(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つの前記発光素子群の各々は、楕円形の発光領域を有する複数の発光素子で形成されており、2つの前記発光素子群の間で、楕円の長軸と短軸の方向が逆向きであることを特徴とする請求項8に記載の距離測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態の距離測定装置の一例であるLiDAR装置100の概略図である。LiDAR装置100は、光源からの光を投光する投光部1と、対象物40からの反射光を受光する受光部2と、受光部2からの出力信号を時間積算する積算器25と、投光部1の制御および反射信号に基づく距離計測を行う制御回路3を有する。
図1では、受光部2の出力は積算器25の入力に接続され、時間積算された反射信号が制御回路3に入力されているが、積算器25は制御回路3に含まれていてもよい。
【0012】
投光部1と受光部2は、一般的には車両の前方に存在する物体を検出するように、車両の前部に配置されるが、車両の側方または後方の物体を検出する場合等、車両のあらゆる箇所に設置可能である。
【0013】
投光部1は、光源11、カプリングレンズ13、光スキャナ14、光源駆動回路16、光スキャナ駆動回路17、及び走査角モニタ18を有する。
【0014】
光源11は、複数の発光素子群が光走査の方向に離間して配置されている。各発光素子群は、複数の面発光レーザ(VCSEL)で形成されている。光源11は、光源駆動回路16を介して制御回路3に接続され、制御回路3によって発光素子群の発光タイミングが互いに独立して制御されている。光源11の構成と動作の詳細については、
図2以降を参照して後述する。
【0015】
カプリングレンズ13は、光源11から出射されるレーザ光を光スキャナ14に結合する。光スキャナ14は、光源11の複数の発光素子群から出力されるレーザ光を、同一の検出領域に向けてXZ面内で走査する。光スキャナ14によって与えられるビーム偏向により、所定の角度範囲に存在する物体が検出され、検出された物体までの距離を測定することが可能となる。
【0016】
光スキャナ14によるレーザ光の走査角は、走査角モニタ18によって検出されて制御回路3に供給されてもよい。この場合、モニタ結果は、光スキャナ駆動信号にフィードバックされて走査角度および走査周波数などが制御される。
【0017】
受光部2は、受光素子21と受光レンズ22を有する。受光レンズ22は、ビーム走査方向に存在する物体から反射されたレーザ光を、受光素子21に結合させる。受光素子21はたとえばフォトダイオードである。受光レンズ22と受光素子21の間に、ミラー等のその他の光学素子が配置されていてもよい。
【0018】
投光部1と受光部2は近接して配置され、数メートル程度以上離れた位置からは、互いの光軸は同軸関係にあるとみなし得る。検出対象物で反射された光は、その反射点において様々な方向に散乱されるが、LiDAR装置100から出力されたレーザ光と等しい光路を辿って戻ってくる光成分が、受光レンズ22を介して受光素子21に導かれ、反射信号として検出される。
【0019】
受光素子21は、入力された反射光の強度に対応した光電流を出力する。受光素子21から出力される光電流は、図示しないトランスインピーダンスアンプで電圧信号に変換され、増幅器23で増幅された後、積算器25に入力される。積算器25は、一回の走査で複数の発光素子群から異なる発光タイミングで出力され、対象物から反射された検出信号を積算し、検出信号の総和値を制御回路3に出力する。
【0020】
制御回路3は、光源の駆動タイミング信号が出力されてから検出信号が得られるまでの時間、すなわちレーザ光を出射した時刻と反射光を受光した時刻の差分に基づいて、検出された対象物までの距離を計測する。
【0021】
この構成では、各発光素子群から出力されるレーザ光の品質は保証され、かつ角度分解能が高く維持されている。また、同一検出エリアに複数のレーザ光を異なるタイミングで照射することでトータルの強度を向上して、測定距離を伸ばすことができる。反射光に基づく検出信号を積算することで、検出信号を高いS/N比で取得して、高精度の距離計測を行うことができる。
【0022】
制御回路3は、LSIチップ、マイクロプロセッサ等の集積回路チップ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等のロジックデバイス、集積回路チップとロジックデバイスの組み合わせ等で実現されてもよい。
<投光部の構成と動作>
図2は、LiDAR装置100の光源11Aの構成例である。光源11Aは、所定の方向に配列される複数の発光素子群110を有する。
図2の例では、発光素子群110Aと発光素子群110Bが、X方向に所定の間隔WGで配置されている。発光素子群110Aと発光素子群110Bは、それぞれ対応する電極114A、114Bに接続されている。電極114Aと電極114Bに印加される駆動信号のタイミングは、制御回路3によって独立に制御され、発光素子群110Aと発光素子群110Bは、それぞれ独立したタイミングで発光する。
【0023】
発光素子群110AのX方向の発光幅はWA、発光素子群110BのX方向の発光幅はWBである。後述するように、各発光素子群110の発光幅Wは、走査ビームの角度分解能と相関する。発光素子群110Aおよび発光素子群110Bの出力軸(光軸)がZ方向である。
【0024】
図2(B)は、一つの発光素子群110の面内構成を示す図である。発光素子群110は、XY面内に配置された複数の表面発光型の発光素子113を有する。各発光素子113の開口部(すなわち発光領域)のサイズは微小であり、各発光素子113はZ方向に向けて等方的にレーザ光を出力する。
【0025】
発光素子113の発光領域の面積を大きくするほど、発光領域あたりの光量は増加するが、発光領域を大きくしすぎると、複数の発振モードが励起されビーム品質が劣化する。このため、発光素子113の開口面積は、発光ビームプロファイルが理想的なガウス関数形状から大きく逸脱しない範囲に制限されている。
【0026】
また、発光領域を密接に配置するほど、単位面積当たりの発光強度が増加するが、配置密度を高くしすぎると、発光領域の発熱により光源11Aの温度が高くなり、高出力での発光が困難となる。このため、発光素子113は、発光強度が低下しない範囲で密集して配置される。
図2(B)の例では、複数の発光素子113が六角形の細密配置で並べられているが、この例に限定されず、格子状など、適切な配置構成を採用可能である。発光素子113の発光領域の外径と発光領域間隔は、たとえば数μm〜数百μmの範囲で設定されている。
【0027】
図3は、光源11Aによって照射される領域を説明する図である。発光素子群110Aと110Bの各々から出力された光は、カプリングレンズ13により、所定の広がり角を有する光ビームに変換される。ここで発光素子群110Aと発光素子群110Bの配列方向(X軸方向)の発光幅をそれぞれWAおよびWBとし、カプリングレンズ13の焦点距離をLとする。発光素子群110の配列方向は、レーザ光の走査方向でもある。
【0028】
カプリングレンズ13を光源11AからZ方向にLだけ離して配置した場合、発光素子群110Aが照射する領域の光照射角度範囲ΦAと、発光素子群110Bが照射する領域の光照射角度範囲ΦBは、それぞれ式(1)と式(2)で与えられる。
【0029】
ΦA=tan−1(WA/L)≒WA/L (1)
ΦB=tan−1(WB/L)≒WB/L (2)
発光素子群110Aと発光素子群110Bは離間して配置されているので、発光素子群110Aの光照射領域EAと、発光素子群110Bの光照射領域EBの間に、光が存在しない非照射領域NEが存在する。非照射角度範囲ΦGは、隣接する発光素子群の間隔をWGとすると、式(3)で与えられる。
【0030】
ΦG=tan−1(WG/L)≒WG/L (3)
光源11Aに用いられる複数の発光素子群110について、配列方向の発光幅W、配列の間隔WG、及びカプリングレンズ13の焦点距離Lに基づいて、光照射領域Eの光照射角度範囲と、光が照射されない非照射領域NEの非照射角度範囲ΦGを予め定めることができる。
【0031】
光源11Aの発光強度が大きいほど、遠方にある検出対象からの反射光の強度も強くなり、検出距離を伸ばすことができる。したがって、
図2(B)の発光素子113の開口(または発光領域)のトータルの面積を増やすことで、検出距離を拡大し得る。一方で、光照射角ΦはLiDAR装置100の検出角度分解能を規定する。一般的には、光照射角Φは小さいほど望ましい。すなわち各発光素子群110の発光幅Wは狭くなり、光走査方向の発光素子113の配置数は少ないほど好ましい。これらに鑑みると、発光素子群110の配置形状は、光走査方向(X方向)に直交する方向(Y方向)の長さが長くなるような長方形のプロファイルが好適である。
【0032】
図4は、実施形態の光源11Aのパルス発光タイミングを説明する図である。発光素子群110Aと発光素子群110Bを、それぞれ所定の発光間隔tAおよびtBでパルス発光させるが、それぞれの発光タイミングに時間差を設けることに特徴がある。
【0033】
発光素子群110Aの発光間隔tAと、発光素子群110Bの発光間隔tBは、光スキャナ14の走査周期と、LiDAR装置100の測定解像点数から決定される。測定解像点数は、LiDAR装置100によって測定される検出角度範囲を、式(1)あるいは式(2)で与えられる光ビームの光照射角Φで除算した値で与えられる。たとえば、LiDAR装置100の検出角度範囲が全角150°であり、光ビームの光照射角が0.1°の場合、測定解像点数は1500点になる。
【0034】
光スキャナ14による走査の1周期の時間をTr、LiDAR装置100の検出角度範囲をθsとすると、発光素子群110Aの発光間隔tAと、発光素子群110Bの発光間隔tBは、式(4A)と式(4B)でそれぞれ与えられる。
【0035】
tA=Tr×(ΦA/θs)=Tr×(WA/L) (4A)
tB=Tr×(ΦB/θs)=Tr×(WB/L) (4B)
ここで、発光素子群110Aと発光素子群110Bの発光タイミングに所定の時間差ΔTABを設けることで、発光素子群110Aの光照射領域EAと発光素子群110Bの光照射領域EBを、空間的に一致させることができる。
図3における非照射領域NE(または非照射角度ΦG)を光スキャナ14によるビーム走査によって通過する際の経過時間tGは、式(5)で与えられる。
【0036】
tG=Tr×(ΦG/θs)=Tr×(WG/L) (5)
発光素子群110AのX方向の発光幅WAと、発光素子群110BのX方向の発光幅WBが互いに等しい場合(WA=WB=WX)、発光素子群110Aと110Bが同じ領域を照射するための時間差ΔTXは、式(6)で与えられる。
【0037】
ΔTX=k・tA+tG = Tr×(k・WX+WG)/L (6)
ここで、kは任意の整数である。
【0038】
複数の発光素子群110で同じ領域を照射するように光パルスの発光タイミングに時間差を設けることで、角度分解能の向上と検出距離の拡大を両立することができる。LiDAR装置の検出距離を長くするためには発光強度を大きくする必要があるが、従来の発光素子アレイの構成では、発光強度を高めるために発光素子アレイの面積(あるいはアレイ状に配列される発光素子の数)も増大する。このため、発光素子アレイから出力されるレーザ光の照射角度範囲が広くなり、角度分解能が低下してしまう。これに対して、実施形態のLiDAR装置100では、各発光素子群の発光面積を増加させずに、複数の発光素子群からのレーザ光によって同一領域を複数回走査する。特に、発光素子群の走査方向の発光幅Wを広げずに走査方向の角度分解能を高く維持して、実効的な光照射強度を高めることができる。
【0039】
上述した例では、説明を簡単にするために、発光素子群110の数が2の場合について述べてきたが、発光素子群110の数を増やすほど、本発明の効果が高まる。走査方向(X方向)に配列される発光素子群110の数をNとすると、同じ面積の単一の発光素子群を用いる場合と比べて、検出光成分とノイズ光成分の比(SN比)を√N倍だけ高めることができる。SN比の向上に応じて、検出可能な距離も拡大する。
【0040】
実施形態のLiDAR装置100で、発光素子群110の最大数は以下のように概算できる。最大検出可能距離をZMAX、光速をcとすると、レーザ投光ビームの発光タイミングと検出対象物からの反射光の受光タイミングの時間差ΔtMAXは、式(7)で与えられる。
【0041】
ΔtMAX=2×ZMAX/c (7)
この時間差ΔtMAXは、各発光素子群110が発光可能なパルス間隔の最小値となる。
【0042】
一方で、式(4A)あるいは式(4B)より、発光素子群110Xの発光間隔tXは、式(8)で与えられる。
【0043】
tX=Tr×(ΦX/θs) (8)
ここで、Trは光スキャナ14による走査の1周期の時間、θsはLiDAR装置100の検出角度範囲、ΦXは発光素子群110Xが照射する領域の広がり角である。一般的にtXはΔtMAXより大きな値となり、tXの時間内に複数の発光素子群110からのパルス発光を多重化できる。多重化可能な発光素子群の最大数Mは、式(7)と式(8)から、
M=tx/ΔtMAX
=Tr・ΦX・c/(2θs・ZMAX) (9)
で与えられる。
【0044】
たとえば、Tr=100ms、ΦX=0.1°、θs=150°、ZMAX=200mの場合、M=50となり、発光素子群を最大で50個、光走査方向に離間して並置できる。各発光素子群の発光タイミングを異ならせることで、50個の発光素子群によって同一の検出領域を照射することができる。この場合、単一の大きな発光素子群を用いた検出と比べて、検出信号のSN比を√50倍(約7倍)に高めることができる。
【0045】
このように、実施形態では各発光素子群セグメントの発光面積は増加させずに、複数の発光素子群によって同一領域を複数回検出するため、発光ビームプロファイルの劣化を引き起こすことなく実質的な光照射強度を増加させることができる。このため、光走査方向の検出角度分解能を良好な状態に保持したまま、検出可能な測定距離を伸ばすことができる。
【0046】
上記では、パルス発光間隔の制約から発光素子群の最大数Mを見積もったが、複数の発光素子群を同一基板上に集積する際の好適な配置が発光素子数から定められる。
【0047】
発光素子群の数が2の場合(
図2の構成)に戻って説明すると、発光素子群110Aと110BのX方向の幅Wが互いに等しい場合、その発光幅をWXとすると、式(4A)または式(4B)より、発光間隔(またはパルス間隔)tXは式(10)で与えられる。
【0048】
tX=Tr×(WX/L) (10)
2つの発光素子群が同じ領域を照射するための時間差ΔtXは式(6)で与えられる。
【0049】
ΔtX=Tr×(k・WX+WG)/L (6)
図4に示したように、2つの発光素子分の発光タイミングを、それぞれの発光間隔の1/2周期だけずらせて発光させる場合が、最も互いの発光パルスが迷光成分となる可能性が低い。このときtX=2Δtxとなるから、式(6)と式(10)より、
Tr×(WX/L)=2×Tr×(k・WX+WG)/L
2WG=k´・WX (11)
となる。間隔WGを狭くするほど高密度に光源を集積することができ、その最小値は式(11)でk´=1として、
WG=WX/2 (12)
で与えられる。
【0050】
光走査方向に並置する発光素子群110の数が増えた場合も同様の考え方ができる。発光幅Wが等しいN個の発光素子群110を並置した場合、隣接する発光素子群110の間隔WGを各発光素子群110の発光幅WXに対して、
WG=WX/N (13)
にすると、それぞれの発光素子群110からのパルス発光間隔が最も分散される。これにより、各発光素子群110の発光パルスが他の発光素子群に対する検出時の迷光となる可能性を低減できる。
【0051】
各発光素子群110は、密接して配置された複数の面発光レーザで形成されているため、発光素子群110間の間隔WGを厳密に式(13)のように規定することは困難であるが、隣接する発光素子群110の間の平均的な間隔を式(13)に従うように定めることが好ましい。
【0052】
図5は、LiDAR装置100で用いられる光源11Bの構成例を示す。
図2〜
図4では、複数の発光素子群110が光走査方向(X方向)に離間して並置される構成について説明してきたが、
図5のように、X方向とY方向に複数の発光素子群110を離間して配置してもよい。このような2次元配置で、光走査方向と直交する方向に離間した発光素子群110に対して発光タイミングを異ならせ、各発光素子群110からの発光パルスに対して距離計測を実施することで、垂直方向の検出レイヤ数を増加させることができる。
【0053】
図5の例では、3×4のマトリクスで12個の発光素子群110が配置され、各発光素子群110に電極114が接続されて、発光タイミングを制御する制御信号が印加される。発光素子群110を垂直方向(Y方向)に離間して配置し、それぞれを独立して発光させることで、光スキャナ14として、傾斜角が互いに等しい反射面を有するポリゴンミラーや、1軸方向にミラー走査が可能なMEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナを用いることができる。と本実施例における光源の構成例を組み合わせることで、垂直方向の検出レイヤ数を増加させることが可能となる。
【0054】
垂直方向のレイヤが互いに離間することによる検出エラーを抑制するためには、発光素子群110間の垂直方向の離間距離はできる限り小さくすることが好ましい。したがって
図5に示すように、光走査方向と直交するY方向の離間距離を、光走査方向(X方向)の離間距離よりも狭く設定することが好適である。光走査方向に隣接する発光素子群間の距離を相対的に広くとることにより、レーザ発振のための駆動電流を各発光素子群110に印加するための配線を、離間領域に容易にレイアウトすることができる。
【0055】
図2と
図5の構成で、光走査方向に配列される発光素子群110を、すべて同じVCSELで形成してもよいが、後述するように、受光素子に波長フィルタを組み合わせる場合は、光走査方向に並ぶ発光素子群110の間で、出力波長を異ならせてもよい。その場合は、複数の発光素子群110の間で発光タイミングが接近している場合でも、発光素子群110間のクロストークを低減して、距離計測の精度を高めることができる。
【0056】
図6は、光スキャナ14の一例としてMEMSスキャナ14Aを示す。MEMSスキャナ14Aは、反射ミラー145を有する可動部144と、可動部144の両側で可動部144を支持する一対の蛇行梁部146を有する。各蛇行梁部146で、一端が支持基板143に固定され、他端は可動部144に連結されている。
【0057】
各蛇行梁部146は、第1圧電部材147aと第2圧電部材147bが交互に配置され、複数の折り返し部を介して蛇行(ミアンダ)パターンを形成している。隣接する第1圧電部材147aと第2圧電部材147bには、互いに逆位相の電圧信号が印加され、蛇行梁部146にZ方向への反りが発生する。
【0058】
隣接する第1圧電部材147aと第2圧電部材147bでは、撓みの方向が逆になる。逆方向の撓みが累積されて、反射ミラー145を備えた可動部144が、回転軸Aを回転中心として、往復回動する。
【0059】
回転軸Aを回転中心としたミラー共振モードに合わせた駆動周波数をもつ正弦波を逆相で第1圧電部材147aと第2圧電部材147bに印加することで、低電圧で大きな回転角度を得ることができる。
【0060】
このMEMSスキャナ14Aは、1軸方向(X方向)へ光走査を行う。垂直方向(Y方向)の検出・測定は、Y方向に互いに離間して配置された複数の発光素子群110の発光を切り替えることでレイヤ数を増やすことができる。
【0061】
図7は、光スキャナ14の別の例として、ポリゴンミラー14Bを示す。ポリゴンミラー14Bは、回転軸141に対して等速回転する。この例では、6角形の回転体の6つの傾斜面に平面ミラー142a〜142fが設けられている。平面ミラー142a〜142fは、回転軸141に対する傾斜角が同一であり、回転軸141を中心として回転体が回転することで、レーザ光のミラー面へ入射角が変化し、レーザビームをXZ面内で走査することができる。垂直方向(Y方向)の検出・測定は、Y方向に互いに離間して配置された複数の発光素子群110の発光を切り替えることで、レイヤ数を増やすことができる。
<受光部の構成と動作>
図8は、受光素子21の概略図である。実施形態のLiDAR装置100では、単一の受光素子21によって検出対象からの反射パルス光を検出することを前提としているが、ひとつの受光素子21を、密接して配置された複数の受光セグメント210A、210Bで形成してもよい。
【0062】
受光セグメント210Aと210Bは、発光素子群110Aと110Bの配置に対応して、光走査方向(X方向)に所定の受光幅を有し、互いに隣接して配置される。
【0063】
図9は、
図8の受光素子21による光検出角度範囲を説明する図である。近接して配置された受光セグメント210Aと受光セグメント210Bによる検出範囲は、許容誤差程度の差異があるものの、受光セグメント210同士の間隔を狭めることで、ほぼ同一の領域を検出することができる。
図9では、受光セグメント210A、210Bの上に、異なる透過波長特性を有する波長フィルタ26A、26Bが配置されている。
【0064】
対象物からの反射光は、受光レンズ22を通して受光される。発光素子群110Aと110Bは、それぞれ異なる発光タイミングで発光し、出力レーザ光は同一の検出エリアに走査されるが、発光素子群110の間の間隔にWGにより、受光レンズへの入射角度がわずかに異なる。
【0065】
発光素子群110Aから出力され、対象物で反射された光は、受光レンズ22により受光素子21へ集光され、波長フィルタ26Aを透過して、受光セグメント210Aで受光される。発光素子群110Bから出力され、対象物で反射された光は、受光レンズ22により受光素子21へ集光され、波長フィルタ26Bを透過して、受光セグメント210Bで受光される。
【0066】
図9の構成により、複数の発光素子群110の発光タイミングが接近する場合でも、各発光素子群110から出力されたレーザ光による測距結果を、より正確に振り分けることができる。
【0067】
図10は、発光素子群110Aと110Bの発光スペクトルと、波長フィルタ26A、26Bの透過波長特性を説明する図である。同じ発光素子群110に含まれる複数の面発光レーザについては、その発振波長を互いにほぼ等しく設定し、異なる発光素子群110の間では、レーザ発振波長を互いに異ならせる。受光側で、それぞれの発振波長帯にのみ透過帯域を有するフィルタ26を受光素子21に設けることで、各発光素子群110から出力され、対象物で反射された光を受光する。複数の発光素子群110に対応して、受光素子21の受光セグメント210の透過特性を異ならせることで、複数の発光素子群110の発光タイミングが接近した場合であっても、発光素子群110の間のクロストークを低減して、距離計測の精度を上げることができる。
【0068】
波長フィルタ26に替えて、波長選択素子として、波長によって回折角度の異なる回折素子を受光セグメント210上に配置してもよい。また、波長フィルタ26に替えて、互いに異なる偏光方向の光を透過する偏光フィルタを、受光素子21上に配置してもよい。この場合、2つの発光素子群110の間で発光する光の偏光方向を互いに異ならせてもよい。たとえば、2つの発光素子群110の一方の出力光を所定の波長板に通すことで、2つの発光素子群110の間で偏光方向を互いに異ならせることができる。あるいは、発光素子群110を構成する面発光レーザの発光領域を楕円形に形成し、発光素子群110の間で長軸と短軸の向きを互いに異ならせてもよい。これらの構成によっても、異なる発光素子群110からのレーザ出力に基づく検出信号を切り分けることができる。計測の信頼度を維持しつつ、実効的な光源強度を高めることができ、検出距離を長くすることができる。
【0069】
図8から
図10では、発光素子群110と受光セグメント210の数が、それぞれ2の場合を例示したが、発光素子群110の数の増大に応じて受光セグメント210の数を増やすことは容易である。発光素子群110のレーザ発振波長は、各発光素子群110を形成する面発光レーザの共振器長を異ならせることで、互いに異ならせることができる。受光素子21上に形成する波長フィルタ26についても、例えばファブリペロー型の波長フィルタに対して、キャビティ長を互いに異ならせることで、同一の基板上に互いに異なる波長帯域を有する複数の波長フィルタを形成することができる。
【0070】
ビーム品質を維持しつつ検出距離を拡張するために、複数の発光素子群110を所定間隔で配置する構成において、発光素子群110の発光タイミングが接近するときであっても、各レーザ光に基づく検出信号を切り分けることができる。距離計測の信頼度を維持しつつ、実効的な光源強度を高め、検出距離を伸ばすことができる。
【0071】
LiDAR装置100は、自動車等の車両に搭載される場合は、一般には、車両の上部前方に配置されるが、車両の側面や後方に搭載されてもよい。LiDAR装置100は、車両だけではなく、航空機、ドローンなどの飛行体、ロボット等の自律移動体など、任意の移動体に適用可能である。実施形態の光源11の構成を採用することで、角度分解能を高く維持し、かつ検出距離を伸ばすことができる。