特許第6965870号(P6965870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6965870熱伝導性シリコーン組成物及び半導体装置
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  • 特許6965870-熱伝導性シリコーン組成物及び半導体装置 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965870
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20211028BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20211028BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20211028BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K3/08
   C08K9/02
   H01L23/36 D
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-240944(P2018-240944)
(22)【出願日】2018年12月25日
(65)【公開番号】特開2020-100761(P2020-100761A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】秋場 翔太
(72)【発明者】
【氏名】辻 謙一
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−70800(JP,A)
【文献】 特開2017−66406(JP,A)
【文献】 特開2008−101081(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/165608(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101671482(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08L 83/05
C08K 3/08
C08K 9/02
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を含有する熱伝導性シリコーン組成物。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.2〜10モルとなる量
(C)ヒドロシリル化反応用触媒:有効量
(D)タップ密度が3.0g/cm3以上であり、比表面積が2.0m2/g以下であり、かつアスペクト比が、1〜30である銀粉末:(A)成分100質量部に対して、300〜11,000質量部
(E)平均粒径が1nmから100nmであるパラジウム粉が担持された結晶性シリカ:(A)成分100質量部に対して、パラジウム粉が0.00001〜0.05質量部
【請求項2】
発熱性電子部品と、放熱体とを備えている半導体装置であって、前記発熱性電子部品と放熱体との間に、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物が介在していることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物を、発熱性電子部品と放熱体との間で、0.01MPa以上の圧力を掛けられた状態で80℃以上に加熱する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れたシリコーン組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の多くは使用中に熱が発生するので、その電子部品を適切に機能させるためには、その電子部品から熱を取り除くことが必要である。特にパーソナルコンピューターに使用されているCPU等の集積回路素子は、動作周波数の高速化により発熱量が増大しており、熱対策が重要な問題となっている。
従って、この熱を放熱する多くの方法が提案されている。特に発熱量の多い電子部品では、電子部品とヒートシンク等の部材の間に熱伝導性グリースや熱伝導性シートの熱伝導性材料を介在させて熱を逃がす方法が提案されている。
【0003】
特開平2−153995号公報(特許文献1)には、特定のオルガノポリシロキサンに一定粒径範囲の球状六方晶系窒化アルミニウム粉末を配合したシリコーングリース組成物が、特開平3−14873号公報(特許文献2)には、粒径の細かい窒化アルミニウム粉末と粒径の粗い窒化アルミニウム粉末を組み合わせた熱伝導性オルガノシロキサン組成物が、特開平10−110179号公報(特許文献3)には、窒化アルミニウム粉末と酸化亜鉛粉末を組み合わせた熱伝導性シリコーングリースが、特開2000−63872号公報(特許文献4)には、オルガノシランで表面処理した窒化アルミニウム粉末を用いた熱伝導性グリース組成物が開示されている。
窒化アルミニウムの熱伝導率は70〜270W/mKであり、これより熱伝導性の高い材料として熱伝導率900〜2,000W/mKのダイヤモンドがある。特開2002−30217号公報(特許文献5)には、シリコーン樹脂に、ダイヤモンド、酸化亜鉛、分散剤を用いた熱伝導性シリコーン組成物が開示されている。
更に、特開2000−63873号公報(特許文献6)や特開2008−222776号公報(特許文献7)には、シリコーンオイル等の基油に金属アルミニウム粉末を混合した熱伝導性グリース組成物が開示されている。
更には熱伝導率の高い銀粉末を充填剤として用いている特許3130193号公報(特許文献8)、特許3677671号公報(特許文献9)等も開示されている。
しかし、いずれの熱伝導性材料や熱伝導性グリースも、最近のCPU等の集積回路素子の発熱量に対する放熱効果は不十分なものとなってきている。
【0004】
また、ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンシロキサンとに熱伝導性フィラーを配合した熱伝導性シリコーン組成物が、白金系触媒の存在下で付加反応させて弾性硬化物とすることで、該弾性硬化物は、優れた信頼性を発現することが知られている(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−153995号公報
【特許文献2】特開平3−14873号公報
【特許文献3】特開平10−110179号公報
【特許文献4】特開2000−63872号公報
【特許文献5】特開2002−30217号公報
【特許文献6】特開2000−63873号公報
【特許文献7】特開2008−222776号公報
【特許文献8】特許3130193号公報
【特許文献9】特許3677671号公報
【特許文献10】特開2017−066406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献10等に記載の組成物は、系内に存在する水分、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を代表とするヒドロシリル化を促進させる触媒の共存化で、SiH基の水素が脱離することにより、系内に水素ガスの気泡が発生し、硬化物の外観や物性を損なう場合がある。また、塩基性成分との接触や塩基性成分が同一系内に共存することでも同様に、SiH基の水素が脱離し、系内に水素ガスの気泡が発生し、硬化物の外観や物性を損なう場合もある。
系内で発生する水素ガスを低減する手段として、SiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてSiH基の量が少ない又は活性の低い構造を持つSiH基を含有するオルガノハイドロジェンシロキサンを用いること、SiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量を低減することなどが挙げられるが、架橋剤として作用する成分の構造及び配合量が限られるため、組成物の特性が制限され、所望とする物性や放熱効果が得られないという問題がある。
従って、本発明の目的は、良好な放熱効果を奏し、かつ系内の気泡を効果的に抑制させ、良好な外観や物性を有する硬化物を与える熱伝導性シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定のタップ密度、比表面積、及びアスペクト比を持つ銀粉末と、結晶性シリカにパラジウム粉を担持させた担持体とを特定のオルガノポリシロキサン中に混合することで組成物の熱伝導性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の熱伝導性シリコーン組成物等を提供するものである。
【0008】
<1>
下記、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を含有する熱伝導性シリコーン組成物。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.2〜10モルとなる量
(C)ヒドロシリル化反応用触媒:有効量
(D)タップ密度が3.0g/cm3以上であり、比表面積が2.0m2/g以下であり、かつアスペクト比が、1〜30である銀粉末:(A)成分100質量部に対して、300〜11,000質量部
(E)平均粒径が1nmから100nmであるパラジウム粉が担持された結晶性シリカ:(A)成分100質量部に対して、パラジウム粉が0.00001〜0.05質量部
<2>
発熱性電子部品と、放熱体とを備えている半導体装置であって、前記発熱性電子部品と放熱体との間に、<1>に記載の熱伝導性シリコーン組成物が介在していることを特徴とする半導体装置。
<3>
<1>に記載の熱伝導性シリコーン組成物を、発熱性電子部品と放熱体との間で、0.01MPa以上の圧力を掛けられた状態で80℃以上に加熱する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、組成物の一成分であるSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造や配合量の制限なく、所望の特性を発揮する組成及び配合量において、その硬化物が優れた熱伝導性を有し、系内の気泡を抑制できるため、硬化物の外観や物性が損なわれることがなく、半導体装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の半導体装置の1例を示す縦断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物について以下詳述する。
【0012】
(A)成分
(A)成分のオルガノポリシロキサンは本発明の組成物のベースポリマーであり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有する。
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状構造、環状構造が挙げられ、これらの構造は分岐を有していてもよいが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンが(A)成分として好ましく用いられる。
(A)成分の25℃における動粘度は、10mm2/sより小さいと組成物にした時にオイルブリードが出やすくなり、100,000mm2/sより大きいと組成物に配合したときの組成物の絶対粘度が高くなることから取り扱い性が低下する。そのため、(A)成分の25℃における動粘度は10〜100,000mm2/sであることが好ましく、特に100〜50,000mm2/sであることが好ましい。なお、本明細書に記載される(A)成分のオルガノポリシロキサンの動粘度はオストワルド粘度計で測定した25℃の値である。
【0013】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4のものが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。(A)成分のオルガノポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、該アルケニル基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。
【0014】
(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、アルキル基、特に、メチル基、エチル基、ブロピル基、プチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;アリール基、特に、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜14のアリール基;アラルキル基、特に、ベンジル基、フェネチル基等の炭素原子数7〜14のアラルキル基;ハロゲン化アルキル基、特に、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜3のハロゲン化アルキル基などの、非置換またはハロゲン置換一価炭化水素基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0015】
(A)成分の具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R13SiO0.5(R1はアルケニル基以外の非置換または置換の一価炭化水素基である。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5(R2はアルケニル基である。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示される単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体が挙げられる。これら(A)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0016】
上式中のR1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。また、上式中のR2としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物中、(A)成分は、0.01〜25質量%含有することが好ましい。
【0018】
(B)成分
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用する。(B)成分の分子構造に特に制限はなく、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来公知の各種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0019】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に2個以上、好ましくは3個以上(通常、3〜500個、好ましくは3〜200個、より好ましくは3〜100個程度)のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、ヒドロシリル基またはSiH基)を有する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが線状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0020】
(B)成分の一分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2〜1,000、より好ましくは3〜300、更により好ましくは4〜150程度である。更に、(B)成分の25℃における粘度は、好ましくは0.1〜5,000mPa・s、より好ましくは0.5〜1,000mPa・s、更により好ましくは5〜500mPa・s程度である。なお、本明細書に記載される(B)成分のオルガノポリシロキサンの粘度(絶対粘度)は株式会社マルコム社製の型番PC−1TL(10rpm)で測定した25℃の値である。
【0021】
(B)成分としては、例えば、下記平均組成式(1):
3abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R3は、脂肪族不飽和基を除く、非置換または置換の、炭素原子数が好ましくは1〜14、より好ましくは1〜10の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基であり、aおよびbは、好ましくは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0、より好ましくは、0.9≦a≦2.0、0.01≦b≦1.0、かつ1.0≦a+b≦2.5を満足する正数である)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。
【0022】
上記R3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロビル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フエニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換した基、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0023】
(B)成分は公知の製法によって得ることができる。一般的な製造方法としては、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラハイドロシクロテトラシロキサン(場合によっては、該シクロテトラシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物)とヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の末端基源となるシロキサン化合物とを、あるいは、オクタメチルシクロテトラシロキサンと1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化させる方法が挙げられる。
【0024】
(B)成分の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジエンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R13SiO0.5(R1は(A)成分について定義および例示したとおりである。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:R12HSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12HSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R1HSiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体が挙げられる。これら(B)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0025】
(B)成分の配合量は、全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の量が0.2〜10モル、好ましくは1.0〜8.0モルの範囲内となる量である。このとき、全組成物中に存在するアルケニル基に対する(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の割合は50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましい。全組成物中にアルケニル基を有する成分として(A)成分しか存在しない場合には、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のSiH基の量が0.5〜10モル、好ましくは1.0〜8.0モルの範囲内となる量である。(B)成分の配合量が少なすぎると組成物が十分に硬化しない場合があり、逆に多すぎると得られる硬化物(シリコーンゴム)の耐熱性が極端に劣る場合がある。
【0026】
(C)成分
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のSiH基との付加反応を促進するものであれば、いかなる触媒を使用してもよい。例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンもしくはアセチレン化合物との配位化合物等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が(C)成分として使用されるが、特に好ましくは白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体等の白金系触媒である。
【0027】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応用触媒としての有効量であれば特に制限されないが、(A)及び(B)成分の合計量に対して、触媒金属元素に換算して質量基準で好ましくは0.1〜2,000ppm、より好ましくは1〜1,500ppmの範囲である。該添加量がこの範囲だと、付加反応が十分に促進され、硬化が十分であり、経済的に有利である。また、金属触媒の種類としては、ヒドロシリル化反応用触媒としての有効活性を持つ金属であれば特に制限されないが、水素ガスを原子に分割させる活性を持つ白金等が有用である。
【0028】
(D)成分
(D)成分は、タップ密度が3.0g/cm3以上であり、比表面積が2.0m2/g以下であり、かつアスペクト比が1〜30の銀粉末である。
(D)成分の銀粉末のタップ密度は、3.0g/cm3より小さいと(D)成分の組成物への充填率が上げられなくなり、組成物の粘度が上がってしまい、作業性が悪くなるため、3.0g/cm3〜8.0g/cm3の範囲が好ましく、4.5g/cm3〜8.0g/cm3の範囲がより好ましく、5.5g/cm3〜8.0g/cm3の範囲がさらに好ましい。
(D)成分の銀粉末の比表面積は、2.0m2/gより大きいと(D)成分の組成物への充填率が上げられなくなり、組成物の粘度が上がってしまい、作業性が悪くなるため0.08m2/g〜2.0m2/gの範囲が好ましく、0.08m2/g〜1.5m2/gの範囲がより好ましく、0.08m2/g〜1.0m2/gの範囲がさらに好ましい。
尚、本明細書に記載のタップ密度は、銀粉末100gをはかり、該銀粉末をロートで100mlメスシリンダーに静かに落とした後、シリンダーをタップ密度測定器にのせて落差距離20mm、60回/分の速さで600回落下させ、圧縮した銀粉末の容積から算出した値である。
また、比表面積は、銀粉末約2gをサンプルにとり、60±5℃で10分間脱ガスした後、比表面積自動測定装置(DET法)にて総表面積を測定した。その後、サンプル量をはかり、下記式(2)で計算し、算出したものである。
【0029】
比表面積(m2/g)=総表面積(m2)/サンプル量(g) (2)
【0030】
(D)成分の銀粉末のアスペクト比は、1〜30であり、好ましくは2〜20の範囲であり、より好ましくは3〜15の範囲である。アスペクト比とは、粒子の長径と短径の比率(長径/短径)をいう。その測定方法としては、例えば粒子の電子顕微鏡写真を撮り、この写真から粒子の長径と短径を測定して、算出することが出来る。粒子の大きさは上面からの電子顕微鏡写真で測定でき、この上面の電子顕微鏡写真から大きい方の直径を長径として測定する。この長径に対して短径は粒子の厚さになる。粒子の厚さは上面からの電子顕微鏡写真では測定できない。粒子の厚さを測定するには、電子顕微鏡写真を撮る際に、粒子の載っている試料台を傾斜させて取り付け、上面から電子顕微鏡写真を撮り、試料台の傾きの角度で補正して粒子の厚さを算出すればよい。具体的には、電子顕微鏡で数千倍に拡大した写真を数枚撮影した後、任意に100個の粒子の長径及び短径を測定し、長径と短径の比(長径/短径)を算出して、平均値を求めてアスペクト比とした。
【0031】
(D)成分の銀粉末の粒径は特に限定されないが、平均粒径は0.2〜30μmの範囲が好ましく、特に1.0〜20μmの範囲が好ましい。平均粒径は銀粉末をミクロスパテラで1〜2杯100mlビーカーにとり、イソプロピルアルコールを約60ml入れて、超音波ホモジナイザーで1分間銀粉末を分散させた後、レーザー回折式粒度分析計により測定した体積基準の体積平均径[MV]である。なお、測定時間は30秒で測定した。
【0032】
本発明で用いる銀粉末の製造方法としては、特に限定されないが、例えば電解法、粉砕法、熱処理法、アトマイズ法、還元法等が挙げられる。
銀粉末は、上記方法で製造されたものをそのまま用いてもよく、上記数値範囲を満たす範囲で粉砕して用いてもよい。銀粉末を粉砕する場合、装置は特に限定されず、例えば、スタンプミル、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、圧延ローラ、乳鉢等の公知の装置を用いることができる。なかでも、スタンプミル、ボールミル、振動ミル、ハンマーミルが好ましい。
【0033】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、300〜11,000質量部である。(A)成分100質量部に対して、(D)成分の配合量が300質量部より少ないと得られる組成物の熱伝導率が悪くなり、11,000質量部より多いと組成物の流動性が悪くなり組成物の取扱い性が悪くなる。(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは300〜5,000質量部、より好ましくは500〜5,000質量部の範囲である。
【0034】
(E)成分
(E)成分は平均粒径が1nmから100nmであるパラジウム粉が担持された結晶性シリカである。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、微細な特定の粒径範囲のパラジウム粉を有する(E)成分を特定のごく少量含むことにより、組成物の硬化反応中に発生する水素ガスを(E)成分のパラジウム粉が吸着し、熱伝導性を損なうことなく、硬化物の外観や物性が良好なものとなる。(E)成分中のパラジウム粉の平均粒径は、1nmから100nmであり、5nmから70nmが好ましく、更に10nmから50nmが好ましい。該平均粒径が1nmより小さいと配合に不都合が生じ、また該平均粒径が100nmより大きいと配合量に対する水素ガスの吸着効率が低くなり、コストパフォーマンス性に劣ることとなる。なお、(E)成分中のパラジウム粉の平均粒径は粒子の電子顕微鏡写真を撮り、数千倍に拡大した写真を数枚撮影した後、任意に100個の粒子の長径を測定した値である。
【0035】
パラジウム粉を担持させる結晶性シリカの粒径は0.5μmから100μmである。該粒径が0.5μmより小さいと組成物の粘度が上昇し、取扱い性が悪化し、また、該粒径が100μmより大きいと熱伝導経路の形成を阻害し、熱性能が低下する。なお、(E)成分中の結晶性シリカの粒径は日装機(株)製マイクロトラックMT330OEXにより測定できる体積基準の体積平均径[MV]である。
【0036】
(E)成分中のパラジウム粉は、サーマルアレスト法による測定で、融点ピークが1553℃から1557℃の範囲にあるものが好ましい。
【0037】
(E)成分の配合方法としては特に制限はない。例えば、(E)成分をそのままの状態で他の成分に添加・分散させてもよい。また、(E)成分を適当な溶媒に分散させた上で他の成分に添加してもよい。更に、(E)成分を適当な分散液(例えば、オルガノシロキサン等)に混合した後、3本ロールミル等の装置を用いて均一に分散させて得られたペースト状態の混合物を他の成分に添加・分散させてもよい。
【0038】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、結晶性シリカに担持されたパラジウム粉量が0.00001〜0.05質量部、好ましくは0.0001〜0.001質量部の範囲であり、更に好ましくは0.0005〜0.001質量部の範囲である。該配合量が少なすぎると本発明の組成物に良好な気泡発生を抑制する効果を付与することができない場合があり、また該配合量が多すぎると熱伝導経路の形成を阻害し、熱性能が低下する場合がある。
【0039】
その他の成分
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上記の(A)〜(E)成分に加えて任意の成分として、以下の成分を含有してもよい。
【0040】
硬化反応制御剤
本発明の組成物において、上記の(A)〜(E)成分に加えて任意の成分として、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を有するとされている従来公知のすべての硬化反応制御剤を使用することができる。このような化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどのアセチレン系化合物、トリアリルイソシアヌル酸、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。硬化反応制御剤による硬化遅延効果の度合は、硬化反応制御剤の化学構造によって大きく異なる。従って、硬化反応制御剤の添加量は、使用する硬化反応制御剤の個々について最適な量に調整すべきであるが、そのような調整は当業者に周知の方法によって容易に行うことができる。一般には、該添加量が少なすぎると室温において本発明組成物の長期貯蔵安定性が得られず、逆に該添加量が多すぎると該組成物の硬化が阻害される。
【0041】
(D)成分及び(E)成分以外の無機化合物粉末及び/又は有機化合物材料
(D)成分及び(E)成分以外の無機化合物粉末及び/又は有機化合物材料としては、
アルミニウム、金、銅、ニッケル、インジウム、ガリウム、金属ケイ素等の金属粉末;
ダイヤモンド粉末;
炭素繊維、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等のカーボン材料;
酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化鉄、二酸化ケイ素(ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ等)等の金属酸化物粉末;
水酸化アルミニウム等の金属水酸化物粉末;
窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物粉末;
炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩;
中空フィラー;シルセスキオキサン;層状マイカ;ケイ藻土;ガラス繊維;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。
これらの中でも、熱伝導率が高いものが好ましい。熱伝導率が高い無機化合物粉末及び/又は有機化合物材料としては、アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、酸化マグネシウム粉末、アルミナ粉末、水酸化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、ダイヤモンド粉末、金粉末、銅粉末、カーボン粉末、ニッケル粉末、インジウム粉末、ガリウム粉末、金属ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、炭素繊維、グラフェン、グラファイト及びカーボンナノチューブが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これら無機化合物粉末及び有機化合物材料の表面は、必要に応じてオルガノシラン、オルガノシラザン、オルガノポリシロキサン、有機フッ素化合物等で疎水化処理を施してもよい。無機化合物粉末及び有機化合物材料の平均粒径は、0.5μmより小さくても100μmより大きくても得られる組成物への充填率が上がらなくなるため、0.5〜100μmの範囲が好ましく、特に1〜50μmの範囲が好ましい。また、炭素繊維の繊維長は10μmより小さくても500μmより大きくても得られる組成物への充填率が上がらなくなるため、10〜500μmの範囲が好ましく、特に30〜300μmの範囲が好ましい。
【0043】
無機化合物粉末及び有機化合物材料の総配合量は、(A)成分100質量部に対して3,000質量部より大きくなると組成物の流動性が悪くなり組成物の取扱い性が悪くなるため、1〜3,000質量部が好ましく、特に5〜2,000質量部が好ましい。
【0044】
更に、本発明組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、その他の任意の成分として、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子またはアルケニル基を一分子中に一個含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子およびアルケニル基のどちらをも含有しないオルガノポリシロキサン、有機溶剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、可塑剤、チキソトロピー付与剤、染料、防かび剤等が含まれていてもよい。
【0045】
本発明のシリコーン組成物の製造方法は、従来公知のシリコーン組成物の製造方法に従えばよく、特に制限されるものでない。例えば、上記(A)〜(E)成分、並びに必要に応じてその他の成分を、トリミックス、ツウィンミックス、プラネタリミキサー(いずれも井上製作所(株)製混合機、登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機、登録商標)、ハイビスディスパーミックス(プライミクス(株)製混合機、登録商標)等の混合機にて10分〜4時間混合することにより製造することができる。また、必要に応じて、50〜200℃の範囲の温度で加熱しながら混合してもよい。
【0046】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、25℃にて測定される絶対粘度が10〜600Pa・sのものが好ましく、15〜500Pa・sのものがより好ましく、15〜400Pa・sであるものが更に好ましい。絶対粘度が上記範囲内であることにより良好なグリースを提供でき、また組成物の作業性にも優れる。該絶対粘度は、各成分を上述した配合量で調製することにより得ることができる。上記絶対粘度は、株式会社マルコム社製の型番PC−1TL(10rpm)を用いて測定した結果である。
【0047】
上記のようにして得られる熱伝導性シリコーン組成物を、0.01MPa以上の圧力を掛けた状態で80℃以上に加熱することで本発明の熱伝導性シリコーン組成物は硬化する。こうして得られた硬化物の性状は限定されないが、例えば、ゲル状、低硬度のゴム状、又は高硬度のゴム状が挙げられる。
【0048】
半導体装置
本発明の半導体装置は、発熱性電子部品の表面と放熱体との間に、本発明の熱伝導性シリコーン組成物が介在することを特徴とする。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、10〜500μmの厚さで介在させることが好ましい。
代表的な構造を図1に示すが本発明はこれに限定されるものではない。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、図1の3に示すものである。
【0049】
本発明の半導体装置を製造する方法としては、本発明の熱伝導性シリコーン組成物を、発熱性電子部品と放熱体との間で、0.01MPa以上の圧力を掛けた状態で80℃以上に加熱する方法が好ましい。この際、掛ける圧力は、0.01MPa以上が好ましく、特に0.05MPa〜100MPaが好ましく、更に0.1MPa〜100MPaが好ましい。加熱する温度は、80℃以上が必要である。好ましくは、100℃〜300℃であり、より好ましくは120℃〜300℃であり、更に好ましくは140℃〜300℃である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の効果をより明確にする目的で、実施例及び比較例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
本発明に関わる効果に関する試験は次のように行った。
【0051】
〔粘度〕
組成物の絶対粘度は、マルコム粘度計(タイプPC−1TL)を用いて25℃で測定した。
【0052】
〔熱伝導率〕
下記表記載の実施例1〜12及び比較例1〜6の各組成物を6mm厚の型に流し込み、0.35MPaの圧力を掛けられた状態で150℃に加熱した後、京都電子工業(株)社製のTPS−2500Sにより、いずれも25℃において熱伝導率を測定した。
【0053】
〔気泡発生試験〕
実施例1〜12及び比較例1〜6の各組成物をスライドガラスに0.1gになるよう計量し、もう1枚のスライドガラスで挟み、25psi(0.17MPa)の圧力で25℃にて15分保持した。その後、無加圧で150℃にて1時間加熱処理して硬化させ、発泡具合を目視で確認した。なお、本気泡発生試験では、組成物由来で発生する気泡の有無を確認する目的のため、硬化は無加圧で行なった。
【0054】
組成物を形成する以下の各成分を用意した。
【0055】
(A)成分
A−1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が600mm2/sのジメチルポリシロキサン
【0056】
(B)成分
B−1:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(25℃における粘度が30mm2/s)
【化1】
【0057】
(C)成分
C−1:(白金触媒):白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のA−1溶液、白金原子として1wt%含有
【0058】
(D)成分
D−1:タップ密度が6.6g/cm3、比表面積が0.28m2/g、アスペクト比が8の銀粉末
D−2:タップ密度が6.2g/cm3、比表面積が0.48m2/g、アスペクト比が13の銀粉末
D−3:タップ密度が3.0g/cm3、比表面積が2.0m2/g、アスペクト比が30の銀粉末
【0059】
(E)成分
E−1:0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は5nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
E−2:0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は90nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
E−3:1.0wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は2nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は約5μmである)
E−4(比較例):0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は110nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
E−5(比較例):0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は0.5nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
【0060】
(F)成分:硬化反応抑制剤
F−1:1−エチニル−1−シクロヘキサノール
【0061】
実施例1〜12及び比較例1〜6
下記表1〜3に示す組成で、次のように混合して実施例1〜12及び比較例1〜6の組成物を得た。
即ち、5リットルプラネタリーミキサー(井上製作所(株)社製)に(A)及び(D)成分を取り、(C)、(E)及び(F)成分を加え25℃で1.5時間混合した。次に、(B)成分を加えて均一になるように混合した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
(E)成分の配合量が少ない比較例3では、硬化物に発泡が確認された。また、(E)成分の配合量が多い比較例4では、硬化物の熱伝導率が低く、所望の熱性能を得られなかった。さらに、結晶性シリカに担持されたパラジウム粉の平均粒径が本発明の範囲外である(E)成分を用いた比較例5及び比較例6では、硬化物に発泡が確認された。
一方、特定の粒径範囲にあるパラジウム粉を有する(E)成分を特定量配合した本願発明の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物は、熱伝導性に優れ、発泡がなかった。
【符号の説明】
【0066】
1.基板
2.発熱性電子部品(CPU)
3.熱伝導性シリコーン組成物層
4.放熱体(リッド)
図1