特許第6965994号(P6965994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965994
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】水性樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/14 20060101AFI20211028BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20211028BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20211028BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20211028BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C08L75/14
   C08F283/00
   C08G18/48
   C08G18/42
   C08G18/00
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-527251(P2020-527251)
(86)(22)【出願日】2019年5月9日
(86)【国際出願番号】JP2019018511
(87)【国際公開番号】WO2020003754
(87)【国際公開日】20200102
【審査請求日】2020年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-119843(P2018-119843)
(32)【優先日】2018年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】宮宅 潤一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】永浜 定
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−531169(JP,A)
【文献】 特開平06−250388(JP,A)
【文献】 特開平04−089808(JP,A)
【文献】 特開2013−056966(JP,A)
【文献】 特表2011−514405(JP,A)
【文献】 特開平11−255845(JP,A)
【文献】 COUVERCELLE, J. P. et al.,Synthesis, dispersion and properties of hydroxy polybutadiene-based anionic polyurethane-urea,Macromolecular Symposia,2000年,151,347-352,DOI:10.1002/1521-3900(200002)151:1<347::AID-MASY347>3.0.CO;2-T
【文献】 AKRAM, Nadia et al.,Influence of Polyol Molecular Weight and Type on the Tack and Peel Properties of Waterborne Polyurethane Pressure-Sensitive Adhesives,Macromolecular Reaction Engineering,2013年,7,493-503,DOI:10.1002/mren.201300109
【文献】 XIA, Nan Nan et al.,Self-Healing of Polymer in Acidic Water toward Strength Restoration through the Synergistic Effect of Hydrophilic and Hydrophobic Interactions,ACS Applied Materials & Interfaces,2017年,9,37300-37309
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08L 1/00−101/16
C08F 283/00
C09D 109/00
C09D 175/04−C09D175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合樹脂(A)及び水性媒体(B)を含み、前記複合樹脂(A)が、式(1)で表される単位を有するポリマー(A1)ユニットと、式(3)で表されるポリマー(A2)ユニットとを有し、ポリマー(A2)の存在下でビニル化合物を一括乳化重合したものであり、前記水性媒体(B)が、水を含むものであることを特徴とする水性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、
1は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、フェニル基又はメチル基を表し、2個のR1の配置はシス又はトランスのいずれであってもよい。
2は、水素原子又は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。
ただし、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化2】
[式(3)中、
7は、m1価の炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基に含まれる−CH2−は、−NCN−に置き換わっていてもよく、前記炭化水素基に含まれる水素原子は、−COOR9に置換されていてもよい。
9は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
8は、それぞれ、R10〔− ―(R11−O−)n1n2−;(−R11−CO−O)n3−;(−R11−O−CO−R11−CO−O)n4−;(−R11−O−CO−O)n5−;(−R12n6−O−;R11−O−からなる群より選ばれる1種を表す。
10は、n2価の炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。
11は、それぞれ、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。 R12は、炭素原子数4〜10のアルケンジイル基を表し、前記アルケンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子又は親水性基に置換されていてもよい。
1は、それぞれ、−O−、−S−、−NH−、−COO−、−OCO−及び−R13−O−からなる群より選ばれる1種を表す。
13は、炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。
ただし、R7〜R13及びL1が2以上存在する場合、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
m1及びn1〜n6は2以上の整数を表す。]
【請求項2】
前記ポリマー(A1)ユニットの含有率が、前記複合樹脂(A)中、0.1質量%以上90質量%以下である請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
1が、それぞれ、水素原子又はメチル基である請求項1又は2記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項13のいずれか1項記載の水性樹脂組成物から形成される膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性樹脂組成物は、紙塗工・含浸加工、繊維・不織布、カーペット、土木建材、モルタルセメント、自動車用部品、タイヤコード、塗料、ペースト、防錆コーティング、接着剤、プラスチック改質、化粧用パフ、電子材料、接着剤(一般)、コーティング・含浸(不織布・紙)、繊維含浸・補強繊維加工(カーペット等)、防湿・耐水コーティング、セメント・モルタル、建材加工・木質接着、合成皮革、人工皮革、手袋、避妊具等の多様な用途に用いられている。
【0003】
前記水性樹脂組成物には、用途に応じ、多様な特性が求められており、異なる樹脂を組み合わせた水性樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、ビニル重合体セグメントと、酸基および/又は塩基性化合物で中和された酸基を有するポリウレタンセグメントとから構成されるブロック共重合体を含む水性樹脂が記載されている。また特許文献2には、ジエン系不飽和単量体をシードラテックス存在下でシード重合して得られるラテックスと、水性ポリウレタンとを含む組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−199968号公報
【特許文献2】特開2004−231852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から知られる水性樹脂組成物では、得られる膜の耐溶剤性・耐水性を維持しながら、伸縮性や柔軟性と強度とを両立することが困難な場合があった。本発明は、得られる膜の耐溶剤性、耐水性、柔軟性、伸縮性及び強度のバランスが良好であり、好ましくは耐溶剤性・耐水性を維持しながら、伸縮性や柔軟性と伸縮時の強度とを両立した膜を形成可能な水性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水性樹脂組成物は、複合樹脂(A)及び水性媒体(B)を含み、前記複合樹脂(A)が、式(1)で表される単位を有するポリマー(A1)ユニットと、式(3)で表されるポリマー(A2)ユニットとを有するものであることを特徴とする。
【0007】
【化1】
[式(1)中、R1、R2については後述する。]
【0008】
【化2】
[式(3)中、R7、R8については後述する。]
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性樹脂組成物を用いることで、得られる膜の耐溶剤性、耐水性、柔軟性、伸縮性及び強度のバランスが良好なものとすることができ、好ましくは耐溶剤性・耐水性を維持しながら、伸縮性や柔軟性と伸縮時の強度とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水性樹脂組成物は、複合樹脂(A)及び水性媒体(B)を含み、前記複合樹脂はポリマー(A1)ユニットと、ポリマー(A2)ユニットとを有する(ただし、ポリマー(A1)ユニットと、ポリマー(A2)ユニットとは異なる)。
【0011】
前記ポリマー(A1)ユニットは、式(1)で表される単位(以下、「単位(1)」という場合がある。)を有する。
【0012】
【化3】
【0013】
[式(1)中、
1は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、フェニル基又はメチル基を表し、2個のR1の配置はシス又はトランスのいずれであってもよい。
2は、水素原子又は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。
ただし、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0014】
1は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、フェニル基又はメチル基であり、式(1)中の2つのR1の組合せは、両方が水素原子であるか、一方が水素原子であり、もう一方がメチル基である組合せであることが好ましい。
【0015】
2で表される炭化水素基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基であり、好ましくは直鎖状の飽和炭化水素基である。R2で表される炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3である。
2は、水素原子であることが好ましい。
【0016】
前記単位(1)の含有率は、ポリマー(A1)ユニット中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0017】
前記ポリマー(A1)ユニットは、式(2)で表される単位(以下、「単位(2)」という場合がある。)を含んでいてもよい。前記ポリマー(A1)ユニットにおいて、単位(1)及び単位(2)の数及び結合順序は任意である。
【0018】
【化4】
【0019】
[式(2)中、
3は、水素原子又はメチル基を表す。
4は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数2〜10の複素環基、ニトリル基、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、置換若しくは非置換のアミノ基及び炭素原子数1〜10のヒドロキシアルキル基からなる群から選択される基を表し、前記R4で表される炭化水素基又はヒドロキシアルキル基に含まれる−CH2−は、−CO−、−O−又は−NR6−に置き換わっていてもよく、R4に含まれる−CH2−が−NR6−に置き換わる場合、R4の残部とR6とが環を形成していてもよい。
5は、水素原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる−CH2−は、−CO−又は−O−に置き換わっていてもよい。
4とR5とは、それぞれ結合する炭素原子と一緒になって3員〜7員の炭化水素環を形成していてもよく、該炭化水素環に含まれる−CH2−は、−CO−又は−O−に置き換わっていてもよい。
6は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
ただし、R3〜R4、R6が2以上存在する場合、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。]
【0020】
3は、水素原子であることが好ましい。
【0021】
4、R5で表される炭化水素基としては、炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基又はこれらを組み合わせた炭素原子数4〜20の複合炭化水素基等が挙げられる。
【0022】
4、R5で表される炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基、カルボキシ基、4級アンモニウム基、シアノ基、イミド基、アルコキシ基、炭素原子数2〜10の複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基(好ましくはトリメトキシシリル基、トリエトキシリル基等)、置換若しくは非置換のアミノ基等が挙げられ、カルボキシ基、アルコキシ基、炭素原子数2〜10の複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基が好ましい。
【0023】
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5である。
【0024】
前記脂環式炭化水素基としては、単環の脂環式炭化水素基;トリシクロ[5.2.1.0.2.6]デシル基、ビシクロ[4.3.0]−ノニル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデシル基、プロピルトリシクロ[5.3.1.1]ドデシル基、ノルボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基等の多環(好ましくは2環〜3環の橋かけ環)の脂環式炭化水素基などが挙げられ、前記脂環式炭化水素基は、環に結合した炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基)を含むものであってもよい。
前記脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7である。
【0025】
前記脂環式炭化水素基の置換基としては、炭素原子数3〜10の複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基等が好ましい。
【0026】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トルイル基、クロロフェニル基、クロロトルイル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6〜8である。
【0027】
前記複素環基並びにR4、R5で表される炭化水素基が置換基として有していてもよい複素環基としては、エポキシ基、テトラヒドロフルフリル基、モルホリニル基、ピリジニル基等が挙げられる。
前記複素環基の炭素原子数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5である。
【0028】
4で表されるアルコキシシリル基並びにR4で表される炭化水素基が置換基として有していてもよいアルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0029】
4で表されるアミノ基並びにR4で表される炭化水素基が置換基として有していてもよいアミノ基としては、非置換のアミノ基;N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−ヒドロキシエチルアミノ基、N−メチロールアミノ基、N−メトキシエチルアミノ基等の一置換アミノ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の二置換アミノ基などが挙げられる。
【0030】
4で表されるヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、グリセロール基等が挙げられる。
4で表されるヒドロキシアルキル基の炭素原子数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5である。
【0031】
4としては、炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数3〜10の複素環基及びニトリル基が好ましい。
【0032】
6で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
6で表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜3である。
【0033】
6は、水素原子であることが好ましい。
【0034】
前記単位(2)を含む場合、前記単位(2)の含有率は、ポリマー(A1)ユニット中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0035】
前記単位(1)及び単位(2)の合計の含有率は、ポリマー(A1)ユニット中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0036】
前記ポリマー(A1)ユニットの含有率は、複合樹脂(A)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0037】
前記ポリマー(A2)ユニットは、式(3)で表される単位(以下、「単位(3)」という場合がある。)を有する。
【0038】
【化5】
【0039】
[式(3)中、
7は、m1価の炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基に含まれる−CH2−は、−NCN−に置き換わっていてもよく、前記炭化水素基に含まれる水素原子は、−COOR9に置換されていてもよい。
9は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
8は、それぞれ、R10〔−L1−(R11−O−)n1n2−;−O(−R11−CO−O)n3−;−O(−R11−O−CO−R11−CO−O)n4−;−O(−R11−O−CO−O)n5−;−O(−R12n6−O−;−O−R11−O−;並びにこれらの基から末端の−O−を除いた基の2種以上を−O−を介して組み合わせ、末端に−O−を加えた基からなる群より選ばれる1種を表す。
10は、n2価の炭素原子数1〜20の炭化水素基、−N<又は−PO<を表し、前記炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−CO−又は−NH−に置き換わっていてもよく、前記炭化水素基に含まれる水素原子は、親水性基に置換されていてもよい。
11は、それぞれ、炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−に置き換わっていてもよく、前記炭化水素基に含まれる水素原子は、親水性基に置換されていてもよい。
12は、炭素原子数4〜10のアルケンジイル基を表し、前記アルケンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子又は親水性基に置換されていてもよい。
1は、それぞれ、−O−、−S−、−NH−、−COO−、−OCO−及び−R13−O−からなる群より選ばれる1種を表す。
13は、炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。
ただし、R7〜R13及びL1が2以上存在する場合、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
m1及びn1〜n6は、それぞれ、2以上の整数を表す。]
【0040】
7で表される炭化水素基及びR10で表される炭化水素基としては、炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基又はこれらを組み合わせた炭素原子数4以上20以下の複合炭化水素基等が挙げられる。
【0041】
前記脂肪族炭化水素基としては、R4で表される脂肪族炭化水素基に含まれるm1−1個又はn2−1個の水素原子を結合手とした基が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5である。
【0042】
前記脂環式炭化水素基としては、R4で表される脂環式炭化水素基に含まれるm1−1又はn2−1個の水素原子を結合手とした基が挙げられ、単環であっても多環(好ましくは2環〜3環の橋かけ環)であってもよい。
前記脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7である。
【0043】
前記芳香族炭化水素基としては、R4で表される芳香族炭化水素基に含まれるm1−1個又はn2−1個の水素原子を結合手とした基が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6〜8である。
【0044】
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた炭素原子数4以上20以下の複合炭化水素基としては、ジフェニルメタンジイル基、ジフェニルエタンジイル基、ジフェニルプロパンジイル基等のジアリールアルカンジイル基;ジフェニルスルホンジイル基等のジアリールスルホンジイル基;1,4−ジメチルシクロヘキサンジイル基等のジアルキルシクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0045】
7で表される炭化水素基及びR10で表される炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6〜18、より好ましくは8〜16である。
【0046】
7で表される炭化水素基及びR10で表される炭化水素基の価数(m1又はn2)は、好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは3以下である。
【0047】
9としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましい。
【0048】
前記親水性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基等のアニオン性基;置換又は非置換のアミノ基等のカチオン性基などが挙げられる。
【0049】
11で表される炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、R4で表される炭化水素基として例示した基と同様の基が挙げられ、R11で表される炭化水素基の好ましい基としても、R4で表される炭化水素基の好ましい基として挙げた基と同様の機が挙げられる。
【0050】
12で表されるアルケンジイル基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよく、前記アルケンジイル基の炭素原子数は、好ましくは4〜8、より好ましくは4〜6である。
【0051】
前記アルケンジイル基に含まれる水素原子を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0052】
1としては、−O−、−NH−、−COO−、−OCO−及び−R13−O−からなる群より選ばれる1種が好ましく、−O−、−NH−、−COO−及び−R13−O−からなる群より選ばれる1種がより好ましい。
【0053】
m1は、好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0054】
n2は、好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。
【0055】
n3〜n6は、それぞれ、好ましくは2以上であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下である。
【0056】
8としては、R10〔−L1−(R11−O−)n1n2−;−O−(R11−CO−O−)n3;−O−(R11−O−CO−R11−CO−O−)n4;−O−(R11−O−CO−O−)n5−;−O−(R12n6−O−又は−O−R11−O−が好ましく、R10〔−L1−(R11−O−)n1n2−;−O−(R11−CO−O−)n3;−O−(R11−O−CO−R11−CO−O−)n4又は−O−(R11−O−CO−O−)n5−がより好ましい。
【0057】
なお本発明において、R10〔−L1−(R11−O−)n1n2−;−O(−R11−CO−O)n3−;−O(−R11−O−CO−R11−CO−O)n4−;−O(−R11−O−CO−O)n5−;−O(−R12n6−O−;及び−O−R11−O−の末端の−O−を除いた基をこれらの基のエーテル残基という場合がある。
【0058】
前記単位(3)の含有率は、前記前記ポリマー(A2)ユニット中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0059】
前記ポリマー(A2)ユニットは、さらに、式(4)で表される単位(以下、「単位(4)」という場合がある。)及び/又は式(5)で表される単位(以下、「単位(5)」という場合がある。)を有していてもよい。
【0060】
【化6】
【0061】
[式(4)中、
13は、炭素原子数1〜20の2価以上の炭化水素基を表し、前記炭化水素基に含まれる−CH2−は、−CO−又は−NR14−に置き換わっていてもよい。
14は、水素原子又は炭素原子数1〜5の1価以上の鎖状飽和炭化水素基を表す。
2は、−NR6−又は−O−を表す。
6は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。]
【0062】
【化7】
【0063】
[式(5)中、
15は、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基を表し、前記炭化水素基に含まれる−CH2−は、−CO−又は−NR14−に置き換わっていてもよい。
14は、上記と同義である。]
【0064】
13又はR15で表される炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、それぞれ、2価以上又は2価の基であって、炭素原子数1〜20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基又はこれらを組み合わせた炭素原子数4以上20以下の複合炭化水素基等が挙げられ、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は複合炭化水素基が好ましい。
【0065】
前記脂肪族炭化水素基としては、R4で表される脂肪族炭化水素基に含まれるm1−1個又はn1−1個の水素原子を結合手とした基が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5である。
【0066】
前記脂環式炭化水素基としては、R4で表される脂環式炭化水素基に含まれる1個以上(好ましくは1個)の水素原子を結合手とした基が挙げられ、単環であっても多環(好ましくは2環〜3環の橋かけ環)であってもよい。
前記脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7である。
【0067】
前記芳香族炭化水素基としては、R4で表される芳香族炭化水素基に含まれるm1−1個又はn1−1個の水素原子を結合手とした基が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6〜8である。
【0068】
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた炭素原子数4以上20以下の複合炭化水素基としては、ジフェニルメタンジイル基、ジフェニルエタンジイル基、ジフェニルプロパンジイル基等のジアリールアルカンジイル基;ジフェニルスルホンジイル基等のジアリールスルホンジイル基;1,4−ジメチルシクロヘキサンジイル基等のジアルキルシクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0069】
13又はR15で表される炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16である。
【0070】
13で表される炭化水素基の価数は、好ましくは2である。
【0071】
14は、好ましくは水素原子である。
【0072】
2としては、−NR6−が好ましい。
【0073】
前記単位(4)及び/又は(5)の合計の含有率は、前記ポリマー(A2)ユニット中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0074】
前記ポリマー(A2)ユニットにアニオン性基が含まれる場合、前記水性樹脂組成物は、塩基性化合物を含んでいてもよい。前記基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を含む金属水酸化物などが挙げられる。水性樹脂組成物の水分散安定性を向上させる観点から、前記塩基性化合物とアニオン性基とのモル比(塩基性基/アニオン性基)は、好ましくは0.5以上3.0以下、より好ましくは0.8以上2.0以下である。
【0075】
前記ポリマー(A2)ユニットにアニオン性基が含まれる場合、前記ポリマー(A2)ユニットの酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下である。
本明細書にいう酸価は、原料組成に基づいて前記ポリマー(A2)に含まれるアニオン性基の量を算出し、これに基づいて前記ポリマー(A2)1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として算出した理論値である。
【0076】
前記ポリマー(A2)ユニットにカチオン性基が含まれる場合、前記水性樹脂組成物は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のカルボン酸;酒石酸等のヒドロキシ酸;リン酸などの酸性化合物を含んでいてもよく、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部又は全部がジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロリド、エチルクロリド等4級化剤により4級化されていてもよい。
【0077】
前記ポリマー(A2)ユニットにカチオン性基が含まれる場合、前記ポリマー(A2)ユニットのアミン価は、好ましくは2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
本明細書にいうアミン価は、原料組成に基づいて前記ポリマー(A2)に含まれるカチオン性基の量を算出し、これに基づいてポリマー(A2)1gを中和するのに必要な塩化水素のモル数(mmol)及び水酸化カリウムの式量(56.1g/mol)の積として算出した理論値である。
【0078】
前記ポリマー(A2)の重量平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、特記ない限り、ポリスチレンを標準試料としてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法(GPC)により測定することができる。
【0079】
前記ポリマー(A2)ユニットの含有量は、前記ポリマー(A1)ユニット1質量部に対して、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0080】
前記ポリマー(A1)ユニット及び前記ポリマー(A2)ユニットの合計の含有率は、複合樹脂(A)中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0081】
複合樹脂(A)において、前記ポリマー(A1)ユニットの表面の少なくとも一部を前記ポリマー(A2)ユニットが被覆していることが好ましく、前記ポリマー(A1)ユニットの表面に前記ポリマー(A2)ユニットの層が形成されていることが好ましい。前記ポリマー(A1)ユニットと前記ポリマー(A2)ユニットとは、化学的に結合していてもよく、していなくともよい。
【0082】
前記複合樹脂(A)のゲル分率は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上であり、上限は100質量%であり、例えば90質量%以下、さらには80質量%以下であることも許容される。
【0083】
前記複合樹脂(A)のゲル分率は、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、ガラス板上に乾燥後の膜厚が0.5mmとなるように本発明の水性樹脂組成物を塗工し、80℃で2時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に140℃で5分間乾燥したものを直径29mmの円形に切り取って試料とする。該試料の溶剤浸漬前の重量を測定し、G1とする。次に、試料をトルエン中に常温で24時間浸漬した後の試料の溶剤不溶解分を80メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後、重量し、G2とする。以下の式に基づいて求められる値をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0084】
前記複合樹脂(A)は、水性媒体(B)中に分散されていることが好ましい。複合樹脂(A)の分散状態は、例えば、水性樹脂組成物における沈殿物の有無により確認することができる。
【0085】
前記複合樹脂(A)の含有率は、水性樹脂組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0086】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤及びこれらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のラクタム溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶剤などが挙げられ、アルコール溶剤が好ましい。
【0087】
前記水性媒体(B)は、安全性や環境に対する負荷低減を考慮すると、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみがより好ましい。水の含有率は、前記水性媒体(B)100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0088】
前記水性媒体(B)の含有率は、水性樹脂組成物の全量100質量%中、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上70質量%以下である。
【0089】
本発明の水性樹脂組成物は、さらに架橋剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、ワックス、光安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、硬化触媒、乳化剤、分散安定剤等の各種の添加剤(C)を含んでいてもよい。
前記添加剤(C)の含有量は、前記複合樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0090】
前記複合樹脂(A)は、前記ポリマー(A2)の存在下で、ビニル化合物を重合することにより製造することができる。また本発明の水性樹脂組成物は、前記水性媒体(B)中で前記重合反応を行うことで、製造することができる。前記ビニル化合物が化合物(11)を含むことで、水性媒体(B)中、前記ビニル化合物の少なくとも一部がポリマー(A2)の内部に取り込まれ、この状態で重合反応を行うことで、本発明の複合樹脂(A)を製造することができる。前記重合反応の際は、必要に応じて、前記添加剤(C)を共存させてもよく、重合反応後に前記添加剤(C)を添加してもよい。
【0091】
前記ビニル化合物は、式(11)で表される化合物(以下、「化合物(11)」という場合がある。)を含む。
【0092】
【化8】
【0093】
[式(11)中、R1及びR2は、上記と同義である。]
【0094】
化合物(11)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0095】
前記ビニル化合物は、式(12)で表される化合物(以下、「化合物(12)」という場合がある。)を含んでいてもよい。
【0096】
【化9】
【0097】
[式(12)中、R3〜R5は、それぞれ、上記と同義である。2つのR3の配置は、シスでもトランスであってもよい。]
【0098】
化合物(12)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、等の炭素原子数4〜22のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の炭素原子数6〜20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の炭素原子数10〜20のアラルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリルオキシアルキル(メタ)アクリレート;
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸アルキルエステル;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート等の不飽和ジカルボン酸アルキルエステル;
スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;
(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルキノリン、N−ビニルピペリジン等の窒素原子含有モノマー(好ましくは1置換又は2置換の(メタ)アクリルアミド(置換基が結合して環を形成しているものも含む))及び該窒素原子含有モノマーの塩化メチル塩;
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等のα−オレフィン;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、安息香酸ビニル、ネオデカン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;
アクロレイン、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール共重合(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール共重合(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有(メタ)アクリルモノマー;
パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ−パーフルオロシクロヘキシルフマレート、N−イソプロピルフルオロオクタンスルフォン酸アミドエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の不飽和ジカルボン酸類無水物;
グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有モノマー;
ビニリトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシ基含有モノマー;
ビニルスルホン酸、3−アクリロキシプロパン−1−スルホン酸、3−アクリロキシオクチルオキシベンゼンスルホン酸、3−アクリロキシベンゼンジアゾスルホン酸、3−アクリロキシアゾベンゼン−4’−スルホン酸、2−アクリロイルアミノ−2−メチルプロパン−1−スルホン酸、2−アクリロイルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリロニトリル−tert−ブチルスルホン酸等のビニル基含有スルホン酸化合物並びにそれらの塩;
などが挙げられる。
【0099】
前記ビニル化合物を重合する際、ラジカル重合開始剤を共存させることが好ましい。前記重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤を用いることができる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等が挙げられる。前記光重合開始剤は、必要に応じてメチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと組み合わせて使用してもよい。前記熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ)吉草酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などの熱重合開始剤などを使用することができる。
【0100】
前記ラジカル重合開始剤の量は、前記ビニル化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0101】
前記ポリマー(A2)は、水性媒体(B)中に分散された状態で、前記ビニル化合物の重合に供されることが好ましい。前記ポリマー(A2)が水性媒体(B)中に分散された予備分散液は、例えば、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、式(13)で表される化合物(以下、「化合物(13)」という場合がある。)及び式(14)で表される化合物(以下、「化合物(14)」という場合がある。)を反応させ、必要に応じて、さらに式(15)で表される化合物(以下、「化合物(15)」という場合がある。)及び/又は式(16)で表される化合物(以下、「化合物(16)」という場合がある。)を反応させることにより製造することができる。
前記有機溶剤は、安全性や環境に対する負荷低減の観点から、前記ポリマー(A2)の製造途中または製造後に、減圧留去等によってその一部または全部を除去してもよい。
【0102】
【化10】
【0103】
[式(13)中、R7及びm1は上記と同義である。]
【0104】
【化11】
【0105】
[式(14)中、R8は上記と同義である。n7は2以上の整数を表す。]
【0106】
【化12】
【0107】
[式(15)中、R13及びL2は上記と同義である。n8は2以上の整数を表す。]
【0108】
【化13】
【0109】
[式(16)中、R15は上記と同義である。]
【0110】
化合物(13)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられ、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリマーポリオール(数平均分子量500以上であり、好ましくは3,000以下)を含むことが好ましく、必要に応じて親水性基を有するポリオール、低分子量ポリオール(数平均分子量500未満であり、好ましくは50以上)を含んでいてもよい。
【0111】
前記ポリエーテルポリオールとしては、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキシドを付加重合(開環重合)させたもの等が挙げられる。
【0112】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状ジオール;ネオペンチルグリコール等の分岐鎖状ジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ピロガロール等のトリオール;ソルビトール、蔗糖、アコニット糖等のポリオール;アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸等のトリカルボン酸;リン酸;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;トリイソプロパノールアミン;ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸等のフェノール酸;1,2,3−プロパントリチオールなどが挙げられる。
【0113】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0114】
前記ポリエーテルポリオールとしては、前記開始剤にテトラヒドロフランを付加重合(開環重合)させたポリオキシテトラメチレングリコールを使用することが好ましい。
【0115】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0116】
前記低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0117】
前記ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0118】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとビスフェノールA等との反応物などが挙げられる。
【0119】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0120】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(重量平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0121】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0122】
前記化合物(13)に含まれるポリマーポリオール(好ましくはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオール)の合計の含有率は、前記化合物(13)中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0123】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等が挙げられ、親水性基を有するポリオールを用いることで、前記複合樹脂(A)の水分散性を向上することができる。前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば、上記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオール以外のポリオールを用いることができ、具体的には、アニオン性基を有するポリオール、カチオン性基を有するポリオール、及び、ノニオン性基を有するポリオールを使用することができる。これらの中でも、アニオン性基を有するポリオール又はカチオン性基を有するポリオールを使用することが好ましい。
【0124】
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、例えば、カルボキシ基を有するポリオール及びスルホン酸基を有するポリオール等が挙げられる。
【0125】
前記カルボキシ基を有するポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;及び前記カルボキシ基を有するポリオールと前記ポリカルボン酸との反応物などが挙げられる。前記ヒドロキシ酸としては、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0126】
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸基を有するジカルボン酸;前記ジカルボン酸の塩と、前記芳香族構造含有ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0127】
前記カチオン性基を有するポリオールとしては、N−メチル−ジエタノールアミン;1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオール等の3級アミノ基を有するポリオールなどが挙げられる。
【0128】
前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン構造を有するポリオール等が挙げられる。
【0129】
前記化合物(13)に親水性基を有するポリオールが含まれる場合、その含有量は、化合物(13)の合計100質量部中、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0130】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルカンジアルカノール等が挙げられる。
【0131】
化合物(14)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式構造含有ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0132】
化合物(13)に含まれる−NCOと、化合物(14)に含まれる−OHのモル比(NCO/OH)は、好ましく0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0133】
化合物(15)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、及び水等が挙げられる。
【0134】
化合物(16)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等が挙げられる。
【0135】
本発明の水性樹脂組成物は、得られる膜の耐溶剤性、耐水性、柔軟性、伸縮性及び強度のバランスが良好なものとすることができ、好ましくは耐溶剤性・耐水性を維持しながら、伸縮性や柔軟性と強度とを両立することができ、紙塗工・含浸加工、繊維・不織布、カーペット、土木建材、モルタルセメント、自動車用部品、タイヤコード、塗料、ペースト、防錆コーティング、接着剤、プラスチック改質、化粧用パフ、電子材料、接着剤(一般)、コーティング・含浸(不織布・紙)、繊維含浸・補強繊維加工(カーペット等)、防湿・耐水コーティング、セメント・モルタル、建材加工・木質接着、合成皮革、人工皮革、手袋、避妊具等に好適である。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0137】
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸27.6質量部、テレフタル酸27.6質量部、エチレングリコール11.7質量部、ジエチレングリコール19.9質量部及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み180〜230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(1)を得た。
【0138】
(合成例2:ポリマー(A2−1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量2000)233質量部、イソホロンジイソシアネート96質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸18質量部、及びネオペンチルグリコール7.1質量部、メチルエチルケトン178質量部の混合溶剤中で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン18質量部加えることで前記プレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水720質量部と80%ヒドラジン水溶液6.2質量部を加え十分に攪拌することにより、ポリマー(A2−1)の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、ポリマー(A2−1)を含む不揮発分35質量%のポリマー組成物(I−1)を得た。
【0139】
(合成例3:ポリマー(A2−2)の合成)
反応容器に合成例1のポリエステルポリオール(1)75.7質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン67.89質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2−ジメチロールプロピオン酸6.1質量部を加え、次いで、イソホロンジイソシアネート20.3質量部を加えて、80℃で12時間反応させた。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n−ブタノール0.3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、プレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
さらに水320質量部を加え十分に攪拌することにより、ポリマー(A2−2)の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、ポリマー(A2−2)を含む不揮発分20質量%のポリマー組成物(I−2)を得た。
【0140】
(合成例4:ポリマー(A3−1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量2000)100質量部、イソホロンジイソシアネート6.6質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸8.4質量部、及びネオペンチルグリコール4.0質量部、メチルエチルケトン80質量部の混合溶剤中で反応させた。
次いで、トリエチルアミン7.3質量部加えることで前記反応物が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水385質量部を加え十分に攪拌したが、乳化不良により、ポリマー(A3−1)の水分散体を得ることはできなかった。得られた反応混合物をポリマー組成物(I−3)とした。
【0141】
(合成例5:ポリマー(A1−1)の合成)
乳化剤としてニューコール261A[日本乳化剤(株)製]1質量部とイオン交換水200質量部を用いてブタジエン79質量部、スチレン19質量部、アクリル酸2質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、ポリマー(A1−1)を含む固形分45%のポリマー組成物(II−1)を得た。
【0142】
(合成例6:ポリマー(A1−2)の合成)
乳化剤としてニューコール261A[日本乳化剤(株)製]1質量部とイオン交換水200質量部を用いてブタジエン49質量部、スチレン49質量部、アクリル酸2質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、ポリマー(A1−2)を含む固形分45%のポリマー組成物(II−2)を得た。
【0143】
(合成例7:ポリマー(A1−3)の合成)
乳化剤としてニューコール261A[日本乳化剤(株)製]1質量部とイオン交換水200質量部を用いてイソプレン49質量部、スチレン49質量部、アクリル酸2質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、ポリマー(A1−3)を含む固形分45%のポリマー組成物(II−3)を得た。
【0144】
(合成例8:ポリマー(A1−4)の合成)
乳化剤としてニューコール261A[日本乳化剤(株)製]1質量部とイオン交換水200質量部を用いてイソプレン79質量部、アクリルニトリル19質量部、アクリル酸2質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、ポリマー(A1−4)を含む固形分45%のポリマー組成物(II−4)を得た。
【0145】
(実施例1:複合樹脂(1)の合成)
合成例2で得られたポリマー組成物(I−1)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、ブタジエン34質量部、スチレン8.6質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(1)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−1)を得た。
【0146】
(実施例2:複合樹脂(2)の合成)
合成例2で得られたポリマー組成物(I−1)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、ブタジエン21.3質量部、スチレン21.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(2)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−2)を得た。
【0147】
(実施例3:複合樹脂(3)の合成)
合成例2で得られたポリマー組成物(I−1)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、ブタジエン8.6質量部、スチレン34質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(3)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−3)を得た。
【0148】
(実施例4:複合樹脂(4)の合成)
合成例3で得られたポリマー組成物(I−2)420質量部にイオン交換水23質量部を加え、ブタジエン29質量部、スチレン7質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(4)を含む固形分28%のポリマー組成物(III−4)を得た。
【0149】
(実施例5:複合樹脂(5)の合成)
合成例2で得られたポリマー組成物(I−1)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、イソプレン34質量部、スチレン8.6質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(5)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−5)を得た。
【0150】
(実施例6:複合樹脂(6)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、イソプレン21.3質量部、スチレン21.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(6)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−6)を得た。
【0151】
(実施例7:複合樹脂(7)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、ブタジエン21.3質量部、アクリロニトリル21.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(7)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−7)を得た。
【0152】
(実施例8:複合樹脂(8)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)200質量部にイオン交換水206質量部を加え、ブタジエン57質量部、スチレン13質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(8)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−8)を得た。
【0153】
(実施例9:複合樹脂(9)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)160質量部にイオン交換水231質量部を加え、イソプレン68質量部、スチレン16質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(9)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−9)を得た。
【0154】
(実施例10:複合樹脂(10)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)200質量部にイオン交換水146質量部を加え、ブタジエン21質量部、スチレン6質量部、N−メチロール−アクリルアミド3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(10)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−10)を得た。
【0155】
(実施例11:複合樹脂(11)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)385.7質量部にイオン交換水105質量部を加え、イソプレン12質量部、スチレン3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(11)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−11)を得た。
【0156】
(実施例12:複合樹脂(12)の合成)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)320質量部にイオン交換水130質量部を加え、ブタジエン22質量部、スチレン6質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、複合樹脂(12)を含む固形分35%のポリマー組成物(III−12)を得た。
【0157】
(比較例1:ポリマー(A2−1))
合成例2のポリマー(A2−1)を含むポリマー組成物(I−1)を用いた。
【0158】
(比較例2:ポリマー(A2−2))
合成例3のポリマー(A2−2)を含むポリマー組成物(I−2)を用いた。
【0159】
(比較例3:ポリマー(A2−2))
合成例4で得られたポリマー組成物(I−3)288質量部にイオン交換水146質量部を加え、ブタジエン21.3質量部、スチレン21.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させたが、ポリマーを複合化することができなかった。
【0160】
(比較例4:ポリマー(A1−1))
合成例5のポリマー(A1−1)を含むポリマー組成物(II−1)を用いた。
【0161】
(比較例5:ポリマー(A1−2))
合成例6のポリマー(A1−2)を含むポリマー組成物(II−2)を用いた。
【0162】
(比較例6:ポリマー(A1−3))
合成例7のポリマー(A1−3)を含むポリマー組成物(II−3)を用いた。
【0163】
(比較例7:ポリマー(A1−4))
合成例8のポリマー(A1−4)を含むポリマー組成物(II−4)を用いた。
【0164】
(比較例8:ポリマー(A2−1)とポリマー(A1−3)のブレンド)
合成例1で得られたポリマー組成物(I−1)200質量部に、合成例6で得られたポリマー組成物(II−3)30質量部を加え、一定時間攪拌し、固形分37.5%のポリマー(A2−1)とポリマー(A1−3)のブレンド品を得た。
【0165】
「フィルム物性測定」:PPフィルム基材上に塗膜を作製し(膜厚150μm)、剥がしたフィルムを用い引張試験を行った。引張速度300mm/分で引張り、破断時の自長に対する伸び率及び強度、300%伸長時の引張強度を測定した。
【0166】
「耐溶剤性」:PPフィルム基材上に塗膜を作製し(膜厚150μm)、剥がしたフィルムをMEKに対する耐久性試験を実施した。フィルム浸漬:1日(常温)
溶解率:フィルム浸漬前の重量に対して、フィルム浸漬後(乾燥済)の重量を引いた溶出量をフィルム全体の重量で除して、溶出率を算出した。
【0167】
「耐水性、水膨潤性」:PPフィルム基材上に塗膜を作製し(膜厚150μm)、剥がしたフィルムを水に対する耐久性試験を実施した。フィルム浸漬:1日(常温)
水に対する溶解率:フィルム浸漬前の重量に対して、フィルム浸漬後(乾燥済)の重量を引いた溶出量をフィルム全体重量で割り、溶出率を算出する。
膨潤率:フィルム浸漬後(乾燥済)の面積に対して、フィルム浸漬前の面積を引いた膨潤した面積をフィルムの面積で除して、膨潤率を算出した。

【0168】
【表1】
【0169】
実施例1〜12は本発明の実施例であり、得られる膜の耐溶剤性、耐水性、柔軟性、伸縮性及び強度のバランスが良好であった。比較例1、2は、ポリマー(A1)ユニットを含むものではなく、比較例3、8は、ポリマー(A1)ユニットと、ポリマー(A2)ユニットとが複合化されたものではなく、比較例4〜7は、ポリマー(A2)ユニットを含むものではなく、いずれも膜を調製できないか、得られる膜の耐溶剤性、耐水性、柔軟性、伸縮性及び強度のバランスが不良であった。