特許第6965861号(P6965861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6965861-気相成長装置 図000002
  • 特許6965861-気相成長装置 図000003
  • 特許6965861-気相成長装置 図000004
  • 特許6965861-気相成長装置 図000005
  • 特許6965861-気相成長装置 図000006
  • 特許6965861-気相成長装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965861
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20211028BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L21/68 N
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-183689(P2018-183689)
(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-53627(P2020-53627A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 翔平
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−063865(JP,A)
【文献】 特開2012−238758(JP,A)
【文献】 特開2002−064132(JP,A)
【文献】 特開2011−204784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0245978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H01L 21/67−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長の際に半導体基板を支持するサセプタと、
前記サセプタを貫通して上下方向に延びるように設けられて、搬送ロボットにより前記サセプタの上方領域に搬送された半導体基板を前記サセプタへ移動させる際に該半導体基板の裏面を一時的に支持する3つ以上のリフトピンと、
前記リフトピンを昇降させるため下から前記リフトピンを支持する支持部とを備え、
全ての前記リフトピンは互いに同じ長さであり、
前記支持部は、
鉛直方向に延びた支柱と、
前記リフトピンの個数分設けられ、前記支柱から延びて上端面で前記リフトピンの下端を支持するアームとを備え、
一部の前記リフトピンを支持する前記アームの前記上端面が、他の前記リフトピンを支持する前記アームの前記上端面よりも高い位置に設定されており、
前記リフトピンは、半導体基板を傾斜させた状態で支持し、その状態から前記半導体基板を前記サセプタ上に置く際には、前記半導体基板の、傾斜した直径方向における低位置側のエッジから高位置側のエッジに向けて徐々に前記半導体基板を前記サセプタに接触させることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記リフトピンが前記半導体基板を前記傾斜させた状態に支持するまで前記支柱を上昇動作させ、その後、前記半導体基板が前記サセプタ上に載置されるまで前記支柱を下降動作させるアクチュエータを備えることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記傾斜させた状態での半導体基板の水平面に対する傾斜角度が0.1°以上、10°未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記傾斜させた状態での半導体基板の水平面に対する傾斜角度が0.1°以上、1°未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項5】
全ての前記リフトピンが前記サセプタの中心から互いに等距離に設けられたことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面に薄膜を気相成長させてエピタキシャルウェーハを得る装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンピュータに備わるメモリ及び演算素子、並びに、デジタルカメラ及びビデオに備わる撮像素子等の様々な半導体デバイスがシリコン基板を用いて作製されている。特に先端向けの半導体デバイスを作製する場合には、シリコン基板の表面に気相成長でシリコン層を堆積させたシリコンエピタキシャルウェーハが用いられる。
【0003】
このようなエピタキシャルウェーハは、例えば、トリクロロシラン(TCS)等の原料を1100℃以上の高温で気相反応させ、シリコン基板の表面にシリコンエピタキシャル層を気相成長して作製される。作製されたエピタキシャルウェーハをもとに半導体デバイスが作製されるため、エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層における膜厚と抵抗率は、半導体デバイスの特性に大きな影響を与える。それ故、半導体デバイスに用いるエピタキシャルウェーハにおいては、エピタキシャル層の膜厚と抵抗率がウェーハの面内方向において均一となる高品質なエピタキシャルウェーハが求められる。
【0004】
高品質なエピタキシャル層を成長する装置として、1枚の半導体基板(以下、単に基板という場合がある)毎に基板の表面にエピタキシャル層を成長する枚葉式の気相成長装置が知られる。このような気相成長装置においては、例えば、石英製のブレードに基板を載置した状態で基板を搬送する搬送ロボットが用いられ、搬送ロボットにより基板が反応容器内に搬送される。反応容器内に搬送された基板は、例えば、リフトピンで搬送ロボットのブレード上からサセプタに向けて搬送され、基板はサセプタ上に載置される。
【0005】
基板が載置されるサセプタには、基板より直径が大きい円盤状にサセプタの表面が窪んだザグリ部が形成され、ザグリ部の内側に基板が載置される。ザグリ部に載置される基板は、基板とザグリ部の中心を一致させ、基板とザグリ部との間に環状の隙間ができるように載置することが望ましい。しかし、基板とサセプタが接触する際には、両者の隙間にガスが存在するため、サセプタ上で基板が横滑りすることがある。この場合、基板の中心がザグリ部の中心からずれた状態で基板がザグリ部に載置され、基板とザグリ部との間に幅が不均一な環状の隙間が形成される。この状態で基板にエピタキシャル層を成長すると、基板に供給される原料ガス等の流れが隙間に起因して基板の周方向で不均一となる。その結果、成長させるエピタキシャル層の外周部で膜厚が不均一となり、膜厚の均一性が悪化する。
【0006】
ここで、特許文献1には、液晶ディスプレイやフラットパネルの製造に利用される、ガラス素材またはポリマー素材から構成される大面積基板と、これを支持する基板支持体との間からガスを追い出す技術が開示されている。特許文献1の技術では、大面積基板を基板支持体に移送する際に大面積基板の裏面を支持する第1セットのリフトピンと、第1セットのリフトピンよりも基板の内側を支持する第2セットのリフトピンとを設ける。そして、第1セットのリフトピンの長さや突出量を第2セットのリフトピンのそれよりも大きくすることで、大面積基板の断面形状を弓状に曲がった形状に制御し、大面積基板の中心から外縁にかけて徐々に基板支持体に接触させる。このように、特許文献3の技術では、基板のたわみを利用して、基板と基板支持体との間のガスを追い出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−49867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術は、たわみの少ない半導体基板のサセプタへの移送に適用する必要はない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、半導体基板がサセプタ上で横滑りするのを抑制できる気相成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の気相成長装置は、
気相成長の際に半導体基板を支持するサセプタと、
前記サセプタを貫通して上下方向に延びるように設けられて、搬送ロボットにより前記サセプタの上方領域に搬送された半導体基板を前記サセプタへ移動させる際に該半導体基板の裏面を一時的に支持する3つ以上のリフトピンと、
前記リフトピンを昇降させるため下から前記リフトピンを支持する支持部とを備え、
全ての前記リフトピンは互いに同じ長さであり、
前記支持部は、
鉛直方向に延びた支柱と、
前記リフトピンの個数分設けられ、前記支柱から延びて上端面で前記リフトピンの下端を支持するアームとを備え、
一部の前記リフトピンを支持する前記アームの前記上端面が、他の前記リフトピンを支持する前記アームの前記上端面よりも高い位置に設定されており、
前記リフトピンは、半導体基板を傾斜させた状態で支持し、その状態から前記半導体基板を前記サセプタ上に置く際には、前記半導体基板の、傾斜した直径方向における低位置側のエッジから高位置側のエッジに向けて徐々に前記半導体基板を前記サセプタに接触させることを特徴とする。
【0011】
これによれば、半導体基板はリフトピンによって傾斜した状態からサセプタ上に置かれるので、半導体基板とサセプタとが接触する際に、両者の間にあるガスが隙間の大きいエッジ側から抜ける。これにより、半導体基板がサセプタ上で横滑りするのを抑制できる。また、半導体基板のたわみではなく、傾斜を利用してガスを逃がすので、半導体基板の性質(直径、厚み、組成など)に依存せずに半導体基板の横滑りを抑制できる。なお、「半導体基板を傾斜させた状態」とは、半導体基板のたわみが無いと仮定した場合に半導体基板の全体が一定角度(同一角度)で傾斜している状態を意味し、半導体基板がたわむことで部分的に傾斜した状態(つまりたわんだ状態)とは異なる。
【0014】
また、本発明の気相成長装置において、傾斜させた状態での半導体基板の水平面に対する傾斜角度が0.1°以上、10°未満であるのが望ましい。半導体基板の傾斜角度を0.1°より小さくすると、半導体基板とサセプタとの間のガス抜き効果が小さい。傾斜角度を10°以上とすると、半導体基板がリフトピン上で滑ってしまい、リフトピンから滑り落ちてしまうおそれがある。半導体基板のリフトピン上での滑りを確実に防ぐためには、傾斜角度は1°未満とするのがより望ましい。
【0015】
また、本発明の気相成長装置において、全てのリフトピンがサセプタの中心から互いに等距離に設けられたとしてもよい。特許文献3のようにサセプタ(基板支持体)の中心からの距離が異なる複数セットのリフトピンを設けると装置構成が複雑になってしまう。サセプタの中心からの距離が等しいリフトピンのみを設けることで装置構成が複雑になってしまうのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の気相成長装置を側方から見た断面図であって、長さの異なるリフトピンで半導体基板を傾斜させて支持した状態の図である。
図2】変形例の気相成長装置を側方から見た断面図であって、高さの異なるリフトピン支持パーツのアームによって同一長さの各リフトピンを支持し、これらリフトピンで半導体基板を傾斜させて支持した状態の図である。
図3】比較例の気相成長装置を側方から見た断面図であって、リフトピンで半導体基板を水平に支持した状態の図である。
図4】別の比較例の気相成長装置を側方から見た断面図であって、サセプタにガス逃げ用の貫通孔が形成されるとともに、リフトピンで半導体基板を水平に支持した状態の図である。
図5】実施例におけるサセプタの中心からの基板の相対位置のばらつきを示すグラフである。
図6】比較例におけるサセプタの中心からの基板の相対位置のばらつきを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。先ず、図1を参照して、本発明に係る気相成長装置の好適な一例としての、本実施形態の枚葉式の気相成長装置1について説明する。
【0020】
気相成長装置1は、シリコン基板等の半導体基板W(以下、基板という場合がある)の主表面にシリコン単結晶膜等の薄膜を気相成長させて、シリコンエピタキシャルウェーハ等のエピタキシャルウェーハを製造する装置である。なお、基板Wは例えば直径300mm以下の円盤状の半導体基板であるが、直径300mmより大きい基板であってもよい。
【0021】
気相成長装置1は、サセプタ3と、該サセプタ3が内部に配される反応容器11と、サセプタ3を支持するサセプタ支持パーツ4と、該サセプタ支持パーツ4を支持して回転駆動及び昇降動作させるアクチュエータ6aと、サセプタ3を表裏に貫通するとともに該サセプタ3に対し昇降動作可能に設けられ、基板Wを支持した状態で昇降動作するのに伴わせて該基板Wをサセプタ3上に着脱するためのリフトピン5と、該リフトピン5を下から支持するリフトピン支持パーツ7と、該リフトピン支持パーツ7を支持して回転駆動及び昇降動作させるアクチュエータ6bと、気相成長の際に基板Wを成長温度に加熱するための上部加熱装置14a及び下部加熱装置14b(具体的には、例えばハロゲンランプ)と、原料ガス(具体的には、例えばトリクロロシラン)およびキャリアガス(具体的には、例えば水素)を含む気相成長用ガスを反応容器11内のサセプタ3上側の領域に導入して該サセプタ3上の基板Wの主表面上に供給する気相成長用ガス導入管15と、気相成長用ガス導入管15と反応容器11に対し反対側に設けられ該反応容器11からガス(気相成長用ガスおよびパージガス)を排気する排気管16とを備えて概略構成されている。なお、ガス導入管15は、反応容器11の水平方向における一端側に位置して、気相成長用のガスを水平方向に導入する。排気管16は、反応容器11の水平方向における、ガス導入管15の反対側に位置する。また、気相成長装置1は、反応容器11内に基板Wを搬入する搬送ロボット(図示外)を備える。
【0022】
サセプタ3は気相成長の際に基板Wを支持するものであり、例えば炭化珪素で被覆されたグラファイトにより構成されている。サセプタ3は、例えば略円盤状に構成されており、表面及び裏面が水平となるように設けられる。サセプタ3の表面及び裏面は平坦面となっている。また、サセプタ3には、表裏を貫通するリフトピン挿入用の貫通孔3aが、リフトピン5の個数分(3つ以上)形成されている。各貫通孔3aは、サセプタ3の中心Oから等距離となる位置に形成されるとともに、中心Oに対する円周方向において等間隔に形成されている。つまり、例えば貫通孔3aの個数が3つとすると、3つの貫通孔3aは、中心Oに対する円周方向において120°間隔で形成されている。また、各貫通孔3aの、サセプタ3の表面からの一部区間は、サセプタ3の裏面に近づくにしたがって次第に径が小さくなるテーパー孔部として形成され、残りの区間が、径が変化しない一定径孔部として形成されている。
【0023】
また、図1の例では、サセプタ3の表面に、基板Wを載置するためのザグリ部が形成されていないが、ザグリ部が形成されていてもよい。また、サセプタ3上に基板Wが載置されたときには、貫通孔3aに対向する部分を除いて基板Wの裏面の全体がサセプタ3の表面に接触する。
【0024】
サセプタ支持パーツ4は、鉛直方向(上下方向)に延びた支柱4aと、支柱4aの上部から斜め上方に延びた3つ以上のアーム4bと、各アーム4bの先端を構成し、サセプタ3の裏面に接続された接続部4cとを備えている。各アーム4bにはリフトピン挿入用の貫通孔4dが形成されている。支柱4aの軸線L上にサセプタ3の中心Oが位置している。
【0025】
アクチュエータ6aは、支柱4aの下部を支持して、基板Wに薄膜を気相成長させる際には支柱4aをその軸線L回りに回転させる。アクチュエータ6aは、サセプタ3に対して基板Wを着脱する際には支柱4aを軸線Lの方向に移動させる。
【0026】
リフトピン5は3つ以上設けられる。各リフトピン5は、サセプタ3の貫通孔3a及びアーム4bの貫通孔4dに挿入されて、鉛直方向(上下方向)に延びている。また、各リフトピン5は、サセプタ3の中心O(言い換えると、サセプタ3の回転軸線L)から等距離となる位置に設けられるとともに、中心Oに対する円周方向において等間隔となる位置に設けられている。
【0027】
リフトピン5は、丸棒状の部分と、該部分の上端において上方にいくにしたがって次第に径が大きくなるテーパー部5cとを備えて構成されている。サセプタ3に対してリフトピン5が下降した状態にあるときには、このテーパー部5cが、貫通孔3aのテーパー孔部に収まることで、リフトピン5の上端面がサセプタ3の表面に対して若干引っ込んだ位置となるとともに、リフトピン5がサセプタ3の下側に外れないようになっている。また、リフトピン5の下端はリフトピン支持パーツ7の先端部7cに固定されていなくてもよいし、固定されていてもよい。
【0028】
さらに、各リフトピン5は、基板Wをリフトピン5に載せた際に、基板Wが水平面に対して傾斜し、かつ、リフトピン5から滑り落ちないように、リフトピン5間で長さが異なっている。基板Wをリフトピン5に載せた際の基板Wの水平面に対する傾斜角度は、基板Wがリフトピン5から滑り落ちないようにすることと、基板Wとサセプタ3との隙間のガス抜き効果とを考慮すると、0.1°以上、10°未満であることが望ましく、より望ましくは0.1°以上、1°未満である。この傾斜角度を満たすように各リフトピン5の長さが設定されている。
【0029】
より具体的には、例えば、図1のように側面視で見てリフトピン5の配置領域をサセプタ3の回転軸線Lを境界に2つの領域に分けたときに、一方の領域(以下第1領域という)に位置するリフトピン5aは、他方の領域(以下第2領域という)に位置するリフトピン5bよりも長い。なお、第1領域に位置するリフトピン5aの個数が複数の場合には、複数のリフトピン5aは互いに同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。同様に、第2領域に位置するリフトピン5bの個数が複数の場合には、複数のリフトピン5bは互いに同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0030】
また、例えば、リフトピン5の個数が3つの場合には、長い方のリフトピン5aの個数が1つ、短い方のリフトピン5bの個数が2つであってもよいし、長い方のリフトピン5aの個数が2つ、短い方のリフトピン5bの個数が1つであってもよい。
【0031】
リフトピン支持パーツ7は鉛直方向に延びた支柱7aと、支柱7aの上部から斜め上方に延びた、リフトピン5の個数分(3つ以上)のアーム7bと、各アーム7bの先端を構成し、リフトピン5の下端を支持するための先端部7cとを備えている。支柱7aは筒状に形成されており、支柱7aの内側にサセプタ支持パーツ4の支柱4aが設けられる。支柱7aの軸線が、サセプタ支持パーツ4の支柱4aの軸線Lに一致している。アーム7b及び先端部7cは、サセプタ支持パーツ4のアーム4bの下側に位置する。また、各先端部7cの上面(リフトピン5との接触面)は互いに同一の高さ位置に設定されている。なお、リフトピン支持パーツ7が本発明の支持部に相当する。
【0032】
アクチュエータ6bは、支柱7aの下部を支持して、基板Wに薄膜を気相成長させる際には支柱7aを軸線L回りに回転させる。この際、アクチュエータ6bは、支柱7aの回転速度と、支柱4aの回転速度とを同期(一致)させる。また、アクチュエータ6bは、サセプタ3に対して基板Wを着脱する際には支柱7aを軸線Lの方向に移動させる。この際、リフトピン5毎に設けられた複数のアーム7b及び先端部7cの昇降動作(昇降速度、昇降開始時点、昇降終了時点及び位置)は全て同期(一致)している。
【0033】
以上が気相成長装置1の構成である。次に、気相成長装置1を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する。先ず、搬送ロボットが基板Wを反応容器11内のサセプタ3の上方領域まで搬送する。次に、リフトピン5が基板Wの裏面を支持するまで、アクチュエータ6bが上昇動作する。アクチュエータ6bが上昇動作すると、これに接続されたリフトピン支持パーツ7が上昇動作し、リフトピン支持パーツ7の先端部7cで支持されたリフトピン5も上昇動作してサセプタ3の表面から突出する。この際、リフトピン5は、サセプタ3の貫通孔3a及びサセプタ支持パーツ4の貫通孔4dにより、傾かないように規制される。
【0034】
上記のように一部のリフトピン5aの長さを他のリフトピン5bの長さと異ならせているので、基板Wは、リフトピン5a、5bにより一時的に支持された状態では水平面に対して傾いた状態となる。
【0035】
その後、基板Wがサセプタ3上に載置されるまで、アクチュエータ6bが下降動作する(載置工程)。アクチュエータ6bが下降動作すると、これに接続されたリフトピン支持パーツ7が下降動作し、リフトピン支持パーツ7の先端部7cで支持されたリフトピン5及びリフトピン5に支持された基板Wも下降動作する。
【0036】
基板Wは傾斜した状態でリフトピン5に支持されるので、サセプタ3の表面に接触する際には、基板Wの、傾斜した直径方向における低位置側のエッジ(図1では左側のエッジ)から高位置側のエッジ(図1では右側のエッジ)に向けて徐々にサセプタ3に接触し、最終的に基板Wはサセプタ3に水平に保持される。これにより、基板Wとサセプタ3の間にあるガスが、サセプタ3との隙間の大きいエッジ(図1では右側のエッジ)側から抜ける。
【0037】
その後、加熱装置14a、14bにより基板Wを所定の成長温度(例えば1100℃以上)に加熱し、かつ、アクチュエータ6a、6bによりサセプタ支持パーツ4、サセプタ3、リフトピン支持パーツ7及びリフトピン5を軸線L回りに回転させつつ、ガス導入管15から気相成長用ガスを反応容器11内に導入することで、水平に保持された基板Wの主表面上にシリコン単結晶膜等の薄膜を気相成長させる(成長工程)。
【0038】
その後、アクチュエータ6bを上昇動作させることで、気相成長後の基板W(エピタキシャルウェーハ)をサセプタ3の上方領域に突出させる。その後、搬送ロボットが基板Wを反応容器11外に搬送する。
【0039】
なお、基板Wをサセプタ3に着脱する際には、アクチュエータ6bの昇降動作に加えて又は代えて、アクチュエータ6aを昇降動作させてサセプタ支持パーツ4及びサセプタ3を昇降動作させることで、サセプタ3に対してリフトピン5を相対的に昇降動作させてもよい。
【0040】
このように、本実施形態では、基板Wをサセプタ3に載置する際に、両者の間にあるガスを効果的に逃がすことができるので、基板Wがサセプタ3上で横滑りするのを抑制できる。これにより、気相成長の際に、基板Wの中心と、サセプタ3の中心O(回転軸線L)とのズレを抑制できる。これにより、水平方向に導入された気相成長用ガスを、軸線Lの回りに回転する基板Wに均一に当てることができ、成長した薄膜の面内特性(膜厚、抵抗率等)を均一にできる。
【0041】
また、サセプタ3にザグリ部が形成された場合であっても、ザグリ部内において基板の横滑りを抑制でき、ザグリ部と基板との間に形成される環状の隙間を均一な幅にすることができる。これにより、基板に成長させる薄膜の外周部での膜厚を均一にできる。
【0042】
また、全てのリフトピン5がサセプタ3の中心Oから等距離に位置し、さらに、基板Wをサセプタ3に着脱する際には、全てのリフトピン5が互いに同期して昇降するので、装置構成が複雑になってしまうのを抑制できる。
【0043】
これに対して、図3に示す比較例の気相成長装置では、全てのリフトピン13が互いに同じ長さに設定され、このリフトピン13により基板Wは水平に支持されるので、基板Wをサセプタ3に載置する際に、両者の間にあるガスによって、両者が接触する直前に基板Wの浮きが発生する。そして、基板Wが横滑りを起こした場合、最終的に基板Wがサセプタ3と接触する位置がばらついてしまう。なお、図3において、図1の気相成長装置1の構成と同様の構成には同一の符号を付している。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0045】
(実施例)
実施例として、図1の気相成長装置1を用意した。ただし、サセプタ3としてガス逃げ用の貫通孔を有していないものを用意した。リフトピン5の個数は3つであり、そのうち1つのリフトピン5aの長さを、残り2つのリフトピン5bよりも1mm長くした。直径300mmのシリコン基板Wを反応容器11内にロボット搬送し、リフトピン5a、5bでシリコン基板Wを保持させた。このときのシリコン基板Wの水平面に対する傾斜角度は0.1°以上、1°未満の角度である。その後、リフトピン5a、5bを降下し、サセプタ3上にシリコン基板Wを載置し、サセプタ3を加熱装置14a、14bで1150℃に加熱し、原料ガスをトリクロロシランとしてシリコン単結晶膜の気相成長反応を実施した。このとき、サセプタ3の中心Oに対するシリコン基板Wの中心の相対位置を算出した。この一連の工程を複数のシリコン基板Wに対して行った。
【0046】
(比較例)
比較例として、Φ1.0mmの貫通孔17aを孔ピッチ9mmの間隔で基板載置面の全面に設けたサセプタ17を備え、長さの等しいリフトピン13を3本備えた図4の気相成長装置を用意した。実施例と同様の方法で直径300mmのシリコン基板Wを搬送し、気相成長を実施し、サセプタ17の中心に対するシリコン基板Wの中心の相対位置を算出した。
【0047】
(結果)
実施例におけるサセプタ3の中心からのシリコン基板Wの相対位置のばらつきを図5に示す。比較例におけるサセプタ17の中心からのシリコン基板Wの相対位置のばらつきを図6に示す。図5図6において、X軸とY軸の交点がサセプタの中心を示している。また、図5図6において、白抜きの点は、各シリコン基板Wの中心位置を示している。黒塗りの点は、白抜き点の位置を平均した位置を示している。図5図6の比較により、実施例の気相成長装置1も比較例と同等のばらつきであることが確認できた。なお、比較例では、シリコン基板Wとサセプタ17の間のガスがサセプタ17の貫通孔17aからサセプタ17の下方に抜けることで、実施例と同等の結果となったと考えられる。
【0048】
以上より、リフトピン支持状態にて基板Wに傾斜を設けることで、基板Wとサセプタ3の隙間にあるガスを迅速に逃がすことが可能となり、サセプタ3の中心と基板Wの中心の相対位置のばらつきを抑えることができた。
【0049】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【0050】
例えば、図2の気相成長装置10のように、全てのリフトピン12を互いに同じ長さとし、リフトピン支持パーツ8によって一部のリフトピン12bの下端位置を他のリフトピン12aの下端位置と異なる高さ位置に設定することで、基板Wを傾斜させてもよい。なお、図2において、図1の気相成長装置1と同様の構成には同じ符号を付している。
【0051】
図2では、一部のリフトピン12bを支持するリフトピン支持パーツ8のアーム8aの上端面8bが、他のリフトピン12aを支持するアーム8cの上端面8dよりも高い位置に設定されている。これによって、一部のリフトピン12bの上端を、他のリフトピン12aの上端よりも高い位置にでき、基板Wを傾斜させた状態で支持できる。これによっても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、上記実施例では、リフトピン挿入用の貫通孔以外の貫通孔を有していないサセプタを例示したが、リフトピン挿入用の貫通孔以外の貫通孔を有したサセプタを備えた気相成長装置に本発明を適用してもよい。この場合には、サセプタの貫通孔に起因するガス逃げ効果と、基板を傾斜させた状態からサセプタに載置することに起因するガス逃げ効果とが合わさって、より一層、基板がサセプタ上で横滑りするのを抑制できる。
【符号の説明】
【0053】
1、10 気相成長装置
3、17 サセプタ
4 サセプタ支持パーツ
5、12、13 リフトピン
5a 長いリフトピン
5b 短いリフトピン
6a サセプタ支持パーツと接続されたアクチュエータ
6b リフトピン支持パーツと接続されたアクチュエータ
7、8 リフトピン支持パーツ(支持部)
11 反応容器
14a 上部加熱装置
14b 下部加熱装置
15 気相成長用ガス導入管
16 排気管
W 半導体基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6