特許第6967596号(P6967596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967596接合ウエハ構造を分離する劈開システム、取り付け可能な劈開モニタシステム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967596
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】接合ウエハ構造を分離する劈開システム、取り付け可能な劈開モニタシステム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20211108BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20211108BHJP
   G01H 11/08 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H01L27/12 B
   G01H11/08 D
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-538606(P2019-538606)
(86)(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公表番号】特表2020-507206(P2020-507206A)
(43)【公表日】2020年3月5日
(86)【国際出願番号】US2018013820
(87)【国際公開番号】WO2018136399
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2021年1月15日
(31)【優先権主張番号】62/449,251
(32)【優先日】2017年1月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・スコット・カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フランシス・バレー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ディーン・イーオフ
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−520838(JP,A)
【文献】 特開2008−285397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/762
H01L 27/12−13
B23K 20/00−26
B28D 5/00
G01H 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合ウエハ構造を分離する劈開システムであって、
劈開面に沿って、接合ウエハ構造を劈開する劈開装置と、
劈開中、前記接合ウエハ構造から放出された音を感知し、感知した音に応答して出力を生成する音センサと、
前記音センサの出力の少なくとも一部に基づいて、劈開の特性に関する計量を生成するように構成されたコントローラと、
前記接合ウエハ構造を劈開するための劈開シーケンスが開始したときを検知し、劈開中、前記接合ウエハ構造によって作り出された音を記録することを引き起こすためのトリガセンサであって、前記トリガセンサは、光電センサまたはリミットスイッチである、前記トリガセンサと、を備える劈開システム。
【請求項2】
前記計量は、劈開中に発生されたオーディオパワープロファイルに由来する、請求項1に記載の劈開システム。
【請求項3】
前記劈開装置は、接合ウエハ構造の伝播劈開を作り出すように構成された請求項1または2に記載の劈開システム。
【請求項4】
前記劈開装置は、熱劈開装置である、請求項1または2に記載の劈開システム。
【請求項5】
さらに前記音センサによって感知された音をデータに変換するためのアナログデジタルコンバータを備え、
前記計量は、前記アナログデジタルコンバータによって生成されたデータの少なくとも一部に基づくコントローラによって生成された劈開の特性に関する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の劈開システム。
【請求項6】
接合ウエハ構造を分離するための劈開装置にシステムを取り付けるためのブラケットと、
劈開中、接合ウエハ構造から放出される音を感知する音センサであって、前記音センサは、前記ブラケットに取り付けられる、前記音センサと、
前記接合ウエハ構造を劈開するための劈開シーケンスが開始したときを検知し、劈開中、接合ウエハ構造によって作り出された音を記録することを引き起こすためのトリガセンサであって、前記トリガセンサは、前記ブラケットに取り付けられ、前記トリガセンサは、光電センサまたはリミットスイッチである、前記トリガセンサと、を備える、取り付け可能な劈開モニタシステム。
【請求項7】
接合ウエハ構造を分離する方法であって、
前記接合ウエハ構造を劈開するステップと、
前記接合ウエハ構造を劈開するための劈開シーケンスが開始したときを検知して、劈開中、前記接合ウエハ構造によって作り出された音を記録することを引き起こすステップであって、前記劈開シーケンスは、トリガセンサによって検知され、前記トリガセンサは、光電センサまたはリミットスイッチである、記録することを引き起こすステップと、
劈開中及び劈開シーケンスが前記トリガセンサによって検知された後、前記接合ウエハ構造から放出された音を音センサによって感知するステップと、
感知した音に基づいて劈開の特性に関する計量を生成するステップと、を備える方法。
【請求項8】
生成した前記計量に基づいて後に劈開される接合ウエハ構造の劈開の品質を改善する劈開制御パラメータを調整するステップと、を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記計量は、劈開中に発生したオーディオパワープロファイルに由来する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記計量は、劈開トリガと劈開の開始の遅延、劈開の期間、平均パワー、最大パワー、最大パワーが起こる頻度、パワーの標準偏差、パワー振動の大きさ、しきい値パワー未満の劈開時間、しきい値パワー未満の最大シングルくぼみ時間及びしきい値パワー未満のパワーくぼみの数からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記接合ウエハ構造を劈開するための劈開シーケンスが開始したときを検知するステップを備え、前記劈開シーケンスが開始したことを前記トリガセンサが検知すると、前記音が前記音センサによって感知される、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
接合ウエハ構造を分離する方法であって、
前記接合ウエハ構造を劈開するステップであって、前記接合ウエハ構造を劈開するステップは分離が前記接合ウエハ構造の最先端から最先端と反対の後縁に向かって進行することによって生じる機械的な劈開プロセスによって第2の構造から第1の構造を分離するステップを備える、劈開するステップと、
前記機械的な劈開プロセスによって前記第2の構造から前記第1の構造を分離しながら、音センサによって前記接合ウエハ構造から放出された音を感知するステップと、
前記機械的な劈開プロセスによって前記第2の構造から前記第1の構造を分離しながら、感知された音に基づく劈開の特性に関する計量を生成するステップと、を備える方法。
【請求項13】
生成した前記計量に基づいて後に劈開される接合ウエハ構造の劈開の品質を改善するために劈開制御パラメータを調整するステップを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記計量は、劈開中に発生したオーディオパワープロファイルに由来する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記接合ウエハ構造を劈開するために劈開シーケンスが開始したときを検知するステップを備え、
前記劈開シーケンスが開始することをトリガセンサが検知すると、前記音が前記音センサによって感知される、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
感知された音をデータに変換するステップを備え、
前記計量は、前記データに基づく劈開の特性に関する、請求項12乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記機械的な劈開プロセスは、劈開を伝播するために前記接合ウエハ構造の最先端においてブレードまたは機械的なくさびを備える、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
接合ウエハ構造を分離する劈開システムであって、
劈開面に沿って前記接合ウエハ構造を劈開するための劈開装置であって、前記劈開装置は、前記接合ウエハ構造を劈開するために前記接合ウエハ構造に機械的な力を加えるために1またはそれ以上の吸引カップを備える、前記劈開装置と、
劈開中、前記接合ウエハ構造から放出された音を感知し、感知された音に応答して出力を生成するための音センサと、
音センサの出力の少なくとも一部に基づいて劈開の特性に関する計量を生成するように構成されたコントローラと、を備える劈開システム。
【請求項19】
前記劈開装置は、前記接合ウエハ構造の伝播劈開を作り出すように構成された機械的な劈開装置である、請求項18に記載の劈開システム。
【請求項20】
前記劈開装置は、前記接合ウエハ構造の端部において前記劈開を伝播するためのブレードまたは機械的なくさびを備える、請求項18または19に記載の劈開システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月23日に出願された、米国仮特許出願62/449,251の利益を主張し、その全てを援用する。
【0002】
本開示の分野は、接合ウエハ構造を分離する劈開システム、取り付け可能な劈開モニタシステム及び接合ウエハ構造を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコンオンインシュレータ構造(「SOI構造」)は、一般にハンドルウエハ、シリコン層(また「装置層」として特徴付けられる)、及びハンドルウエハとシリコン層の間の誘電体層(例えば酸化物層など)を含む。多くのシリコン半導体装置設計は、バルクシリコン研磨ウエハまたはエピタキシャル層で被覆された基板よりむしろSOI基板を用いることから利益を得られる。大量生産の際の用途は、通常装置層の改善された絶縁から得られ、装置内の隣接したセル間の電磁クロストークを減らした、高帯域幅トランジスタを可能にする。
【0004】
SOI構造は、チョクラルスキ(Cz)法で成長された単結晶シリコンインゴットからスライスされたシリコンウエハから準備される。SOI基板を準備するための1つの方法において、誘電体層は、ドナーウエハの研磨された前面に堆積される。イオンは、特定の注入深さにドナーウエハの損傷層を形成するために、ドナーウエハの前面の下の特定の深さに注入される。ドナーウエハの前面は、その後ハンドルウエハに接合され、2つのウエハは、接合ウエハペアを形成するために押圧される。接合ウエハペアは、その後損傷層内の劈開面に沿って劈開され、損傷層未満のドナーウエハの部分を取り除き、ハンドル層の上に薄いシリコン層(すなわち装置層)を残して、SOIが積層された基板を形成する。
【発明の概要】
【0005】
劈開が、劈開が開始する最先端から接合ウエハが完全に分離する後縁に向かって、進行するので、接合ウエハペアの機械的な劈開は、不均一な装置層厚さをもたらす。さらに、時には、劈開は、失敗し、接合ウエハ構造は、所望の劈開面に沿って劈開されないまたは接合ウエハ構造は、全く劈開しない。劈開の変動は、従来下流のプロセスで操作者の観測によりモニタされ、劈開においてまたはその上流において適切なプロセスをモニタし、調整するために、タイムリーにフィードバックを提供できない。
【0006】
劈開プロセスの品質に関し、相対的に素早いフィードバックを提供する及び/または劈開プロセスが後の劈開において調整される、接合ウエハ構造を分離する劈開システム及び方法の必要がある。劈開プロセスがよりモニタできる、存在する劈開器具に取り付け可能である劈開モニタシステムの必要もある。
【0007】
この部分は、読み手を、記載され及び/または以下に請求される本開示の様々な態様に関する技術分野の様々な態様に導入する意図がある。本議論は、本開示の様々な態様のよりよい理解を促進するための背景情報を読み手に提供する際に手助けとなると信じられる。したがって、これらの陳述は、この参照であって、従来技術の自白として読まれるべきでないと理解されるべきである。
【0008】
本開示の1つの態様は、接合ウエハ構造を分離するための劈開システムに関する。劈開システムは、劈開面に沿った接合ウエハ構造を劈開する劈開装置を含む。劈開システムは、劈開中接合ウエハ構造から放出された音を感知し、感知された音に応答して出力を生成する音センサを含む。劈開システムは、また音センサの出力の少なくとも一部に基づいて劈開の特性に関する計量を生成するように構成されたコントローラを含む。
【0009】
本開示の別の態様は、取り付け可能な劈開モニタシステムに関する。システムは、接合ウエハ構造を分離するための劈開装置にシステムを取り付けるブラケットを含む。システムは、劈開中接合ウエハ構造から放出された音を感知する音センサを含む。音センサはブラケットに取り付けられる。劈開モニタシステムは、また接合ウエハ構造を劈開するために劈開シーケンスが開始したときを検知し、劈開中、接合ウエハ構造によって作り出された音を記録することを引き起こすためのトリガセンサを含む。トリガセンサは、ブラケットに取り付けられる。
【0010】
また、本開示のさらなる態様は、接合ウエハ構造を分離する方法に関する。接合ウエハ構造は、劈開され、劈開中の接合ウエハ構造から放出された音は、感知される。劈開の特性に関する計量は、感知された音に基づいて生成される。
【0011】
本開示の上述の態様に関して記載された特徴の様々な改良は、存在する。さらなる特徴は、またその上、本開示の上述の態様に組み込まれることもできる。これらの改良及び追加の特徴は、個々にまたは任意の組み合わせで存在することができる。例えば、本開示の描かれた実施形態のいずれかに関して、以下に議論される様々な特徴は、単独または任意の組み合わせで、本開示の上述の態様の何れかに組み込まれることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】劈開面に沿った接合ウエハ構造を分離する劈開システムの概略図である。
図2】そこに誘電体層を備えるドナーウエハを有するドナー構造の断面図である。
図3】そこにイオン注入中のドナー構造の断面図である。
図4】ハンドル構造へ接合されたドナー構造の断面図である。
図5】劈開面においてドナー構造を劈開する際の接合ウエハ構造の断面図である。
図6】劈開を伝播するための吸引カップとブレードを有する接合ウエハ構造の断面図である。
図7】アナログデジタルコンバータを有する、劈開面に沿って接合ウエハ構造を分離する別の劈開システムの概略図である。
図8】プリアンプユニットを有する、劈開面に沿って接合ウエハ構造を分離する別の劈開システムの概略図である。
図9】トリガセンサを有する、劈開面に沿って接合ウエハ構造を分離する別の劈開システムの概略図である。
図10】取り付け可能な劈開モニタシステムの概略斜視図である。
図11】2つのステーション劈開器具の劈開装置に取り付けられた2つの取り付け可能な劈開モニタシステムの概略斜視図である。
図12】単一のステーション劈開器具に取り付けられた取り付け可能な劈開モニタシステムの別の実施形態の概略斜視図である。
図13】接合ウエハ構造の劈開の間の生のオーディオ信号である。
図14】生のオーディオ信号のパワープロファイルである。
図15】劈開の開始近くのパワープロファイルである。
図16】劈開の終わり近くのパワープロファイルである。
図17】しきい値へ正規化された生の劈開オーディオである。
図18】オーディオデータのオーディオパワースペクトルである。
図19】劈開における時間の関数としたオーディオパワープロファイルである。
図20】パワースペクトルのグレースケールマップである。
図21】劈開後の構造のフィルタされた上部シリコン膜厚さデータマップに相互に関連する図19のパワープロファイルを示し、及び劈開構造のフィルタされた上部シリコン膜厚さデータマップの厚さ円弧に相互に関連するくぼみを備える別の劈開のパワープロファイルを示す。
図22】接合ウエハ構造の別の劈開のパワープロファイルである。
図23】接合ウエハ構造の劈開のパワースペクトルのグレースケールマップである。
図24】劈開構造のフィルタされた上部シリコン膜厚さデータマップの厚さ円弧に相互に関連するくぼみを備える接合ウエハ構造の別の劈開のパワープロファイルである。
図25】成功した劈開のオーディオパワープロファイルである。
図26】上部シリコン層が転置されない劈開のオーディオパワープロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対応する符号は、図を通して対応する部分を示す。
【0014】
図1を参照しながら、接合ウエハ構造を分離する劈開システム100は、概略的に示される。劈開システム100は、接合ウエハ構造を劈開する劈開装置110と、劈開中接合ウエハ構造から放出される音を感知する音センサ120を含む。
【0015】
劈開装置110によって処理される接合ウエハ構造は、2つの異なる構造に構造を分離することが望ましい、任意の半導体構造を含む。いくつかの実施形態において、処理される構造は、絶縁構造のシリコンを準備するために用いられる接合ウエハ構造である。そのような接合構造は、ハンドルウエハ、ドナーウエハ及びハンドルウエハとドナーウエハの間に配置された誘電体層を含むことができる。下記の事項は、単に接合ウエハ構造を処理するための方法とシステムの1つの実施例である。
【0016】
接合ウエハ構造を形成するためにハンドル構造に接合されるドナー構造30の実施例(図2)は、図2で示される。ドナー構造30は、ドナーウエハ12の前面に堆積された誘電体層15とともに形成されることができる。誘電体層は、ハンドルウエハ上に成長されるまたは堆積されるまたは誘電体層は、ドナーウエハ及びハンドルウエハの両方の上に成長されること、及びこれらの構造は、制限なく様々な配置のいずれかで接合されることができることが理解されるべきである。適切なドナーウエハ12は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウムガリウム及びそれらの任意の組み合わせからなる。いくつかの実施形態において、ドナーウエハは、単結晶シリコンからなる。
【0017】
誘電体層15は、例えばSiO、Si、酸化アルミニウム、または酸化マグネシウムを備える材料など、SOI構造で用いられるのに適した、任意の電気絶縁材料であることができる。いくつかの実施形態において、誘電体層15は、SiOである(すなわち、誘電体層は、本質的にSiOからなる)。誘電体層15は、例えば熱酸化、ウェット酸化、熱窒化またはこれらの技術の組み合わせなど、当該技術分野で既知の任意の技術によって適用されることができる。この関連で、積層された半導体構造は、本明細書で誘電体層を有するとして記載されることができる一方で、いくつかの実施形態において、誘電体層は、排除され(すなわち、誘電体層は、接合前にドナーウエハまたはハンドルウエハに堆積されない)、ハンドルウエハとドナーウエハは、「直接接合」されることが理解されるべきである。本明細書におけるそのような誘電体層への言及は、限定的な意味で考慮されるべきでない。当該技術分野で当業者に知られた多くの技術のいずれか1つは、そのような直接接合構造を作り出すために用いられることができる。そのような実施形態において、ドナー構造の接合表面は、ドナーウエハ自身の表面である。
【0018】
図3の実施例で示されるように、イオン(例えば水素原子、ヘリウム原子または水素及びヘリウム原子の組み合わせ)は、劈開面17を画定するためにドナー構造の前面22の下の実質的に均一な特定の深さにおいて注入されることができる。ヘリウム及び水素イオンが劈開面を形成するために構造に共注入されるとき、それらは、同時にまたは連続して注入されることができることに留意すべきである。いくつかの実施形態において、イオンは、誘電体層15の堆積前に注入される。注入が誘電体層15の堆積前に実行されたとき、ドナーウエハ上の誘電体層の次の成長または堆積は、ドナー層の面17に沿った早すぎる分離または劈開(すなわちウエハ接合プロセスステップの前)を防ぐために十分に低い温度で適切に実行される。ハンドル構造は、例えばシリコン、炭化シリコン、サファイア、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウムガリウム、石英及びそれらの組み合わせなどの多層構造を準備するための適切な任意の材料から得られるハンドルウエハを含むことができる。ハンドル構造10(図4)は、ハンドルウエハ上に堆積された誘電体層を含むまたは他の実施形態におけるように、ハンドルウエハのみからなる(すなわち誘電体層を含まない)。ハンドルウエハ及びドナーウエハは、単結晶シリコンウエハであることができ、従来のチョクラルスキ結晶成長法によって成長された単結晶インゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハであることができる。
【0019】
図4で示されるように、ドナー構造の誘電体層15の前面は、適切に接合プロセスによって接合ウエハ構造20を形成するために、ハンドル構造10の前面に接合される。誘電体層15及びハンドル構造10は、例えば酸素または窒素を含むプラズマに構造の表面をさらすことによって表面活性を実行されながらともに接合される。ウエハは、その後、ともに押圧され、接合界面18の接合は、その間に形成される。一般的に言えば、接合界面の形成を達成するために用いられるエネルギが、接合界面の完全性が、後のプロセス中(すなわち、ドナーウエハの劈開または分離面17にそった分離による層転置)維持されることを確実にするために十分であるかぎり、ウエハ接合は、当該技術分野で既知の任意の技術を本質的に用いて達成できる。準備されるとすぐに、接合ウエハ構造20は、積層された半導体構造を形成するために、接合構造から劈開面に沿ってドナーウエハの一部を分離(すなわち劈開)するために劈開装置110(図1)に置かれる。一般的に言えば、劈開装置110は、例えば熱的及び/または機械的誘導劈開技術など、当該技術分野で既知の技術を用いてこの裂け目を誘導することができる。
【0020】
図5を参照しながら,分離の際に、2つの構造30、31が形成される。接合ウエハ構造20の分離は、ドナー構造12の劈開面17に沿って起こるので(図4)、ドナー構造の一部は、両方の構造の一部に残る(すなわち、ドナーウエハの一部は、誘電体層とともに転置される)。構造30は、ドナーウエハの一部を備える。構造31は、SOI構造であり、ハンドル層10、誘電体層15及び誘電体層15上に配置された装置層25(劈開後残るドナーウエハの一部)を含む。ドナー構造及びハンドル構造の両方が誘電体層を含む実施形態において、誘電体層は、SOI構造の誘電体層15を形成するために結びつく。積層された半導体構造(すなわちドナーウエハの薄い装置層)の劈開面は、追加のプロセスによって滑らかにされることができる粗い表面を有する。構造31は、そこに装置製造のための望まれた特徴を有する装置層表面を作り出すための追加のプロセスを受けることができる。劈開面に沿って接合ウエハ構造を分離するために用いられる劈開装置110は、分離が、単独でまたはアニールを加えて、機械的な力によって誘導されまたは達成される機械劈開装置である。例えば、接合構造は、機械的な力が接合構造から離れてドナー構造の一部を引くために、接合構造の反対側に垂直に与えられた治具に置かれる。
【0021】
図6で示されるように、実施例の劈開装置は、接合ウエハ構造20の劈開の最先端の近くに機械的な力を与える吸引カップ60を含む。ドナーウエハの一部の分離は、劈開面17に沿ったクラックの伝播を始めるために、劈開面17における接合ウエハの端部において機械的なくさびまたはブレード65を適用することによって開始される。吸引カップ60によって適用された機械的な力は、その後、接合構造からドナー構造の一部を引っ張り、それゆえSOI構造を形成する。機械劈開装置は、例えばSilicon Genesis Corporation(カリフォルニア州、サンノゼ)からthe Debond & Cleave Toolsとして市販されている。
【0022】
代わりの実施形態において、劈開装置110は、裂け目が接合構造をアニールすることによって達成される熱劈開装置である。例えば、熱的劈開は、不活性(例えばアルゴンまたは窒素)雰囲気または大気条件下で、少なくとも約10秒間、少なくとも約1分間、少なくとも約15分間、少なくとも約1時間またはさらに少なくとも約3時間、約200℃から約800℃、または約250℃から約650℃の温度で(高い温度は短いアニール時間を必要とし、またはその逆もいえる)、実行される事ができる。熱劈開装置110は、劈開の伝播が接合構造の最先端(すなわち、加熱炉によって構造の移動の方向の最先端)において達成されるベルト加熱炉であることができ、接合ウエハ構造の後縁に向かって進む。他のタイプの劈開装置は、また用いられることができる。
【0023】
劈開装置110は、一般に例えば200mm、300mm、300mmより大きく、さらに450mm直径の接合ウエハ構造を含む、任意の大きさの接合ウエハ構造を処理するように構成される。いくつかの実施形態において、劈開装置は、直径で200mmまたは300mmである接合ウエハ構造を処理するように構成される。
【0024】
劈開システム100は、劈開中接合ウエハ構造から放出された音を感知し、感知した音に応答して出力を生成するための音センサ120を含む。音センサ120は、マイクロフォン、ピエゾセンサ、MEMS装置または音圧または音場トランスデューサであることができる。
【0025】
コントローラ130は、音センサ120からの記録された出力に基づいて劈開の特性(例えば、劈開期間、劈開の質、それがウエハに渡って進むとき、層転置がない条件が起こったか、劈開で中断したのか)に関する1以上の計量を生成するように構成される。いくつかの実施形態において、コントローラ130によって生成された計量は、劈開中に生成したオーディオパワープロファイルに由来する。オーディオパワープロファイルは、以下の実施例1に記載されるように、オーディオ振幅に由来する。計算される計量の実施例は、劈開が引き起こされたときと劈開の感知開始の間の遅延、劈開の期間、劈開の平均パワー、最大パワー、最大パワーが起こる頻度、パワーの標準偏差、パワー振動の大きさしきい値パワー未満の劈開時間、しきい値パワー未満の最大シングルくぼみ時間、しきい値パワー未満のパワーくぼみの数を含む。いくつかの実施形態において、2以上の計量は、生成され、またはさらに3以上、5以上、7以上または10以上の計量がコントローラ130によって生成される。
【0026】
コントローラ130は、コンピュータシステムであることができる。コンピュータシステムは、本明細書で記載されるように、任意の既知のコンピュータ装置及びコンピュータシステムを言う。本明細書で記載されたように、すべてのそのようなコンピュータシステムは、プロセッサ及びメモリを含む。しかしながら、本明細書で参照されるコンピュータシステムの任意のプロセッサは、1以上のプロセッサをいい、プロセッサは、1つのコンピュータ装置または並行に動作する複数のコンピュータ装置にある。さらに、本明細書で参照されるコンピュータ装置の任意のメモリは、また1以上のメモリをいい、メモリは、1つのコンピュータ装置または並行に動作する複数のコンピュータ装置にある。
【0027】
用語、プロセッサは、本明細書で用いられるように、中央処理装置、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書で記載される機能を実行できるその他の回路またはプロセッサを言う。上記は実施例のみであり、それゆえとにかく用語「プロセッサ」の定義及び/または意味を限定する意図はない。
【0028】
用語、「データベース」は、データの本体、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)、または両方を言うことができ、データベースは、階層データベース、リレーショナルデータベース、フラットファイルデータベース、オブジェクト−リレーショナルデータベース、オブジェクト指向データベースを含むデータの任意のデータ集、及びその他のコンピュータシステムに格納される記録またはデータの構造化コレクションを含むことができる。上記は実施例のみであり、それゆえとにかく用語、データベースの定義及び/または意味を限定する意図はない。RDBMSの実施例は、含むことを限定するものではないが、Oracle(登録商標)Database、MySQL、IBM(登録商標)DB2、Microsoft(登録商標)SQL Server、Sybase(登録商標)及びPostgreSQLを含む。しかしながら、任意のデータベースは、用いられ、本明細書に記載されたシステム及び方法を可能とする。(Oracleは、カリフォルニア州レッドウッドショアのOracle社の登録商標である。IBMは、ニューヨーク州アーモンクのInternational Business Machines社の登録商標である。Microsoftは、ワシントン州レドモンドMicrosoft社の登録商標である。Sybaseは、カリフォルニア州ダブリンSybaseの登録商標である。)
【0029】
1つの実施形態において、コンピュータプログラムは、コントローラ130を可能とするために提供され、このプログラムは、コンピュータ可読媒体に組み込まれる。実施例実施形態において、コンピュータシステムは、サーバコンピュータに接続される必要なく、単一のコンピュータシステムで実行される。さらなる実施形態において、コンピュータシステムは、Windows(登録商標)環境で実行される(Windowsは、ワシントン州レドモンドのMicrosoft社の登録商標である)。さらなる別の実施形態において、コンピュータシステムは、メインフレーム環境及びUNIX(登録商標)サーバ環境で実行される(UNIXは、イギリス、バークシャー、リーディングに置かれたX/Open社の登録商標である)。代わりに、コンピュータシステムは、任意の適切なオペレーティングシステム環境で実行される。コンピュータプログラムは、柔軟であり、任意の主要な機能を妥協することなく、様々な異なる環境で実行されるように設計される。いくつかの実施形態において、コンピュータシステムは、複数のコンピュータ装置の間に分配される多数の部品を含む。1以上の部品は、コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータ実行可能指示の形態である。
【0030】
コンピュータシステム及びプロセスは、本明細書で記載される特定の実施形態に限定されない。さらに、それぞれのコンピュータシステムの部品及びそれぞれの処理は、独立に実行され、本明細書で記載された他の構成部品及びプロセスから分離される。それぞれの部品及びプロセスは、また他のアセンブリパッケージ及びプロセスの組み合わせで用いられることができる。
【0031】
別の実施形態において、コントローラ130のコンピュータシステムに含まれるメモリは、複数のモジュールを含むことができる。それぞれのモジュールは、少なくとも1つのプロセッサで用いて実行するように構成された指示を含む。複数のモジュールに含まれる指示は、コンピュータ装置の1以上のプロセッサによって実行されるとき、本明細書で感知された音の少なくとも一部に基づかれる劈開の特性に関する計量を生成するための方法の少なくとも一部を実行する。コンピュータ装置のメモリに格納されたモジュールの限定されない実施例は、1以上のセンサから計測を受けるための第1のモジュールと、劈開に関連する計量を作り出すための第2のモジュールを含む。
【0032】
1つの実施形態のコンピュータシステムは、使用者に情報を示すための1つのメディア出力部品を含む。メディア出力部品は、使用者に情報(例えば劈開に関連する計量など)を運ぶことができる任意の部品である。いくつかの実施形態において、メディア出力部品は、例えばビデオアダプタ及び/またはオーディオアダプタなどの出力アダプタを含む。出力アダプタは、プロセッサと操作可能に連結され、さらに例えばディスプレイ装置(例えば液晶ディスプレイ(LCD)有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、ブラウン管(CRT)、または「電子インク」ディスプレイ)またはオーディオ出力装置(例えばスピーカまたはヘッドフォン)など出力装置と操作可能に連結されるように構成される。
【0033】
図7を参照しながら、システムは、音センサ120によって感知された音をデータに変換する(すなわちアナログ信号をデジタル信号に変換する)ためのアナログデジタルコンバータ125を含むことができる。コントローラ130は、アナログデジタルコンバータ125によって生成されたデータの少なくとも一部に基づいて、劈開の特性に関する計量を生成することができる。アナログデジタルコンバータ125は、デジタイザまたは、他の実施形態として、サウンドカードであることができる。アナログデジタルコンバータ125は、コントローラ130の一部であるかまたは音センサ120の一部であることができる。いくつかの実施形態において、アナログデジタルコンバータ125は、少なくとも約30000Hzまたは少なくとも約60000Hz、少なくとも約120000Hzまたは少なくとも約240000Hzのレートでサンプルを記録する。
【0034】
いくつかの実施形態において、図8に示されるように、システムは、(任意に、図7で示されるアナログデジタルコンバータ125とともに用いられることができる)プリアンプユニット123を含む。プリアンプユニット123は、音センサ120からの出力を強化する。プリアンプユニット123は、音センサ120と組み合わせられる(すなわち、センサ120とプリアンプ123は、単一の装置の部品である)。
【0035】
図9で示されるように、システム100は、また接合ウエハ構造の劈開をするため劈開シーケンスが開始したときを検知するためのトリガセンサ150を含む。機械的な劈開において、劈開シーケンスの開始は、劈開アームが劈開中にドナーウエハをつかんだときに起きる劈開アームの動作によって示される。トリガセンサ150は、劈開アームの動作または劈開が開始したことを示す劈開装置の任意の動作を感知する、例えばカメラ、光電センサまたはリミットスイッチなどの劈開の開始を感知する任意の適切な装置である。トリガセンサ150は、また劈開の始まる制御信号を感知または受信するセンサである(すなわち劈開ソフトウエアの一部である)。いくつかの実施形態において、音は、感知され、モニタされ、記録は、音の変化が感知されたとき引き起こされる(例えばオーディオパワーがあらかじめ決められたしきい値を超える)。
【0036】
トリガセンサ150が用いられる実施形態において、トリガセンサ150は、コントローラ130が音センサ120からの出力を保存し及び/または分析し始めることができるために、劈開の開始を示すようにコントローラ130を動作させる。システム100がアナログデジタルコンバータ125(図7)を含む実施形態において、トリガセンサ150は、コンバータ125を動作させるように用いられる。
【0037】
図10を参照しながら、音センサ120及びトリガセンサ150は、例えば機械劈開装置などの存在する劈開器具に取り付けられることができる取り付け可能な劈開モニタシステム203の一部であることができる。取り付け可能な劈開モニタシステム203は、劈開装置110にシステム203を取り付けるブラケット210を含む(図11及び12)。この実施形態において、ブラケット210は、劈開装置110にブラケット210を固定するためのセットねじ215を含む。モニタシステム203の他の実施形態は、劈開装置にシステム203を固定する他のタイプの留め具を含む。
【0038】
音センサ120及びトリガ150は、ブラケット210にそれぞれ取り付けられる。図10−12に示されるように、音センサ120は、マイクロフォンであり、トリガセンサ150は、光電センサである。他のタイプの音センサ120とトリガセンサ150は、取り付け可能な劈開モニタシステム203の他の実施形態で用いられることができる。いくつかの実施形態において、劈開モニタシステム203は、例えば劈開のオーディオパワープロファイルと関連する計量など、計量を生成するためのコントローラを管理するソフトウエアを含む。
【0039】
図11を今参照しながら、2つのステーション劈開器具が示される。2つの劈開モニタシステム203は、器具の2つの劈開装置110に取り付けられる。モニタシステム203は、劈開器具のベースプレート222に留められる。音センサ120は、接合ウエハ構造の後縁近くに配置される(すなわち、劈開が伝播される側から反対の後端)。トリガセンサ150は、劈開装置110の劈開アーム113に向けられる。
【0040】
そこに取り付けられた取り付け可能な劈開モニタシステム203を備える単一のステーション劈開器具は、図12に示される。劈開モニタシステム203は、劈開装置110のベースプレート222に取り付けられたブラケット210を含む。ブラケット210は、そこに取り付けられた音センサ120とトリガセンサ150を有する。トリガセンサ150は、劈開アーム113の動作を感知する。
【0041】
本開示の態様は、例えば上記の劈開システム100の使用によって、接合ウエハ構造を分離するための方法及びシステムに関する。接合ウエハ構造は、(例えば機械的なまたは熱的な伝播によって)劈開され、劈開中の接合ウエハ構造から放出された音は、感知される。音は、増幅され及び/またはデジタル信号に変換される。いくつかの実施形態において、音場振幅は、パワープロファイルを生成するために用いられる(例えば、以下の実施例1のように)。劈開のオーディオ振幅データは、正規化され、パワースペクトルをとることによって、段階化される。1つのパワースペクトルに用いられるオーディオ振幅オーディオデータは、時間の関数として、滑らかに変化するパワー関数を作り出すために、隣接するパワースペクトルで用いられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムは、振幅オーディオデータからパワー関数を生成するために用いられることができる。いくつかの実施形態において、段階化されたFFT法は、滑らかに変化するパワー関数を生成するために用いられる(例えばフィルタリングしていない段階化されたFFT)。そのような段階化されたFFT法は、フィルタに頼ることなく、くぼみ遷移エッジをぼやけさせることを少なくして、プロファイルを滑らかにすることができる。
【0043】
他の実施形態において、非FFT法が用いられる。例えば、生のオーディオパワープロファイルデータは、パワープロファイルを作り出すためにデジタル的にフィルタされる。
【0044】
劈開の特性に関する計量は、感知した音の少なくとも一部に基づいて生成される。計量は、劈開のオーディオパワープロファイルに由来し、上に記載された計量を含む(最大パワー、くぼみ時間、くぼみの数、など)。計量は生成されるとすぐに、計量、または計量の組み合わせは、結果となるSOI構造の品質を決定するために用いられる。例えば、計量は、装置層が適切に転置しない及びウエハがロットから除去されるべきであることを示すことができる。いくつかの実施形態において、計量は、劈開制御パラメータが、その後劈開される接合ウエハ構造の劈開の品質を改善するために調整されることを示す(すなわち、劈開プロセスの調整)。例えば、初期の引っ張りひずみ、または引っ張りの増加、引っ張る数、ひずみウインドウ、分離速度、分離加速度、分離の減速、最大分離時間、ブレード速度、またはブレード移動量は調整されることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、劈開シーケンスの開始は、劈開シーケンスが開始したことを検知する時の感知される音で検知される。これは、劈開アームの動作をモニタすることによって検知することである。
【0046】
いくつかの実施形態において、システム101は、コントローラ130によって生成された1以上の計量に基づいて、制御動作を実行するように構成される。計量により、システムは、計量によって示されるように劈開ウエハを廃棄し、劈開の品質に基づいてウエハを仕分けする。他の実施形態において、計量によりシステムは、劈開パラメータを調整する(例えば、初期の引っ張りひずみ、または引っ張りの増加、引っ張る数、ひずみウインドウ、分離速度、分離加速度、分離の減速、最大分離時間、ブレード速度、またはブレード移動量)。
【0047】
接合ウエハ構造を分離する従来の劈開システムと比較して、本開示のシステムは、いくつかの利点を有する。劈開中の音を感知し、音からデータを生成することによって、データは、品質制御のために計量を生成し、及び/または劈開器具及びプロセスを調整するように処理され、その後の劈開を改善する。デジタイザが用いられる実施形態において、比較的高レートのオーディオサンプリングが用いられ、生成された計量を改善する。取り付け可能な劈開モニタシステムが提供される実施形態において、システムは、接合ウエハ構造の劈開が、品質制御及び/または劈開調整のためにモニタされることができるようにシステムを変えるために存在する劈開システムに取り付けられることができる。
実施例
【0048】
本開示のプロセスは、さらに次の実施例によって説明される。これらの実施例は、限定する意味で考えられるべきでない。
【実施例1】
【0049】
(劈開オーディオのプロセス)
100mmの接合ウエハ構造の劈開からのオーディオは、マイクロフォン及びデジタイザ(最大サンプリング周波数216000Hz)で記録された。オーディオ信号は、5秒記録された。生オーディオ信号は、図13に示される。
【0050】
パワー信号は、生音場振幅と劈開しきい値オーディオ振幅の比の2乗である。記録されたオーディオサンプルに渡る生パワープロファイルは、図14に示される。劈開しきい値は、実験データに基づく入力パラメータである(例えば、図13に示される0.004絶対場振幅)。図15は、劈開開始近くの計算されたパワーを示す。しきい値を超える第1のパワーは、劈開の開始を表す(1に等しいパワーは、しきい値パワーレベルである)。図16は、劈開の終わり近くの計算されたパワーを示し、劈開の終わりは、パワーが劈開プロセス中「静か」(「PDIP」)である下のしきい値より大きい、最後の点を表す。
【0051】
生の劈開オーディオは、しきい値に正規化され、劈開を開始する前の2ミリ秒と劈開後の2ミリ秒において開始し、図17に示される。
【0052】
正規化されたオーディオ振幅データは、パワースペクトルをとることによって段階化される(図18)。いくつかの正規化された1つのパワースペクトルで用いられるオーディオ振幅オーディオデータは、また、隣接するパワースペクトルで用いられた。段階化されたFFTアプローチは、図19に示されるように時間の関数として滑らかに変化するパワー関数を作り出し、オーディオパワーは、ゼロ周波数またはDC成分を排除する全てのパワースペクトル成分の合計である。図20は、グレースケールマップとしてパワースペクトルを示す。計量は、パワープロファイルから生成された。計算された計量は、劈開トリガと劈開の開始の遅延(遅延)、劈開の期間(期間)、平均パワー(P−mean)、最大パワー(P−max)、最大パワーが起こる頻度(Freq P−Max)、パワーの標準偏差(P−Sigma)、パワー振動の大きさ(Power Osc.)、しきい値パワー未満の劈開時間(くぼみ時間%)、しきい値パワー未満の最大シングルくぼみ時間(LongDip)及びしきい値パワー未満のパワーくぼみの数(Dips#)を含んだ。図19の劈開の計量は、以下の表1に示される。
【0053】
【表1】
表1:図19のパワープロファイルにおけるオーディオパワープロファイル計量
【0054】
図21の上列は、フィルタされた上部シリコン膜厚さデータマップに相互に関連付けられたパワーくぼみを備える図19のパワープロファイルを示す。生の上部シリコン膜厚さデータマップは、また図21の右端に示される。図21(下列)は、また別の劈開された接合ウエハ構造のパワープロファイルと、潜在的な厚さ円弧と相互に関連付けられる相対膜厚さデータマップを示す。
【0055】
滑らかに進まない劈開のパワープロファイルは、図22に示され、グレースケールパワースペクトルは、図23に示される。図24は、パワープロファイルと、上部シリコン膜厚さ変動の膜厚さデータマップを示す。くぼみは、上部シリコン円弧と強く相互に関連付けられて現れる。
【実施例2】
【0056】
(異なる劈開ひずみにおけるオーディオ計量の変動)
21個の200mm接合ウエハ構造が、劈開を伝播するために吸引カップとブレードを用いた機械劈開装置で劈開された。7個のウエハは、記録のプロセス(POR)によって最初のひずみで処理され、7個は、記録のプロセスより低いひずみで劈開され、7個は、記録のプロセスより高いひずみで劈開された。劈開中の音は、マイクロフォンによって感知され、デジタイザ(最大サンプリング周波数216000Hz)は、デジタルに信号を変換するために用いられ、出力は記録された。劈開アームの近くに配置された光電センサは、オーディオ記録の開始を動作させるために用いられた。コントローラは、劈開中オーディオパワープロファイルから計量を生成した。計算された計量は、劈開トリガと劈開の開始の遅延(遅延)、劈開の期間(期間)、平均パワー(P−mean)、最大パワー(P−max)、最大パワーが起こる頻度(Freq P−Max)、パワーの標準偏差(P−Sigma)、パワー振動の大きさ(Power Osc.)、しきい値パワー未満の劈開時間(くぼみ時間%)、しきい値パワー未満の最大シングルくぼみ時間(LongDip)及びしきい値パワー未満のパワーくぼみの数(Dips #)を含んだ。それぞれの実行における計量は、以下の表2に示される。
【0057】
【表2】
表2:記録のプロセス、低いひずみ、高いひずみ劈開におけるオーディオパワープロファイル計量
【0058】
計算された計量は、低いひずみが長い劈開期間をもたらし、高いひずみは高い平均オーディオパワーをもたらすことを示した。低いひずみは、また最大くぼみ時間、くぼみ数、最長くぼみを生じる一方で、高いひずみは、これらの計量の最小を生じた。
【0059】
劈開後のそれぞれのウエハの膜厚データマップも生成された。データマップは、それぞれの劈開における劈開線の数を見て分析された。低いひずみの劈開は、少ない劈開線を示した。計量は、劈開を調整するために用いられ(例えばひずみを調整すること)、劈開の均一性を改善する。
【実施例3】
【0060】
(層転置のない条件を検知するための劈開オーディオの使用)
装置層がハンドルウエハに残らない(すなわち全てのドナーウエハが剥離される)劈開のオーディオパワープロファイルは、分析され、劈開が成功した典型的な劈開オーディオパワープロファイルと比較された。劈開が成功した条件は、図25に示され、成功しなかった劈開は、図26に示される。図26に示されるように、オーディオパワーは、鋭く尖り、残りの劈開において、低く先細りする一方で、図25の成功した劈開は、劈開に入るまでに数秒のパワーの増加を示し(例えば20秒後)、そして劈開が完了するまで、高いままであった。これは、オーディオパワープロファイルの観察が、装置層が品質制御目的において転置されないときを決定するために接合ウエハ構造の劈開をモニタするために用いられることができることを示す。
【0061】
様々なオーディオプロファイル計量において、成功した転置と、層転置できない間の差は、また、観察され、表3に示される。
【0062】
【表3】
表3:成功した劈開と、層転置できない劈開におけるオーディオパワープロファイル計量
【0063】
表3に示されるように、層転置できない劈開は、平均パワー、最大パワー、最大パワー周波数、パワーの標準偏差及びパワー振動の大きさが著しく低かった。これらの計量は、劈開プロセスにおける品質制御として用いられることができる。
【0064】
本明細書で用いられるように、用語「約」(about)、「実質的に」(substantially)、「本質的に」(essentially)、「約」(approximately)は、大きさ、濃度、温度、または他の物理または化学特性、特徴の範囲と連結して用いられたとき、例えば、丸め、測定方法論または他の統計変動から生じる変動を含む、特性または特徴の範囲の上及び/または下の限界に存在する変動を含むことを意味する。
【0065】
本開示の要素または本開示の実施形態を導入するとき、冠詞「1つの」(a)、「1つの」(an)、「その」(the)、及び「前記」(said)は、1以上の要素があることを意味する意図がある。用語「備える」(comprising)、「含む」(including)、「含む」(containing)、及び「有する」(having)は、包含的で、記載された要素以外の追加の要素があることを意味することを意図する。特定の配向を示す用語(例えば「上部」(top)、「下部」(bottom)、「側面」(side)など)の使用は、説明の便宜上であり、記載された品物の全ての特定の配向を必要としない。
【0066】
様々な変更が、開示の範囲を逸脱することなく、上記の構成及び方法でなされることができるので、上記に含まれ、添付した図に示される全ての事項は、説明として解釈され、限定した意味に解釈されないことを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26