(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態において、被検査基板上に形成されたパターンを撮像する(被検査画像を取得する)手法の一例として、電子ビームによるマルチビームを被検査基板に照射して2次電子像を撮像する場合について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、マルチビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、主電子ビームカラム102、副電子ビームカラム104、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。主電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、及びビームセパレーター214が配置されている。副電子ビームカラム104内には、投影レンズ224,226、偏向器228、マルチ検出器222、位置検出器223、及びアライメントコイル229が配置されている。縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、及び一括ブランキング偏向器212により、1次電子光学系が構成される。但し、1次電子光学系の構成は、これに限るものではない。その他の光学素子等が配置されても構わない。ビームセパレーター214、及び投影レンズ224,226により、2次電子光学系が構成される。但し、2次電子光学系の構成は、これに限るものではない。その他の光学素子等が配置されても構わない。
【0017】
検査室103内には、少なくともXY平面上を移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、検査対象となる基板101が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてXYステージ105に配置される。また、XYステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、副電子ビームカラム104の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0018】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、補正回路130、位置測定回路132、外乱検出算回路134、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146に接続される。DACアンプ144は、主偏向器208に接続され、DACアンプ146は、副偏向器209に接続される。また、主電子ビームカラム102、副電子ビームカラム104、或いは検査室103の周辺には、気圧、温度、振動、及び/或いは磁場といった設置環境の外乱を検出する圧力計P、温度計T、振動計F、及び/或いは磁力計Gが配置される。外乱検出算回路134には、圧力計P、温度計T、振動計F、及び/或いは磁力計Gが接続される。位置検出器223は、副電子ビームカラム104の外部で位置測定回路132に接続される。
【0019】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、XYステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系が構成され、XYステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。
【0020】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。照明レンズ202、縮小レンズ205、対物レンズ207、及び投影レンズ224,226は、例えば電磁レンズが用いられ、共にレンズ制御回路124によって制御される。また、ビームセパレーター214もレンズ制御回路124によって制御される。一括ブランキング偏向器212、及び偏向器228は、それぞれ少なくとも2極の電極群により構成され、ブランキング制御回路126によって制御される。主偏向器208、及び副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、主偏向器208は、電極毎に配置されるDACアンプ144を介して、偏向制御回路128によって制御される。同様に、副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ146を介して、偏向制御回路128によって制御される。
【0021】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0022】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がマルチビーム形成領域204内にx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、例えば、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。或いは、異なる寸法で形成しても良い。例えば、収差の影響を考慮して、中心側を大きくしても良い。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、画像取得用のマルチビーム20(マルチ1次電子ビーム)が形成されることになる。ここでは、横縦(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、横縦(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図2のように、横縦が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。複数のビームが1度に形成されれば、その他の配置関係で形成されても構わない。
【0023】
また、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状に配列された複数の穴22の外側に、位置測定用の穴(開口部)23が形成される。穴23は、矩形で形成される。或いは、円形であっても構わない。穴23は、マルチビーム形成領域204の外側近傍に形成されると好適である。また、穴23のサイズは、複数の穴22のサイズと同サイズ以下でも構わないが、穴22よりも大きく形成されると好適である。穴23のサイズを大きくすることで、後述する1次ガイドビーム21の1辺サイズ(若しくは径サイズ)を大きくできる。1次ガイドビーム21を大きくすることで、後述する2次電子の発生量を増やすことができ、位置検出時のS/N比を向上できる。
図2の例では、マルチビーム形成領域204の左上角の外側に形成される場合を示しているが、これに限るものではない。マルチビーム形成領域204の外周上に沿った外側領域であれば好適である。また、
図2の例では、1つの穴23を形成する場合を示しているが、複数の穴23が形成されても構わない。
【0024】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0025】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203は、ビーム形成機構の一例として、マルチビーム20(マルチ1次電子ビーム)と1次ガイドビーム21(測定用1次電子ビーム)とを形成する。具体的には、以下のように動作する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、矩形の複数の穴22(開口部)及び少なくとも1つの穴23(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22及び穴23が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形の複数の1次電子ビーム(マルチビーム)20a〜20c(
図1の実線)が形成される。また、穴23の位置に照射された電子ビーム200の一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の穴23を通過することによって、例えば矩形の1次ガイドビーム21(測定用1次電子ビーム)(
図1の実線)が形成される。
図2の例では、穴23は、複数の穴22の外側に配置されるので、1次ガイドビーム21は、マルチビーム20の外側に形成される。形成されたマルチビーム20a〜20cと1次ガイドビーム21は、1次電子光学系によって、一括して基板101(試料)面上に照射される。具体的には、以下のように動作する。
【0026】
形成されたマルチビーム20a〜20c及び1次ガイドビーム21は、その後、クロスオーバー(C.O.)を形成し、マルチビーム20及び1次ガイドビーム21の各ビームのクロスオーバー位置に配置されたビームセパレーター214を通過した後、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、成形アパーチャアレイ基板203と縮小レンズ205との間に配置された一括ブランキング偏向器212によって、マルチビーム20a〜20c及び1次ガイドビーム21全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチビーム20a〜20c及び1次ガイドビーム21は、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチビーム20a〜20c及び1次ガイドビーム21を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビーム群により、検査用のマルチビーム20a〜20cと位置ずれガイド用の1次ガイドビーム21とが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20a〜20c及び1次ガイドビーム21は、対物レンズ207により基板101面上に焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像(ビーム径)となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向に一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。かかる場合に、主偏向器208によって、マルチビーム20が走査するマスクダイの基準位置にマルチビーム20全体を一括偏向する。実施の形態1では、XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行う。そのため、主偏向器208は、さらにXYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。そして、副偏向器209によって、各ビームがそれぞれ対応する領域内を走査するようにマルチビーム20全体を一括偏向する。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率(1/a)を乗じたピッチで並ぶことになる。また、1次ガイドビーム21についてもマルチビーム20の外側で同様の縮小率で縮小された像を基板101面上に形成することになる。このように、主電子ビームカラム102は、一度に2次元状のm
1×n
1本のマルチビーム20と少なくとも1つの1次ガイドビーム21とを基板101に照射する。マルチビーム20は、像を観察する為に、品質の高いビームが要求されるが、1次ガイドビームは、重心位置を測定する為に、品質の高いビームは要求されない。
基板101の所望する位置にマルチビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)(
図1の点線)が放出される。同様に、基板101の所望する位置に1次ガイドビーム21が照射されたことに起因して基板101から1次ガイドビーム21に対応する、反射電子を含む2次ガイドビーム301(測定用2次電子ビーム)(
図1の点線)が放出される。
【0027】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300及び2次ガイドビーム301は、対物レンズ207によって、マルチ2次電子ビーム300の中心側に屈折させられ、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。制限アパーチャ基板206を通過したマルチ2次電子ビーム300及び2次ガイドビーム301は、縮小レンズ205によって光軸とほぼ平行に屈折させられ、ビームセパレーター214に進む。
【0028】
ここで、ビームセパレーター214はマルチビーム20及び1次ガイドビーム21が進む方向(光軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチビーム20(1次電子ビーム)及び1次ガイドビーム21には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチビーム20及び1次ガイドビーム21は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300及び2次ガイドビーム301には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300及び2次ガイドビーム301は斜め上方に曲げられる。
【0029】
マルチ2次電子ビーム300及び2次ガイドビーム301は、2次電子光学系によって一括して誘導される。具体的には、以下のように動作する。斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300及び2次ガイドビーム301は、投影レンズ224,226によって、屈折させられながら、マルチ検出器222側に誘導される。誘導されたマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。同じく誘導された2次ガイドビーム301は、位置検出器223に投影される。
【0030】
図3は、実施の形態1におけるマルチ検出器と位置検出器との配置関係の一例を示す図である。
図3において、マルチ検出器222は、例えばダイオード型の2次元センサを有する。例えば、1枚の基板上に2次元状に複数のセンサ素子が形成される。そして、マルチビーム20の各ビームに対応するダイオード型の2次元センサ位置において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームが2次元センサの対応するセンサ素子に衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを後述する画素毎に生成する。また、XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行うため、上述したようにトラッキング偏向が行われる。かかるトラッキング偏向に伴う偏向位置の移動に合わせて、偏向器228は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222の複数のセンサ素子の受光面24(センサ受光面)における所望の位置に照射させるように偏向する。なお、
図3の例では、マルチ検出器222として、5×6のセンサ受光面24が形成される場合を示しているが、マルチ2次電子ビーム300のビーム本数、しいてはマルチビーム20のビーム本数のセンサ受光面24が形成されることは言うまでもない。また、複数のセンサ受光面24は、マルチ2次電子ビーム300の対応する2次電子ビームの照射位置に合わせるように形成される。かかる場合に、上述した外乱等によって、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の複数のセンサ受光面24との位置関係にずれ(誤差)が生じる場合がある。2次光学系が、例えば、傾く等の変動が有った時に、センサ受光面24上の輝度の中心が移動してしまう。
図3の例では、マルチ2次電子ビーム300がマルチ検出器222の複数のセンサ受光面24に対して左(−x方向)側にずれた場合を示している。このように、外乱等によって、マルチビーム20及び/或いはマルチ2次電子ビーム300の軌道にずれが生じる。かかる軌道のずれによって、マルチ検出器222で検出されるマルチ2次電子ビーム300の位置(輝度中心)に誤差が生じてしまう。これにより、取得される画像に歪や階調変動を生じさせてしまう。そのため、外乱等によって生じたかかる輝度の中心の移動を補正することが必要となる。そこで、実施の形態1では、マルチ2次電子ビーム300と同じビーム軌道を通過してきた2次ガイドビーム301の位置を位置検出器223で測定することで、マルチ2次電子ビーム300のビーム軌道のずれを演算する。位置検出器223の検出面は、マルチ検出器222の検出面と同一面になるように位置検出器223を配置すると好適である。但し、これに限るものではない。異なる面に位置検出器223を配置する場合であって、検出結果をマルチ検出器222の検出面と同一面に換算してもよい。位置検出器223として、例えば、PSD(Position Sensitive Detector)センサを用いると好適である。PSDセンサを用いることで、2次ガイドビーム301の重心位置を測定できる。また、位置検出器223の検出面のサイズは、複数のセンサ受光面24の各センサ受光面24のサイズよりも大きくすると好適である。大きくすることで、各センサ受光面24から2次電子ビームの照射位置が外れた場合でも位置ずれ方向及び位置ずれ量を測定できる。
【0031】
図4は、実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図4において、実施の形態1における検査方法は、ビーム照射工程(S101)と、ガイドビーム位置測定工程(S102)と、ビーム軌道補正工程(S104)と、測定画像取得工程(S112)と、参照画像作成工程(S114)と、分割工程(S116)と、位置合わせ工程(S120)と、比較工程(S122)という、一連の工程を実施する。かかる工程群のうち、ビーム照射工程(S101)と、ガイドビーム位置測定工程(S102)と、ビーム軌道補正工程(S104)と、測定画像取得工程(S112)とが、実施の形態1における画像取得方法に相当する。
【0032】
ビーム照射工程(S101)として、画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビーム20及び1次ガイドビーム21を用いて、図形パターンが形成された基板101にマルチビーム20及び1次ガイドビーム21を照射する。具体的には、上述したように、制御計算機110による制御のもと、成形アパーチャアレイ基板203によりマルチビーム20(マルチ1次電子ビーム)と1次ガイドビーム21(測定用1次電子ビーム)とを形成する。そして、1次電子光学系により、マルチビーム20と1次ガイドビーム21とを一括して基板101面上に照射する。
【0033】
ガイドビーム位置測定工程(S102)として、画像取得機構150は、上述したように、マルチビーム20が基板101に照射されることにより生じるマルチ2次電子ビーム300と1次ガイドビーム21が基板101に照射されることにより生じる2次ガイドビーム301とをマルチ検出器222側へと誘導する。具体的には、上述したように、マルチ2次電子ビーム300と2次ガイドビーム301とのビーム軌道をビームセパレーター214により、副電子ビームカラム104側へと曲げる。そして、副電子ビームカラム104内で2次電子光学系によってマルチ2次電子ビーム300と2次ガイドビーム301とを一括して誘導する。誘導されたマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222に投影される。同じく誘導された2次ガイドビーム301は、位置検出器223に投影される。そして、位置検出器223(測定部の一例)は、2次ガイドビーム301の位置を検出することで、その位置を測定する。位置検出器223にて検出された2次ガイドビーム301の位置情報は、位置測定回路132に出力される。位置測定回路132(測定部の一例)は、かかる情報によりマルチ2次電子ビーム300と一括して誘導された2次ガイドビーム301の位置を測定する。
【0034】
ビーム軌道補正工程(S104)として、補正回路130は、測定された2次ガイドビーム301の位置を用いて、マルチ2次電子ビーム300の軌道を補正する補正量を演算する。例えば、設計位置からの2次ガイドビーム301の位置のずれ量を補正するための偏向量を演算する。そして、演算された補正量は、偏向制御回路128に出力される。偏向制御回路128は、補正量をオフセット量として、偏向器228の偏向データに加算する。そして、偏向制御回路128により制御された偏向器228(補正部の一例)は、マルチ2次電子ビーム300の軌道を補正する。このように、偏向器228は、測定された2次ガイドビーム301の位置を用いて、マルチ2次電子ビーム300の軌道を補正する。かかる補正により、マルチ2次電子ビーム300の各ビームがマルチ検出器222の所望のセンサ受光面24に入射するように軌道修正される。さらに、マルチ2次電子ビーム300の軌道補正を行うことで、1次電子ビームのずれに起因しない、基板101とマルチ検出器222との相対ずれを補正することもできる。
【0035】
以上のように、補正部は、偏向器228を有する。しかし、マルチ2次電子ビーム300の軌道補正は、偏向器228で実施する場合に限るものではない。例えば、演算された補正量は、レンズ制御回路124に出力されてもよい。かかる場合、レンズ制御回路124は、アライメントコイル229を制御して、マルチ2次電子ビーム300の軌道を補正する。このように、アライメントコイル229は、測定された2次ガイドビーム301の位置を用いて、マルチ2次電子ビーム300の軌道を補正する。かかる補正により、マルチ2次電子ビーム300の各ビームがマルチ検出器222の所望のセンサ受光面24に入射するように軌道修正される。以上のように、補正部は、アライメントコイル229を有する場合であっても好適である。
【0036】
測定画像取得工程(S112)として、画像取得機構150は、マルチ2次電子ビーム300の軌道が補正された状態で、基板101面に形成された図形パターンの画像を取得する。
【0037】
図5は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図5において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332内は、例えば、2次元状の横(x方向)m
2列×縦(y方向)n
2段(m
2,n
2は2以上の整数)個の複数のマスクダイ33に分割される。実施の形態1では、かかるマスクダイ33が単位検査領域となる。
【0038】
図6は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
図6において、各マスクダイ33は、例えば、マルチビームのビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、測定用画素36(単位照射領域)となる。
図6の例では、8×8列のマルチビームの場合を示している。1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。
図6の例では、照射領域34がマスクダイ33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がマスクダイ33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な複数の測定用画素28(1ショット時のビームの照射位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う測定用画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。
図6の例では、隣り合う4つの測定用画素28で囲まれると共に、4つの測定用画素28のうちの1つの測定用画素28を含む正方形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。
図6の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素36で構成される場合を示している。
【0039】
実施の形態1におけるスキャン動作では、マスクダイ33毎にスキャン(走査)される。
図6の例では、ある1つのマスクダイ33を走査する場合の一例を示している。マルチビーム20がすべて使用される場合には、1つの照射領域34内には、x,y方向に(2次元状に)m
1×n
1個のサブ照射領域29が配列されることになる。1つ目のマスクダイ33にマルチビーム20が照射可能な位置にXYステージ105を移動させる。そして、主偏向器208によって、XYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行いながら、トラッキング偏向されている状態で、副偏向器209によって、当該マスクダイ33を照射領域34として当該マスクダイ33内を走査(スキャン動作)する。マルチビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置に相当する1つの測定用画素28を照射することになる。
図6の例では、副偏向器209によって、各ビームは、1ショット目に担当サブ照射領域29内の最下段の右から1番目の測定用画素36を照射するように偏向される。そして、1ショット目の照射が行われる。続いて、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当サブ照射領域29内の下から2段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。同様に、3ショット目に担当サブ照射領域29内の下から3段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。4ショット目に担当サブ照射領域29内の下から4段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。次に、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括して最下段の右から2番目の測定用画素36の位置にビーム偏向位置をシフトさせ、同様に、y方向に向かって、測定用画素36を順に照射していく。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべての測定用画素36を順に照射していく。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のビームショットに応じたマルチ2次電子ビーム300が一度に検出される。
【0040】
以上のように、マルチビーム20全体では、マスクダイ33を照射領域34として走査(スキャン)することになるが、各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。そして、1つのマスクダイ33の走査(スキャン)が終了すると、隣接する次のマスクダイ33が照射領域34になるように移動して、かかる隣接する次のマスクダイ33の走査(スキャン)を行う。かかる動作を繰り返し、各チップ332の走査を進めていく。マルチビーム20のショットにより、その都度、照射された測定用画素36から2次電子ビームが放出され、マルチ検出器222にて検出される。実施の形態1では、マルチ検出器222の単位検出領域サイズは、各測定用画素36から上方に放出された2次電子ビームを測定用画素36毎(或いはサブ照射領域29毎)に検出する。
【0041】
以上のようにマルチビーム20を用いて走査することで、シングルビームで走査する場合よりも高速にスキャン動作(測定)ができる。なお、ステップアンドリピート動作で各マスクダイ33のスキャンを行っても良いし、XYステージ105を連続移動させながら各マスクダイ33のスキャンを行う場合であってもよい。照射領域34がマスクダイ33よりも小さい場合には、当該マスクダイ33中で照射領域34を移動させながらスキャン動作を行えばよい。
【0042】
基板101が露光用マスク基板である場合には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のチップ領域を例えば上述したマスクダイ33のサイズで短冊状に複数のストライプ領域に分割する。そして、ストライプ領域毎に、上述した動作と同様の走査で各マスクダイ33を走査すればよい。露光用マスク基板におけるマスクダイ33のサイズは、転写前のサイズなので半導体基板のマスクダイ33の4倍のサイズとなる。そのため、照射領域34が露光用マスク基板におけるマスクダイ33よりも小さい場合には、1チップ分のスキャン動作が増加する(例えば4倍)ことになる。しかし、露光用マスク基板には1チップ分のパターンが形成されるので、4チップよりも多くのチップが形成される半導体基板に比べてスキャン回数は少なくて済む。
【0043】
以上のように、画像取得機構150は、マルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査し、マルチビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、基板101上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0044】
参照画像作成工程(114)として、参照画像作成回路112は、基板101にパターンを形成する基になった設計データ、或いは基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、マスクダイ毎に、参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0045】
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0046】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2
8(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして参照回路112に出力する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0047】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。測定画像としての光学画像データは、光学系によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0048】
図7は、実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す構成図である。
図7において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、分割部54、位置合わせ部68、及び比較部70が配置される。分割部54、位置合わせ部68、及び比較部70といった各「〜部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。分割部54、位置合わせ部68、及び比較部70に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリ、或いはメモリ118にその都度格納される。
【0049】
測定されたチップパターンデータは記憶装置50に格納される。また、作成された参照画像の画像データは記憶装置52に格納される。
【0050】
分割工程(S114)として、分割部は、チップパターンデータが示すチップパターンの画像を検査単位となる複数のマスクダイ33の画像に分割する。分割されたマスクダイ33の画像(測定画像)は、記憶装置56に格納される。
【0051】
位置合わせ工程(S120)として、位置合わせ部68は、被検査画像となるマスクダイ画像と参照画像となるマスクダイ画像との位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。
【0052】
比較工程(S122)として、比較部70は、基板101から測定された測定画像と、対応する参照画像とを比較する。具体的には、位置合わせされた被検査画像と参照画像とを、画素毎に比較する。所定の判定閾値を用いて所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥候補と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0053】
上述したダイ−データベース検査の他に、ダイ−ダイ検査を行っても良い。ダイ−ダイ検査を行う場合、同一基板101上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する。そのため、画像取得機構150は、マルチビーム20(電子ビーム)を用いて、同じ図形パターン同士(第1と第2の図形パターン)が異なる位置に形成された基板101から一方の図形パターン(第1の図形パターン)と他方の図形パターン(第2の図形パターン)のそれぞれの2次電子画像である測定画像を取得する。かかる場合、取得される一方の図形パターンの測定画像が参照画像となり、他方の図形パターンの測定画像が被検査画像となる。取得される一方の図形パターン(第1の図形パターン)と他方の図形パターン(第2の図形パターン)の画像は、同じチップパターンデータ内にあっても良いし、異なるチップパターンデータに分かれていてもよい。検査の仕方は、ダイ−データベース検査と同様で構わない。
【0054】
ここで、2次ガイドビーム301は、マルチ2次電子ビーム300が生じている間は、常時、一緒に生成されるので、位置検出器223は、検査用の測定画像取得工程(S112)中、常時測定することができる。言い換えれば、ガイドビーム位置測定工程(S102)は、測定画像取得工程(S112)中、常時実施することができる。よって、検査用の測定画像取得中に、2次ガイドビーム301の位置が閾値よりもずれた場合に、その都度、リアルタイムでマルチ2次電子ビーム300の軌道補正をおこなっても好適である。但し、マルチ検出器222で検出中の画像にマルチ2次電子ビーム300の軌道補正による歪を生じさせないように、チップ332単位或いはマスクダイ33単位で補正を実施すると好適である。或いは、外乱検出回路134により、測定対象の外乱が予め設定された閾値を超える変動をした場合にマルチ2次電子ビーム300の軌道補正にかかるビーム照射工程(S101)と、ガイドビーム位置測定工程(S102)と、ビーム軌道補正工程(S104)と、の各工程を実施しても好適である。特に、気圧変動や温度変動などは、急激に変動しにくい外乱要素であるため、外乱検出回路134により閾値を超える変動を検出した場合に実施しても良い。
【0055】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビームを用いて画像を取得する場合にマルチ検出器で高精度に検出できる。そのため、歪や階調変動が抑制或いは低減された画像を得ることができる。
【0056】
以上の説明において、一連の「〜回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、及び補正回路130等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0057】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、2次光学系のチャージ、2次光学系の磁場変動影響等についても同様に補正が可能となる。
【0058】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0059】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチビーム画像取得装置、マルチビーム画像取得方法、パターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。