(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、およびビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドから選ばれる少なくとも1種のスルフィド基含有有機ケイ素化合物を含有する請求項1または2記載のゴム用配合剤。
前記有機ケイ素化合物とスルフィド基含有有機ケイ素化合物の配合比が、質量比で、有機ケイ素化合物:スルフィド基含有有機ケイ素化合物=5:95〜80:20である請求項3記載のゴム用配合剤。
さらに、少なくとも1種の粉体を含有し、この粉体の合計量(Y)と、前記有機ケイ素化合物およびスルフィド基含有有機ケイ素化合物の合計量(X)との質量比が、(X)/(Y)=70/30〜5/95である請求項3または4記載のゴム用配合剤。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
[有機ケイ素化合物]
本発明に係る有機ケイ素化合物は、下記式(1)で表される。なお、式(1)において、各繰り返し単位の順序は任意である。
【化6】
【0012】
式中、R
1は、互いに独立して、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、R
2は、互いに独立して、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、Xは単結合、−S−、−CO−および−CS−から選ばれる1種以上の基を表す。aは0より大きい数を表し、bは0以上の数を表し、cは0以上の数を表し、dは0以上の数を表し、eは0より大きい数を表し、fは0以上の数を表すが、c+dは0より大きい数を表す。mは1〜3の整数を表す。
【0013】
ここで、R
1およびR
2の炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0014】
これらの中でも、R
1としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
また、R
2としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0015】
Aの非置換又は置換の炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、イソヘキシル、tert−ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、tert−ブチルシクロヘキシル等の直鎖状、分岐状、環状アルキル基;フェニル、トリル、キシリル、メシチル等のアリール基;ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル等のアラルキル基などが挙げられる。また、置換炭化水素基としては、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子やケイ素原子などを含んだものが挙げられ、具体的には、トリメトキシシリルプロピル、トリエトキシシリルプロピル等のアルコキシシリル基含有アルキル基;ベンズイミダゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ピリミジル、プリニル、トリアゾリル、ピリジニル等の複素環基などが挙げられる。
【0016】
Xは、単結合、硫黄原子(−S−)、カルボニル結合(−CO−)およびチオカルボニル結合(−CS−)から選ばれる少なくとも1種の連結基を表すが、−CO−が好ましい。このようなチオエステル構造を有することにより、低燃費性、ウェットグリップ性などのタイヤ物性を向上させることができる。
【0017】
−X−Aで表される官能基としては、特に下記式(2)で表される基が好ましい。
【化7】
(式中、Aは上記と同様である。*は結合手を示す。)
【0018】
aは0より大きい数であるが、5より大きい数であることが好ましく、より好ましくは10〜100の整数である。
bは0以上の数であるが、0〜50の整数が好ましく、さらに好ましくは0〜5の整数である。
cは0以上の数であり、dは0以上の数であるが、c+dは0より大きい数であり、2より大きい数が好ましく、さらに好ましくは3〜50の整数である。
eは0より大きい数であるが、2より大きい数が好ましく、さらに好ましくは3〜50の整数である。
fは0以上の数であるが、fの単位を含む場合は、2より大きい数が好ましく、さらに好ましくは3〜50の整数である。
mは1〜3の整数である。
【0019】
式(1)で表される有機ケイ素化合物は、下記スキームに示されるように、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物と下記式(4)で表される硫黄原子含有化合物を反応させることで得ることができる。
【化8】
(式中、R
1、R
2、a、b、c、d、e、f、A、Xおよびmは上記と同様である。)
【0020】
上記式(4)で表される硫黄原子含有化合物としては、例えば、アルキルチオール化合物、アルコキシシリル基含有メルカプト化合物、複素環式メルカプト化合物、チオ酸化合物等が挙げられる。上記硫黄原子含有化合物としては、特に下記式(5)で表されるチオ酸化合物が好ましい。
【化9】
(式中、Aは上記と同様である。)
【0021】
上記式(4)で表される硫黄原子含有化合物として具体的には、プロパンチオール、ブタンチオール、ヘキシルチオール、ペンタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール等のアルキルチオール化合物;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有メルカプト化合物;メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトピリミジン、6−メルカプトプリン、1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4−メルカプトピリジン等の複素環式メルカプト化合物;チオ酢酸、チオ安息香酸等のチオ酸化合物などが挙げられる。これらの中でも本有機ケイ素化合物を配合したゴムの物性を向上させる観点から、チオ酢酸が好ましい。
【0022】
上記反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、ラジカル発生剤が好ましく、アゾ化合物、有機過酸化物などが挙げられ、熱によりラジカルが発生するものや光照射によりラジカルが発生するものが含まれる。アゾ化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0023】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。
使用可能な溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒などが挙げられ、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
上記反応における反応温度は特に限定されるものではなく、0℃から加熱下で行うことができるが、40〜150℃が好ましい。
適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、このような観点から、反応温度は40〜130℃がより好ましく、50〜120℃がより一層好ましい。
また、反応時間も特に限定されるものではなく、通常、1〜60時間程度であるが、1〜30時間が好ましく、1〜20時間がより好ましい。
【0025】
[ゴム用配合剤]
本発明のゴム用配合剤は、上述した式(1)で表される有機ケイ素化合物を含むものである。
この場合、粘度や取り扱い性等を考慮すると、ゴム用配合剤に用いる上記有機ケイ素化合物の数平均分子量は100,000以下であることが好ましく、40,000以下がさらに好ましく、より好ましくは1,000〜20,000である。なお、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値である。
【0026】
本発明において、ゴム用配合剤に用いる有機ケイ素化合物は、得られるゴム組成物の特性を向上させることなどを考慮すると、加水分解性シリル基を有する単位が全単位当たり2%以上含有していることが好ましいことから、式(1)において、0.02≦e/(a+b+c+
d+e+f)<0.9を満たすことが好ましい。特に、加水分解性シリル基を有する単位は、全単位当たり、3%以上含有していることが好ましい。
【0027】
また、本発明において、ゴム用配合剤に用いる有機ケイ素化合物は、得られるゴム組成物の特性を向上させることなどを考慮すると、硫黄原子を有するユニット単位が全単位当たり1%以上含有していることが好ましいことから、式(1)において、0.01≦(c+d)/(a+b+c+
d+e+f)<1.0を満たすことが好ましい。
特に、硫黄原子を有するユニット単位は、全単位当たり、2%以上含有していることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明のゴム用配合剤は、スルフィド基含有有機ケイ素化合物を含有することができる。
スルフィド基含有有機ケイ素化合物は、特に限定されるものではなく、その具体例としては、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0029】
ゴム用配合剤中における上記有機ケイ素化合物とスルフィド基含有有機ケイ素化合物の配合比は、質量比で、有機ケイ素化合物:スルフィドシラン=5:95〜80:20が好ましく、10:90〜50:50がより好ましい。
【0030】
また、本発明の有機ケイ素化合物とスルフィド基含有有機ケイ素化合物を少なくとも1種の粉体と混合したものをゴム用配合剤として使用することできる。
粉体の具体例としては、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
これらの中でも、補強性の観点からシリカおよび水酸化アルミニウムが好ましく、シリカがより好ましい。
【0031】
粉体の配合量は、ゴム用配合剤の取り扱い性や、輸送費等を考慮すると、粉体合計量(Y)と、有機ケイ素化合物とスルフィド基含有有機ケイ素化合物の合計量(X)との質量比((X)/(Y))で、70/30〜5/95が好ましく、60/40〜10/90がより好ましい。
【0032】
なお、本発明のゴム用配合剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等の有機ポリマーやゴムと混合されたものでもよく、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤が配合されたものでもよい。
また、その形態としては、液体状でも固体状でもよく、さらに有機溶剤に希釈したものでもよく、またエマルジョン化したものでもよい。
【0033】
[ゴム組成物]
本発明において、上記ゴム用配合剤が添加されるゴム組成物の主成分であるゴムとしては、従来、各種ゴム組成物に一般的に用いられている任意のゴムを用いることができ、その具体例としては、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)等の非ジエン系ゴムなどが挙げられ、これらは、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、ゴム組成物中におけるゴムの配合量は、特に限定されるものではなく、従来の一般的な範囲である20〜80質量%とすることができる。
【0034】
本発明のゴム用配合剤は、フィラー含有ゴム組成物の配合剤として好適に用いられる。
フィラーとしては、上記粉体と同様のものも用いることができ、シリカ、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの中でも、本発明のゴム用配合剤は、シリカ含有ゴム組成物の配合剤として用いることがより好ましい。
なお、ゴム組成物中におけるフィラーの含有量は本発明の目的に反しない限り従来の一般的な配合量とすることができる。
【0035】
この場合、ゴム用配合剤の添加量は、得られるゴムの物性や、発揮される効果の程度と経済性とのバランス等を考慮すると、ゴム組成物に含まれるフィラー100質量部に対し、上記有機ケイ素化合物を0.2〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0036】
本発明のゴム組成物には、前述した各成分に加えて、硫黄、カーボンブラック、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、シランカップリング剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これら添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0037】
[ゴム製品(タイヤ)]
本発明のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物は、一般的な方法で混練して組成物とし、これを加硫または架橋するゴム製品、例えば、タイヤ等のゴム製品の製造に使用することができる。特に、タイヤを製造するにあたっては、本発明のゴム組成物がトレッドに用いられていることが好ましい。
本発明のゴム組成物を用いて得られるタイヤは、転がり抵抗が大幅に低減されていることに加え、ウェットグリップ特性および耐磨耗性も大幅に向上していることから、所望の低燃費性を実現できる。
なお、タイヤの構造は、従来公知の構造とすることができ、その製法も、従来公知の製法を採用すればよい。また、気体入りのタイヤの場合、タイヤ内に充填する気体として通常空気や、酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、下記において、「部」は質量部を意味する。分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。粘度は、回転粘度計を用いて測定した25℃における値である。また、下記式中、Etはエチル基を示す。
【0039】
[1]有機ケイ素化合物の製造
[実施例1−1]有機ケイ素化合物Aの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、特開2016−191040号公報記載の実施例1−8と同様にして製造した、下記平均組成式(6)で表される有機ケイ素化合物300g(数平均分子量3,600)、オクチルチオール73g、およびトルエン400gを納め、90℃に加温した。この中に、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂製)1.0gを滴下した後、90℃で2時間撹拌した。
【化10】
【0040】
反応終了後、ガスクロマトグラフィー分析によりオクチルチオール化合物が消失したことを確認した。
反応終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度2,000mPa・s、数平均分子量4,500の褐色透明液体を得た。
生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)において、A=−C
8H
17、X=単結合、a=33、b=0、(c+d)=6、e=7、f=0で表される有機ケイ素化合物であった。本化合物を有機ケイ素化合物Aとする。
【0041】
[実施例1−2]有機ケイ素化合物Bの合成
オクチルチオールをチオ酢酸38gに変更した以外は、実施例1−1と同様に反応および後処理を行い、粘度2,000mPa・s、数平均分子量4,100の褐色透明液体を得た。
生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)において、A=−CH
3、X=−CO−、a=33、b=0、(c+d)=6、e=7、f=0で表される有機ケイ素化合物であった。本化合物を有機ケイ素化合物Bとする。
【0042】
[実施例1−3]有機ケイ素化合物Cの合成
チオ酢酸の量を19gに変更した以外は、実施例1−2と同様に反応および後処理を行い、粘度1,900mPa・s、数平均分子量3,900の褐色透明液体を得た。
生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)において、A=−CH
3、X=−CO−、a=33、b=3、(c+d)=3、e=7、f=0で表される有機ケイ素化合物であった。本化合物を有機ケイ素化合物Cとする。
【0043】
[実施例1−4]有機ケイ素化合物Dの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、特開2017−8301号公報記載の実施例1−5と同様にして製造した、下記平均組成式(7)で表される有機ケイ素化合物400g(数平均分子量8,800)、チオ酢酸38g、およびトルエン400gを納め、90℃に加温した。この中に、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂製)1.0gを滴下した後、90℃で2時間撹拌した。
【化11】
【0044】
反応終了後、ガスクロマトグラフィー分析によりオクチルチオール化合物が消失したことを確認した。
反応終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度14,000mPa・s、数平均分子量9,600の褐色透明液体を得た。
生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)において、A=−CH
3、X=−CO−、a=52、b=0、(c+d)=11、e=11、f=29で表される有機ケイ素化合物であった。本化合物を有機ケイ素化合物Dとする。
【0045】
[実施例1−5]有機ケイ素化合物Eの合成
チオ酢酸の量を19gに変更した以外は、実施例1−4と同様に反応および後処理を行い、粘度13,000mPa・s、数平均分子量9,200の褐色透明液体を得た。
生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)において、A=−CH
3、X=−CO−、a=52、b=5、(c+d)=6、e=11、f=29で表される有機ケイ素化合物であった。本化合物を有機ケイ素化合物Eとする。
【0046】
[2]ゴム組成物の調製
[実施例2−1]
表1に示されるように、油展エマルジョン重合SBR(JSR(株)製#1712)110部、NR(RSS#3グレード)20部、カーボンブラック(N234グレード)20部、シリカ(日本シリカ工業(株)製ニプシルAQ)70部、実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物Aを7.0部、ステアリン酸1部、並びに老化防止剤6C(大内新興化学工業(株)製ノクラック6C)1部を配合してマスターバッチを調製した。
これに亜鉛華3部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)0.5部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1部および硫黄1.5部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
【0047】
[実施例2−2〜2−5]
表1に示されるように、実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物Aを、実施例1−2〜1−5で得られた有機ケイ素化合物B〜Eにそれぞれ変更した以外は、実施例2−1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0048】
[比較例2−1〜2−3]
表2に示されるように、実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物Aを、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE−846、信越化学工業(株)製)、上記平均構造式(6)または(7)で表される有機ケイ素化合物にそれぞれ変更した以外は、実施例2−1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0049】
上記実施例2−1〜2−5および比較例2−1〜2−3で得られたゴム組成物について、未加硫および加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表1,2に併せて示す。
【0050】
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に準拠し、温度130℃、余熱1分、測定4分にて測定し、比較例2−1を100として指数で表した。指数の値が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れている。
【0051】
〔加硫物性〕
(2)動的粘弾性
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、引張の動歪5%、周波数15Hz、0℃または60℃の条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を160gとした。tanδの値は比較例2−1を100として指数で表した。0℃の指数値が大きいほどウェットグリップ性能が優れるものとして評価でき、60℃の指数値が小さいほどヒステリシスロスが小さく低発熱性である。
(3)耐磨耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型磨耗試験機を用いて室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例2−1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、磨耗量が少なく耐磨耗性に優れることを示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1および2に示されるように、実施例2−1〜2−5のゴム組成物は、比較例2−1のゴム組成物に比べ、ムーニー粘度が低く、加工性に優れていることがわかる。
また、実施例2−1〜2−5のゴム組成物の加硫物は、比較例2−1〜2−3のゴム組成物の加硫物に比べ、ウェットグリップ性能が優れ、さらに低発熱性であり、また、耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0055】
[実施例2−6]
表3に示されるように、NR(RSS#3グレード)100部、プロセスオイル38部、カーボンブラック(N234グレード)5部、シリカ(日本シリカ工業(株)製ニプシルAQ)105部、実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物Aを8.4部、ステアリン酸2部、老化防止剤6C(大内新興化学工業(株)製ノクラック6C)2部を配合してマスターバッチを調製した。
これに酸化亜鉛2部、加硫促進剤CZ(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)3部および硫黄2部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
【0056】
[実施例2−7〜2−10]
表3に示されるように、実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物を、実施例1−2〜1−5で得られた有機ケイ素化合物B〜Eにそれぞれ変更した以外は、実施例2−1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0057】
[比較例2−4〜2−6]
表4に示されるように、実施例1−1で得られた有機ケイ素化合物Aを、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE−846、信越化学工業(株)製)、上記平均構造式(6)または(7)で表わされる有機ケイ素化合物にそれぞれ変更した以外は、実施例2−6と同様にしてゴム組成物を得た。
【0058】
次に、ゴム組成物の未加硫物性(ムーニー粘度)および加硫物性(動的粘弾性、耐磨耗性)を上記と同様の方法で測定した。比較例2−4を100として指数で表した結果を表3,4に併せて示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表3および表4に示されるように、実施例2−6〜2−10のゴム組成物の加硫物は、比較例2−4〜2−6のゴム組成物の加硫物に比べ、動的粘弾性が低く、すなわち、ヒステリシスロスが小さく低発熱性であり、また、耐摩耗性に優れていることがわかる。