特許第6968524号(P6968524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6968524厚膜導電ペーストおよびセラミック多層積層電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968524
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】厚膜導電ペーストおよびセラミック多層積層電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20211108BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20211108BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20211108BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20211108BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/00 J
   H01G4/30 201B
   H01G4/30 311D
   H01G4/30 516
   H01G4/30 517
   H05K1/09 A
   H05K3/12 610G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-187441(P2016-187441)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-55819(P2018-55819A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年4月5日
【審判番号】不服-10764(P-10764/J1)
【審判請求日】2020年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】川島 剛
【合議体】
【審判長】 細井 龍史
【審判官】 岩田 健一
【審判官】 植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−151159(JP,A)
【文献】 特開2014−216089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末と、バインダ樹脂及び有機溶剤を含む有機ビヒクルを含有する厚膜導電ペーストであって、
前記金属粉末が、前記厚膜導電ペーストの質量に対して90質量%以上、97質量%以下の含有率を有し、
前記金属粉末には、フレーク状でレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が4.0μm〜10μmのフレーク状金属粉末を、前記金属粉末中に50質量%以上が含まれ、
前記バインダ樹脂が、厚膜導電ペーストに対して0.05質量%以上、2.0質量%以下含有され、
前記有機溶剤が、厚膜導電ペーストに対して2.0質量%以上、9.9質量%以下含有され、
前記厚膜導電ペーストを印刷、乾燥して得た乾燥膜の膜厚aと、前記乾燥膜を焼成して得た焼成膜の膜厚bとの比、「b/a」が、90%以上、97%以下であることを特徴とする厚膜導電ペースト。
【請求項2】
前記金属粉末が、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が0.1μm以上、2.0μm以下の略球状金属粉末を含むことを特徴とする請求項1に記載の厚膜導電ペースト。
【請求項3】
前記金属粉末が、Au、Ag、PtおよびCuの少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚膜導電ペースト。
【請求項4】
セラミックグリーンシートに請求項1〜3に記載のいずれかの厚膜導電ペーストを塗布により導体パターンを形成して導体パターン形成済みセラミックグリーンシートを得るパターン形成工程と、
セラミックグリーンシートに、前記厚膜導電ペーストを塗布し、その塗布面に前記導体パターン形成済みセラミックグリーンシートの積層による積層工程と、
前記厚膜導電ペーストの塗布と導体パターン形成済みセラミックグリーンシートの積層による積層工程を繰り返して積層体を形成する積層体形成工程を経た後に、前記積層体の焼成を行うことを特徴とするセラミック多層積層電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック等のグリーンシートの積層体の内部電極としてグリーンシートと同時に焼成可能な厚膜導電ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
導電ペーストを用いてセラミック基板に導体を形成する方法としては、厚膜導電ペーストを印刷などで塗布したセラミックグリーンシートを一体で焼成し、厚膜導電ペーストとセラミックグリーンシートを同時に焼成する同時焼成法と、セラミックグリーンシートの焼成後に厚膜導電ペーストを塗布して厚膜導電ペーストを焼成する後付け焼成法がある。
この同時焼成法は、後付けする分の工程を削減することが可能で生産コストを安くすることができる。また、内部電極を複数形成する多層基板の作製には後付け焼成法を用いることは出来ず、近年同時焼成法が主流になりつつある。
【0003】
ところで、多層基板を作製するには、まず、あらかじめセラミックなどのグリーンシート上に厚膜導電ペーストにより所望のパターンを形成した後、グリーンシートを積層して積層体とする。次に、この積層体を焼成することにより、厚膜導電ペースト及びグリーンシートを同時に焼成し、積層体内部に導電パターンが形成された多層基板を得ることができる。
このように、同時焼成によって形成される多層基板は、グリーンシートの材料が焼結する温度で内部の導電パターンも焼結させる必要があり、ガラス粉末やセラミック粉末を導電ペーストに添加することで、金属粉末の焼結開始温度をコントロールする手法が用いられてきた。
【0004】
しかし、電子部品は小型化が進むことにより、各材料の薄型化、微細化も進み、焼結温度のコントロールだけでなく、グリーンシートの焼結による収縮挙動と導電パターンの収縮挙動の差によるクラックなどを防止する必要も生じている。
その中でも特に、ほとんど収縮を伴わないグリーンシートの場合は、軟化点の高いガラスを用いるなどして挙動をコントロールしてきたが、導電ペースト中の金属粉末の焼結が十分進まず、導電パターンの比抵抗が上がってしまう不具合が発生していた。
【0005】
特に近年、収縮率が10%以下のセラミックシートも実現されている。
一方で収縮差による構造欠陥が発生しない場合は、ガラスやセラミックなどの添加を極力抑え焼結性を向上させることもできるが、導電パターン中の空隙がそのまま残留することで、比抵抗が上がってしまう場合がある。
【0006】
この様な問題に対し、例えば特許文献1には、Rhを0.005〜0.050重量%添加した平均粒子径が1.5〜4.5μmのAg系粉末を用いて、焼成時の印刷導体の収縮挙動が、400℃から700℃に昇温するまでの収縮率が2.0〜10.5%で、かつ、400℃から900℃に昇温するまでの収縮率が10.0〜21.1%となるように設定されていることを特徴とする導体ペーストが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、ペースト組成物中の含有率が60〜95質量%のAg粉末、Ag粉末の質量に対し0.5〜5質量%のホウケイ酸系ガラス粉末、残部が、前記Ag粉末の質量に対し、金属分換算で0.05〜5質量%のRu及び0.001〜0.1質量%のRhの2種の金属を含有する白金族金属添加剤及び有機ビヒクルであることを特徴とする導体ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−47856号公報
【特許文献2】WO2014/054671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示す様な導体ペーストは、Agよりも比抵抗が高いRhを添加しているため、導体の比抵抗が高くなってしまう。また、400℃から700℃に昇温するまでの収縮率が2.0〜10.5%で、且つ、400℃から900℃に昇温するまでの収縮率が10.0〜21.1%と、400℃以上の焼成領域では収縮が大きくなってしまう。さらに、導体と基板との接着強度を高めるためガラスフリットを添加しているが、ガラスフリットを添加した導体ペーストで形成した導体は緻密性に欠けた構造体になりやすく、比抵抗も大きいという欠点がある。特許文献2に示す導体ペーストも同様にガラスフリットを添加しており、比抵抗が大きくなる欠点がある。
【0010】
さらに、特許文献2によれば、TAP密度により緻密状態を評価しているが、金属粉末が小さくなるに従い金属粉末の表面が活性になるため、金属粉末同士が凝集しやすくなり、TAP密度で得た値と最終的に焼結して得られた導体の収縮挙動に相関が得られない場合がある。また、示されたタップ密度ではAgの充填が不十分で、比抵抗を小さくするには限界がある。
【0011】
そこで、電子部品は小型化が進むことにより、各材料の薄型化、微細化も進み、焼結温度のコントロールだけでなく、グリーンシートの焼結による収縮挙動と導電パターンの収縮挙動の差によるクラックなどを防止可能なように、厚膜導電ペーストにより形成した導体の焼結前後の収縮率を小さくすることができ、かつ比抵抗も小さくすることが可能な厚膜導電ペーストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属粉末と、有機ビヒクルを主成分とする厚膜導電ペーストにおいて、金属粉末を90質量%以上、97質量%以下含有し、かつ、その形状がフレーク状で、平均粒径が4.0〜10.0μm、比表面積が0.05〜0.30m/gで、そのタップ密度を5.0〜7.5g/cmとすることにより、厚膜導電ペーストにより形成した導体の焼結前後の収縮率を小さくすることができ、かつ比抵抗を小さくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の第1の発明によれば、金属粉末と、バインダ樹脂及び有機溶剤を含む有機ビヒクルを含有する厚膜導電ペーストであって、前記金属粉末が、前記厚膜導電ペーストの質量に対して90質量%以上、97質量%以下の含有率を有し、前記金属粉末には、フレーク状でレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が4.0μm〜10μmのフレーク状金属粉末を、前記金属粉末中に50質量%以上が含まれ、前記バインダ樹脂が、厚膜導電ペーストの全質量に対して0.05質量%以上、2.0質量%以下含有され、前記有機溶剤が、厚膜導電ペーストの全質量に対して2.0質量%以上、9.9質量%以下含有され、前記厚膜導電ペーストを印刷、乾燥して得た乾燥膜の膜厚aと、前記乾燥膜を焼成して得た焼成膜の膜厚bとの比、「b/a」が、90%以上、97%以下であることを特徴とする厚膜導電ペーストである。
【0014】
また、本発明の第2の発明は、第1の発明における金属粉末が、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が0.1μm以上、2.0μm以下の略球状金属粉末を含むことを特徴とする厚膜導電ペーストである。
【0015】
また、本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における金属粉末が、Au、Ag、PtおよびCuの少なくとも1種類であることを特徴とする厚膜導電ペーストである。
【0016】
また、本発明の第4の発明は、セラミックグリーンシートに第1〜第3の発明のいずれかに記載の厚膜導電ペーストを塗布により導体パターンを形成して導体パターン形成済みセラミックグリーンシートを得るパターン形成工程と、セラミックグリーンシートに、その厚膜導電ペーストを塗布し、その塗布面に導体パターン形成済みセラミックグリーンシートの積層による積層工程と、その厚膜導電ペーストの塗布と導体パターン形成済みセラミックグリーンシートの積層による積層工程を繰り返して積層体を形成する積層体形成工程を経た後に、形成した積層体の焼成を行うことを特徴とするセラミック多層積層電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の厚膜導電ペーストによれば、ガラスやセラミックなどを添加する従来の技術では防ぐことが困難であった、焼成過程でほとんど収縮することがなく比抵抗が小さい導体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の厚膜導電ペーストは、金属粉末と、バインダ樹脂と有機溶剤からなる有機ビヒクルを含有する厚膜導電ペーストであって、含まれる金属粉末に特徴を有し、その金属粉末が90質量%以上、97質量%以下含まれ、且つその金属粉末にはフレーク状金属粉末が、金属粉末全体のうち50質量%以上含まれることを特徴とするものである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<金属粉末>
先ず金属粉末は、ペーストの質量に対して90質量%以上、97質量%以下の含有率で含まれている。
この金属粉末の含有率が90質量%未満では、導電ペーストを乾燥して得られる膜が緻密にならず、膜の密度が小さくなってしまうため、その後の焼結における収縮量が大きくなってしまう。また、周囲の材料によって焼結時に収縮ができない環境下では、乾燥膜における空隙が焼結後にそのまま残ってしまうため、比抵抗が高くなる原因となるため好ましくない。一方、金属粉末の含有率が97質量%を超える場合は、厚膜導電ペーストの粘度が、印刷に適した値にならず好ましくない。
【0020】
さらに、この金属粉末には、形状がフレーク状で、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が4.0〜10.0μmのフレーク状金属粉末が、金属粉末のうち50質量%以上含まれている。
このようなフレーク状金属粉末の含有率が50質量%以上であれば、厚膜導電ペーストを印刷、乾燥して得た乾燥膜の乾燥膜厚値aと、その乾燥膜を焼成して得た焼成膜の焼成膜厚値bから求まる「b/a比」の値が90%以上を確保しやすくなる。
【0021】
さらに、このフレーク状金属粉末は、比表面積が0.05〜0.30m/g、タップ密度が5.0〜7.5g/cmであることが望ましい。また、フレーク状金属粉末におけるフレーク部の厚みが、1.0〜3.0μmであることが望ましい。なお、このフレーク状金属粉末のフレーク部の厚みは、SEM等で確認することができる。
【0022】
また、本発明に係る導電ペーストでは、上記フレーク状金属粉末のうち、フレーク状銀粉末を用いても、800℃以下の温度の焼成で、比抵抗2.5μΩcmを実現できる。
【0023】
厚膜導電ペーストの金属粉末に略球状の微小なサイズの金属粉末、例えば体積基準粒度分布によるD50が2.0μm以下の球状金属粉末のみ用いる場合、金属粉末は比表面積が大きく、その表面の活性が非常に高くなり、金属粉末同士が凝集してしまい、焼成前の緻密な乾燥膜を形成しにくく、結果的に乾燥膜が緻密ではないので焼成後の導体の収縮率が高くなってしまう。また、球状金属粉末の表面の活性が非常に高くなるので、焼結開始温度も低くなり、焼成の際に、局在的に収縮してしまう。特に、多層基板の場合には局在的に収縮して島状に焼成膜が形成されることで、焼成中のグリーンシート積層体の破壊が生じることもある。
【0024】
そこで、上記範囲のフレーク状金属粉末を用いることにより、適度に金属粉末の活性状態が低減され、焼成前に緻密な導体を形成することができることを見出したもので、さらに、その平均粒径が4.0μmより小さくなると、フレーク形状でも導電粉同士の結合が生じ始めてしまい好ましくない。また、平均粒径が10.0μmより大きくなると、焼結が進みにくくなるため比抵抗が下がらないばかりか、印刷における細線化やパターン形状の維持が困難となるため好ましくない。
【0025】
さらに、本発明に係る金属粉末は、フレーク状金属粉末以外に、平均粒径が異なることより小粒径の略球状金属粉末を含んでもよい。この小粒径の略球状金属粉末は、レーザー回折散乱法を用いて測定された体積積算の中位径D50が0.1μm以上、2.0μm以下で、金属粉末100質量%に対し、小粒径の略球状金属粉末の質量比が0.1質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。フレーク状金属粉末と略球状金属粉末を組み合わせることで、乾燥膜密度などの向上が期待できる。
【0026】
略球状金属粉末のD50が0.1μm未満では、焼成の際に金属粉末同士の焼結に寄与するだけでなく、導電ペーストが塗布される材料と反応し、材料内に拡散しやすくなってしまうため好ましくない。2.0μmを超えると粒子が大きすぎてしまい、フレーク状金属粉末との組み合わせの際、隙間に入って乾燥膜の密度を向上させる効果がほとんど得られないため好ましくない。
また、この略球状金属粉末は、金属粉末100質量%に対し50質量%以下であることが好ましい。50質量%を超えると、乾燥膜の密度を上げる効果が低くなるばかりか、金属粉末の比表面積が増加し、印刷に適した粘度が得られにくくなるため好ましくない。
【0027】
本発明に用いる金属粉末の成分は、特に制限されず、一般的に厚膜導電ペーストに使用される金属粉末などを用いることができる。その中でも、Au、Ag、PtおよびCuの少なくとも1種類であることが好ましい。
【0028】
ところで、本発明に係る厚膜導電ペーストは、使用する金属粉末にフレーク状金属粉末を含むことで、厚膜導電ペーストをスクリーン印刷など公知の印刷方法で塗布すると、厚膜導電ペーストの塗布膜中には、フレーク状金属粉末が、スクリーン印刷などの際のスキージ等の進行方向に配向しやすい。
含まれているフレーク状金属粉末は、塗布膜中で、ほぼ同じ方向に配向し、被印刷基材の法線方向で、それぞれのフレーク状金属粉末が重畳する形で塗布膜に含まれる。
【0029】
したがって、本発明に係る厚膜導電ペーストの塗布膜では、フレーク状金属粉末が重畳するので、7g/cmの乾燥膜密度が実現可能であって、最終的に、乾燥膜の乾燥膜厚値aと、その乾燥膜を焼成膜の焼成膜厚値bから求まる「b/a比」の値が90%以上を確保しやすくなる。
さらに、略球状金属粉末が加わると、フレーク状金属粉末との組み合わせの際、隙間に入って乾燥膜の密度を向上させる効果が期待できる。
【0030】
<有機ビヒクル>
本発明において使用する有機ビヒクルは、バインダ樹脂と有機溶剤を含有する。
有機ビヒクルに含まれるバインダ樹脂は、厚膜導電ペーストの全質量に対して0.05質量%以上、2.0質量%以下の範囲で用いることが好ましく、0.05質量%未満では、印刷に必要な粘度特性が得られないため好ましくない。一方2.0質量%より多いと、厚膜導電ペースト中の金属粉末の割合が低下し、乾燥膜の密度を低下させ、焼成後の収縮率が大きくなってしまうため好ましくない。
また、バインダ樹脂の種類は、特に制限されず、厚膜導電ペーストで使用されるエチルセルロース、メタクリレートなどの一般的なバインダ樹脂を用いることができる。
【0031】
また、有機ビヒクルに含まれる有機溶剤は、厚膜導電ペーストの全質量に対して2.0質量%以上、9.9質量%以下の範囲で用いることが好ましく、2.0質量%未満では、導電ペーストの粘度が十分に低くできず、印刷に必要な粘度特性が得られないため好ましくない。一方、9.9質量%より多いと、導電ペースト中の金属粉末の割合が低下し、導電ペーストの粘度が下がり過ぎて印刷に必要な粘度特性が得られなかったり、乾燥時に導電性粒子の距離が緻密になりにくくなるため、乾燥膜の密度を低下させ焼成後の収縮率が大きくなったりする場合があるため好ましくない。
その有機溶剤の種類は、特に制限されず、厚膜導電ペーストで使用されているターピネオール、ブチルカルビトールなどの一般的な有機溶剤を用いることができる。
【0032】
さらに、金属粉末の分散性向上や保管中の分離沈降防止などのため、必要に応じて分散剤などの添加材を使用することができる。
【0033】
<焼成膜>
本発明の厚膜導電ペーストを用いて焼成した導体は、焼成前後の膜厚の比が、90%以上であることが好ましい。
焼成前後の膜厚比は、焼成後の膜厚bと、焼成前の膜厚aから、「b/a」で求めることができる。
【0034】
その焼成前後の膜厚比「b/a」が90%未満だと、同時に焼成するセラミックグリーンシートの収縮率との差が大きくなり、作製した電子部品内に空隙やクラックを生じることがあるので好ましくない。一方、収縮率の上限は特に無いが、セラミックグリーンシートよりも収縮しにくい金属粉末は見いだせておらず、現在得られている金属粉末の収縮率の上限は97%が最高値であり、97%以下が好ましい。
その結果導体の比抵抗が2.5μΩcm以下とすることができる。
【0035】
<セラミック多層積層電子部品>
本発明に係る厚膜導電ペーストを、セラミックグリーンシートにスクリーン印刷などの公知の塗布方法で塗布し、導体パターンを形成して導体パターン形成済みセラミックグリーンシートを得るパターン形成工程と、そのパターン形成工程とは別のセラミックグリーンシートに、本発明に係る厚膜導電ペーストの塗布と導体パターン形成済みセラミックグリーンシートとを積層する積層工程と、その積層工程を繰り返して積層体を得る積層体形成工程を経た後に、焼成を行うことで、セラミック多層積層電子部品を得ることができる。
【0036】
セラミック多層積層電子部品は、グリーンシート表面に本発明に係る厚膜導電ペーストで導体パターンを形成していることと、セラミックグリーンシートの積層が繰り返されるので、その導体パターンがセラミック多層積層電子部品の内部電極として機能する。
セラミックグリーンシートの焼成による収縮率が10%、すなわち、焼成前後で、90%以上の寸法が維持されるセラミックグリーンシートを用いる場合、本発明に係る導電性ペーストは、印刷などの塗布から、乾燥、焼成の工程での寸法変化が少ない。すなわち寸法が維持できるので、得られるセラミック多層積層電子部品のクラック等の発生を抑制できる。
【0037】
セラミック多層積層電子部品の内部電極を本発明に係る厚膜導電ペーストで形成しているので、焼成により焼結した金属粉末による緻密な導体が得られる。そして、導体である内部電極の比抵抗を2.5μΩcm以下とすることを実現できるので、多層回路はもちろん、コンデンサやインダクタ等を実現できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を用いてより詳細な説明を行うが、本発明の範囲は、この実施例により制限されることはない。この実施例および比較例では、導電性の金属粉末としてAg粉を、バインダ樹脂としてエチルセルロースを、有機溶剤としてターピネオールを用いた。
準備したフレーク状のAg粉末にエチルセルロースとターピネオールを所定量添加し、3本ロールミル(ビューラー株式会社製、SDY−300)を用いて混合し厚膜導電ペーストを作製した。
試料作製に用いたフレーク状Ag粉末のD50及び吸収量の値、バインダ樹脂の含有量、有機溶剤の含有量を表1に示す。小粒径の球状Ag粉を更に添加した場合は、それぞれのD50の値と共に、Ag粉末全体に対する小粒径の球状Ag粉末の割合を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
作製した導体ペーストを、96%アルミナ基板上にスクリーン印刷機を用いて所定のパターンに印刷し、ベルト式乾燥炉を用いて150℃で5分間乾燥させて乾燥膜を形成した。得られた乾燥膜の厚みを、触針式表面粗さ計(株式会社東京精密製、SURFCOM 480A)を用いて測定し、その重量を電子天秤で測定し、得られた値から乾燥膜の密度を算出した。測定した乾燥膜の膜厚と算出した乾燥膜密度を表2に示す。
【0041】
次に、焼成処理を行った。
所定のパターンを印刷した上記アルミナ基板を、ピーク温度600℃で9分間、室温からの昇温時間と室温までの降温時間を含めトータル30分となる様に温度プロファイルを設定した焼成炉で熱処理し、導体を形成した。
得られた導体の厚みは、触針式表面粗さ計(株式会社東京精密製、SURFCOM 480A)を用いて測定し、焼成前の乾燥膜の厚みに対する焼成後の導体の厚みの比率から導体の膜厚比を算出した。測定した導体の膜厚と、算出した導体の膜厚比を表2に示す。
【0042】
また、デジタルマルチメーター(株式会社ADVANTEST製、R6871E)を用いて、幅0.5mm、長さ50mmの導体パターンの抵抗値を測定し、先に測定した膜の厚みから、導体の比抵抗を算出した。算出した導体の比抵抗を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
以上の結果から、本発明の範囲内である実施例1〜8は、導体の膜厚比が90%以上得られ、収縮が抑えられ、導体の比抵抗も2.0〜2.4μΩcmと低い良好な値が得られた。
【0045】
フレーク状Ag粉末のD50が、本発明の範囲より小さい比較例1は、乾燥膜密度が低く、焼成した導体の膜厚比が85%と大きく収縮していることが分かる。粒子径が小さくなって充填性が低下したため、乾燥膜における粒子の充填が不十分となり、焼結による収縮が大きくなったため実施例よりも膜厚比が小さくなっていると考えられる。また、乾燥膜におけるAg粉末の充填性が低く空隙が多いため、焼結時に空隙が残留することで導体の比抵抗が2.8μΩcmと高い値になっていると考えられる。
【0046】
フレーク状Ag粉末のD50が本発明の範囲より大きい比較例2は、乾燥膜密度が高く、焼成した導体の膜厚比が98%と大きくほとんど収縮していないことが分かる。
これは、サイズが大きい粒子の割合が増えたことにより、Ag粉末の焼結が進みにくくなったことが考えられ、比抵抗が5.6μΩcmと高い値になっていると考えられる。
【0047】
Ag粉末の含有量が本発明の範囲より低い比較例3は、乾燥膜密度が低く、焼成した導体の膜厚比が77%と低いことが分かる。これは、祖な乾燥膜が焼結によって収縮したため、圧縮比が低くなったと考えられる。一方で、焼結による収縮が不完全であったため緻密な膜を形成することができず、比抵抗が3.1μΩcmと高い値になったと考えられる。
【0048】
Ag粉末の含有量が本発明の範囲より高い比較例4は、導電ペーストを印刷するのに十分な粘度が得られず、印刷後の形状が歪になってしまい、各種計測をすることが困難なため評価をするのを断念した。
以上の事から、適切な吸収量の範囲で規定した金属粉末と、適切な量の有機ビヒクルとを用いることにより、収縮量の少ない良好な厚膜導電ペーストを得ることができる。