(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965440
(24)【登録日】2021年10月22日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-513098(P2020-513098)
(86)(22)【出願日】2019年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2019006211
(87)【国際公開番号】WO2019198345
(87)【国際公開日】20191017
【審査請求日】2020年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-76504(P2018-76504)
(32)【優先日】2018年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】朝田 沙耶佳
(72)【発明者】
【氏名】島田 賢史
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅文
【審査官】
永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−350451(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/221313(WO,A1)
【文献】
特開2015−68758(JP,A)
【文献】
米国特許第7776271(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象の検体を分析する分析部と、
検体を収容した検体容器を搭載した検体ラックを搬送する搬送部と、
前記分析部と前記搬送部を制御する制御部と、
交換時期情報及び製品番号を含む識別情報が付与された交換可能な部品と、
前記識別情報を読み取り、装置の外周部に設けられた識別部と、
前記識別部により読み取った識別情報を記憶する記憶部と、
前記識別部により読み取った識別情報を表示する表示部と、
を備え、
前記部品は、複数の種類の電極により構成されるイオン選択性電極であって、
前記交換時期情報は、有効期限と、使用期限または使用可能期間の少なくともいずれかを有する使用状況と、を含み、
前記制御部は、
前記識別部によって読み取った情報における交換時期情報に基づいて、当該複数の種類の電極のうちの少なくともいずれかの電極の交換時期になると、
当該交換が必要な電極と他の電極との有効期限と使用状況に関する情報と、当該電極と他の電極との組み合わせにおける配置関係、及び当該電極の他の電極に対する配置の順序に関する情報を前記表示部に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記部品の交換時期は、前記部品の有効期限が到来する時期、使用回数が使用可能回数に達する時期、及び使用可能期間が経過する時期のいずれかであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御部は、
部品の交換時期になると、当該部品を用いて行っている前記分析部の分析を実行不能にし、当該部品が交換されると前記分析部の分析を実行可能にすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記制御部は、
部品の交換時期になると、当該部品を使用した測定結果にアラームを付与して前記表示部に表示する特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項4において、
前記制御部は、
部品の交換時期になると、
当該部品の交換が必要なことを知らせるアラームを前記表示部に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記制御部は、
当該イオン選択性電極における複数の種類の電極のうちの少なくともいずれかの電極を交換すると、交換した電極の洗浄及びキャリブレーションの少なくともいずれか一方の手順を前記表示部に表示し、
オペレータにより投入された、洗浄液を収容した洗浄容器を搭載した検体ラックである洗浄ラック及びキャリブレーション用の検体を収容した検体容器を搭載した検体ラックであるキャリブレーションラックの少なくともいずれか一方を前記分析部に搬送し、当該洗浄及びキャリブレーションの少なくともいずれかを実行することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項5において、
前記制御部は、
部品が交換されたあと、前記交換した部品の洗浄及びキャリブレーションの少なくともいずれか一方が終了するまで分
析部の分析を実行不能にすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記識別部は、装置のユーザが操作する側である、装置の前面部に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記分析部と前記搬送部は、操作するユーザから見て互いに左右に横並びで配置されており、
前記識別部は、前記搬送部に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項15】
請求項1において、
前記表示部は、
読み取った識別情報の製品番号が前記記憶部に登録されていない場合には、読み取った識別情報の有効期限及び使用可能回数を前記表示部に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項16】
請求項1において、
読み取った識別情報の製品番号が前記記憶部に既に登録されている場合には、前記記憶部に登録されている製品番号に対応する有効期限及び使用可能回数を前記表示部に表示することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、血液や尿などの生体試料(以下、検体と称する)の定性・定量分析を行う自動分析装置が、多くの患者検体を扱う大病院や臨床検査センターを中心に普及している。
【0003】
特許文献1では、部品を交換するときに、部品のバーコードから部品固有コードを読み取り、当該コードが部品交換履歴に登録されていない場合には部品が新品、登録されている場合には部品が中古品であると判断し、中古品の場合、検体分析装置において部品が中古品であることが表示され、新品の場合、検体分析装置において部品交換を説明する動画が再生される検体分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−68758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置の測定の精度を維持するためには、分析性能に影響を与える測定部品を適切に管理・交換する必要がある。従来、試薬や洗剤などには1次元バーコードやRFIDタグが貼り付けされ、消耗品の登録及び管理が行われていた。しかし、測定部品については、ユーザが定期的に性能を確認し、推奨期限や使用可能回数を参照して、交換が行われていた。特許文献1に記載の発明では、ユーザが容易に保守のための部品の交換を行うことができるとともに、部品交換後における動作不良及び分析精度の低下を抑制することを可能とする検体分析装置が開示されている。しかし、特許文献1では、部品の管理交換時期の判断はオペレータにより行われており、部品に記載のバーコードでは部品が適切かどうかの判断のみで、有効期限や使用回数による管理は行えていなかった。
【0006】
本発明の目的は上記課題を解決し、測定精度の低下の抑制を可能とする自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
分析対象の検体を分析する分析部と、検体を収容した検体容器を搭載した検体ラックを搬送する搬送部と、前記分析部と前記搬送部を制御する制御部と、交換時期情報及び製品番号を含む識別情報が付与された交換可能な部品と、前記識別情報を読み取り、装置の外周部に設けられた識別部と、前記識別部により読み取った識別情報を記憶する記憶部とを備えたことを特徴とする自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
消耗品を適切に管理・交換することができ、測定精度の低下の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】イオン選択性電極の識別情報の読み取りを示す図である。
【
図4】イオン選択性電極の交換手順を示すフロー図である。
【
図6】
図6で示した個々の使用状況画面を一画面に表示した例を示した図である。
【
図7】キャリブレータの設置・登録方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、自動分析装置の概略図を示す。自動分析装置1は、検体を分析する分析ユニット2と、検体容器6を搭載する検体ラック5を投入・回収及び分析ユニット2へ搬送するための搬送ユニット3と、自動分析装置1の動作を制御する制御装置4と、部品や試薬等に付された識別情報を読み取る2次元バーコードリーダやRFID等の識別装置16とから概略構成されている。
【0012】
自動分析装置1で取り扱う検体ラック5には、自動分析装置1において定性・定量分析の対象となる血液や血漿、血清、尿、その他の体液などの生体試料(以下、検体またはサンプルと称する)が収容された1つ以上の検体容器6が搭載されている。
【0013】
分析ユニット2は、検体ラック5に搭載された検体容器6に収容された検体に対してサンプリング(分注)を行って定性・定量分析を行うものである。分析ユニット2は、搬送ユニット3で搬入された検体ラック5に収容されている検体に対する分析依頼情報を照合するために検体ラック5及び検体容器6に設けられたRFIDやバーコードなどの識別媒体を読み取って識別する検体識別装置(図示せず)と、分注位置に搬送された検体ラック5の検体容器6から測定ユニットに検体を分注する検体分注機構7と、試薬収納部8の試薬容器に収容された試薬を反応容器に分注する試薬分注機構9と、反応容器に分注された検体と試薬の混合液(反応液)の測定を行って定性・定量分析を行う測定ユニット10とを備えている。
【0014】
搬送ユニット3は、自動分析装置1に投入される検体ラック5を分析システムに搬送するものである。搬送ユニット3には、分析ユニット2に検体ラック5を搬送する搬送ライン11と、測定前の検体ラック5を待機させ、測定後の検体ラック5を収納するための収納エリア12とが備えられている。
【0015】
制御装置4は、自動分析装置1の動作を制御するものである。制御装置4には、各種パラメータや設定の入力画面、初回検査あるいは再検査の分析検査データや測定結果等が表示される表示部13と、各種パラメータや設定、測定結果、各検体ラック5に搭載された検体容器6に収容された検体の分析依頼情報等を記憶する記憶部14と、制御装置4を含む自動分析装置1の動作を制御する制御部15とが備えられている。
【0016】
識別装置16は、部品や試薬の交換を行う際などに、部品や試薬に付された識別情報を読み取る。この識別情報をもとに、部品の交換時期や交換可能な部品であるかなど判断される。
図1では、識別装置16は搬送ユニット上に設けられているが、ユーザがアクセス可能な位置に設けられていればよく、ユーザが自動分析装置を操作する際にアクセスしやすい装置の外周面等に設けられていることが好ましい。
【0017】
制御部15は分析が依頼されると分析に係る諸動作を開始させる。収納エリア12にある検体ラック5のうち1つが搬送ライン11に移動され、分析ユニット2に搬送される。続いて、分析ユニット2に移動された検体ラック5に付された識別情報が検体識別装置により照合され、分析が指示されている検体容器6内に検体分注機構7の分注プローブが挿入されて測定ユニット10への分注がなされ、測定が開始される。同じ検体容器6について2項目以上の検査項目が指示されている場合、及び同じ検体ラック5上の他の検体容器6について検査項目が指示されている場合は、引き続いて検体の分注動作が繰り返される。指示されている総ての分析項目に関する検体の分注が終了した検体ラック5は、搬送ライン11を介して収納エリア12に移動させ、検体搬送処理を終了する。
【0018】
自動分析装置1には、試薬や測定に使用されるランプやイオン選択性電極、反応容器等、複数の消耗品がある。自動分析装置1の分析性能を維持するためには、これらの消耗品を適切なタイミングで交換し、それに付帯するメンテナンスを確実に実施する必要がある。従来、試薬や洗剤などには、1次元バーコードやRFIDタグの識別情報が貼り付けされ、自動分析装置1の内部に設置された識別装置により情報が読み取られ、消耗品の登録や有効期限の管理が行われていた。しかし、イオン選択性電極や反応容器等の測定に使用される消耗品の部品については、ユーザが定期的に性能を確認し、推奨期限や使用可能回数を参照して交換を行っていた。また、交換周期が数年単位の保守のための部品交換は、サービスより一括管理することも可能であるが、交換周期の短い消耗品についてはユーザが管理する必要があった。
【0019】
そこで、本発明では交換時期を明確にするため、試薬だけでなく、ランプやイオン選択性電極(ISE:Ion Selective Electrode)、反応容器等の消耗品もしくは消耗品の包装に識別情報を付与する。さらに、ユーザがアクセス可能な位置に識別情報を読み取る識別装置16を設けた。識別情報は、識別装置16により読み取られ、記憶部14に登録される。
この識別情報には、製造年月日、部品固有番号、交換時期情報などの管理情報が記載されている。消耗品は交換時期情報により部品交換時期が管理される。この交換時期情報には、消耗品が未使用状態での使用期限である有効期限、消耗品の使用開始時期(部品の登録日)から使用可能な期間である使用可能期間、消耗品が行えるテスト回数である使用可能回数等がある。必要な交換時期情報は消耗品の種類によっても異なり、有効期限、使用可能回数、使用可能期間のいずれかひとつの情報が含まれればよく、消耗品に合わせて複数の交換時期情報によって管理しても良い。前記交換時期情報に基づいて、有効期限を超過した場合や、使用可能回数や使用可能期間を超えて使用した場合に、測定結果へ使用期限や回数を超えて使用したことを警告するアラームが付与される。表示部には部品の交換が必要なことを知らせるアラームが表示部に表示される。さらに、交換が必要な部品を使用する分析は、部品の交換が行われるまで行うことが出来なくなる。これにより、測定部品の有効期限や使用回数、使用期間を管理し、適切なタイミングで交換を実施することができ、測定の精度を維持することができる。また、部品の状態を監視することができるため、複数の測定部品の交換およびそれに付帯するメンテナンス(洗浄、キャリブレーションなど)を順序立てて行うようにガイダンスすることで、測定精度維持のための確実なメンテナンスを実施することができる。
【0020】
また、交換時期の管理やメンテナンスのガイダンスにより、ユーザの分析性能の低下による再測定や、メンテナンスの誤操作を防止することができる。
【0021】
消耗品の交換について詳細を説明する。
【0022】
図2に消耗品の交換フローを説明する。
図2のフローでは有効期限、使用可能回数及び使用可能期間で管理している場合のフローを示すが、消耗品によって使用しない交換時期情報に関するフローは飛ばして行う。消耗品の有効期限が到来するかもしくは使用回数が使用可能回数に達するか使用可能期間が経過すると、消耗品を用いて行う分析が制御部15により停止される。測定中に有効期限あるいは使用可能回数の上限に達した場合には、測定結果に有効期限切れのデータアラームが付加される。測定終了後に消耗品を用いて行う分析が制御部15により停止状態となり行えなくなる。さらに、交換が必要な部品はロックされ、交換以外の動作を行えなくなる(S201)。表示部13には交換が必要なことを知らせるアラームが表示される(S202)。消耗品もしくは消耗品の包装には、識別情報が付されており、交換部品または交換部品の包装に付された識別情報を識別装置16にかざし、識別情報を読み取る(S203)。読み取られた情報は制御部15で解析される。読み取った交換部品の識別情報の有効期限が切れている場合には、交換が必要なことを知らせるアラームが表示され、交換部品の識別情報の読み取りが要求される。記憶部14には、今まで使用した消耗品の識別情報や消耗品を登録した登録日が登録されている。交換部品が有効期限内である場合には、読み取った識別情報が以前登録されたものか、登録されたことのないものか判断される(S204,S205)。読み取った識別情報が登録されていない場合には、交換部品は新品と認識され、表示部には部品の識別情報に記載された有効期限及び使用可能回数が表示され、交換が可能であることが示される(S206,S207)。読み取った識別情報が登録されている場合には、記憶部に登録されている情報により使用可能期間及び使用可能回数が残っているか確認される。使用可能期間かまたは使用可能回数が残っていない場合には、交換が必要なことを知らせるアラームが表示され交換部品の識別情報の読み取りが要求される。使用可能期間が残っているかどうかは、記憶部に登録されている部品をはじめて登録した登録日から識別情報を読み取った日までの期間が識別情報で読み取った使用可能期間より短いかで判断される。使用可能期間及び使用可能回数が残っている場合には、記憶部に登録されている有効期限や部品の登録日、使用可能回数が表示部に表示され、交換が可能であることが示される。この交換部品が使用される場合には、残りの使用可能回数を更新する形で使用される(S208,209)。交換可能であると表示された部品を表示部に表示される部品登録ボタンを押し、登録した部品と交換すると、交換部品の登録が完了する(S210)。交換部品の登録が完了されると、交換箇所のロックが解除される(S211)。交換部品の種類によっては、消耗品の交換だけでなく洗浄やキャリブレーション等のメンテナンスが必要なものがあり、メンテナンスの要否及び手順は制御装置4に登録されている。メンテナンスの必要がないものは、交換部品を用いて行う分析の停止状態が解除され、測定開始可能な状態となる(S215)。メンテナンスが必要な場合には、メンテナンスのガイダンスが開始され、ガイダンスに従いメンテナンスを実施する(S212,S213)。メンテナンスが正常に終了したと判断されると、交換部品を用いて行う分析の停止状態が解除され、測定開始可能な状態となる(S214,S215)。消耗品の交換を完了させないと、交換が必要な消耗品を使用する分析をできない。これにより、消耗品の有効期限や使用可能期間、使用可能回数を過ぎた状態での使用を防ぐことができ、測定精度を維持することができる。さらに、必要なメンテナンスも確実に実施させることができるため、分析性能の低下を抑制することができる。また、ユーザに適切なメンテナンスを促すことができユーザビリティも向上される。消耗品の部品もしくは部品の包装に設けられた識別情報は、製品番号と交換時期情報が含まれていればよく、2次元の識別番号を刻印あるいはラベルしたものを使用し識別装置16として2次元リーダを使用しても、RFタグを使用しRFIDで読み取っても良い。消耗品の交換は、有効期限あるいは使用可能回数の上限となる前でも分析性能の低下など異常を感じた際には、メンテナンス画面を選択し、交換したい部品の交換を行うことは可能である。
【0023】
消耗品交換の具体例として、
図3・4に電解質濃度測定に使用されるイオン選択性電極17の交換示す。分析ユニットで電解質濃度測定を行う場合、測定ユニット10の検出部にイオン選択性電極17が使用される。測定ユニット10でイオン選択性電極17を用いて電解質濃度測定を行う場合、通常複数のイオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなど)を同時に検出するために、イオン選択性電極17は測定項目に対応した数種類の電極で構成されている(17a,17b,17c,17d)。これらの電極は消耗品であり、例えば、使用可能期間である2,3ヶ月で新しい電極に交換される。測定中に有効期限、使用可能期間あるいは使用可能回数の上限に達した場合には、測定結果に有効期限切れのデータアラームが付加される。測定終了後、制御部15により電解質濃度測定は停止状態となり、測定できなくなる。さらに、イオン選択性電極17はロックされ、交換以外の動作を行えなくなる(S401)。表示部13には交換が必要なことを知らせるアラームが表示される(S402)。イオン選択性電極17は複数の部品から構成されるため、イオン選択性電極17交換時には、適切な場所や順序で交換を行うための交換ガイダンスが開始される(S403)。交換ガイダンス機能の詳細については後述する。イオン選択性電極17の識別情報の読み取りでは、電極(17a,17b,17c,17d)または電極の包装18に付された識別情報19を識別装置16にかざし識別情報を読み取る(S404)。読み取られた情報は制御部15で解析される。読み取った電極の識別情報の有効期限が切れている場合には、交換が必要なことを知らせるアラームが表示され、交換部品の識別情報の読み取りが要求される。記憶部14には、今まで使用した消耗品の識別情報が登録されている。有効期限内である場合には、読み取った識別情報が以前登録されたものか、登録されたことのないものか判断される(S405,S406)。読み取った識別情報が登録されていない場合には、交換部品は新品と認識され、表示部には部品の識別情報に記載された有効期限及び使用可能回数が表示され、交換が可能であることが示される(S407,S408)。読み取った識別情報が登録されている場合には、記憶部に登録されている情報により使用可能回数が残っているか、使用可能期間が経過して確認される。使用可能期間が経過しているまたは使用可能回数が残っていない場合には、交換が必要なことを知らせるアラームが表示され交換部品の識別情報の読み取りが要求される。使用可能期間及び使用可能回数が残っている場合には、記憶部に登録されている部品の登録日、有効期限及び使用可能回数が表示部に表示され、交換が可能であることが示される。この交換部品が使用される場合には、残りの使用可能回数を更新する形で使用される(S409,410)。交換可能であると表示された部品と交換し、表示部に表示される部品登録ボタンを押すと、消耗品の登録を完了される(S411)。交換部品の登録が完了されると、イオン選択性電極17のロックが解除される(S412)。
【0024】
イオン選択性電極17の交換時には、メンテナンスとして洗浄やキャリブレーションが必要なため、正常にイオン選択性電極17の交換が行われるとメンテナンスのガイドダンスが開始される。はじめに、表示部13に洗浄に関するガイダンスが表示される(S413)。ユーザはガイダンスに従い、洗浄用ラックの指定位置に洗浄液を準備し、分析装置の投入エリアに設置する。洗浄用ラックが分析ユニット2の検体識別装置の読取位置まで搬送され、洗浄ラックと認識されると装置は自動的に交換部品に必要な洗浄動作を実行する。洗浄動作が正常終了(S414)すると、キャリブレーションのガイダンスが表示される(S415)。ユーザは、ガイダンスに従い、検体ラック5の指定の位置にキャリブレーション用の検体を準備し、分析装置の投入エリアに設置する。ラックは分析ユニット2に搬送され、キャリブレーションが行われる。キャリブレーションが正常終了(S416)すると、続いて、クオリティチェック測定が指示され、クオリティチェック測定が行われる(S417)。クオリティチェック測定が正常に終了すると、イオン選択性電極17の交換及びメンテナンスが完了したと判断され、いつでも測定可能な状態になる(S418,S419)。本実施例のイオン選択性電極には、より厳しく管理を行うため交換時期情報として、有効期限、使用可能期間及び使用可能回数が識別情報に記載されているが、いずれかひとつの交換時期情報でも、交換時期の指示の管理は可能である。
【0025】
図5を用いて、交換ガイダンス機能について説明する。イオン選択性電極17は数種類の電極により構成されており、それぞれの電極は配置する位置が決まっている。また、複数種類の電極は嵌合された状態で設置されるため、決まった順番で交換を行うと円滑に交換作業を行うことができる。そこで、交換時に適切な位置に、適切な順番で交換されるよう交換ガイダンスが行われる。電極交換メンテナンスを実行すると、画面上に最初に交換が必要な電極Aの使用状況が画面に表示される。この電極は使用可能な状況であるため、次の電極の交換に進むことができる。ユーザが「次へ」ボタンを押下すると、電極Bの使用状況が画面に表示される。この電極は、使用可能回数が0回となっているため、「次へ」ボタンを押すことができない。ユーザが、電極の二次元バーコードを読取り装置にかざすと、有効期限や使用可能回数が更新される。ユーザは電極を交換し、次へボタンを押すことで、登録が完了する。指定の順番で電極交換が実施されるため、誤って設置することを防止することができ、再調整の時間を削減することができる。
図5では、交換部品のみを1つずつ表示したが、
図6のように個々の使用状況画面を一画面に表示しても良い。イオン選択性電極17のように、複数の部品により構成される場合には、一画面に複数部品の有効期限や使用可能回数等の使用状況が表示される。さらに、この画面には、電極の組み合わせや配置順等の位置関係も表示されている。これにより、使用状況、配置箇所が一目で分かるため、交換作業を円滑に進めることができる。一画面で表示する場合、電極の組み合わせ、順番、使用状況が一目でわかるため、複数のID読取作業を纏めて実施することも可能となる。
【実施例2】
【0026】
識別装置16を用いたキャリブレーションのガイダンスについて
図7を用いて説明する。このキャリブレーションは実施例1で説明した消耗品交換時のキャリブレーションも含む。検体投入部から分析部へ搬送する経路上に設置された一次元バーコードリーダでラックに設置されたキャリブレータIDを読取っている。読取り内容によって、制御部15はキャリブレータが必要となるそれぞれの分析装置に当該ラックを搬送する。
【0027】
分析装置によっては、ラック8の搬送方向が一方向のみになっている。この場合、キャリブレータの順番が適切でない場合は、意図した順番でキャリブレータを分注できないため、当該ラックを回収部に戻すことになる。そのため、適切な順番にラックにキャリブレータを並べる必要がある。画面から特定項目のキャリブレーションを選択するかキャリブレーションガイダンスが開始すると、二次元バーコードが読取可能な状態になる。ユーザがキャリブレータID21を識別装置16にかざすと、表示部14に必要なキャリブレータ20のセットと、読取りしたキャリブレータ20の設置位置が表示される。ユーザは、キャリブレータ20をラックの指定位置に設置することができるため、誤操作による再測定を防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
1:自動分析装置
2:分析ユニット
3:搬送ユニット
4:制御装置
5:検体ラック
6:検体容器
7:検体分注機構
8:試薬収納部
9:試薬分注機構
10:測定ユニット
11:搬送ライン
12:収納エリア
13:表示部
14:記憶部
15:制御部
16:識別装置
17:イオン選択性電極
18:包装
19:識別情報
20:キャリブレータ
21:キャリブレータID