特許第6965881号(P6965881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965881
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】化学強化ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   C03C21/00 101
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-525180(P2018-525180)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2017023590
(87)【国際公開番号】WO2018003802
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-130231(P2016-130231)
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 光
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂
(72)【発明者】
【氏名】川上 幹通
(72)【発明者】
【氏名】三浦 丈宜
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 準一郎
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−051882(JP,A)
【文献】 特開2015−117167(JP,A)
【文献】 特開2015−042607(JP,A)
【文献】 特開2016−074576(JP,A)
【文献】 特開2015−003857(JP,A)
【文献】 特開2017−30995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および第2の主面を有し、前記第1の主面および前記第1の主面に対向する前記第2の主面に表面圧縮応力が、内部に引張応力が形成された化学強化ガラス板であって、
前記第1の主面および前記第2の主面の面積が1m以上であり、
前記第1の主面および前記第2の主面のうち少なくとも一方の主面において、圧縮応力層の板厚方向の厚さの面内分布が15%以下であり、
前記第1の主面および前記第2の主面の両方の主面において、表面圧縮応力値の面内分布が12%以下であり、
前記化学強化ガラス板の板厚が2mm以上であり、
前記化学強化ガラス板のAlの含有量は3モル%以下であることを特徴とする化学強化ガラス板。
【請求項2】
前記第1の主面および前記第2の主面のうち少なくとも一方の主面の表面圧縮応力値が
250〜500MPaである請求項1に記載の化学強化ガラス板。
【請求項3】
前記第1の主面および前記第2の主面のうち少なくとも一方の主面における圧縮応力層
の板厚方向の厚さが15〜100μmである請求項1または2に記載の化学強化ガラス板。
【請求項4】
JIS R3206(2003)に規定された反りが0.5%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の化学強化ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の強度を向上させるために、ガラス板の主面に圧縮応力、内部に引張応力を形成した強化ガラス板が知られている。強化ガラスには、ガラス板を加熱した後に急冷し主面と内部とに温度差を形成することで得られる物理強化ガラスと、ガラス板を溶融塩に浸漬して主面側のイオン半径の小さなイオンと溶融塩側のイオン半径の大きいイオンとのイオン交換による化学強化ガラスとがある。
【0003】
化学強化ガラス板は、主面に形成される圧縮応力値を物理強化ガラス板に比べて大きくできることから、突発的な衝撃に抗するべく、古くは腕時計のカバーガラス、近年ではスマートフォン等のカバーガラスに用いられてきている。また、特許文献1には、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓として用いられる化学強化ガラス板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/168246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、大面積の化学強化ガラス板は、表面圧縮応力値および圧縮応力を有する板厚方向の層(以下、圧縮応力層という)の板厚方向の厚さに分布が生じやすい。そのため、化学強化ガラス板の主面内で局所的に強度の弱い部分が生じ、衝撃により化学強化ガラス板が割れるおそれがある。
【0006】
また、局所的に強度の弱い部分が生じないように、ガラス板の強度を強くするためには、ガラス板を溶融塩に長時間浸漬させ、表面圧縮応力層を過剰の厚さにしなければならない。
【0007】
したがって、本発明は、圧縮応力層を過剰の厚さに形成することなく、衝撃により割れにくい大面積の化学強化ガラス板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化学強化ガラス板は、第1の主面および前記第1の主面に対向する第2の主面を有し、前記第1の主面および前記第2の主面に表面圧縮応力が、内部に引張応力が形成された化学強化ガラス板であって、前記第1の主面および前記第2の主面の面積が1m以上であり、第1の主面および第2の主面のうち少なくとも一方の主面において、圧縮応力層の板厚方向の厚さの面内分布が15%以下であり、第1の主面および第2の主面の両方の主面において、表面圧縮応力値の面内分布が12%以下であり、化学強化ガラス板の板厚が2mm以上であり、化学強化ガラス板のAlの含有量は3モル%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短時間の溶融塩への浸漬で、衝撃により割れにくい大面積の化学強化ガラス板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の平面図である。
図3図3は、実施例の反り測定位置を説明した化学強化ガラス板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の斜視図である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第1の主面11aに対向する第2の主面11bを有し、第1の主面11aおよび第2の主面11bに表面圧縮応力が、内部に引張応力が形成された化学強化ガラス板であって、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積が1m以上であり、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、表面圧縮応力値の面内分布が15%以下であり、圧縮応力層の板厚方向の厚さの面内分布が15%以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、例えば、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓として好適に用いられる。建築窓としては、例えば、住宅、ビル等の窓が挙げられる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積が1m以上である。面積が1m以上であれば、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓等の各種用途に好適に用いられる。化学強化ガラス板10の面積は、2m以上であってもよく、3m以上であってもよく、5m以上であってもよく、7m以上であってもよい。
【0016】
一方、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積は、10m以下が好ましい。面積が10m以下であれば、化学強化ガラス板の取り扱いが容易になり、例えば化学強化ガラス板の設置時の周辺部材との接触による破損を抑制することができる。面積は、9m以下であってもよく、8m以下であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の形状は、矩形が好ましい。矩形であれば、例えば建築窓、外壁、太陽電池カバーガラスとして設置しやすい。ここで、矩形とは、概略直角四辺形であり、任意の1つの辺から対向して位置する辺までの距離を測定した時、長辺、短辺ともに、測定位置による誤差が各々0.3%以内に収まり、コーナー部に曲率や切欠き等がある形状を含む。
【0018】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、矩形である場合において、第1の主面11aおよび第2の主面11bの長辺の長さは1300mm以上であってもよく、1500mm以上であってもよく、1800mm以上であってもよく、2100mm以上であってもよく、2500mm以上であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、矩形である場合において、第1の主面11aおよび第2の主面11bの短辺の長さは800mm以上であってもよく、1300mm以上であってもよく、1500mm以上であってもよく、1800mm以上であってもよく、2100mm以上であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の板厚は、強度やハンドリング性などから2mm以上が好ましい。板厚は、4mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましく、6mm以上が特に好ましい。一方、厚さが20mm以下であれば、軽量であるため好ましい。板厚は15mm以下がより好ましく、13mm以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、主面11a、11bに表面圧縮応力が形成されている。
【0022】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板は、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓等の各種用途に単板のガラスで使用することができる。また、別の実施形態では、2枚以上のガラス板を中間層フィルムで貼り合わせた合わせガラスとして使用することができる。
【0023】
さらに別の実施形態では、間隔を開けて2枚以上のガラス板を配置し、複層ガラスとして使用することができる。さらに別の実施形態では、ガラス板表面にコーティングをして使用することができる。合わせガラスや複層ガラスの構成では、少なくとも1枚以上に本発明の化学強化ガラス板を使用することができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、表面圧縮応力値(以下、CSという)の面内分布が15%以下であり、圧縮応力層の板厚方向の厚さ(以下、DOLという)の面内分布が15%以下である。ここで、面内分布は次のように定義される。
【0025】
図2は、化学強化ガラス板10の平面図である。
【0026】
化学強化ガラス板の主面11a、11bが矩形の場合には、主面11a、11bの端辺からの距離Lが30mmの位置に線分を引くことにより得られる矩形ABCDにおいて、長辺ABおよびCDに直交し、長辺ABおよびCDを4等分する3つの直線E、F、Gと、短辺ACおよびBDに直交し、短辺ACおよびBDを2等分する1つの直線Hと、線分AB、CD、AC、BDとの15個の交点P1〜P15の、CSおよびDOLの各々において、最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で表した値を本発明の面内分布とする。
【0027】
化学強化ガラス板の主面11a、11bが矩形以外の場合には、主面11a、11bの端辺に面積が最大となるように内接する矩形において、上述した矩形の場合と同様に15個の交点P1〜P15を定めることにより、CSおよびDOLの面内分布が算出される。
【0028】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、CSの面内分布が15%以下である。CSの面内分布が15%以下である主面において、局所的にCSが小さい部分が生じず、衝撃により割れにくい。CSの面内分布は、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましく、4%以下が最も好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、DOLの面内分布が15%以下である。DOLの面内分布が15%以下である主面において、衝撃により割れにくい。DOLの面内分布は、11%以下が好ましく、9%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましく、4%以下が特に好ましく、2%以下が最も好ましい。
【0030】
ここで、CSおよびDOLは、表面応力計により測定することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、CSは250MPa以上が好ましい。CSが250MPa以上であれば、化学強化ガラス板の機械的強度は高い。CSは、300MPa以上がより好ましく、350MPa以上がさらに好ましく、380MPa以上が特に好ましい。
【0032】
一方、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、CSは500MPa以下が好ましい。CSが500MPa以下であれば、応力分布を小さく保つことができる。さらに、内部引っ張り応力が極端に高くなりにくい。また、高温の溶融塩への短時間浸漬であってもよく、化学強化ガラス板10を得るのが容易である。さらに、化学強化ガラス板10を切断するときに、ホイールカッターによる切込み線の形成が容易になる。CSは480MPa以下がより好ましく、460MPa以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、DOLが15μm以上であることが好ましい。DOLが15μm以上であれば、充分な強度が得られ、衝撃に耐えられる。DOLは、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましく、28μm以上が特に好ましく、30μm以上が最も好ましい。
【0034】
一方、DOLは、100μm以下が好ましい。DOLが100μm以下であれば、溶融塩への浸漬が短時間であってもよく、化学強化ガラス板10を得るのが容易である。DOLは、80μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、40μm以下が特に好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、例えば、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓に用いられる場合、主面11a、11bのうち、CSの面内分布が15%以下であり、DOLの面内分布が15%以下である主面が屋外に配置されると、衝撃に耐えられるため好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの両方のCSの面内分布が15%以下であり、DOLの面内分布が15%以下であると、両面が衝撃に耐えられるため好ましい。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの一方または両方に、熱線反射膜や防汚膜等の機能膜を形成してもよい。
【0038】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、主面11a、11bとともに端面12にも圧縮応力層が形成されていてもよい。化学強化後に所望の形状にガラス板を切断する場合には、端面12に圧縮応力層を有さない場合もある。
【0039】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、JIS R3206(2003)により規定された反りが0.5%以下であることが好ましい。反りが0.5%以下であれば、化学強化ガラス板10を例えば建築窓として使用したときに、化学強化ガラス板10へ発生する局部的な応力によるガラスの遅れ破壊などを防止できる。反りは、0.4%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.2%以下が特に好ましく、0.1%以下が最も好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10のガラス転移点Tgは、530℃以上が好ましい。これによって、イオン交換時の表面圧縮応力の緩和を抑止できる。Tgは、540℃以上がより好ましく、550℃以上がさらに好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の粘度が10dPa・sとなる温度T2は、1550℃以下が好ましく、1490℃以下がより好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の粘度が10dPa・sとなる温度T4は、1050℃以下が好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の比重は、2.45〜2.55が好ましい。
【0044】
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
【0045】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10のヤング率は、65GPa以上が好ましい。これによって、剛性や破壊強度が充分となる。ヤング率は70GPa以上であってもよい。一方、ヤング率が90GPa以下であれば、化学強化ガラス板が脆くなる事を抑制し、化学強化ガラス板の切削、ダイシング時の欠けを抑えることができる。ヤング率は85GPa以下であってもよく、80GPa以下であってもよい。
【0046】
ここで、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを56〜75%、Alを0〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを2〜12%含有することが好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示含有量を示す。
【0047】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10において、ガラス組成を前記範囲に限定した理由を以下に説明する。
【0048】
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分であり、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、56%以上が好ましく、63%以上がより好ましく、66%以上がさらに好ましく、68%以上が特に好ましい。また、SiOの含有量は、75%以下が好ましく、73%以下がより好ましく、72%以下がさらに好ましい。SiOの含有量が56%以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が75%以下であると熔解性および成形性の点で優位である。
【0049】
Alは、必須ではないが、化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用があり、特にCSを大きくする作用が大きいため含有させてもよい。また、ガラスの耐候性を向上する。さらに、フロート成形時にボトム面からの錫の浸入を抑制する作用がある。Alを含有する場合は、0.4%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましく、0.8%以上がさらに好ましい。また、Alの含有量が20%以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きくは上昇しないため、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。Alの含有量は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましく、2%以下が最も好ましい。
【0050】
SiOおよびAlの含有量の合計SiO+Alは、80%以下が好ましい。80%以下では高温でのガラスの粘性が低下し、溶融が容易となる。76%以下が好ましく、74%以下がより好ましい。また、SiO+Alは、68%以上が好ましい。68%以上では圧痕がついた時のクラック耐性が向上し、より好ましくは70%以上である。
【0051】
NaOは、イオン交換により表面圧縮応力層を形成させる成分であり、DOLを深くする作用がある。またガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上がさらに好ましい。また、NaOの含有量は、22%以下が好ましく、16%以下がより好ましく、14%以下がさらに好ましい。NaOの含有量が8%以上であると、イオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成しやすい。一方、NaOの含有量が22%以下であると、充分な耐候性が得られる。
【0052】
Oは、イオン交換速度を増大しDOLを深くする効果があるため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎると充分なCSが得られなくなる。KOを含有する場合は、10%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。KOの含有量が10%以下であると、充分なCSが得られる。
【0053】
MgOは、必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。MgOを含有する場合は、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、6%以上がさらに好ましい。また、MgOの含有量は、14%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐薬品性が良好になる。高温での熔解性が良好になり、失透が起こり難くなる。一方、MgOの含有量が14%以下であると、失透の起こりにくさが維持され、充分なイオン交換速度が得られる。
【0054】
ZrOは、化学強化でのCSを大きくする作用がある。しかし、少量のZrOを含有してもコスト増加の割には、その効果は大きくない。したがって、コストが許す範囲で任意の割合のZrOを含有することができる。含有する場合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0055】
CaOは、ガラスを安定化させる成分である。CaOはアルカリイオンの交換を阻害する傾向があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有量を減らすことが好ましい。一方、耐薬品性を向上させるためには、CaOの含有量は、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましい。CaOを含有する場合の量は、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、9%以下がさらに好ましい。CaOの含有量が12%以下であると、充分なイオン交換速度が保たれ、所望のDOLが得られる。
【0056】
SrOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。SrOは、イオン交換効率を低下させる作用があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有しないことが好ましい。含有する場合のSrO量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0057】
BaOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。BaOは、ガラスの比重を重くする作用があるため、軽量化を意図する場合には含有しないことが好ましい。含有する場合のBaO量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0058】
この他、ガラスの熔融の清澄剤として、硫酸塩、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。
【0059】
本発明のガラスは、本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、典型的には1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
【0060】
ZnOは、ガラスの高温での熔融性を向上するために、たとえば2%まで含有してもよい。しかし、フロート法で製造する場合には、フロートバスで還元され製品欠点となるので含有しないことが好ましい。
【0061】
は、高温での熔融性またはガラス強度の向上のために、1%未満の範囲で含有してもよい。一般的には、NaOまたはKOのアルカリ成分とBを同時に含有すると揮散が激しくなり、煉瓦を著しく浸食するので、Bは実質的に含有しないことが好ましい。なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。
【0062】
LiOは、歪点を低くして応力緩和を起こりやすくし、その結果、安定した表面圧縮応力層を得られなくする成分であるので含有しないことが好ましく、含有する場合であってもその含有量は、1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.01%以下が特に好ましい。
【0063】
次に、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法について説明する。
【0064】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10を製造する場合、ガラス板製造工程、化学強化処理工程を経る。
【0065】
ガラス板製造工程では、例えば種々の原料を適量調合し、約1400〜1800℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、ロールアウト法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断してガラス板が製造される。
【0066】
化学強化処理工程では、得られたガラス板に所望の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成する。化学強化処理工程は、予熱工程、化学強化工程、徐冷工程を経る。
【0067】
予熱工程では、化学強化処理を行う前に、ガラス板を予熱する。予熱は、例えば常温の電気炉にガラス板を入れ、電気炉を予熱温度まで昇温し、一定時間保持することにより行われる。昇温終了後に速やかに化学強化工程に移行すると、ガラス板の主面内の温度分布が大きいまま化学強化されるため、CSおよびDOLの面内分布が大きくなりやすい。
【0068】
CSおよびDOLの面内分布を小さくするため、昇温終了後にガラス板を予熱温度にて一定時間保持するとよい。この保持時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上が、さらに好ましく、40分以上が、特に好ましい。このようにガラス板を充分予熱することにより、ガラス板の主面内の温度分布が抑えられ、化学強化工程でガラス板のCSおよびDOLの面内分布が小さくなりやすい。
【0069】
予熱温度は、化学強化処理を行うための溶融塩の温度をTEとすると、(TE−100)℃以上が好ましい。予熱温度が(TE−100)℃以上であれば、化学強化工程でのサーマルショックによる割れを抑え、化学強化工程で溶融塩にガラス板を浸漬する時の溶融塩の温度が低下しにくく、ガラス板に所望の強度を与えることができる。予熱温度は、(TE−50)℃以上がより好ましく、(TE−20)℃以上がさらに好ましく、(TE−10)℃以上が特に好ましい。
【0070】
化学強化工程では、予熱されたガラス板を、例えば加熱された硝酸カリウム溶融塩に浸漬し、ガラス表層のNaと溶融塩中のKとをイオン交換する。NaとKとをイオン交換できるものであればいずれの方法でもよい。なお、本発明において硝酸カリウム溶融塩または硝酸カリウム塩は、KNOの他、KNOと10質量%以下のNaNOを含有するものなどを含む。
【0071】
ガラス板に所望の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成するための化学強化処理条件は、ガラス板の板厚などによっても異なるが、350〜550℃の硝酸カリウム溶融塩に2〜50時間、ガラス板を浸漬させることが典型的である。経済的な観点からは、350〜500℃、2〜40時間の条件で浸漬させることが好ましく、より好ましい浸漬時間は、2〜30時間である。
【0072】
化学強化工程では、溶融塩にガラス板を鉛直方向に配置することが好ましい。溶融塩にガラス板を鉛直方向に配置することにより、溶融塩の熱対流が妨げられにくく、ガラス板の面内温度分布が小さくなり、ガラス板のCSおよびDOLの面内分布が小さくなりやすい。
【0073】
徐冷工程では、溶融塩から取り出されたガラス板を徐冷する。溶融塩から取り出されたガラス板は、直ちに徐冷するのではなく、ガラス板の主面に温度分布が生じにくくするために、一定時間、均一な温度で保持されることが好ましい。保持温度は、溶融塩の温度との差が100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましく、10℃以下が特に好ましい。また、保持時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。
【0074】
徐冷工程の雰囲気の温度分布は、化学強化工程のイオン交換時の溶融塩の温度分布よりも大きいために、CSおよびDOLの面内分布に影響を与えやすい。
【0075】
CSおよびDOLの面内分布を小さくするために、溶融塩から取り出されたガラス板は、ガラス板が100℃となるまでの徐冷速度が300℃/時以下となるように徐冷することが好ましい。徐冷速度は200℃/時以下がより好ましく、100℃/時以下がさらに好ましい。
【0076】
以上説明した本実施形態の化学強化ガラス板にあっては、第1の主面および第2の主面の面積が1m以上であり、第1の主面および第2の主面のうち少なくとも一方の主面において、CSの面内分布が15%以下であり、DOLの面内分布が15%以下であることにより、衝撃により割れにくい。
【0077】
本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。例1〜6は実施例であり、例7は比較例である。
【0079】
表1に示すガラス組成になるように、珪砂等の各種のガラス原料を調合し、1400〜1500℃の温度で溶融し、得られた溶融ガラスをフロート法で板状に成形し、表2に示す大きさの矩形のガラス板を得た。得られたガラス板のガラス転移点Tg(単位:℃)、T2(単位:℃)、T4(単位:℃)、比重、ヤング率(単位:GPa)を測定し、表1に示した。
【0080】
次に、例1〜例6においては、得られたガラス板を、100℃/時以下の速度で昇温し、昇温後に400℃で30分間保持した後、450℃の硝酸カリウム溶融塩に30時間浸漬させ、溶融塩から取り出した後、400℃で30分間保持し、徐冷速度100℃/時以下で徐冷し、化学強化ガラス板を得た。
【0081】
例7においては、得られたガラス板を、100℃/時以下の速度で昇温し、昇温後に温度保持せずに速やかに450℃の硝酸カリウム溶融塩に30時間浸漬させ、溶融塩から取り出した後、温度保持せずに徐冷し、化学強化ガラス板を得た。
【0082】
得られた化学強化ガラス板の上記した15点の位置でCSおよびDOLを測定した結果を表3に示す。また、反りを測定した結果を、表4に示す。
【0083】
以下に各物性の測定方法を示す。
【0084】
(ガラス転移点Tg)
JIS R3103−3(2001年)に規定されている方法に従い、TMAを用いて測定した。
【0085】
(T
回転粘度計を用いて粘度を測定し、10d・Pa・sとなるときの温度T2(℃)を測定した。
【0086】
(T
回転粘度計を用いて粘度を測定し、10d・Pa・sとなるときの温度T4(℃)を測定した。
【0087】
(比重)
泡を含まない約20gのガラス塊をアルキメデス法によって測定した。
【0088】
(ヤング率)
超音波パルス法により測定した。
【0089】
(歪点)
JIS R3103−2(2001年)に規定されている方法に従い測定した。
【0090】
(CS、DOL)
表面応力計(折原製作所製:FSM−7000H)を用いて観察される干渉縞の本数とその間隔から算出した。算出に当たり、化学強化ガラス板の屈折率を1.518、光学弾性定数を27.1[(nm/cm)/MPa]とした。また、上記した方法によりCSおよびDOLの面内分布を求めた。
【0091】
(反り)
図3は、得られた化学強化ガラス板の反りの測定位置を説明した平面図である。頂点R−S、T−U、R−T、S−U、R−U、S−Tを結ぶ辺に沿う位置の反りを、JIS R3206(2003年)に規定されている方法に従い測定した。測定した反り(単位:mm)を、測定した辺の長さ(mm)で割ることにより、反り(単位:%)を求めた。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
表3および表4に示すように、例1〜6の本発明の化学強化ガラス板は、昇温後及び徐冷中の温度分布が小さく、CSおよびDOLの面内分布が15%以下であり、衝撃により割れにくい。一方、比較例である例7の化学強化ガラス板は、昇温後及び徐冷中の温度分布が大きく、CSおよびDOLの面内分布はいずれも15%超であり、CSおよびDOLが他と比べて小さい部分があり、衝撃によりガラス板が割れるおそれがある。
【0097】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年6月30日付けで出願された日本特許出願(特願2016−130231)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の化学強化ガラス板は、例えば、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0099】
10 化学強化ガラス板
11a 第1の主面
11b 第2の主面
12 端面
図1
図2
図3