(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成方法、画像形成装置及び印刷物の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明は、非浸透性基材上に画像を形成する画像形成方法であって、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む表面処理用組成物を前記非浸透性基材上に付与する工程と、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む非白色インクを付与する工程と、水、水溶性有機溶剤、ウレタン樹脂粒子及び白色の着色剤を含む白色インクを付与する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記の表面処理用組成物と非白色インクと白色インクを組み合わせて用いることで、非浸透性基材との密着性に優れ、高いラミネート強度が得られる。これは、表面処理用組成物中のウレタン樹脂粒子が非浸透性基材との強い密着性を有し、非白色インクと白色インクにもウレタン樹脂粒子を含有させることで、インク層間に高い密着性が生まれ、高いラミネート強度が得られることによる。
以下、詳細を説明する。
【0013】
(表面処理用組成物)
前記表面処理用組成物は、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
<ウレタン樹脂粒子>
表面処理用組成物がウレタン樹脂粒子を含むことにより、非浸透性基材及びインク層との高い密着性と高いラミネート強度を得ることができる。
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応性生物である。ポリウレタン樹脂の特徴として、凝集力が弱いポリオール成分からなるソフトセグメントと、凝集力の強いウレタン結合からなるハードセグメントのそれぞれの性能を発揮することが挙げられる。ソフトセグメントはやわらかく、引き伸ばしや折り曲げなど基材の変形に強い。一方、ハードセグメントは基材に対する密着性が高く、耐摩耗性に優れている。
【0015】
ウレタン樹脂の種類としては、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。
表面処理用組成物中に含有するウレタン樹脂粒子の種類としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の目的とする密着性とラミネート強度の観点から、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールからなるポリエステル系ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0016】
これらの樹脂からなる樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、有機溶剤などの材料と混合して表面処理用組成物を得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0017】
前記ウレタン樹脂粒子のガラス転移温度Tgは25℃以下であることが好ましく、下限値については特に限定されるものではないが、−30℃以上が好ましい。Tgが25℃以下の場合、樹脂の成膜性が向上し、充分な柔軟性も担保されるため基材密着性が強固なものとなり好ましい。
前記ウレタン樹脂粒子のTgはDSC(リガク社製Thermo plus EVO2/DSC)により測定することができる。
【0018】
添加量は表面処理用組成物の総量に対して固形分として0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。0.5質量%以上の場合、樹脂が充分に基材を被覆することができるため密着性が向上し、20質量%以下の場合、膜厚が厚くなりすぎないため密着性が低下しにくい。
【0019】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0020】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0021】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0022】
また、表面処理用組成物が有機溶剤として1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールのうちいずれかを含有する場合、樹脂の造膜性が向上し、さらに密着性が向上するので好ましい。
【0023】
<水>
表面処理用組成物中における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましい。
【0024】
<多価金属塩>
表面処理用組成物は多価金属塩を含んでもよい。多価金属塩はインク中の顔料を着滴後に速やかに凝集させ、カラーブリードを抑制するとともに、発色性を向上させる。
【0025】
多価金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物及びニッケル化合物、並びにこれらの塩(多価金属塩)等が挙げられる。
【0026】
これら多価金属化合物の中でも、顔料を効果的に凝集させることができるため、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、及びニッケル化合物からなる群より選択される一種以上が好ましく、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属がより好ましい。
なお、多価金属化合物はイオン性のものが好ましい。特に、上記多価金属化合物がカルシウム塩である場合、反応液の安定性がより良好となる。
【0027】
上記の多価金属化合物の具体例としては、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、潮解性による先塗り層(表面処理用組成物によって形成された層)の強度低下を防ぐ目的で酢酸カルシウムが好ましい。
【0028】
前記多価金属イオンの表面処理用組成物の全体に対する濃度は、0.05〜0.5モル/kgであるとき、特に優れた貯蔵安定性が得られるとともに、カラーブリードが抑えられるため好適である。
【0029】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH
4、NH
3CH
2CH
2OH、NH
2(CH
2CH
2OH)
2、NH(CH
2CH
2OH)
3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
表面処理用組成物中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0031】
<その他の添加剤>
その他の添加剤としては、例えば消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤などが挙げられる。
【0032】
<<消泡剤>>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0033】
<<防腐防黴剤>>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0034】
<<防錆剤>>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0035】
(非白色インク及び白色インク)
次に、本発明における非白色インク及び白色インクについて説明する。
前記非白色インクは水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含み、前記白色インクは水、水溶性有機溶剤、ウレタン樹脂粒子及び白色の着色剤を含む。
以下、特に断りのない限り、「インク」と表記した場合には、非白色インクと白色インクとを区別せず、両者に共通する説明をするものである。
【0036】
<ウレタン樹脂粒子>
本発明におけるインクには、特にウレタン樹脂粒子を添加することにより、表面処理用組成物及びインク間の高い密着性が得られる。また、一般的にラミネート用の接着剤にはポリエステル系ウレタン樹脂が多用されており、この場合、インク中にウレタン樹脂を含有することにより接着剤とのなじみが良くなり、より高いラミネート強度が得られる。
【0037】
インク中に含有するウレタン樹脂粒子の種類としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、表面処理用組成物で挙げられるものを用いることができる。表面処理用組成物との密着性とラミネート用接着剤とのなじみの観点から、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールからなるポリエステル系ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
上述したように表面処理用組成物においてもポリエステル系ウレタン樹脂を用いることが好ましく、表面処理用組成物及びインクにおけるウレタン樹脂粒子がポリエステル系ウレタン樹脂からなることがより好ましい。この場合、密着性及びラミネート強度をより向上させることができる。
【0039】
ウレタン樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0040】
ウレタン樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0041】
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0042】
<水、有機溶剤>
インクに含まれる水及び有機溶剤は上述した表面処理用組成物と同様の構成とすることができる。
【0043】
<着色剤>
白色インクの白色度の基準としては、ISO−2469(JIS−8148)があり、一般的にはその値が70以上の場合、白色の着色剤として用いられる。
白色インクには中空構造を有する白色粒子を用いてもよく、中空構造を有する白色粒子としては、例えば中空樹脂粒子、無機中空粒子が挙げられる。
【0044】
中空樹脂粒子の樹脂組成としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、架橋型スチレン−アクリル樹脂等のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、マレイン系樹脂などが挙げられる。
【0045】
無機中空粒子の材質としては、例えば、白色を呈するシリコン、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、ジルコニウムなどの金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物、及び、各種ガラス、シリカ等の無機化合物が挙げられる。
【0046】
非白色インクとしては、例えば、カラーインク、黒色インク、灰色インク、クリアインク、メタリックインクなどが挙げられる。なお、前記クリアインクとは、着色剤を含まず、主に樹脂粒子、有機溶剤及び水からなるインクを意味する。
【0047】
前記カラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、レッドインク、グリーンインク、ブルーインク、オレンジインク、バイオレットインクなどが挙げられる。
【0048】
前記非白色インクは白色以外の着色剤を含んでいてもよく、前記非白色インクに用いられる着色剤としては、非白色を呈するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、染料、顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
これらの中でも、顔料が好ましい。前記顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
【0050】
前記無機顔料として、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。
その他、非白色インクにおいても中空樹脂粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0051】
前記顔料としては、黒色用としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
また、カラー用としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142;C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289;C.I.アシッドブルー9、45、249;C.I.アシッドブラック1、2、24、94;C.I.フードブラック1、2;C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173;C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227;C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202;C.I.ダイレクドブラック19、38、51、71、154、168、171、195;C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、249;C.I.リアクティブブラック3、4、35などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
メタリックインクに用いる着色剤としては、金属単体、合金、又は金属化合物を微粉砕してなる微粉末が挙げられる。より具体的には、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、銅、又はプラチナよりなる一群の金属単体のいずれか1種類若しくは複数よりなるものであって、又はこれらの一群の金属を組み合わせて得られる合金であってよい。また、これらの一群の金属単体若しくは合金の酸化物、窒化物、硫化物、又は炭化物のいずれか1種類若しくは複数、を微粉砕して得られるもの等が挙げられる。
【0055】
インク中の着色剤の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0056】
<<顔料分散体>>
着色剤に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
【0057】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得ることができる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、非白色インクにおける非白色顔料については、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、体積平均粒径が30〜110nmであることが好ましい。
また、高い分散安定性と高い白色度が得られる点から、白色インクにおける中空樹脂粒子については、平均体積粒径が200〜1000nmであることが好ましい。無機中空粒子については、高い分散安定性と高い白色度が得られる点から、平均体積粒径が10〜200nmであることが好ましい。
顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0059】
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0060】
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0061】
<その他の成分>
本発明におけるインクは表面処理用組成物と同様に、必要に応じて界面活性剤、その他添加剤などを添加してもよく、表面処理用組成物で述べた具体例を用いることができる。
【0062】
<インクの製造方法の例>
本発明におけるインクは、例えば前記構成成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して作製する。攪拌混合は、通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0063】
<インクの物性>
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
【0064】
(記録媒体)
本発明に用いる記録媒体(基材などとも称することがある)としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材に対して特に好適に用いることができる。
本発明における非浸透性基材とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する基材を指しており、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec
1/2までの水吸収量が10mL/m
2以下である基材を指す。
【0065】
前記非浸透性基材の中でも、特にポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ナイロンフィルム(ONYフィルム)等の樹脂フィルムに対して良好な密着性が得られる。
【0066】
前記ポリプロピレンフィルムの例としては、東洋紡社製P−2002、P−2161、P−4166、SUNTOX社製PA−20、PA−30、PA−20W、フタムラ化学社製FOA、FOS、FORなどが挙げられる。
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの例としては、東洋紡社製E−5100、E−5102、東レ製P60、P375、帝人デュポンフィルム社製G2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
前記ナイロンフィルムの例としては、東洋紡社製ハーデンフィルムN−1100、N−1102、N−1200、ユニチカ社製ON、NX、MS、NKなどが挙げられる。
【0067】
(画像形成方法及び画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、非浸透性基材上に画像を形成する画像形成方法であって、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む表面処理用組成物を前記非浸透性基材上に付与する工程と、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む非白色インクを付与する工程と、水、水溶性有機溶剤、ウレタン樹脂粒子及び白色の着色剤を含む白色インクを付与する工程と、を有することを特徴とする。
【0068】
本発明の画像形成装置は、非浸透性基材上に画像を形成する画像形成装置であって、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む表面処理用組成物を前記非浸透性基材上に付与する手段と、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む非白色インクを付与する手段と、水、水溶性有機溶剤、ウレタン樹脂粒子及び白色の着色剤を含む白色インクを付与する手段と、を有することを特徴とする。
【0069】
前記表面処理用組成物、非白色インク、白色インクは上述のものを用いることができる。また、表面処理用組成物、非白色インク、白色インクを付与する方法としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であるが、インクジェット記録方法が好ましく用いられる。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0070】
本発明の画像形成方法では、非浸透性基材を表面改質する工程(表面改質工程)を有することが好ましい。表面改質工程を行うことにより、表面処理用組成物を非浸透性基材に付与したときのムラを抑制することができ、密着性をより向上させることができる。
【0071】
表面改質としては、例えばコロナ放電処理、ストリーマ放電処理、大気圧プラズマ処理、フレーム処理、紫外線照射処理等が挙げられる。これらの処理方法は、公知の装置を用いて実施することができる。
【0072】
上記の処理方法の中でも、コロナ放電処理、ストリーマ放電処理が好ましい。これらは、大気圧プラズマ処理、フレーム処理、紫外線照射処理と比較して、放電の出力安定性に優れていることや、記録面に対して均一に表面処理が行えるということから、好ましく用いられる。
【0073】
本発明の画像形成方法では、インクを付与した後に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理を行うことにより、インク塗膜中の残留溶剤が減少し、密着性を更に向上させることができる。
【0074】
すなわち、本発明の画像形成方法は、非白色インクを付与した後に加熱処理を行う加熱処理工程(1)と、白色インクを付与した後に加熱処理を行う加熱処理工程(2)とを有していることが好ましい。加熱処理工程(1)と加熱処理工程(2)をともに有することがより好ましいが、どちらか一方であっても上記の効果が期待できる。
【0075】
前記加熱処理工程における加熱温度としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であるが、例えば50〜130℃が好ましい。また、前記加熱処理工程における加熱時間としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であるが、例えば1〜120秒が好ましく、1〜30秒がより好ましい。
【0076】
本発明の画像形成方法は、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に用いられる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0077】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。前処理装置により表面処理用組成物の付与を行い、後処理装置により白色インクの付与を行う構成としてもよい。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0078】
(印刷物の製造方法及び印刷物)
本発明の印刷物の製造方法は、非浸透性基材上に画像が形成された印刷物の製造方法であって、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む表面処理用組成物を前記非浸透性基材上に付与する工程と、水、水溶性有機溶剤及びウレタン樹脂粒子を含む非白色インクを付与する工程と、水、水溶性有機溶剤、ウレタン樹脂粒子及び白色の着色剤を含む白色インクを付与する工程と、を有することを特徴とする。
【0079】
本発明における印刷物の一例の断面図を
図3に示す。本実施形態における印刷物は、基材1上に、先塗り層2、非白色インク層3、白色インク層4がこの順で形成されている。先塗り層2は前記表面処理用組成物からなる層であり、非白色インク層3は前記非白色インクからなる層であり、白色インク層4は前記白色インクからなる層である。
【0080】
本実施形態の印刷物において、各層の厚みは特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、先塗り層2は0.1〜0.5μmが好ましく、非白色インク層3は0.5〜3μmが好ましく、白色インク層4は1〜4μmが好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、例中の「部」は「質量部」を表し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を表す。
【0082】
(ウレタン樹脂粒子エマルションの調製)
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルションAの調製>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を挿入した反応容器に、ポリライトOD−X−2420(DIC社製、ポリエステルポリオール)1,500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g、及びN−メチルピロリドン(NMP)1,347gを窒素雰囲気下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次いで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g、及びジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、さらにトリエチルアミン149gを添加・混合したものの中から4,340gを抜き出して、強撹拌下、水5,400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。
次いで、氷1,500gを投入し、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、得られた樹脂エマルションをペイントコンディショナー(レッドデビル社製、50〜1,425rpmの範囲で速度調節可能)で分散処理し、固形分濃度40.0質量%、Tg10℃のポリエステル系ウレタン樹脂エマルションAを得た。
なお、TgはDSC(リガク社製Thermo plus EVO2/DSC)にて測定した。
【0083】
<ポリエステル系ウレタン樹脂エマルションBの調製>
ポリエステル系ウレタン樹脂エマルションBとして、スーパーフレックス210(第一工業製薬社製、Tg41℃)を用いた。
【0084】
<ポリエーテル系ウレタン樹脂エマルションCの調製>
ポリエステル系ウレタン樹脂エマルションAの調製において、ポリライトOD−X−2420を使用する代わりに、ハイフレックスD2000(第一工業製薬社製、ポリエーテルポリオール)に変更した以外は同様にして、固形分濃度が30質量%、Tg18℃のポリエーテル系ウレタン樹脂エマルションCを得た。
【0085】
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルションDの調製>
撹拌機及び加熱器を備えた簡易加圧反応装置に、Mn2,000の結晶性ポリカーボネートジオール(デュラノールT6002、旭化成ケミカルズ社製)287.9部、1,4−ブタンジオール3.6部、DMPA8.9部、水添MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)98.3部及びアセトン326.2部を、窒素を導入しながら仕込んだ。
その後、90℃に加熱し、8時間かけてウレタン化反応を行い、プレポリマーを製造した。反応混合物を40℃に冷却後、トリエチルアミン6.8部を添加・混合し、更に水568.8部を加え回転子−固定子式方式の機械乳化機で乳化することで水性分散体を得た。得られた水性分散体に撹拌下、10%のエチレンジアミン水溶液を28.1部加え、50℃で5時間撹拌し、鎖伸長反応を行った。
その後、減圧下に65℃でアセトンを除去し、水分調節をして、固形分濃度が40質量%、Tg−20℃のポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルションDを得た。
【0086】
(アクリル樹脂エマルションの調製)
<アクリル樹脂エマルションEの調製>
アクリル樹脂エマルションEとして、ボンコートCF−6140(DIC社製、Tg12℃)を用いた。
【0087】
(表面処理用組成物の調製)
<表面処理用組成物調製例1>
以下の配合で調合後、混合攪拌し、5μmのフィルター(ザルトリウス社製ミニザルト)で濾過して、表面処理用組成物調製例1の表面処理用組成物を得た。
【0088】
1,2−プロパンジオール 10部
エマルゲンLS−106(花王社製界面活性剤) 1部
酢酸カルシウム1水和物 1.76部
ポリエステル系ウレタン樹脂エマルションA(固形分として) 10部
プロキセルLV(アビシア社製防腐剤) 0.1部
イオン交換水 77.14部
【0089】
<表面処理用組成物調製例2〜7>
表1に記載の処方で表面処理用組成物調製例1と同様にして表面処理用組成物調製例2〜7の表面処理用組成物を得た。
【0090】
【表1】
【0091】
なお、表1中、エマルションA〜Eの含有量は固形分を表す。
【0092】
(インクの調製)
<顔料分散体の調製>
<<ブラック顔料分散体の調製>>
東海カーボン社製のカーボンブラック:シーストSP(SRF−LS)100gを、2.5N(規定)の次亜塩素酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行い、カーボンブラックの表面にカルボン酸基が付与された顔料を得た。
この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
次いで、該顔料分散体とイオン交換水を用いて透析膜による限外濾過を行い、更に、超音波分散を行って、顔料固形分を20%に濃縮した体積平均粒径100nmのブラック顔料分散体を得た。
【0093】
<<シアン顔料分散体の調製>>
ブラック分散体の調製において、使用する色材を東洋インキ社製銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:4、商品名:LX4033)に代えた以外は同様にして体積平均粒径75nmのシアン顔料分散体を得た。
【0094】
<<マゼンタ顔料分散体の調製>>
ブラック分散体の調製において、使用する色材をSun Chemical社製Pigment Red 122に代えた以外は同様にして体積平均粒径73nmのマゼンタ顔料分散体を得た。
【0095】
<<イエロー顔料分散体の調製>>
ブラック分散体の調製において、使用する色材を大日精化工業社製イエロー顔料(ピグメントイエロー74、商品名:イエローNO.46)に代えた以外は同様にして体積平均粒径82nmのイエロー顔料分散体を得た。
【0096】
<<白色顔料分散体の調製>>
酸化チタンSTR−100W(堺化学工業社製)25g、顔料分散剤TEGO Dispers651(エボニック社製)5g、水70gを混合し、ビーズミル(リサーチラボ、シンマルエンタープライゼス社製)にて、0.3mmΦのジルコニアビーズを充填率60%、8m/sにて5分間分散し、体積平均粒径285nmの白色顔料分散体を得た。
【0097】
<インクの調製方法>
インクの調製は、表2、表3に記載した通りの処方で混合攪拌し、非白色インクは0.2μmポリプロピレンフィルターにて、白色インクは0.5μmポリプロピレンフィルターにて濾過することにより作製した。なお、界面活性剤は、FS−300(DuPont社製フッ素系界面活性剤)を使用した。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
なお、表2、表3中、顔料分散体の含有量及びエマルションA〜Eの含有量は固形分を表す。
【0101】
(実施例1)
表4に示される通りに表面処理用組成物、非白色インク、白色インクを用いて下記の評価を行った。
【0102】
<印字部密着性評価>
非白色インク、白色インクをインクジェットプリンター(リコー社製IPSiO GXe5500)に充填し、予め表面をコロナ処理したOPPフィルム(東洋紡社製パイレンP2102)、PETフィルム(東洋紡社製エスペットE5100)、ONYフィルム(東洋紡社製ハーデンN1100)に対して、バーコーターNo.1で表面処理用組成物を塗工し乾燥させた後、非白色インクベタ画像を印刷し、80℃で2分間乾燥させた。その後、非白色インクベタ画像上に白色インクベタ画像を同様に印刷し、80℃で2分間乾燥させた。印刷された画像のベタ部に対し、布粘着テープ(ニチバン社製123LW−50)を使用した碁盤目剥離試験を行い、下記基準により評価した。Bまでが許容範囲である。
[評価基準]
A:100個の升目のどれにも剥がれが見られない。
B:100個の升目のうち1個以上5個以下剥がれたものがある。
C:100個の升目のうち6個以上剥がれたものがある。
【0103】
<ラミネート強度評価>
印字部密着性評価と同様にしてOPPフィルム、PETフィルム、ONYフィルムに対して非白色インクベタ画像、白色インクベタ画像を印刷し、ベタ部にドライラミネート用接着剤(主剤TM−320/硬化剤CAT−13B、東洋モートン社製)をバーコーターで塗工し、CPP(東洋紡社製パイレンP1128)を貼りあわせた後、40℃で48時間エージングした。得られた印刷物を15mm幅にカットした後、T型剥離(剥離速度:300mm/min)にて剥離強度を測定した。下記基準により評価した。Bまでが許容範囲である。
[評価基準]
A:3N/15mm以上5N/15mm未満の強度が得られる。
B:1N/15mm以上3N/15mm未満の強度が得られる。
C:1N/15mm未満の強度しか得られない。
【0104】
(実施例2〜11)
実施例1において、表4、表5に示される通りに表面処理用組成物、非白色インク、白色インクを代えた以外は同様にして評価を行った。
【0105】
(実施例12)
実施例1において、各フィルムに対してコロナ処理を行わない以外は同様にして評価を行った。
【0106】
(実施例13)
実施例1において、非白色インク印字後に加熱処理を行わない以外は同様にして評価を行った。
【0107】
(実施例14)
実施例1において、白色インク印字後に加熱処理を行わない以外は同様にして評価を行った。
【0108】
(比較例1〜3)
実施例1において、表6に示される通りに表面処理用組成物、非白色インク、白色インクを代えた以外は同様にして評価を行った。
【0109】
(比較例4)
比較例1において、表面処理用組成物を付与しない以外は同様にして評価を行った。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
なお、表4〜表6中、加熱処理(1)とあるのは非白色インク印字後の加熱処理を表し、加熱処理(2)とあるのは白色インク印字後の加熱処理を表す。
【0114】
実施例1〜4は本発明の好ましい例であり、密着性、ラミネート強度ともに全ての基材でA評価であった。
【0115】
実施例5〜8は表面処理用組成物と非白色インク、白色インク中のウレタン樹脂粒子がポリエステル系ウレタン樹脂ではない場合の例である。実施例5、6はインク中のウレタン樹脂粒子がエステル系でないため接着剤との親和性が十分でなく、ラミネート強度が低下しているが、B評価なので使用上問題のないレベルと言える。実施例7、8は表面処理用組成物中のウレタン樹脂粒子がエステル系でないためOPPフィルムとの密着が十分でないため密着性がB評価となっているが、使用上問題のないレベルと言える。
【0116】
実施例9は表面処理用組成物中のウレタン樹脂粒子のTgが25℃よりも大きい場合の例である。実施例9はTgが高いため造膜が十分でなく、OPPフィルムでの密着性、ラミネート強度がB評価となっているが、使用上問題のないレベルと言える。
【0117】
実施例10、11は表面処理用組成物中のウレタン樹脂の含有量が表面処理用組成物に対して0.5質量%〜20質量%から外れる場合の例である。実施例10の表面処理用組成物中のウレタン樹脂粒子量が少ないため、十分にフィルムを覆いきれておらず、実施例11のウレタン樹脂粒子量が多いため、膜厚が厚すぎて密着性、ラミネート強度が低下しているが、B評価なので使用上問題のないレベルと言える。
【0118】
実施例12は基材の表面改質処理を行わない場合の例である。この場合、表面処理用組成物の塗工時のムラが生じ、密着性を上げる機能がないため、ラミネート強度が低下しているが、B評価なので使用上問題のないレベルと言える。
【0119】
実施例13、14はインク印字後に加熱処理を行わない場合の例である。インク印字後に加熱処理を行わない場合、インク中樹脂の効果が速やかに進まないため、密着性、ラミネート強度が低下しているが、B評価なので使用上問題のないレベルと言える。
【0120】
比較例1〜3は表面処理用組成物、非白色インク、白色インク中の樹脂がウレタン樹脂でない場合の例である。また、比較例4は表面処理用組成物を付与しない場合の例である。比較例1〜4は密着性、ラミネート強度の評価でC評価であり、OPP、PET、ONYの3種基材への十分な密着性を確保できていないことがわかる。