(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記還元工程後、前記金属酸化物層上に更に金属酸化物層を形成する第2の金属酸化物層形成工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体の製造方法。
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ユニット。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置及び液体吐出ヘッドが知られている。これらは、インク液滴を吐出するノズル、ノズルが連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室)と、加圧室内のインクを加圧する圧電素子等の電気機械変換素子、あるいはヒータ等の電気熱変換素子、又はインク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備え、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内のインクを加圧することにより、ノズルからインク液滴を吐出させている。
【0003】
エネルギー発生手段に用いられる電気機械変換素子等は、現在様々な構造がスパッタリング法などの方法で作製されている。その中で、金属基材上に金属酸化物膜を成膜する際に、熱膨張率や結合の問題から単純に成膜すると密着性が極端に低下するという問題があった。
【0004】
これに対して、基材と膜の間に中間層として基材酸化物又は一部還元された金属酸化膜を用いることが知られている。
特許文献1では、基体と、Ag系材料でなるAg系膜との間に、前記Ag系材料の酸化膜が介在されている積層体が記載されており、基体との良好な密着性を得ている。
特許文献2では、キャパシタを備えた半導体装置の製造方法に関して、第1の貴金属膜としてのIr膜(イリジウム膜)上に形成された貴金属酸化膜としてのIr酸化膜を還元し、その上にPZT膜を形成していることが記載されている。特許文献2では、ばらつきの小さい配向を得て、高いスイッチング電荷量を得ている。
【0005】
しかしながら、金属基材又は金属酸化物として白金族元素を用いた場合、その酸化物の触媒としての性質により、中間層が熱や光の印加により分解され、密着強度が大幅に低下し、膜の剥離が発生する問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る積層体の製造方法、積層体、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
(積層体の製造方法及び積層体)
本発明の積層体の製造方法は、最表面に白金族元素を80%以上含む金属基材を酸化させて、該金属基材の表面に酸化層を形成する酸化工程と、前記酸化層上に金属酸化物層を形成する金属酸化物層形成工程と、前記金属酸化物層形成工程と同時に又は前記金属酸化物層形成工程の後に前記酸化層を還元させて、還元金属層を形成する還元工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態の積層体の製造方法を示す断面模式図である。
【0013】
図1(A)は、製造過程の初期の状態を示すものであり、金属基材1が図示されている。本発明における金属基材1は、最表面に白金族元素を80%以上含むものである。金属基材1の最表面に白金族元素が80%以上含むかどうかは、金属基材1に対して、XPS(X線光電子分光)測定を行うことで判断することができる。XPS測定装置としては例えばPHI Quantera sxm(アルバック・ファイ社製)を用いる。
また、「%」とあるのは、白金族金属の原子パーセント濃度(at.%)を意味する。
【0014】
白金族元素は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptであり、本実施形態においては、中でもPdが好ましい。
【0015】
また、金属基材の最表面に含まれる材料としては、白金族元素以外にも例えばニッケル、亜鉛、鉄、銀、金などが挙げられる。
また、金属基材の最表面以外の部分に用いられる材料としては、特に制限されるものではないが、例えばニッケル、鉄、銅、チタンなどが挙げられる。
【0016】
図1(B)では、酸化工程により酸化層2が形成される。本実施形態では、酸素雰囲気下で酸化工程を行う。形成される酸化層2の厚みは、適宜変更することが可能であるが、5nm以下であることが好ましい。5nm以下の場合、後記の還元反応の際に金属酸化物を堆積させつつ還元を行うことが可能となるという利点がある。
【0017】
本実施形態における酸化工程の条件としては、適宜変更することが可能であるが、例えば、雰囲気中の酸素比率を20〜80%、雰囲気圧を0.05〜2Paとすることが好ましい。
【0018】
図1(C)では、金属酸化物層形成工程により、
図1(B)で形成した酸化層2上に金属酸化物層3が形成される。ここで形成される金属酸化物層3は、極薄いことが好ましく、例えば1〜5nmが好ましい。この範囲である場合、後記の還元反応の際に金属酸化物を堆積させつつ還元を行うことが可能となるという利点がある。
【0019】
金属酸化物層3としては、例えばSiO
2、PZT、Al
2O
3、GGG(ガリウムガドリニウムガーネット)等の酸化物が挙げられる。
金属酸化物層3の形成方法としては、例えば反応性スパッタリング法、ALD(Atomic Layer Deposition)等が挙げられる。
【0020】
図1(D)では、還元工程により、酸化層2を還元させて、還元金属層4が形成される。還元する方法としては、例えばスパッタリング、反応性ガスの導入、電子線照射等が挙げられる。
【0021】
本実施形態では、スパッタリングにより還元工程を行うことが好ましい。スパッタリングは酸素雰囲気下で行うことが好ましい。また、金属酸化物層3を形成するために、ターゲットにプラズマを印加したのと同時若しくは直後より、金属基材にもプラズマを印加してスパッタリングにより還元工程を行ってもよい。
また、
図1(B)の酸化工程を酸素雰囲気下で行い、この酸素雰囲気下のまま還元工程を行うことが好ましい。この場合、過剰還元による密着強度低下及び界面白濁を抑えることができる。
【0022】
スパッタリングは、酸化した白金族元素の触媒作用を励起することで酸化層2を還元させることができる。
また、本実施形態におけるスパッタリングのその他の条件としては、例えば、成膜用ターゲット側と被成膜側ワークに同時にプラズマを印加するバイアススパッタリングとすることが好ましい。
【0023】
本実施形態の還元工程では、白金族金属と金属酸化膜の密着性を向上させるため、白金族金属と金属酸化膜の界面部分を還元する。
なお、本実施形態における還元工程では、金属基材1における酸化層2に接する部分が還元されてもよい。また、金属酸化物層3における酸化層2に接する部分が還元されてもよい。
【0024】
また、酸化層2は一部還元されない箇所があってもよいが、密着性の観点から、還元されない箇所は5at.%以下であることが好ましい。
【0025】
形成される還元金属層4の厚みは、適宜変更することが可能であるが、5nm以下であることが好ましい。5nm以下の場合、還元反応の際に金属酸化物を堆積させつつ還元を行うことが可能となる。
【0026】
得られた還元金属層4としては、還元金属層4中、白金族元素を50at.%以上含むことが好ましい。
【0027】
また、還元工程により得られた還元金属層4は、白金族金属と金属酸化物が還元された金属がアモルファス状に混在しており、還元工程を用いずに形成した金属の層に比べて強固に結合している。このような違いは、例えばナノテック社Nano Scratch Testerによるスクラッチ試験や、例えばQuad Group社製Romulusによる薄膜密着強度試験を行うことで判別できる。
【0028】
また、還元される前の金属基材1の最表面と、還元された後の還元金属層4は、最表面における炭素系汚染の除去の有無、金属酸化物層の還元物との混合という点で違いがある。そのため、酸化させた後、還元させた場合、元の状態に戻るわけではない。
【0029】
図1(E)では、第2の金属酸化物層形成工程により、金属酸化物層形成工程で形成された金属酸化物層3上に、更に金属酸化物層が形成される。
第2の金属酸化物層形成工程は、必要に応じて行うものであり、必須の工程ではないが、当該工程を行うことが好ましい。
【0030】
ここでは、金属酸化物層形成工程により形成した金属酸化物層を第1の金属酸化物層と称し、第2の金属酸化物層形成工程により形成した第2の金属酸化物層と称して説明する。第2の金属酸化物層の材料としては、第1の金属酸化物層と同じものであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層が同じ材料である場合、通常、両者の境界はないが、境界があってもよい。
【0031】
第1の金属酸化物層と第2の金属酸化物層の合計の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば0.01〜0.1μmが好ましい。この範囲である場合、基材への応力が小さく変形などを起こしづらいという利点がある。
【0032】
以上のようにして本実施形態の積層体が得られる。本実施形態によれば、白金族元素を含む金属基材上に密着性が高い金属酸化物層を形成することができる。
【0033】
本実施形態の積層体は、白金族元素を含む金属基材上に密着性が高い状態で金属酸化物層が形成されている。
本実施形態の積層体は、還元金属層4と金属基材1との密着性が400kg/cm
2以上であり、還元金属層4と金属酸化物層3との密着性が400kg/cm
2以上である。還元金属層4と金属基材1、還元金属層4と金属酸化物層3のうちどちらか一方が400kg/cm
2未満の場合、膜の剥離が発生する。密着性の測定値は500kg/cm
2以上が好ましく、800kg/cm
2以上がより好ましい。
密着性は薄膜密着強度試験を行うことにより求める。薄膜密着強度試験は、例えばQuad Group社製Romulusを用いて行う。
【0034】
また、上述したように、得られた積層体における還元金属層4の厚みは、5nm以下であることが好ましく、白金族元素を該還元金属層4中に50質量%以上含むことが好ましい。
【0035】
(液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置)
「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0036】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの圧力発生手段が利用でき、本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するエネルギー発生源として本発明の積層体を用いる。
【0037】
液体を吐出するエネルギー発生源として本発明の積層体を用いる場合、例えば、金属基材1を下部電極として用い、金属酸化物層上にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電体膜を形成し、更に上部電極を形成する。また、部材の対接液性の向上のために本発明の積層体を用いる場合、例えば金属基材1を用いた流路形成部品上にSiO
2等の部材保護膜を形成する場合がある。
【0038】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図2を参照して説明する。
図2は同装置の要部側面説明図である。
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0039】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0040】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0041】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0042】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0043】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0044】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0045】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0046】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンクもしくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0047】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0048】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図3を参照して説明する。
図3は同ユニットの要部平面説明図である。
【0049】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0050】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0051】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図4を参照して説明する。
図4は同ユニットの正面説明図である。
【0052】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取り付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0053】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0054】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0055】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0056】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0057】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0058】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
【0059】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0060】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0061】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0062】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0063】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
最表面の原子パーセント濃度(at.%)がPd:Ni=9:1となる金属基材に対し、酸素雰囲気下でプラズマによるアッシングを行う。この際に金属基材の表層の汚染が除去され、また極表層に関しては酸化されPdOxが形成される。また、本実施例ではNiOxも形成される。
次に、形成されたPdOx上にスパッタリング法によりSiO
2膜を形成する。この際に雰囲気ガスはO
2:Ar=50:50の流量比であり、全体雰囲気圧0.2Paである。このSiO
2膜を形成するために、SiO
2ターゲットにプラズマを印加したのと同時若しくは直後より、金属基材にもプラズマを印加してスパッタリングにより還元工程を行う。これにより、SiOx膜が堆積時に表層のPdOxと強固に結びつく。また、成膜時には周辺に酸素が含まれるため、還元作用は発現しない。
その後、成膜が進行し、界面部分がSiOxで被覆されることで反応可能な酸素と酸化した界面が遮断される。この状態において金属部材側にもプラズマが印加されているため、PdOxが反応し還元される。このとき、強固に結びついたSiOxも還元され、Si−Pd間で強固な結合が形成される。
その後、成膜が継続されることで白金族金属基材上に金属酸化物層が強い結合力を維持したまま積層される。
このようにして、本実施例の積層体を得た。
【0066】
(実施例2〜8、比較例1、2)
実施例1において、下記に示す表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。なお、比較例1では還元工程を行わず、金属基材上に金属酸化物層を形成して積層体を得た。
【0067】
(密着性の評価)
得られた積層体に対し、スタッドピン試験を行い密着性の評価を行った。装置はQuad Group社製Romulusを用いた。密着性の測定値が400kg/cm
2以上が合格であり、800kg/cm
2以上が好ましい。表1中、比較例1、2は膜の剥離が発生したため、密着性の測定値は求められなかった。そのため、「−」で示している。
【0068】
【表1】
【0069】
このように、本発明によれば、白金族元素を含む金属基材上に、密着性が高い金属酸化物層を形成することができる積層体の製造方法が得られる。