(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐光テスト前、前記UV−VIS−NIRスペクトロフォトメーターを用いて測定した430nm波長の透過率が60%以上である、請求項1に記載の紫外線遮断フィルム。
前記光硬化性バインダー樹脂は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;並びに
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびグリセリンプロポキシル化トリアクリレートからなる多官能性(メタ)アクリレート系モノマー群;より選択された1種以上の光重合性化合物の重合体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の紫外線遮断フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長時間紫外線の露光にも安定的に紫外線遮断性能を示すことができ、ヘイズ値が低くて、OLEDディスプレイ素子などへの適用に適した紫外線遮断フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、
高分子基材;紫外線吸収有機染料および光硬化性バインダー樹脂を含むアンダーコート層;並びに紫外線遮断無機粒子および光硬化性バインダー樹脂を含むオーバーコート層が順に積層された紫外線遮断フィルムであって、
下記の耐光テスト実施前と後に、UV−VIS−NIRスペクトロフォトメーターを用いて405nm波長の透過率を測定した時、耐光テスト後の透過率が耐光テスト前の透過率の3倍以下である、紫外線遮断フィルムを提供する。
【0009】
[耐光テスト方法]
温度50℃、放射照度0.55W/m
2、波長290〜400nmのUVAランプ下で48時間露光させる。
【0010】
前記紫外線遮断フィルムは、前記耐光テスト前、前記UV−VIS−NIRスペクトロフォトメーターを用いて測定した430nm波長の透過率が60%以上であってもよい。
【0011】
また、前記紫外線遮断フィルムは、JIS K 7136法により測定されたヘイズ値が1.5以下であってもよい。
【0012】
前記紫外線吸収有機染料は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、エステル系化合物、インドール系化合物、およびピリミジン系化合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0013】
前記紫外線吸収有機染料は、アンダーコート層の総重量の1〜10重量%含まれる。
【0014】
前記紫外線遮断無機粒子の屈折率は、1.8〜2.1の範囲であってもよい。
【0015】
前記紫外線遮断無機粒子の平均粒径は、20〜200nmの範囲であってもよい。
【0016】
前記紫外線遮断無機粒子は、酸化亜鉛であってもよい。
【0017】
前記紫外線遮断無機粒子は、オーバーコート層の総重量の10〜50重量%含まれる。
【0018】
前記光硬化性バインダー樹脂は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;並びに
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびグリセリンプロポキシル化トリアクリレートからなる多官能性(メタ)アクリレート系モノマー群;より選択された1種以上の光重合性化合物の重合体であってもよい。
【0019】
前記アンダーコート層の厚さは、1〜10μmであってもよい。
【0020】
前記オーバーコート層の厚さは、1〜5μmであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の紫外線遮断フィルムは、耐光特性に優れ、長時間紫外線に露光する場合にも安定した紫外線遮断能を維持し、ヘイズ値が低くて高透明度を示すことから、OLEDディスプレイ素子の保護用フィルムとして好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0023】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得ることから、特定の実施例を例示して下記に詳しく説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0025】
本発明は、高分子基材;紫外線吸収有機染料および光硬化性バインダー樹脂を含むアンダーコート層;並びに紫外線遮断無機粒子および光硬化性バインダー樹脂を含むオーバーコート層が順に積層された紫外線遮断フィルムであって、
下記の耐光テスト実施前と後に、UV−VIS−NIRスペクトロフォトメーターを用いて405nm波長の透過率を測定した時、耐光テスト後の透過率が耐光テスト前の透過率の3倍以下である、紫外線遮断フィルムを提供する。
【0026】
[耐光テスト方法]
温度50℃、放射照度0.55W/m
2、波長290〜400nmのUVAランプ下で48時間露光させる。
【0027】
前記紫外線遮断フィルムは、紫外線吸収有機染料のほか、前記染料の分解を防止できるように紫外線遮断無機粒子を含むことによって、耐光特性が顕著に向上し、長時間紫外線に露光する場合にも透過率の変化が少ない。好ましくは、前記紫外線遮断フィルムは、前記i)の耐光テスト実施後の405nm波長の透過率が耐光テスト前の透過率の2.5倍以下、または2.3倍以下、または2.2倍以下であってもよい。
【0028】
また、前記紫外線遮断フィルムは、透明度確保のために、前記耐光テスト前、前記UV−VIS−NIRスペクトロフォトメーターを用いて測定した430nm波長の透過率が60%以上、または63%以上であることが好ましい。
【0029】
OLED素子保護のための紫外線遮断フィルムは、紫外線領域および405nm以下の青色光遮断能が確保されなければならず、同時に素子から発現する色感を阻害しないように透明でなければならない。よって、405nm以下の波長に対しては透過率が低く、430nm波長の透過率は高くなければならないが、本発明の紫外線遮断フィルムは、所定の構成を満足することによって、このような透過率特性を示す。
【0030】
また、前記紫外線遮断フィルムは、JIS K 7136法により測定されたヘイズ値が1.5以下であってもよいし、1.2以下、または1以下であることがより好ましい。本発明の紫外線遮断フィルムは、このようにヘイズ値が低く、透過率特性および耐光特性に優れ、OLED素子などの保護フィルム用途に好適に使用可能であり、OLED素子の寿命特性に寄与することができる。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記紫外線遮断フィルムは、高分子基材;紫外線吸収有機染料を含むアンダーコート層;および紫外線遮断無機粒子を含むオーバーコート層が順に積層されたものであってもよい。
【0032】
この時、前記高分子基材の面がOLED素子の一面に接する面になり、オーバーコート層が紫外線に露光する面になる。これにより、アンダーコート層の紫外線吸収有機染料がオーバーコート層の紫外線遮断無機粒子によって紫外線露光から保護可能になる。したがって、紫外線遮断無機粒子なしに紫外線吸収有機染料だけを使用する場合に比べて、前記有機染料の分解速度が顕著に遅くなり、長時間紫外線に露光する場合にもフィルムの紫外線遮断能が維持可能になる。
【0033】
したがって、前記紫外線遮断フィルムをOLED素子保護用フィルムに用いる場合、OLED素子の有機物質がアンダーコート層の紫外線吸収有機染料およびオーバーコート層の紫外線遮断無機粒子によって十分に保護できるだけでなく、長時間紫外線に露光する場合にもフィルムの紫外線遮断能の低下が少なくて、OLED素子を長期間効果的に保護できることから、素子の寿命特性が顕著に向上できる。
【0034】
前記紫外線遮断フィルムに使用される高分子基材は、380nm以下の波長領域の透過率が低い基材が有利であり、430nm波長に対する透過率は高く、ヘイズは2.5未満のものが好ましく使用できる。例えば、前記基材の素材は、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン重合体、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどであってもよく、好ましくは、トリアセチルセルロースまたはポリエチレンテレフタレートであってもよいし、より好ましくは、380nm以下の波長透過率が非常に低く、ヘイズが低いトリアセチルセルロースであってもよい。また、前記基材フィルムの厚さは、生産性などを考慮して、10〜300μmであってもよいが、これに限定するものではない。
【0035】
前記紫外線吸収有機染料としては、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)系化合物、トリアジン(triazine)系化合物、エステル(ester)系化合物、インドール(indole)系化合物、およびピリミジン(pyrimidine)系化合物のうちの1種以上が好ましく使用できる。これらの化合物は、400nm付近の波長で透過率が低くて、紫外線および青色光からOLED素子をさらに効果的に保護することができる。これに対し、ベンゾフェノン(benzophenone)系化合物、シアンアクリレート(cyanacrylate)系、オキサラニリド(oxalanilide)系化合物のような化合物も紫外線吸収有機染料として知られてはいるが、これらの染料の場合、400nm付近の波長で透過度が高い問題点があるので、OLED素子保護用紫外線遮断フィルムへの適用には不適である。したがって、本発明の効果を確保するためには、前記ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、エステル系、インドール系、およびピリミジン系化合物のうちの1種以上を使用することが好ましい。
【0036】
前記ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、エステル系、インドール系、およびピリミジン系化合物はそれぞれ、ベンゾトリアゾール、トリアジン、エステル、インドール、ピリミジン部分(moiety)を有しており、上述した効果を示す化合物であれば特に制限されないが、具体的には、前記化合物としては、商品名Tinuvin(登録商標)384(ベンゾトリアゾール系)、Tinuvin(登録商標) CarboProtect(ベンゾトリアゾール系)、Tinuvin(登録商標)477(トリアジン系)、Eusorb UV1990(エステル系)、BONASORB UA−3912(インドール系)、FDB−009(ピリミジン系)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0037】
前記紫外線吸収有機染料の使用量は特に制限されるわけではないが、アンダーコート層の固形分総重量の1〜10重量%含まれることが好ましく、2〜8重量%、または3〜6重量%がより好ましい。万一、紫外線吸収有機染料の含有量がアンダーコート層の固形分総重量の1重量%未満であれば、波長405nmの範囲の紫外線遮断能を十分に確保できないことがあり、10重量%を超えると、430nm付近の透過率が非常に低く、白色の斑点として析出される問題がありうるので、前記範囲を満足することが好ましい。
【0038】
前記紫外線遮断無機粒子は、紫外線吸収有機染料が紫外線によって分解されるのを防止するために投入される。前記効果を確保するために、紫外線遮断無機粒子は、紫外線吸収有機染料が含まれているアンダーコート層上に積層されるオーバーコート層に含まれることが好ましい。
【0039】
OLED素子保護用紫外線遮断フィルムは透明性が確保されなければならないため、ヘイズ値が低い水準、つまり、1.5以下であることが好ましい。よって、本発明において、前記紫外線遮断無機粒子は、屈折率が1.8〜2.1の範囲、または1.85〜2.05のものが好ましい。万一、無機粒子の屈折率が2.1超過と高すぎると、紫外線遮断フィルムのヘイズ値が高くなり、1.8未満と低すぎると、紫外線遮断効率が低くなりうる問題がある。
【0040】
また、前記ヘイズ値を確保するために、紫外線遮断無機粒子の平均粒径は、20〜200nm、または30〜150nmの範囲であることが好ましい。万一、粒子の平均粒径が200nmを超えると、ヘイズ値が高くなり、20nm未満の場合、紫外線遮断効率が低下する問題がありうるので、前記範囲を満足することが好ましい。
【0041】
前記紫外線遮断無機粒子は、当業界で知られた紫外線遮断能を有する無機粒子が使用可能であるが、紫外線遮断フィルムのヘイズを制御するために、酸化亜鉛(ZnO)粒子を使用することが好ましい。後述する本願発明の実験例から確認できるように、広く知られた紫外線遮断無機粒子の酸化チタン(TiO
2)に比べて、酸化亜鉛粒子を用いる場合に、紫外線遮断フィルムのヘイズ値が50%以上低くなるので、OLED素子保護用フィルムへの適用においてより好ましい。
【0042】
前記紫外線遮断無機粒子の含有量は、一例として、オーバーコート層の固形分総重量の10〜50重量%であってもよく、または20〜50重量%であってもよい。万一、紫外線遮断無機粒子の含有量がオーバーコート層の10重量%未満と少なすぎると、アンダーコート層に存在する紫外線遮断有機染料の保護効果を十分に示すことができず、50重量%超過と過度に多く含まれると、オーバーコート層のヘイズ値が高くなりうるので、前記範囲を満足することが好ましい。
【0043】
一方、前記アンダーコート層およびオーバーコート層はそれぞれ、バインダー樹脂を含み、この時、バインダー樹脂は、光硬化性バインダー樹脂が好適に使用可能である。万一、PMMA、ポリビニルブチラールなどの可塑性樹脂が用いられる場合、紫外線遮断フィルムの耐湿熱特性が低下することがあり、PVDF、PVDF−HFPなどのフッ素系可塑性樹脂を用いる場合、ヘイズが高くなって、OLED保護用フィルムへの適用に不適である。
【0044】
前記光硬化性バインダー樹脂は、紫外線などの光が照射されると、重合反応を起こし得る光重合性化合物の重合体であって、本発明の属する技術分野で通常使用されるものであってもよい。前記光重合性化合物としては、反応性アクリレートオリゴマー群;および多官能性(メタ)アクリレート系モノマー群より選択される1種以上が使用できる。
【0045】
前記反応性アクリレートオリゴマーは、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0046】
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーは、2〜6官能性(メタ)アクリレート系モノマーであってもよい。この時、前記(メタ)アクリレートは、アクリレート(acrylate)およびメタクリレート(Methacrylate)の両方ともを含む意味である。
【0047】
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーの種類は、これによって限定するものではないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびグリセリンプロポキシル化トリアクリレートからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0048】
この時、アンダーコート層およびオーバーコート層に使用される光硬化性バインダー樹脂は、同一である必要はない。好ましくは、アンダーコート層は、紫外線吸収有機染料との相溶性およびコーティング層の機械的物性を確保するために、ウレタンアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる群より選択される1種以上の光重合性化合物の重合体をバインダーとして使用することができ、オーバーコート層は、紫外線遮断無機粒子との相溶性およびアンダーコート層との付着性を確保するために、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ジペンタエリスリトールペンタクリルレート(DPEPA)、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の光重合性化合物の重合体をバインダーとして使用することができる。
【0049】
また、前記アンダーコート層およびオーバーコート層はそれぞれ、1種以上の添加剤を含むことができる。前記添加剤は、均一なコーティング層を形成するために使用されるもので、粒子の凝集に影響を与えず、レベリング性の良い物質が好ましく使用できる。例えば、前記添加剤としては、アクリルバインダーと相溶性の良いフッ素系およびシリコン系添加剤が使用可能であり、好ましくは、F553(DIC社)、F477(DIC社)、T210(Tego社)、およびT410(Tego社)からなる群より選択される1種以上の添加剤を使用することができる。
【0050】
このような添加剤は、上述した目的を確保できながら、紫外線遮断フィルムの透過率およびヘイズ特性を阻害しないように、アンダーコート層およびオーバーコート層それぞれに0.1〜0.5重量%の範囲で含まれる。
【0051】
前記アンダーコート層の厚さは特に制限されるわけではないが、光学物性および機械的物性を同時に確保するために、1〜10μm、または3〜8μmの範囲が好ましい。また、オーバーコート層の厚さは、1〜5μm、または1〜4μm、または1〜2μmの範囲であることが、コーティング層を含む全体基材の厚さを考慮する時に好ましい。
【0052】
本発明の一実施例において、前記アンダーコート層は、光硬化性バインダー樹脂、光重合開始剤、および紫外線吸収有機染料を含む光重合性コーティング組成物を高分子基材上に塗布し、塗布された結果物を光重合することによって得られる。同様に、前記オーバーコート層は、光硬化性バインダー樹脂、光重合開始剤、および紫外線遮断無機粒子を含む光重合性コーティング組成物を前記製造されたアンダーコート層上に塗布し、塗布された結果物を光重合することによって得られる。前記各光重合性コーティング組成物は、上述した添加剤をさらに含むものであってもよい。
【0053】
前記光重合開始剤としては、光硬化性コーティング組成物に使用可能と知られた化合物であれば特別な制限なく使用可能であり、具体的には、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、またはこれらの2種以上の混合物が使用できる。
【0054】
前記光重合性化合物100重量部に対して、前記光重合開始剤は、1〜100重量部、1〜50重量部、あるいは1〜20重量部の含有量で使用できる。また、前記光硬化性コーティング組成物中の前記光重合開始剤の含有量は、前記光硬化性コーティング組成物の固形分に対して、0.1重量%〜15重量%、あるいは1重量%〜10重量%に調節できる。
【0055】
前記光重合開始剤の量が少なすぎると、前記光硬化性コーティング組成物の光硬化段階で未硬化で残留する物質が発生しうる。前記光重合開始剤の量が多すぎると、未反応開始剤が不純物として残留したり、架橋密度が低くなって、製造されるフィルムの機械的物性が低下したり、反射率が非常に高くなりうる。
【0056】
一方、前記光硬化性コーティング組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒の非制限的な例を挙げると、ケトン類、アルコール類、アセテート類、およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。このような有機溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、またはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、またはt−ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、イソプロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0057】
前記光重合性コーティング組成物を塗布するのに通常用いられる方法および装置を格別の制限なく使用可能であり、例えば、メイヤーバーコーティング(Mayer bar coating)などのバーコーティング法、グラビアコーティング法、2ロールリバース(2roll reverse)コーティング法、バキュームスロットダイ(vacuum slot die)コーティング法、2ロール(2roll)コーティング法などを使用することができる。
【0058】
前記光重合性コーティング組成物を光重合させる段階では、200〜400nm波長の紫外線または可視光線を照射することができ、照射時の露光量は、100〜4,000mJ/cm
2が好ましい。露光時間も特に限定されるものではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量に応じて適切に変化させることができる。また、前記光重合性コーティング組成物を光重合させる段階では、窒素大気条件を適用するために、窒素パージングなどを行うことができる。
【0059】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0060】
以下の実施例において、略語で表記された物質名は次の通りである。
【0061】
<バインダー>
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
UA7933:2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(SK ENTIS、重量平均分子量3,000)
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(Kyoeisha)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SK CYTEC)
306T:6官能ウレタンアクリレート(Kyoeisha、重量平均分子量1,000)
PVDF:ポリビニリデンフルオライド(sigma−aldrich、重量平均分子量:530,000)
PVDF−HFP:ポリビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン(Solvay、SOLEF(登録商標)21508)
【0062】
<UV吸収有機染料>
UA−3912:BONASORB UA−3912(オリエントケミカル社、インドール系有機染料)
FDB−009:下記の化学式1で表されるピリミジン系染料(Yamada社)
【0063】
【化1】
【0064】
<開始剤>
I−184:Irgacure(登録商標)184(Ciba社)
【0065】
<溶媒>
IPA:イソプロピルアルコール
MEK:メチルエチルケトン
EtOH:エタノール
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0066】
<添加剤>
F477:Megaface F477(DIC社)
【0067】
実施例1〜3および比較例1〜3
(1)アンダーコート層の製造
下記表1の組成を有するアンダーコート組成物を製造し、これを60μm厚さのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの一面に#12メイヤーバー(mayer bar)でコーティングした後、60℃で2分間乾燥した。前記乾燥物に100mJ/cm
2の紫外線を照射して、4μm厚さのアンダーコート層を製造した。
【0068】
【表1】
【0069】
(2)オーバーコート層の製造
下記表2および3の組成(重量部で表記)で比較例1〜3および実施例1〜3のオーバーコート組成物を製造した。
【0070】
各オーバーコート組成物を、前記(1)で製造したアンダーコート層上にコーティングした後、60℃で2分間乾燥した。この時、実施例3を除けばすべて#4メイヤーバー(mayer bar)でコーティングし、実施例3は#8メイヤーバー(mayer bar)でコーティングした。前記乾燥物に200mJ/cm
2の紫外線を照射して、1〜2μm厚さ(ただし、実施例3は3〜4μm)のオーバーコート層を製造した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
*表2および3の括弧内は、溶媒を除いた固形分中の当該成分の重量%を意味する。
【0073】
実施例4および比較例4〜5
(1)アンダーコート層の製造
下記表4の組成を有するアンダーコート組成物を製造し、これを60μm厚さのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの一面に#12メイヤーバー(mayer bar)でコーティングした後、60℃で2分間乾燥した。前記乾燥物に100mJ/cm
2の紫外線を照射して、4μm厚さのアンダーコート層を製造した。
【0074】
【表4】
【0075】
(2)オーバーコート層の製造
下記表5の組成(重量部で表記)で実施例4および比較例5のオーバーコート組成物を製造した。
【0076】
各オーバーコート組成物を、前記(1)で製造したアンダーコート層上に#8メイヤーバー(mayer bar)でコーティングした後、60℃で2分間乾燥した。前記乾燥物に200mJ/cm
2の紫外線を照射して、3〜4μm厚さのオーバーコート層を製造した。
【0077】
また、オーバーコート層なしに、基材および前記(1)のアンダーコート層だけを含む紫外線遮断フィルムを比較例4にした。
【0078】
【表5】
*表5の括弧内は、溶媒を除いた固形分中の当該成分の重量%を意味する。
【0079】
比較例6〜9
(1)アンダーコート層の製造
下記表6の組成で比較例6および7、表7の組成で比較例8および9のアンダーコート組成物を製造した。
【0080】
前記各アンダーコート組成物を60μm厚さのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの一面に#80メイヤーバー(mayer bar)でコーティングした後、60℃で5分間乾燥して、それぞれ9μm、12μm厚さのアンダーコート層を製造した。これを比較例6にした。
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
(2)オーバーコート層の製造
下記表8の組成(重量部で表記)でオーバーコート組成物を製造し、前記(1)で製造したアンダーコート層上に#8メイヤーバー(mayer bar)でコーティングした後、60℃で2分間乾燥した。前記乾燥物に200mJ/cm
2の紫外線を照射して、3〜4μm厚さのオーバーコート層を製造した。
【0084】
【表8】
*表7の括弧内は、溶媒を除いた固形分中の当該成分の重量%を意味する。
【0085】
実験例
1.耐光テスト
前記製造例で得られた各紫外線遮断フィルムを温度50℃、放射照度0.55W/m
2、波長290〜400nmのUVAランプ下で48時間露光させた。
【0086】
2.透過率の測定
前記耐光テスト前および後の紫外線遮断フィルムの透過率を次の方法で測定した。UV−VIS−NIR スペクトロフォトメーター(spectrophotometer)(モデル名:Solidspec−3700、製造会社:Shimadzu)を用いてフィルムのない状態をベースラインに設定した状態でアンダーおよびオーバーコート層を含むフィルム全体の透過スペクトルを照射した。
【0087】
3.ヘイズ(Hz)の測定
JIS K 7136規格により各紫外線遮断フィルムのヘイズ値を測定した。
【0088】
4.全光線透過率(Tt)の測定
JIS K 7361規格により各紫外線遮断フィルムの全光線透過率を測定した。
前記実験の結果を下記表9〜11に示した。
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
【表11】
**405nmの透過率変化比率=耐光テスト後の405nmの透過率/耐光テスト前の405nmの透過率
【0092】
実験の結果、実施例1〜4の紫外線遮断フィルムは、耐光テスト後の405nmの波長透過率が耐光テスト前の約3倍未満で、耐光テスト後にも紫外線遮断効果が高く維持されることを確認することができる。また、実施例の紫外線遮断フィルムは、低いヘイズ値を示すことが確認された。
【0093】
しかし、オーバーコート層がない比較例4や、オーバーコート層に紫外線遮断無機粒子を含まない比較例1および5の紫外線遮断フィルムは、耐光テスト後の透過率が顕著に高くなって、紫外線遮断効果が維持されないことを確認することができる。また、比較例3の結果から、本発明の効果確保のためには、オーバーコート層に含まれている酸化亜鉛の含有量が10重量%以上でなければならないことが分かる。
【0094】
また、比較例2および3を比較すれば、酸化チタンも酸化亜鉛と類似の水準で紫外線遮断効果を示すが、ヘイズ値が2倍以上高くて、OLED素子の保護用途への使用には不適であることが分かる。
【0095】
一方、アンダーコート層およびオーバーコート層のバインダーとして、光硬化性バインダーでないフッ素系可塑性樹脂を用いた比較例6〜9の場合、ヘイズ値が非常に高くなって、OLED素子保護用途に不適であり、PVDFバインダーを用いた比較例6および7の場合、コーティング性が不良になった。