(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の自動分析装置および自動分析システムの実施例を、図面を用いて説明する。
【0017】
<実施例1>
本発明の自動分析装置および自動分析システムの実施例1について
図1乃至
図9を用いて説明する。
【0018】
最初に、本実施例1の自動分析システムの全体構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る自動分析システムの全体構成を概略的に示す図である。
【0019】
図1における自動分析システム(100)は、搬送ユニット(101)と、分析ユニット(111)と、操作ユニット(130)と、から構成される。
【0020】
搬送ユニット(101)は、分析対象である血液や尿などの生体試料を収容した一つ以上の検体容器が搭載された検体ラック(104)を自動分析システム(100)内への投入、回収、および、自動分析システム(100)内での搬送を行い、分析ユニット(111)に試料を供給するためのユニットである。
【0021】
搬送ユニット(101)は、ラックバッファ(103)、ラック供給トレイ(102)、ラック収納トレイ(107)、搬送ライン(106)、搬送ユニット用制御CPU(105)を備えている。
【0022】
搬送ユニット(101)では、ラック供給トレイ(102)に設置された検体ラック(104)は、搬送ライン(106)によってラックバッファ(103)に搬送される。搬送ライン(106)の途中には試料有無判定用センサ(図示省略)があり、検体ラック(104)上の試料容器の有無が認識される。ここで試料容器が存在すると判断されれば、試料バーコードリーダー(図示省略)によって試料容器上に貼り付けられた試料バーコード(図示省略)を読み取り、試料の識別情報を認識する。実際のシステムでは、この識別情報によって、患者を特定する。
【0023】
ラックバッファ(103)は、円運動を行うローター構造であり、外円周上に試料容器を複数載置する検体ラック(104)を同心円上に放射的に複数保持するスロットを有している。このスロットをモータによって回転させることで、任意の検体ラック(104)を要求先に搬入・搬出するように構成されている。このような構造により、必ずしも先に入れられた検体ラック(104)を順に処理する必要がなくなっている。つまり、優先度の高いものがあれば、それを先に処理することが出来るようになっている。
【0024】
このラックバッファ(103)の放射状の円周上のある一点に搬送ライン(106)が接続されており、検体ラック(104)の搬入,搬出が行われる。この一点を円周上の0度の位置とすると、搬送ライン(106)が接続された位置から円周上の90度の位置に後述する分析ユニット(111)へ引き込むための試料分注ライン(112)が接続されており、検体ラック(104)の搬入,搬出が行われる。
【0025】
分析ユニット(111)で分注の終えた検体ラック(104)は、ラックバッファ(103)内で測定結果の出力を待機し、必要に応じて自動再検等の処理をすることもできる。また、処理の終えた場合は、搬送ライン(106)を介してラック収納トレイ(107)に搬送される。
【0026】
搬送ユニット用制御CPU(105)は、後述する分析ユニット(111)の分析ユニット用制御CPU(120)からの搬送要求信号に基づいてラックバッファ(103)から試料分注ライン(112)へ適切な検体ラック(104)を搬送する動作や、試料分注ライン(112)からラックバッファ(103)へ検体ラック(104)を戻す動作の制御を実行する部分であり、試料を分析ユニット(111)に対して搬送するための搬送動作を制御する。
【0027】
分析ユニット(111)は、試料に依頼された測定項目の測定動作を行い、測定結果を出力するユニットである。分析ユニット(111)は、搬送ユニット(101)に接続されている。
【0028】
分析ユニット(111)は、反応ディスク(115)、試薬ディスク(117)、試料分注ライン(112)、試薬分注プローブ(116)、試料分注プローブ(113)、生化学測定部(118)、電解質測定部(114)、分析ユニット用制御CPU(120)を備えている。
【0029】
反応ディスク(115)には反応容器(図示省略)が円周上に並んでいる。反応ディスク(115)の近くには試料容器を載せた検体ラック(104)が搬入される試料分注ライン(112)が設置されている。
【0030】
反応ディスク(115)と試料分注ライン(112)の間には、回転および上下動可能な試料分注プローブ(113)が設置されている。試料分注プローブ(113)は回転軸を中心に円弧を描きながら移動して検体ラック(104)から反応容器への試料の分注を行う。
【0031】
試薬ディスク(117)は、その中に試薬を収容した試薬ボトル(図示省略)を複数個円周上に載置可能となっている保管庫である。試薬ディスク(117)は保冷されている。
【0032】
反応ディスク(115)と試薬ディスク(117)の間には回転および上下動可能な試薬分注プローブ(116)が設置されている。試薬分注プローブ(116)は回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、試薬分注プローブ吸引口から試薬ディスク(117)内にアクセスし、試薬ボトルから反応容器への試薬の分注を行う。
【0033】
更には、試薬分注プローブ(116)、試料分注プローブ(113)の動作範囲上に洗浄槽(図示省略)がそれぞれ設置されている。
【0034】
反応ディスク(115)の周囲には、更に、電解質測定部(114)および生化学測定部(118)が配置されている。
【0035】
電解質測定部(114)は、イオン選択電極を用いて試料中の電解質濃度を測定する分析部である。電解質測定部(114)には、測定に必要な試薬ボトル(119)が試薬ディスク(117)とは別にチューブ(図示省略)により接続されており、このチューブの流路を通じて電解質測定部(114)に試薬が運ばれる。
【0036】
生化学測定部(118)は、反応ディスク(115)上の反応容器内で混合・反応させて生成された反応液の吸光度を測定して試料中の生化学成分の分析を行う分析部であり、光源や分光光度計等からなる。
【0037】
分析ユニット(111)内に配置された分析ユニット用制御CPU(120)は、上述された分析ユニット(111)内の各機器に接続されており、その動作を制御する。
【0038】
特に本実施例の分析ユニット用制御CPU(120)では、生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)(ともに
図2参照)を、互いに独立して動作させる。これらの動作の詳細は
図2以降を用いて後ほど詳しく説明する。
【0039】
図1に戻り、操作ユニット(130)は、自動分析システム(100)全体の全てのユニットの情報を統括する役割を担う部分であり、表示部(131)と、入力部(132)と、記憶部(133)と、全体制御部(134)と、から構成されている。操作ユニット(130)は、分析ユニット(111)や搬送ユニット(101)に対して有線或いは無線のネットワーク回線によって接続されている。
【0040】
表示部(131)は、測定する試料に対して測定する測定項目をオーダーする操作画面、測定した結果を確認する画面、等の様々な画面が表示される部分であり、液晶ディスプレイ等で構成される。
【0041】
入力部(132)は、表示部(131)に表示された操作画面に基づいて各種パラメータや設定、測定結果、測定の依頼情報、分析開始や停止の指示等を入力するための部分であり、キーボードやマウスなどで構成される。
【0042】
記憶部(133)は、自動分析システム(100)内の動作に必要なタイムチャートや動作パラメータ、生体試料に関係する各種情報を記憶する部分であり、フラッシュメモリ等の半導体メモリやHDD等の磁気ディスク等の記憶媒体で構成される。この記憶部(133)に記憶されているタイムチャートの詳細は後述する。
【0043】
次に、
図1に示す自動分析システム(100)の機構動作の概略を説明する。
【0044】
搬送ユニット(101)は、自動分析システム(100)のラック供給トレイ(102)に設置した検体ラック(104)を1ラックずつ搬送ライン(106)上に送り出し、ラックバッファ(103)に搬入する。ラックバッファ(103)に搬送された検体ラック(104)は、分析ユニット(111)の試料分注ライン(112)に搬送される。
【0045】
試料分注ライン(112)に検体ラック(104)が到着すると、検体ラック(104)に搭載された各試料に対して、操作ユニット(130)により依頼された測定項目に従い、試料分注プローブ(113)により分注動作が実施される。
【0046】
測定項目が生化学項目の場合には、試料分注プローブ(113)は、吸引した試料を反応ディスク(115)上にある反応容器に吐出し、その反応容器に対して試薬分注プローブ(116)により試薬ディスク(117)上から吸引した試薬をさらに添加し、攪拌する。その後、生化学測定部(118)により吸光度が測定され、測定結果が操作ユニット(130)に送信される。
【0047】
依頼された測定項目が電解質項目の場合には、試料分注プローブ(113)は、吸引した試料を電解質測定部(114)上に吐出し、電解質測定部(114)により起電力が測定され、測定結果が操作ユニット(130)に送信される。ただし、電解質項目測定の場合は、後述するとおり、試料の分注前に既知の濃度の内部標準液の起電力の測定を行う測定前動作が必要である。
【0048】
操作ユニット(130)は、送信された測定結果から演算処理によって試料内の特定成分の濃度を求める。
【0049】
上述した一連の動作のうち、搬送ユニット(101)の搬送動作については、搬送ユニット用制御CPU(105)で制御し、分析ユニット(111)の分析動作については、分析ユニット用制御CPU(120)で制御する。
【0050】
次に、分析ユニット(111)内の各機器の動作の制御の詳細について
図2以降を用いて説明する。
図2に、本実施例の分析ユニット(111)内の各部の分類と、各分析ユニットにおけるタイムチャートの概略を示す。
【0051】
図2に示すように、本実施例に係る自動分析システム(100)の分析ユニット(111)は、主として、生化学分析ユニット(201)、電解質分析ユニット(211)、共通ユニット(221)の3つに分類される。
【0052】
生化学分析ユニット(201)は、反応ディスク(115)、試薬分注プローブ(116)、生化学測定部(118)を含み、生化学分析のみに必要な機構から構成される。
【0053】
電解質分析ユニット(211)は、電解質測定部(114)、チューブ、チューブによって電解質測定部(114)に接続された試薬ボトル(119)を含み、電解質分析のみに必要な機構から構成される。
【0054】
共通ユニット(221)は、試料分注プローブ(113)、試料分注ライン(112)を含み、生化学分析および電解質分析のどちらの分析にも必要な、試料を供給する動作を実行する機構から構成される。
【0055】
これら生化学分析ユニット(201)、電解質分析ユニット(211)、共通ユニット(221)は、操作ユニット(130)の記憶部(133)に記憶されたタイムチャートに基づいて互いに独立して動作する。
【0056】
そのために、各ユニット内における構成部品単位で、それぞれの構成部品を駆動するモータに対して、いつ動作開始させるか、どのくらいの時間動作させるか等の条件を設定したタイムチャート(302,312,314,322)(
図3乃至
図6参照)を用いる。
【0057】
本実施例では、タイムチャートを上述した3つのユニット単位の分類に合わせた3通りの分類、
図3に示すような生化学分析ユニット(201)の測定用タイムチャート(302)と、
図4に示すような電解質分析ユニット(211)の測定用タイムチャート(312)、
図5に示すような共通ユニット(221)の測定用タイムチャート(322)とする。
【0058】
これら
図3乃至
図5に示すように、各分析ユニットは記憶されたタイムチャートのうちの測定用タイムチャート(302,312,322)を使用して動作し、測定を実行する。測定用タイムチャート(302,312,322)の最後まで動作すると最初に戻り繰り返し動作する。
【0059】
なお、
図3は生化学分析ユニットの測定用タイムチャートと停止ポイントの一例を、
図4は電解質分析ユニットの測定用タイムチャートと停止ポイントの一例を、
図5は共通ユニットの測定用タイムチャートと停止ポイントの一例を示す図である。
【0060】
各ユニット内の構成部品は、それぞれ対応するモータについて作成されたこれらのタイムチャートに基づいて動作する。例えば、生化学分析ユニット(201)であれば、反応ディスク(115)、試薬分注プローブ(116)単位となる。
【0061】
また、タイムチャートは、各ユニットにおける目的の異なる動作モード毎にも個別に設定しておく。例えば、電解質分析ユニット(211)を例にすると、
図4に示すような測定用タイムチャート(312)と、
図6に示すようなメンテナンス用、例えば試薬プライム用タイムチャート(314)とを個別に設定する。なお、試薬プライムとは、試薬ボトル(119)から電解質分析ユニット(211)までの試薬流路を新しい試薬で満たすための動作のことを言う。
【0062】
なお、
図6は電解質分析ユニットの試薬プライム用タイムチャートと停止ポイントの一例を示す図である。
【0063】
設定された生化学分析ユニット(201)、電解質分析ユニット(211)、共通ユニット(221)毎に異なる目的の動作のタイムチャート(302,312,314,322)は、操作ユニット(130)の記憶部(133)に記憶される。その上で、自動分析システム(100)の起動時に分析ユニット用制御CPU(120)のメモリに操作ユニット(130)の記憶部(133)から読み込み、メモリ(図示省略)等に記憶される。
【0064】
以上、分析ユニット(111)中の全てのユニットが測定、あるいはメンテナンスを行う場合のタイムチャートについて説明した。
【0065】
ここで、自動分析システム(100)による測定時に、消耗品、例えば電解質用の試薬がなくなった時や、動作機構の故障、トラブル等で測定動作が継続できなくなる場合がある。
【0066】
この場合に、生化学分析ユニット(201)や電解質分析ユニット(211)のうち、いずれか一つを止めて、他のユニットと共通ユニット(221)とにより測定を継続することができれば、分析効率をさらに向上させることができる。
【0067】
例えば、電解質分析用の試薬のみがなくなった場合はユーザが電解質分析ユニット(211)の分析のみを中断して試薬ボトル(119)の交換をすることが望まれる。この場合は、ユーザは、操作ユニット(130)の入力部(132)あるいは表示部(131)のタッチパネル等を介して電解質分析ユニット(211)を指定して電解質分析ユニット(211)のみを止める停止指示をする。
【0068】
また、動作機構の故障、トラブル等の場合には、自動分析システム(100)自身が対象の分析ユニットの動作を止める。
【0069】
これらの停止指示により停止させるユニットは、電解質分析ユニット(211)だけではなく、生化学分析ユニット(201)でも共通ユニット(221)に対しても可能である。
【0070】
このような停止を実現するために、
図3乃至
図6に示すように、各タイムチャート(302,312,314,322)に、対象のユニット内の機器の動作を停止させるタイミングである停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)を少なくとも1つ以上設けておく。
【0071】
この停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)は、分析ユニット(111)内で動作する各機器が互いに物理的に干渉しないタイミング、例えば、該当ユニットが停止しても、動作中の他のユニットの動作に影響しない箇所、機器と機器とが接触していない箇所、などの各機器に負荷がかからない箇所を考慮して設定することが望ましい。
【0072】
また、停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)は、対象ユニット内の動作機器が全てOFFのタイミングに設定することが望ましい。
【0073】
また、停止ポイントは、
図4や
図6に示すように、一つのタイムチャート内で2つ以上設けることができる。
【0074】
例えば、
図4に示す電解質分析ユニット測定用タイムチャート(312)のように、他のユニットに影響しない箇所等を考慮した停止ポイント(313a,313b)が設定されている。また、
図6に示すように、試薬プライム用タイムチャート(314)においても、停止ポイント(315a,315b)が2つ設定されている。
【0075】
電解質分析ユニット(211)が停止指示された場合は、動作中の電解質分析ユニット測定用タイムチャート(312)の最初に到達する停止ポイントで停止する。これにより余分な動作が実行されることを抑制し、試薬などの消耗品の消費を抑えることができる。
【0076】
例えば、
図7では、停止指示タイミング(521)で停止指示をされた場合、停止指示タイミング(521)前の停止ポイント(313c)ではなく、停止指示タイミング(521)後に最初に到達する停止ポイント(313d)で電解質分析ユニット測定用タイムチャート(312)の動作を停止し、電解質分析ユニット(211)自体の動作を停止する。
図7に示すように、実際には、各モータは停止ポイント(313d)に到達するとOFFとなり、その動作を停止する。
【0077】
なお、
図7は停止ポイント到達前と到達後の電解質分析ユニットの各機器の動作の状態を説明する図である。
【0078】
また、停止指示タイミング(521)の後に停止ポイントが存在せずにタイムチャートが終了するときは、そのタイムチャートを繰り返すことなく終了して停止することが望ましい。
【0079】
この際、電解質分析ユニット(211)のみを止めることで、動作中の生化学分析ユニット(201)や共通ユニット(221)へ影響がないようにし、生化学分析ユニット(201)と共通ユニット(221)を使用して生化学の分析を継続することができる。
【0080】
電解質分析ユニット(211)が停止した後で、ユーザは、分析開始に必要な処置をとる。たとえば、電解質分析用の試薬不足の場合、電解質の試薬ボトル(119)を新品に交換し、ユーザは試薬ボトル(119)を交換する。その後で必要なメンテナンスを実行する。
【0081】
必要なメンテナンスとは、例えば試薬ボトル(119)から電解質分析ユニット(211)までの試薬流路を新しい試薬で満たすための試薬プライムのメンテナンスがある。試薬プライムは試薬流路を試薬で満たせばよく、測定は不要である。そのため、上述のように測定用のタイムチャートよりも多くの試薬を吸引する等、試薬プライムに特化した専用のタイムチャート(314)を用意している。
【0082】
その上で、分析ユニット用制御CPU(120)は、電解質分析ユニット(211)は試薬プライム用タイムチャート(314)で動作させる。これに対し、分析ユニット用制御CPU(120)は、生化学分析ユニット(201)と共通ユニット(221)とは、測定用タイムチャート(302,322)を参照してそのまま測定動作を継続させる。これにより、電解質分析ユニット(211)は試薬プライムを行いつつ、試料の分析を継続させることができる。
【0083】
また、自動分析システム(100)による測定中には、Reset動作などの、電解質分析ユニット(211)だけでは実施できず、生化学分析ユニット(201)や共通ユニット(221)も使用することが必要なメンテナンスを行うタイミングが存在する。
【0084】
このような複数のユニットを使用するメンテナンスの動作可否を確認するためには、動作可否判断を行うことが望ましい。以下、
図8および
図9を用いてこの判断に必要な構成とその処理の詳細について説明する。
図8は同時動作の可否のテーブルの一例を示す図、
図9は同時動作の可否判定用のテーブルの一例を示す図である。
【0085】
異なる生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)、共通ユニット(221)間で同時に実行可能な動作を判断するために、
図8に示すような同時動作可否テーブル(601)や、
図9に示すような同時動作可否判定テーブル(603)が操作ユニット(130)の記憶部(133)に記憶されている。
【0086】
たとえば、
図8に示すように、同時動作可否テーブル(601)には、実施したい動作項目ごとに、各分析ユニットの動作が必要であるか否かがまとめられている。
【0087】
例えば、オペレーションモード2で動作中にReset動作を実施する場合について考える。この場合、同時動作可否テーブル(601)のReset動作判定用テーブル(611)を確認すると、生化学分析ユニット(201)、電解質分析ユニット(211)、共通ユニット(221)の全てを動作させる必要があることがわかる。このことから、いずれかのユニットが他の動作をしている場合には、Reset動作をすることができないことがわかる。
【0088】
また、オペレーションモード2で動作中に、電解質分析用の試薬の試薬プライム操作を実施する場合について考える。この場合も、同様に同時動作可否テーブル(601)の試薬プライム動作判定用テーブル(612)を確認すると、生化学分析ユニット(201)と共通ユニット(221)は動作が不要であること、そして電解質分析ユニット(211)のみの動作が必要であることがわかる。このことから、電解質分析ユニット(211)の試薬プライム動作が、他の分析ユニットに独立して同時に動作可能なことがわかる。
【0089】
言い換えると、自動分析システム(100)がオペレーションモード2を実施中の場合、オペレーションモード2判定用テーブル(613)を確認すると、電解質分析ユニット(211)は動作していないため、試薬プライム動作との同時実行が可能と判断することができる、といえる。
【0090】
これらの関係をまとめたのが、
図9に示す同時動作可否判定テーブル(603)である。
【0091】
この
図9に示すように、これから実行しようとする動作がReset動作やオペレーションモード1である場合、
図8や
図9で具体的に例示している動作の中では、他の動作との平行動作は基本的には実施できないことが分かる。また、Cell Blank動作である場合は、試薬プライムやオペレーションモード3であれば平行動作が可能であることが分かる。
【0092】
分析ユニット用制御CPU(120)は、様々な動作項目を実行する際には、各分析ユニットの動作が必要か否かに関する同時動作可否判定テーブル(603)や同時動作可否テーブル(601)を操作ユニット(130)の記憶部(133)から取得する。その後、実施したい動作項目について、取得したテーブルにまとめられた情報に基づいて分析ユニットごとに同時に動作できるかどうかを判定し、適宜必要なタイムチャートを記憶部(133)から取得して実行する。
【0093】
分析ユニットごとに同時に動作できないと判定されたときは、干渉するユニットのタイムチャートを参照して最初に停止ポイントに到達した時点で停止し、必要な動作に移行することができる。なお、最初に停止ポイントに到達する時点で停止する場合に限られず、現在動作中のタイムチャートが終了するまで待機しても構わない。
【0094】
分析ユニット(111)全体としてメンテナンスをする場合には、各ユニットが必要なメンテナンス用タイムチャートに従って動作することでメンテナンスを実施する。
【0095】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0096】
上述した本実施例の自動分析システム(100)は、試料の分析を行う、生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)と、生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)の動作を制御する、1つの分析ユニット用制御CPU(120)と、生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)毎に異なる目的の動作のタイムチャート(302,312,314,322)を記憶する記憶部(133)と、を備え、2つ以上の生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)は、記憶部(133)に記憶されたタイムチャート(302,312,314,322)に基づいて互いが独立して動作する。
【0097】
これによって、生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)を1つの分析ユニット用制御CPU(120)で動作制御している分析ユニット(111)において、一方では分析動作を行い、他方では消耗品交換などのメンテナンス動作を行う、といった異なる動作を同時に行うことができる。これにより、分析を継続している一方の分析ユニットのスループットが落ちることなく、分析の処理能力を向上することができる。
【0098】
また、記憶部(133)には、異なる生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)間で同時に実行可能な動作を判断するための同時動作可否テーブル(601),あるいは同時動作可否判定テーブル(603)が記憶されているため、異なる目的の動作に移行する際に、移行によって自動分析システム(100)内や分析ユニット(111)内に各機器の干渉などの不具合が生じるか否かを予め判定することができる。このため、自動分析システム(100)内や分析ユニット(111)内で故障などの問題が生じることを抑制することができ、分析処理能力の更なる向上を図ることができる。
【0099】
更に、分析ユニット毎に異なる目的の動作のタイムチャートによって独立して動作させることの効果は、2以上の生化学分析ユニット(201),電解質分析ユニット(211)に対して試料を供給する1つの共通ユニット(221)を更に備え、記憶部(133)は、共通ユニット(221)用の異なる目的の動作のタイムチャート(322)を記憶している場合により顕著に得られる。
【0100】
また、タイムチャート(302,312,314,322)には、対象のユニット内の機器の動作を停止させるタイミングである停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)が設けられていることにより、一連のタイムチャートの終了を待つことなく対象のユニットの動作を停止することができ、速やかに次の動作へ移行することが可能となる。従って、分析処理能力の更なる向上を図ることができる。
【0101】
更に、タイムチャート(302,312,314,322)に定められた停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)は、1つのタイムチャート(302,312,314,322)内に2以上設けられていることで、停止するタイミングをより多く確保することができ、必要な動作への移行をより早めることができる。
【0102】
また、停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)は、分析ユニット(111)内で動作する各機器が互いに物理的に干渉しないタイミングに設定されていることにより、該当ユニットのみ停止しても、動作中の他のユニットの動作が継続可能であり、オペレーションをより安定して継続することができる。
【0103】
更に、停止ポイント(303a,313a,313b,323a,315a,315b)は、対象ユニット内の動作機器が全てOFFのタイミングに設定されていることで、対象ユニット内の機器が動いている際に不意に停止することを防止することができ、停止する機器への負荷を軽減することができる。
【0104】
なお、本実施例では、
図1の分析ユニット(111)は、生化学項目を測定する生化学測定部(118)と電解質項目を測定する電解質測定部(114)とを一つの分析ユニット(111)に集約した装置を例として記載した。しかし、特にこのような構成に限られず、どのような測定項目を測定する測定ユニットであっても、独立して動作可能な2以上の測定ユニットが配置された分析ユニットであれば本発明を適用することができる。例えば、分析ユニット(111)内に生化学測定部(118)を2つ以上備える場合においても、本発明は有効である。
【0105】
また、ラックバッファ(103)の一方側にのみ分析ユニット(111)が接続された構成について説明したが、
図1に示す自動分析システム(100)は一例に過ぎない。例えば、
図1に示す自動分析システム(100)のラックバッファ(103)の他方側にも他の分析ユニット(例えば、分析ユニット(111)と同等の分析装置や免疫分析装置等)を接続することか可能である。
【0106】
更には、搬送ユニット(101)を省略して分析ユニット(111)と操作ユニット(130)とで構成された自動分析装置に本発明を適用することができる。
【0107】
<実施例2>
本発明の実施例2の自動分析装置および自動分析システムについて
図10を用いて説明する。なお、実施例1と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
【0108】
本実施例の自動分析システムは、実施例1の自動分析システム(100)に加えて、分析動作に必要な試薬交換やメンテナンスが終了したあとに、各分析ユニットが分析動作に復帰するための構成を備えている。以下その構成の詳細について
図10を参照して説明する。
図10は、各分析ユニットが分析動作に復帰した場合のタイムチャートの例および動作開始ポイントと他の分析ユニットとの同期可能ポイントの一例を示す図である。
【0109】
上述のように、分析動作に必要な試薬交換やメンテナンスが終了したあとは、ユーザが操作ユニット(130)の入力部(132)を介して電解質分析ユニット(211)の停止指示を解除することで、電解質分析ユニット(211)を分析動作に復帰させることができる。
【0110】
しかし、生化学分析ユニット(201)と共通ユニット(221)の動作状況を考慮せずに、単に電解質分析ユニット(211)を分析動作に復帰させる場合を考える。
【0111】
この場合、生化学分析ユニット(201)、共通ユニット(221)との動作の同期が考慮されていないため、タイミングによっては各機器がぶつかってしまうおそれがある。
【0112】
また、電解質分析ユニット(211)では、共通ユニット(221)によって分注された試料の電解質を分析する前に、内部標準液の起電力を測定する必要がある。
【0113】
しかし、電解質分析ユニット(211)と共通ユニット(221)の同期がとれていない場合、共通ユニット(221)が試料を電解質分析ユニット(211)に分注した後に、分注された試料と混ざった内部標準液の起電力を電解質分析ユニット(211)が測定する、といった事態が生じる恐れがある。また、この場合は、電解質分析ユニット(211)は試料がないまま試料測定動作を実行することになる。
【0114】
そのため、必要な事前測定と本測定とのいずれもが不正確な測定となり、測定結果が正常に出力されないことになる。
【0115】
このような同期については、生化学分析ユニット(201)と共通ユニット(221)を動かしているタイムチャートを繰り返し動作させずに終了した時点で止めておき、全てのユニットで一斉にタイムチャートを再開することによって抑制することが出来る。これは上述した実施例において有効な方法である。しかし、それではタイムチャートが終了してから再開するまでの時間を削減する余地が残ることになり、より分析処理能力の向上を図る余地があることになる。
【0116】
本実施例では、そのような分析処理能力の更なる向上を図るために、
図10に示すように、生化学分析ユニット測定用タイムチャート(302)や共通ユニット測定用タイムチャート(322)に他のタイムチャート(712)が動作を開始することが可能なタイミングである同期可能ポイント(703,723)を設ける。同様に、電解質分析ユニット測定用タイムチャート(712)にも、電解質分析ユニット(211)の測定動作を開始するタイミングである動作開始ポイント(713)を設ける。
【0117】
なお、
図10では、電解質分析ユニット(211)の測定動作を再開させる場合を示している。
【0118】
これら同期可能ポイント(703,723)や動作開始ポイント(713)が設定されたタイムチャート(302,322,712)は、操作ユニット(130)の記憶部(133)に記憶しておく。
【0119】
動作開始ポイント(713)は、停止していた電解質分析ユニット(211)が動作を再開してもよい箇所に設定する。また、同期可能ポイント(703,723)はこのタイミングで電解質分析ユニット(211)が動作開始ポイント(713)から分析動作を開始しても、機構がぶつからない位置や分析が正常な順序で動作する位置にタイムチャート上に設定する。
【0120】
従って、同期可能ポイント(703,723)は、各々生化学分析ユニット(201)や共通ユニット(221)の動作開始ポイントとなり、動作開始ポイント(713)は電解質分析ユニット(211)における同期可能ポイントである、といえる。
【0121】
これら同期可能ポイント(703,723)や動作開始ポイント(713)は、測定用タイムチャートのみならず、他の異なる目的の動作用のタイムチャートにも設けることが望ましい。
【0122】
図10では、動作開始ポイント(713)は電解質分析ユニット(211)の分析動作の開始点に設定しているが、これに限られず、分析ユニット(111)内で動作する各機器が互いに物理的に干渉しないタイミングに適宜設定することができる。
【0123】
現在分析動作している生化学分析ユニット(201)の同期可能ポイント(703)と共通ユニット(221)の同期可能ポイント(723)は、既に同期して動作している。このため同じ動作タイミング上にある。生化学分析ユニット(201)と共通ユニット(221)の動作タイミングが同期可能ポイント(703,723)に到達したときは、電解質分析ユニット(211)を分析動作させても既述した機構のぶつかり、分析動作の順番が正常にならない問題は発生しない。
【0124】
そこで、分析ユニット用制御CPU(120)は、この同期可能ポイント(703,723)に動作が到達した時点で、電解質分析ユニット(211)を電解質分析ユニット測定用タイムチャート(712)の動作開始ポイント(713)から動作させる。これにより、各ユニット間の同期をとることができ、機構のぶつかりや分注順番の誤り等の問題を回避し、分析動作に復帰させる。
【0125】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自動分析装置および自動分析システムと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0126】
本発明の実施例2の自動分析装置および自動分析システムにおいても、前述した実施例1の自動分析装置および自動分析システムとほぼ同様な効果が得られる。
【0127】
また、タイムチャート(302,322,712)には、各タイムチャート(302,322,712)間の同期をとり、他のタイムチャート(712)が動作を開始するタイミングである同期可能ポイント(703,723)が設けられている。これにより、例えばメンテナンスを実施した分析ユニットを分析動作に復帰させる場合に、分析を継続している分析ユニットと同期を取ることができるため、分析ユニット間で分注機構等の機構がぶつかるといった不具合が発生する恐れを防止することができる。すなわち、継続中のオペレーションに復帰する際に分析を継続している他の分析ユニットを停止させる必要がないため、分析能力の更なる向上を図ることができる。
【0128】
更に、同期可能ポイント(703,723)や動作開始ポイント(713)は、分析ユニット(111)内で動作する各機器が互いに物理的に干渉しないタイミングに設定されていることで、分析ユニット間で機構のぶつかり等を回避することが可能になり、分析処理能力の更なる向上を図ることができる。
【0129】
なお、同期可能ポイントや動作開始ポイントはメンテナンスを実施した分析ユニットを分析動作に復帰させる際に利用する場合に限られず、あるユニットが異なる目的の動作に移行する際、すなわち異なる目的の動作のタイムチャートに移行する場合にも好適に利用することができる。
【0130】
あるユニットが異なる目的の動作に移行する状態は、それまで他のユニットの各機器と干渉せずに動作していた状態から、干渉する可能性がある状態に移行することになる。
【0131】
このような場合に、現在動いているタイムチャートを繰り返し動作させずに終了した時点で止めておいて全てのユニットで一斉にタイムチャートを再開することも考えられる。しかし、上述のように待ち時間が生じるため、処理能力の向上の余地が残る。
【0132】
そこで、あるユニットが異なる目的の動作に移行する際にも、同期可能ポイントや動作開始ポイントを利用することで、システム内の各機器の干渉を避けながら、各ユニットに求められる目的の動作に速やかに移行することができ、分析処理能力を最大限に向上させることができる。
【0133】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。