特許第6966071号(P6966071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966071ゲル分離能向上剤の製造方法およびゲル分離能向上剤の利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966071
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】ゲル分離能向上剤の製造方法およびゲル分離能向上剤の利用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   G01N27/447 315F
   G01N27/447 315H
   G01N27/447 315G
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-229635(P2017-229635)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-100775(P2019-100775A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小原 政信
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−110946(JP,A)
【文献】 特表平06−510560(JP,A)
【文献】 特開平04−345601(JP,A)
【文献】 特表2014−513524(JP,A)
【文献】 特開平11−023530(JP,A)
【文献】 米国特許第04290911(US,A)
【文献】 米国特許第05455344(US,A)
【文献】 特開平07−128287(JP,A)
【文献】 特表平06−503174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
C08B 1/00−37/18
C12M 1/00−3/10
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)および(2)のいずれか一つ以上の精製工程を含む、核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤の製造方法:
(1)ガラクトマンナン水溶液から上清を得る固液分離工程と、
上記上清を酸性にしてアルコール沈殿に供し、沈殿物を得るアルコール沈殿工程とを含む精製工程;
(2)上記ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加え、不純物を除去する工程を含む精製工程。
【請求項2】
上記アルコール沈殿工程において、エタノールを用いることを特徴とする、請求項に記載の核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤の製造方法。
【請求項3】
上記ガラクトマンナン水溶液の濃度が、0.3%〜2.0%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤の製造方法により得られる、核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤。
【請求項5】
請求項に記載の核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤とアガーとを含むことを特徴とする、核酸電気泳動用ゲル。
【請求項6】
請求項に記載の核酸電気泳動用ゲルを用いることを特徴とする、核酸電気泳動方法。
【請求項7】
請求項に記載の核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤とアガロースとを含むことを特徴とする、核酸電気泳動用ゲル。
【請求項8】
請求項に記載の核酸電気泳動用ゲルと、GelREDTMを含む電気泳動試料とを用いることを特徴とする、核酸電気泳動方法。
【請求項9】
請求項に記載の核酸電気泳動用ゲル分離能向上剤を備える核酸電気泳動用ゲル製造キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル分離能向上剤の製造方法およびゲル分離能向上剤の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸またはタンパク質をそれらのサイズ(すなわち分子量)に応じて分離する場合には、ポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル等のゲルを用いた電気泳動方法が主に行われる。ゲルの作製の際には、ゲルの分離能に応じて好適なゲル濃度に調整する必要があり、操作が非常に煩雑である。このため、高い分離能を有する電気泳動用ゲルを簡便に得る方法が求められ、種々検討がなされている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、アガロースに特定の多糖類を組み合わせてゲルを作製する技術が開示されている。また、特許文献1には、ガンマ線を照射したガラクトマンナンをアガロースと組み合わせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第92/12789号(1992年8月6日公開)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Perlman, D. et. al.,Anal. Biochem. 163,p.247-254,1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような従来技術は、高い分離能を有する電気泳動用ゲルを簡便に得るという観点からは改善の余地があった。また、電気泳動用ゲルの作製の際には、分離したい電気泳動試料のサイズに応じて好適なゲル濃度に調整する必要があり、操作が非常に煩雑である。
【0007】
本発明の一態様は、高い分離能を有する電気泳動用ゲルが得られるゲル分離能向上剤を簡易に製造する方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を行った結果、特定の工程を含む製造方法によって、高い分離能を有する電気泳動用ゲルが作製できるゲル分離能向上剤を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の態様を含む。
〔1〕下記の(1)および(2)のいずれか一つ以上の精製工程を含む、ゲル分離能向上剤の製造方法:
(1)ガラクトマンナン水溶液から上清を得る固液分離工程と、
上記上清をアルコール沈殿に供し、沈殿物を得るアルコール沈殿工程とを含む精製工程;
(2)上記ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加え、不純物を除去する工程を含む精製工程。
〔2〕上記アルコール沈殿工程において、上記上清が酸性であることを特徴とする、〔1〕に記載のゲル分離能向上剤の製造方法。
〔3〕上記アルコール沈殿工程において、エタノールを用いることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のゲル分離能向上剤の製造方法。
〔4〕上記ガラクトマンナン水溶液の濃度が、0.3%〜2.0%であることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のゲル分離能向上剤の製造方法。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のゲル分離能向上剤の製造方法により得られる、ゲル分離能向上剤。
〔6〕〔5〕に記載のゲル分離能向上剤とアガーとを含むことを特徴とする、電気泳動用ゲル。
〔7〕〔6〕に記載の電気泳動用ゲルを用いることを特徴とする、電気泳動方法。
〔8〕〔5〕に記載のゲル分離能向上剤とアガロースとを含むことを特徴とする、電気泳動用ゲル。
〔9〕〔8〕に記載の電気泳動用ゲルと、GelREDTMを含む電気泳動試料とを用いることを特徴とする、電気泳動方法。
〔10〕〔5〕に記載のゲル分離能向上剤を備える電気泳動用ゲル製造キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、高い分離能を有する電気泳動用ゲルを作製するために用いられるゲル分離能向上剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1および比較例1の電気泳動の結果を示す図である。
図2】実施例2および比較例2の電気泳動の結果を示す図である。
図3】参考例1〜参考例3の電気泳動の結果を示す図である。
図4】実施例3、実施例4、比較例3および参考例4の電気泳動の結果を示す図である。
図5】実施例5および実施例6の電気泳動の結果を示す図である。
図6】実施例7〜11の電気泳動の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
本明細書において、電気泳動用ゲルを単に「ゲル」と称する場合もある。ゲル中にてサイズの異なる核酸のバンド間の距離が離れているほど、分離能が高いと言える。
【0013】
〔1.ゲル分離能向上剤の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤の製造方法(本明細書中、「製造方法」とも称する)は、下記の(1)および(2)のいずれか一つ以上の精製工程を含む:
(1)ガラクトマンナン水溶液から上清を得る固液分離工程と、
上記上清をアルコール沈殿に供し、沈殿物を得るアルコール沈殿工程とを含む精製工程;
(2)上記ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加え、不純物を除去する工程を含む精製工程。
【0014】
本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤の製造方法は、上記の(1)および(2)のうち、(1)のみを含んでいてもよく、(2)のみを含んでいてもよく、(1)および(2)の両方を含んでいてもよい。なお、以下では上記の(1)の精製工程を「精製工程(1)」、上記の(2)の精製工程を「精製工程(2)」とも称する。
【0015】
例えば、粗製ガラクトマンナンを用いてDNA電気泳動を行うと、DNAバンドは分離せず、DNAバンドのスメア(smearing of DNA bands)が観察される場合がある。この原因は、(i)電気泳動試料中に、DNAの陽極への移動と競合する物質が混在すること、(ii)DNAと強い親和性のある物質が混在することにより、DNAの移動が妨げられること、および(iii)ガラクトマンナンと電気泳動用ゲルの原料(アガロース等)とで形成される分子ふるいが予想以上に細かく、陽極へのDNAの移動が極めて困難になっていること等であると、発明者は考える。
【0016】
本発明の一実施形態に係る製造方法により、核酸の陽極への移動と競合する物質およびDNAと強い親和性のある物質を除去することができる。そのため、本発明の一実施形態に係る製造方法により得られるゲル分離能向上剤を用いることにより、高い分離能を有するゲルが作製できると、発明者は考える。
【0017】
[1−1.精製工程]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、下記の(1)および(2)のいずれか一つ以上の精製工程を含む:
(1)ガラクトマンナン水溶液から上清を得る固液分離工程と、
上記上清をアルコール沈殿に供し、沈殿物を得るアルコール沈殿工程とを含む精製工程;
(2)上記ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加え、不純物を除去する工程を含む精製工程。
【0018】
ガラクトマンナンは、D−マンノースがβ1→4結合して形成された直線状主鎖に、D−ガラクトースがα1→6結合した構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンは、構成するマンノースとガラクトースの組成比(M/G)の違いにより3つに分類することができる。例えば、ローカストビーンガム由来のガラクトマンナンは、M/G=4であり、タラガム由来のガラクトマンナンは、M/G=3であり、グァーガム由来のガラクトマンナンは、M/G=2であることが知られている。本発明の実施形態において、ガラクトマンナンは上述の3種類のガラクトマンナンのいずれであってもよい。
【0019】
ガラクトマンナンは、精製された市販品を用いてもよい。ローカストビーンガム由来のガラクトマンナンの市販品としては、Locust bean gum from Ceratonia siliqua seeds(Sigma-Aldrich社製、平均分子量:310kDa)等が挙げられる。タラガム由来のガラクトマンナンの市販品としては、SP175(ユニテックフーズ製)等が挙げられる。グァーガム由来のガラクトマンナンの市販品としては、VIDOCREAM(ユニテックフーズ製)等が挙げられる。
【0020】
ガラクトマンナン水溶液100重量%におけるガラクトマンナンの濃度(すなわち、ガラクトマンナン水溶液の濃度)は、特に限定されないが、0.3〜2.0重量%が好ましく、1.0〜1.5重量%がより好ましい。ガラクトマンナン水溶液の濃度が上記範囲内であれば、ガラクトマンナン水溶液の粘度を上げ過ぎることなく、ガラクトマンナンを好適に溶解させることができる。
【0021】
<精製工程(1)>
本発明の一実施形態に係る製造方法において、精製工程(1)は、ガラクトマンナン水溶液から上清を得る固液分離工程と、当該上清をアルコール沈殿に供し、沈殿物を得るアルコール沈殿工程とを含む。
【0022】
(固液分離工程)
固液分離工程は、遠心分離、ろ過、等の公知の固液分離方法を用いて行うことができる。例えば、遠心分離により固液分離方法を実施する場合、遠心分離の条件(時間、温度、遠心力(×g)等)は、上清の量および上清に含まれるガラクトマンナン水溶液の濃度等に応じて適宜決定すればよい。
【0023】
遠心分離の時間は、例えば10000×gの条件で遠心分離を行う場合、5分間〜30分間であることが好ましい。また、遠心分離の温度は、0℃〜30℃であることが好ましく、5℃〜20℃であることがより好ましい。遠心分離の時間および温度が上記範囲内であれば、可溶物を含む上清と不溶物を含む沈殿物とを分離することができる。
【0024】
また、例えば、ガラクトマンナン水溶液の濃度が、0.3〜2.0重量%の場合は、ナイロンメッシュシート(例えば、製品名;ナイロンメッシュシート230、TAITEC)を用いたろ過により固液分離方法を実施することもできる。
【0025】
(アルコール沈殿工程)
本発明の一実施形態に係る製造方法は、上記固液分離工程により得られる上清をアルコール沈殿に供し、沈殿物を得る工程を含む。本明細書において、この工程は、「アルコール沈殿工程」とも称される。
【0026】
アルコール沈殿工程は、常法により実施してもよい。アルコール沈殿工程は、例えば、以下の工程(i)〜(iv)を含む。
(i)上記上清に酢酸水溶液を加えることにより酸性溶液を得る工程、
(ii)工程(i)により得られる酸性溶液にアルコールを加える工程、
(iii)工程(ii)により得られる溶液に遠心分離を行い、得られる沈殿物を回収する工程、および、
(iv)工程(iv)により得られる沈殿物を乾燥させ、ゲル分離能向上剤を得る工程。
【0027】
工程(i)では、上清を酸性にすることができればよい。そのため、上記酢酸水溶液の量は、上清の量および上清に含まれるガラクトマンナンの濃度等に応じて適宜決定すればよい。上記酸性溶液のpHは、pH2〜4が好ましい。酸性溶液に可溶な不純物がDNAの陽極への移動と競合すると考えられるため、これらを除去する目的である。
【0028】
工程(ii)において、上記アルコールは、例えば、エタノールおよびイソプロピルアルコール等であり、エタノールが好ましい。上記アルコールは、溶液の温度が5〜15℃の冷却されたアルコールであってもよく、常温のアルコールであってもよい。上記アルコールの量は、上清の量、ガラクトマンナン水溶液の濃度、緩衝液の量およびアルコールの種類等に応じて適宜決定すればよい。例えば、工程(i)において、ガラクトマンナン水溶液に酢酸水溶液を加えて酸性溶液を得て、さらにエタノールを加えてアルコール沈殿を行ってもよい。この場合、当該酸性溶液とエタノールの重量比(=酸性溶液の重量:エタノールの重量)は、例えば、0.25:1〜4:1であり、例えば、0.6:1である。
【0029】
工程(iii)において、遠心分離の時間、遠心分離の速度および遠心分離の温度等の遠心分離条件は、上清の量および上清に含まれるガラクトマンナンの濃度等に応じて適宜決定すればよい。例えば、遠心分離の時間は、5〜20分間であり、遠心分離の遠心力は、6000×g〜10000×gであり、遠心分離の温度は、5℃〜25℃である。
【0030】
工程(ii)および工程(iii)を繰り返す回数は、特に限定されないが、例えば、1〜2回である。
【0031】
工程(iv)は、得られる沈殿物を乾燥させる工程である。乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥、送風乾燥および加熱乾燥等が挙げられる。乾燥温度および乾燥時間は、得られた沈殿物の量等に応じて適宜決定すればよい。加熱乾燥の場合、例えば乾燥温度は、50℃〜60℃である。
【0032】
<精製工程(2)>
本発明の一実施形態に係る製造方法において、精製工程(2)は、ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加え、不純物を除去する工程を含む。精製工程(2)は、例えば、以下の工程(I)〜(IV)を含む。
(I)ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加える工程、
(II)工程(I)により得られる溶液を放置する工程、
(III)工程(II)により得られる溶液を遠心分離する工程、および、
(IV)工程(III)により得られる溶液から上清を回収する工程。
【0033】
工程(I)において、活性炭の原料は、特に限定されず、例えば、マツ、竹および椰子殻等の植物、石炭ならびに石油等である。また、活性炭の形態は、特に限定されず、例えば、繊維状、ハニカム状、円柱状、破砕状、粒状、粉末状等である。不純物を効率よく除去するという観点からは、粉末状が好ましい。活性炭の添加量は、ガラクトマンナン水溶液の濃度および量等に応じて適宜決定すればよい。ガラクトマンナン水溶液に活性炭を加えることにより、粗製ガラクトマンナンに含まれると考えられる微量のタンパク質および核酸の分離に影響を与える微量物質を除去することができると考えられる。
【0034】
工程(II)において、工程(I)により得られる溶液を放置する時間は、例えば、10〜30分間である。
【0035】
また、工程(II)において、撹拌しながら放置することが好ましい。撹拌を行うことで、活性炭への不純物の吸着およびガラクトマンナンの水への可溶化を効率的に行うことができると考えられる。
【0036】
工程(III)および工程(IV)は複数回繰り返してもよい。工程(III)および工程(IV)を繰り返す回数は、活性炭を除去できる限りにおいて、特に限定されないが、例えば、2〜3回である。また、必要に応じ、ナイロンメッシュ等で上清を濾過してもよい。
【0037】
工程(IV)により得られる上清は、そのままゲル分離能向上剤として用いてもよく、当該上清をさらに凍結乾燥または乾燥させてゲル分離能向上剤として用いてもよい。すなわち、本発明の一実施形態に係る製造方法において、精製工程(2)は、工程(IV)により得られる上清を凍結乾燥する凍結乾燥工程および工程(IV)により得られる上清を乾燥する乾燥工程等を含んでいてもよい。
【0038】
[1−2.溶解工程]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、ガラクトマンナン水溶液を得る工程が含まれていてもよい。本明細書において、この工程は、「溶解工程」とも称される。
【0039】
上記溶解工程では、ガラクトマンナンを水に溶解することにより、ガラクトマンナン水溶液を得ることができる。ガラクトマンナンを溶解する際、加熱溶解してもよい。
【0040】
加熱温度としては、ガラクトマンナン水溶液の濃度に応じて適宜決定すればよく、80℃〜110℃が好ましい。上記溶解工程における加熱温度がこの温度範囲内であれば、ガラクトマンナンを好適に溶解させることができる。
【0041】
加熱は、マイクロウェーブオーブンおよびオートクレーブ等を用いて行うことができる。
【0042】
上記溶解工程における加熱時間としては、ガラクトマンナンの濃度に応じて適宜決定すればよく、例えば、マイクロウェーブオーブンを用いる場合は1〜2分間、オートクレーブを用いる場合は10〜21分間である。上記溶解工程における加熱時間がこの範囲内であれば、ガラクトマンナン水溶液の粘度を上げ過ぎることなく、ガラクトマンナンを好適に溶解させることができる。
【0043】
ガラクトマンナン水溶液は撹拌しながら作製してもよい。手動で撹拌してもよく、撹拌機構を備えた装置によって撹拌してもよい。撹拌機構を備えた装置としては、マグネチックスターラー等が挙げられる。
【0044】
ガラクトマンナンが水に溶解しているか否かは目視で確認できる。本明細書においては、ガラクトマンナン水溶液において、溶解せずに残っているガラクトマンナンの塊が存在しなければ、均一に溶解していると判断する。
【0045】
上記溶解工程と上記精製工程とは、同時に行われてもよい。すなわち、ガラクトマンナン水溶液を得る溶解工程において、精製工程を行ってもよい。
【0046】
[1−3.冷却工程]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、溶解工程の後に、当該溶解工程により得られるガラクトマンナン水溶液を冷却する工程を含んでいてもよい。本明細書において、この工程は、「冷却工程」とも称される。
【0047】
ガラクトマンナン水溶液の冷却時間および冷却温度は、ガラクトマンナン水溶液の量および濃度等に応じて適宜決定すればよい。ガラクトマンナン水溶液は、例えば、一晩冷却させることが好ましい。ガラクトマンナン水溶液の冷却温度は、例えば、3〜10℃である。
【0048】
上記冷却工程は、ガラクトマンナン水溶液を放置することによって一定温度まで冷却させる前冷却工程を含むことが好ましい。当該一定温度は、20℃〜60℃であることが好ましく、室温であることがより好ましい。
【0049】
[1−4.粉砕工程]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、ゲル分離能向上剤を粉砕する粉砕工程を含んでいてもよい。ゲル分離能向上剤が固相である場合、ゲル分離能向上剤を粉砕することにより、ゲル分離能向上剤が溶液に溶解しやすくなる。
【0050】
〔2.ゲル分離能向上剤〕
本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される。なお、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤は、一般的に化学的分析および同定が容易ではないガラクトマンナンを原料としているため、構造の特定が困難である。
【0051】
本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤の形態は、特に限定されず、粉末状等の固相であってもよく、液相であってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤は、特性を損なわない範囲で、任意の量の溶媒に溶解または混合させてもよく、任意の量の他の成分を含んでいてもよい。溶媒としては、後述の緩衝液(トリス−酢酸−エチレンジアミン四酢酸緩衝液およびトリス−ホウ酸−エチレンジアミン四酢酸緩衝液)、トリスリン酸緩衝液等が挙げられる。また、他の成分としては、エチヂウムブロマイド、GelREDTM、SYBR GreenおよびDMSO(ジメチルスルフォキシド)等が挙げられる。
【0053】
〔3.電気泳動用ゲル〕
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤を含む。本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤を用いることにより、高い分離能を有する電気泳動用ゲルを簡易に作製することができる。
【0054】
電気泳動用ゲルの原料は、アガー、アガロースおよびポリアクリルアミド等の電気泳動用ゲルの原料として一般的に知られている原料を用いればよい。これらの電気泳動用ゲルの原料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アガー、アガロースおよびポリアクリルアミド等は、市販品を用いればよい。市販のアガーとしては、精製寒天末(ナカライテスク株式会社製)等が挙げられる。市販のアガロースとしては、Agarose H(ニッポンジーン社製)およびAgarose S(ニッポンジーン社製)等が挙げられる。市販のポリアクリルアミドとしては、SuperSep Ace (和光純薬社製)等が挙げられる。
【0055】
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤とアガーとを含む。また、本発明の他の実施形態に係る電気泳動用ゲルは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤とアガロースとを含む。また、本発明の他の実施形態に係る電気泳動用ゲルは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤および、アガーとアガロースとを用いてもよい。アガロースの重量比とアガーの重量比とは特に限定されないが、例えば、2:1〜2.5:1である。
【0056】
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルの作製は、例えば、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, T. Maniatis, EF Fritsch, J. Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982を参考にして常法により実施してもよい。上記電気泳動用ゲルの作製は、例えば、以下の工程(α)および(β)を含む方法で実施される。
(α)電気泳動用ゲルの原料とゲル分離能向上剤とを緩衝液に混合してゲル化用溶液を得る工程、および、
(β)上記ゲル化用溶液をゲル化させて電気泳動用ゲルを得る工程。
【0057】
工程(α)において、緩衝液は、トリス−酢酸−エチレンジアミン四酢酸緩衝液またはトリス−ホウ酸−エチレンジアミン四酢酸緩衝液であることが好ましい。
【0058】
トリス−酢酸−エチレンジアミン四酢酸緩衝液はTAE緩衝液とも称される。TAE緩衝液は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、酢酸およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を水に溶解させることによって調製され得る。トリスヒドロキシメチルアミノメタンは、単にトリス(Tris)とも称される。トリスは塩の形態(例えば、トリス塩酸塩(Tris−HCL))で用いられてよい。また、酢酸は酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)の形態で用いられてもよい。DNA回収および遺伝子工学的手法に提供するという観点からは、TAE緩衝液が好ましい。
【0059】
トリス−ホウ酸−エチレンジアミン四酢酸緩衝液は、TBE緩衝液とも称される。TBE緩衝液は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ホウ酸およびEDTAを水に溶解させることによって調製され得る。1kbp以下のDNAを分離するという観点からは、TBE緩衝液が好ましい。
【0060】
ゲル化用溶液100重量%における電気泳動用ゲルの原料およびゲル分離能向上剤の合計の濃度は、0.4〜2.0重量%であることが好ましく、0.5〜1.5重量%であることがより好ましい。上記濃度が0.4重量%以上であれば、ゲルの分離能および強度を十分向上させることができる。上記濃度が2.0重量%以下であれば、均一なゲル化用溶液を容易に得ることができる。
【0061】
ゲル化用溶液100重量%における電気泳動用ゲルの原料の濃度(すなわち、電気泳動用ゲルにおける電気泳動用ゲルの原料の濃度)は、0.3〜1.5重量%であることが好ましい。電気泳動用ゲルの原料の濃度が0.3重量%以上であれば、十分な強度のゲルを得ることができる。電気泳動用ゲルの原料の濃度が1.5重量%以下であれば、均一なゲル化用溶液を容易に得ることができる。
【0062】
ゲル化用溶液100重量%におけるゲル分離能向上剤の濃度は、電気泳動用ゲルの原料の濃度によって適宜決定すればよい。例えば、電気泳動用ゲルが、アガロースを1.0重量%含む場合は、0.1重量%以上0.4重量%未満であることが好ましい。ゲル分離能向上剤の濃度が0.1重量%以上であれば、ゲルの分離能および強度を十分向上させることができる。ゲル分離能向上剤の濃度が0.4重量%未満であれば、均一なゲル化用溶液を容易に得ることができる。
【0063】
本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤および電気泳動用ゲルの原料を、緩衝液中に投入した後、撹拌することが好ましい。手動で撹拌してもよく、撹拌機構を備えた装置によって撹拌してもよい。撹拌機構を備えた装置としては、マグネチックスターラー等が挙げられる。
【0064】
工程(α)においては、加熱しながら、電気泳動用ゲルの原料とゲル分離能向上剤とを緩衝液に溶解させることが好ましい。これにより、電気泳動用ゲルの原料とゲル分離能向上剤とを緩衝液に容易に溶解させることができる。溶解工程における加熱温度は80〜100℃であることが好ましい。加熱温度が上記範囲であれば、電気泳動用ゲルの原料とゲル分離能向上剤とを十分に溶解させることができる。加熱は、電気泳動用ゲルの作製で通常用いられている、マイクロウェーブオーブン等を用いて行うことができる。
【0065】
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルの作製において粉末状のゲル分離能向上剤を用いる場合、工程(α)の前に電気泳動用ゲルの原料とゲル分離能向上剤とを混合して混合粉末を得る工程を含んでいてもよい。例えば、電気泳動用ゲルの原料としてアガロースを用いる場合、上記混合粉末におけるアガロースの粉末に対する上記ゲル分離能向上剤の粉末の重量比(ゲル分離能向上剤の粉末の重量/アガロースの粉末の重量)は、0.3〜2であることが好ましい。上記重量比が0.3以上であれば、得られるゲルの分離能および強度をより高めることができる。また、上記重量比が2以下であれば、電気泳動用ゲルの原料とゲル分離能向上剤とが緩衝液に溶解しやすい。
【0066】
上記電気泳動用ゲルの作製にゲル分離能向上剤の粉末を用いる場合、上記重量比は、例えば、0.8〜2であってもよく、1〜2であってもよい。このようにゲル分離能向上剤の濃度が比較的高い場合であっても、上記混合粉末は緩衝液に十分に溶解する。従って、十分な強度のゲルを得ることができる。これは、アガロースとゲル分離能向上剤とが粉末の状態で混合されるためである。また、上記重量比は、0.3〜0.6であってもよく、0.3〜0.5であってもよい。このようにゲル分離能向上剤の濃度が比較的低い場合であっても、ゲルの分離能を十分に高めることができる。
【0067】
アガロースの粉末とゲル分離能向上剤の粉末とを混合する方法は、特に限定されない。これらの粉末は、手動で混合されてもよく、撹拌機構を備えた装置等によって混合されてもよい。いずれにせよ、アガロースの粉末とゲル分離能向上剤の粉末とが均一に混合されるように、これらの粉末を十分に撹拌することが好ましい。
【0068】
工程(β)においては、ゲル化用溶液を放置することによってゲル化させることが好ましい。放置する温度は、20〜60℃であることが好ましく、室温であることがより好ましい。ここで、ゲル化用溶液を型に流し込んだ後に放置することによって、所望の形状のゲルを得ることができる。また、ゲル化する前のゲル化用溶液にコームを差し込んでおくことによって、サンプルを導入するためのウェルを形成することもできる。
【0069】
なお、本明細書において、「ゲル化」とは、ゲル化用溶液を固化させることによって、流動性を示さないゲルを得ることを意図している。上記ゲルは、上述のゲル分離能向上剤を溶解させた溶液をゲル化させたものである。それゆえ、上記ゲルは、十分な強度および高い分離能を有している。
【0070】
〔4.電気泳動方法〕
本発明の一実施形態に係る電気泳動方法は、本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルを用いて行われる。当該電気泳動用ゲルは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤を含むため、当該電気泳動用ゲルを用いて電気泳動を行うことで、核酸(特に、低分子量のDNA)を好適に分離することができる。
【0071】
上記電気泳動方法は、例えば、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, T. Maniatis, EF Fritsch, J. Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982を参考にして常法により実施してもよい。
【0072】
電気泳動試料の染色方法は、特に限定されないが、電気泳動用ゲルに染色試薬を添加することにより染色してもよく、電気泳動を行った後の電気泳動用ゲルを染色試薬中で震盪することにより染色してもよい。上記染色試薬としては、一般公知の核酸染色試薬を用いればよく、例えば、エチジウムブロマイド、GelREDTM(Gene One社製)およびGelGreenTM(Gene One社製)等が挙げられる。
【0073】
また、本発明の他の実施形態に係る電気泳動方法は、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤とアガロースとを含む電気泳動用ゲルおよびGelREDTMを含む電気泳動試料を用いて行われる。
【0074】
上述の染色試薬は、紫外線を当てると蛍光を発する物質が多いため、核酸染色用途に使用される。また、上記染色試薬は、DNAにインターカレートすることにより、DNAバンドが明りょうとなる。そのため、上記染色試薬をDNAインターカレート試薬として電気泳動試料に添加することで、DNAバンドを観察しやすくしてもよい。当該DNAインターカレート試薬として、電気泳動用ゲルの染色に用いる染色試薬と異なる染色試薬を用いることが好ましい。例えば、GelREDTMを添加した電気泳動試料を電気泳動に供した後、電気泳動用ゲルをエチジウムブロマイドで染色してもよい。
【0075】
なお、アガーを含む電気泳動用ゲル(すなわち、電気泳動用ゲルの原料としてアガーのみを含む電気泳動用ゲル、電気泳動用ゲルの原料としてアガーとアガロースとを含む電気泳動用ゲル)を用いて電気泳動を行う場合は、電気泳動試料にGelREDTMを加えてもよく、電気泳動試料にGelREDTMを加えなくてもよい。
【0076】
電気泳動試料100重量%におけるGelREDTMの濃度(または、電気泳動試料に添加するGelREDTMの希釈倍率)は、電気泳動試料の組成等によって適宜決定すればよい。例えば、ローディング液(製品名:6×Loading Buffer Orange G、ニッポンジーン社製)2μLに対して、GelREDTMを1μL加える場合は、GelREDTMは1000倍希釈されていることが好ましい。GelREDTMの希釈は、DMSO(ジメチルスルフォキシド)溶液等を用いて行うことができる。
【0077】
〔5.電気泳動用ゲル製造キット〕
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲル製造キットは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤を備える。それゆえ、上述のように、高い分離能を有するゲルを簡便に作製することができる。以下では、電気泳動用ゲル製造キットを単に「キット」とも称する。また、〔3.電気泳動用ゲル〕で既に説明した事項については、以下では説明を省略し、適宜、上述の記載を援用する。
【0078】
上記キットは、緩衝液として、TAE緩衝液またはTBE緩衝液をさらに備えていてもよい。本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤を当該緩衝液に溶解させてゲル化用溶液を得ることができる。当該ゲル化用溶液をゲル化させることにより、ゲルを作製することができる。
【0079】
上記緩衝液は、使用される際の濃度に比べて高い濃度にて調製されたストック溶液であってもよい。例えば、ストック溶液は、使用される際の濃度に比べて5倍、10倍、または50倍の濃度であってもよい。当該ストック溶液を希釈して、ゲルの作製に使用することができる。
【0080】
また、上記キットは、トリス−酢酸−エチレンジアミン四酢酸の粉末またはトリス−ホウ酸−エチレンジアミン四酢酸の粉末を備えていてもよい。これらの粉末を水に溶解させることによって、TAE緩衝液またはTBE緩衝液を得ることができる。
【0081】
上記キットは、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤、電気泳動用ゲルの原料および緩衝液以外に、ゲルを作製するための部材を備えていてもよい。例えば、上記キットは、ゲル化用溶液が流し込まれるトレーを備えていてもよい。また、上記キットは、形成されたゲルを支持するためのプレートを備えていてもよい。さらに、上記キットは、ゲルにウェルを形成するためのコームを備えていてもよい。
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
〔1.アガーゲルでのゲル分離能向上剤A1の効果の観察〕
<実施例1>
(1)ゲル分離能向上剤A1の作製
下記の〔a〕〜〔h〕により得たゲル分離能向上剤A1を電気泳動に用いた。
〔a〕ローカストビーンガム由来のガラクトマンナン1g(Locust bean gum from Ceratonia siliqua seeds、Sigma-Aldrich社製)を100mLの精製水に加え、マイクロウェーブオーブンにて100℃で2分間加熱し、ガラクトマンナンを溶解させた。これを室温まで冷却した後、5℃にて一晩放置した。
〔b〕〔a〕により得られた溶液を遠心管に分取し、室温で8000×g、10分間遠心した。
〔c〕〔b〕により得られた溶液から上清を遠心管に分取し、沈殿物を除去した。このとき、除去された沈殿物は約0.4gであった。
〔d〕〔c〕により沈殿物が除去された上清に酢酸20mL(特級試薬、和光純薬製)を加えることにより酸性溶液とした。酸性溶液:エタノール=1:1となるように100%エタノールを当該酸性溶液にさらに加え、遠心管の蓋をし、上下に2〜3回程度、素早く振盪した。混合すると速やかに、白い繊維状の物質が出現した。
〔e〕上記遠心管を室温で8000×g、10分間遠心させ、得られた沈殿物を回収した。
〔f〕当該沈殿物にエタノールを10mL加え、よく振盪し、残存している酢酸を除去した。その後、再度、室温で8000×g、10分間遠心させた。
〔g〕得られた沈殿物を回収し、60℃で1時間放置し、完全に乾燥させた。
〔h〕乾燥させた上記得られた沈殿物を乳鉢に移し、乳棒で粉砕した。
【0085】
(2)アガーの溶解
アガー(精製寒天末、ナカライテスク株式会社製)1.0gおよび0.3gのゲル分離能向上剤A1をそれぞれ秤量した。薬さじを用いて、これらをよく撹拌混合し、混合粉末を作製した。
【0086】
蓋付きの200mLガラス瓶に、100mLのTAE緩衝液(pH8.0;40mM Tris−HCl、20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA)およびスターラーバーを入れた。当該ガラス瓶に、上記混合粉末を投入し、蓋をして上下に2〜3回程度、素早く振盪した。マイクロウェーブオーブンを用いて、上記ガラス瓶を100℃で2分程度加熱し、アガーを溶解させた。その後、ガラス瓶をスターラーに乗せ、撹拌した。これにより、ゲル化用溶液を得た。当該ゲル化用溶液においては、アガーおよびゲル分離能向上剤A1が完全に溶解されていることを確認した。実施例1において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガーおよびゲル分離能向上剤A1の濃度はそれぞれ、1.0重量%および0.3重量%である。
【0087】
(3)ゲルの作製
上述の電気泳動装置に付属しているサンプルコーム(8ウェル用)およびゲルプレート(幅54mm、長さ60mm、高さ10mm)をゲル作製用トレーにそれぞれセットした。当該ゲル作製用トレーにゲル化用溶液13mLを流し込んだ。ゲル化用溶液を室温で1時間放置し、ゲル化させた。
【0088】
固化したゲルの上にTAE緩衝液を少量入れ、サンプルコームを注意深く抜き取った。このようにしてゲルを作製した。
【0089】
(4)電気泳動
電気泳動装置(Mupidミニゲル泳動槽、ミューピッド社(旧アドバンス社)製)にゲルをセットした。所望の希釈倍率のGelREDTM(DMSO溶液により希釈)を1μL、ローディング液(製品名:6×Loading Buffer Orange G、ニッポンジーン社製)2μL、10mM Tris−0.1mM EDTA(pH 8.0)6.5μLを加え混合することにより、電気泳動試料を調製した。各レーンの電気泳動試料を表1に示す。なお、上記DNAサイズマーカー(表1中、「マーカー」と記載)としては、下記の(a)または(b)を用いた。
(a)0.1〜20kbpのDNA(Gene Ladder wide 2,ニッポンジーン社製)
(b)0.1〜2kbpのDNA(Gene Ladder 100, ニッポンジーン社製)
【0090】
【表1】
【0091】
ゲルに形成されたウェルに、電気泳動試料を10μL加えた。100Vで30分間、室温にて電気泳動を行った。泳動バッファーとしては、TAE緩衝液(pH8.0;40mM Tris−HCl、20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA)を用いた。なお、電気泳動は、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, T. Maniatis, EF Fritsch, J. Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982を参考にして常法により実施した。
【0092】
(5)ゲルの染色
エチジウムブロマイド(0.5μg/mL)を溶かしたTAE緩衝液に、電気泳動後のゲルを15分間浸漬した。さらに、当該ゲルを蒸留水に5分間、静置浸漬した。
【0093】
(6)ゲルの撮影
アガロースゲル撮影装置(UVイルミネーター;Model BioDoc-It(登録商標) Imaging system, UVP社製)を用いてゲルを撮影した。
【0094】
<比較例1>
ゲルの作製において、ゲル分離能向上剤A1を入れなかったこと以外は実施例1と同様に、ゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。参考例1において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガーの濃度は1.0重量%である。
【0095】
<結果>
図1に、実施例1および比較例1の電気泳動の結果を示す。なお、図1において「*」は、レーン6に基づく2kbpのDNAバンドを示す。また、図1に示したDNAのサイズを表す目盛は、実施例1のレーン1のバンドに基づく。実施例1の結果と比較例1の結果との比較により、アガーゲルにおいて、精製方法(1)により得られたゲル分離能向上剤A1を添加すると、特に100〜3kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。また、実施例1のレーン1および2の結果より、1%アガーゲルを用いる電気泳動では、ゲル分離能向上剤A1を加えると、GelREDTMを電気泳動試料に加えなくても、ゲル分離能が向上することがわかる。
【0096】
精製寒天はアガロースよりも安価に入手可能である。そのため、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤を用いることにより、より安価に電気泳動を行うことができることが示唆される。
【0097】
〔2.アガロースゲルでのゲル分離能向上剤A1の効果の観察〕
<実施例2>
アガー1.0gの代わりにアガロース(Agarose S, ニッポンジーン社製)1.0gを用いた以外は実施例1と同様に、ゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。実施例2において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロースおよびゲル分離能向上剤A1の濃度はそれぞれ、1.0重量%および0.3重量%である。
【0098】
<比較例2>
ゲル分離能向上剤A1を入れなかったこと以外は実施例2と同様に、ゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。比較例2において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロースの濃度は0.3重量%である。
【0099】
<参考例1>
電気泳動試料への添加試薬の考察のため、レーン1〜6において、表2に示す電気泳動試料を流した以外は実施例1と同様に、電気泳動を行った。所望の希釈倍率の添加試薬(GelREDTMはDMSO溶液により希釈)を1μL、ローディング液(製品名:6×Loading Buffer Orange G、ニッポンジーン社製)2μL、10mM Tris−0.1mM EDTA(pH 8.0)6.5μLを加えて混合することによって、電気泳動試料を調製した。参考例1において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロースおよびゲル分離能向上剤A1の濃度はそれぞれ、1.0重量%および0.3重量%である。
【0100】
【表2】
【0101】
<参考例2>
ゲルの作製において、ゲル分離能向上剤A1の代わりに、ローカストビーン由来のガラクトマンナンを0.3g入れたこと以外は実施例1と同様に、ゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、以下の電気泳動試料について電気泳動を行った。所望の希釈倍率の添加試薬(GelREDTMはDMSO溶液により希釈)を1μL、ローディング液(製品名:6×Loading Buffer Orange G、ニッポンジーン社製)2μL、10mM Tris−0.1mM EDTA(pH 8.0)6.5μLを加えて混合することによって、電気泳動試料を調製した。添加試薬として、レーン3用の電気泳動試料には、SYBR Green(Thermo Fisher社製)、Midori Green Direct(ニッポンジーン社製)を用いた。DNAサイズマーカーは、実施例1と同じマーカーを用いた。各レーンの電気泳動試料を表3に示す。参考例2において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロースおよびローカストビーン由来のガラクトマンナンの濃度はそれぞれ、1.0重量%および0.3重量%である。
【0102】
【表3】
【0103】
<参考例3>
ローカストビーン由来のガラクトマンナンの代わりに、ゲル分離能向上剤A1を入れたこと以外は参考例2と同様に、ゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。参考例3において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロースおよびゲル分離能向上剤A1の濃度はそれぞれ、1.0重量%および0.3重量%である。
【0104】
<結果>
図2に、実施例2および比較例2の電気泳動の結果を、図3に、参考例1〜参考例3の電気泳動の結果を示す。なお、図2および3において「*」は、レーン6に基づく2kbpのDNAバンドを示す。
【0105】
実施例2および比較例2の結果の比較により、ゲル分離能向上剤A1を添加したアガロースゲルでは、特に100bp〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。100bp〜2kbpの領域は、PCR反応の結果解析に多用される領域である。ゆえに、本発明の一実施形態に係るゲル分離能向上剤は、DNAの電気泳動において将来的に汎用され得ることが示唆される。
【0106】
ゲル分離能向上剤A1をアガロースに添加した電気泳動では、DNAバンドが出現せず、DNAバンドのスメア(smearing of DNA bands)が観察された(実施例2のレーン1および2を参照のこと)。しかし、実施例2のレーン3〜5の結果より、GelREDTMを電気泳動試料にあらかじめ加えることにより、GelREDTMの容量に依存してDNAバンドが分離されることがわかった。また、実施例2のレーン5で用いたGelREDTMの濃度が最も効果的にDNAを分離することができることがわかった。なお、実施例2のレーン5で用いたGelREDTMの濃度は、通常、ゲル内DNA染色に供される量(一万倍希釈)に対して10倍高い濃度である。
【0107】
また、参考例1の結果より、GelREDTMの代わりにエチジウムブロマイドを電気泳動試料にあらかじめ加えても、エチジウムブロマイドを添加しない場合と比べてDNAの分離能は向上しないことが分かった。
【0108】
さらに、参考例2および参考例3の結果より、GelREDTMの代わりにSYBR GreenやMidori Green Directを電気泳動試料にあらかじめ加えても、これらを添加しない場合と比べて、DNAの分離能は向上しないことが分かった。また、参考例2の結果より、ゲル分離能向上剤A1の原料であるローカストビーンガム由来のガラクトマンナンをアガロースゲルに添加しても、ゲル分離能は向上しないことがわかった。なお、実施例、比較例および参考例において、レーン1の結果とレーン2の結果とを比較しても有意差が見られないことから、溶剤であるDMSOは、DNA分離能に影響しないことがわかった。
【0109】
〔3.アガロース/アガーゲルでのゲル分離能向上剤A1の効果の観察〕
<実施例3>
アガー1.0gの代わりに、アガロース0.7gおよびアガー0.3gを用いた以外は実施例1と同様に、ゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、以下の電気泳動試料について電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料を表4に示す。なお、GelREDTMの希釈は、精製水を用いて行った。実施例3において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤A1の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.3重量%である。
【0110】
【表4】
【0111】
<実施例4>
TAE緩衝液の代わりに、TBE緩衝液(89mMトリス、89mMホウ酸、2mMエチレンジアミン四酢酸、pH8.0)を用いた以外は実施例3と同様に、ゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料を表5に示す。実施例4において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤A1の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.3重量%である。
【0112】
【表5】
【0113】
<比較例3>
アガー1.0gの代わりに、アガロース0.6gおよびアガー0.3gを用いたことおよびゲル分離能向上剤A1の代わりに、ローカストビーンガム由来のガラクトマンナンを0.3g加えたこと以外は実施例1と同様に、ゲルを作製した。当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料は実施例4と同様である。比較例3において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびガラクトマンナンの濃度はそれぞれ、0.6重量%、0.3重量%および0.3重量%である。
【0114】
<参考例4>
ゲル分離能向上剤を用いなかった以外は実施例3と同様に、ゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料は実施例4と同様である。参考例4において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロースおよびアガーの濃度はそれぞれ、0.7重量%および0.3重量%である。
【0115】
<結果>
図4に実施例3、実施例4、比較例3および参考例4の電気泳動の結果を示す。実施例3の結果および実施例4の結果により、ゲル分離能向上剤を添加したアガロース/アガーゲルにおいても、ゲル分離能向上剤を添加したアガーゲルと同様に、特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。また、実施例3および実施例4のレーン1および2の結果より、アガーゲルと同様に、アガロース/アガーゲル用いる電気泳動でも、ゲル分離能向上剤を加えると、GelREDTMを電気泳動試料にあらかじめ加えなくても、ゲル分離能が向上することがわかる。さらに、実施例5の結果より、TAE緩衝液の代わりにTBE緩衝液を用いた場合も特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。
【0116】
一方、比較例3の結果より、ゲル分離能向上剤A1の原料であるローカストビーンガム由来のガラクトマンナンをアガロース/アガーゲルに添加しても、ゲル分離能は向上しないことがわかった。
【0117】
また、参考例4の結果より、電気泳動試料にGelREDTMを電気泳動試料にあらかじめ加えることによりゲル分離能が向上することがわかった。
【0118】
〔4.ゲル分離能向上剤A2およびA3の効果の観察〕
<実施例5>
ローカストビーンガム由来のガラクトマンナンの代わりに、グァーガム由来のガラクトマンナン(VIDOCREAM、ユニテックフーズ社製)を用いた以外は実施例3と同様にゲル分離能向上剤A2を作製した。ゲル分離能向上剤A1の代わりに当該ゲル分離能向上剤A2を用いた以外は実施例3と同様にゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料を表6に示す。実施例5において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤A2の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.3重量%である。
【0119】
【表6】
【0120】
<実施例6>
グァーガム由来由来のガラクトマンナンの代わりに、タラガム由来のガラクトマンナン(SP175、ユニテックフーズ社製)を用いた以外は実施例5と同様にゲル分離能向上剤A3を作製した。ゲル分離能向上剤A2の代わりに当該ゲル分離能向上剤A3を用いた以外は実施例5と同様にゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料は実施例5と同様である。実施例6において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤A3の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.3重量%である。
【0121】
<結果>
図5に実施例5および6の電気泳動の結果を示す。実施例5の結果より、グァーガム由来のガラクトマンナンを用いて作製したゲル分離能向上剤A2を電気泳動用ゲルに添加した場合も特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。また、実施例6の結果より、タラガム由来のガラクトマンナンを用いて作製したゲル分離能向上剤A3を電気泳動用ゲルに添加した場合も、特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。
【0122】
〔5.ゲル分離能向上剤B1の効果の観察〕
<実施例7>
下記の〔A〕〜〔H〕により、ゲル分離能向上剤B1および当該ゲル分離能向上剤B1を用いたゲルを作製し、電気泳動を行った。
〔A〕ローカストビーンガム由来のガラクトマンナン(VIDOGUM L175HQ、ユニテックフーズ株式会社製)1gを、さらに5mLのエタノールに懸濁した後に、撹拌子を回転させながら95mLの水に少量ずつ加え分散させた。10分撹拌させた後ガラクトマンナン分散液を遠心管、2本に分注した。
〔B〕〔A〕により得られた溶液を50mLの遠心管2本に分取した。各遠心管に0.2gの活性炭(和光純薬、クロマトグラム用)を加え、室温で15rpmでrotaterを用いて回転させながら30分間放置させた。
〔C〕上記の遠心管を室温で10,000×g、15分間遠心した。
〔D〕〔C〕により得られた溶液から上清を回収した。
〔E〕10,000×g、5分間遠心した。
〔F〕上記の1%ガラクトマンナン溶液25mL、1mLの50×TAE、精製水24mLを混合し、アガロース(agarose S,ニッポンジーン社製)0.35g、アガー0.15gを加え、マイクロウェーブオーブンにより100℃で2分間、加熱溶解させた。実施例8において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤B1の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.5重量%である。
〔G〕ゲル化用溶液をゲル作製プレートに注ぎ、室温で50分、5度で10分放置し、ゲル化させることにより、ゲルを作製した。
〔H〕ゲルに形成されたウェルに、電気泳動試料を10μL加えた。100Vで35分間、室温にて電気泳動を行った。なお、実施例7における各レーンの電気泳動試料を表7に示す。
【0123】
それ以降は、<実施例1>の「(5)ゲルの染色」「(6)ゲルの撮影」と同様にした。
【0124】
【表7】
【0125】
<実施例8>
1%ガラクトマンナン溶液25mLの代わりに、1%ガラクトマンナン溶液15mLを用いた以外は、実施例7と同様にゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料を表8に示す。実施例8において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤B1の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.3重量%である。
【0126】
【表8】
【0127】
<実施例9>
ローカストビーンガム由来のガラクトマンナンの代わりに、グァーガム由来のガラクトマンナン(VIDOCREAM、ユニテックフーズ社製)を用いた以外は実施例7と同様にして、ゲル分離能向上剤B2を作製した。ゲル分離能向上剤B1の代わりに当該ゲル分離能向上剤B2を用いた以外は実施例7と同様にゲルを作製した。当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。各レーンの電気泳動試料を表9に示す。なお、グァーガム由来のガラクトマンナンのGM分散液の作製は、熱水にグァーガム由来のガラクトマンナンを溶解することにより行った。実施例9において、ゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤B2の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.5重量%である。
【0128】
【表9】
【0129】
<実施例10および実施例11>
ローカストビーンガム由来のガラクトマンナンの代わりに、タラガム由来のガラクトマンナン(SP175、ユニテックフーズ社製)を用いた以外は実施例7と同様にして、ゲル分離能向上剤B3を作製した。ゲル分離能向上剤B1の代わりに当該ゲル分離能向上剤B3を用いた以外は実施例7と同様にゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。なお、実施例10では、電気泳動を35分間行い、実施例11では、電気泳動を70分間行った。また、実施例10および実施例11における各レーンの電気泳動試料を表10に示す。なお、表中マーカー(c)は、Lambda phage/Sty I digest (λ/Sty I )(ニッポンジーン社製)である。実施例10および実施例11においてゲル化用溶液100重量%におけるアガロース、アガーおよびゲル分離能向上剤B3の濃度はそれぞれ、0.7重量%、0.3重量%および0.5重量%である。
【0130】
【表10】
【0131】
<結果>
図6に実施例7〜11の電気泳動の結果を示す。なお、図6の実施例7において「*」は、レーン2に基づく2kbpのDNAバンドを示す。また、図6の実施例10および11において「*」は、レーン3に基づく2kbpのDNAバンドを示す。実施例7および実施例8の結果より、精製方法(2)により得られたゲル分離能向上剤B1を電気泳動用ゲルに添加すると、特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。また、実施例9の結果より、グァーガム由来のガラクトマンナンを用いて作製したゲル分離能向上剤B2を電気泳動用ゲルに添加した場合も特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。さらに、実施例10および実施例11の結果より、タラガム由来のガラクトマンナンを用いて作製したゲル分離能向上剤B3を電気泳動用ゲルに添加した場合も特に100〜2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。また、実施例11の結果より、ゲル分離能向上剤B3を添加した電気泳動用ゲルを用いて電気泳動を70分間行った場合、1000bpから20kbpまでのより長い鎖長のDNAにおいて高い分離能を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、電気泳動を伴う解析が行われる様々な分野に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6