特許第6966634号(P6966634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966634リチウム二次電池用高分子材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966634
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用高分子材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/60 20060101AFI20211108BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20211108BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20211108BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20211108BHJP
【FI】
   H01M4/60
   H01M4/36 E
   H01M4/62 Z
   H01M4/137
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-511739(P2020-511739)
(86)(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公表番号】特表2020-532070(P2020-532070A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】KR2018007895
(87)【国際公開番号】WO2019066219
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0126604
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン−チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】デイル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ルシア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェフン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ナ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダウン・ジョン
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−267074(JP,A)
【文献】 特開2004−185865(JP,A)
【文献】 特表2016−504434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/60
H01M 4/36
H01M 4/62
H01M 4/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子及びポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を含み、
10−8〜10−2S/cmの電子伝導度を有する、リチウム二次電池固体電解質用高分子材料。
【化1】
(前記化学式において、nは70〜280であり、PEGはポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)でPEGのエチレンオキシドユニット(Ethylene oxide unit)の数をmとするとき、mは4〜15である。)
【請求項2】
前記ポリチオフェン系高分子及びポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)は、95:5〜80:20の重量比で含まれることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池固体電解質用高分子材料。
【請求項3】
前記高分子材料は、10−6〜10−4S/cmのイオン伝導度を有することを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池固体電解質用高分子材料。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の高分子材料を含むリチウム二次電池用固体電解質
【請求項5】
請求項に記載の固体電解質を含むリチウム二次電池。
【請求項6】
請求項1に記載のリチウム二次電池固体電解質用高分子材料の製造方法において、前記製造方法は、
(a)下記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子を形成する段階;
(b)ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を形成する段階;及び
(c)前記ポリチオフェン系高分子とポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を熱処理する段階を含むリチウム二次電池固体電解質用高分子材料の製造方法。
【化2】
(前記化学式において、nは70〜280であり、PEGはポリエチレングリコール(Polyethylene lycol)でPEGのエチレンオキシドユニット(Ethylene oxide unit)の数をmとするとき、mは4〜15である。)
【請求項7】
前記(a)段階は、
(a1)チオフェン酢酸にメタノールと硫酸を入れてチオフェンメチルアセテートを形成する段階;
(a2)前記チオフェンメチルアセテートに塩化鉄を入れてポリチオフェンメチルアセテートを形成する段階;
(a3)前記ポリチオフェンメチルアセテートに水酸化ナトリウムを入れてポリチオフェンナトリウムアセテートを形成する段階;
(a4)前記ポリチオフェンナトリウムアセテートに塩化水素を入れてポリチオフェン酢酸を形成する段階;及び
(a5)前記ポリチオフェン酢酸にポリエチレングリコールを入れてポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)を形成する段階を含むことを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池固体電解質用高分子材料の製造方法。
【請求項8】
前記(c)段階において熱処理は、120〜250℃で行われることを特徴とする請求項またはに記載のリチウム二次電池固体電解質用高分子材料の製造方法。
【請求項9】
下記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子の製造方法において、前記製造方法は、
チオフェン酢酸にメタノールと硫酸を入れてチオフェンメチルアセテートを形成する段階;
前記チオフェンメチルアセテートに塩化鉄を入れてポリチオフェンメチルアセテートを形成する段階;
前記ポリチオフェンメチルアセテートに水酸化ナトリウムを入れてポリチオフェンナトリウムアセテートを形成する段階;
前記ポリチオフェンナトリウムアセテートに塩化水素を入れてポリチオフェン酢酸を形成する段階;及び
前記ポリチオフェン酢酸にポリエチレングリコールを入れてポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)を形成する段階を含むことを特徴とするポリチオフェン系高分子の製造方法。
【化3】
(前記化学式において、nは70〜280であり、PEGはポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)でPEGのエチレンオキシドユニット(Ethylene oxide unit)の数をmとするとき、mは4〜15である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月28日付け韓国特許出願第10−2017−0126604号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用高分子材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、スマートフォンやノートパソコン、タブレットPCをはじめとした小型電子機器において自動車のバッテリーなどの様々な産業で用いられている。これらは小型化、軽量化、高性能化、及び高容量化の技術方向に発展がなされている。
【0004】
リチウム二次電池は、負極、正極及び電解質を含む。前記リチウム二次電池の負極活物質としては、リチウム、炭素などが用いられ、正極活物質としては、遷移金属酸化物、金属カルコゲン化合物、伝導性高分子などが用いられ、電解質としては、液体電解質、固体電解質及び高分子電解質などが用いられている。
【0005】
現在、商用化されたリチウム二次電池は、有機カーボネート(Carbonate)系溶媒にリチウム塩が溶解されている液体電解質を用いているが、外部からの刺激や昇温による液漏れ、揮発、爆発などの安全性の問題を内在するので、これを解決するための固体状高分子電解質に関する研究が必要である。
【0006】
最終的には、このような固体状高分子電解質に基づく全固体電池システムを具現することが理想的であり、このために、高いイオン伝導度(>10−4S/cm、25℃)を有する固体状高分子電解質の開発が緊急である。1970年代以降、リチウムイオン伝導性高分子として知られているポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide)、PEO)とその誘導体及び複合体に関する研究が活発に進められてライブラリ化されてきたが、まだ低いイオン伝導度、高い界面抵抗などの問題で全固体電池システムの具現が困難な状況である。これを解決するために、イオン及び電子伝導性高分子素材を開発することにより、固体電解質、電極バインダー、導電材の役割まで行うようにするのであれば、界面抵抗を減少させるだけでなく、従来の商用化システムの導電材である伝導性カーボン(Carbon)を完全に排除する方式でも電池を製造することができると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1743909号公報(2017年5月31日)、「機械的安定性及び効率が強化された全―高分子太陽電池用伝導性高分子」
【特許文献2】韓国登録特許第10−1748684号公報(2017年6月13日)、「ポリマーのみからなる光活性層を用いた全−高分子太陽電池」
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Anna E.Javier,Shrayesh N.Patel,Daniel T.Hallinan Jr.,Venkat Srinivasan,and Nitash P.Balsara,「Simultaneous Electronic and Ionic Conduction in a Block Copolymer:Application in Lithium Battery Electrodes」Angew Chem Int Ed Engl.2011 Oct 10;50(42):9848−51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、従来のリチウム二次電池において用いる電解液による液漏れ及び爆発の危険性、並びに従来の固体電解質が有していた低いイオン伝導度の問題を解決するために、特にリチウム二次電池のうち、特に全固体電池に適用することができるイオン伝導度と電子伝導度が向上したリチウム二次電池用高分子材料を適用した結果、前記問題を解決し、リチウム二次電池の性能を向上させることができることを確認し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来の固体電解質の低いイオン伝導度による問題を解消することができるポリチオフェン系高分子及び伝導性高分子のブレンド形態の高分子を含むリチウム二次電池用高分子材料を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、前記高分子材料を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、前記高分子材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
下記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子及び伝導性高分子を含むリチウム二次電池用高分子材料を提供する。
【0014】
【化1】
(前記化学式において、nは70〜280であり、PEGはポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)であり、PEGのエチレンオキシドユニット(Ethylene oxide unit)の数をmとするとき、mは4〜15である。)
【0015】
このとき、伝導性高分子はポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子を形成する段階;伝導性高分子を形成する段階;及び前記ポリチオフェン系高分子と伝導性高分子を熱処理する段階を含むリチウム二次電池用高分子材料の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子を提供する
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例によれば、リチウム二次電池用高分子材料は、イオン伝導度と電子伝導度に優れ、リチウム二次電池の電極と電解質との間の界面抵抗を効果的に減少させ、電池の性能を向上させることができる。前記リチウム二次電池用高分子材料はフィルム形態で製作され、全固体電池システムなどにおいて電解質、バインダー及び導電材の役割を果たすことができるので、リチウム二次電池の軽量化及び製造工程の単純化の効果などを期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るリチウム二次電池を示す断面図である。
図2】本発明に係るポリチオフェン系高分子であるポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)の製造方法を示す図面である。
図3】本発明に係るポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)のH−NMRグラフである。
図4】本発明に係るポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)の温度による総伝導度(Total Conductivity)を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0021】
本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は通常的であるか、又は辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されるべきである。
【0022】
本発明において使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定し、一又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0023】
リチウム二次電池用高分子材料
本発明に係るリチウム二次電池用高分子材料は、下記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子及び伝導性高分子を含むことができる。
【0024】
【化2】
(前記化学式において、nは70〜280であり、PEGはポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)でPEGのエチレンオキシドユニット(Ethylene oxide unit)の数をmとするとき、mは4〜15であり、好ましくは6〜12である。)
【0025】
前記化学式1で表される高分子は、ポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)(Poly(3−Polyethylene glycol thiophene)、以下、P3PEGT)であって、ポリチオフェン主鎖にポリエチレングリコールを側鎖として有している構造を有する。前記高分子は10−5S/cmのイオン伝導度を示すが、電子伝導性は10−7S/cm程度にリチウム二次電池に用いられるのに低い電子伝導性を示す。
【0026】
したがって、本発明では、前記高分子に伝導性高分子をブレンディングして、電子伝導性を向上させたブレンド形態の高分子を含むリチウム二次電池用高分子材料を提供する。
【0027】
前記伝導性高分子は、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を含むものであってもよい。伝導性高分子を前記P3PEGTとブレンディングすることにより、電子伝導度を10−2S/cm水準まで向上させることができるので、本発明に係るリチウム二次電池用高分子材料は、従来の固体電解質が有している低いイオン伝導度と低い電子伝導度の問題を同時に解決することができる。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記ポリチオフェン系高分子及び伝導性高分子は、95:5〜80:20の重量比で含まれてもよい。
【0029】
もし、ポリチオフェン系高分子の範囲が前記範囲未満であれば、本発明に係る基本的な効果を示すことができず、前記範囲を超える場合、電子伝導度が低くなることができるので、前記範囲で適切に調節する。
【0030】
本発明の一実施例に係る前記ブレンド形態の高分子を含むリチウム二次電池用高分子材料は、10−6〜10−4S/cmのイオン伝導度を有してもよく、10−8〜10−2S/cmの電子伝導性を有してもよい。
【0031】
隣接分野の先行文献では、下記の反応式1で表されるポリチオフェン系高分子を含む共重合体を開示している。
【0032】
【化3】
【0033】
前記反応式1で開示する共重合体であるポリ−3−ヘキシルチオフェン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(P3TH−PEO)は、90℃で約1.1×10−4S/cmのイオン伝導度と6.7×10−6S/cmの電子伝導性を示すが、依然としてイオン伝導度と電子伝導度が十分高くないという問題がある。
【0034】
本発明は、従来のこのような欠点を克服するために、ポリチオフェン系高分子に伝導性高分子をブレンディングした高分子を含む高分子材料を提供することにより、常温で10−5S/cm以上のイオン伝導度を有しながら、同時に電子伝導性を10−2S/cm水準まで向上させることができる。
【0035】
本発明の一実施例は、前記リチウム二次電池用高分子材料を含むリチウム二次電池用正極であってもよい。
【0036】
また、本発明の一実施例は、前記の正極を含むリチウム二次電池であってもよい。
【0037】
前記リチウム二次電池用高分子材料は、リチウム塩をさらに含むことができる。リチウム塩は、リチウムイオン伝導度を高めるためのものであり、本発明において特に限定せず、リチウム二次電池の技術分野において公知のリチウム塩を用いる。
【0038】
リチウム塩は、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiTFSI、Li(FSON、LiCFCO、LiCHSO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCSO、LiC(CFSO、(CFSONLi、LiOH・HO、LiB(C、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種のリチウム塩などを用いることができる。
【0039】
前記リチウム塩は、高分子材料に含まれたブレンド形態の高分子100重量部対比60重量部以下、好ましくは5〜50重量部で含まれることが好ましい。前記リチウム塩の含有量が前記範囲未満であれば、リチウムイオン伝導度の確保が容易ではなく、反対に、前記範囲を超える場合には、効果上の大きな増加がないため非経済的であるので、前記範囲内で適切に選択する。
【0040】
本発明において提示するリチウム二次電池は、好ましくは全固体電池であってもよい。
【0041】
図1は、本発明の一実施例に係るリチウム二次電池10を示す断面図である。図1を参照すれば、リチウム二次電池10は、正極11、負極17、本発明に係るリチウム二次電池用高分子材料を含む層13、及びこれらの間に介在された分離膜15を含むことができる。前記リチウム二次電池用高分子材料を含む層13は、高いイオン伝導度及び電子伝導度を示し、電池の電解質、バインダー及び導電材として好ましく用いられ、電池の性能を改善する。リチウム二次電池用高分子材料を含む層13への具体的な適用方法は、本発明において特に限定せず、この分野の通常の知識を有する者により公知の方法を選定又は選択して適用することができる。
【0042】
リチウム二次電池10の正極11は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1又はそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2−x(0≦x≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiFe;LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGa;0.01≦x≦0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−x(M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTa;0.01≦x≦0.1)又はLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物; LiNiMn2−xで表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoO、CuMo、FeS、CoS、及びMiSなどのカルコゲン化物、スカンジウム、ルテニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの酸化物、硫化物又はハロゲン化物が正極活物質として用いられ、より具体的には、TiS、ZrS、RuO、Co、Mo、Vなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
このような正極活物質は、正極集電体上に形成するか、又は本発明に係る高分子材料を含む層上にリチウム塩などと共に分散されている形態であってもよい。前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないながら高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。このとき、前記正極集電体は、正極活物質との密着性を高めることができるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、多様な形態を用いることができる。
【0044】
また、負極17は、負極集電体上に負極活物質を有する負極合剤層が形成されるか、又は負極合剤層(一例として、リチウム箔)を単独で用いる。
【0045】
このとき、負極集電体や負極合剤層の種類は、本発明において特に限定せず、公知の材質が使用可能である。
【0046】
また、負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないながら導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを用いることができる。また、前記負極集電体は正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、多様な形態を用いることができる。
【0047】
また、負極活物質は結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、グラフェン(graphene)、繊維状炭素からなる群より選ばれる一つ以上の炭素系物質、Si系物質、LiFe(0<x≦1)、LiWO(0<x≦1)、SnMe1−xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge; Me':Al、B、 P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;珪素系合金;錫系合金; SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子; Li−Co−Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
ここに加えて、負極活物質は、SnMe1−xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge; Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン; 0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物; SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの酸化物を用いることができ、結晶質炭素、非晶質炭素又は炭素複合体のような炭素系負極活物質を単独で、又は2種以上が混用されて用いることができる。
【0049】
本発明に係る前記分離膜は、本発明のリチウム二次電池において、両電極を物理的に分離するためのもので、通常、リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能である。
【0050】
前記分離膜は、多孔性基材からなることができるが、前記多孔質基材は、通常、電気化学素子に用いられる多孔質基材であれば全て使用が可能であり、例えばポリオレフィン系多孔性膜又は不織布を用いることができるが、これに特に限定されるものではない。
【0051】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、又はこれらを混合した高分子で形成した膜(Membrane)が挙げられる。
【0052】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylenterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)などをそれぞれ単独で又はこれらを混合した高分子で形成された不織布が挙げられる。前記不織布の構造は長繊維で構成されたスパンボンド不織布又はメルトブローン不織布であってもよい。
【0053】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1〜100μm、好ましくは5〜50μmであってもよい。
【0054】
前記多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001〜50μm及び10〜95%であってもよい。
【0055】
本発明に係るリチウム二次電池用高分子材料を含む層13は、優れたイオン伝導性と電子伝導性を同時に示し、従来のリチウムイオン電池において用いられる液体電解質、PVDFなどのバインダーを代替し、導電材であるカーボンなどの重みを減らすか、または完全に排除することができる利点を有する。すなわち、前記リチウム二次電池用高分子材料を含む層13は、電解質、バインダー、導電材の役割を同時に行うことにより、リチウム二次電池の一種である全固体電池システムにおいて電極と電解質との間の界面抵抗を効果的に低減させることができる。
【0056】
前述のリチウム二次電池10の形態は特に制限されず、例えば、ジェリーロール型、スタック型、スタック・折り畳み型(スタック−Z−折り畳み型を含む)、またはラミネート・スタック型であってもよく、好ましくはスタック・折り畳み型であってもよい。
【0057】
このような前記負極17、リチウム二次電池用高分子材料を含む層13、及び正極11が順次積層された電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れた後、キャッププレート及びガスケットで封止して組み立ててリチウム二次電池を製造する。
【0058】
このとき、リチウム二次電池10は、形態によって円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類されることができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けられる。これらの電池の構造と製造方法はこの分野において広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0059】
本発明に係るリチウム二次電池10は、高容量及び高いレート特性などが要求されるデバイスの電源に用いられることができる。前記デバイスの具体的な例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybride Electric Vehicle,HEV)、プラグ−インハイブリッド電気自動車(plug−in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)などを含む電気自動車;電気自転車(E−bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
リチウム二次電池用高分子材料の製造方法
本発明の一実施例に係るブレンド形態の高分子を含むリチウム二次電池用高分子材料は、
(a)下記化学式1で表されるポリチオフェン系高分子を形成する段階;
(b)伝導性高分子を形成する段階;及び
(c)前記ポリチオフェン系高分子と伝導性高分子を熱処理する段階を含むことができる。
【0061】
【化4】
(前記化学式において、nは70〜280であり、PEGはポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)でPEGのエチレンオキシドユニット(Ethylene oxide unit)の数をmとするとき、mは4〜15である。)
【0062】
このとき、前記(a)段階は、
(a1)チオフェン酢酸にメタノールと硫酸を入れてチオフェンメチルアセテートを形成する段階;
(a2)前記チオフェンメチルアセテートに塩化鉄を入れてポリチオフェンメチルアセテートを形成する段階;
(a3)前記ポリチオフェンメチルアセテートに水酸化ナトリウムを入れてポリチオフェンナトリウムアセテートを形成する段階;
(a4)前記ポリチオフェンナトリウムアセテートに塩化水素を入れてポリチオフェン酢酸を形成する段階;及び
(a5)前記ポリチオフェン酢酸にポリエチレングリコールを入れてポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)を形成する段階を含むことができる。
【0063】
図2は、本発明の一実施例に係るポリチオフェン系高分子であるポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)(P3PEGT)の製造方法を示す。
【0064】
前記(b)段階と(c)段階との間にポリチオフェン系高分子と伝導性高分子を混合し、別の基板上にコーティングした後、これを分離する段階をさらに含むことができる。
【0065】
このとき、基板は、ガラス基板やプラスチック基板であってもよい。前記プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、3酢酸セルロース、2酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリトリフルオロエチレンなどの各種のプラスチックフィルムが挙げられる。また、これらの2種以上からなる複合材料も用いることができる。
【0066】
前記コーティングの非限定的な例としては、スピンコーティング(Spin coating)、ドクターブレードコーティング、ディップコーティング(Dip coating)、溶媒キャスティング(Solvent casting)、スロットダイコーティング(Slot die coating)、スプレーコーティング、ロールコーティング、押出コーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、ワイヤーバーコーティング又はナイフコーティングなどの方法を使用することができる。
【0067】
このとき、均一な高分子材料の製造のために、各工程でのパラメータ調整が必要である。
【0068】
一例として、スピンコーティングの場合、500〜4000rpmで行い、ドクターブレードコーティングの場合、10〜200μmの厚さギャップを有する装置を用いることができる。また、スプレーコーティングを行う場合、0.5〜20MPaの噴射圧により5〜100回の間の噴射回数で噴霧して行うことができる。このような工程の設計及びパラメータの選定は、この分野の通常の知識を有する者により制御することができる。
【0069】
前記コーティング後に溶液の乾燥を行ってリチウム二次電池用高分子材料を形成する。
【0070】
乾燥は、各構成成分や含有量比によって異なるが、60〜150℃で30秒〜15分間行うことが好ましい。
【0071】
このとき、乾燥は熱風乾燥、電磁波乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥中の一つの方法で行うことができ、好ましくは熱風乾燥を行う。
【0072】
前記コーティング及び乾燥を行った後に形成される高分子材料の厚さは、最終的に製造しようとする高分子材料の厚さに形成し、必要な場合、前記コーティング・乾燥又はコーティング段階を1回以上行う。
【0073】
本発明の一実施例において、前記(c)段階における熱処理は、120〜250℃で行ってもよく、好ましくは180〜220℃で行ってもよい。もし、熱処理が前記温度範囲未満の場合には、ポリチオフェン系高分子と伝導性高分子の円滑なブレンドが行われないため、所望する電子伝導性を示すことができず、前記範囲を超える場合には、高分子材料内高分子自体の熱分解が発生することができる問題点があるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0074】
本熱処理段階は、大気又は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。本発明の一実施例において、前記不活性ガスは窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン及びキセノンからなる群より選ばれる1又は2以上の組み合わせであってもよい。
【0075】
本発明の一実施例は、前記製造方法により製造されるリチウム二次電池用高分子材料及びこれを含むリチウム二次電池であってもよい。
【0076】
以下、本発明の効果に関する理解を助けるために、実施例、比較例及び実験例を記載する。ただし、下記の記載は、本発明の内容と効果に関する一例に該当するだけで、本発明の権利範囲及び効果がこれに限定されるものではない。
【0077】
[実施例]
製造例−ポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)(P3PEGT)の製造
図2は、本発明の一実施例に係る高分子であるP3PEGTの製造方法を示す。
【0078】
図2を参照すれば、高分子であるP3PEGTは、次のような過程で合成することができる。
【0079】
2口100mL丸底フラスコにチオフェン酢酸(3−Thiophene acetic acid)10g、蒸留したメタノール50mL、及び硫酸1滴を入れ、100℃で24時間攪拌した後、メタノールを真空減圧により除去し、ジエチルエーテル(Diethyl ether)に溶かし、蒸留水で3回抽出(Extraction)した。前記ジエチルエーテル層に硫酸マグネシウム(Magnesium sulfate)を入れて水分を除去し、ろ過してチオフェンメチルアセテート(3−Thiophene methyl acetate)を得た。
【0080】
前記チオフェンメチルアセテート2gに塩化鉄8.0gを入れ、クロロホルム30mLに溶かした後、0℃、窒素条件で24時間攪拌し、ポリチオフェンメチルアセテート(Poly(3−thiophene methyl acetate))を得た。
【0081】
前記ポリチオフェンメチルアセテートに6M水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide)水溶液を入れ、100℃で24時間攪拌し、ポリチオフェンナトリウムアセテート(Poly(3−thiophene sodium acetate))を得た。前記ポリチオフェンナトリウムアセテートに1M塩化水素(Hydrogen chloride)を入れ、24時間攪拌してポリチオフェン酢酸を得た。前記ポリチオフェン酢酸を真空乾燥した後、ポリチオフェン酢酸1g及び触媒でp−トルエンスルホン酸(pTsOH)を10:1のモル比で溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAC)50mLに溶かした。ディーンスターク(Dean−Stark)蒸留を利用して水分を最大限に除去し、ポリエチレングリコール(Mn=400)を少しずつ投与した。反応物を水に沈殿させ、純粋なP3PEGTを得、本発明の化学式1を基準にしてn値は110〜130であった。
【0082】
実験例1
前記製造例で製造したP3PEGTと伝導性高分子でPEDOT:PSS(3wt% in HO、200S/cm、Sigam−Aldrich社)を80:20の重量比にして、溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)全体100重量部対比5重量で溶解して高分子材料溶液を製造した。
【0083】
この後、ガラス基板上に前記溶液を3,000rpmで2分間スピンコーティングした後、120℃で乾燥し、溶媒を完全に乾燥させた。その後、200℃で20分間熱処理を行い、ガラス基板から取り出してフィルム形態の高分子材料を製造した。
【0084】
実施例2
高分子としてP3PEGTを単独で用いたことを除いては、前記実施例1と同様にして高分子材料を製造した。
【0085】
比較例1
高分子でポリ−3−ヘキシルチオフェン−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(P3HT−PEO)をテトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶かして溶液を製造したことを除いては、前記実施例と同様にして高分子材料を製造した。
【0086】
実験例1−ポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)(P3PEGT)NMRの分析
図3は、本発明の一実施例に係るP3PEGTを含む高分子のH−NMRグラフである。
【0087】
図3を参照すれば、d及びeのピークがなくなることを確認し、チオフェンメチルアセテートからポリチオフェンメチルアセテート(Poly(3−thiophene methyl acetate))が製造されたことが分かった。C'のピークが12〜13ppmで観測されたことを確認し、前記ポリチオフェンメチルアセテートからポリチオフェン酢酸(Poly(3−thiophene acetic acid))が製造されたことを確認することができ、fピークが生成されたことを確認し、前記ポリチオフェン酢酸(Poly(3−thiophene acetic acid))からポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェン)(P3PEGT)が製造されたことを確認することができた。また、高分子のH−NMRグラフによりその構造も分かる。
【0088】
特にH−NMRを測定するために、試料の溶解性によってクロロホルム−d(Chloroform−d)又はジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide,DMSO)の溶媒を用いることができる。前記溶媒により前記ポリチオフェンメチルアセテートの構造を確認することができる。前記ポリチオフェンメチルアセテートは黄褐色粉末の形態を有してもよい。前記溶媒により前記ポリチオフェン酢酸の構造を確認することができる。ポリチオフェン酢酸は濃い褐色粉末の形態を有してもよい。前記溶媒により前記ポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェンの構造を確認することができる。ポリ(3−ポリエチレングリコールチオフェンは赤色粉末の形態を有してもよい。
【0089】
実験例2−高分子材料の電子伝導度の測定
前記実施例及び比較例で製造した高分子材料の厚さ及び四点プローブ(4−point probe)を用いた高分子材料の面抵抗を測定し、下記数学式(1)を用いて高分子材料の電子伝導度を測定し、その結果を表1に示した。
【0090】
【数1】
σ:電子伝導度
ρ:比抵抗
Rs:サンプルの面抵抗
t:サンプルの厚さ
【0091】
【表1】
【0092】
実験例3−総伝導度(total conductivity)の測定
前記実施例及び比較例でそれぞれ製造した高分子材料の溶液にリチウム塩としてLiTFSIを下記表2の割合で加え、前記実施例及び比較例と同様の方法で高分子材料を製造した。
【0093】
【表2】
【0094】
製造された高分子材料を電極セルに挟んでIM−6ex抵抗測定器(ZAHNER−Elektrik社)により、25℃、10mV、10〜10Hzの条件で抵抗を測定した。フィルムの厚さと抵抗により総伝導度を計算し、下記式によりイオン伝導度を求め、表3に示した。
総伝導度=イオン伝導度+電子伝導性
【0095】
【表3】
【0096】
実験の結果、実施例のイオン伝導度が比較例1に比べて優れていることが分かった。
【0097】
また、高分子材料に含まれるポリチオフェン系高分子であるP3PEGTの温度による総伝導度を測定し、図4に示した。図4を参照すれば、本発明の一実施例に係る高分子であるP3PEGTは、温度が増加するほど総伝導度が増加することを確認することができる。
図1
図2
図3
図4