特許第6966043号(P6966043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966043
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20211028BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20211028BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B23K26/00 N
   H01S3/10 Z
   H01S3/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-201065(P2016-201065)
(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公開番号】特開2018-61973(P2018-61973A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代素材等レーザー加工技術開発プロジェクト「CFRP切断加工技術の開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】酒川 友一
(72)【発明者】
【氏名】山村 健
(72)【発明者】
【氏名】林 優一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎二
(72)【発明者】
【氏名】椿本 孝治
(72)【発明者】
【氏名】宮永 憲明
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161812(JP,A)
【文献】 特開2006−350292(JP,A)
【文献】 特表2009−545454(JP,A)
【文献】 特開2009−186660(JP,A)
【文献】 特開2005−246450(JP,A)
【文献】 米国特許第5097351(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01S 3/10
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、
第一のレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割するとともに、第二のレーザ光を第一のレーザ光とは異なる方向から入射させてこれを第一のレーザ光の反射光に重畳する透過光と第一のレーザ光の透過光に重畳する反射光とに分割するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタよりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器と、
シード光を出力する発振器と、
発振器からシード光の供給を受けて前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光を出力する増幅器とを具備し、
前記ビームスプリッタから出射する、前記第一のレーザ光の反射光に前記第二のレーザ光の透過光を重畳したレーザ光のみを、レーザ加工機その他の機器に供給することとし、
前記発振器と前記増幅器との間に配置している前記位相変調器が、発振器が出力するシード光の位相を変化させることを通じて、増幅器が出力する前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光の位相を変化させ、それによりレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを所望の出力及びタイミングに調整するレーザ装置。
【請求項2】
レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、
第一のレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割するとともに、第二のレーザ光を第一のレーザ光とは異なる方向から入射させてこれを第一のレーザ光の反射光に重畳する透過光と第一のレーザ光の透過光に重畳する反射光とに分割するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタよりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器とを具備し、
前記位相変調器として、前記第一のレーザ光の位相を変化させることのできる第一の位相変調器と、前記第二のレーザ光の位相を変化させることのできる第二の位相変調器とを備え、
また、前記ビームスプリッタから出射する、前記第一のレーザ光の反射光に前記第二のレーザ光の透過光を重畳したレーザ光をレーザ加工機その他の機器に供給することとし、前記第一のレーザ光の透過光に前記第二のレーザ光の反射光を重畳したレーザ光の出力の大きさを計測するセンサを備えており、
前記第一の位相変調器と前記第二の位相変調器とのうち一方を操作して前記センサにより計測されるレーザ光の出力が最大となる状態を予め具現しておき、その上で他方を操作してレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを制御するレーザ装置。
【請求項3】
レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、
第一のレーザ光に偏光方位が第一のレーザ光とは異なる第二のレーザ光を重畳したレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割する偏光ビームスプリッタと、
前記第一のレーザ光に前記第二のレーザ光を重畳する位置よりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器とを具備し、
前記偏光ビームスプリッタから出射する透過光と反射光とのうち一方のみを、レーザ加工機その他の機器に供給することとし、
前記位相変調器が、前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させ、それによりレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを所望の出力及びタイミングに調整し、
また、シード光を出力する発振器と、発振器からシード光の供給を受けて前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光を出力する増幅器とを備えており、
前記位相変調器が、前記発振器が出力するシード光の位相を変化させることを通じて前記増幅器が出力する第一のレーザ光または第二のレーザ光の位相を変化させるレーザ装置。
【請求項4】
レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、
第一のレーザ光に偏光方位が第一のレーザ光とは異なる第二のレーザ光を重畳したレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割する偏光ビームスプリッタと、
前記第一のレーザ光に前記第二のレーザ光を重畳する位置よりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器とを具備し、
前記位相変調器として、前記第一のレーザ光の位相を変化させることのできる第一の位相変調器と、前記第二のレーザ光の位相を変化させることのできる第二の位相変調器とを備え、
また、前記偏光ビームスプリッタから出射する前記透過光と前記反射光とのうち一方をレーザ加工機その他の機器に供給することとし、他方の出力の大きさを計測するセンサを備えており、
前記第一の位相変調器と前記第二の位相変調器とのうち一方を操作して前記センサにより計測されるレーザ光の出力が最大となる状態を予め具現しておき、その上で他方を操作してレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを制御するレーザ装置。
【請求項5】
シード光を出力する発振器と、発振器からシード光の供給を受けて前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光を出力する増幅器とを備えており、
前記位相変調器が、前記発振器が出力するシード光の位相を変化させることを通じて前記増幅器が出力する第一のレーザ光または第二のレーザ光の位相を変化させる請求項2または4記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物にレーザ光を照射して穿孔や切削その他の加工を施す加工機、レーザ光による走査で所望の文字や図形を描画するレーザマーカ、レーザ光を使用する計測装置及び医療用機器等といった各種のアプリケーションに必要なレーザ光を提供するレーザ装置が公知である(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/034554号公報
【特許文献2】特開2016−092323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時では、ピコ秒レーザのようなパルス幅の狭くピークの高い極短パルスレーザを供給可能なレーザ装置が求められている。そのようなレーザ装置の具体例として、高い周波数のパルスのシード光を発振する発振器と、発振器からもたらされるシード光を増幅してパルスレーザを発振する増幅器(特に、YAG結晶やNd:YVO4結晶等を媒質とした固体レーザ)と、増幅器からもたらされるパルス光のうち所望のタイミングのものを抽出してその出力を調整しアプリケーション用の機器に提供する変調器(特に、AOM(Acousto−Optic Modulator)やEOM(Electro−Optic Modulator)等)とを具備するものを挙げることができる。
【0005】
上掲のレーザ装置は、数W程度の出力のパルスレーザをアプリケーション用機器に供給する用途に適している。だが、数十Wを超える高出力のパルスレーザを供給することは事実上困難である。数十Wを超える高出力のレーザに耐え得る変調器が存在しないからである。
【0006】
増幅器と変調器との順序を入れ替える、即ち、発振器からもたらされるシード光のパルスのうち所望のタイミングのものを変調器により抽出し、その抽出したシード光を増幅器に入射させてパルスレーザを発振させるようにすれば、既存の変調器を使用可能であり、数十Wを超える高出力のパルスレーザをアプリケーション用機器に供給できるようにも思われる。しかしながら、増幅器においてレーザの出力の大きさを調整しようとすると、増幅器による増幅の利得が大きいために励起電流の立ち上がり時間が長く、増幅器の励起を開始してから暫くの間は出力の不足したレーザ光がアプリケーション用機器に供給されてしまう。励起電流の立ち上がりの遅れを嫌って、増幅器を励起した状態に恒常的に維持しておくことも考えられるが、アプリケーション用機器に供給するべきレーザパルスの時間間隔が長い場合には無駄な電力消費となる上、本来求められているパルスレーザ以外のノイズが出力されてレーザ品質ひいては当該レーザを用いたレーザ加工等の品質の低下を招く懸念もある。
【0007】
本発明は、所望のタイミングで所望の出力に調整された高出力のパルスレーザをアプリケーション用の機器に供給可能なレーザ装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、第一のレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割するとともに、第二のレーザ光を第一のレーザ光とは異なる方向から入射させてこれを第一のレーザ光の反射光に重畳する透過光と第一のレーザ光の透過光に重畳する反射光とに分割するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタよりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器と、シード光を出力する発振器と、発振器からシード光の供給を受けて前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光を出力する増幅器とを具備し、前記ビームスプリッタから出射する、前記第一のレーザ光の反射光に前記第二のレーザ光の透過光を重畳したレーザ光のみを、レーザ加工機その他の機器に供給することとし、前記発振器と前記増幅器との間に配置している前記位相変調器が、発振器が出力するシード光の位相を変化させることを通じて、増幅器が出力する前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光の位相を変化させ、それによりレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを所望の出力及びタイミングに調整するレーザ装置を構成した。
【0009】
また、本発明では、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、第一のレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割するとともに、第二のレーザ光を第一のレーザ光とは異なる方向から入射させてこれを第一のレーザ光の反射光に重畳する透過光と第一のレーザ光の透過光に重畳する反射光とに分割するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタよりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器とを具備し、前記位相変調器として、前記第一のレーザ光の位相を変化させることのできる第一の位相変調器と、前記第二のレーザ光の位相を変化させることのできる第二の位相変調器とを備え、また、前記ビームスプリッタから出射する、前記第一のレーザ光の反射光に前記第二のレーザ光の透過光を重畳したレーザ光をレーザ加工機その他の機器に供給することとし、前記第一のレーザ光の透過光に前記第二のレーザ光の反射光を重畳したレーザ光の出力の大きさを計測するセンサを備えており、
前記第一の位相変調器と前記第二の位相変調器とのうち一方を操作して前記センサにより計測されるレーザ光の出力が最大となる状態を予め具現しておき、その上で他方を操作してレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを制御するレーザ装置を構成した。
【0010】
並びに、本発明では、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、第一のレーザ光に偏光方位が第一のレーザ光とは異なる第二のレーザ光を重畳したレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割する偏光ビームスプリッタと、前記第一のレーザ光に前記第二のレーザ光を重畳する位置よりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器とを具備し、前記偏光ビームスプリッタから出射する透過光と反射光とのうち一方のみを、レーザ加工機その他の機器に供給することとし、前記位相変調器が、前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させ、それによりレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを所望の出力及びタイミングに調整するレーザ装置を構成した。
【0011】
さらに、本発明では、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置であって、第一のレーザ光に偏光方位が第一のレーザ光とは異なる第二のレーザ光を重畳したレーザ光を入射させてこれを透過光と反射光とに分割する偏光ビームスプリッタと、前記第一のレーザ光に前記第二のレーザ光を重畳する位置よりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光と前記第二のレーザ光との位相差を変化させることのできる位相変調器とを具備し、前記位相変調器として、前記第一のレーザ光の位相を変化させることのできる第一の位相変調器と、前記第二のレーザ光の位相を変化させることのできる第二の位相変調器とを備え、また、前記偏光ビームスプリッタから出射する前記透過光と前記反射光とのうち一方をレーザ加工機その他の機器に供給することとし、他方の出力の大きさを計測するセンサを備えており、前記第一の位相変調器と前記第二の位相変調器とのうち一方を操作して前記センサにより計測されるレーザ光の出力が最大となる状態を予め具現しておき、その上で他方を操作してレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光の出力の大きさ及びタイミングを制御するレーザ装置を構成した。
【0012】
シード光を出力する発振器と、発振器からシード光の供給を受けて前記第一のレーザ光または前記第二のレーザ光を出力する増幅器とを備え、前記位相変調器が、前記発振器が出力するシード光の位相を変化させることを通じて前記増幅器が出力する第一のレーザ光または第二のレーザ光の位相を変化させるものとすれば、位相変調器を高出力のレーザ光に曝さずに済む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所望のタイミングで所望の出力に調整された高出力のパルスレーザをアプリケーション用の機器に供給可能なレーザ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態のレーザ装置の構成を示す図。
図2】本発明の第二実施形態のレーザ装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一実施形態>本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本実施形態のレーザ装置は、パルスレーザL1、L2を発振する複数の増幅器51、52を備えており、一方の増幅器51からもたらされるパルスレーザ光L12に他方の増幅器52からもたらされるパルスレーザ光L21を重畳した高出力のパルスレーザ光L3を、当該レーザ光L3を利用する各種の機器に供給するものである。レーザ光L3を供給する対象となるアプリケーション用機器の具体例としては、レーザ加工機、レーザマーカ、計測装置や医療用機器等を挙げることができる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のレーザ装置は、高い周波数のパルスのシード光Sを発振する発振器1と、発振器1から出射するシード光Sを伝搬させる光ファイバ2と、光ファイバ2の中途でシード光Sを複数に分岐させる光分岐器3と、複数に分岐したシード光S1、S2の一方S1の位相を操作する第一の位相変調器41と、分岐したシード光S1、S2の他方S2の位相を操作する第二の位相変調器42と、第一の位相変調器41から出射するシード光S1を増幅してパルスレーザである第一のレーザ光L1を発振する第一の増幅器51と、第二の位相変調器42から出射するシード光S2を増幅してパルスレーザである第二のレーザ光L2を発振する第二の増幅器52と、増幅器51、52から出射した第一のレーザ光L1及び第二のレーザ光L2の入射を受けてこれらをそれぞれ透過光L11、L21と反射光L12、L22とに分割するビームスプリッタ6と、発振器1及び各位相変調器41、42を制御する制御装置0とを具備する。
【0017】
発振器1は、シード光Sとしてピコ秒レーザを反復的に出力する。光分岐器3は、既製の光カプラやスプリッタ等である。発振器1と位相変調器41、42とを繋ぐ行路上には、シード光Sを予め増幅する前置増幅器として、例えば光ファイバ増幅器を配置することがある。
【0018】
位相変調器41、42は、例えばAOM(Acousto−Optic Modulator)やEOM(Electro−Optic Modulator)等であるが、シード光S1、S2の位相を変化させることができるものであればその態様は問わない。位相変調器41、42は、光の行路上において、増幅器51、52及びビームスプリッタ6よりも上流側に位置する。第一の位相変調器41は、第一の増幅器51に入射するシード光S1の位相を変化させることができ、ひいては第一の増幅器51から出射する第一のレーザ光L1の位相を変化させることができる。並びに、第二の位相変調器42は、第二の増幅器52に入射するシード光S2の位相を変化させることができ、ひいては第二の増幅器52から出射する第二のレーザ光L2の位相を変化させることができる。
【0019】
増幅器51、52は、例えばYAG結晶やNd:YVO4結晶等を媒質とする固体レーザであるが、それ以外の種類のレーザを採用することを妨げるものではない。第一の増幅器51が発振する第一のレーザ光L1の波長と、第二の増幅器52が発振する第二のレーザ光L2の波長とは等しい。
【0020】
ビームスプリッタ6は、入射するレーザ光L1、L2を1:1に分ける、即ち透過光L11、L21の強度が反射光L12、L22の強度に等しくなるハーフミラーであることが望ましい。第一の増幅器51とビームスプリッタ6との間には、第一の増幅器51から出射する第一のレーザ光L1を反射してその光軸の向きを変える全反射ミラー71が介在する。ビームスプリッタ6に入射する第一のレーザ光L1は、当該ビームスプリッタ6において、直進する透過光L11と、透過光L11に対して90°屈折した方向に向かう反射光L12とに分割される。
【0021】
第二のレーザ光L2は、第一のレーザ光L1とは異なる方向、即ち第一のレーザ光L1の光軸に対して直交する方向からビームスプリッタ6に入射する。そして、当該ビームスプリッタ6において、直進する透過光L21と、透過光L21に対して90°屈折した方向に向かう反射光L22とに分割される。第二のレーザ光L2の透過光L21の光軸は、第一のレーザ光L1の反射光L12の光軸と等しくなる。つまり、第二のレーザ光L2の透過光L21が第一のレーザ光L1の反射光L12に重畳されてビームスプリッタ6から出射する。同様に、第二のレーザ光L2の反射光L22の光軸は第一のレーザ光L1の透過光L11の光軸と等しくなり、第二のレーザ光L2の反射光L22は第一のレーザ光L1の透過光L11に重畳されてビームスプリッタ6から出射する。この構造は、マッハ・ツェンダー干渉計に類似する。
【0022】
ビームスプリッタ6に入射する直前の第一のレーザ光L1の電場の複素振幅をE1exp(iφ1)、ビームスプリッタ6に入射する直前の第二のレーザ光L2の電場の複素振幅をE2exp(iφ2)とおく。φ1はビームスプリッタ6に入射する第一のレーザ光L1の位相、φ2はビームスプリッタ6に入射する第二のレーザ光L2の位相である。ビームスプリッタ6から出射する、第一のレーザ光L1の反射光L12に第二のレーザ光L2の透過光L21を重畳したレーザ光L3の電場の複素振幅E3は、
3={iexp(iβ)×E1+E2}/√2
と表される。また、同ビームスプリッタ6から出射する、第一のレーザ光L1の透過光L11に第二のレーザ光L2の反射光L22を重畳したレーザ光L4の電場の複素振幅E4は、
4={E1+iexp(−iβ)×E2}/√2
と表される。βは入出力の基準位置の決め方によるパラメータであり、β=−iとすると、
3={E1−E2}/√2
4={E1+E2}/√2
となる。なお、レーザ光L1、L2、L3、L4の出力(パワー)の保存
|E12+|E22=|E32+|E42
が成立する。ビームスプリッタ6に入射する第一のレーザ光L1の出力|E12と第二のレーザ光L2の出力|E22とが等しいとして、これを|E|2とおくと、
|E32=|E|2{1−cos(φ1−φ2)}
|E42=|E|2{1+cos(φ1−φ2)}
となる。従って、ビームスプリッタ6に入射する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差(φ1−φ2)に応じて、ビームスプリッタ6から出射する二つのレーザ光L3、L4の出力|E32、|E42が相補的に増減することになる。第一のレーザ光L1の反射光L12に第二のレーザ光L2の透過光L21を重畳したレーザ光L3の出力|E32が0から2|E|2まで変化(増加)するとき、第一のレーザ光L1の透過光L11に第二のレーザ光L2の反射光L22を重畳したレーザ光L4の出力|E42は2|E|2から0まで変化(減少)する。
【0023】
本実施形態では、ビームスプリッタ6から出射する、第一のレーザ光L1の反射光L12に第二のレーザ光L2の透過光L21を重畳したレーザ光L3を、供給光としてアプリケーション用機器に供給する。同ビームスプリッタ6から出射する、第一のレーザ光L1の透過光L11に第二のレーザ光L2の反射光L22を重畳したレーザ光L4は、アプリケーション用機器に供給しない参照光とし、その出力の大きさをセンサ81により随時計測する。センサ81には、例えばフォトダイオードを用いる。センサ81を介して計測される参照光L4の出力|E42が2|E|2に等しいとき、即ちビームスプリッタ6に入射する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との間の位相差(φ1−φ2)が0であるとき、アプリケーション用機器に供給される供給光L3の出力|E32が0となる。
【0024】
本実施形態のレーザ装置を使用するに際しては、予め下準備として、供給光L3の出力が0となる状態、即ち増幅器51、52が発振するレーザ光L1、L2が全て参照光L4となりセンサ81に向かう状態を具現しておく。そのために、制御装置0は、センサ81を介して計測される参照光L4の出力|E42と目標値2|E|2との偏差が0近傍まで縮小するように、第二の位相変調器42を制御して第二のレーザ光L2の位相φ2を調整する。この参照光L4の出力のフィードバック制御を通じて、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差(φ1−φ2)が0近傍となる。なお、第二の位相変調器42ではなく第一の位相変調器41を制御して第一のレーザ光L1の位相φ1を調整することで、供給光L3の出力が0となる状態を具現しても構わない。
【0025】
その上で、所望のタイミングで所望の大きさの出力の供給光L3をアプリケーション用機器に供給するためには、制御装置0が、第一の位相変調器41を制御して第一のレーザ光L1の位相φ1を操作する。予め第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差(φ1−φ2)が0近傍となっている状態で、第一のレーザ光L1の位相φ1を変化させると、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差(φ1−φ2)に応じた出力|E32の供給光L3がビームスプリッタ6から出射する。そして、その分だけ参照光L4の出力|E42が減少する。なお、下準備の段階で第一の位相変調器41を制御して供給光L3の出力を0としている場合には、第二の位相変調器42を制御して第二のレーザ光L2の位相φ2を操作することにより、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差(φ1−φ2)を0から変化させ、以て所望の大きさの出力の供給光L3をビームスプリッタ6から出射させる。アプリケーション用機器に供給する供給光L3の出力|E32を精密に制御するには、ビームスプリッタ6から出射した供給光L3の一部をサンプリングしてその出力の大きさをセンサ82により計測し、計測された出力が所望の目標値に収束するように位相差(φ1−φ2)を操作するフィードバック制御を実行することが好ましい。このセンサ82には、例えばフォトダイオードを用いる。
【0026】
本実施形態では、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光L3を供給するためのレーザ装置であって、第一のレーザ光L1を入射させてこれを透過光L11と反射光L12とに分割するとともに、第二のレーザ光L2を第一のレーザ光L1とは異なる方向から入射させてこれを第一のレーザ光L1の反射光L12に重畳する透過光L21と第一のレーザ光L1の透過光L11に重畳する反射光L22とに分割するビームスプリッタ6と、前記ビームスプリッタ6よりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光L1と前記第二のレーザ光L2との位相差(φ1−φ2)を変化させることのできる位相変調器41、42とを具備するレーザ装置を構成した。
【0027】
本実施形態のレーザ装置は、前記位相変調器として、前記第一のレーザ光L1の位相を変化させることのできる第一の位相変調器41と、前記第二のレーザ光L2の位相を変化させることのできる第二の位相変調器42とを備え、また、前記ビームスプリッタ6から出射する、前記第一のレーザ光L1の反射光L12に前記第二のレーザ光L2の透過光L21を重畳したレーザ光L3をレーザ加工機その他の機器に供給することとし、前記第一のレーザ光L1の透過光L11に前記第二のレーザ光L2の反射光L22を重畳したレーザ光L4の出力の大きさを計測するセンサ81を備えており、前記第一の位相変調器41と前記第二の位相変調器42とのうち一方42を操作して前記センサ81により計測されるレーザ光L4の出力が最大となる状態を予め具現しておき、その上で他方41を操作してレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光L3の出力の大きさ及びタイミングを制御する。
【0028】
本実施形態によれば、位相変調器41、42により位相差(φ1−φ2)を操作することで、ビームスプリッタ6からアプリケーション用機器に向けて供給光L3が出射するタイミング及びその供給光L3の出力をリアルタイム制御することができる。つまり、所望のタイミングで所望の大きさの出力の供給光L3をアプリケーション用機器に供給可能な高速スイッチング動作を実現できる。
【0029】
加えて、位相変調器41、42が、第一のレーザ光L1に第二のレーザ光L2を重畳するビームスプリッタ6よりも行路の上流側に位置しているので、位相変調器41、42が高出力のレーザ光L3に曝されることがなく、既存の位相変調器を用いてレーザ装置を構成することができる。特に、本実施形態のレーザ装置は、シード光Sを出力する発振器1と、発振器1からシード光S1、S2の供給を受けて前記第一のレーザ光L1または前記第二のレーザ光L2を出力する増幅器51、52とを備えており、前記位相変調器41、42が、前記発振器1が出力するシード光S1、S2の位相を変化させることを通じて前記増幅器51、52が出力する第一のレーザ光L1または第二のレーザ光L2の位相を変化させるものである。このため、レーザ光L1、L2に対する高い耐久性が位相変調器に求められず、コストの高騰を抑えられる。
【0030】
<第二実施形態>上記第一実施形態のレーザ装置は、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相合成により生ずる高出力のレーザ光L3をアプリケーション用機器に供給するものであった。これより述べる第二実施形態のレーザ装置は、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との偏光合成により生ずる高出力のレーザ光L3をアプリケーション用機器に供給するものである。以降、第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態と共通する要素については、その説明を割愛する。
【0031】
図2に示すように、本実施形態のレーザ装置は、高周波数のパルスのシード光Sを発振する発振器1と、発振器1から出射するシード光Sを伝搬させる光ファイバ2と、光ファイバ2の中途でシード光Sを複数に分岐させる光分岐器3と、複数に分岐したシード光S1、S2の一方S1の位相を操作する第一の位相変調器41と、分岐したシード光S1、S2の他方S2の位相を操作する第二の位相変調器42と、第一の位相変調器41から出射するシード光S1を増幅してパルスレーザである第一のレーザ光L1を発振する第一の増幅器51と、第二の位相変調器42から出射するシード光S2を増幅してパルスレーザである第二のレーザ光L2を発振する第二の増幅器52と、増幅器51、52から出射した第一のレーザ光L1及び第二のレーザ光L2の入射を受けてこれらを偏光合成する前段の偏光ビームスプリッタ61と、この偏光ビームスプリッタ61から出射するレーザ光L0を入射させてこれを透過光L3と反射光L4とに分割する後段の偏光ビームスプリッタ62と、発振器1及び各位相変調器41、42を制御する制御装置0とを具備する。
【0032】
第一の位相変調器41及び第二の位相変調器42は、光の行路上において、増幅器51、52及びビームスプリッタ61よりも上流側に位置する。上記第一実施形態と同様、第一の位相変調器41は、第一の増幅器51に入射するシード光S1の位相を変化させることで、第一の増幅器51から出射する第一のレーザ光L1の位相を変化させることができる。並びに、第二の位相変調器42は、第二の増幅器52に入射するシード光S2の位相を変化させることで、第二の増幅器52から出射する第二のレーザ光L2の位相を変化させることができる。
【0033】
第一の増幅器51及び第二の増幅器52はともに、直線偏光のレーザ光L1、L2を出力するものとする。第一のレーザ光L1の波長と、第二のレーザ光L2の波長とは等しい。
【0034】
第一の増幅器51と前段の偏光ビームスプリッタ61との間には、第一の増幅器51から出射する第一のレーザ光L1を反射してその光軸の向きを変える全反射ミラー71、及び全反射ミラー71で反射した第一のレーザ光L1を通過させる偏光子72が介在する。全反射ミラー71で反射した第一のレーザ光L1は、その偏光方位が光軸周りに約90°回転するとともに、直線偏光からやや楕円偏光に変化する。偏光子72は、この第一のレーザ光L1を直線偏光に戻す役割を担う。
【0035】
偏光ビームスプリッタ61、62は、入射する光をs偏光成分とp偏光成分とに分割する既知のものである。増幅器51、52から出射し、前段の偏光ビームスプリッタ61に入射する第一のレーザ光L1及び第二のレーザ光L2は、その一方が当該偏光ビームスプリッタ61の反射面に対してs偏光、他方が同反射面に対してp偏光となるように、各々の偏光方位を設定しておく。図示例では、第一のレーザ光L1がs偏光、第二のレーザ光L2がp偏光であり、第一のレーザ光L1が第二のレーザ光L2とは異なる方向、即ち第二のレーザ光L2の光軸に対して直交する方向から前段の偏光ビームスプリッタ61に入射している。第一のレーザ光L1は、前段の偏光ビームスプリッタ61の反射面において反射し、90°屈折した方向に向かう。結果、第一のレーザ光L1(の反射光)の光軸と、前段の偏光ビームスプリッタ61の反射面を透過する第二のレーザ光L2(の透過光)の光軸とが等しくなり、第一のレーザ光L1に第二のレーザ光L2が重畳されて当該偏光ビームスプリッタ61から出射することとなる。
【0036】
前段の偏光ビームスプリッタ61と後段の偏光ビームスプリッタ62との間には、半波長板73が介在する。半波長板73は、前段の偏光ビームスプリッタ61から出射する、第一のレーザ光L1に第二のレーザ光L2を重畳したレーザ光L0の偏光方位を、光軸周りに45°回転させる。
【0037】
前段の偏光ビームスプリッタ61から出射するレーザ光L0は、偏光方向が互いに直交する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2とを合成した光である。後段の偏光ビームスプリッタ62に入射する直前の第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との間の位相差が0であるとき、合成光L0は直線偏光となる。そして、その位相差を0から徐々に拡大してゆくと、合成光L0が直線偏光から楕円偏光に変化し、位相差がπ/2即ち1/4波長分となったときに円偏光となる。さらに位相差を拡大してゆくと、合成光L0が円偏光から楕円偏光に変化し、位相差がπ即ち半波長分に達したときに直線偏光となる。
【0038】
後段の偏光ビームスプリッタ62に入射する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差が0であるときの合成光L0の偏光方位と、位相差がπであるときの合成光L0の偏光方位とは、互いに直交する。半波長板73は、前者の合成光L0と後者の合成光L0とのうち一方が後段の偏光ビームスプリッタ62の反射面に対してs偏光となり、他方が同反射面に対してp偏光となるように、前段の偏光ビームスプリッタ61から出射する合成光L0の偏光方位を設定するものである。
【0039】
後段の偏光ビームスプリッタ62は、入射する合成光L0をs偏光成分とp偏光成分とに分割する。当該偏光ビームスプリッタ6から出射するs偏光成分の出力とp偏光成分の出力とは、当該偏光ビームスプリッタ62に入射する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差に応じて相補的に増減する。当該偏光ビームスプリッタ62に入射する第一のレーザ光L1の出力と第二のレーザ光L2の出力とが等しいとして、これを|E|2とおくと、p偏光成分の出力が0から2|E|2まで変化(増加)するとき、s偏光成分の出力は2|E|2から0まで変化(減少)する。
【0040】
本実施形態では、後段の偏光ビームスプリッタ62から出射するp偏光成分(または、s偏光成分)のレーザ光L5を、供給光としてアプリケーション用機器に供給する。同偏光ビームスプリッタ6から出射するs偏光成分(または、p偏光成分)のレーザ光L6は、アプリケーション用機器に供給しない参照光とし、その出力の大きさをセンサ81により随時計測する。センサ81を介して計測される参照光L6の出力が2|E|2に等しいとき、即ち後段の偏光ビームスプリッタ62に入射する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との間の位相差が0であるとき、アプリケーション用機器に供給される供給光L5の出力が0となる。
【0041】
本実施形態のレーザ装置を使用するに際しては、予め下準備として、供給光L5の出力が0となる状態、即ち増幅器51、52が発振するレーザ光L1、L2が全て参照光L6となりセンサ81に向かう状態を具現しておく。そのために、制御装置0は、センサ81を介して計測される参照光L6の出力と目標値2|E|2との偏差が0近傍まで縮小するように、第二の位相変調器42を制御して第二のレーザ光L2の位相を調整する。この参照光L6の出力のフィードバック制御を通じて、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差が0近傍となる。なお、第二の位相変調器42ではなく第一の位相変調器41を制御して第一のレーザ光L1の位相を調整することで、供給光L5の出力が0となる状態を具現しても構わない。
【0042】
その上で、所望のタイミングで所望の大きさの出力の供給光L5をアプリケーション用機器に供給するためには、制御装置0が、第一の位相変調器41を制御して第一のレーザ光L1の位相を操作する。予め第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差が0近傍となっている状態で、第一のレーザ光L1の位相を変化させると、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差に応じた出力の供給光L5が後段の偏光ビームスプリッタ62から出射する。そして、その分だけ参照光L6の出力が減少する。なお、下準備の段階で第一の位相変調器41を制御して供給光L5の出力を0としている場合には、第二の位相変調器42を制御して第二のレーザ光L2の位相を操作することにより、第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差を0から変化させ、以て所望の大きさの出力の供給光L5を後段の偏光ビームスプリッタ62から出射させる。アプリケーション用機器に供給する供給光L5の出力を精密に制御するには、後段の偏光ビームスプリッタ62から出射した供給光L5の一部をサンプリングしてその出力の大きさをセンサ82により計測し、計測された出力が所望の目標値に収束するように位相差を操作するフィードバック制御を実行することが好ましい。
【0043】
本実施形態では、レーザ加工機その他のレーザ光を利用する機器にレーザ光L5を供給するためのレーザ装置であって、第一のレーザ光L1に偏光方位が第一のレーザ光L1とは異なる第二のレーザ光L2を重畳したレーザ光L0を入射させてこれを透過光L5と反射光L6とに分割する偏光ビームスプリッタ62と、前記第一のレーザ光L1に前記第二のレーザ光L2を重畳する位置よりも行路の上流側にあって前記第一のレーザ光L1と前記第二のレーザ光L2との位相差を変化させることのできる位相変調器41、42とを具備するレーザ装置を構成した。
【0044】
本実施形態のレーザ装置は、前記位相変調器として、前記第一のレーザ光L1の位相を変化させることのできる第一の位相変調器41と、前記第二のレーザ光L2の位相を変化させることのできる第二の位相変調器42とを備え、また、前記偏光ビームスプリッタ62から出射する前記透過光L5と前記反射光L6とのうち一方L5をレーザ加工機その他の機器に供給することとし、他方L6の出力の大きさを計測するセンサ81を備えており、前記第一の位相変調器41と前記第二の位相変調器42とのうち一方42を操作して前記センサ81により計測されるレーザ光L6の出力が最大となる状態を予め具現しておき、その上で他方41を操作してレーザ加工機その他の機器に供給するレーザ光L5の出力の大きさ及びタイミングを制御する。
【0045】
本実施形態によれば、位相変調器41、42により後段の偏光ビームスプリッタ62に入射する第一のレーザ光L1と第二のレーザ光L2との位相差を操作することで、当該偏光ビームスプリッタ62からアプリケーション用機器に向けて供給光L5が出射するタイミング及びその供給光L5の出力をリアルタイム制御することができる。つまり、所望のタイミングで所望の大きさの出力の供給光L5をアプリケーション用機器に供給可能な高速スイッチング動作を実現できる。
【0046】
加えて、位相変調器41、42が、第一のレーザ光L1に第二のレーザ光L2を重畳する前段の偏光ビームスプリッタ61よりも行路の上流側に位置しているので、位相変調器41、42が高出力のレーザ光に曝されることがなく、既存の位相変調器を用いてレーザ装置を構成することができる。特に、本実施形態のレーザ装置は、シード光Sを出力する発振器1と、発振器1からシード光S1、S2の供給を受けて前記第一のレーザ光L1または前記第二のレーザ光L2を出力する増幅器51、52とを備えており、前記位相変調器41、42が、前記発振器1が出力するシード光S1、S2の位相を変化させることを通じて前記増幅器51、52が出力する第一のレーザ光L1または第二のレーザ光L2の位相を変化させるものである。このため、レーザ光L1、L2に対する高い耐久性が位相変調器に求められず、コストの高騰を抑えられる。
【0047】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、位相変調器41、42を増幅器51、52よりも行路の上流側に配置し、増幅器51、52に与えるシード光S1、S2の位相を操作することで増幅器51、52が発振するレーザ光L1、L2の位相を変化させていた。だが、位相変調器は第一のレーザ光に第二のレーザ光を重畳するビームスプリッタまたは偏光ビームスプリッタの位置よりも上流側にあればよく、位相変調器を増幅器の上流ではなく下流に配置して、当該位相変調器により増幅器から出射するレーザ光の位相を直接操作することも可能である。
【0048】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、レーザ光を利用する各種機器にレーザ光を供給するためのレーザ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…発振器
41、42…位相変調器
51、52…増幅器
6…ビームスプリッタ
61、62…偏光ビームスプリッタ
81…センサ
S、S1、S2…シード光
L1…第一のレーザ光
L2…第二のレーザ光
L3、L4…レーザ加工機その他の機器に供給する供給光
L5、L6…参照光
図1
図2