【文献】
Wan Jae Dong et al.,"Simple Bar-Coating Process for Fabrication of Flexible Top-Illuminated Polymer Solar Cells on Metallic Substrate",ADVANCED MATERIALS TECHNOLOGIES,2016年,Vol.1, Article Number 1600128,pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コーティングの方法が、ディップコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、スロットダイ、バーコーター、ドクターブレード、およびブラシペインティングからなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
前記溶液は、1,8−ジヨードオクタン(DIO:1,8−diiodooctane)、オクタンジチオール(octane dithiol)、ジフェニルエーテル(Diphenyl ether)、卜リクロロベンゼン(trichlorobenzene)、および1−クロロナフタレン(1−chloronaphthalene)からなる群より選択される1または2種以上の添加剤をさらに含むものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0018】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書は、基板を準備するステップと、前記基板上に第1電極を形成するステップと、前記第1電極上に光活性物質および溶媒を含む溶液をコーティングして光活性層を形成するステップと、前記光活性層を一定体積の閉鎖された乾燥空間(closed system)内で乾燥するステップと、前記光活性層上に第2電極を形成するステップとを含む有機太陽電池の製造方法を提供する。
【0020】
本発明者らは、有機太陽電池の光活性層のモルフォロジーを調節するために、一定体積を有する閉鎖された乾燥空間を導入し、乾燥空間内の気体環境、気体の組成および乾燥空間の体積を調節して光吸収効率を増大させることができる有機太陽電池の製造方法を開発した。
【0021】
本明細書の閉鎖された乾燥空間(closed system)における「空間」は、乾燥対象物の光活性層が形成された積層体を収容する空間を意味し、一定体積を有することができれば、その形態は制限されない。
【0022】
本明細書の一実施態様によれば、前記光活性層を乾燥するステップは、閉鎖された空間内で行われる。前記「閉鎖された空間(closed system)」は、空間外部と空間内部の空気の循環がない状態を有する空間を意味する。
【0023】
有機太陽電池は、光活性層に光を付与すると、エキシトンが生成され、拡散によって電子供与体、電子受容体の接合位置にエキシトンが移動する。電子供与体および電子受容体の界面に移動したエキシトンは、それぞれ電子と正孔に分離され、電荷が電極に輸送されながら電力が発生する。
【0024】
本明細書の一実施態様によれば、前記光活性層の電子供与体と電子受容体は、バルクヘテロジャンクション(Bulk Heterojunction:BHJ)をなす。
【0025】
バルクヘテロジャンクション素子の場合、電子供与体および受容体が完全無作為に混合されると、エキシトンの電荷への分離は非常に効果的であるが、これらの分離された電荷がそれぞれの電極に移動する時、再結合の可能性が生じる問題点がある。すなわち、エキシトンの滞り現象を解消しながら分離された電荷の再結合の可能性を最小化するために、バルク異種接合構造において電子供与体と電子受容体との間の相互作用をする表面積は増加させる一方で、適切な相分離によって電子と正孔それぞれの輸送が円滑に行われる必要がある。
【0026】
前記適切な相分離は、光活性層のモルフォロジー制御により調節可能である。
【0027】
従来は、光活性層のモルフォロジー制御のために、乾燥後熱処理工程を行っていた。しかし、この場合、熱処理が高温で行われるため、基板自体の損傷や光活性層が損傷する問題があり、追加的な工程の実行で費用が増加する問題点があった。
【0028】
本明細書の一実施態様に係る光活性層の乾燥方法によれば、追加的な工程なしに乾燥工程だけでも光活性層のモルフォロジー制御が可能で、光活性層の損傷が少ないという利点がある。
【0029】
また、従来の乾燥空間外部と内部の空気循環が存在する乾燥空間による光活性層の乾燥方法によれば、光活性層が乾燥する間にも乾燥空間外部の空気が乾燥空間内部に流入する。この時、光活性層をなす薄膜の組成と前記新たに流入した空気の組成とが完全に異なるため、光活性層を形成する電子供与体と電子受容体とがよく混合されないので、2つの高分子が過度に相分離される問題が発生する。
【0030】
さらに、従来の熱風を利用した乾燥工程の場合、ガスが注入される間にガスの風量によって光活性層の表面から乾燥して光活性層が均一に乾燥しない問題点があった。
【0031】
本明細書の一実施態様によれば、前記光活性層を乾燥するステップが一定体積を有する閉鎖された空間内で行われることにより、光活性層のモルフォロジーおよび界面を効果的に制御することができる。
【0032】
前記閉鎖された乾燥空間(closed system)は、乾燥空間内部と外部の空気循環がない状態を意味するものであって、光活性層の乾燥過程を前記閉鎖された乾燥空間で行う場合、蒸発した溶媒が乾燥空間外部に移動せず、乾燥空間内部に留まる。すなわち、光活性層を乾燥しながら蒸発した溶媒が乾燥空間内部に留まるにつれ、乾燥空間内部の空気の組成と光活性層の組成とが類似の形態を有する。これによって、乾燥空間内部の空気と光活性層がよく混合され、結果的に光活性層を形成する電子供与体と電子受容体とが混合されるようになって、相分離が過度に起こる問題を防止することができる。
【0033】
また、従来の乾燥空間外部と内部の空気循環が存在する乾燥空間による光活性層の乾燥方法によれば、乾燥中に溶液が光活性層の表面上に留まることなく循環する空気によって乾燥空間に蒸発する。この場合、光活性層の表面上の溶液は速やかに蒸発するのに対し、光活性層内の溶液はゆっくり蒸発するため、光活性層の内外部の乾燥速度の差が発生して、光活性層の電子供与体と電子受容体との間の相分離が適切に行われない。
【0034】
本明細書の一実施態様によれば、乾燥空間内部と外部の空気循環が存在しない乾燥空間内で光活性層が乾燥する。この場合、光活性層の表面上の溶液が速やかに蒸発するのを防止して、光活性層の内部と外部の乾燥速度の差を低減可能で、光活性層の電子供与体と電子受容体との間の相分離が適切に行われる。
【0035】
本明細書の一実施態様によれば、前記光活性層を乾燥するステップは、一定体積を有する乾燥空間内で行われる。前記一定体積は、乾燥が進行する間に溶媒の蒸発に伴う乾燥空間内部の体積変化がないことを意味する。
【0036】
本明細書の一実施態様によれば、光活性層を形成するためにコーティングされた溶液の体積と乾燥空間の体積の比率を調節することにより、電子供与体と電子受容体との間の相分離を適切に調節することができる。
【0037】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1電極上にコーティングされた溶液の体積に対する乾燥空間の体積の比率は、1:1,000〜1:5,000であってもよく、好ましい数値範囲としては、1:2,000〜1:4,000、さらに好ましくは1:2,500〜1:3,600であってもよい。前記コーティングされた溶液の体積に対する乾燥空間の体積の比率である1:5,000より乾燥空間の比率が大きい場合、乾燥空間の体積が過度に大きくなって、乾燥空間内部の空気に蒸発した溶媒が多く含まれなくなり、乾燥空間内部の空気とコーティングされた溶液の組成が異なるようになって、相分離が過度に起こる問題がある。反面、前記コーティングされた溶液の体積に対する乾燥空間の体積の比率である1:1,000より乾燥空間の比率が小さい場合、相分離がうまく起こらないことがあり、乾燥時間対比で乾燥が効率的に行われない問題がある。
【0038】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1電極上にコーティングされた溶液の体積は、50μl以上300μl以下であってもよい。好ましい溶液の体積は、100μl以上250μl以下、さらに好ましくは150μl以上200μl以下であってもよい。
【0039】
本明細書の一実施態様によれば、前記第1電極上にコーティングされた溶液の体積は、基板の面積を基準として、0.1μl/cm
2以上10μl/cm
2以下、好ましくは0.2μl/cm
2以上8μl/cm
2以下、さらに好ましくは0.4μl/cm
2以上3μl/cm
2以下であってもよい。第1電極上にコーティングされた溶液の体積が基板の面積基準0.4μl/cm
2未満の場合、溶液が均一にコーティングされないことがあり、第1電極上にコーティングされた溶液の体積が基板の面積基準3μl/cm
2を超える場合、相分離がよく起こらないことがあり、乾燥時間対比で乾燥が効率的によく行われない問題がある。すなわち、前記数値範囲を満足する場合、光活性層の電子供与体と電子受容体との間の相分離を適切に誘導し、乾燥過程を効率的に行える効果がある。
【0040】
本明細書の一実施態様によれば、乾燥空間の体積は、前記第1電極上にコーティングされた溶液の体積と乾燥空間の体積との比率を満足するためのものであれば特に制限されず、乾燥対象物の大きさや環境によって変更可能であるが、例えば、200cm
3以上1,000cm
3以下であってもよい。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記光活性層を乾燥するステップの実行温度は、30℃以上150℃以下であってもよく、好ましくは30℃以上90℃以下、さらに好ましくは30℃以上60℃以下であってもよい。実行温度が30℃未満の場合、電子供与体と電子受容体との間の相分離がよく起こらないことがあり、実行温度が150℃を超える場合、光活性層または基板が損傷することがある。
【0042】
本明細書の一実施態様によれば、前記乾燥工程の実行時間は、5分〜30分であってもよい。実行時間が5分未満であれば、電子供与体と電子受容体との間の相分離がよく起こらないことがあり、実行時間が30分を超えると、相分離が過度にも多くなったり、光活性層が損傷することがある。
【0043】
本明細書の一実施態様によれば、前記乾燥空間は、不活性ガスを含むことができる。乾燥空間に不活性ガスが含まれる場合、光活性物質が水分と酸素から酸化または劣化するのを防止することができる。
【0044】
本明細書の一実施態様によれば、前記乾燥空間に含まれる不活性ガスは、アルゴン(Ar)または窒素(N
2)などであってもよい。
【0045】
本明細書の一実施態様によれば、前記乾燥空間内の不活性ガスの濃度は、前記乾燥空間内の含まれる全体気体の全体質量を基準として、99質量%以上100質量%以下であってもよい。
【0046】
本明細書の一実施態様によれば、前記乾燥空間内の相対湿度は、摂氏60℃で30%以下であってもよい。前記湿度が摂氏60℃で30%を超える場合、溶媒の蒸発がよく行われず、光活性層をなす有機物が水分に劣化しうるという欠点がある。
【0047】
本明細書の一実施態様によれば、前記乾燥空間内での乾燥は、溶媒を蒸発させる方法により行われるが、乾燥空間内部の気体と乾燥空間外部の気体が互いに循環しない方法であれば、その方法が制限されない。例えば、オーブンによって基板上の光活性層を加熱して溶媒を蒸発させる方法、または赤外線などによる光学的方法がある。
【0048】
本明細書の一実施態様によれば、前記溶液をコーティングする方法が、ディップコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、スロットダイ、バーコーター、ドクターブレード、ブラシペインティング、および蒸着からなる群より選択されるいずれか1つであってもよい。スロットダイ、バーコーター、ドクターブレード法が大面積の有機太陽電池を再現性あるように生産可能で、コーティング方法として好ましい。
【0049】
本明細書の一実施態様によれば、光活性物質は、全体溶液中、0.5重量%以上10重量%以下で含まれてもよい。
【0050】
本明細書の一実施態様によれば、前記溶媒は、クロロホルム(chloroform)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、オルトジクロロベンゼン(orthodichlorobenzene)、キシレン(xylene)、トルエン(toluene)、シクロヘキサン(cyclohexane)、および2−メチルアニソール(2−methylanisole)からなる群より選択される1または2以上の混合溶媒であってもよい。
【0051】
本明細書の一実施態様によれば、前記溶液は、1,8−ジヨードオクタン(DIO:1,8−diiodooctane)、オクタンジチオール(octane dithiol)、ジフェニルエーテル(Diphenyl ether)、卜リクロロベンゼン(trichlorobenzene)、および1−クロロナフタレン(1−chloronaphthalene)からなる群より選択される1または2種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層は、添加剤をさらに含む。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記添加剤の分子量は、50g/mol以上1,000g/mol以下であってもよい。
【0054】
前記添加剤の沸点は、30℃〜300℃の有機物であってもよい。前記有機物とは、炭素原子を少なくとも1以上含む物質を意味する。
【0055】
有機太陽電池において、エキシトンの円滑な分離と分離された電荷の効果的な輸送のためには、電子供与体および受容体の間の界面を最大限に増加させる一方で、適当な相分離により電子供与体および受容体の連続的通路を確保して、モルフォロジーの向上を誘導することが求められる。
【0056】
本明細書の一実施態様によれば、前記添加剤を活性層に導入することにより、高分子とフラーレン誘導体の添加剤に対する選択的溶解度および溶媒と添加剤の沸点の差から誘導される効果的な相分離を誘導することができる。また、電子受容体物質や電子供与体物質を架橋化させてモルフォロジーを固定させて相分離が起こらないようにすることができ、電子供与体物質の分子構造の変化によってもモルフォロジーをコントロールすることができる。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記基板は、透明基板であってもよいし、透明基板としては特に限定されないが、光透過率が50%以上、好ましくは75%以上であることが好ましい。具体的には、前記透明基板としては、ガラスを用いてもよく、プラスチック基板またはプラスチックフィルムを用いてもよい。前記プラスチック基板またはフィルムとしては、当技術分野で知られている材料を使用することができ、例えば、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエポキシ系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、およびセルロース系の中から選択された1種以上の樹脂で形成されたものを使用することができる。さらに具体的には、PET(Polyethylene terephthalate)、PVB(polyvinylbutyral)、PEN(polyethylenenaphthalate)、PES(polyethersulfon)、PC(polycarbonate)、アセチルセルロイドのような、可視光透過率80%以上のフィルムが好ましい。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池が外部光源から光子を受けると、電子供与体と電子受容体との間で電子と正孔が発生する。発生した正孔は、電子供与体層を通して陽極に輸送される。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層をさらに含む。
【0060】
もう一つの実施態様において、前記有機太陽電池は、電子注入層、電子輸送層、または電子注入および電子輸送を同時に行う層をさらに含む。
【0061】
図1は、本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池を示す図である。
【0062】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池が外部光源から光子を受けると、電子供与体と電子受容体との間で電子と正孔が発生する。発生した正孔は、電子供与体層を通して陽極に輸送される。
【0063】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極は、アノードであり、前記第2電極は、カソードである。もう一つの実施態様において、前記第1電極は、カソードであり、前記第2電極は、アノードである。
【0064】
本明細書の一実施態様において、有機太陽電池は、カソード、光活性層、およびアノードの順に配列されてもよく、アノード、光活性層、およびカソードの順に配列されてもよいが、これに限定されない。
【0065】
もう一つの実施態様において、前記有機太陽電池は、アノード、正孔輸送層、光活性層、電子輸送層、およびカソードの順に配列されてもよく、カソード、電子輸送層、光活性層、正孔輸送層、およびアノードの順に配列されてもよいが、これに限定されない。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、ノーマル(Normal)構造である。前記ノーマル構造は、基板上にアノードが形成されることを意味することができる。具体的には、本明細書の一実施態様によれば、前記有機太陽電池がノーマル構造の場合、基板上に形成される第1電極がアノードであってもよい。
【0067】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、インバーテッド(Inverted)構造である。前記インバーテッド構造は、基板上にカソードが形成されることを意味することができる。具体的には、本明細書の一実施態様によれば、前記有機太陽電池がインバーテッド構造の場合、基板上に形成される第1電極がカソードであってもよい。
【0068】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、タンデム(tandem)構造である。この場合、前記有機太陽電池は、2層以上の光活性層を含むことができる。本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池は、光活性層が1層または2層以上であってもよい。
【0069】
もう一つの実施態様において、バッファ層が光活性層と正孔輸送層との間または光活性層と電子輸送層との間に備えられる。この時、正孔注入層がアノードと正孔輸送層との間にさらに備えられてもよい。また、電子注入層がカソードと電子輸送層との間にさらに備えられてもよい。
【0070】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層は、電子供与体および受容体からなる群より選択される物質を1または2以上を含む。
【0071】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体物質は、チオフェン系、フルオレン系、カルバゾール系などの多様な高分子物質および単分子物質であってもよい。
【0072】
本明細書の一実施態様において、前記電子受容体物質は、フラーレン、フラーレン誘導体、非フラーレン誘導体、バソクプロイン、半導体性元素、半導体性化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0073】
具体的には、フラーレン(fullerene)、フラーレン誘導体(PCBM((6,6)−phenyl−C61−butyric acid methylester)、PCBC((6,6)−phenyl−C61−butyric acid−cholesteryl ester)、ペリレン(perylene)PBI(polybenzimidazole)、PTCBI(3,4,9,10−perylene−tetracarboxylic bis−benzimidazole)、ITIC、およびITIC−Thからなる群より選択される1または2以上の化合物である。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体および電子受容体は、バルクヘテロジャンクション(BHJ)を構成する。
【0075】
バルクヘテロジャンクションとは、光活性層で電子供与体物質と電子受容体物質とが互いに混合されていることを意味する。
【0076】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層は、n型有機物層およびp型有機物層を含む二層薄膜(bilayer)構造であってもよい。
【0077】
本明細書において、前記基板は、透明性、表面平滑性、取扱容易性および防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板になってもよいが、これに限定されず、有機太陽電池に通常使用される基板であれば制限はない。具体的には、ガラス、またはPET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、PP(polypropylene)、PI(polyimide)、TAC(triacetyl cellulose)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
前記アノード電極は、透明かつ導電性に優れた物質になってもよいが、これに限定されない。バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO
2:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0079】
前記アノード電極の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング、E−ビーム、熱蒸着、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード、またはグラビアプリンティング法を用いて、基板の一面に塗布されるか、フィルム形態にコーティングされることにより形成される。
【0080】
前記アノード電極を基板上に形成する場合、これは、洗浄、水分除去および親水性改質過程を経ることができる。
【0081】
例えば、パターニングされたITO基板を洗浄剤、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次に洗浄した後、水分除去のために、加熱板で100℃〜150℃で1〜30分間、好ましくは120℃で10分間乾燥し、基板が完全に洗浄されると、基板の表面を親水性に改質する。
【0082】
前記のような表面改質により接合表面電位を光活性層の表面電位に適した水準に維持することができる。また、改質時、アノード電極上に高分子薄膜の形成が容易になり、薄膜の品質が向上することもできる。
【0083】
アノード電極の前処理技術としては、a)平行平板型放電を利用した表面酸化法、b)真空状態でUV紫外線を用いて生成されたオゾンを通して表面を酸化する方法、およびc)プラズマによって生成された酸素ラジカルを用いて酸化する方法などがある。
【0084】
アノード電極または基板の状態によって、前記方法のうち1つを選択することができる。ただし、どの方法を用いても、共通して、アノード電極または基板表面の酸素離脱を防止し、水分および有機物の残留を最大限に抑制することが好ましい。この時、前処理の実質的な効果を極大化することができる。
【0085】
具体例として、UVを用いて生成されたオゾンを通して表面を酸化する方法を使用することができる。この時、超音波洗浄後、パターニングされたITO基板を加熱板(hot plate)でベーク(baking)してよく乾燥させた後、チャンバに投入し、UVランプを作用させて、酸素ガスがUV光と反応して発生するオゾンによってパターニングされたITO基板を洗浄することができる。
【0086】
しかし、本明細書におけるパターニングされたITO基板の表面改質方法は特に限定させる必要はなく、基板を酸化させる方法であればいかなる方法でも構わない。
【0087】
前記カソード電極は、仕事関数の小さい金属になってもよいが、これに限定されない。具体的には、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/Al、LiO
2/Al、LiF/Fe、Al:Li、Al:BaF
2、Al:BaF
2:Baのような多層構造の物質になってもよいが、これに限定されるものではない。
【0088】
前記カソード電極は、5×10
−7torr以下の真空度を示す熱蒸着器の内部で蒸着されて形成されるが、この方法にのみ限定されるものではない。
【0089】
前記正孔輸送層および/または電子輸送層物質は、光活性層から分離された電子と正孔を電極に効率的に伝達させる役割を担い、物質を特に制限しない。
【0090】
前記正孔輸送層物質は、PEDOT:PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)−poly(styrenesulfonate))、モリブデン酸化物(MoO
x);バナジウム酸化物(V
2O
5);ニッケル酸化物(NiO);およびタングステン酸化物(WO
x)などになってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0091】
前記電子輸送層物質は、電子抽出金属酸化物(electron−extracting metal oxides)になってもよいし、具体的には、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体;Alq
3を含む錯体;Liqを含む金属錯体;LiF;Ca;チタン酸化物(TiO
x);亜鉛酸化物(ZnO);およびセシウムカーボネート(Cs
2CO
3)、ポリエチレンイミン(PEI)などになってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0092】
本明細書は、前述した有機太陽電池の製造方法により製造された有機太陽電池を提供する。
【0093】
本明細書の一実施態様により製造された有機太陽電池は、エネルギー変換効率が6%以上であってもよい。前記エネルギー変換効率を測定する方法は後述する。
【0094】
前記有機太陽電池のエネルギー変換効率は、開放電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)および充填率(FF)の積を、照射される光の強度で割った値であって、下記の数式1によって算出される。
[数式1]
η=FF*[Jsc*Voc/(照射される光の強度)]
(上記中、FFは充填率(充填因子)、Jscは光短絡電流密度、Vocは光開放電圧である)
【実施例】
【0095】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0096】
<実験例>
【0097】
<実施例1>
【0098】
<複合溶液の製造>
下記化合物1で表される化合物とPCBM({(6,6)−phenyl−C61−butyric acid methylester)}]とを1:2の質量比でクロロベンゼン(Chlorobenzene、CB)に溶かして複合溶液(composite solution)を製造した。この時、前記化合物とPCBMとの複合溶液に対する濃度は3wt%に調節した。
【0099】
<基板の準備>
ITO/ZnO/光活性層/MoO
3/Agの構造を有する有機太陽電池を製造するために、ITOがstrip typeでコーティングされたガラス基板(117cm
2)に対して、蒸留水、アセトン、2−プロパノールを用いて超音波洗浄し、ITO表面を10分間オゾン処理した。
【0100】
<第1電極の形成>
前記基板上に45nmの厚さにZnOをバーコーティング(Bar−coating)し、100℃で10分間熱処理した。
【0101】
<光活性層の形成>
前記第1電極上に前記複合溶液170μlをバーコーティング(Bar−coating)を利用してコーティングした。
【0102】
<乾燥>
前記複合溶液がコーティングされた積層体を600cm
3の体積を有する閉鎖された乾燥空間(closed system)内に投入し、60℃で15分間乾燥した。
【0103】
<第2電極の形成>
その後、3×10
−8torrの真空下、熱蒸発器(thermal evaporator)を用いてMoO
3を0.5Å/sの速度で10nm蒸着し、100nmの厚さに1Å/sの速度でAgを蒸着して、最終有機太陽電池を製造した。
[化合物1]
【化1】
前記化合物1のR1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;フッ素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基である。
【0104】
前記化合物1は、下記化合物1−2であってもよい。
[化合物1−2]
【化2】
【0105】
[比較例1]
乾燥空間の体積が1300cm
3であること以外は、前記実施例1と同様の方法で有機太陽電池を作製した。
【0106】
[比較例2]
乾燥空間の体積が150cm
3であること以外は、前記実施例1と同様の方法で有機太陽電池を作製した。
【0107】
[比較例3]
乾燥空間が閉鎖された乾燥空間ではない、四方が開かれた大気中で乾燥させた以外は、前記実施例1と同様の方法で有機太陽電池を作製した。
【0108】
前記実施例1および比較例1〜3による有機太陽電池の物性をそれぞれ3回測定した後、平均値を計算して下記表1にまとめた。
【表1】
【0109】
本明細書において、V
ocは開放電圧(Open circuit voltage)を、J
scは短絡電流(Short circuit current)を、FFは充填率(Fill factor)を、ηはエネルギー変換効率を意味する。
【0110】
前記開放電圧は、外部の電気的負荷なしに光が照射された時に生成される電圧、すなわち電流が0の時の電圧であり、短絡電流は、短絡した電気接触で光が照射された時に生成される電流、すなわち電圧が印加されない場合の、光による電流であると定義される。
【0111】
また、充填率は、電流および電圧が印加され、それによって変化する電流および電圧の積を、開放電圧と短絡電流との積で割った値として定義される。このような充填率が1に近接するほど太陽電池の効率が高まり、充填率が低くなるほど抵抗が増加すると評価される。
【0112】
前記[表1]を参照して、前記製造された本発明の有機太陽電池の素子特性を比較する。乾燥空間の体積が限定されない乾燥方式(open system)で製造された有機太陽電池の場合、エネルギー変換効率が2.41%(比較例3)に過ぎないが、乾燥空間の内部および外部の空気循環がない閉鎖された乾燥空間(closed system)で光活性層を乾燥させた場合、有機太陽電池の効率は6.383%であって、効率が約160%向上したことを確認することができた。
【0113】
実施例1と比較例2とを相互比較すれば、乾燥空間の体積が600cm
3の時、150cm
3の時より、乾燥過程中に電子供与体と電子受容体との間の相分離が適切に起こるようになって、有機太陽電池の効率に優れていることが分かる。これは、
図3(実施例1による有機太陽電池の光活性層のAFMイメージ)と
図4(比較例2による有機太陽電池の光活性層のAFMイメージ)とを比較すれば分かる。
図4に比べて、
図3の場合、電子供与体と電子受容体との間の相分離がよく起こることを確認することができる。
【0114】
図2を参照して、乾燥空間の体積による有機太陽電池の特性の変化を説明する。
図2に示されたグラフは、光活性層の乾燥に使用される乾燥空間の体積変化による波長領域別の光吸収率の変化を示すグラフである。前記グラフおよび図面を参照すれば、光活性層の形成に使用される溶液対比の乾燥空間の体積比が約1:3500の時、光吸収率が最も高いことが分かり、その体積比が1:1,000未満の場合、むしろ光吸収率が減少することが分かった。
【0115】
前記のような実験結果を通して、光活性層を乾燥する時、一定体積を有する閉鎖された乾燥空間で乾燥する場合(実施例1)、一定体積を有しない開かれた乾燥空間で乾燥する場合(比較例3)に比べて、優れたエネルギー変換効率を有する有機太陽電池が製造されることを確認することができた。
【0116】
また、乾燥空間の体積が小さすぎたり(比較例2)、大きすぎる場合(比較例1)、製造された有機太陽電池のエネルギー変換効率が低下するのに対し、前記乾燥空間の体積を一定範囲に調節する場合、製造された有機太陽電池のエネルギー変換効率に優れていることを確認することができた。