(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のバッキングチューブと、前記バッキングチューブを囲むターゲット本体と、前記バッキングチューブと前記ターゲット本体との間に介設され、前記バッキングチューブと前記ターゲット本体とを接合する接合材とを有するスパッタリングターゲットの製造方法であって、
筒状の第1ターゲット部材と、筒状の第2ターゲット部材とをそれぞれの中心軸方向に離間するように並べ、
前記第1ターゲット部材及び前記第2ターゲット部材を並べることにより形成される間隙を形成するとともに、前記間隙に連通する凹部を前記第1ターゲット部材及び前記第2ターゲット部材のそれぞれの内部に形成し、
前記凹部に遮蔽部材を収容し、前記第1ターゲット部材及び前記第2ターゲット部材のそれぞれの内側から前記間隙を前記遮蔽部材によって遮蔽し、
前記バッキングチューブの外周面を前記第1ターゲット部材及び前記第2ターゲット部材で包囲し、
前記第1ターゲット部材と前記バッキングチューブとの間に溶融した前記接合材を充填した後、溶融した前記接合材を前記遮蔽部材と前記バッキングチューブとの間を通じて前記第2ターゲット部材と前記バッキングチューブとの間に充填し、
前記接合材を固化することで、前記第1ターゲット部材と前記バッキングチューブとの間及び前記第2ターゲット部材と前記バッキングチューブとの間を接合し、前記第1ターゲット部材と前記第2ターゲット部材とを有する前記ターゲット本体を前記バッキングチューブの周りに形成する
スパッタリングターゲットの製造方法。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビの大画面化に伴い、フラットパネルディスプレイを製造するときに使用されるスパッタリングターゲットの大型化が進行している。これに伴い、大面積の酸化物ターゲットが出現している。特に、長く且つ円筒型の酸化物ターゲットが取り付けられる成膜装置が開発されている。長い円筒型の酸化物ターゲットを得るために、複数個の円筒型の酸化物焼結体を円筒型のバッキングチューブに接合材で接合する方法が提供されている。
【0003】
しかし、複数個のターゲット部材でスパッタリングターゲットを構成した場合、ターゲット部材の熱膨張によって隣り合うターゲット部材同士が接触して、ターゲット部材が割れる場合がある。この接触による割れを防ぐために、隣り合うターゲット部材間には、隙間が設けられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、隙間が設けられると、隙間に接合材が侵入したり、バッキングチューブが隙間に露出したりして、ターゲット材以外の成分が隙間に付着する可能性がある。このような現象が起きると、ターゲット材以外の成分が被膜に混入し、被膜の特性が悪化することになる。また、成膜工程での異常放電の要因にもなる。
【0005】
このような問題に対処するために、例えば、プレーナ型の分割型スパッタリングターゲットでは、隣接するターゲット部材間の隙間にバッキングプレート側から遮蔽部材を貼り付け、接合材の隙間への侵入、隙間へのバッキングプレートの露出を防ぐ方策がとられている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プレーナ型のスパッタリングターゲットでは、ターゲット部材とバッキングプレートとを接合材を介して対向させた後、それぞれを貼り合わせで接合するのが一般的な接合手法であるのに対し、円筒型のスパッタリングターゲットでは、ターゲット部材とバッキングチューブとの間に接合材を注入して、ターゲット部材とバッキングチューブとを接合する方策がとられる場合がある。従って、円筒型のスパッタリングターゲットを製造する際には、接合材の注入時にいかにして遮蔽部材の剥離を抑制するかが重要になる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、遮蔽部材の剥離が抑制されたスパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るスパッタリングターゲットは、筒状のバッキングチューブと、ターゲット本体と、接合材と、遮蔽部材とを具備する。
上記ターゲット本体は、上記バッキングチューブの外周面を囲む円筒状の複数の円筒状のターゲット部材を有し、上記複数のターゲット部材のそれぞれが上記バッキングチューブの中心軸方向に離間するように並設され、上記中心軸方向に上記複数のターゲット部材が並ぶことよって隣り合うターゲット部材間に形成される間隙が上記バッキングチューブの中心軸周りを周回し、上記間隙に連通する上記凹部が上記バッキングチューブの側に形成されている。
上記接合材は、上記バッキングチューブと上記ターゲット本体との間に設けられ、上記バッキングチューブと上記複数のターゲット部材のそれぞれとを接合する。
上記遮蔽部材は、上記接合材と上記ターゲット本体との間に配置され、上記凹部に収容され、上記間隙を上記接合材の側から遮蔽する。
【0010】
このようなスパッタリングターゲットによれば、凹部に遮蔽部材が収容されるので、遮蔽部材の剥離が抑制される。
【0011】
上記スパッタリングターゲットにおいては、上記隣り合うターゲット部材は、第1ターゲット部材と、第2ターゲット部材とからなり、
上記第1ターゲット部材は、上記第2ターゲット部材に対向する第1端面を有し、
上記第2ターゲット部材は、上記第1ターゲット部材に対向する第2端面を有し、
上記第1ターゲット部材は、上記バッキングチューブに第1距離を隔てて上記接合材に対向する第1内周面と、上記第1端面に連設され、上記バッキングチューブと上記第1距離よりも長い第2距離を隔てて上記遮蔽部材に対向する第2内周面とを有し、上記第1内周面と上記第2内周面とによって段差が形成され、
上記第2ターゲット部材は、上記バッキングチューブに上記第1距離を隔てて上記接合材に対向する第3内周面と、上記第2端面に連設され、上記バッキングチューブと上記第2距離を隔てて上記遮蔽部材に対向する第4内周面とを有し、上記第3内周面と上記第4内周面とによって段差が形成され、
上記第2内周面と上記第4内周面とが上記間隙を隔てて上記中心軸方向に並ぶことより、上記ターゲット本体に上記凹部が形成されてもよい。
【0012】
このようなスパッタリングターゲットによれば、隣り合うターゲット部材に形成される凹部に遮蔽部材が収容されるので、遮蔽部材の剥離が抑制される。
【0013】
上記スパッタリングターゲットにおいては、上記遮蔽部材と上記バッキングチューブとの間の距離は、上記第1距離よりも長くてもよい。
【0014】
このようなスパッタリングターゲットによれば、遮蔽部材とバッキングチューブとの間の距離が第1距離よりも長くなるように、凹部に遮蔽部材が収容されるので、遮蔽部材の剥離が抑制される。
【0015】
上記スパッタリングターゲットにおいては、上記ターゲット本体は、上記バッキングチューブの上記中心軸方向に列状となって複数並設されてもよい。
【0016】
このようなスパッタリングターゲットによれば、長尺のスパッタリングターゲットが簡便に得られる。
【0017】
上記スパッタリングターゲットにおいては、上記複数のターゲット部材のそれぞれは、酸化物の焼結体によって構成されてもよい。
【0018】
このようなスパッタリングターゲットによれば、複数のターゲット部材のそれぞれが酸化物の焼結体によって構成されても、間隙への接合材の侵入が抑制される。
【0019】
上記スパッタリングターゲットにおいては、上記酸化物は、In、Ga、及びZnを有してもよい。
【0020】
このようなスパッタリングターゲットによれば、焼結体がIn、Ga、及びZnを有するので、安定した酸化物半導体膜が形成される。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法では、
筒状の第1ターゲット部材と、筒状の第2ターゲット部材とをそれぞれの中心軸方向に離間するように並べられる。
上記第1ターゲット部材及び上記第2ターゲット部材を並べることにより形成される間隙が形成されるとともに、上記間隙に連通する凹部が上記第1ターゲット部材及び上記第2ターゲット部材のそれぞれの内部に形成される。
上記凹部に遮蔽部材が収容され、上記第1ターゲット部材及び上記第2ターゲット部材のそれぞれの内側から上記間隙が上記遮蔽部材によって遮蔽される。
上記バッキングチューブの外周面は、上記第1ターゲット部材及び上記第2ターゲット部材で包囲され、
上記第1ターゲット部材と上記バッキングチューブとの間に溶融した上記接合材が充填された後、溶融した上記接合材を上記遮蔽部材と上記バッキングチューブとの間を通じて上記第2ターゲット部材と上記バッキングチューブとの間に充填され、
上記接合材を固化することで、上記第1ターゲット部材と上記バッキングチューブとの間及び上記第2ターゲット部材と上記バッキングチューブとの間が接合され、上記第1ターゲット部材と上記第2ターゲット部材とを有する上記ターゲット本体が上記バッキングチューブの周りに形成される。
【0022】
このようなスパッタリングターゲットの製造方法によれば、隣り合うターゲット部材に形成される凹部に遮蔽部材が収容されるので、遮蔽部材の剥離が抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明によれば、遮蔽部材の剥離が抑制されたスパッタリングターゲット及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0026】
図1(a)は、本実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す模式的斜視図である。
図1(b)は、本実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す模式的段面図である。
図1(b)には、
図1(a)のA1−A2線に沿ったX−Y軸断面が示されている。
【0027】
図1(a)、(b)に示すスパッタリングターゲット1は、スパッタリング成膜に用いられる円筒状のターゲットアセンブリである。スパッタリングターゲット1は、バッキングチューブ10と、ターゲット本体20と、接合材30と、遮蔽部材40とを具備する。
【0028】
バッキングチューブ10は、筒状体であり、その内部が中空状になっている。バッキングチューブ10は、一軸方向(例えば、中心軸10cの方向)に延在する。中心軸10cの方向は、バッキングチューブ10の長手方向である。また、バッキングチューブ10は、スパッタリングターゲット1の基材であることから、中心軸10cは、スパッタリングターゲット1の中心軸でもある。
【0029】
バッキングチューブ10は、中心軸10cの周りを周回する外周面101と、外周面101とは反対側に位置し、中心軸10cの周りを周回する内周面102とを有する。バッキングチューブ10を中心軸10cと直交する平面(例えば、X−Y軸平面)で切断した場合、その形状は、例えば、環状になっている。
【0030】
バッキングチューブ10の材料は、熱伝導性に優れた材料を有し、例えば、チタン(Ti)、銅(Cu)等である。バッキングチューブ10の内部には、適宜、冷媒が流通する流路が形成されてもよい。
【0031】
ターゲット本体20は、バッキングチューブ10の外周面101を囲む。ターゲット本体20は、バッキングチューブ10に対して同心状に配置される。ターゲット本体20は、複数のターゲット部材を有する。例えば、
図1(a)、(b)の例では、ターゲット本体20は、一組のターゲット部材20A、20Bを有している。本実施形態では、ターゲット部材20Aを第1ターゲット部材、ターゲット部材20Bを第2ターゲット部材とする。
【0032】
ターゲット部材20A、20Bのそれぞれは、円筒状である。ターゲット部材20A、20Bのそれぞれは、バッキングチューブ10を囲む。また、ターゲット部材20A、20Bは、バッキングチューブ10の中心軸10cの方向に並設される。
【0033】
ターゲット部材20A、20BのそれぞれをX−Y軸平面で切断した場合、その形状は、例えば、環状になっている。例えば、X−Y軸平面におけるターゲット部材20A、20Bのそれぞれの断面形状は、同じ形状をしている。また、Z軸方向におけるターゲット部材20A、20Bのそれぞれの長さは、同じである。
【0034】
ターゲット部材20A、20Bのそれぞれは、互いに接触することなく、バッキングチューブ10の中心軸10cの方向に互いに接触することなく離間するように並設される。換言すれば、ターゲット本体20は、中心軸10cに沿った方向で分割された分割構造を有する。
【0035】
中心軸10cの方向に隣り合うターゲット部材20Aとターゲット部材20Bとの間には、間隙(分割部)201が形成される。間隙201は、バッキングチューブ10の中心軸10cの周りを周回する。間隙201は、中心軸10cの方向において、凹部204の中央に位置する。間隙201の中心軸10cの方向における幅については、特に限定されず、例えば、ターゲット部材20A、20Bの熱膨張によって、それぞれが互いに接触しない程度に設定される。例えば、間隙201の幅は、0.1mm以上0.5mm以下である。
【0036】
ターゲット部材20A、20Bは、同一材料で構成され、例えば、酸化物の焼結体によって構成されている。一例として、焼結体は、In及びZnを有する。例えば、焼結体は、In−Ga−Zn−O(IGZO)からなる。例えば、焼結体は、In−Ti−Zn−Sn−O(ITZTO)焼結体、In−Ti−Zn−Sn−O(IGTO)焼結体等でもよい。
【0037】
接合材30は、バッキングチューブ10とターゲット本体20との間に介設されている。接合材30は、バッキングチューブ10とターゲット本体20とに密に接している。接合材30は、バッキングチューブ10と複数のターゲット部材20A、20Bのそれぞれとを接合する。接合材30は、例えば、インジウム(In)、錫(Sn)、ハンダ材等を有する。
【0038】
遮蔽部材40は、接合材30とターゲット本体20との間に配置される。遮蔽部材40は、間隙201と接合材30との間に位置する。遮蔽部材40は、間隙201を接合材30の側から遮蔽する。
【0039】
ターゲット本体20に遮蔽部材40が貼付された構造を詳細に説明する。
図2(a)、(b)は、ターゲット本体と接合材との間に設けられた遮蔽部材を示す模式的断面図である。
【0040】
遮蔽部材40は、
図2(a)に示す遮蔽部材40Aであってもよく、
図2(b)に示す遮蔽部材40Bでもよい。
【0041】
図2(a)に示すように、ターゲット本体20には、バッキングチューブ10の側に間隙201に連通する凹部204が形成されている。
【0042】
例えば、ターゲット部材20Aは、ターゲット部材20Bに対向する端面202(第1端面)を有し、ターゲット部材20Bは、ターゲット部材20Aに対向する端面203(第2端面)を有する。
【0043】
ターゲット部材20Aは、その内周面の大部分を構成する内周面205(第1内周面)と、端面202に連設された内周面206(第2内周面)とを有する。内周面205は、接合材30を介してバッキングチューブ10に距離A(第1距離)を隔てて対向する。内周面206は、バッキングチューブ10と距離Aよりも長い距離B(第2距離)を隔てて遮蔽部材40Aに対向する。ターゲット部材20Aの内周面において、内周面205と内周面206とによって段差が形成される。
【0044】
ターゲット部材20Bは、その内周面の大部分を構成する内周面207(第3内周面)と、端面203に連設された内周面208(第4内周面)とを有する。内周面207は、バッキングチューブ10に距離Aを隔てて接合材30に対向する。内周面208は、バッキングチューブ10と距離Bを隔てて遮蔽部材40Aに対向する。ターゲット部材20Bの内周面において、内周面207と内周面208とによって段差が形成される。
【0045】
内周面206と内周面208とが間隙201を隔てて中心軸10cの方向に並ぶことより、ターゲット本体20には、バッキングチューブ10の側に凹部204が形成される。凹部204は、中心軸10cの周りを周回する。なお、内周面206は、ターゲット部材20Aの両端に設けられてもよく、内周面208は、ターゲット部材20Bの両端に設けられてもよい。
【0046】
遮蔽部材40Aは、凹部204に収容され、間隙201を接合材30の側から遮蔽する。また、遮蔽部材40Aとバッキングチューブ10との間の距離は、距離Aよりも長い。すなわち、遮蔽部材40Aは、凹部204から突き出ることなく、凹部204に収容されている。
【0047】
遮蔽部材40Aは、粘着性を有する粘着シート401と、プラズマ耐性を有する樹脂シート402とを有する。樹脂シート402は、ターゲット部材20A、20Bと粘着シート401との間に設けられる。樹脂シート402は、遮蔽部材40Aの遮蔽基材である。粘着シート401は、遮蔽部材40Aの貼付材である。
【0048】
樹脂シート402は、間隙201を跨ぎ、その一部が間隙201に露出される。樹脂シート402は、粘着シート401によってターゲット部材20A、20Bのそれぞれに接合材30の側から貼付される。粘着シート401及び樹脂シート402のそれぞれの材料は、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を含む。
【0049】
一方、
図2(b)に示す遮蔽部材40Bは、粘着シート401と、金属シート403と、酸化物層404とを有する。遮蔽部材40Bは、接合材30からターゲット部材20A、20Bに向かって、粘着シート401/金属シート403/酸化物層404の順に並ぶ積層構造を有する。遮蔽部材40Bにおいては、金属シート403が粘着シート401と酸化物層404とを接合し、それぞれの応力を緩和する中間層として機能し、酸化物層404が遮蔽基材として機能する。
【0050】
酸化物層404は、間隙201を跨ぎ、その一部が間隙201に露出される。さらに、酸化物層404は、金属シート403を介して粘着シート401によりターゲット部材20A、20Bのそれぞれに接合材30の側から貼付される。
【0051】
金属シート403は、例えば、チタン(Ti)を含む。酸化物層404は、ターゲット部材20A、20Bと同じ材料で構成されている。これにより、スパッタリング時に、遮蔽部材40Bがプラズマに晒されたとしても、ターゲット本体20の成分以外の成分が被膜に混在しにくくなる。
【0052】
遮蔽部材40Bの厚みに応じて適宜、距離Bの長さが距離B'(B'>B)に設定される。また、接合材30をバッキングチューブ10とターゲット本体20との間に充填した後には、凹部204の一部にも接合材30が注入される。
【0053】
スパッタリングターゲット1の製造方法について説明する。
【0054】
まず、ターゲット部材20Aと、ターゲット部材20Bとがそれぞれの中心軸方向に離間するように直列状に並べられる。この際、ターゲット部材20A及びターゲット部材20Bを並べることにより間隙201が形成され、間隙201と連通する凹部204がターゲット部材20A及びターゲット部材20Bのそれぞれの内部に形成される。
【0055】
次に、
図2(a)、(b)に示すように、凹部204に遮蔽部材40(40Aまたは40
)が収容され、ターゲット部材20A及びターゲット部材20Bのそれぞれの内側から間隙201が遮蔽部材40によって遮蔽される。これにより、ターゲット部材20Aとターゲット部材20Bとが遮蔽部材40で連結したターゲット本体20が形成される。
【0056】
次に、バッキングチューブ10を立てかけた状態で、溶融した接合材30がバッキングチューブ10の下方からバッキングチューブ10とターゲット本体20との間に充填される。接合材30の充填では、圧力(重力)差を利用した充填、圧入等が利用される。
【0057】
図3(a)、(b)は、ターゲット本体とバッキングチューブとの間に接合材が充填される様子を示す模式図である。
【0058】
図3(a)に示すように、バッキングチューブ10の外周面101がターゲット本体20で包囲される。続いて、ターゲット本体20の中、ターゲット部材20Aとバッキングチューブ10との間に接合材30が注入される。接合材30の注入を続け、接合材30が遮蔽部材40の位置に到達しても、間隙201が遮蔽部材40で遮蔽されているため、接合材30がバッキングチューブ10の側から間隙201に漏れにくくなっている。
【0059】
さらに、遮蔽部材40は、凹部204に収容されているため、接合材30にとっては、遮蔽部材40とバッキングチューブ10との間を通過する空間が確保されている。これにより、接合材30は、遮蔽部材40によって負荷を受けにくく、
図3(b)に示すように、バッキングチューブ10とターゲット部材20Bとの間にも充填される。
【0060】
この後、接合材30が固化し、バッキングチューブ10とターゲット部材20Aとが接合材30によって接合され、バッキングチューブ10とターゲット部材20Bとが接合材30によって接合される。これにより、ターゲット本体20がバッキングチューブ10の周りに形成される。この後、必要に応じて、ターゲット部材20A、20Bの表面粗さを調える仕上げ加工が施される。
【0061】
スパッタリングターゲット1を用いた場合の効果の一例について説明する。
【0062】
スパッタリングターゲット1においては、ターゲット部材20A、20B間の間隙201がバッキングチューブ10の側から遮蔽部材40により遮蔽される。
【0063】
これにより、間隙201は、バッキングチューブ10の側から遮蔽部材40によって確実に遮蔽される。この結果、接合材30が間隙201に挿入しにくくなり、接合材30の成分、バッキングチューブ10の成分が被膜に混入しにくくなる。また、バッキングチューブ10も間隙201に露出されず、間隙201からターゲット部材の成分以外の成分(異物)が放出されにくくなる。
【0064】
遮蔽部材40が凹部204に収容されることにより、接合材30の充填時には、遮蔽部材40とバッキングチューブ10との間の空間が確実に確保される。これにより、溶融した接合材30が遮蔽部材40によって負荷を受けることなく、バッキングチューブ10とターゲット部材20Aとの間、及びバッキングチューブ10とターゲット部材20Bとの間に満遍なく行き渡る。
【0065】
また、遮蔽部材40にとっては、接合材30の充填時に、接合材30からの負荷を受けにくくなり、遮蔽部材40がターゲット本体20から剥がれにくくなる。さらに、遮蔽部材40は、凹部204に収容されていることから、接合材30の充填時に遮蔽部材40の位置ずれが起きにくくなる。これにより、間隙201は、遮蔽部材40によって確実に遮蔽される。
【0067】
図4は、本実施形態に係るスパッタリングターゲットの変形例を示す模式的斜視図である。
【0068】
スパッタリングターゲット2においては、ターゲット本体20がバッキングチューブ10の中心軸10cの方向に列状となって複数並設されている。凹部204は、一組のターゲット部材20A、20Bに限らず、隣り合うターゲット部材間に形成される。複数のターゲット本体20のそれぞれは、中心軸10cの方向に互いに離間して配置される。複数のターゲット本体20を有するスパッタリングターゲット2の中心軸10cの方向における長さは、2000mm以上である。
【0069】
このような構成によれば、上述した効果に加え、スパッタリングターゲットの中心軸10cの方向における長さを簡便に長くすることができる。
【実施例】
【0070】
(実施例)
【0071】
原料として、一次粒子の平均粒径が1.1μmであるIn
2O
3粉、一次粒子の平均粒径が0.5μmであるZnO粉、及び一次粒子の平均粒径が1.3μmであるGa
2O
3を酸化物のモル比で1:2:1となるように秤量した。これらの原料粉末を湿式ボールミルで粉砕・混合した。粉砕メディアとしてφ5mmのジルコニアボールを使用した。粉砕混合したスラリーをスプレードライヤで乾燥造粒し、造粒粉を得た。
【0072】
造粒粉を金属製の芯棒が内部に設置されたポリウレタン製のゴム型に充填して、造粒粉を密封後、98MPaの圧力でCIP成形を行って円筒状の成形体を得た。得られた成形体を設定温度1500℃で10時間焼成することで円筒型の焼成体(ターゲット部材20A、20B)を得た。さらに、ターゲット部材を外径155mm、内径135mm、長さ260mmになるように機械加工処理を行った。
【0073】
図2に示したように、2つのターゲット部材20A、20Bがそれぞれの端面を対向させたときに形成される凹部204をターゲット部材20A、20Bのそれぞれに形成した。1つのターゲット部材に形成される凹部204(内周面206または208)の中心軸10cn方向における長さは、10mmである。すなわち、凹部の中心軸10cにおける長さは、10mmを倍にした長さに間隙201の幅を加えた長さである。凹部204の深さは、0.5mmである。内周面206は、ターゲット部材20Aの両端に形成し、内周面208は、ターゲット部材20Bの両端に形成した。
【0074】
3組のターゲット部材20A、20B(計6個のターゲット部材)を直列状に配置して、全ての間隙201に、遮蔽部材40として、内側から厚さ0.025mm、幅5mmのポリイミドフィルムを厚さ0.06mm、幅15mmのポリイミド粘着テープが中央に貼付したものを円周に沿って貼り付けた。
【0075】
円筒型のターゲット部材の集合体に、外径133mm、内径125mm、長さ1600mmのTi製のバッキングチューブ10を挿入後、バッキングチューブ10と、ターゲット部材の集合体との位置合わせを行った後、加熱溶融したInをバッキングチューブ10とターゲット部材の集合体との間に注入した。Inが冷却後、マイクロスコープを用いて、それぞれの間隙201の観察を行ったところ、Inは、間隙201に浸入していないことが確認された。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。