特許第6966960号(P6966960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JX金属株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6966960-リチウムイオン電池廃棄物の処理方法 図000002
  • 特許6966960-リチウムイオン電池廃棄物の処理方法 図000003
  • 特許6966960-リチウムイオン電池廃棄物の処理方法 図000004
  • 特許6966960-リチウムイオン電池廃棄物の処理方法 図000005
  • 特許6966960-リチウムイオン電池廃棄物の処理方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966960
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20211108BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20211108BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20211108BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20211108BHJP
   C22B 15/02 20060101ALI20211108BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20211108BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   H01M10/54
   C22B7/00 C
   C22B23/00 102
   C22B47/00
   C22B15/02
   B09B3/00 ZZAB
   B09B5/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-40233(P2018-40233)
(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公開番号】特開2019-153561(P2019-153561A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡島 伸明
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−223264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 − 10/667
C22B 1/00 − 61/00
B09B 1/00 − 5/00
B09C 1/00 − 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池廃棄物を破砕するとともに篩別して処理する方法であって、
破砕機を用いてリチウムイオン電池廃棄物を破砕し、粉粒体を含むとともに1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%より多い量を占める破砕物を得る破砕工程、
前記破砕物を篩別し、前記破砕物を、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分ける篩別工程、ならびに、
前記中径粉粒体を破砕して再破砕物を得た後、前記再破砕物を篩別する再破砕篩別工程を含
前記再破砕篩別工程で、前記再破砕物を、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分け、
前記再破砕篩別工程を繰り返し行う、リチウムイオン電池廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記破砕工程及び篩別工程を1回目の破砕及び篩別とし、2回目以降の破砕及び篩別として前記再破砕篩別工程を繰り返し、当該破砕及び篩別の回数を、5回以上かつ10回以下とする、請求項に記載のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記小径粉粒体を、粒径が1mm以下であるものとし、前記中径粉粒体を、粒径が1mmより大きく且つ3.35mm以下であるものとし、前記大径粉粒体を、粒径が3.35mmより大きいものとする、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記小径粉粒体を、コバルト、ニッケル及びマンガンのうちの少なくとも一種を回収する回収工程に送る、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記大径粉粒体を銅製錬工程に送る、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記再破砕篩別工程で、破砕機を用いて前記中径粉粒体を破砕し、
前記破砕工程及び前記再破砕篩別工程で用いる前記破砕機を、クリアランスが15mm〜20mmである一軸もしくは二軸のローター回転式破砕機とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオン電池廃棄物を破砕するとともに篩別して処理するリチウムイオン電池廃棄物の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電子デバイスをはじめとして多くの産業分野で使用されているリチウムイオン電池の多くは、マンガン、ニッケルおよびコバルトを含有するリチウム金属塩を正極活物質として用い、その正極活物質を含む正極材及び負極材の周囲を、アルミニウムを含む筐体で包み込んだものであり、近年は、その使用量の増加および使用範囲の拡大に伴い、電池の製品寿命や製造過程での不良により廃棄される量が増大している状況にある。
かかる状況の下では、大量に廃棄されるリチウムイオン電池廃棄物から、上記のニッケルおよびコバルト等の有価金属を、再利用するべく比較的低コストで容易に回収することが望まれる。
【0003】
リチウムイオン電池廃棄物から有価金属の回収する方法の一例としては、はじめに、リチウムイオン電池廃棄物を焙焼し、焙焼したリチウムイオン電池廃棄物を破砕した後、その破砕物に対して篩別を行い、不純物である銅やアルミニウム等をある程度除去する。
次いで、篩別後の篩下に得られる粉末状の電池粉を浸出液に添加して浸出し、そこに含まれ得るリチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム等を溶液中に溶解させる。
【0004】
なおその後は、上述したように浸出して得られた浸出後液に溶解している各金属元素を分離させる。ここでは、浸出後液に浸出しているそれぞれの金属を分離させるため、たとえば、浸出後液に対し、分離させる金属に応じた複数段階の溶媒抽出等を施す。
【0005】
このような有価金属の回収方法のうち、リチウムイオン電池廃棄物の破砕や、破砕物の選別に関する技術としては、特許文献1に記載されたもの等がある。なお、その後の浸出、溶媒抽出等については、たとえば特許文献2、3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−195129号公報
【特許文献2】特開2005−149889号公報
【特許文献3】特開2009−193778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、リチウムイオン電池廃棄物を破砕するに当り、リチウムイオン電池廃棄物を極めて微小な粉粒体に粉砕した破砕物を得ると、銅等の不純物まで微細になって篩別の篩下に多く混入する。このような不純物を多く含む篩下の粉粒体を浸出した場合は、浸出液中に当該不純物も溶解し、その後の回収の際の不純物除去の負担が増大する。
この一方で、リチウムイオン電池廃棄物を粗く破砕して、比較的粗大な粉粒体を多く含む破砕物では、多くの有価金属も篩上に残留し、有価金属の回収率が低下する。
【0008】
なおここで、特許文献1には、「使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を数mm以下に破砕処理して電極材の集電体から活物質を剥離させ、この破砕混合物を篩分けして、集電体破砕物が主体の中粒物と活物質破砕物が主体の細粒物に分離し、該細粒物を回収する一方、該中粒物を比重選別してアルミニウム主体の軽量物と銅主体の重量物に分離して回収すること」、「正極材と負極材の混合物を粗破砕した粗破砕混合物をさらに二次破砕して、粒径が5mmより大きい粗粒物と、5mm以下〜0.5mm以上の中粒物と、0.5mm未満の細粒物に篩分けする」ことが記載されている。
【0009】
この特許文献1では、二次破砕で、粒径が5mmより大きい粗粒物と、5mm以下〜0.5mm以上の中粒物と、0.5mm未満の細粒物という大きさの異なる三種類に篩分けし、そのうちの中粒物は、そのまま又は粒度調整して比重選別することとしている。この場合、中粒物に含まれ得る比較的粗大な有価金属を回収できないので、その回収率を大きく向上させることはできない。
また特許文献1では、一次破砕(粗破砕)の後、二次破砕を行う前に、「風力選別や磁選などによって樹脂類や磁着物などを取り除く」という処理のみを行うこととしている。それ故に、上述したところと同様に、引用文献1に記載の一次破砕及び二次破砕の両破砕の程度が軽ければ、有価金属の回収率の低下が否めず、また両破砕の程度が重ければ、不純物除去の負担が増大する。
【0010】
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、篩別により所定の金属を有効に篩分けすることのできるリチウムイオン電池廃棄物の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討の結果、破砕工程で、比較的大きな粒径の粉粒体がある程度多く含まれる破砕物が得られるように、リチウムイオン電池廃棄物を破砕した後、その破砕物を、篩別工程で、少なくとも、粒径の大小が異なる小径粉粒体と中径粉粒体と大径粉粒体の三種類に篩分けし、さらにその後、そのうちの中径粉粒体に対して再度、破砕及び篩別を行う再破砕篩別工程を実施することにより、不純物の微細化を招くことなしに、所定の金属を篩下に有効に篩別できることを見出した。
【0012】
この知見の下、この発明のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法は、リチウムイオン電池廃棄物を破砕するとともに篩別して処理する方法であって、破砕機を用いてリチウムイオン電池廃棄物を破砕し、粉粒体を含むとともに1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%より多い量を占める破砕物を得る破砕工程、前記破砕物を篩別し、前記破砕物を、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分ける篩別工程、ならびに、前記中径粉粒体を破砕して再破砕物を得た後、前記再破砕物を篩別する再破砕篩別工程を含み、前記再破砕篩別工程で、前記再破砕物を、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分け、前記再破砕篩別工程を繰り返し行うというものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法によれば、破砕機を用いてリチウムイオン電池廃棄物を破砕し、1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%より多い量を占める破砕物を得る破砕工程、その破砕物を小径粉粒体と中径粉粒体と大径粉粒体とに篩別する篩別工程、ならびに、中径粉粒体を破砕して再破砕物を得た後、前記再破砕物を篩別する再破砕篩別工程を含むことにより、所定の金属を有効に篩分けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一の実施形態に係るリチウムイオン電池廃棄物の処理方法を用いることができる一連のプロセスを示すフロー図である。
図2】比較例のプロセスを示すフロー図である。
図3】発明例のプロセスを示すフロー図である。
図4】発明例の破砕回数の増加に伴うCoの積算分配率及びCuの積算分配率の変化をそれぞれ示すグラフである。
図5】発明例の破砕回数の増加に伴うCo及びCuのそれぞれの積算品位を、積算処理量比率とともに示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係るリチウムイオン電池廃棄物の処理方法は、リチウムイオン電池廃棄物を破砕するとともに篩別して処理するに当り、破砕機を用いてリチウムイオン電池廃棄物を破砕し、粉粒体を含む破砕物を得る破砕工程と、その破砕物を篩別する篩別工程と、さらに再度破砕および篩別する篩別工程とを含むものである。
【0016】
特にここでは、破砕工程で、所定の破砕機を用いること等により、1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%より多い量を占める破砕物を得ること、ならびに、篩別工程で、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分けることが肝要である。そして、再破砕篩別工程では、篩別工程で得られた中径粉粒体を破砕して再破砕物を得た後に、再破砕物を篩別する。
この実施形態は、図1に例示する一連のプロセスに用いることができる。ここでは、このプロセスに沿って各工程等について詳説する。
【0017】
(リチウムイオン電池廃棄物)
この実施形態で対象とするリチウムイオン電池廃棄物は、携帯電話その他の種々の電子機器、自動車等の様々な機械ないし装置で使用され得るリチウムイオン電池の廃棄物である。より具体的は、たとえば、電池製品の寿命や製造不良またはその他の理由によって廃棄もしくは回収されたもの等であり、このようなリチウムイオン電池廃棄物を対象とすることにより、資源の有効活用を図ることができる。
【0018】
リチウムイオン電池廃棄物には、マンガン、ニッケル及びコバルトを含有するリチウム金属塩である正極活物質の他、カーボン、鉄及び銅を含む負極材や、正極活物質が、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)その他の有機バインダー等によって塗布されて固着されたアルミニウム箔(正極基材)、リチウムイオン電池廃棄物の周囲を包み込む外装としてのアルミニウムを含む筐体が含まれることがある。具体的には、リチウムイオン電池には、正極活物質を構成するリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンのうちの一種の元素からなる単独金属酸化物および/または、二種以上の元素からなる複合金属酸化物、並びに、アルミニウム、銅、鉄、カーボン等が含まれ得る。
【0019】
筐体で包み込まれたリチウムイオン電池廃棄物は、実質的に正方形もしくは長方形状の平面輪郭形状を有するものとすることができ、この場合、処理前の寸法として、たとえば、縦が40mm〜80mm、横が35mm〜65mm、厚みが4mm〜5mmのものを対象とすることができるが、このような寸法形状のものに限定されない。
【0020】
(焙焼工程)
焙焼工程では、上記のリチウムイオン電池廃棄物に対して焙焼処理を施す。この焙焼工程は、リチウムイオン電池廃棄物の温度を上昇させ、内部の電解液を除去して無害化すること、ならびに、一般には、アルミニウム箔と正極活物質を結着させているバインダーを分解し、破砕・篩別時のアルミニウム箔と正極活物質の分離を促進して篩下に回収される正極活物質の回収率を高くし、さらには、リチウムイオン電池廃棄物に含まれる有価金属を、浸出工程で浸出させやすい形態に変化させること等を目的として行う。
【0021】
焙焼工程では通常、リチウムイオン電池廃棄物を、450℃以上に維持して加熱する。それにより、正極活物質のリチウム金属塩(コバルト系の場合はLiCoO2)が分解され、多くのコバルトを、酸浸出しやすい酸化コバルト(CoO)や単体コバルトの形態とすることができる。一方、この際の温度が高すぎると、融点が660℃のアルミニウムが融解するので、温度は、たとえば、リチウムイオン電池廃棄物の筐体の表面温度で測って、450℃〜650℃程度とし、この温度を20分〜120分程度維持することができる。
なお、焙焼工程は省略することも可能である。
【0022】
(破砕工程)
次いで、一般にリチウムイオン電池廃棄物の筐体を破壊するとともに、リチウムイオン電池廃棄物を、所定の小さな粉粒体からなる破砕物にするため、破砕工程を行う。
この破砕工程では、1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%より多い量を占める破砕物が得られるように、破砕機の種類やその他の破砕条件を選定する。
【0023】
このように大きな粒径の粉粒体が所定の量で含まれるように比較的弱い破砕力で、リチウムイオン電池廃棄物を破砕することにより、リチウムイオン電池廃棄物中に銅箔等としてメタルの形態で含まれることが多い不純物である銅は、破砕が進行せず、ある程度大きな粒径の粉粒体となる。一方、リチウムイオン電池廃棄物中に酸化物の形態で含まれ得るコバルト等の有価金属は、そのような弱い破砕力であっても、十分小さく粉砕されるので、比較的小さな粒径の粉粒体となる。それにより、後述の篩別工程で、これらを有効に分離することができる。
【0024】
リチウムイオン電池廃棄物を破砕機で破砕して得られる破砕物は、主として粉粒体からなるものであり、該粉粒体は、一般には0.005mm〜20mm、典型的には0.010mm〜5mmの粒径を有することがある。
【0025】
そして、このような粉粒体を含む破砕物は、粒径が1mmより大きい粉粒体の、粉粒体全体に占める割合を、質量分率で26.3%より多いものとする。粒径が1mmを超える粉粒体が26.3%以下であると、破砕力が強すぎる結果として、コバルト等の有価金属のみならず銅等の不純物も小さく粉砕されていると推測され、それにより、後の篩別工程の篩下への不純物混入量が増大することが多いと考えられる。この観点から、破砕物は、粒径が1mmより大きい粉粒体が、粉粒体全体に対して26.3%より多く含まれていることが好ましい。
【0026】
なお、この明細書及び特許請求の範囲で、所定の粒径より大きい粉粒体というときは、その粒径に対応する大きさの篩目を通過しない粉粒体のことを意味し、また、所定の粒径以下の粉粒体というときは、その粒径に対応する大きさの篩目を通過する粉粒体のことを意味する。したがって、たとえば、粒径が1mmより大きい粉粒体とは、目開き1mmの篩を通過しない粉粒体である。この篩は、JIS Z8810に規定される標準ふるいであるが、特に限定しない。
【0027】
破砕工程で用いる破砕機は、種々の装置ないし機器とすることができるが、特に、一軸もしくは二軸のローター回転式破砕機とすることが好適である。このようなローター回転式破砕機は、リチウムイオン電池廃棄物を弱い破砕力で破砕することができるので、メタル等の銅を大きな粒径の粉粒体としつつ、酸化物であることが多いコバルトその他の有価金属を十分細かく粉砕して、後の篩別工程でこれらをより有効に分離することが可能になる。
【0028】
さらに、一軸もしくは二軸のローター回転式破砕機のクリアランスは、15mm〜20mmであることが好ましい。クリアランスが15mm未満である場合は必要処理時間が増加し、作業効率が低下することが懸念され、この一方で、20mmを超える場合は、有価金属の破砕効率が低下するおそれがある。ここでいうクリアランスとは、刃と刃の隙間を意味する。
【0029】
但し、上述したように1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%を超える破砕物が得られるものであれば、他の破砕機を用いることも可能である。他の破砕機としては、たとえば、リチウムイオン電池廃棄物を切断しながら衝撃を加えて破砕することのできる衝撃式のもの、具体的には、サンプルミル、ハンマーミル、ピンミル、ウィングミル、トルネードミル、ハンマークラッシャ等を挙げることができる。
なお、破砕機の出口にはスクリーンを設置することができ、それにより、リチウムイオン電池廃棄物は、スクリーンを通過できる程度の大きさにまで粉砕されると破砕機よりスクリーンを通じて排出される。
【0030】
(篩別工程)
上述したような破砕工程を経た後、そこで得られた破砕物に対して、所定の篩を用いて篩別工程を行う。
篩別工程では、図1に示すように、破砕物を、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分離する。
【0031】
ここでは、先の破砕工程により銅等の不純物は比較的大きな粒径の粉粒体となり、またコバルト等の有価金属は比較的小さな粒径の粉粒体となっているので、当該不純物の多くは上記の大径粉粒体として分離される一方で、有価金属の多くは上記の小径粉粒体として分離される。また中径粉粒体として分離されるものには、不純物や有価金属が混在していることから、この中径粉粒体に対してはさらに後述の再破砕篩別工程を行う。図1に例示するように、有価金属が多く含まれる小径粉粒体は、かかる有価金属を回収するための回収工程に送ることができ、また主として銅等の不純物が多く含まれる大径粉粒体は、銅製錬工程に送ることができる。
【0032】
小径粉粒体と中径粉粒体との境界とする小径粉粒体の粒径の上限値は、5mm〜0.1mmに設定することが好ましい。小径粉粒体の粒径の上限値が小さすぎると、ある程度微小となった有価金属も中径粉粒体に含まれることとなり、これを回収するための後の再破砕篩別工程の負荷が増大するおそれがある。一方、小径粉粒体の粒径の上限値が大きすぎると、比較的多くの不純物が小径粉粒体に含まれる可能性を否めず、この場合、回収工程での当該不純物の除去の負担をそれほど有効に削減できないことが懸念される。
【0033】
また、中径粉粒体と大径粉粒体との境界とする中径粉粒体の粒径の上限値は、20mm〜5mmに設定することが好ましい。中径粉粒体の粒径の上限値を小さくすると、大径粉粒体に多くの有価金属が含まれることが考えられ、その回収率を十分に向上できないと推測される。また中径粉粒体の粒径の上限値を大きくすれば、中径粉粒体に比較的粗大な不純物が含まれる結果として、再破砕篩別工程の負荷が増大する可能性がある。
【0034】
上述したような観点から、特に、小径粉粒体は粒径が1mm以下であるものとし、中径粉粒体は粒径が1mmより大きく且つ3.35mm以下であるものとし、大径粉粒体は粒径が3.35mmより大きいものとすることが最も好ましい。
なお、破砕物を小径粉粒体と中径粉粒体と大径粉粒体に分離させるには、先に述べたように所定の篩目の篩を用いて行うことができる。
【0035】
なおここでは、破砕物を小径粉粒体、中径粉粒体、大径粉粒体の三種類に分けることを例として説明したが、たとえば、小径粉粒体、中径粉粒体及び大径粉粒体のうちの少なくとも一種をさらにその粒径の大小で区分けし、四種類以上に分けてもよい。この場合、粒径が相対的に小さい小径粉粒体、粒径が相対的に大きい大径粉粒体、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とそれぞれみなすことのできる各粉粒体に対して、上述した所定の処理を施すことができる。
【0036】
(再破砕篩別工程)
再破砕篩別工程では、中径粉粒体をさらに破砕し、それにより得られる再破砕物を所定の粒径で篩別する。そして、この再度の破砕及び篩別で得られる複数種類の粉粒体のそれぞれについて、回収工程、銅製錬工程、場合によっては更なる再破砕篩別工程のそれぞれを行うことができ、この場合、銅等の不純物を効果的に除去することができて、コバルト等の有価金属の回収率を有効に高めることができる。
【0037】
再破砕篩別工程の破砕では、先述の破砕工程と同様の破砕機を用いることができる。そして、この破砕により、破砕工程とほぼ同様に、1mmより大きな粒径の粉粒体が粉粒体全体の26.3%より多い量を占める再破砕物を得ることが好ましい。
但し、再破砕篩別工程で、破砕工程とは異なる破砕機を用いることも可能である。
【0038】
再破砕篩別工程の篩別では、上記の再破砕物を、篩別工程と同様に、少なくとも、粒径が相対的に小さい小径粉粒体と、粒径が相対的に大きい大径粉粒体と、粒径が前記小径粉粒体と前記大径粉粒体との中間である中径粉粒体とに分けることが好適である。したがって、ここでは、篩別工程と同じ篩を用いることができる。
特に、小径粉粒体を、粒径が1mm以下であるものとし、中径粉粒体を、粒径が1mmより大きく且つ3.35mm以下であるものとし、大径粉粒体を、粒径が3.35mmより大きいものとすることが好ましい。
【0039】
この場合、ここで得られた粉粒体のうち、小径粉粒体は回収工程に、また大径粉粒体は銅製錬工程に送ることができる。中径粉粒体に対しては、再度の再破砕篩別工程を行うことが、有価金属の回収率向上及び不純物除去の観点から好適である。つまり、中径粉粒体について再破砕篩別工程を繰り返し行うことにより、コバルト等の回収率がさらに有意に向上するとともに、銅等がより一層効果的に除去される。
【0040】
この一方で、再破砕篩別工程を多くしすぎても、作業工数及び時間が増大するにもかかわらず、それほど効果が見込まれなくなる。したがって、先述した破砕工程及び篩別工程を1回目の破砕及び篩別とし、再破砕篩別工程を2回目以降の破砕及び篩別として数えた場合、当該破砕及び篩別の回数は、2回以上かつ10回以下とすることが好ましい。より好ましくは、再破砕篩別工程の繰り返し回数を、5回以上かつ8回以下とする。なお、最後の再破砕篩別工程で中径粉粒体として分類された粉粒体は、大径粉粒体と同様に銅製錬工程に送ることができる。
【0041】
(回収工程)
上述したようにして得られる小径粉粒体について回収工程を行うことができ、この回収工程では、その小径粉粒体に対し、コバルト、ニッケル及びマンガンから選択される少なくとも一種を回収するための所定の処理を施す。
ここでは、かかる金属を回収するための各種の処理を採用することができるが、その一例としては、たとえば、小径粉粒体を含む電池粉を浸出液に添加して浸出し、その浸出後液に対して複数段階の溶媒抽出もしくは中和等を施し、各段階で得られた溶液に対して、逆抽出、電解、炭酸化等を行うことができる。
【実施例】
【0042】
次に、この発明のリチウムイオン電池廃棄物の処理方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
【0043】
(比較例)
図2に示すように、リチウムイオン電池廃棄物を焙焼して得られたリチウムイオン電池焙焼残渣に対し、二軸のローター回転式破砕機を用いた破砕および、目開きが1mmの篩を用いた篩別を順次に行い、粒径が1mm以下である小径粉粒体と、粒径が1mmより大きい大径粉粒体を得た。小径粉粒体及び大径粉粒体中の各金属の品位は図2に示すとおりであった。
【0044】
(発明例)
図3に示すように、比較例と同一のリチウムイオン電池焙焼残渣に対し、二軸のローター回転式破砕機を用いた破砕および、目開きが1mm及び3.35mmの各篩を用いた篩別を順次に行い、粒径が1mm以下である小径粉粒体と、粒径が1mmより大きく且つ3.35mm以下である中径粉粒体と、粒径が3.35mmより大きい大径粉粒体を得た。小径粉粒体、中径粉粒体及び大径粉粒体中の各金属の品位は図3に示すとおりであった。
【0045】
このうちの中径粉粒体について再度、同様の破砕及び篩別を順次に行うことを繰り返し、その破砕回数を重ねる度に、小径粉粒体、中径粉粒体、大径粉粒体の重量および、Co、Cu品位を測定した。その結果を図4、5にグラフで示す。なお、図4中の積算分配率は、破砕回数2回以後は、前回の中径粉粒体を破砕後、篩別した試料を、積み重ねた重量百分率を意味し、図5中の積算処理量比率は、1回目の破砕物量を1とし、繰り返した中径粉粒体重量を積み重ねた重量比率を意味する。
【0046】
図4、5に示す結果より、発明例では、破砕回数の増大に伴い、Co分配率が45.1%から87.8%に増大するとともに、積算Cu品位が8.7%から6.6%に低減されているので、後の回収工程の負荷の増大を有効に抑制できることが解かる。
したがって、この例では、Co生産量を42.7%向上できることが解かった。
図1
図2
図3
図4
図5