(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(2)で表わされる化合物と前記式(3a)で表わされる化合物とを、還元剤の存在下で反応させたのち、得られた反応物に対して更に酸を添加する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
前記式(2)で表わされる化合物と前記式(3a)で表わされる化合物との反応を前記還元剤が共存するアミド系溶媒を含む溶媒の存在下で行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基を包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程を意味するだけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。
【0008】
<式(1)で表わされる化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物とを、還元剤の存在下で反応させることを含む、式(1)で表わされる化合物の製造方法である。
【化4】
式中、R
11及びR
12は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す;
R
21及びR
22は各々独立にアルキル基を表す;
A
1およびA
2は各々独立にOHまたはO
−を表し、A
1およびA
2の少なくとも一方はOHを表す;
X及びYは各々独立に電子求引性基を表す;
Zはn価の陰イオンを表し、nは1以上の整数を表す;ただし、A
1およびA
2の一方がO
−を表す場合、Zは存在しない;
R
11とR
12は互いに結合して環を形成していてもよく、R
21とR
22は互いに結合して環を形成していてもよく、XとYは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0009】
本発明によれば、式(1)で表わされる化合物の製造にあたり、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物とを、還元剤の存在下で反応させることで、式(1)で表される化合物を含み、着色の少ない生成物を得ることができる。
ここで、従来の方法では、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物との反応後の生成物中に、式(1)で表される化合物のほかに副反応物などが比較的多く含まれており、これらの副反応物の存在が着色の原因となることを見出した。
本発明によれば、式(1)で表わされる化合物の製造にあたり、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物とを、還元剤の存在下で反応させることで、副反応の進行を抑制したり、原料である式(2)で表わされる化合物や、生成物である式(1)で表される化合物の酸化などを抑制することができたと推測され、その結果、目的の化合物である式(1)で表される化合物を含み、着色の少ない生成物を得ることができたと推測される。
なお、原料である式(3)で表わされる化合物や、生成物である式(1)で表される化合物は、「X」および「Y」の部位が電子求引性基であるため、通常はこのような電子求引性基を有する化合物を原料として用いる反応には還元剤を用いられない。すなわち、一般的には、還元剤の存在下にて式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物とを反応させると、還元剤の作用によって、原料である式(3)で表わされる化合物や、生成物である式(1)で表される化合物が分解されて不純物が多くなったり、反応効率が低下してより着色が生じやすくなると考えられていた。しかしながら、還元剤の存在下にて上記の反応を行うことで、着色の抑制された生成物を得ることができたことは当業者であっても予測できない驚くべきことである。
【0010】
式(1)で表わされる化合物を得る反応は、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物とを、還元剤が共存する系で溶媒の存在下または無溶媒で行う。更に、酸、塩基、塩、他の有機化合物、無機化合物などを添加してもよい。
【0011】
還元剤としては、有機の還元剤でも無機の還元剤でもよい。有機の還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(例えば3−O−エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド)、スルフィン酸(例えばメタンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸)、ギ酸、シュウ酸、置換または無置換の4−アミノフェノ−ル、置換または無置換のp−フェニレンジアミン、置換または無置換の1−フェニル−3−ピラゾリドン等が挙げられる。無機の還元剤としては、泡水ヒドラジン、還元鉄、スズ、二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられる。還元剤の標準酸化還元電位は、−0.5〜1.0Vであることが好ましい。下限は、−0.2V以上であることが好ましく、0V以上であることが更に好ましい。上限は、0.7V以下であることが好ましく、0.5V以下であることが更に好ましい。還元剤の標準酸化還元電位が1.0V以下であれば、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物との反応で副反応を抑制する効果が十分に得られる。また、還元剤の標準酸化還元電位が−0.5V以上であれば、式(1)で表される化合物や式(3)で表される化合物の還元による分解などを抑制できる。還元剤は有機の還元剤であることが好ましく、アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体であることがより好ましく、アスコルビン酸(標準酸化還元電位0.34V)であることが更に好ましい。
【0012】
上記反応の際に用いられる溶媒(反応溶媒)としては、水、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)、スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、アルコ−ル系溶媒(例えばメタノ−ル、エタノ−ル、2−プロパノ−ル、オクタノ−ル、ベンジルアルコ−ル)、エ−テル系溶媒(例えばジオキサン、アニソ−ル、テトラヒドロフラン)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、メシチレン、n−オクタン、n−ドデカン)、ハロゲン系溶媒(例えばクロロベンセン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ−ピコリン、2,6−ルチジン)およびニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)が挙げられる。これらを単独で、或いは混合して用いることが好ましい。なかでも、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、アルコ−ル系溶媒、エ−テル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒およびニトリル系溶媒が好ましく、アミド系溶媒がより好ましい。アミド系溶媒は、原料である式(2)の化合物の溶解性が特に良好であり、反応溶媒としてアミド系溶媒を用いることで、式(2)の化合物と式(3)の化合物との反応性を高めて、副反応の進行などを抑制して不純物の発生を抑制できる。
【0013】
式(2)で表わされる化合物と、式(3)で表わされる化合物との反応温度は、0〜250℃が好ましい。下限は10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましく、30℃以上が特に好ましい。上限は、200℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。反応温度が上記範囲であれば、副反応の進行などを抑制して不純物の発生を抑制できる。また、反応時間は1分〜24時間が好ましい。下限は5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、15分以上が更に好ましい。上限は、12時間以下が好ましく、8時間以下がより好ましく、4時間以下が更に好ましい。
【0014】
式(2)で表わされる化合物と、式(3)で表わされる化合物との反応は、式(2)で表される化合物のモル数に対する、式(3)で表される化合物のモル数の比が0.01以上となる割合で反応させることが好ましく、0.1以上となる割合で反応させることがより好ましく、0.3以上となる割合で反応させることが更に好ましく、0.5以上となる割合で反応させることが特に好ましい。前述の比の上限は、10.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
【0015】
還元剤の添加量としては、式(2)で表される化合物のモル数に対する、還元剤のモル数の比が0.0001以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.01以上であることが更に好ましく、0.02以上であることが特に好ましい。前述の比の上限は、20.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが更に好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
【0016】
本発明においては、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物とを、還元剤の存在下で反応させたのち、得られた反応物である式(1)で表わされる化合物に対して更に酸を添加することが特に好ましい。式(1)で表わされる化合物や式(2)で表わされる化合物の酸化反応や、フェノール部での置換反応などの副反応は、反応系が塩基性だと進行しやすい傾向にあるが、反応物に対して酸を添加することでこれらの副反応の進行を効果的に抑制して不純物の発生などをより抑制できる。その結果、目的の化合物である式(1)で表わされる化合物を高純度で含む生成物を得ることができる。
【0017】
上記の酸としては、有機酸であってもよく、無機酸であってもよい。有機酸としては、スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、カルボン酸(例えば酢酸、ギ酸、酪酸、安息香酸、シュウ酸)等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。好ましくは有機酸であり、最も好ましくはスルホン酸である。
【0018】
上記の酸の添加量としては、式(2)で表わされる化合物のモル数に対する、酸のモルの比が0.0001以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.01以上であることが更に好ましく、0.1以上であることが特に好ましい。前述の比の上限は、50.0以下であることが好ましく、20.0以下であることがより好ましく、10.0以下であることが更に好ましく、5.0以下であることが特に好ましい。
【0019】
反応終了後、水もしくは他の溶媒、あるいはこれらの混合溶媒に反応混合物を添加する、あるいは前述の溶媒を反応混合物に添加して、式(1)で表わされる化合物を結晶もしくはアモルファスとして固体化し、ろ過などの方法により溶媒を取り除いて単離することが好ましい。また、取り出した固体に溶媒を加えて洗浄するか、溶媒に溶解させたのち場合により別の溶媒を加えて再結晶させることも好ましい。さらにこれらの工程を複数回行ってもよい。このようにして式(1)で表される化合物を製造できる。
【0020】
従来の方法では、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物との反応後の生成物中に、式(1)で表される化合物のほかに副反応物などが含まれていることがあるが、本発明によれば、これらの副反応物の発生を大幅に低減することができる。副反応物が混在すると、着色が生じやすくなるが、本発明によれば、これらの副反応物の発生を大幅に低減できるので、目的の化合物である式(1)で表される化合物を高純度で含み、かつ、着色の少ない生成物を得ることができる。
【0021】
本発明の製造方法によって得られた式(1)で表される化合物を含む生成物は、メタノール中で測定した分光吸収スペクトルにおいて、波長385nmにおけるモル吸光係数ε
385と波長430nmにおけるモル吸光係数ε
430との比である、ε
430/ε
385が0.015〜0.028であることが好ましい。上記のモル吸光係数の比は、0.018以上であることが好ましく、0.020以上であることがより好ましく、0.021以上であることが更に好ましく、0.022以上であることが特に好ましい。また、上記のモル吸光係数の比は、0.027以下であることが好ましく、0.026以下であることがより好ましく、0.025以下であることが更に好ましい。このようなモル吸光係数の比を有するものは、波長385nm近傍の吸収が高いにもかかわらず、紫外領域近傍の可視領域の光の透過性に優れるので、より長波長側の紫外線の吸収性に優れつつ、可視透明性に優れている。なお、化合物における紫外線の吸収領域をより長波長側にシフトさせようとした場合、可視領域の光の透過性(特に、紫外領域近傍の可視領域の光の透過性)も低下する傾向にあるが、本発明によれば、可視領域の光の透過性を高い水準で維持しつつ、より長波長側の紫外線の吸収性に優れるという技術的に優れた効果を有している。
【0022】
次に、反応原料である式(2)で表わされる化合物および式(3)で表わされる化合物、ならびに、反応生成物である式(1)で表わされる化合物についてそれぞれ説明する。
【0023】
まず、反応原料である式(2)で表わされる化合物および式(3)で表わされる化合物について説明する。
(式(2)で表される化合物)
【化5】
【0024】
式(2)中、R
11及びR
12は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。
【0025】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜15が更に好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜7が最も好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は直鎖、分岐および環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。また、環状のアルキル基、および環状のアルコキシ基のアルキル基部位は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環アルキル基(ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基など)であってもよい。アルキル基およびアルコキシ基は置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
アリール基及びアリールオキシ基の炭素数は6〜40が好ましく、6〜30がより好ましく、6〜20が更に好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。アリール基及びアリールオキシ基は置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0026】
式(2)において、R
11及びR
12は互いに結合して環を形成していてもよい。R
11及びR
12が結合して形成される環は5または6員の環が好ましい。R
11及びR
12が結合して形成される環は置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0027】
式(2)において、R
21及びR
22は各々独立にアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜15が更に好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜7が最も好ましい。アルキル基は直鎖、分岐および環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。また、環状のアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環アルキル基(ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基など)であってもよい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0028】
式(2)において、R
21及びR
22は互いに結合して環を形成していてもよい。R
21及びR
22が結合して形成される環は5または6員の環が好ましい。具体的には、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられ、ピロリジン環、ピペリジン環が好ましくピペリジン環がより好ましい。R
21及びR
22が結合して形成される環は置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0029】
式(2)において、A
1およびA
2は各々独立にOHまたはO
−を表し、A
1およびA
2の少なくとも一方はOHを表す。
【0030】
式(2)において、Zはn価の陰イオンを表し、nは1以上の整数を表す。nは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が更に好ましい。ただし、A
1およびA
2の一方がO
−を表す場合、Zは存在しない。すなわち、A
1およびA
2の一方がO
−を表す場合、式(2)で表される化合物は、窒素原子上のカチオンと、A
1またはA
2の酸素原子上のアニオンとで分子内塩を形成している。また、A
1およびA
2の両方がOHを表す場合、式(2)で表される化合物は、窒素原子上のカチオンと、対アニオンであるZとで塩を形成している。
【0031】
Zが表わすn価の陰イオンとしては、有機の陰イオンでもよく、無機の陰イオンでもよい。また、一価の陰イオンでもよく、多価の陰イオンでもよい。有機の陰イオンとしては、置換または無置換のスルホン酸アニオン(例えばメタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン)、置換または無置換のカルボン酸アニオン(例えば酢酸アニオン、ギ酸アニオン、プロピオン酸アニオン、安息香酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、シュウ酸アニオン、フタル酸アニオン)、置換または無置換のフェノキシドアニオン(例えばフェノキシドアニオン、ヒドロキノンモノアニオン、ヒドロキノンジアニオン)等が挙げられる。無機の陰イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン等が挙げられる。好ましくは有機の陰イオンであり、より好ましくはカルボン酸アニオンもしくはフェノキシドアニオンであり、更に好ましくはカルボン酸アニオンであり、最も好ましくは酢酸アニオンである。
【0032】
(置換基T)
置換基Tとしては、
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);
アルキル基〔直鎖、分岐、環状のアルキル基。具体的には、直鎖または分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。];
アルケニル基[直鎖、分岐、環状のアルケニル基。具体的には、直鎖または分岐のアルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の直鎖または分岐のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30のシクロアルケニル基。つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)を包含するものである。];
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の直鎖または分岐のアルキニル基。例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基;
【0033】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基。例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基);
ヘテロ環基(好ましくは5または6員の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基);
シアノ基;
ヒドロキシル基;
ニトロ基;
カルボキシル基;
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルコキシ基。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基);
アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30のアリールオキシ基。例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基);
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基。例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基);
ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のヘテロ環オキシ基。例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基);
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルオキシ基。例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基);
【0034】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基。例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基);
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニルオキシ基。例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基);
アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルオキシ基。例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基);
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアニリノ基。例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基);
アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルアミノ基。例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基);
【0035】
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30のアミノカルボニルアミノ基。例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基);
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基);
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基。例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基);
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30のスルファモイルアミノ基。例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基);
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30のアリールスルホニルアミノ基。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基);
メルカプト基;
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルチオ基。例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基);
アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基。例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基);
ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30のヘテロ環チオ基。例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基);
【0036】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基。例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基);
スルホ基;
アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルフィニル基、6〜30のアリールスルフィニル基。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基);
アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、6〜30のアリールスルホニル基。例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基);
【0037】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基。例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基);
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基。例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基);
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基);
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイル基。例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基);
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールアゾ基、炭素数3〜30のヘテロ環アゾ基。例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基);
イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基);
ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィノ基。例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)
ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニル基。例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基);
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルオキシ基。例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基);
ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルアミノ基。例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基);
シリル基(好ましくは、炭素数3〜30のシリル基。例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)が挙げられる。
【0038】
上記で挙げた基のうち、水素原子を有する基については、1個以上の水素原子が上記の置換基Tで置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基などが挙げられる。
【0039】
式(2)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。以下の式中、Acはアセチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化6】
【0040】
(式(3)で表される化合物)
【化7】
【0041】
式(3)において、X及びYは各々独立に電子求引性基を表す。XとYは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0042】
式(3)において、X及びYが表わす電子求引性基としては、ハメットの置換基定数σp値が正の置換基であることが好ましい。電子求引性基としては、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基およびスルファモイル基が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノカルボニルオキシ)エトキシカルボニル基、2−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノカルボニルオキシ)エトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基が好ましい。アリ−ルオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基が好ましい。カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−n−オクチルカルバモイル基が好ましい。スルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、オクタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基が好ましい。スルフィニル基としては、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、オクタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基が好ましい。スルファモイル基としは、無置換のスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基が好ましい。X及びYが表わす電子求引性基としては、シアノ基およびカルバモイル基が好ましく、カルバモイル基がより好ましい。
【0043】
式(3)において、XとYは互いに結合して環を形成していてもよい。XとYが結合して形成される環は5または6員の環が好ましい。具体的には、5−ピラゾロン環、イソオキサゾリン−5−オン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、バルビツ−ル酸環、チオバルビツ−ル酸環、ジヒドロピリジン−2,6−ジオン環等が挙げられる。XとYが結合して形成される環はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0044】
なお、式(3)において、XとYが互いに結合して環を形成している場合のX及びYの置換基定数σp値を規定することができないが、本発明においてはX及びYにそれぞれ環の部分構造が置換しているとみなして、環形成の場合のX及びYの置換基定数σp値を定義することとする。例えば以下の化合物(3)−1の場合、X及びYがそれぞれカルバモイル基に置換したものとして考える。すなわち、化合物(3)−1は、X及びYがそれぞれカルバモイル基であり、このカルバモイル基同士が結合してピラゾリジン−3,5−ジオン環を形成している。
【化8】
【0045】
式(3)において、好ましくはXおよびYはカルバモイル基(これらが結合して環を形成していてもよい)である。より好ましくは、XとYが結合してピラゾリジン−3,5−ジオン環を形成しているものである。式(3)で表される化合物は、下記式(3a)で表される化合物であることが好ましい。
【化9】
式中、R
13及びR
14は各々独立に脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。R
13とR
14は互いに結合して環を形成していてもよい。式(3a)のR
13及びR
14は、後述する式(4)のR
13及びR
14と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
式(3)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。以下の式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0047】
次に、反応生成物である式(1)で表される化合物について説明する。
(式(1)で表される化合物)
【化14】
【0048】
式中、R
11及びR
12は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。X及びYは各々独立に電子求引性基を表す。R
11とR
12は互いに結合して環を形成していてもよく、XとYは互いに結合して環を形成していてもよい。式(1)のR
11及びR
12は、式(2)のR
11及びR
12と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(1)のX及びYは、式(3)のX及びYと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0049】
式(1)で表わされる化合物は、式(4)で表わされる化合物であることが好ましい。
【化15】
式中、R
11及びR
12は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。R
13及びR
14は各々独立に脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。R
11とR
12は互いに結合して環を形成していてもよく、R
13とR
14は互いに結合して環を形成していてもよい。式(4)のR
11及びR
12は、式(2)のR
11及びR
12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0050】
R
13及びR
14は各々独立に脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。
【0051】
R
13及びR
14が表す脂肪族基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜15が更に好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜7が最も好ましい。脂肪族基の種類としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜15が更に好ましく、1〜10が特に好ましく、1〜7が最も好ましい。アルキル基は直鎖、分岐および環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜15が更に好ましく、2〜10が特に好ましく、2〜7が最も好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐および環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜15が更に好ましく、2〜10が特に好ましく、2〜7が最も好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐および環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
アラルキル基の炭素数は、7〜30が好ましく、7〜20がより好ましく、7〜15が更に好ましい。アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同様である。
【0052】
芳香族基としては、アリール基が挙げられる。芳香族基の炭素数は6〜40が好ましく、6〜30がより好ましく、6〜20が更に好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。アリール基としてはフェニル基およびナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0053】
複素環基における複素環は5員または6員の飽和または不飽和複素環を含むことが好ましい。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環の環を構成するヘテロ原子としては、B、N、O、S、SeおよびTeが挙げられ、N、OおよびSが好ましい。複素環は炭素原子が遊離の原子価(一価)を有する(複素環基は炭素原子において結合する)ことが好ましい。好ましい複素環基の炭素原子数は1〜40であり、より好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜20である。複素環基における飽和複素環の例として、ピロリジン環、モルホリン環、2−ボラ−1,3−ジオキソラン環および1,3−チアゾリジン環が挙げられる。複素環基における不飽和複素環の例として、イミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびキノリン環が挙げられる。複素環基は置換基を有していても良い。置換基としては上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0054】
式(4)において、R
13及びR
14は各々独立に脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、炭素数1〜30の脂肪族基または炭素数6〜30の芳香族基であることがより好ましく、炭素数1〜20の脂肪族基であることが更に好ましい。また、R
13及びR
14は各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数7〜20アラルキル基であることが好ましく、炭素数1〜15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜10の直鎖アルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜7の直鎖アルキル基であることが最も好ましい。
【0055】
式(4)において、R
13及びR
14は互いに結合して環を形成していてもよい。R
13及びR
14が結合して形成される環は5または6員の環が好ましい。
【0056】
式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。以下の式中、Phはフェニル基を表す。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0057】
<組成物>
次に、本発明の組成物について説明する。本発明の組成物は、上述した式(1)で表される化合物を含む組成物である。この組成物は、メタノール中で測定した分光吸収スペクトルにおいて、波長385nmにおけるモル吸光係数ε
385と波長430nmにおけるモル吸光係数ε
430との比である、ε
430/ε
385が0.015〜0.028であることを特徴とする。
【0058】
上記のモル吸光係数の比は、0.018以上であることが好ましく、0.020以上であることがより好ましく、0.021以上であることが更に好ましく、0.022以上であることが特に好ましい。また、上記のモル吸光係数の比は、0.027以下であることが好ましく、0.026以下であることがより好ましく、0.025以下であることが更に好ましい。このようなモル吸光係数の比を有するものは、波長385nm近傍の吸収が高いにもかかわらず、紫外領域近傍の可視領域の光の透過性に優れるので、より長波長側の紫外線の吸収性に優れつつ、可視透明性に優れている。
【0059】
本発明の組成物は紫外線吸収剤として好ましく用いることができる。また、本発明の組成物は、包装材料、容器、塗料、塗膜、インク、繊維、建材、記録媒体、画像表示装置、太陽電池用カバー、ガラス物品、化粧用製剤などに好ましく用いることができる。これらの詳細については、特開2009−263617号公報の段落番号0158〜0218の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0060】
本発明の組成物は、上述した本発明の化合物の製造方法で得られた反応物であることが好ましい。
【0061】
本発明の組成物中における式(1)で表される化合物の含有量は1質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより一層好ましく、99質量%以上であることが更に一層好ましい。また、本発明の組成物は式(1)で表される化合物のみで構成されていることが特に好ましい。
【0062】
<硬化性組成物>
次に、本発明の硬化性組成物について説明する。
本発明の硬化性組成物は、上述した本発明の組成物と、硬化性化合物と含む。硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、−O−Si−O−構造を有する化合物などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
【0063】
本発明においては、硬化性化合物として−O−Si−O−構造を有する化合物を用いることが好ましい。この態様によれば、着色が少なく、紫外線の吸収性に優れたガラス物品などを製造することができる。ガラス物品の具体例としては、自動車用の窓ガラス、建材用の窓ガラスなどを挙げることができる。
【0064】
−O−Si−O−構造を有する化合物としては、加水分解性ケイ素化合物であることが好ましく、加水分解性アルコキシシランであることがより好ましく、3官能または4官能のアルコキシシランであることが更に好ましい。−O−Si−O−構造を有する化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、4−トリメトキシシリルスチレン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0065】
本発明の硬化性組成物の全固形分中における式(1)で表される化合物の含有量は、0.01〜20質量%であることが好ましい。また、本発明の硬化性組成物の全固形分中における上述した本発明の組成物の含有量は、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。また、本発明の硬化性組成物の全固形分中における硬化性化合物の含有量は、0.1〜99.9質量%であることが好ましい。
【0066】
本発明の硬化性組成物は、式(1)で表される化合物以外の他の紫外線吸収剤をさらに含有することができる。他の紫外線吸収剤としては、国際公開WO2017/122503号公報の段落番号0065に記載された紫外線吸収剤が挙げられ、これらを用いることができる。
【0067】
本発明の硬化性組成物は、更に溶剤を含むことができる。溶剤としては、特に限定は無く、水、アルコール系溶剤などが挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。また、溶剤として、エチレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶剤の含有量は、硬化性組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましい。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、触媒を含有することができる。触媒としては、特に硬化性化合物として、−O−Si−O−構造を有する化合物を用いた場合、触媒を含有させることが好ましい。この態様によれば、ゾルゲル反応が促進されて、より強固な膜が得られやすい。触媒としては、塩酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸等の酸触媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン等の塩基触媒などが挙げられる。
触媒の含有量は、硬化性化合物の100質量部に対し0.1〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜50質量部であり、更に好ましくは0.1〜20質量部である。本発明の硬化性組成物は、触媒を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。触媒を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0070】
[試験例1]
<実施例1>
下記スキームに従って化合物(1)−1を製造した。
【化20】
【0071】
反応容器に、化合物(3)−1の21.2g(0.100モル)、還元剤としてアスコルビン酸の1.76g(0.0100モル)、反応溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)の100mLを加え、さらに化合物(2)−1の32.7g(0.100モル)を加えた。この混合液を窒素フロー条件下にて、80℃で3時間撹拌した。次いで、得られた反応溶液に、メタンスルホン酸の4.81g(0.0500モル)を添加した後に1時間かけて40℃まで冷却した。ついで、水1000mLを滴下して析出した固体(結晶)をろ取し、80℃で減圧乾燥して目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を38.6g(収率97.8%)得た。
【0072】
<実施例2>
実施例1において、化合物(3)−1の代わりに、同量の化合物(3)−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−2を含む生成物を得た。
【化21】
【0073】
<実施例3>
実施例1において、化合物(3)−1の代わりに、同量の化合物(3)−3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−3を含む生成物を得た。
【化22】
【0074】
<実施例4>
実施例1において、反応溶媒としてNMPの代わりに同量のジメチルアセトアミドを用いた以外は実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を得た。
【0075】
<実施例5>
実施例1において、反応溶媒としてNMPの代わりに同量のジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を得た。
【0076】
<実施例6>
実施例1において、メタンスルホン酸の代わりに同量のp−トルエンスルホン酸を用いた以外は実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を得た。
【0077】
<実施例7>
実施例1において、メタンスルホン酸を添加しかなった以外は実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を得た。
【0078】
<実施例8>
実施例1において、反応溶媒としてNMPの代わりに同量のスルホランを用いた以外は実施例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を得た。
【0079】
<比較例1>
反応容器に、化合物(3)−1の21.2g(0.100モル)と、N−メチルピロリドン(NMP)100mLを加え、さらに化合物(2)−1の32.7g(0.100モル)を加えた。この混合液を窒素フロー条件下80℃で3時間撹拌した。次いで、得られた反応溶液を1時間かけて40℃まで冷却し、希塩酸水1000mLに滴下して析出した固体(結晶)をろ取し、80℃で減圧乾燥して目的の化合物としての化合物(1)−1を含む生成物を37.7g(収率95.6%)得た。
【0080】
<比較例2>
比較例1において、化合物(3)−1の代わりに、同量の化合物(3)−2を用いた以外は、比較例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−2を含む生成物を得た。
【0081】
<比較例3>
比較例1において、化合物(3)−1の代わりに、同量の化合物(3)−3を用いた以外は、比較例1と同様の方法で目的の化合物としての化合物(1)−3を含む生成物を得た。
【0082】
(評価)
実施例及び比較例で得られた生成物の色味を目視で観察した。また、分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて得られた生成物のメタノール中での吸光度を測定し、波長385nmにおけるモル吸光係数ε
385と波長430nmにおけるモル吸光係数ε
430との比(ε
430/ε
385)を測定した。結果を以下の表に記す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1〜8の方法で得られた目的の化合物を含む生成物は、比較例の方法で得られたものよりも着色の少ないものであった。また、ε
430/ε
385の値が比較例よりも小さかった。なお、ε
430/ε
385の値が小さいことは、波長385nmの光の吸収が大きく、かつ、波長430nmの光の吸収がほとんどないことを意味する。すなわち、着色が少なく、かつ、長波長側の紫外線の吸収性に優れることを意味する。
【0085】
[試験例2]
<実施例101>
実施例1で得られた化合物(1)−1を含む生成物の1.20gと、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネートの2.71gと、乾燥テトラヒドロフランの20mLとを混合したのち、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズを1滴添加し、窒素雰囲気下において、3時間、加熱還流した。
次いで、加熱還流後の混合液の0.476gに対し、テトラエトキシシランの81.0mgおよびグリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの0.602g、超純水の1.73g、酸触媒である酢酸の17.0mgを添加したのち、30秒間撹拌し、次いで、3分間超音波を照射し、次いで、50℃の水浴中で1時間撹拌して硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を0.1質量%KOHで処理したガラス基材の上に30mil(1milは、2.54×10
−5m)のドクターブレードを用いて塗布し、コーティング膜を、80℃、30分間、送風乾燥機で静置乾燥した。その後、200℃、30分間加熱してガラス物品を作製した。
【0086】
<実施例102〜108、比較例101〜103>
実施例101において、実施例1で得られた化合物(1)−1の代わりに、それぞれ実施例2〜8、比較例1〜3で得られた目的の化合物を含む生成物を用いた以外は実施例101と同様の方法でガラス物品を作製した。
【0087】
(評価)
ガラス物品の透過スペクトルを測定し、波長410nmでの光透過率(%)(T410)と波長450nmでの光透過率(%)(T450)の比(T450/T410)を算出した。結果を以下に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
上記表に示されるように、実施例は比較例よりもT450/T410の値が高く、透明性に優れていた。