着材(自動車のハイドロカーボントラップ材等)に好適に利用できる。また、本実施形のCON型ゼオライトは、酸量が多く、かつ高い水蒸気安定性を有することから、吸着材と同様に、高酸量かつ高水蒸気安定性を要求される排ガス処理用触媒にも好適に利用できると考えられる。