(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で‘上面’という用語は、偏光板が液晶ディスプレイのようなデバイスに装着されたとき、視聴者側に向かうように配置された面を意味する。そして、‘上部’とは、偏光板がデバイスに装着されたとき、視聴者側に向かう方向を意味する。反対に、‘下面’または‘下部’は偏光板がデバイスに装着されたとき、視聴者の反対側に向かうように配置された面または方向を意味する。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施形態を例示し下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解しなければならない。
【0015】
以下、本発明の偏光子保護フィルムおよびその製造方法についてより詳しく説明する。
I.偏光子保護フィルム
本発明の一実施形態による偏光子保護フィルムは、高分子フィルムと、前記高分子フィルムの少なくとも一面上に形成されたコーティング層とを含み、前記コーティング層は複数の陰刻エンボスパターンを持ち、表面粗さ(Roughness、Ra)が2.0〜20.0nmである特徴を有する。
【0016】
偏光子は、色々な方向に振動しながら入射される光から1つの方向のみに振動する光だけを抽出できる特性を示し、本発明の偏光子保護フィルムは、前記偏光子を外部から保護する用途に用いられ、前記偏光子の少なくとも一面に、好ましくは前記偏光子の下部保護フィルムとして使用されるのである。
【0017】
ディスプレイが漸次大型化されスリム化されることによって、移送中にLCDパネルの垂れ現象が発生して下部偏光板の下側に備えたプリズムシートまたは拡散シートによって下部偏光板の保護フィルムが損傷してヘイズが増加する場合がある。
【0018】
本発明は、このような問題点を補完するためのものであり、バックライト、カラーフィルターまたはLCDの構造を変更せずにLCDに含まれる構成要素中の偏光板、特に下部偏光板を改善して下部偏光板の偏光子保護フィルムに対して耐スクラッチ性を有する複数の陰刻エンボスパターンを持つコーティング層を含むことによって、耐スクラッチ性を強化してプリズムシートまたは拡散シートによるヘイズの増加の問題を防止するためのものである。
【0019】
そこで、本発明の偏光子保護フィルムは、前記複数の陰刻エンボスパターンと所定の表面粗さを有するコーティング層によって優れた耐スクラッチ性を示して下部偏光板を効果的に保護し、益々薄型化、大型化されているディスプレイ用偏光板に有用に適用できる。
【0020】
つまり、本発明の偏光子保護フィルムにおいて、前記コーティング層は、複数の陰刻エンボスパターンを持ち、かつ表面粗さ(Roughness、Ra)が2.0〜20.0nmの範囲であることを特徴とする。これによって、前記偏光子保護フィルムと当接する他の構造物、特にプリズムシートや拡散シートのように陽刻パターンを持つシートまたはフィルムとの摩擦による表面割れ現象が緩和され、陰刻ではなく陽刻エンボスパターンを持つか、あるいはエンボスパターンがない保護フィルムと比較して、優れた耐スクラッチ性を有することができる。
【0021】
より詳しくは、前記コーティング層は約2.0nm以上、または約3.0nm以上、または約4.0nm以上であり、かつ、約20.0nm以下、または約15.0nm以下、または約10.0nm以下の表面粗さを有することができる。前記コーティング層の表面粗さが2.0nm未満であるか、または20.0nmを超える場合、十分な耐スクラッチ性を示さないこともある。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記エンボスパターンは、コーティング層の最表面での形状が円形または楕円形であり、コーティング層の厚さ方向に凹んだ形態を持ってコーティング層が窪んだ陰刻形態を示す。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング層の最表面でのエンボスパターンの直径は約0.1μm以上、または約0.5μm以上、または約1μm以上であり、かつ、約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下の範囲であり得る。
【0024】
また、前記エンボスパターンのコーティング層方向への深さは約1nm以上、または約5nm以上、または約10nm以上であり、かつ、約1μm以下、または約500nm以下、または約100nm以下の範囲であり得る。
【0025】
また、前記エンボスパターンがコーティング層に占める面積は、前記コーティング層の全体の面積対比前記エンボスパターンの最表面の面積比率で計算したとき、約20%以上、または約30%以上であり、かつ、約80%以下、または約70%以下の範囲であり得る。
【0026】
前記コーティング層の厚さは特に制限されないが、機械的物性を満足しながら薄型の偏光子保護フィルムを提供するために約50nm以上で、例えば約100nm以上、または約200nm以上、または約500nm以上、または約1μm以上であり、また、約20μm以下、または約10μm以下、または約7μm以下、または約5μm以下、または約3μm以下であり得る。
【0027】
前記コーティング層に上述した範囲の形状および分布を有する複数のエンボスパターンが形成されており、所定範囲の表面粗さを有することによって前記コーティング層の付着性および強度が低下せずとも下部構造物に対してより優れた耐スクラッチ性を示すことができる。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による偏光子保護フィルムの平面図であり、
図2は、本発明の一実施形態による偏光子保護フィルムの断面図である。
【0029】
図1および
図2を参照すると、本発明の一実施形態による偏光子保護フィルムは、高分子フィルム30bと高分子フィルム30bの一面上に形成されたコーティング層30aを含み、コーティング層30aは複数の陰刻エンボスパターン11を有する。
【0030】
陰刻エンボスパターン11は、コーティング層30aの表面から見たとき、直径rを有する円形または楕円形の形状を示し、コーティング層30aの厚さ方向に深さdを有する凹んだ形態を示す。前記直径rおよび深さdの範囲は上述したとおりである。
一方、前記高分子フィルムは、一般に偏光子保護フィルムの基材フィルムに使用可能であり、延伸可能なフィルムであれば特に制限されないが、例えば、ポリエステル(polyester)、ポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリイミド(polyimide、PI)、トリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)またはセルロース(cellulose)などを含むフィルムを使用することができる。
【0031】
前記高分子フィルムの厚さは特に制限されず、約20〜約200μm、または約30〜約100μmの厚さを有することができる。
【0032】
また、前記高分子フィルムの成形方法も特に制限されず、例えば、溶液キャスト法、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などの適切なフィルム成形法によって高分子フィルムを準備できる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記高分子フィルムは、後述する本発明の偏光子保護フィルムの製造方法によって、光硬化性バインダー、シリコーン系またはフッ素系化合物、および重合開始剤を含むコーティング組成物を用いて製造されることができる。前記コーティング組成物および製造方法については後述する。
【0034】
延伸フィルムの場合、延伸工程で高分子が再配列されて前記延伸フィルム上に機能性コーティング層などを追加して形成しようとする場合、付着性が減少するという問題点がある。したがって、付着性の確保のためにプライマー層を形成するなどの別途の工程を追加したり、付着性を増進させることができる機能性化合物をコーティング層に含ませる方案があるが、この場合、製造工程上の別途の工程が追加されて生産性が下落する問題があり、フィルムごとに物理、化学的性質が異なって汎用プライマーの開発が難しい問題がある。また、コーティング層に付着性の増進のための機能性化合物を追加する場合も、費用の増加や他の物性の下落などの問題があり得る。
【0035】
しかし、本発明の一実施形態によれば、別途のプライマー層がなくても基材となる高分子フィルムとの付着性が高く、十分な耐スクラッチ性を備え、薄型化が可能な偏光子保護フィルムを提供することを可能にする。
【0036】
本発明の一実施形態による偏光子保護フィルムは、振動発生器が連結されたサンプルホルダー(50mm×50mm)に本発明の偏光子保護フィルムのコーティング層と、陽刻パターンを持つ他のシート(例えば、拡散シート)を重ねておき、300gのおもりで荷重を与えた状態で振動(印加振動の強さ2.8Grms、周波数20−60Hz)を240秒間加えた後にも、本発明の偏光子保護フィルムのコーティング層および他のシートの表面にスクラッチおよび割れがほとんど発生しない程度に耐スクラッチ性を示すことができる。
【0037】
II.偏光子保護フィルムの製造方法
本発明の他の一実施形態によれば、高分子フィルムの少なくとも一面上に光硬化性バインダー、シリコーン系またはフッ素系化合物、および重合開始剤を含む光硬化性コーティング組成物を塗布する段階と、前記コーティング組成物が塗布された高分子フィルムを熱処理する段階と、前記コーティング組成物に対して光硬化を行って複数の陰刻エンボスパターンを持ち、表面粗さ(Roughness、Ra)が2.0〜20.0nmであるコーティング層を形成する段階とを含む、偏光子保護フィルムの製造方法を提供する。
【0038】
偏光子保護フィルムを下部偏光板の保護フィルムに用いる場合、前記下部偏光板と当接している他の構造物、特にプリズムシートや拡散シートのように陽刻パターンを持つシートまたはフィルムとの摩擦によって下部偏光板が割れるなどの損傷が頻繁に発生して、これを解決するために下部偏光板の保護フィルムに耐スクラッチ性を備えることが要求される。耐スクラッチ性を確保するためにハードコーティング層をコーティングする方案が提案されているが、工程費用の上昇の問題がある。
【0039】
しかし、本発明の製造方法によれば、高分子フィルム上に所定の条件を充足するコーティング組成物を塗布し熱処理をした後、前記コーティング組成物を硬化して複数の陰刻エンボスパターンを持ち、かつ表面粗さ(Roughness、Ra)が2.0〜20.0nmの範囲のコーティング層を形成することによって、別途のプライマー層を必要とせずとも高分子フィルムとの付着性と表面の耐スクラッチ性が高い偏光子保護フィルムを提供することができる。
【0040】
一方、コーティング組成物によりコーティング層が十分な強度と耐スクラッチ性を確保できないこともある。そこで、本発明の製造方法によれば、シリコーン系またはフッ素系化合物を含むコーティング組成物を高分子フィルム上に塗布し、硬化前の熱処理によってシリコーン系またはフッ素系化合物がミクロ相分離となるようにすることによって、コーティング層の表面に複数の陰刻エンボスパターンが形成され、所定の表面粗さを示すことになり、上述した要求事項を満たす偏光子保護フィルムを提供することができる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記熱処理工程と同時に延伸工程を共に行うことができる。
【0042】
機械的特性に優れた偏光子保護フィルムを提供するために延伸フィルムを基材フィルムに使用することができる。しかし、延伸フィルムの場合、延伸工程で高分子が再配列されて前記延伸フィルム上に機能性コーティング層などを追加して形成しようとする場合、付着性が減少するという問題点がある。したがって、付着性の確保のためにプライマー層を形成するなどの別途の工程を追加したり、付着性を増進させることができる機能性化合物をコーティング層に含ませる方案があるが、この場合、製造工程上別途の工程が追加されて生産性が下落する問題があり、フィルムごとに物理、化学的性質が異なって汎用プライマーの開発が難しい問題がある。また、コーティング層に付着性の増進のための機能性化合物を追加することも、費用の増加や他の物性の下落などの問題があり得る。
【0043】
そこで、本発明の一実施形態の製造方法によれば、別途のプライマー層がなくても基材となる高分子フィルムとの付着性が高く、十分な耐スクラッチ性を備えた偏光子保護フィルムを高い生産性で製造することができる。
【0044】
前記高分子フィルムは、一般に偏光子保護フィルムの基材フィルムに使用可能であり、延伸可能なフィルムであれば特に制限されないが、例えば、ポリエステル(polyester)、ポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリイミド(polyimide、PI)、トリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)またはセルロース(cellulose)などを含むフィルムを使用することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、前記高分子フィルムは、未延伸状態でその一面上にコーティング組成物を塗布することができる。
【0046】
または、本発明の他の一実施形態によれば、前記高分子フィルムは、コーティング組成物を塗布する前に一軸延伸を行うことができる。
【0047】
このとき、延伸方向は特に制限されず、延伸比は、前記延伸方向の長さを基準に、1.1倍以上、または1.2倍以上、または1.5倍以上であり、5倍以下、または3倍以下となるように延伸することができる。
【0048】
前記未延伸されるか、あるいは一軸延伸された高分子フィルムの少なくとも一面上にコーティング組成物を塗布する。
【0049】
前記コーティング組成物を塗布する方法は、当該技術が属する技術分野で用いられるものであれば特に制限されず、例えば、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング方式などを用いることができる。
【0050】
前記偏光子保護フィルムのコーティング層の形成のためのコーティング組成物は、シリコーン系またはフッ素系化合物を含む。
【0051】
前記シリコーン系化合物としては、例えば、ジメチルシロキサン、メチルシロキサンなどのシリコーン基(silicone group)を有し、アルキル基、またはポリエーテル基などを含有する非反応性シリコーン系化合物;またはシリコーン基を有し、ビニル基、(メタ)アクリレート基、または(メタ)アクリルオキシ基などを含有する反応性シリコーン系化合物;シリコーン基を有する樹脂、オイル(oil)または界面活性剤などが挙げられ、好ましくは、シリコーン基を有し、ビニル基、(メタ)アクリレート基、または(メタ)アクリルオキシ基などを含有する反応性シリコーン系化合物を使用することができる。
【0052】
前記フッ素系化合物としては、例えば、フルオロアルキル基などのフッ素基(fluorine group)を有する非反応性フッ素系化合物;またはフッ素基を有し、ビニル基、(メタ)アクリレート基、または(メタ)アクリルオキシ基などを含有する反応性フッ素系化合物;フッ素基を有する樹脂、オイル(oil)または界面活性剤などが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、前記シリコーン系またはフッ素系化合物は、前記コーティング組成物内光硬化性バインダー100重量部に対して約0.2重量部以上、または約0.3重量部以上、または約0.5重量部、または約1重量部以上であり、かつ、約10重量部以下、または約8重量部以下、または約6重量部以下の含有量で含まれることができる。前記シリコーン系またはフッ素系化合物の含有量が少なすぎると陰刻エンボスパターンがよく形成されなくて耐スクラッチ性効果が低くなることがあり、含有量が多すぎると陰刻エンボスパターンが過度に形成されて偏光子保護フィルムの強度が低下できる。
【0054】
前記コーティング組成物は、光硬化性バインダーを含む。
本発明の一実施形態によれば、前記光硬化性バインダーにラジカル硬化型バインダーを使用することができる。
【0055】
前記ラジカル硬化型バインダーは、自由ラジカルによって光硬化反応を起こすことができる不飽和官能基を含む化合物であれば特に制限されないが、不飽和官能基としては(メト)アクリレート基、アリル基、アクリロイル基、またはビニル基を含む化合物であり得る。
【0056】
前記光硬化性バインダーにラジカル硬化型バインダーを含む場合、ラジカル重合開始剤を共に含む。前記ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性を促進して硬化速度を向上させるためのである。
【0057】
前記ラジカル重合開始剤としては、当該技術分野で一般的に使用されるラジカル重合開始剤を制限なく用いることができ、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(1−Hydroxy−cyclohexyl−phenyl−ketone)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパンオン(2−Hydroxy−2−methyl−1−phenyl−1−propanone)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパンオン(2−Hydroxy−1−[4−(2−hydroxyethoxy)phenyl]−2−methyl−1−propanone)、メチルベンゾイルホルマート(Methylbenzoylformate)、オキシ−フェニル−酢酸−2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル(oxy−phenyl−acetic acid−2−[2 oxo−2−phenyl−acetoxy−ethoxy]−ethyl ester)、オキシ−フェニル−酢酸−2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル(oxy−phenyl−acetic acid−2−[2−hydroxy−ethoxy]−ethyl ester)、アルファ−ジメトキシ−アルファ−フェニルアセトフェノン(alpha−dimethoxy−alpha−phenylacetophenone)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)1−[4−(4−モルフォリニルフェニル]−1−ブタノン(2−Benzyl−2−(dimethylamino)−1−[4−(4−morpholinyl)phenyl]−1−butanone)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパンオン(2−Methyl−1−[4−(methylthio)phenyl]−2−(4−morpholinyl)−1−propanone)、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(Diphenyl(2,4,6−trimethylbenzoyl)−phosphine oxide)、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phenyl bis(2,4,6−trimethyl benzoyl)phosphine oxide)からなるグループから選択される1種以上であることができる。本発明において、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phenylbis(2,4,6−trimethyl benzoyl)phosphine oxide)であることが好ましい。
【0058】
前記ラジカル重合開始剤の含有量は、全体ラジカル硬化型バインダー100重量部に対して、約0.1〜約10重量部、好ましくは約0.1〜約5重量部であり得る。
【0059】
本発明の他の一実施形態によれば、前記光硬化性バインダーに陽イオン硬化型バインダーを使用することができる。また、前記陽イオン硬化型バインダーとしては、エポキシ系化合物を使用することができる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、前記エポキシ系化合物の重量平均分子量は特に制限されないが、例えば、約100〜約5、000g/mol、または約200〜約5、000g/molの範囲を有することができる。前記エポキシ系化合物の重量平均分子量が大きすぎると粘度が高くてコーティング性が良くないことがあり、重量平均分子量が小さすぎると硬度が下落できて、このような観点から前記陽イオン硬化型バインダーの重量平均分子量は前記範囲であることが好ましい。
【0061】
前記エポキシ系化合物は、少なくとも1つ以上のエポキシ基を含み、紫外線照射によって陽イオン重合開始剤から生成された陽イオンによって硬化が開始されるバインダーで、芳香族エポキシ系化合物、水素化エポキシ系化合物、脂環式エポキシ系化合物、脂肪族エポキシ系化合物などが挙げられ、好ましくは、脂環式エポキシ系化合物を使用することができる。
【0062】
前記芳香族エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも1つの芳香族炭化水素環を含むエポキシ系化合物を意味し、これに限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールなどの多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0063】
また、前記水素化エポキシ系化合物は、前記芳香族エポキシ系化合物を触媒の存在下で、加圧下に選択的に水素化反応を行うことによって得られるエポキシ系化合物を意味し、これに限定されるものではないが、その中でも、特に水素化したビスフェノールAのジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。
【0064】
また、前記脂環式エポキシ系化合物は、エポキシ基が脂肪族炭化水素環を構成する隣接する2個の炭素原子間に形成されているエポキシ系化合物を意味し、これに限定されるものではないが、例えば、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5、5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リモネンジオキシド、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダンノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス[5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル]エタンシクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールのε−カプロラクトン(1〜10モール)付加物と、多原子価(3〜20価)アルコール(GR、TMP、PE、DPE、ヘキサペンタエリスリトール)のエステル化化合物などが挙げられる。その中でも反応性の観点から、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを使用することが好ましい。
本発明の一実施形態によれば、前記陽イオン硬化型バインダーとしてオキセタン系化合物をさらに含むことができる。
【0065】
前記オキセタン系化合物は少なくとも1つ以上のオキセタン基を含み、紫外線照射によって陽イオン重合開始剤から生成された陽イオンによって硬化が開始されるバインダーで、その種類には特別な制限なく使用することができる。
【0066】
前記オキセタン系化合物はコーティング組成物の粘度を低くすることができ、硬化速度をより向上させることができる。
【0067】
前記オキセタン系化合物はより具体的には、例えば、3−エチル−3−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]オキセタン、1,4−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、2,2’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、2,7−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ナフタレン、ビス{4−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]フェニル}メタン、ビス{2−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]フェニル}メタン、2,2−ビス{4−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]フェニル}プロパン、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の3−クロロメチル−3−エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4)、8(9)−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]−トリシクロ[5.2.1.0 2,6]デカン、2,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ノルボルナン、1,1,1−トリス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]プロパン、1−ブトキシ−2,2−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ブタン、1,2−ビス{[2−(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]エチルチオ}エタン、ビス{[4−(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルチオ]フェニル}スルフィド、1,6−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンなどが挙げられる。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンと、m−テトラメチル−キシレンジイソシアネートアゼラオイルクロリド、テレフタロイルクロリドおよび1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリドを含む群より選択される1つ以上の化合物との反応によって得られる化合物を使用することができる。
【0069】
前記オキセタン系化合物を追加して含む場合、その含有量は、前記エポキシ系化合物100重量部に対して、約5〜約80重量部、好ましくは約10〜約60重量部であり得る。前記オキセタン系化合物が過度に多く含まれる場合硬化後のコーティング層の硬度が落ちることがあり、過度に少なく含まれる場合はオキセタン系化合物の追加による効果が微小であるので、このような観点から前記重量部の範囲が望ましい。
【0070】
前記光硬化性バインダーに陽イオン硬化型バインダーを含む場合、陽イオン重合開始剤を共に含む。前記陽イオン重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線の照射によって陽イオン(cation)種やルイス酸を作り出す化合物であって、エポキシ基などの陽イオン重合性基に作用して陽イオン重合反応を開始させる化合物を意味する。
【0071】
このとき、前記陽イオン重合開始剤としては、当該技術分野で一般に使用される陽イオン重合開始剤を制限なく用いることができる。例えば、前記陽イオン重合開始剤としてはスルホニウム塩(Sulfonium salt)またはヨードニウム塩(Iodonium salt)が含まれることを使用することが望ましい。
【0072】
スルホニウム塩(Sulfonium salt)またはヨードニウム塩(Iodonium salt)が含まれている陽イオン重合開始剤の具体的な例としては、例えば、ジフェニル(4−フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Diphenyl(4−phenylthio)phenylsulfonium hexafluoroantimonate)、ジフェニル(4−フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(Diphenyl(4−phenylthio)phenylsulfonium hexafluorophosphate)、(フェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート((phenyl)[4−(2−methylpropyl)phenyl]−Iodonium hexafluorophosphate)、(チオジ−4,1−フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)ジヘキサフルオロアンチモネート((Thiodi−4,1−phenylene)bis(diphenylsulfonium)dihexafluoroantimonate)および(チオジ−4,1−フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)ジヘキサフルオロホスフェート((Thiodi−4,1−phenylene)bis(diphenylsulfonium)dihexafluorophosphate)からなるグループから選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
前記陽イオン重合開始剤の含有量は、全体陽イオン硬化型バインダー100重量部に対して約0.1〜約10重量部、好ましくは約0.1〜約5重量部であり得る。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング組成物は熱硬化性バインダー、および熱重合開始剤をさらに含むことができる。前記コーティング組成物が熱硬化性バインダーを含む場合、コーティング組成物の硬化時に熱硬化工程を追加することができる。
【0075】
本発明のコーティング組成物は、溶媒なしに無溶剤(solvent−free)タイプで使用したり、必要に応じて当該技術分野で一般に使用される有機溶媒を少量で、例えば、全体コーティング組成物100重量部に対して約100重量部以下含んで使用することもできる。
【0076】
使用可能な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0077】
一方、本発明のコーティング組成物は前述した成分以外にも、酸化防止剤、UV安定剤、防汚剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、UV吸収剤、消泡剤、防腐剤など本発明が属する技術分野における通常使用される添加剤を追加して含むことができる。また、その含有量は本発明のコーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので、特に制限されないが、例えば、全体コーティング組成物100重量部に対して、約0.1〜約20重量部で含まれることができる。
【0078】
次に、前記コーティング組成物が塗布された高分子フィルムを熱処理する。
前記シリコーン系またはフッ素系化合物を含むコーティング組成物を高分子フィルムに塗布し、前記コーティング組成物が塗布された高分子フィルムを熱処理した後、光硬化することによって前記シリコーン系またはフッ素系化合物が熱処理工程でミクロ相分離(microphase separation)が起こり、前記コーティング層に複数の陰刻エンボスパターンが形成されることができ、表面粗さが2.0〜20.0nmの範囲を有することができる。
【0079】
そこで、前記コーティング層は、その表面に形成された複数の陰刻エンボスパターンと表面粗さの程度によって、プリズムシートまたは拡散シートと当接して発生するスクラッチに対して耐久性が高く、したがって、下部偏光板の保護フィルムが損傷してヘイズが増加することを防止することができる。
【0080】
前記熱処理温度は約80℃以上、または約100℃以上、または約120℃以上であり、かつ、約200℃以下、または約180℃以下、または約160℃以下であり得る。前記熱処理温度が低すぎると陰刻エンボスパターンが形成されないことがあり、高すぎると基材フィルムの熱変形が生じることがあるので、このような観点から前記温度範囲が望ましい。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記熱処理工程と同時に前記コーティング組成物が塗布された高分子フィルムを延伸する段階を行うことができる。
【0082】
延伸方向は特に制限されず、延伸比は前記延伸方向の長さを基準に、1.05倍以上、または1.2倍以上、または1.5倍以上であり、10倍以下、または5倍以下、または3倍以下となるように延伸することができる。前記延伸比が1.05倍未満の場合延伸の効果を十分に達成できないことがあり、10倍を超過する場合はコーティング層が割れることがあり、このような観点から上述した延伸比以内で延伸させることが望ましい。
【0083】
仮に、前記高分子フィルムが前記コーティング組成物を塗布する前に一軸延伸された状態であれば、前記コーティング後の延伸方向は、前記コーティング組成物の塗布前の延伸方向と垂直方向に延伸することが望ましい。例えば、前記コーティング組成物を塗布する前に高分子フィルムを長さMD方向に延伸するとしたら、前記コーティング組成物を塗布した後には幅TD方向に延伸することができる。
【0084】
また、前記コーティング組成物を塗布前と塗布後にそれぞれ延伸する場合、総延伸比は、前記高分子フィルムの総延伸面積を基準に、1.1倍以上、または1.2倍以上、または1.5倍以上であり、25倍以下、または10倍以下、または7倍以下となるように延伸することができる。前記延伸比が1.1倍未満の場合、延伸の効果を十分に達成できないことがあり、25倍を超過する場合はコーティング層が割れることがあり、このような観点から上述した延伸比以内で延伸させることが望ましい。
【0085】
次に、塗布されたコーティング組成物に紫外線を照射して光硬化反応を行うことによって、コーティング層を形成することができる。前記紫外線の照射量は、例えば、約20〜約800mJ/cm
2であり得る。紫外線照射の光源としては、当該技術が属する技術分野で使用できるものであれば特に制限されず、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト(black light)蛍光ランプなどを使用することができる。
【0086】
本発明の一実施形態により、前記熱処理工程と同時に前記コーティング組成物が塗布された高分子フィルムを延伸する段階を行う場合、前記コーティング層は、前記高分子延伸フィルムと一体化して延伸されたものであるため、別途のプライマー層がなくても基材となる高分子フィルムとの付着性が高く、薄型の偏光子保護フィルムを提供するのにより有利である。
【0087】
前記シリコーン系またはフッ素系化合物を含むコーティング組成物を高分子フィルムに塗布し、前記コーティング組成物が塗布された高分子フィルムを延伸した後に光硬化することによって、前記シリコーン系またはフッ素系化合物が熱処理工程または熱処理下での延伸工程でミクロ相分離(microphase separation)が起こり、前記コーティング層は複数の陰刻エンボスパターンを持つ。このような陰刻エンボスパターンによって、前記偏光子保護フィルムと当接する他の層またはフィルムとの摩擦による表面割れ現象が緩和されて、優れた耐スクラッチ性を有することができる。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、前記エンボスパターンは、コーティング層の最表面での形状が円形または楕円形であり、コーティング層の厚さ方向に凹んだ形態を持ってコーティング層が窪んだ陰刻形態を示す。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング層の最表面でのエンボスパターンの直径は約0.1μm以上、または約0.5μm以上、または約1μm以上であり、かつ、約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下の範囲であり得る。
【0090】
また、前記エンボスパターンのコーティング層方向への深さは約1nm以上、または約5nm以上、または約10nm以上であり、かつ、約1μm以下、または約500nm以下、または約100nm以下の範囲であり得る。
【0091】
また、前記エンボスパターンがコーティング層に占める面積は、前記コーティング層の全体の面積対比前記エンボスパターンの最表面の面積比率で計算したとき、約20%以上、または約30%以上であり、かつ、約80%以下、または約70%以下の範囲であり得る。
【0092】
前記のような複数のエンボスパターンによって前記コーティング層は約2.0nm以上、または約3.0nm以上、または約4.0nm以上であり、かつ、約20.0nm以下、または約15.0nm以下、または約10.0nm以下の表面粗さ(Roughness、Ra)を有することができる。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング層は乾燥、延伸および硬化した後の最終厚さが約50nm以上であり、例えば約100nm以上、または約200nm以上、または約500nm以上、または約1μm以上であり、かつ、約20μm以下、または約10μm以下、または約7μm以下、または約5μm以下、または約3μm以下であり得る。このように、本発明のコーティング層は、薄型で製造可能で、十分な強度を示すことができる。また、単一のコーティング層によっても十分な硬度と耐スクラッチ性を示すことができ、プライマー層がなくても基材に対する高い付着性を示して、製造工程の作業性および生産性が高い。
【0094】
前記コーティング層は、高分子フィルムの一面だけに形成することもでき、前記高分子フィルムの両面ともに形成することもできる。
【0095】
前記コーティング層が高分子フィルムの一面だけに形成される場合、他の一面には、他の光硬化コーティング層および/または熱硬化コーティング層や機能性付与のためのその他の層、膜、またはフィルムなどを1つ以上でさらに含むことができる。また、前記コーティング層上に他の機能性層を追加で形成することも可能である。
【0096】
このように本発明の偏光子保護フィルムが、前記高分子フィルムの他の一面上に他の層、膜、またはフィルムなどを含む場合、その形成方法および段階は制限されない。
【0097】
前記のような本発明の製造方法によって得られた偏光子保護フィルムは、振動発生器が連結されたサンプルホルダー(50mm×50mm)に、本発明の偏光子保護フィルムのコーティング層と、陽刻パターンを持つ他のシート(例えば、拡散シート)を重ねておき、300gのおもりで荷重を与えた状態で振動(印加振動の強さ2.8Grms、周波数20−60Hz)を240秒間加えた後にも、本発明の偏光子保護フィルムのコーティング層および他のシート表面にスクラッチおよび割れがほとんど発生しない程度に耐スクラッチ性を示すことができる。
【0098】
また、本発明の製造方法によって得られた偏光子保護フィルムは、500g荷重での鉛筆硬度がH以上であり得る。
【0099】
上述した製造方法によって得られる偏光子保護フィルムを偏光子の少なくとも一面に積層して、これを含む偏光板を提供することができる。
【0100】
偏光子は、色々な方向に振動しながら入射される光から一方向に振動する光だけを抽出できる特性を示す。このような特性は、ヨウ素を吸収したPVA(poly vinyl alcohol)を強い張力で延伸して達成することができる。例えば、より具体的には、PVAフィルムを水溶液に浸して膨潤(swelling)させる膨潤する段階と、前記膨潤されたPVAフィルムに偏光性を付与する二色性物質で染色する段階と、前記染色されたPVAフィルムを延伸(stretch)して前記二色性染料物質を延伸方向に並んで配列させる延伸段階と、前記延伸段階を経たPVAフィルムの色を補正する補色段階とを経て偏光子を形成することができる。しかし、本発明の偏光板は、これに制限されるものではない。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、前記偏光子保護フィルムは、偏光子の両面ともに付着することができる。
【0102】
本発明の他の一実施形態によれば、前記偏光子の一面だけに前記偏光子保護フィルムを備え、他の一面には偏光子保護用に通常使用される汎用の保護フィルムを備えることができる。
【0103】
このとき、前記偏光板はLCDの下部偏光板に用いることができ、LCD内の積層構造において、本発明の偏光子保護フィルムが下部に位置するようにすることができる。
【0104】
前記のように、前記偏光子保護フィルムを下部にして偏光板をLCDに積層させるとき、偏光板の下部に備えたプリズムシートまたは拡散シートの凹凸によって偏光板の下部保護フィルムが損傷することによってヘイズが増加する問題点を防止して、優れた光学物性を示すことができる。
【0105】
前記偏光子と偏光子保護フィルムは接着剤などを使用してラミネーションすることによって接着させることができる。使用可能な接着剤としては、当該技術分野で知られているものであれば特に制限されない。例えば、水系接着剤、一液型または二液型のポリビニルアルコール(PVA)系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレンブタジエンゴム系(SBR)接着剤、またはホットメルト型接着剤などが挙げられるが、本発明はこれら例示によって限定されるものではない。
【0106】
本発明の偏光子保護フィルムを偏光子に積層して接着する場合、前記コーティング層が形成されない面は偏光子に付着し、前記コーティング層は偏光板の外側に位置するように積層することが望ましい。
【0107】
このような本発明の保護フィルムを備えた偏光板は、LCDに適用した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、多様な分野で活用が可能である。例えば、移動通信端末器、スマートフォン、その他のモバイル機器、ディスプレイ機器、電子黒板、屋外電光板、各種表示部の用途に用いることができる。本発明の一実施形態によれば、前記偏光板は、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)液晶用偏光板であってもよく、IPS(In−Plane Switching)、Super−IPS、FFS(Fringe Field Switching)などの水平配向モード用偏光板であってもよく、垂直配向モード用偏光板であってもよい。
【0108】
図3は、本発明の製造方法によって得られた偏光子保護フィルムを含む液晶ディスプレイを示す図である。
【0109】
図3を参照すると、液晶ディスプレイ装置1は、バックライトユニット10と、バックライトユニット10上に備えたプリズムシート20と、プリズムシート20上に備え、偏光子保護フィルム40がプリズムシート20側に向かうように積層される偏光板100とを含む。
【0110】
バックライトユニット10は液晶パネルの背面から光を照射する光源を含み、前記光源の種類は特に制限されず、CCFL、HCFL、またはLEDなどの一般的なLCD用光源を使用することができる。
【0111】
バックライトユニット10の上部にはプリズムシート20が備えられる。プリズムシート20は、バックライトユニット10から出射した光が導光板と拡散シート(図示せず)を通過しながら輝度が落ちることになるので、再び光輝度を上げるために備えており、このようなプリズムシート20は下部偏光板の下方に備えている。しかし、プリズムシート20は凹凸構造を含んでいるので、プリズムシート20と当接している下部偏光板の下部保護フィルムが損傷することによって、ヘイズが増加するという問題点がある。
【0112】
しかし、前記液晶ディスプレイ装置は、偏光子保護フィルム40のコーティング層30aがプリズムシート20側に向かうように偏光板100を積層させることで、このような問題点を改善することができる。
【0113】
つまり、
図3を参照すると、プリズムシート20上に、偏光子50の一面には汎用の保護フィルム60を備えており、他の一面には基材30bおよびコーティング層30aを含む本発明の偏光子保護フィルム40が付着した偏光板100を備えており、このとき、本発明の偏光子保護フィルム40はLCDの下部に、つまり、プリズムシート20側に向かうように積層される構造を有する。このような積層構造により、偏光板100がプリズムシート20の凹凸によって損傷することによってヘイズが増加するという問題点を防ぎ、優れた光学物性を示すことができる。
【0114】
また、本発明の一実施形態によれば、プリズムシート20と偏光板100との間に、またはバックライトユニット10とプリズムシート20との間に拡散シートやDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)(図示せず)などをさらに含むことができる。プリズムシート20と偏光板100との間に拡散シートやDBEFフィルムが位置する場合、偏光板100の偏光子保護フィルム40は拡散シートまたはDBEFフィルムと当接され、このような場合でも、拡散シートまたはDBEFフィルムなどによる下部偏光板の損傷およびヘイズの増加の問題を同様に防止することができる。
【0115】
偏光板100の上部に備えられた層は、一般的な液晶ディスプレイ装置の構造によって、
図3には下部ガラス基板70、薄膜トランジスター75、液晶層80、カラーフィルター85、上部ガラス基板90、および上部偏光板95を順に積層したことを示したが、本発明のLCDはこれに限定されるものではなく、必要に応じて、上記
図3に示した層中の一部を変更または除くか、あるいは他の層、基板、フィルム、シートなどが加わる構造を全て含むことができる。
【0116】
以下、本発明の具体的な実施例を通じて、本発明の作用および効果をより詳しく説明する。ただし、このような実施例は本発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が決められるのではない。
【0117】
<実施例>
コーティング組成物の製造
実施例1
陽イオン硬化型バインダーとして、脂環式エポキシ系化合物であるCelloxide 2021P(DAICEL社)90g、陽イオン光開始剤Irgacure250(BASF社)2gと、光増感剤としてイソプロピルチオキサントン(isopropylthioxanthone)1g、シリコーン系化合物として、BYK−UV3500(BYK社)1gを混合してコーティング組成物を準備した。
【0118】
ポリメチルメタクリレート樹脂を250℃条件下で、T−ダイ製膜機を用いて幅800mm、厚さ200μmの未延伸フィルムを製造した。前記未延伸フィルムを135℃の温度で、長さMD方向に1.8倍延伸して一軸延伸フィルムを製造した。
【0119】
前記一軸延伸フィルム上に、前記コーティング組成物をバーコーティング(Bar Coating)方式でコーティングした後、135℃の温度で幅TD方向に2.2倍に延伸した。
【0120】
これに対して紫外線を照射して厚さが2μmのコーティング層が形成された偏光子保護フィルムを製造した。
【0121】
実施例2
実施例1で、シリコーン系化合物として、BYK−UV3500 1gの代わりにRAD2200N(Tego社)1gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0122】
実施例3
実施例1で、シリコーン系化合物として、BYK−UV3500 1gの代わりにRAD2250(Tego社)1gを混合し、幅TD方向延伸比を2.5倍にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板保護フィルムを製造した。
【0123】
実施例4
実施例1で、シリコーン系化合物として、BYK−UV3500 1gの代わりにRAD2250(Tego社)1gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0124】
実施例5
実施例1で、シリコーン系化合物として、BYK−UV3500 1gの代わりにRAD2010(Tego社)0.3gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0125】
実施例6
実施例1で、シリコーン系化合物として、BYK−UV3500 1gの代わりにRAD2300(Tego社)1gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0126】
実施例7
実施例1でシリコーン系化合物であるBYK−UV3500を1gの代わりに3gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で製造したコーティング組成物を準備した。
ポリメチルメタクリレート樹脂を250℃の条件下で、T−ダイ製膜機を用いて幅800mm、厚さ200μmの未延伸フィルムを製造した後、135℃の温度で長さMD方向に1.8倍、幅TD方向に2.2倍に順次延伸して、二軸延伸したポリメチルメタクリルフィルムを製造した。
前記二軸延伸したポリメチルメタクリルフィルム上に準備したコーティング組成物をバーコーティング方式でコーティングした後、80℃の温度で60秒間熱処理した後に紫外線を照射して厚さ2μmのコーティング層が形成された偏光子保護フィルムを製造した。
【0127】
実施例8
実施例7でシリコーン系化合物であるBYK−UV3500を3gの代わりに5gを混合し、コーティング組成物をコーティングした後、100℃の温度で60秒間熱処理したこと以外は、実施例7と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0128】
比較例1
実施例7でコーティング組成物をバーコーティング方式でコーティングした後、別途の熱処理過程なしに直ちに紫外線を照射したこと以外は、実施例7と同様の方法で偏光板保護フィルムを製造した。
【0129】
比較例2
実施例1で、シリコーン系化合物(BYK−UV3500)を全く添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0130】
参考例1
実施例1で、シリコーン系化合物であるBYK−UV3500を1gの代わりに0.1gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムを製造した。
【0131】
参考例2
実施例1で、シリコーン系化合物であるBYK−UV3500を1gの代わりに10gを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法でコーティング組成物を準備し、偏光板保護フィルムの製造を試みたが、コーティング後に塗膜表面が曇っており、紫外線照射後も表面から未硬化物がついてしまうなど、透明な偏光板保護フィルムの製造に失敗した。
【0132】
<実験例>
<測定方法>
実施例および比較例の偏光子保護フィルムについて、下記の方法で物性を測定した。
1)耐スクラッチ性
振動発生器が連結されたサンプルホルダー(50mm×50mm)に、実施例および比較例の偏光子保護フィルムのコーティング層と拡散シート(LG Electronics Inc.,ND146)が当接するように重ねておき、300gのおもりで荷重を与えた状態で振動(印加振動の強さ2.8Grms、周波数20−60Hz)を240秒間加えた。以降、偏光子保護フィルムのコーティング層および拡散シートの表面にスクラッチおよび割れ発生の有無によって耐スクラッチ性を評価した。スクラッチや割れが発生しない場合をO、微細なスクラッチや割れが発生した場合を△、明らかに発生した場合をXと記載した。
【0133】
2)鉛筆硬度
鉛筆硬度計(硬度試験器、製造会社:忠北テック)を用いて500gの荷重で鉛筆硬度を測定した。ASTM 3363−74により標準鉛筆(Mitsubishi)を6B〜9Hに変化させながら45度角度を維持し、コーティング層の表面にスクラッチを加えて表面の変化を観察した。それぞれの実験値は、5回測定した後に平均値を記載した。
【0134】
3)表面観察
実施例1の偏光子保護フィルムを約1cm×1cmに切断して試料を準備した。AFM(Atomic Force Microscope)のsample diskにカーボンテープ(carbon tape)を貼り付け、その上に試料を付着した後、光学顕微鏡で平坦な部分を確認しながらコーティング層の表面を観察した。このように観察した各試料のAFMの2Dおよび3Dイメージを
図4に示した。
図4で、(a)は実施例1の偏光子保護フィルムのコーティング層の表面のAFMの2Dイメージであり、(b)は実施例1の偏光子保護フィルムのコーティング層のAFMの3Dイメージである。
【0135】
4)表面粗さ
下記の機器および条件下で偏光子保護フィルムのコーティング層の表面粗さ(Ra)を測定した。
*使用機器:X10(Park systems社)
*測定条件
−Parameters
Mode:non−contact、Samples/line:256×256、Scanrate:0.6Hz
−AFM probe
PPP−NCHR(Nanosensors)
Material:Al coating on detector side of cantilever
Resonance Frequency:204〜497kHz、Force Constant:10〜130N/m
Thickness:3.0〜5.0μm、Length:115〜135μm、Width:22.5〜37.5μm、Tip height:5μm
−Software:XEI
−Raの定義は
【数1】
である。
−Rz:the ten point(five highest peaks and five lowest valleys)average roughness。
【0136】
前記物性の測定結果を、下記表1に示す。
【0138】
表1を参照すると、コーティング層には複数の陰刻エンボスパターンが形成されており、表面粗さが所定の範囲を満足する本発明の偏光子保護フィルムは優れた耐スクラッチ性を示した。