(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドーピング元素は、Y、Zr、La、Sr、Ga、Mg、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ti、Ta、Nb、W、Mo、およびCrからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
前記ドーピング元素含有原料物質は、ドーピング元素含有酸化物、水酸化物およびオキシ水酸化物からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
前記ドーピング元素含有原料物質は、イットリア安定化ジルコニア、ガドリニアドープされたセリア、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト、ランタンストロンチウムマンガナイト、カルシア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、ニッケル‐イットリア安定化ジルコニアサーメットおよびAl2O3からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含む、請求項1に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
前記ドーピング元素含有原料物質は、正極活物質用金属前駆体およびドーピング元素含有原料物質の全含有量に対して、500ppm〜10000ppmの含有量で使用される、請求項1に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本明細書および請求の範囲に使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0021】
従来ドープされた正極活物質の製造は、正極活物質またはその前駆体とドーピング元素含有原料物質の乾式混合または湿式混合後、熱処理により行われた。乾式混合の場合、工程は簡単であるものの、均一な分散が不可能であったり、ドーピング物質が凝集しやすく、また、微粉の使用時に粉塵が発生するという問題があった。また、湿式混合の場合、乾式に比べて均一な分散およびドープが可能であるものの、工程が複雑であるという欠点がある。また、前記乾式と湿式方法は、いずれも混合時に攪拌偏差によるデッドゾーンの発生、および連続工程による混合可能性の問題があった。
【0022】
これに対し、本発明では、ドープされた正極活物質の製造時に、正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質を音響共振を用いて混合し、また、前記音響共振条件に応じて金属前駆体とドーピング元素含有原料物質の粒径をともに制御することで、活物質の表面での損傷および特性の低下の恐れなく、ドーピング元素で前記金属前駆体を均一にドープし、攪拌偏差によるデッドゾーンを最小化することができ、結果、従来方法によるドープ時に比べて正極活物質の構造的安定性をより大幅に増加させ、これにより、電池の容量、レート(rate)特性およびサイクル特性をさらに改善することができる。
【0023】
すなわち、発明の一実施形態による二次電池用正極活物質の製造方法は、
正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質を音響共振を用いて混合し、前記ドーピング元素でドープされた前駆体を準備するステップ(ステップ1)と、
前記ドープされた前駆体をリチウム原料物質と混合した後、熱処理するステップ(ステップ2)とを含む。この際、前記正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質は、2000〜5:1の平均粒径比を有する。
【0024】
以下、各ステップ別に詳細に説明すると、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法において、ステップ1は、ドープされた前駆体を準備するステップである。
【0025】
具体的には、前記ステップ1は、正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質を音響共振(Acoustic Resonance)を用いて混合することで行われ得る。
【0026】
音響共振による混合の際、音響振動を混合対象物質に加えると、音響エネルギーが混合対象の物質を直接振動させることになり、この際、特定の音響振動の周波数で共振が発生し、共振によって混合が起こる。かかる音響共振による混合は、通常のプラネタリーミキサー(planetary mixer)や高速ミキサー(speed mixer)に取り付けられたインペラ攪拌による混合や超音波混合とは異なる。音響共振による混合は、混合過程で発生する低い振動数と高い強度の音響エネルギー(acoustic energy)が速い加速度(g‐forces)で混合系(mixing system)の全体にわたり均一なせん断力が発揮し、せん断場(shear field)を形成することで、急速流動化および分散を可能にする。また、音響共振による混合は、音響エネルギーの振動数が、超音波混合に比べて数百倍以上も低いため、混合規模がより大きい。また、バルク流動(bulk flow)によって混合が起こるインペラ攪拌とは異なり、混合系の全体にわたり微小規模の混合が多発的に起こることから、均一な分散が可能である。
【0027】
さらに、本発明において、正極活物質用金属前駆体に対するドープのために使用されるイットリア安定化ジルコニアなどのドーピング元素含有原料物質は、前駆体に対する混和性および反応性が非常に低いため、均一なドープが起こり難い。これに対し、本発明では、音響共振による混合を行うことで、ドーピング元素含有原料物質の分散性を高め、前駆体に対する反応性を高めて、前駆体の表面に対する均一なドープが可能である。
【0028】
前記音響共振による混合は、通常の音響共振機器を用いて行われてもよく、具体的には、音響ミキサー(acoustic mixer)を用いて行われてもよい。
【0029】
音響共振による混合工程は、使用される正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質の粒径比、さらに、それぞれの種類に応じて混合条件が異なってもよく、金属前駆体および活物質の表面に対する損傷および損失を最小化し、且つ均一で優れた効率でドーピング効率を得るためには、前記金属前駆体とドーピング元素含有原料物質の粒径を最適化することが好ましく、さらに、それぞれの種類をともに最適化することがより好ましい。
【0030】
具体的には、前記正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質の平均粒径比は、2000〜5:1であってもよく、より具体的には1000〜5:1または300〜5:1、さらに具体的には7.5〜5:1であってもよい。上述の平均粒径比の条件を満たすと、前駆体粒子に対する損傷および損失がなく、より優れた効率でドーピング元素含有原料物質を均一に分散させることができる。
【0031】
より具体的には、前記ドーピング元素含有原料物質の平均粒径(D
50)が4nm〜5μm、あるいは10nm〜5μm、さらに具体的には50nm〜3μmであり、前記正極活物質用金属前駆体の平均粒径(D
50)が10μm〜20μmの条件下で、正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質は、平均粒径比は2000〜5:1であってもよく、より具体的には1000〜5:1、または300〜5:1、さらに具体的には7.5〜5:1であってもよい。
【0032】
また、上述の粒径条件を満たす正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質に対する、音響共振による混合は、50g〜90gの音響エネルギーを印加することで行われてもよく、より具体的には、50g〜90gの音響エネルギーを1分〜5分間印加することで行われてもよい。この際、前記単位gは、重力加速度を意味する(100g=980m/s
2)。
【0033】
また、前記正極活物質用金属前駆体の構造に応じて、ドーピング物質と金属前駆体の混合様相が異なり得る。
【0034】
具体的には、本発明において、前記正極活物質用金属前駆体は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよく、この際、前記一次粒子は、板状の形態を有してもよい。この際、一次粒子の板の厚さに応じて、二次粒子状の金属前駆体の緻密度が異なり得、その結果として、前記金属前駆体に対するドーピング元素のドープ様相が異なり得る。したがって、一次粒子の板の厚さに応じて、前記音響共振時の条件を最適化することで、より均一で効率的なドープが可能となる。
【0035】
具体的には、正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質が、上述の平均粒径比を満たす条件下で、前記正極活物質用金属前駆体を形成する一次粒子が板状の形態を有しており、また板の平均厚さが150nm以下、より具体的には80nm〜130nmであってもよい。通常、板形状を有する一次粒子の凝集により形成された金属前駆体の場合、板形状の一次粒子の間に空隙が形成されて、二次粒子状の金属前駆体は、広い比表面積を有することができる。しかし、この場合、一次粒子の間の空隙内へのドーピング元素の導入が容易でないため、ドープされるドーピング元素の量が少ないか、または空隙内が空っぽのまま残る可能性があり、ドーピング元素によるドープは、二次粒子状の金属前駆体の表面で主に起こり得る。これに対して、前記音響共振による混合が、50g〜90gの力を1〜4分間印加して行われる場合、板状の一次粒子間の空隙内に均一にドーピング元素が導入されることで、優れたドーピング効率を示すことができ、その結果として、活物質の構造安定性を向上させることができる。
【0036】
本発明において、「板状」または「板形状」は、互いに対応または対面する二つの面が平たく、水平方向のサイズが垂直方向のサイズよりも大きい粒団(aggregate)構造を意味し、完全な板形状は言うまでもなく、板形状と類似した形状であるフレーク(flake)状、鱗片状などを含んでもよい。また、前記板形状の一次粒子における平均板厚さは、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した一次粒子の板厚さの平均値である。
【0037】
また、正極活物質用金属前駆体とドーピング元素含有原料物質が上述の平均粒径比を満たす条件下で、前記正極活物質用金属前駆体を形成する一次粒子が板状の形態を有し、また板の平均厚さが150nm超、具体的には200nm〜250nmの場合、前記金属前駆体は、板状の一次粒子間の空隙が少ない密集構造の二次粒子状であってもよい。通常、上述の厚さを有する一次粒子からなる前駆体の場合、厚さが薄い板状の一次粒子を含む金属前駆体に比べてドーピング元素の一次粒子間の空隙内への導入がより難しいため、ドーピング元素が前駆体の表面上に主に位置することになり、この際、二次粒子状の表面に局所的にドーピング元素の凝集が生じ得る。これに対して、前記音響共振による混合が、60g〜90gの力を2分〜5分間印加して行われる場合、二次粒子状の前駆体の表面上にドーピング元素が均一に塗布された塗布元素の層が形成される。この場合、活物質の表面側でのドープされたリチウム複合金属酸化物の含有量が増加し、結果、活物質の表面の安定性を高めることができる。
【0038】
一方、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法において、前記ドーピング元素は、具体的には、Y、Zr、La、Sr、Ga、Mg、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ti、Ta、Nb、W、Mo、またはCrなどであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の元素を含んでもよい。
【0039】
より具体的には、前記ドーピング元素は、活物質粒子の製造時に焼成工程中に粒子の成長を抑制することで活物質の構造的安定性を向上させることができる周期表第6族(VIB族)に相当する元素であってもよい。さらに具体的には、前記ドーピング元素は、W、MoおよびCrからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であってもよく、より具体的には、WおよびCrからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であってもよい。
【0040】
また、前記ドーピング元素は、より具体的には、周期表第13族(IIIA族)に相当する元素であってもよく、さらに具体的には、B、Al、GaおよびInからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であってもよい。
【0041】
また、前記ドーピング元素は、より具体的には、第3族(IIIB族)および第4族(IV族)の元素からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であってもよく、より具体的には、Ti、Sc、Y、ZrおよびLaからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であってもよい。
【0042】
また、前記ドーピング元素は、より具体的には、第5族(V族)元素に相当する元素であってもよく、さらに具体的には、V、Nb、およびTaからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であってもよい。
【0043】
また、前記ドーピング元素含有原料物質は、上述のドーピング元素を含むAl
2O
3のような酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物などであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。
【0044】
また、前記ドーピング元素含有原料物質は、それ自体でも優れたリチウムイオン伝導性を有するだけでなく、これより由来した金属元素でドープする時に、よりも優れたドーピング効果とともに活物質構造安定性をさらに向上させることができるセラミック系イオン伝導体であってもよい。前記セラミック系イオン伝導体は、具体的には、イオン伝導性のセラミックおよびメタルセラミック(metal ceramic)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0045】
前記イオン伝導性セラミックは、具体的には、イットリア安定化ジルコニア(yttria stabilized zirconia、YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(calcia stabilized zirconia、CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(scandia‐stabilized zirconia、SSZ)などのY、Ca、NiまたはScがドープされたジルコニア(ZrO
2)系酸化物;ガドリニアドープされたセリア(gadolinia doped ceria、GDC)、サマリウムドープされたセリア(samarium doped ceria、SDC)、イットリアドープされたセリア(yttria‐doped ceria、YDC)などのGd、YまたはSmがドープされたセリア(CeO
2)系酸化物;ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(lanthanum strontium gallate magnesite、LSGM)、ランタンストロンチウムマンガナイト(lanthanum strontium manganite、LSM)またはランタンストロンチウムコバルトフェライト(lanthanum strontium cobalt ferrite、LSCF)などのランタン系酸化物などであってもよく、これらのうち1種単独で、または2種以上の混合物が使用されてもよい。
【0046】
また、前記イオン伝導性セラミックにおいて、前記YSZは、酸化ジルコニウム(ジルコニア)に酸化イットリウム(イットリア)を添加し、常温でも安定化させたセラミック材料である。前記YSZは、ジルコニアにイットリアが添加されることで、Zr
4+イオンの一部がY
3+に取り替えられてもよい。これにより、4個のO
2−イオンの代わりに3個のO
2−イオンに取り替えられ、結果、酸素欠陥(oxygen vacancy)が形成され得る。このように生成された酸素欠陥のため、YSZは、O
2−イオン伝導性を有することになり、温度が高いほど伝導度が良好になる。具体的には、前記YSZは、Zr
(1−x)Y
xO
2−x/2であり、この際、0.01≦x≦0.30であり、より具体的には、0.08≦x≦0.10であってもよい。一方、本発明において、常温は、特に定義されない限り、23±5℃での温度範囲を意味する。前記YSZは、Zr
(1−x)Y
xO
2−x/2(この際、0.01≦x≦0.30であってもよく、より具体的には0.08≦x≦0.10)であってもよい。
【0047】
一方、前記メタルセラミックは、セラミックと金属粉末を混合焼結して製造したものであり、耐熱性と硬度が高いセラミックの特性と、焼成変形や電気伝導度を有する金属の特性をいずれも有する。具体的には、前記メタルセラミックにおいて、セラミックは、上述のイオン伝導性セラミックであってもよく、前記金属は、ニッケル、モリブデンまたはコバルトなどであってもよい。より具体的には、前記メタルセラミックは、ニッケル‐イットリア安定化ジルコニアサーメット(Ni‐YSZ cermet)などのサーメットであってもよい。
【0048】
また、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法において、前記ドーピング元素含有原料物質の平均粒径(D
50)は4nm〜5μmであってもよい。前記範囲内の平均粒径を有すると、音響共振法による混合時に均一な分散が可能となり、また、高い効率で前駆体にドープされ得る。より具体的には、前記ドーピング元素含有原料物質の平均粒径(D
50)は、10nm〜5μm、さらに具体的には50nm〜3μmであってもよい。
【0049】
本発明において、前記ドーピング元素含有原料物質の平均粒径(D
50)は、粒径分布の50%基準での粒径として定義することができる。前記ドーピング元素含有原料物質の平均粒径(D
50)は、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができ、具体的には、レーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D
50)を算出することができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法において、前記ドーピング元素含有原料物質は、最終製造される正極活物質でのリチウム複合金属酸化物にドープされるドーピング元素含有原料物質由来金属元素の含有量に応じて、その使用量が適宜選択されてもよい。具体的には、前記ドーピング元素含有原料物質は、正極活物質用金属前駆体およびドーピング元素含有原料物質の全含有量に対して、500ppm〜20,000ppmの含有量、より具体的には1,000ppm〜8,000ppmの量で使用されてもよい。
【0051】
一方、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法において、前記正極活物質用金属前駆体は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能なリチウム複合金属酸化物を形成することができる物質であり、具体的には、正極活物質用金属含有酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物またはリン酸化物であってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記正極活物質用金属は、具体的には、ニッケル、コバルトマンガンおよびアルミニウムからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の金属元素を含んでもよい。
【0052】
前記正極活物質用金属前駆体は、通常の製造方法により製造され得る。一例として、共沈法により製造される場合、正極活物質用金属含有原料物質の水溶液にアンモニウムカチオン含有錯体形成剤と塩基性化合物を添加し、共沈反応させることで、製造され得る。
【0053】
この際、前記正極活物質用金属含有原料物質としては、目的とする活物質を構成するリチウム複合金属酸化物の組成に応じて決定され得る。具体的には、前記リチウム複合金属酸化物を構成する金属を含む水酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩または硫酸塩などが使用されてもよい。前記正極活物質用金属は、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、Zr、Nb、Cu、V、Mo、Ti、Zn、Al、GaおよびMgからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合金属であってもよく、より具体的には、Ni、Co、MnおよびAlからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合金属であってもよい。
【0054】
具体的には、前記正極活物質がリチウム複合金属化合物として、リチウム‐ニッケル‐コバルト‐マンガン系化合物を含む場合、その前駆体として正極活物質用金属含有水酸化物の製造のための原料物質としては、ニッケル(Ni)含有原料物質、コバルト(Co)含有原料物質、およびマンガン(Mn)含有原料物質が使用されてもよい。前記各金属元素含有原料物質は、通常、正極活物質の製造時に使用されるものであれば、特に制限なく使用可能である。一例として、前記Co含有原料物質としては、具体的には、Co(OH)
2、CoO、CoOOH、Co(OCOCH
3)
2・4H
2O、Co(NO
3)
2・6H
2OまたはCo(SO
4)
2・7H
2Oなどであってもよく、上述の化合物のいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。
【0055】
また、前記正極活物質用金属含有原料物質は、最終製造される正極活物質でのリチウム複合金属酸化物内の金属の含有量を考慮して、適切な含有量比で使用することが好ましい。
【0056】
また、前記正極活物質用金属含有原料物質は、水;または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物に溶解させて水溶液として使用されてもよい。
【0057】
また、前記正極活物質用金属含有水酸化物の製造に使用可能なアンモニウムカチオン含有錯体形成剤は、具体的には、NH
4OH、(NH
4)
2SO
4、NH
4NO
3、NH
4Cl、CH
3COONH
4、またはNH
4CO
3などであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記アンモニウムカチオン含有錯体形成剤は、水溶液の形態で使用されてもよく、この際、溶媒としては、水;または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されてもよい。
【0058】
また、前記正極活物質用金属含有水酸化物の製造に使用可能な塩基性化合物は、NaOH、KOHまたはCa(OH)
2などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物またはこれらの水和物であってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。前記塩基性化合物も水溶液の形態で使用されてもよく、この際、溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されてもよい。
【0059】
また、正極活物質用前記金属含有水酸化物の粒子の形成のための共沈反応は、金属含有原料物質の水溶液のpHが8〜14の条件で行われ得る。このために、前記アンモニウムカチオン含有錯体形成剤と塩基性化合物の添加量を適宜調節することが好ましい。この際、前記pH値は、液体の温度25℃でのpH値を意味する。また、前記共沈反応は、30℃〜60℃の温度で不活性雰囲気下で行われてもよい。前記のような共沈反応の結果として、前駆体として正極活物質用金属含有水酸化物の粒子が生成され、水溶液の中に析出される。
【0060】
前記のような製造方法により製造される正極活物質用金属前駆体は、上述のように、具体的には、本発明において、前記正極活物質用金属前駆体は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよく、この際、前記一次粒子は、板の形状を有してもよい。この際、製造工程での反応速度の調節により、一次粒子の板厚さを調節することができる。
【0061】
具体的には、前記正極活物質用金属前駆体は、板の平均厚さが150nm以下、より具体的には80nm〜130nmである複数個の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよく、または板の平均厚さが150nm超、具体的には、200nm〜250nmである一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。
【0062】
また、前記二次粒子状の正極活物質用金属前駆体の平均粒径(D
50)は、4μm〜30μmであってもよく、より具体的には、10μm〜20μmであってもよい。前駆体の平均粒径が、上述の範囲であると、より効率的な適用が可能となる。本発明において、前記正極活物質用金属前駆体の平均粒径(D
50)は、粒径分布の50%基準での粒径として定義することができる。前記正極活物質用金属前駆体の平均粒径(D
50)は、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができ、具体的には、レーザ回折粒度測定装置(例えばMicrotrac MT 3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D
50)を算出することができる。
【0063】
前記のような音響共振処理により、様々な金属元素でドープされた前駆体が製造される。この際、ドープされた金属元素は、金属元素の位置選好度および前駆体物質の結晶構造に応じて、前駆体内に均一に分布してもよく、または前駆体の粒子の中心から表面まで含有量の分布が増加または減少する濃度勾配を有して存在してもよく、または前駆体の表面側にのみ存在してもよい。
【0064】
次に、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法において、ステップ2は、前記ステップ1で製造したドーピング前駆体をリチウム原料物質と混合した後、熱処理して正極活物質を製造するステップである。
【0065】
前記リチウム原料物質としては、具体的には、リチウムを含む水酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩またはクエン酸塩などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。より具体的には、前記リチウム原料物質は、Li
2CO
3、LiNO
3、LiNO
2、LiOH、LiOH・H
2O、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CH
3COOLi、Li
2O、Li
2SO
4、CH
3COOLiおよびLi
3C
6H
5O
7からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の化合物を含んでもよい。
【0066】
前記リチウム原料物質は、最終製造されるリチウム複合金属酸化物でのリチウム含有量に応じて、その使用量が決定され得る。
【0067】
前記ドープされた前駆体とリチウム原料物質の混合は、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザ、高速ホモジナイザ、または超音波分散装置などを用いた通常の混合方法により行われてもよく、または、上述のドープのための混合時と同様、音響共振により行われてもよい。
【0068】
具体的には、ドープされた前駆体とリチウム原料物質との均一混合効果を考慮すると、音響共振により行われてもよく、より具体的には、ドープされた前駆体とリチウム原料物質との混合物に対して50g〜90gの音響エネルギーを印加することで行われてもよく、さらに具体的には、50g〜90gの音響エネルギーを1分〜5分間印加することで行われてもよい。この際、前記単位gは、重力加速度を意味する(100g=980m/s
2)。
【0069】
また、前記音響共振による混合時に混合効率を高めるために、ドープされた前駆体とリチウム原料物質の平均粒径比を制御してもよく、具体的には、前記ドープされた前駆体とリチウム原料物質の平均粒径比は、10:1〜3:1であってもよい。
【0070】
次に、前記ドープされた前駆体とリチウム原料物質の混合物に対する1次熱処理は、700℃〜950℃の温度で行われてもよい。1次熱処理の際に温度が700℃未満の場合には、未反応の原料物質の残留によって単位重量当たりの放電容量の低下、サイクル特性の低下および作動電圧の低下の恐れがあり、950℃を超える場合には、副反応物の生成によって単位重量当たりの放電容量の低下、サイクル特性の低下および作動電圧の低下の恐れがある。
【0071】
また、前記1次熱処理は、大気中でまたは酸素雰囲気下で実施されてもよく、5時間〜30時間行われてもよい。前記のような条件で行われると、混合物の粒子間の拡散反応が十分に行われ得る。
【0072】
前記ステップ2の結果として、リチウム複合金属酸化物粒子を含み、前記粒子の表面側に存在するリチウム複合金属酸化物が、前記ドーピング元素含有原料物質由来の金属元素でドープされた正極活物質が製造される。
【0073】
また、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法は、前記ステップ2での1次熱処理の後、取得した結果物に対する水洗工程をさらに含んでもよい。
【0074】
前記水洗工程は、水との混合など、通常の水洗方法を用いて行われてもよい。より具体的には、前記結果物と水との混合として、音響共振による混合により水洗工程が行われてもよい。従来の水洗方法は、凝集粒子の間の毛管現象によって水洗制限性があり、また、過水洗の場合、正極活物質の特性が低下する問題があった。これに対し、音響共振を用いて水による水洗工程を行う場合、粒子分散が容易となり水洗制限性なく、優れた効率で水洗が行われ得、また、水洗時間の調整により、正極活物質の特性の低下を防止することができる。
【0075】
水洗の際、音響共振は、20g〜90gの音響エネルギーを10秒〜30分間印加することで行われ得る。上述の条件で行うと、正極活物質の表面の損傷および損失の恐れなく、正極活物質に残留する未反応の原料物質および不純物などを優れた効率で除去することができる。この際、前記単位gは、重力加速度を意味する(100g=980m/s
2)。
【0076】
また、本発明の一実施形態による正極活物質の製造方法は、前記ステップ2での熱処理の後または前記水洗工程の後、取得した結果物に対する表面処理工程をさらに含んでもよい。
【0077】
前記表面処理工程は、通常の方法により行われてもよく、具体的には、前記熱処理の後、取得した結果物と表面処理剤を音響共振を用いて混合した後、さらに熱処理(以下、2次熱処理とする)することで行われてもよい。
【0078】
前記表面処理剤は、Me原料物質(Meは、Al、Y、B、W、Hf、Nb、Ta、Mo、Si、SnおよびZrからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素)と混合した後、熱処理する場合、Me原料物質として、Me含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などが使用され得る。一例として、前記MeがBの場合、ホウ酸、四ホウ酸リチウム、酸化ホウ素およびホウ酸アンモニウムなどが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記Meがタングステンの場合、酸化タングステン(VI)などが挙げられる。
【0079】
表面処理の際、音響共振を用いることで、より優れた効率で正極活物質の表面に均一な表面処理層を形成することができる。具体的には、表面処理層形成のための音響共振処理は、30g〜100gの音響エネルギーを1分〜30分間印加することで行われてもよい。この際、前記単位gは、重力加速度を意味する(100g=980m/s
2)。
【0080】
また、前記表面処理層の形成のための2次熱処理は、300℃〜900℃で行われてもよい。Me原料物質の融点反応温度に応じて異ならせて適用してもよく、2次熱処理温度が300℃未満の場合には、表面処理層の形成が十分でなく、900℃を超える場合には、過焼結による副反応物の生成の恐れがある。
【0081】
また、前記熱処理時の雰囲気は、特に限定されず、真空、不活性または大気雰囲気下で行われてもよい。
【0082】
前記のような表面処理工程により、活物質の表面上に下記化学式1の化合物を含む表面処理層が形成されてもよい。
【0083】
[化学式1]
Li
mMeO
(m+n)/2
【0084】
前記化学式1中、Meは、Al、Y、B、W、Hf、Nb、Ta、Mo、Si、SnおよびZrからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の元素であり、2≦m≦10であり、nは、Meの酸化数である。
【0085】
前記のような製造方法により製造された正極活物質は、従来、乾式混合法または湿式混合法によるドープ時と比較して、ドーピング元素が均一に分散およびドープされることから、構造安定性が大幅に向上し、結果、電池に適用する際に容量の減少を最小化することができる。これとともに、出力特性、レート特性およびサイクル特性がより向上することができる。
【0086】
これにより、本発明のさらに他の実施形態によると、上述の製造方法により製造された正極活物質が提供される。
【0087】
具体的には、前記正極活物質は、前記ドーピング元素でドープされたリチウム複合金属酸化物を含む。より具体的には、前記ドーピング元素でドープされたリチウム複合金属酸化物は、前駆体内に均一に分布してもよく、または前駆体の粒子の中心から表面まで含有量分布が増加または減少する濃度勾配を有して存在してもよく、または前駆体の表面側にのみ存在してもよい。
【0088】
本発明において、リチウム複合金属酸化物粒子の「表面側」は、粒子の中心以外の表面に近接した領域を意味し、具体的には、リチウム複合金属酸化物粒子の表面から中心までの距離、すなわち、リチウム複合金属酸化物の半径に対して、粒子の表面から0%以上100%未満、より具体的には、粒子の表面から0%〜50%、さらに具体的には粒子の表面から0%〜30%の距離に相当する領域を意味する。
【0089】
より具体的には、前記セラミックイオン伝導体の金属元素によりドープされたリチウム複合金属酸化物は、下記化学式2の化合物であってもよい。
【0090】
[化学式2]
ALi
1+aNi
1−b−cM
bCo
c・(1−A)M’
sO
2
前記化学式2中、
Mは、MnおよびAlからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素であり、
M’は、ドーピング元素含有原料物質由来の金属元素であり、具体的には、Y、Zr、La、Sr、Ga、Mg、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ti、Ta、Nb、W、Mo、およびCrからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらのうち二つ以上の混合元素であってもよく、より具体的には、Y、Zr、La、Sr、Ga、Sc、Gd、SmおよびCeからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合元素であってもよく、さらに具体的には、YおよびZrからなる群から選択される少なくともいずれか一つの元素であってもよく、ただし、MとM’は、互いに異なる元素であってもよい。
【0091】
また、前記化学式2中、0<A<1、0≦a≦0.33、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<s≦0.2であり、bとcは、同時に0.5ではない。より具体的には、上述のA、b、cおよびSを満たす条件で、0≦a≦0.09であってもよく、さらに具体的には、b、cおよびsを満たす条件で、0.9<A<1、a=0であってもよい。前記化学式2中、aが0.33超の場合、リチウム複合金属粒子にドーピング元素含有原料物質をドープする効果が、通常のドープ方法で金属元素をドープする場合に比べて、寿命特性効果の差が約10%以内と著しくない。一方、前記化学式2中、aが0.09以下、特に、0の場合、リチウム複合金属酸化物粒子に前記ドーピング元素含有原料物質をドープする効果が、通常のドープ方法で金属元素をドープする場合に比べて、寿命特性の効果が30%〜70%までと著しい。
【0092】
また、前記化学式2中、M’は、リチウム複合金属酸化物の粒子内で粒子の表面から中心に向かって漸進的に減少する濃度勾配で分布してもよい。このように正極活物質粒子内の位置に応じてドープされる金属の濃度が漸進的に変化する濃度勾配で分布することで、活物質内に急激な相境界領域が存在せず、結晶構造が安定化し、熱安定性が増加する。また、活物質粒子の表面側でドーピング元素が高濃度で分布し、粒子の中心に向かって濃度が減少する濃度勾配を含む場合、熱安定性を示し、且つ容量の減少を防止することができる。
【0093】
具体的には、本発明の一実施形態による正極活物質において、ドーピング元素M’の濃度が濃度勾配を示す場合、正極活物質内に含まれるドーピング元素M’の総原子量を基準として、粒子の中心から10体積%以内の領域(以下、単に「Rc
10領域」という)と、粒子の表面から10体積%以内の領域(以下、単に「Rs
10領域」という)とのM’の濃度差は、10原子%〜90原子%であってもよく、M’の濃度差は、10原子%〜90原子%であってもよい。
【0094】
本発明において、正極活物質粒子内でのドーピング元素の濃度勾配の構造および濃度は、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer、EPMA)、誘導結合プラズマ‐原子放出分光法(Inductively Coupled Plasma‐Atomic Emission Spectrometer、ICP‐AES)、または飛行時間型二次イオン質量分析法(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、ToF‐SIMS)などの方法を用いて確認することができ、具体的には、EPMAを用いて正極活物質の中心から表面に移動しながら各金属の元素比(atomic ratio)を測定することができる。
【0095】
また、本発明の一実施形態による正極活物質は、その製造時に板厚さが150nm超の一次粒子からなる金属前駆体を使用する場合、前記化学式2のリチウム複合金属酸化物からなる表面処理層をさらに含んでもよい。前記表面処理層は、リチウム複合金属酸化物粒子の表面上に、リチウム複合金属酸化物粒子の半径に対して0.001〜0.1の厚さ比で形成されてもよく、より具体的には、1nm〜1000nmの厚さ範囲で形成されてもよい。
【0096】
本発明の一実施形態による前記正極活物質は、リチウム複合金属酸化物の一次粒子であってもよく、または前記一次粒子が組み立てられてなる二次粒子であってもよい。前記正極活物質がリチウム複合金属酸化物の一次粒子である場合、空気中の水分またはCO
2などとの反応によるLi
2CO
3、LiOHなどの表面不純物の生成が減少し、電池容量の低下およびガス発生の恐れが低く、また、優れた高温安定性を示すことができる。また、前記正極活物質が、一次粒子が組み立てられた二次粒子である場合、より優れた出力特性を有することができる。また、二次粒子の場合、前記一次粒子の平均粒径(D
50)は、10nm〜200nmであってもよい。かかる活物質粒子の形態は、活物質を構成するリチウム複合金属酸化物の組成に応じて適宜決定され得る。
【0097】
本発明のさらに他の実施形態によると、上述の製造方法により製造された正極活物質を含む正極を提供する。
【0098】
前記正極は、上述の正極活物質を使用する以外は、当該技術分野において知られている通常の正極の製造方法で製造することができる。例えば、正極活物質に溶媒、必要に応じて、バインダー、導電材または分散剤を混合および攪拌してスラリーを製造した後、これを正極集電体に塗布(コーティング)し乾燥して正極活物質層を形成することで、正極を製造することができる。
【0099】
前記正極集電体は、伝導性の高い金属であり、前記正極活物質のスラリーが容易に接着できる金属として、電池の電圧範囲で反応性がないものであれば、いずれのものでも使用可能である。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせにより製造される箔などがある。
【0100】
また、前記正極を形成するための溶媒としては、NMP(N‐メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒または水などがあり、これら溶媒は単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、バインダーおよび導電材を溶解および分散させることができる程度であれば十分である。
【0101】
前記バインダーとしては、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)およびこれらの水素をLi、NaまたはCaなどで置換した高分子、または様々なコポリマーなどの各種のバインダー高分子が使用されてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1〜30重量%含まれてもよい。
【0102】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブまたは炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;フルオロカーボン、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。前記導電材は、通常、正極活物質層の全重量に対して1〜30重量%含まれてもよい。
【0103】
本発明のさらに他の実施形態によると、上述の製造方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0104】
前記リチウム二次電池は、具体的には、前記正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータとを含む。
【0105】
前記負極に使用される負極活物質としては、通常、リチウムイオンが吸蔵および放出され得る炭素材、リチウム金属、ケイ素またはスズなどを使用してもよい。好ましくは、炭素材を使用してもよく、炭素材としては、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso‐carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。また、前記負極集電体は、一般的に、3μm〜500μmの厚さで作製される。かかる負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用され得る。また、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用され得る。
【0106】
前記負極に使用されるバインダーおよび導電材は、正極と同様、当分野において通常使用され得るものが使用可能である。負極は、負極活物質および前記添加剤を混合および攪拌して負極活物質スラリーを製造した後、これを集電体に塗布し圧縮して負極を製造することができる。
【0107】
また、セパレータとしては、従来、セパレータとして使用された通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマーおよびエチレン/メタクリレートコポリマーなどのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを、単独でまたはこれらを積層して使用してもよく、または、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用してもよく、これに限定されるものではない。
【0108】
本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0109】
本発明で使用される電解質として含まれ得るリチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常使用されるものなどが、制限なく使用可能であり、例えば、前記リチウム塩のアニオンとしては、F
−、Cl
−、Br
−、I
−、NO
3−、N(CN)
2−、BF
4−、ClO
4−、PF
6−、(CF
3)
2PF
4−、(CF
3)
3PF
3−、(CF
3)
4PF
2−、(CF
3)
5PF
−、(CF
3)
6P
−、CF
3SO
3−、CF
3CF
2SO
3−、(CF
3SO
2)
2N
−、(FSO
2)
2N
−、CF
3CF
2(CF
3)
2CO
−、(CF
3SO
2)
2CH
−、(SF
5)
3C
−、(CF
3SO
2)
3C
−、CF
3(CF
2)
7SO
3−、CF
3CO
2−、CH
3CO
2−、SCN
−および(CF
3CF
2SO
2)
2N
−からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0110】
前記のような構成を有するリチウム二次電池は、正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立を製造し、前記電極組立をケースの内部に位置付けた後、ケースの内部に電解液を注入することで製造され得る。
【0111】
上述のように、本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および容量維持率を安定して示すことから、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0112】
これにより、本発明の他の実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックを提供する。
【0113】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられ得る。
【0114】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、様々な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲は、以下で述べる実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界において平均の知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0115】
実施例1‐1:正極活物質の製造
Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)に対してイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度で添加した後、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて60gの音響エネルギーを2分間印加し、YSZドーピング元素含有原料物質由来セラミック元素(YおよびZr)がドープされた前駆体を取得した。
【0116】
ドープされた前駆体に対して、LiOHを1.02のモル比で添加し、ブレンドミキサー(blending mixer)を用いて15000rpmで10分間混合した後、酸素雰囲気で800℃で熱処理し、YおよびZrがドープされたリチウム複合金属酸化物の正極活物質を製造した。
【0117】
比較例1‐1:正極活物質の製造
Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)に対してYSZナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度で添加した後、ブレンドミキサーを用いて15000rpmで10分間混合し、ドープされた前駆体を取得した。
【0118】
混合した前駆体に対してLiOHを1.02のモル比で添加し、ブレンドミキサーを用いて15000rpmで10分間混合した後、酸素雰囲気で800℃で2次熱処理し、正極活物質を製造した。
【0119】
比較例1‐2:正極活物質の製造
脱イオン水を機械式攪拌機(mechanical stirrer)で攪拌しながらYSZナノ粉末(D
50=50nm)を2,000ppmの濃度で添加し、均質な状態にした。次に、Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)を投入し、50rpmで30分間混合した。混合した溶液を濾過した後、130℃で12時間乾燥した。
【0120】
結果として取得した反応物に対してLiOHを1.02のモル比で添加し、ブレンドミキサーを用いて15000rpmで10分間混合した後、酸素雰囲気で800℃で焼成し、正極活物質を製造した。
【0121】
実験例1
前記実施例1‐1および比較例1‐1、比較例1‐2による正極活物質の製造の際、ドープされた前駆体を走査電子顕微鏡で観察した。その結果を下記
図1〜3にそれぞれ示した。
【0122】
確認結果、従来の乾式工程(比較例1‐1)および湿式工程(比較例1‐2)に比べて、音響共振法を用いる場合、分散により有利で凝集が少なく、前駆体の表面により均一にドープされることを確認することができる。また、音響共振法を用いると、前駆体の表面での損傷がないことを確認することができ、工程時間も短縮された。
【0123】
実施例1‐2、1‐3、および比較例1‐3、1‐4:正極活物質の製造
前駆体粒子とドーピング元素含有原料物質の粒径を下記表1に記載のように多様に変化させる以外は、前記実施例1と同じ方法により正極活物質を製造した。
【0125】
前記表1において、製造した金属前駆体における一次粒子の平均板厚さは、走査電子顕微鏡を用いて観察、測定し、二次粒子状の金属前駆体の平均粒径およびドーピング元素含有原料物質の平均粒径は、金属前駆体およびドーピング元素含有原料物質をそれぞれレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D
50)を算出した。
また、前記実施例1‐2および実施例1‐3による正極活物質の製造の際、使用された金属前駆体(a))、ドープ工程後、ドープされた前駆体(b))、また、最終製造された正極活物質(c))をそれぞれSEMで観察した。その結果を図4および5に示した。
【0126】
実験例2
前記実施例1‐2、1‐3および比較例1‐3、1‐4で製造した前駆体をSEMを用いて観察し、その結果を
図6〜9にそれぞれ示した。
【0127】
確認結果、D
50が15μmの金属前駆体と、D
50が2μmまたは3μmのドーピング元素含有原料物質をそれぞれ混合した実施例1‐2および1‐3の場合、均一な混合で均質状態の前駆体が観察された一方、前駆体粒子とドーピング元素含有原料物質の平均粒径比が2000〜5:1の条件を満たしていない平均粒径を有する金属前駆体とドーピング元素含有原料物質を使用した比較例1‐3および1‐4の場合、前駆体の表面にドーピング元素含有原料物質が前駆体の表面に部分的に凝集して分布していることを確認することができ、ドーピング物質が凝集して部分的に存在することが観察された。
【0128】
実施例1‐4:正極活物質の製造
Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)に対してイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度とAl
2O
3ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度で添加した後、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて60gの音響エネルギーを2分間印加し、YSZドーピング元素含有原料物質由来セラミック元素(YおよびZr)とAl
2O
3が複合ドープされた前駆体を取得した。
【0129】
ドープされた前駆体に対してLiOHを1.02のモル比で添加し、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて80gの音響エネルギーを2分間印加して混合した後、酸素雰囲気で800℃で熱処理し、Y、ZrおよびAlがドープされたリチウム複合金属酸化物の正極活物質を製造した。
【0130】
比較例1‐5:正極活物質の製造
Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)に対してイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度とAl
2O
3ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度で添加した後、ブレンドミキサーを用いて15000rpmで10分間混合し、YSZドーピング元素含有原料物質由来セラミック元素(YおよびZr)とAl
2O
3が複合ドープされた前駆体を取得した。
【0131】
ドープされた前駆体に対してLiOHを1.02のモル比で添加し、ブレンドミキサーを用いて15000rpmで10分間混合した後、酸素雰囲気で800℃で2次熱処理し、Y、ZrおよびAlがドープされたリチウム複合金属酸化物の正極活物質を製造した。
【0132】
実験例3
前記実施例1‐4でドープされた前駆体とリチウム原料物質を混合した後、取得した結果物を、熱処理の前にSEMで観察した。その結果を
図10に示した。比較のために前記比較例1‐1による正極活物質の製造時にドープされた前駆体とリチウム原料物質を混合した後、取得した結果物に対してもSEMで観察し、その結果を
図11に示した。
【0133】
観察結果、実施例1‐4の場合、比較例1‐1でのブレンディングミキシング工程に比べてドープされた前駆体とリチウム原料物質に対する音響ミキシング工程時間が短かったにもかかわらず、ドープされた前駆体とリチウム原料物質が均一に混合されて前駆体粒子の表面にリチウム原料物質が均一に分散塗布された。また、ドープされた前駆体粒子の表面およびバルクに対する損傷も観察されなかった。これよりドープされた正極活物質の製造時にドーピング前駆体の製造工程外にも、ドープ後、リチウム原料物質との混合時の音響共振を印加することで、表面損傷なく、より優れた表面特性を有する正極活物質を製造できることを確認することができる。
【0134】
実験例4
前記実施例1‐4で製造した正極活物質と、導電材としてsuper Pまた、バインダーとしてPVDFを92.5:2.5:5の重合比で混合し、正極形成用組成物を製造した。これをアルミニウム箔に塗布した後、ロールプレスを用いて均一に圧着し、130℃の真空オーブンで12時間真空乾燥してリチウム二次電池用正極を製造した。前記正極を使用して2032規格のハーフコインセル(half coin cell)を製造した後、容量特性を評価した。この際、比較のために前記比較例1‐5で製造した正極活物質を用いてハーフコインセルを製造して使用した。
【0135】
具体的には、容量特性は、リチウム二次電池を25℃で0.2Cの定電流(CC)で4.25Vになるまで充電し、次に、4.25Vの定電圧(CV)で充電し、充電電流が0.05mAhになるまで1回目の充電を行った。次に、20分間放置した後、0.2Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。これにより放電容量を評価し比較した。その結果を下記表2および
図12に示した。
【0137】
一般的に、正極活物質に対してドープすることになると、電池の容量特性が減少することになり、さらに、均一でないドーピング物質またはドープ原料物質の残余および凝集によって表面に不純物として作用し得る粒子が生成され、電池特性を減少させる可能性がある。実験結果、実施例1‐4の正極活物質を含む電池は、比較例1‐5に比べてより高い容量特性を示しており、これより本発明に係る製造方法により製造された正極活物質でのドーピング効率がより高いことが分かる。
【0138】
実施例1‐5:正極活物質の製造
Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)に対してイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度とAl
2O
3ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度で添加した後、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて60gの音響エネルギーを2分間印加し、YSZドーピング元素含有原料物質由来セラミック元素(YおよびZr)とAl
2O
3複合ドープされた前駆体を取得した。
【0139】
ドープされた前駆体に対してLiOHを1.03のモル比で添加し、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて80gの音響エネルギーを2分間印加して混合した後、酸素雰囲気で780℃で熱処理した。熱処理の後、取得した結果物を脱イオン水に分散させた後、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて40gの音響エネルギーを5分間印加しながら洗浄し、3分以上濾過した後、130℃の真空オーブンで12時間以上乾燥し、Y、ZrおよびAlがドープされたリチウム複合金属酸化物の正極活物質を製造した。
【0140】
実施例1‐6:正極活物質の製造
Ni
0.83Co
0.11Mn
0.06(OH)
2前駆体(D
50=15μm、板状の一次粒子の平均板厚さ=95nm)に対してジルコニアナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度とAl
2O
3ナノ粉末(D
50=50nm)を2000ppmの濃度で添加した後、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて60gの音響エネルギーを2分間印加して混合した。
【0141】
混合した前駆体に対してLiOHを1.03のモル比で添加し、音響ミキサー(LabRAMII)を用いて80gの音響エネルギーを2分間印加して混合した後、酸素雰囲気で780℃で熱処理した。熱処理後の結果物を脱イオン水に分散させた後、機械式攪拌機(mechanical stirrer)を用いて400rpmで5分間洗浄し、3分濾過した後、130℃の真空オーブンで12時間以上乾燥し、正極活物質を製造した。
【0142】
実験例5
前記実施例1‐5および実施例1‐6で製造した正極活物質5gを脱イオン水100mlに添加して5分間攪拌した後、結果の溶液を濾過し、pH滴定装置を用いてpH4になるまで0.1M HClを投入し、pH変化に伴うHClの消耗量を測定し、滴定点(EP、FP)のHCl投入量を用いて下記数式1および2により未反応のLiOHおよびLi
2CO
3を計算した。その結果を下記表3に示した。
【0143】
[数式1]
LiOH(重量%)= 100×[(2×EP−FP)×0.1×0.001×23.94]/5
【0144】
[数式2]
Li
2CO
3(重量%)=100×[(EP−FP)×0.1×0.001×73.89]/5
【0145】
前記数式1および数式2中、EPはevaluation pointであり、FPはfixed pointである。
【0147】
実験結果、洗浄工程の際、音響ミキサーを用いた実施例1‐5の正極活物質は、実施例1‐6に比べてより減少した不純物の含有量およびpH値を示した。
【0148】
また、前記実施例1‐6で製造した正極活物質の表面をSEMで観察し、その結果を
図13に示した。
【0149】
観察結果、通常の方法で製造し水洗した実施例1‐6の正極活物質では、表面のLi残渣が粒子間に観察された。
【0150】
実施例1‐7:正極活物質の製造
YSZの代りにAl
2O
3を使用する以外は、前記実施例1‐5と同じ方法で実施し、Alでドープされたリチウム複合金属酸化物の正極活物質を製造した。
【0151】
実施例1‐8:正極活物質の製造
YSZの代りにSSZを使用する以外は、前記実施例1‐5と同じ方法で実施し、SSZドーピング元素含有原料物質由来セラミック元素(ScおよびZr)でドープされたリチウム複合金属酸化物の正極活物質を製造した。
【0152】
実施例2‐1:リチウム二次電池の製造
前記実施例1‐1で製造した正極活物質94重量%、導電材としてカーボンブラック(carbon black)3重量%、また、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)3重量%を溶媒であるN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)に添加して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ約20μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0153】
負極活物質として黒鉛粉末96.3重量%、導電材としてsuper‐p1.0重量%およびバインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を1.5重量%と1.2重量%を混合し、溶媒であるNMPに添加して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを厚さ約10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0154】
電解質としてエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートを30:70の体積比で混合して製造されたビス電解液溶媒にLiPF
6を添加し、1MのLiPF
6非水性電解液を製造した。
【0155】
前記で製造した正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在し、リチウム塩含有電解液を注入して、セルを製造した。
【0156】
実施例2‐2〜2‐8:リチウム二次電池の製造
前記実施例1‐2〜1‐8で製造した正極活物質をそれぞれ使用する以外は、実施例2‐1と同じ方法で実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0157】
上述の実験結果から本発明により音響共振を用いてドーピング元素含有原料物質形成金属元素でドープした正極活物質は、より改善した構造的安定性を有し、電池に適用する際に容量減少が最小化し、その結果として、より優れたサイクル特性を示すことを確認した。