(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<定義>
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0016】
後述するように、本実施形態に係るスラリ及び研磨液は、砥粒(abrasive grain)を含有する。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は、一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒が有する機械的作用(物理的作用)、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、これに限定されない。
【0017】
「研磨液」(polishing liquid、abrasive)とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。
【0018】
本明細書における重量平均分子量は、例えば、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定することができる。
使用機器:日立L−6000型[株式会社日立製作所製]
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440[日立化成株式会社製 商品名、計3本]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min
検出器:L−3300RI[株式会社日立製作所製]
【0019】
「比表面積」とは、単位質量あたりの試料の総表面積を表す。BET法により測定した場合は「BET比表面積」と呼ばれる。試料中には、比表面積が異なる粒子が含まれていてもよい。その場合、個々の粒子の比表面積(真値)に関する情報は得られないが、すべての粒子の表面積に対する寄与を平均化した実効値が得られる。BET比表面積は、ガス吸着法を利用し、例えば、Quantachrome社製の比表面積・細孔径分析装置(商品名:QUADRASORB evo)を用いて下記条件で測定することができる。砥粒のBET比表面積としては、2回の測定の平均値を用いることができる。
前処理:真空脱気(100℃、2時間)
測定方式:定容法
吸着ガス:窒素ガス
測定温度:77.35K
測定セルサイズ:1.5cm
3
測定項目:P/P
0の値を0〜0.3の範囲で変化させて数点を測定
解析項目:BET多点法による比表面積
測定回数:試料を変えて2回測定
【0020】
「粗大粒子」とは、スラリ又は研磨液中の砥粒の粒径分布において著しく大きな粒子状物質を指す。粗大粒子の材料としては、特に限定されず、粗大な結晶又は粒子凝集体、外部から混入した異物、これらの複合体等が挙げられる。粗大粒子の形状は、特に限定されず、球形、棒状等であってよく、大きなアスペクト比を有する形状であってよく、表面に凹凸を有する形状であってよい。粗大粒子の大きさ(粒径)の下限は、例えば3μmである。但し、優れた粗大粒子の除去率が得られる限り、粗大粒子の大きさの下限は、例えば、0.5μm、1μm、2μm等であってよい。
【0021】
<スラリ、研磨液及びこれらの製造方法>
本実施形態に係るスラリは、必須成分として砥粒と液状媒体とを含有する。砥粒は、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含む複合粒子を含有する。第1の粒子はセリウム酸化物を含有し、第2の粒子はセリウム化合物を含有する。砥粒の含有量が2.0質量%である場合において、本実施形態に係るスラリを遠心加速度1.1×10
4Gで30分間遠心分離したときに得られる固相のBET比表面積は、24m
2/g以上である。
【0022】
本実施形態に係るスラリをろ過することにより、優れた粗大粒子の除去率を得ることができる。このようなスラリによれば、ろ過によって粗大粒子を除去することにより、研磨時に発生する研磨傷を低減することができる。粗大粒子の除去率が大きい場合、粗大粒子数を低減しやすい傾向があり、研磨傷を有効に低減することができる。このように優れた粗大粒子の除去率が得られる理由としては、例えば、下記の理由が挙げられる。但し、理由は下記に限定されない。
【0023】
すなわち、セリウム化合物を含有する第2の粒子が、セリウム酸化物を含有する第1の粒子に接触する場合、粒子間に引力的な相互作用が生じていると推測される。このような相互作用としては、特に限定されないが、静電気的引力、共有結合、ファンデルワールス力、双極子−双極子相互作用、疎水結合、水素結合、高分子又はナノ粒子の濃度差に起因する枯渇効果等が挙げられる。上述の相互作用は、従来のスラリにおいては、粒子の凝集を招き、粗大粒子を増加させると考えられてきた。
【0024】
これに対し、本実施形態における複合粒子は、相互作用が生じていても分散状態を維持することができる。この理由は、第2の粒子同士の間に斥力的な相互作用が生じるためであると推測される。すなわち、第1の粒子に接触した第2の粒子に対しては、他の第2の粒子(第1の粒子に接触していない粒子等)が接近しにくい。そのため、第2の粒子の新たな吸着が抑制されることから、粗大な凝集体は形成されないと推測される。第1の粒子と第2の粒子との間の引力的な相互作用に対して、第2の粒子同士の間の斥力的な相互作用が充分に大きいため、本実施形態における複合粒子は分散状態を維持することができると推測される。上述の斥力的な相互作用としては、特に限定されないが、静電気的斥力、浸透圧、表面吸着層による立体的反発作用等が挙げられる。
【0025】
一方、粗大粒子に関しては、上記の相反する相互作用のバランスが複合粒子とは異なると推測される。ここで、粒子間に不可避的に働く引力的な相互作用(ファンデルワールス力等)は、粒径が大きくなるほど増大することが知られている。したがって、粒径が大きい粗大粒子に関しては、他の粒子が吸着しやすく、第2の粒子同士の間の斥力的な相互作用に基づく凝集の抑制効果が発現しにくい。すなわち、粗大粒子が第2の粒子によって被覆されていても、第2の粒子が次々と吸着することができる。そのため、第1の粒子、第2の粒子、又は、これらの凝集体が粗大粒子に吸着することで、大きな粒径を有する粗大粒子が形成されると推測される。このように、粗大粒子の粒径が選択的に増加するため、粗大粒子がろ材に捕捉されることにより粗大粒子の除去率が高まりやすいと推測される。
【0026】
そして、本実施形態では、遠心分離により得られる固相におけるBET比表面積が上記所定範囲であることにより、下記理由のとおり、優れた粗大粒子の除去率を得ることができる。
【0027】
すなわち、一般的に、液状媒体中の粒子は、液状媒体(例えば水)とは異なる他の物質(例えば、他の粒子)に付着することで安定化する傾向がある。これは、他の物質への付着により、粒子が液状媒体と接する面積が減少するため、液状媒体及び粒子の間の界面エネルギーを最小化できるためである。特に、大きな比表面積を有する粒子の場合には、液状媒体と接する面積の変化量が付着前後で大きく異なることから、他の物質に付着しやすい傾向があると推測される。
【0028】
本発明者の推定では、スラリ中の粗大粒子の比表面積は必ずしも大きくないが、より比表面積が大きな他の粒子(以下、「粒子A」という。例えば、第2の粒子)が粗大粒子の表面に吸着した場合には、粗大粒子が、本来有している比表面積以上の比表面積を有する粒子としてふるまう現象が起こり得る。すなわち、比表面積が大きな粒子Aが粗大粒子に吸着することでろ材に対する粗大粒子の付着性が高まるため、粗大粒子はろ過によって除去されやすくなると考えられる。
【0029】
一方、比表面積が大きな粒子Aが粗大粒子に対して吸着する量は、当該粒子Aと他の粒子との間の相互作用の強さ(吸着しやすさ)によって決定される。このような作用の詳細は不明だが、ある粒子が他の粒子に吸着しやすい傾向を有する場合、当該粒子は粗大粒子に対しても同様に吸着しやすい傾向を有すると考えられる。
【0030】
本発明者の知見によれば、砥粒の含有量が2.0質量%であるスラリを遠心加速度1.1×10
4Gで30分間遠心分離したときに得られる固相には、主に、二次粒径が比較的大きい粒子が含まれることが見出されている。前記条件の遠心分離によれば、比表面積が大きい粒子を充分に回収しやすい。前記固相のBET比表面積は、単位質量あたりの粒子の総表面積を表す。したがって、前記固相のBET比表面積が大きくなる場合には、下記要件(a)及び要件(b)が成立していると考えられる。
(a)比表面積が大きい粒子がスラリ中に存在する。
(b)比表面積が大きい粒子の二次粒径が大きい。
【0031】
本発明者の推定では、要件(a)に加えて要件(b)が満たされる場合には、「比表面積が大きい粒子」と他の粒子との間に働く上記相互作用が大きい。したがって、当該粒子は粗大粒子に対しても吸着しやすいため、粗大粒子の他の物質に対する付着性を高めやすいと考えられる。このような理由から、遠心分離により得られる固相におけるBET比表面積が上記所定範囲であることにより、粗大粒子の除去率を向上させることができる。
【0032】
ところで、粒子の作製方法を調整することで、粗大粒子の生成、及び、粗大粒子のスラリ及び研磨液への混入を避けることが考えられる。例えば、微小粒子を液相合成する手法は、多結晶(例えば、セリウム酸化物の多結晶)の粒子を粉砕して微細化する手法と比較して粗大粒子の混入を低減しやすい。しかしながら、このような手法においては、粗大粒子の意図しない生成を防ぐために粒子の製造条件を最適化することにより粒子を微小化する必要がある。この場合、粒子の結晶子径が小さいと、機械的な研磨作用が得られにくいため研磨速度が減少する傾向があるため、粗大粒子を有効に低減しつつ絶縁材料の高い研磨速度を達成することが難しい。
【0033】
一方、本実施形態によれば、粗大粒子を有効に低減しつつ絶縁材料(例えば酸化珪素)の高い研磨速度を達成することができる。このように絶縁材料の研磨速度が向上する理由としては、例えば、下記の理由が挙げられる。但し、理由は下記に限定されない。
【0034】
すなわち、セリウム酸化物を含有すると共に、第2の粒子よりも大きい粒径を有する第1の粒子は、第2の粒子と比較して、絶縁材料に対する機械的作用(メカニカル性)が強い。一方、セリウム化合物を含有すると共に、第1の粒子よりも小さい粒径を有する第2の粒子は、第1の粒子と比較して、絶縁材料に対する機械的作用は小さいものの、粒子全体における比表面積(単位質量当たりの表面積)が大きいため、絶縁材料に対する化学的作用(ケミカル性)が強い。このように、機械的作用が強い第1の粒子と、化学的作用が強い第2の粒子と、を併用することにより研磨速度向上の相乗効果が得られやすい。これにより、絶縁材料の高い研磨速度を達成することができる。
【0035】
本実施形態によれば、絶縁材料の高い研磨速度が達成できるため、砥粒の含有量が小さくなるように調整することで粗大粒子を低減することもできる。また、一般的に、砥粒の含有量が増加するに伴い研磨傷が発生しやすい傾向がある。一方、本実施形態によれば、砥粒の含有量が小さい場合であっても充分な研磨速度を得ることができるため、少量の砥粒を用いることにより、充分な研磨速度を達成しつつ絶縁材料を低研磨傷で研磨することもできる。
【0036】
上述のとおり、砥粒の含有量が2.0質量%である場合においてスラリを遠心加速度1.1×10
4Gで30分間遠心分離したときに得られる固相のBET比表面積は、優れた粗大粒子の除去率を得る観点から、24m
2/g以上である。前記固相のBET比表面積としては、スラリを遠心分離して得られた固相の乾燥後のBET比表面積を用いることができる。前記固相のBET比表面積の下限は、優れた粗大粒子の除去率を得やすい観点から、25m
2/g以上が好ましく、28m
2/g以上がより好ましく、30m
2/g以上が更に好ましく、35m
2/g以上が特に好ましく、40m
2/g以上が極めて好ましい。前記固相のBET比表面積の上限は、粒子が互いに付着しにくいことによって粒子の凝集が抑制されやすい観点から、200m
2/g以下が好ましい。
【0037】
本実施形態に係る研磨液(CMP研磨液)は、例えば、本実施形態に係るスラリをろ過することにより得ることができる。本実施形態に係る研磨液の製造方法は、本実施形態に係るスラリをろ過するろ過工程を備える。
【0038】
ろ過工程では、フィルタ(ろ材)を用いて粗大粒子を除去することができる。フィルタの形状としては、特に限定されず、ディスクタイプ、カートリッジタイプ等が挙げられる。カートリッジタイプのフィルタは、通液性を高める観点から、プリーツ状に加工されていてよい。
【0039】
フィルタを構成する材料としては、ポリプロピレン、ナイロン、ガラス、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリビニリデンフロライド、セルロース誘導体等が挙げられる。これらの材料がメンブレン又は繊維状に加工されていてよい。
【0040】
フィルタの孔径(公称孔径)は、下記の範囲が好ましい。フィルタの孔径の下限は、ろ過速度に優れる観点、粒径分布が変化しにくい観点、及び、フィルタライフ(目詰まり防止効果)に優れる観点から、0.10μm以上が好ましく、0.20μm以上がより好ましい。フィルタの孔径の上限は、優れた粗大粒子の除去率を得やすい観点から、3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下が更に好ましく、0.80μm以下が特に好ましく、0.50μm以下が極めて好ましい。前記観点から、フィルタの孔径は、0.10〜3.0μmが好ましい。
【0041】
ろ過は、1段階で実施してもよく、複数のフィルタを組み合わせた多段処理を行ってもよい。また、単一のフィルタに対してスラリを一回通液してよく、同一のフィルタに対して複数回の循環処理を行ってもよい。
【0042】
(砥粒)
本実施形態における砥粒は、上述のとおり、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含む複合粒子を含有する。
【0043】
第2の粒子の粒径は、第1の粒子の粒径よりも小さいことが好ましい。第1の粒子及び第2の粒子の粒径の大小関係は、複合粒子のSEM画像等から判別することができる。一般的に、粒径が小さい粒子では、粒径が大きい粒子に比べて単位質量当たりの表面積が大きいことから反応活性が高い。一方、粒径が小さい粒子の機械的作用(機械的研磨力)は、粒径が大きい粒子に比べて小さい。しかしながら、本実施形態においては、第2の粒子の粒径が第1の粒子の粒径より小さい場合であっても、第1の粒子及び第2の粒子の相乗効果を発現させることが可能であり、優れた反応活性及び機械的作用を容易に両立することができる。
【0044】
第1の粒子の粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、15nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、35nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましく、50nm以上が極めて好ましく、80nm以上が非常に好ましく、100nm以上がより一層好ましい。第1の粒子の粒径の上限は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、1000nm以下が好ましく、800nm以下がより好ましく、600nm以下が更に好ましく、400nm以下が特に好ましく、300nm以下が極めて好ましく、200nm以下が非常に好ましく、150nm以下がより一層好ましい。前記観点から、第1の粒子の粒径は、15〜1000nmであることがより好ましい。第1の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であってもよい。
【0045】
第2の粒子の粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましい。第2の粒子の粒径の上限は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が極めて好ましく、10nm以下が非常に好ましい。前記観点から、第2の粒子の粒径は、1〜50nmであることがより好ましい。第2の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であってもよい。
【0046】
スラリ又は研磨液中の砥粒(複合粒子を含む砥粒全体)の平均粒径(平均二次粒径)は、下記の範囲が好ましい。砥粒の平均粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、16nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましく、50nm以上が極めて好ましく、100nm以上が非常に好ましく、120nm以上がより一層好ましく、140nm以上が更に好ましく、150nm以上が特に好ましく、155nm以上が極めて好ましい。砥粒の平均粒径の上限は、粒径分布が変化しにくい観点、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、1050nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、800nm以下が更に好ましく、600nm以下が特に好ましく、500nm以下が極めて好ましく、400nm以下が非常に好ましく、300nm以下がより一層好ましく、200nm以下が更に好ましく、160nm以下が特に好ましい。前記観点から、砥粒の平均粒径は、16〜1050nmであることがより好ましい。
【0047】
平均粒径は、例えば、光回折散乱式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5、又は、マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定することができる。
【0048】
第1の粒子のBET比表面積は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、第2の粒子のBET比表面積よりも小さいことが好ましい。BET比表面積が小さい第1の粒子では、結晶子径が小さく、結晶性が高いため、絶縁材料に対して強い機械的作用(メカニカル性)効果が得られやすい。BET比表面積が大きい第2の粒子では、化学的作用(ケミカル性)に基づく絶縁材料との反応性が高い。特に、第2の粒子がセリウム水酸化物を含有する場合には、水酸基の作用によって第2の粒子と絶縁材料との高い反応性が得られやすい。このように、機械的作用が強い第1の粒子と、化学的作用が強い第2の粒子と、を併用することにより得られる相乗効果によって絶縁材料の研磨速度が更に向上すると推測される。
【0049】
第1の粒子のBET比表面積は、第2の粒子と接触する前又は後において下記の範囲であってよい。第1の粒子のBET比表面積は、例えば、5m
2/g以上であってよく、10m
2/g以上であってよく、15m
2/g以上であってよく、20m
2/g以上であってよい。第1の粒子のBET比表面積は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50m
2/g以下が好ましく、40m
2/g以下がより好ましく、30m
2/g以下が更に好ましく、25m
2/g以下が特に好ましい。第1の粒子のBET比表面積は、5〜50m
2/gであってよい。
【0050】
第2の粒子のBET比表面積は、第1の粒子と接触する前又は後において下記の範囲であってよい。第2の粒子のBET比表面積は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、100m
2/g以上が好ましく、150m
2/g以上がより好ましく、180m
2/g以上が更に好ましく、200m
2/g以上が特に好ましい。第2の粒子のBET比表面積は、500m
2/g以下であってよく、400m
2/g以下であってよく、300m
2/g以下であってよく、250m
2/g以下であってよい。第2の粒子のBET比表面積は、100〜500m
2/gであってよい。
【0051】
第1の粒子は、負のゼータ電位を有することができる。第2の粒子は、正のゼータ電位を有することができる。ゼータ電位とは、粒子の表面電位を表す。ゼータ電位は、例えば、動的光散乱式ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaNano C)を用いて測定することができる。粒子のゼータ電位は、添加剤を用いて調整できる。例えば、セリウム酸化物を含有する粒子に、リン酸基を有する材料(例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二カリウム、二リン酸ナトリウム等の無機リン酸塩)、カルボキシル基を有する材料(例えばポリアクリル酸)などを接触させることにより、負のゼータ電位を有する粒子を得ることができる。
【0052】
第1の粒子はセリウム酸化物(例えばセリア)を含有し、第2の粒子はセリウム化合物を含有する。第2の粒子のセリウム化合物としては、セリウム水酸化物、セリウム酸化物等が挙げられる。第2の粒子のセリウム化合物としては、セリウム酸化物とは異なる化合物を用いることができる。セリウム化合物は、セリウム水酸化物を含むことが好ましい。セリウム水酸化物を含む砥粒は、シリカ、セリウム酸化物等からなる粒子と比較して、水酸基の作用によって絶縁材料(例えば酸化珪素)との反応性(化学的作用)が高く、絶縁材料を更に高い研磨速度で研磨することができる。セリウム水酸化物は、例えば、4価セリウム(Ce
4+)と、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH
−)とを含む化合物である。セリウム水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO
3−及び硫酸イオンSO
42−)を含んでいてもよい。例えば、セリウム水酸化物は、4価セリウムに結合した陰イオン(例えば、硝酸イオンNO
3−及び硫酸イオンSO
42−)を含んでいてもよい。
【0053】
セリウム水酸化物は、セリウム塩とアルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製できる。セリウム水酸化物は、セリウム塩とアルカリ液(例えばアルカリ水溶液)とを混合することにより作製されることが好ましい。これにより、粒径が極めて細かい粒子を得ることができ、優れた研磨傷の低減効果を得やすい。このような手法は、例えば、特許文献3及び4に開示されている。セリウム水酸化物は、セリウム塩溶液(例えばセリウム塩水溶液)とアルカリ液とを混合することにより得ることができる。セリウム塩としては、Ce(NO
3)
4、Ce(SO
4)
2、Ce(NH
4)
2(NO
3)
6、Ce(NH
4)
4(SO
4)
4等が挙げられる。
【0054】
セリウム水酸化物の製造条件等に応じて、4価セリウム(Ce
4+)、1〜3個の水酸化物イオン(OH
−)及び1〜3個の陰イオン(X
c−)からなるCe(OH)
aX
b(式中、a+b×c=4である)を含む粒子が生成すると考えられる(なお、このような粒子もセリウム水酸化物である)。Ce(OH)
aX
bでは、電子吸引性の陰イオン(X
c−)が作用して水酸化物イオンの反応性が向上しており、Ce(OH)
aX
bの存在量が増加するに伴い研磨速度が向上すると考えられる。陰イオン(X
c−)としては、例えば、NO
3−及びSO
42−が挙げられる。セリウム水酸化物を含む粒子は、Ce(OH)
aX
bだけでなく、Ce(OH)
4、CeO
2等も含み得ると考えられる。
【0055】
セリウム水酸化物を含む粒子がCe(OH)
aX
bを含むことは、粒子を純水でよく洗浄した後に、FT−IR ATR法(Fourier transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法、フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法)で、陰イオン(X
c−)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)により、陰イオン(X
c−)の存在を確認することもできる。
【0056】
第1の粒子及び第2の粒子を含む複合粒子は、ホモジナイザー、ナノマイザー、ボールミル、ビーズミル、超音波処理機等を用いて第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、互いに相反する電荷を有する第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、粒子の含有量が少ない状態で第1の粒子と第2の粒子とを接触させることなどにより得ることができる。
【0057】
本実施形態によれば、セリウム酸化物を含有する第1の粒子と、セリウム化合物を含有する第2の粒子と、を接触させる工程を備える砥粒の製造方法を提供することができる。第1の粒子及び/又は第2の粒子の接触前又は接触後のBET比表面積は、上述の範囲であってよい。本実施形態によれば、前記砥粒の製造方法により砥粒を得る工程を備える、スラリの製造方法を提供することができる。
【0058】
第1の粒子におけるセリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、第1の粒子の全体(スラリ又は研磨液に含まれる第1の粒子の全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。第1の粒子は、実質的にセリウム酸化物からなる態様(実質的に第1の粒子の100質量%がセリウム酸化物である態様)であってもよい。
【0059】
第2の粒子におけるセリウム化合物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、第2の粒子の全体(スラリ又は研磨液に含まれる第2の粒子の全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。第2の粒子は、実質的にセリウム化合物からなる態様(実質的に第2の粒子の100質量%がセリウム化合物である態様)であってもよい。
【0060】
スラリ又は研磨液に特定の波長の光を透過させた際に分光光度計によって得られる下記式の吸光度の値により第2の粒子の含有量を推定することができる。すなわち、粒子が特定の波長の光を吸収する場合、当該粒子を含む領域の光透過率が減少する。光透過率は、粒子による吸収だけでなく、散乱によっても減少するが、第2の粒子では、散乱の影響が小さい。そのため、本実施形態では、下記式によって算出される吸光度の値により第2の粒子の含有量を推定することができる。
吸光度 =−LOG
10(光透過率[%]/100)
【0061】
砥粒における第1の粒子の含有量は、砥粒全体(スラリ又は研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が特に好ましく、88質量%以下が極めて好ましく、86質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、50〜97質量%であることがより好ましい。
【0062】
砥粒における第2の粒子の含有量は、砥粒全体(スラリ又は研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましく、12質量%以上が極めて好ましく、14質量%以上が非常に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、3〜50質量%であることがより好ましい。
【0063】
砥粒におけるセリウム酸化物の含有量は、砥粒全体(スラリ又は研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましい。セリウム酸化物の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が特に好ましく、88質量%以下が極めて好ましく、86質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、セリウム酸化物の含有量は、50〜97質量%であることがより好ましい。
【0064】
砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量は、砥粒全体(スラリ又は研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましく、12質量%以上が極めて好ましく、14質量%以上が非常に好ましい。砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量は、3〜50質量%であることがより好ましい。
【0065】
スラリ又は研磨液における第1の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が特に好ましく、88質量%以下が極めて好ましく、86質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、50〜97質量%であることがより好ましい。
【0066】
スラリ又は研磨液における第2の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましく、12質量%以上が極めて好ましく、14質量%以上が非常に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、3〜50質量%であることがより好ましい。
【0067】
スラリにおける第1の粒子の含有量は、スラリの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、0.8質量%以上が極めて好ましく、1質量%以上が非常に好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、スラリの保存安定性を高くする観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が特に好ましく、3質量%以下が極めて好ましく、2質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
【0068】
研磨液における第1の粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.07質量%以上が極めて好ましく、0.08質量%以上が非常に好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましく、0.1質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、0.005〜1質量%であることがより好ましい。
【0069】
スラリにおける第2の粒子の含有量は、スラリの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.25質量%以上が極めて好ましく、0.275質量%以上が非常に好ましく、0.3質量%以上がより一層好ましく、0.325質量%以上が更に好ましく、0.35質量%以上が特に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.4質量%以下が極めて好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、0.05〜5質量%であることがより好ましい。
【0070】
研磨液における第2の粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましく、0.01質量%以上が極めて好ましく、0.012質量%以上が非常に好ましく、0.014質量%以上がより一層好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が特に好ましく、0.03質量%以下が極めて好ましく、0.02質量%以下が非常に好ましく、0.015質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、0.001〜1質量%であることがより好ましい。
【0071】
スラリにおけるセリウム酸化物の含有量は、スラリの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、0.8質量%以上が極めて好ましく、1質量%以上が非常に好ましい。セリウム酸化物の含有量の上限は、スラリの保存安定性を高くする観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が特に好ましく、3質量%以下が極めて好ましく、2質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、セリウム酸化物の含有量は、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
【0072】
研磨液におけるセリウム酸化物の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.07質量%以上が極めて好ましく、0.08質量%以上が非常に好ましい。セリウム酸化物の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましく、0.1質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、セリウム酸化物の含有量は、0.005〜1質量%であることがより好ましい。
【0073】
スラリにおけるセリウム水酸化物の含有量は、スラリの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム水酸化物の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.25質量%以上が極めて好ましく、0.275質量%以上が非常に好ましく、0.3質量%以上がより一層好ましく、0.325質量%以上が更に好ましく、0.35質量%以上が特に好ましい。セリウム水酸化物の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.4質量%以下が極めて好ましい。前記観点から、セリウム水酸化物の含有量は、0.05〜5質量%であることがより好ましい。
【0074】
研磨液におけるセリウム水酸化物の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム水酸化物の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましく、0.01質量%以上が極めて好ましく、0.012質量%以上が非常に好ましく、0.014質量%以上がより一層好ましい。セリウム水酸化物の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が特に好ましく、0.03質量%以下が極めて好ましく、0.02質量%以下が非常に好ましく、0.015質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、セリウム水酸化物の含有量は、0.001〜1質量%であることがより好ましい。
【0075】
スラリにおける砥粒の含有量は、スラリの全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、1質量%以上が極めて好ましく、1.5質量%以上が非常に好ましく、2質量%以上がより一層好ましく、2.1質量%以上が更に好ましく、2.2質量%以上が特に好ましく、2.3質量%以上が極めて好ましく、2.35質量%以上が非常に好ましい。砥粒の含有量の上限は、スラリの保存安定性を高くする観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が特に好ましく、3質量%以下が極めて好ましい。前記観点から、砥粒の含有量は、0.01〜10質量%であることがより好ましい。
【0076】
研磨液における砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.08質量%以上が極めて好ましく、0.1質量%以上が非常に好ましい。砥粒の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が極めて好ましく、0.3質量%以下が非常に好ましく、0.2質量%以下がより一層好ましい。前記観点から、砥粒の含有量は、0.01〜10質量%であることがより好ましい。
【0077】
本実施形態に係るスラリ又は研磨液は、前記第1の粒子及び前記第2の粒子を含む複合粒子以外の他の粒子を含有していてもよい。このような他の粒子としては、例えば、前記第2の粒子に接触していない前記第1の粒子;前記第1の粒子に接触していない前記第2の粒子;シリカ、アルミナ、ジルコニア、イットリア等からなる第3の粒子(第1の粒子及び第2の粒子を含まない粒子)が挙げられる。
【0078】
(液状媒体)
液状媒体としては、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いたスラリ又は研磨液の残部でよく、特に限定されない。
【0079】
(任意成分)
本実施形態に係るスラリ又は研磨液は、任意の添加剤を更に含有していてもよい。任意の添加剤としては、カルボキシル基を有する材料(ポリオキシアルキレン化合物又は水溶性高分子に該当する化合物を除く)、ポリオキシアルキレン化合物、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)、分散剤(例えばリン酸系無機塩)等が挙げられる。添加剤のそれぞれは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
カルボキシル基を有する材料としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸;アルギニン、ヒスチジン、リシン等のアミノ酸などが挙げられる。
【0081】
ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン誘導体等が挙げられる。
【0082】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。
【0083】
ポリオキシアルキレン誘導体は、例えば、ポリアルキレングリコールに官能基若しくは置換基を導入した化合物、又は、有機化合物にポリアルキレンオキシドを付加した化合物である。前記官能基又は置換基としては、例えば、アルキルエーテル基、アルキルフェニルエーテル基、フェニルエーテル基、スチレン化フェニルエーテル基、グリセリルエーテル基、アルキルアミン基、脂肪酸エステル基、及び、グリコールエステル基が挙げられる。ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールエーテル(例えば、日本乳化剤株式会社製、BAグリコールシリーズ)、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製、エマルゲンシリーズ)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製、ノイゲンEAシリーズ)、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル(例えば、阪本薬品工業株式会社製、SC−Eシリーズ及びSC−Pシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、第一工業製薬株式会社製、ソルゲンTWシリーズ)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、花王株式会社製、エマノーンシリーズ)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(例えば、第一工業製薬株式会社製、アミラヂンD)、並びに、ポリアルキレンオキシドを付加したその他の化合物(例えば、日信化学工業株式会社製、サーフィノール465、及び、日本乳化剤株式会社製、TMPシリーズ)が挙げられる。
【0084】
「水溶性高分子」とは、水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。前記ポリオキシアルキレン化合物に該当する高分子は「水溶性高分子」に含まれないものとする。水溶性高分子としては、特に制限はなく、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド等のアクリル系ポリマ;カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等のグリセリン系ポリマ;ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0085】
(スラリ又は研磨液の特性)
本実施形態に係るスラリ又は研磨液のpHの下限は、絶縁材料の研磨速度が更に向上する観点から、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、2.8以上が更に好ましく、3.0以上が特に好ましく、3.2以上が極めて好ましく、3.5以上が非常に好ましく、4.0以上がより一層好ましく、4.2以上が更に好ましく、4.3以上が特に好ましい。pHの上限は、スラリ又は研磨液の保存安定性が更に向上する観点から、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましく、5.0以下が特に好ましく、4.8以下が極めて好ましく、4.7以下が非常に好ましく、4.6以下がより一層好ましく、4.5以下が更に好ましく、4.4以下が特に好ましい。前記観点から、pHは、2.0〜7.0であることがより好ましい。pHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0086】
pHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール、アルカノールアミン等のアルカリ成分などによって調整できる。pHを安定化させるため、緩衝剤を添加してもよい。緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0087】
pHは、pHメータ(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製の型番PHL−40)で測定することができる。具体的には例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)及び中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極をスラリ又は研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。液温は、共に25℃とする。
【0088】
本実施形態に係るスラリ又は研磨液をCMP研磨液として用いる場合、研磨液の構成成分を一液式研磨液として保存してもよく、砥粒及び液状媒体を含む第1の液と、添加剤及び液状媒体を含む第2の液(添加液)とを混合して研磨液となるように研磨液の構成成分を第1の液と第2の液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。第2の液は、例えば酸化剤を含んでいてもよい。研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0089】
研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、第1の液及び第2の液が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じた第1の液用貯蔵液及び第2の液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0090】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法(基体の研磨方法等)の第1態様は、前記研磨液の製造方法により得られた研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備えている。本実施形態に係る研磨方法(基体の研磨方法等)の第2態様は、前記スラリ(ろ過前のスラリ)を研磨液として用いて被研磨面(基体の被研磨面等)を研磨する研磨工程を備えている。本実施形態によれば、絶縁材料の高い研磨速度を達成することができる。本実施形態に係るスラリは、例えば、研磨液(CMP研磨液)として用いることができる。研磨工程における研磨液は、前記研磨液セットにおける第1の液と第2の液とを混合して得られる研磨液であってもよい。被研磨面は、例えば、酸化珪素を含む。
【0091】
本実施形態によれば、酸化珪素を含む被研磨面の研磨へのスラリ又は研磨液の使用を提供することができる。本実施形態によれば、半導体素子の製造技術である基体表面の平坦化工程へのスラリ又は研磨液の使用を提供することができる。本実施形態によれば、STI絶縁材料、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化工程へのスラリ又は研磨液の使用を提供することができる。
【0092】
研磨工程では、例えば、被研磨材料を有する基体の当該被研磨材料を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、スラリ又は研磨液を被研磨材料と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨材料の被研磨面を研磨する。研磨工程では、例えば、被研磨材料の少なくとも一部を研磨により除去する。
【0093】
研磨対象である基体としては、被研磨基板等が挙げられる。被研磨基板としては、例えば、半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨材料としては、酸化珪素等の絶縁材料などが挙げられる。被研磨材料は、単一の材料であってもよく、複数の材料であってもよい。複数の材料が被研磨面に露出している場合、それらを被研磨材料と見なすことができる。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってもよく、酸化珪素膜等の絶縁膜などであってもよい。
【0094】
このような基板上に形成された被研磨材料(例えば、酸化珪素等の絶縁材料)をスラリ又は研磨液で研磨し、余分な部分を除去することによって、被研磨材料の表面の凹凸を解消し、被研磨材料の表面全体にわたって平滑な面を得ることができる。
【0095】
本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、例えば、株式会社荏原製作所製の研磨装置:F−REX300、又は、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:MIRRAを使用できる。
【0096】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル−エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性に更に優れる観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。研磨パッドには、スラリ又は研磨液がたまるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0097】
研磨条件に制限はないが、研磨定盤の回転速度の上限は、基体が飛び出さないように200min
−1(min
−1=rpm)以下が好ましく、基体にかける研磨圧力(加工荷重)の上限は、研磨傷が発生することを抑制しやすい観点から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等で連続的にスラリ又は研磨液を研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常にスラリ又は研磨液で覆われていることが好ましい。
【0098】
本実施形態は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。本実施形態は、STIの形成及び層間絶縁材料の高速研磨に好適に使用できる。絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度の下限は、150nm/min以上が好ましく、200nm/min以上がより好ましく、300nm/min以上が更に好ましく、400nm/min以上が特に好ましい。
【0099】
本実施形態は、プリメタル絶縁材料の研磨にも使用できる。プリメタル絶縁材料としては、酸化珪素、リン−シリケートガラス、ボロン−リン−シリケートガラス、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等が挙げられる。
【0100】
本実施形態は、酸化珪素等の絶縁材料以外の材料にも適用できる。このような材料としては、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率材料;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体材料;GeSbTe等の相変化材料;ITO等の無機導電材料;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂材料などが挙げられる。
【0101】
本実施形態は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ、プラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0102】
本実施形態は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置などの製造に用いることができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0104】
<セリウム酸化物スラリの準備>
セリウム酸化物を含む粒子(第1の粒子。以下、「セリウム酸化物粒子」という。セリウム酸化物粒子A)と、和光純薬工業株式会社製の商品名:リン酸二水素アンモニウム(分子量:97.99)とを混合して、セリウム酸化物粒子を5.0質量%(固形分含量)含有するセリウム酸化物スラリA(pH:7)を調製した。リン酸二水素アンモニウムの配合量は、セリウム酸化物粒子の全量を基準として1質量%に調整した。
【0105】
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内にセリウム酸化物スラリAを適量投入し、セリウム酸化物粒子の平均粒径を測定した。表示された平均粒径値を平均粒径(平均二次粒径)として得た。セリウム酸化物スラリAにおけるセリウム酸化物粒子の平均粒径は145nmであった。
【0106】
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム酸化物スラリAを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム酸化物スラリAにおけるセリウム酸化物粒子のゼータ電位は−55mVであった。
【0107】
セリウム酸化物スラリA100gを日立工機株式会社製の遠心分離機(商品名:himac CR7)に入れた後、遠心加速度1.1×10
4Gで30分間遠心分離を行った。上澄み液を取り除き、固相を真空乾燥した後、乳鉢を用いて固相を粉砕して、細粒化した粉末を得た。この粉末を真空測定用セル(容量:1.5cm
3)に入れた後、Quantachrome社製の比表面積・細孔径分析装置(商品名:QUADRASORB evo)を用いて77.35Kにおける窒素ガスの吸着量を測定することによりBET比表面積(m
2/g)を得た。BET比表面積は22.9m
2/gであった。
【0108】
<セリウム水酸化物スラリの準備>
(セリウム水酸化物の合成)
480gのCe(NH
4)
2(NO
3)
650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7450gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/minの混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度20℃、撹拌速度500min
−1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0109】
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min
−1、5分間)した後にデカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物を含む粒子(第2の粒子。以下、「セリウム水酸化物粒子」という)を含有するセリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0110】
(平均粒径の測定)
ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5を用いてセリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子の平均粒径(平均二次粒径)を測定したところ、10nmであった。測定法は次のとおりである。まず、1.0質量%のセリウム水酸化物粒子を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ。水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れた後、N5内にセルを設置した。N5のソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0111】
(ゼータ電位の測定)
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム水酸化物スラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子のゼータ電位は+50mVであった。
【0112】
セリウム水酸化物スラリ7gを1.6cm(内径)×7.6cm(長さ)のチューブに入れた。次に、ベックマン・コールター株式会社製の遠心分離機(商品名:Optima MAX−TL)内にチューブを設置した後、遠心加速度2.9×10
5G、設定温度25℃で60分間遠心分離を行うことにより上澄み液と固相とを分離した。上澄み液を取り除き、固相を真空乾燥した後、乳鉢を用いて固相を粉砕して、細粒化した粉末を得た。この粉末を真空測定用セル(容量:1.5cm
3)に入れた後、Quantachrome社製の比表面積・細孔径分析装置(商品名:QUADRASORB evo)を用いて77.35Kにおける窒素ガスの吸着量を測定することによりBET比表面積(m
2/g)を得た。BET比表面積は212m
2/gであった。
【0113】
(セリウム水酸化物粒子の構造分析)
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥してセリウム水酸化物粒子を単離した後に純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT−IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH
−)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO
3−)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N−XPS)測定を行ったところ、NH
4+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物粒子は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子がセリウム水酸化物粒子の少なくとも一部に含有されることから、セリウム水酸化物粒子がセリウム水酸化物を含有することが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0114】
<スラリの調製>
(実施例1)
2枚羽根の撹拌羽根を用いて300rpmの回転数で撹拌しながら、前記セリウム水酸化物スラリ150gと、イオン交換水150gとを混合して混合液を得た。続いて、前記混合液を撹拌しながら前記セリウム酸化物スラリA200gを前記混合液に混合した後、株式会社エスエヌディ製の超音波洗浄機(装置名:US−105)を用いて超音波を照射しながら撹拌した。これにより、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.3質量%)を調製した。
【0115】
(実施例2)
セリウム酸化物粒子(セリウム酸化物粒子Aとは異なるセリウム酸化物粒子B)と、和光純薬工業株式会社製の商品名:ポリアクリル酸5000(重量平均分子量:5000)と、イオン交換水とを混合することにより、セリウム酸化物スラリB(セリウム酸化物粒子の含有量:5.0質量%)を調製した。ポリアクリル酸の配合量は、セリウム酸化物粒子の全量を基準として1質量%に調整した。セリウム酸化物スラリAと同様に、セリウム酸化物スラリBにおけるセリウム酸化物粒子の平均粒径及びゼータ電位を測定したところ、145nm及び−55mVであった。
【0116】
前記セリウム酸化物スラリAの代わりに前記セリウム酸化物スラリBを用いたことを除き実施例1と同様に行うことにより、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.3質量%)を調製した。
【0117】
(実施例3)
前記セリウム水酸化物スラリの使用量を変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.13質量%)を調製した。
【0118】
(実施例4)
前記セリウム水酸化物スラリの使用量を変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.07質量%)を調製した。
【0119】
(比較例1)
前記セリウム酸化物スラリAとイオン交換水とを混合することにより、セリウム酸化物粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%)を調製した。
【0120】
(比較例2)
前記セリウム酸化物スラリBとイオン交換水とを混合することにより、セリウム酸化物粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%)を調製した。
【0121】
(比較例3)
セリウム酸化物粒子(セリウム酸化物粒子A及びBとは異なるセリウム酸化物粒子C)と、酢酸(和光純薬工業株式会社製)と、イオン交換水とを混合することにより、セリウム酸化物粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%)を調製した。酢酸の配合量は、セリウム酸化物粒子の全量を基準として1.0質量%であった。
【0122】
(比較例4)
一次粒径50nmのコロイダルセリア粒子(セリウム酸化物粒子A、B及びCとは異なるセリウム酸化物粒子D)と、イオン交換水とを混合することにより、セリウム酸化物粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%(固形分含量))を調製した。
【0123】
(比較例5)
前記セリウム水酸化物スラリの使用量を変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、セリウム酸化物粒子と、当該セリウム酸化物粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子を含有する試験用スラリ(セリウム酸化物粒子の含有量:2.0質量%、セリウム水酸化物粒子の含有量:0.01質量%)を調製した。
【0124】
<砥粒の平均粒径>
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内に上述の各試験用スラリを適量投入し、砥粒の平均粒径の測定を行った。表示された平均粒径値を砥粒の平均粒径(平均二次粒径)として得た。測定結果を表1に示す。
【0125】
<固相のBET比表面積>
(粒子粉末の作製)
必要に応じてイオン交換水で試験用スラリの砥粒の含有量を調整することにより、砥粒の含有量(砥粒の総量)が2.0質量%である測定試料を得た。次に、測定試料100gを日立工機株式会社製の遠心分離機(商品名:himac CR7)に入れた後、遠心加速度1.1×10
4Gで30分間遠心分離を行った。上澄み液を除去した後、固相を真空乾燥した。そして、乳鉢を用いて固相を粉砕して、細粒化した粉末(粒子粉末)を得た。
【0126】
(BET比表面積の測定)
上記粉末を真空測定用セル(容量:1.5cm
3)に入れた後、Quantachrome社製の比表面積・細孔径分析装置(商品名:QUADRASORB evo)を用いて77.35Kにおける窒素ガスの吸着量を測定することによりBET比表面積(m
2/g)を得た。2回の測定の平均値を砥粒のBET比表面積として得た。測定結果を表1に示す。
【0127】
<粗大粒子の除去率>
(スラリのろ過)
必要に応じてイオン交換水で試験用スラリの砥粒の含有量を調整することにより、砥粒の含有量(砥粒の総量)2.0質量%の測定試料200gを作製した。株式会社ロキテクノ製の47mmφディスクフィルタ(商品名:SCP−005、ろ材:ポリプロピレン、公称孔径:0.5μm)を設置した円筒形状の簡易ろ過装置に上記測定試料を入れた後に0.2MPaで圧送することにより、上記フィルタを通過した測定試料(ろ液)を回収した。循環処理を行わず、単一のフィルタに対してスラリを一回通液することによりろ過を行った。
【0128】
(除去率の測定)
100mL容器に測定試料(ろ過前後のそれぞれの測定試料)10gとイオン交換水90gとを加えることにより測定試料を10倍希釈した後にミックスローターに容器を設置した。測定装置における粗大粒子数の上限の測定限界を下回る範囲に調整する観点から、前記のとおり測定試料を希釈した。次に、回転数100rpmで10分間攪拌した。続いて、上記容器をリオン株式会社製の光遮断式液中パーティカルセンサ(装置名:KS−71)に静かに設置した後、ろ過前後のそれぞれにおける3μm以上の大きさ(粒径)の粗大粒子の数(LPC:Large Particle Counts。5回の測定の平均値)を下記の測定条件で測定した。測定試料のろ過前後の粗大粒子数に基づき粗大粒子の除去率(粗大粒子の除去率[%]=(1−(ろ過後のLPC[個/mL])/(ろ過前のLPC[個/mL]))×100)を算出した。測定結果を表1に示す。
測定液量:10mL/回
流量:60mL/min
測定回数:5回
【0129】
なお、ろ過を行った後の砥粒の含有量の調整に使用するイオン交換水に対して上記と同様の条件で粗大粒子の除去率を測定した結果、粗大粒子の除去率が50%以下であり、イオン交換水における粗大粒子の含有量が少ないことを確認した。これにより、除去率の測定試料の調製に使用するイオン交換水中の粗大粒子、及び、容器に付着した異物の混入によってLPCが真値よりも過剰評価されていないことを確認した。
【0130】
<CMP評価>
上記と同様のろ過を行って得られたろ液にイオン交換水を加えることにより、砥粒の含有量(砥粒の総量)0.1質量%のCMP研磨液を得た。このCMP研磨液を用いて下記研磨条件で被研磨基板を研磨した。
[CMP研磨条件]
研磨装置:MIRRA(APPLIED MATERIALS社製)
研磨液の流量:200mL/min
被研磨基板:パターンが形成されていないブランケットウエハとして、プラズマCVD法で形成された厚さ2μmの酸化珪素膜をシリコン基板上に有する被研磨基板を用いた。
研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社製、型番IC1010)
研磨圧力:13kPa(2.0psi)
被研磨基板及び研磨定盤の回転数:被研磨基板/研磨定盤=93/87rpm
研磨時間:1min
ウエハの洗浄:CMP処理後、超音波を印加しながら水で洗浄し、さらに、スピンドライヤで乾燥させた。
【0131】
前記条件で研磨及び洗浄した酸化珪素膜の研磨速度(SiO
2RR)を下記式より求めた。結果を表1に示す。研磨前後における酸化珪素膜の膜厚差は、光干渉式膜厚測定装置(フィルメトリクス株式会社製、商品名:F80)を用いて求めた。
研磨速度(RR)=(研磨前後での酸化珪素膜の膜厚差[nm])/(研磨時間:1[min])
【0132】
【表1】