【実施例】
【0039】
<原料油脂>
(液油)
菜種油:市販品を用いた。
【0040】
(液油以外の油脂)
パーム油:市販品を用いた。
【0041】
パームステアリン:ヨウ素価33のものを用いた。
【0042】
エステル交換油1:以下の方法で調製したものを用いた。
【0043】
パーム分別軟質部(ヨウ素価56)を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行って、エステル交換油1を得た。
【0044】
エステル交換油2:以下の方法で調製したものを用いた。
【0045】
原料油脂としてパーム油を60質量部、ヤシ油を20質量部、及び菜種油を20質量部混合したものを用いた以外は、エステル交換油1と同様の方法でエステル交換することで、エステル交換油2を得た。
【0046】
エステル交換油3:以下の方法で調製したものを用いた。
【0047】
原料油脂としてパーム油を20質量部、パーム核油を40質量部、及びパーム極度硬化油(ヨウ素価0.1以下)を40質量部混合したものを用いた以外は、エステル交換油1と同様の方法でエステル交換することで、エステル交換油3を得た。
【0048】
菜種極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0049】
パーム極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0050】
ハイエルシンナタネ極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0051】
<固体脂含量の定量方法>
可塑性油脂の固体脂含量は、基準油脂分析試験法2.2.9−2013に記載の方法で定量した。
【0052】
<トリアシルグリセロール(TAG)の定量方法>
(ガスクロマトグラフィーの条件)
カラム:Ultra ALLOY−1(MS/HT)(FRONTIER LAB製)
移動相:ヘリウムガス
注入温度:380℃
カラム温度:280℃で1分間、その後に400℃で10分間(昇温速度10℃/分)
検出器:FID
検出器温度:400℃
(定量方法)
トリウンデカノイン及びC54〜C66の飽和トリアシルグリセロールをクロロホルムに溶解し、標準溶液を用意した。
【0053】
前記条件のガスクロマトグラフィーにおいて、トリウンデカノインの試料濃度当たりのクロマトグラム面積値に対する、C54〜C66の飽和トリアシルグリセロールそれぞれの試料濃度当たりのクロマトグラム面積値の比(ファクター)を求めた。
【0054】
実施例及び比較例の可塑性油脂組成物を調製するのに用いた各原料油脂及び内部標準としてトリウンデカノインを溶解したクロロホルム溶液を試料溶液として、前記条件のガスクロマトグラフィー分析を行い、前記ファクターを基に、各原料油脂中のC54〜C66の飽和トリアシルグリセロールの含有量を求めた。C54〜C66の飽和トリアシルグリセロール量を合計することで、C54以上の飽和トリアシルグリセロール量を求めた。
【0055】
実施例および比較例に含まれるC54以上の飽和トリアシルグリセロール量は、各原料油脂の配合量および各原料油脂中のC54以上のトリアシルグリセロール量に基づいて算出した。
【0056】
[実施例1]
表1に示す配合で、液油及び液油以外の油脂を60℃に加熱、溶解して混合した後に、冷却しながら練りを加えることで、実施例1の可塑性油脂組成物を作製した。
【0057】
[実施例2〜8、及び比較例1〜7]
実施例2〜8、及び比較例1〜7において、表1及び表2に示す配合量にした以外は実施例1と同様にして可塑性油脂組成物を作製した。
【表1】
【表2】
[試験例1]
<O/W乳化物>
試験例1のO/W乳化物として、市販のマヨネーズ(キユーピー株式会社製)を使用した。
【0058】
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
実施例1〜4、8及び比較例1〜7の各可塑性油脂組成物をホバートミキサーで600秒間撹拌し、可塑性油脂組成物を含気させた。次いで、O/W乳化物と可塑性油脂組成物との比(質量比)が7:3となる量で、試験例1のO/W乳化物を投入し、ホイッパーを用いて軽く撹拌することによって両者を混合して、実施例1〜4、8及び比較例1〜7の各可塑性油脂組成物を最外油相として含むO/W/O乳化組成物を作製した。
【0059】
[試験例2]
<O/W乳化物>
試験例2のO/W乳化物として、以下に示す配合で原料を混合して、生クリーム調製物を調製した。尚、生クリーム調製物とは、泡立てていない、液状の状態の生クリームをいう。
【0060】
(配合)
生クリーム(森永乳業株式会社製 大雪原45) 80質量%
上白糖 20質量%
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
可塑性油脂組成物として、実施例1〜4、8及び比較例4〜7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W乳化物として、試験例2のO/W乳化物を使用したこと以外は、試験例1と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
【0061】
[試験例3]
<O/W乳化物>
試験例3のO/W乳化物として、以下に示す配合で原料を混合して、アイスクリームミックスを調製した。得られたアイスクリームミックス全体に占める乳脂肪分は、約15質量%であった。
【0062】
(配合)
卵黄 12質量%
グラニュー糖 26質量%
生クリーム(森永乳業株式会社製 大雪原45) 31質量%
牛乳(森永乳業株式会社製) 31質量%
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
可塑性油脂組成物として、実施例1〜4、8及び比較例1〜7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W乳化物として、試験例3のO/W乳化物を使用したこと以外は、試験例1と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
【0063】
[試験例4]
<O/W乳化物>
試験例4のO/W乳化物として、以下に示す配合で原料を混合し、鍋で加熱撹拌(70℃達温まで)して、カスタードクリームを調製した。
【0064】
(配合)
卵黄 12質量%
上白糖 15質量%
薄力粉 5質量%
牛乳(森永乳業製) 68質量%
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
可塑性油脂組成物として、実施例1〜8、及び比較例4〜7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W乳化物として、試験例4のO/W乳化物を使用したこと以外は、試験例1と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
【0065】
<撥水性の評価>
試験例1〜4の各O/W/O乳化組成物を平板上に薄く塗り広げ、その上にスポイト(Kartell S.p.A.製、パスツールピペット3ml非無菌)で水を1滴(0.03g)落とし、撥水性の有無を下記評価基準により目視で評価した。その水滴の形が丸く球状になっている場合、撥水性有りと判断した。撥水できていない場合は、水滴が球状にならず、滲む、又は水が白濁した。
【0066】
<撥水性の評価基準>
○:十分撥水した。具体的には、水滴の形状が、球状、又は、少し扁平して水平方向から見たときに楕円となる形状で維持された。
△:○よりは弱いが、撥水した。具体的には、水滴の形状が○より扁平したが、白濁したり、濁ったりはしなかった。
×:撥水しなかった。具体的には、水滴が球状を維持せずに広がり、白濁したり濁ったりした。
【0067】
<呈味性の評価>
パネラーが試験例1〜4の各O/W/O乳化組成物を喫食して、下記評価基準により呈味性を評価した。
【0068】
<呈味性の評価基準>
◎:О/W乳化物のみずみずしい風味を最も強く感じた。
○:◎よりも弱いが、О/W乳化物のみずみずしい風味を強く感じた。
△:穏やかに感じた。
×:感じなかった。
【0069】
<評価の結果>
各評価の結果を表3〜6に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0070】
[実施例9]
実施例4の可塑性油脂組成物とサラダ油とを1:1(質量比)で混合し、ホバートミキサーで10分間撹拌して含気させ、比重0.50の油脂Aを得た。得られた油脂Aを最外相用油脂として用いた。油脂A30質量%と、試験例2と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W乳化物)70質量%とを混合し、ホイッパーを用いて撹拌して、O/W/O乳化組成物を作製した。実施例9で得られたO/W/O乳化組成物では、O/W乳化物と最外油相との質量比は、7.0:3.0であった。
【0071】
O/W/O乳化組成物全量に対する可塑性油脂組成物の配合量が15質量%であっても、最外相用油脂の比重が低い場合は、最外油相に乳化剤を使わずともO/W/O乳化組成物を作製することができた。
【0072】
[実施例10]
実施例4の可塑性油脂組成物を最外相用油脂として用い、試験例2と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W乳化物)と実施例4の可塑性油脂組成物とを7.5:2.5(質量比)で混合したこと以外は実施例9と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
【0073】
実施例10ではO/W/O乳化組成物における可塑性油脂組成物の配合量は25質量%であった。この場合も、最外油相に乳化剤を使わずともO/W/O乳化組成物を得ることが出来た。
【0074】
[実施例11]
実施例4の可塑性油脂組成物を最外相用油脂として用い、試験例2と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W乳化物)と実施例4の可塑性油脂組成物とを5.2:4.8(質量比)で混合したこと以外は実施例9と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
【0075】
実施例11で得られたO/W/O乳化組成物における可塑性油脂組成物の配合量は48質量%であった。この場合も、最外油相に乳化剤を使わずともO/W/O乳化組成物を得ることが出来た。
【0076】
実施例9〜11の各O/W/O乳化組成物の撥水性及び呈味性を、前述した方法により評価した。結果を表7に示す。
【表7】
【0077】
試験例1〜4、実施例9〜11及び表3〜7に示したように、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50〜95質量%含み、固体脂含量が5℃で5〜15質量%であり、25℃での固体脂含量が、当該5℃のときの固体脂含量より0.5〜8質量%少なく、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1〜10質量%含む可塑性油脂組成物を用いることで、最外油相に乳化剤を使わずとも容易にO/W/O乳化組成物を製造することができ、かつ、当該O/W/O乳化組成物を、最外相が油相にもかかわらずO/W乳化物のみずみずしさが感じられるものとすることができることが示された。つまり、このような性質を有するO/W/O乳化組成物を食用とすることにより、接触する食品素材への水分移行を抑制し、且つみずみずしい風味及び食感を有するフィリングを提供することが可能であることが示された。