特許第6968540号(P6968540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968540
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/258 20060101AFI20211108BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20211108BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20211108BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20211108BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20211108BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20211108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211108BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20211108BHJP
   A61P 3/02 20060101ALN20211108BHJP
   A61P 5/00 20060101ALN20211108BHJP
   A61P 17/18 20060101ALN20211108BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20211108BHJP
   A61P 37/04 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   A61K36/258
   A61K36/31
   A61P7/06
   A61P9/10 101
   A61P3/10
   A61K31/122
   A61P43/00 121
   A23L33/105
   !A61P3/02 101
   !A61P5/00
   !A61P17/18
   !A61P39/06
   !A61P37/04
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-4399(P2017-4399)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-111671(P2018-111671A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎治
【審査官】 原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−204210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0166602(US,A1)
【文献】 特開2008−297282(JP,A)
【文献】 特開2016−088933(JP,A)
【文献】 特開2002−114697(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0104728(US,A1)
【文献】 Personalized Medicine Universe,2014年,Vol. 3,pp. 38-41
【文献】 エディソン30日分,https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?.gCode=32360
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/258
A61K 36/31
A61P 7/06
A61P 9/10
A61P 3/10
A61P 3/02
A61P 5/00
A61P 17/18
A61P 39/06
A61P 37/04
A61K 31/122
A61P 43/00
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参の発酵物及びマカの抽出乾燥物を含有し、高麗人参の発酵物1質量部に対してマカの抽出乾燥物が0.04〜0.18質量部である、経口組成物。
【請求項2】
更にコエンザイムQ10を含有する、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
経口組成物中、高麗人参の発酵物1質量部に対してコエンザイムQ10が0.005〜0.18質量部である、請求項1または2に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬用人参は、中国や日本等で古くから栽培されており、貧血、糖尿病、動脈硬化をはじめとする様々な症状の予防や改善に有用であることが知られており、薬用や食用に利用されている。しかし、薬用人参は特有の不快な風味を有しており、摂取する際には苦痛を伴う。
【0003】
マカは、アンデスの人参とも呼ばれ、アブラナ科に属し、主に高度3500〜4500mのアンデス高地で栽培されている。マカは、疲労回復、ホルモンバランスの改善といった効果を有することが知られており、サプリメント等に広く使用されている。
【0004】
コエンザイムQ10は、電子伝達系における補酵素として体内のエネルギー産生に必須の物質である。コエンザイムQ10は、抗酸化、免疫賦活といった効果を有することが知られており、医薬、食品に広く使用されている。
【0005】
これまでに、例えばセダネノライド、セダノライド、3−n―ブチルフタライドといったフタライド類によれば、グレープフルーツジュースや緑茶等に由来する苦味や渋味を改善できることが報告されている(特許文献1)。しかし、マカやコエンザイムQ10が薬用人参に特有の不快な風味を改善する効果を有することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/059046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薬用人参に由来する特有の不快な風味、特に酸味を低減することを目的とする。また、本発明は、薬用人参に由来する特有の不快な風味、特に酸味と苦味とを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、薬用人参の加工物とマカの加工物とを特定の割合で併用することにより、薬用人参を経口摂取した際に感じる特有の不快な酸味を低減できることを見いだした。また、本発明者は、更にコエンザイムQ10を併用することにより、薬用人参を経口摂取した際に感じる特有の不快な酸味や苦味を低減できることを見いだした。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.薬用人参の加工物及びマカの加工物を含有し、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物が0.04〜0.18質量部である、経口組成物。
項2.更にコエンザイムQ10を含有する、項1に記載の経口組成物。
項3.経口組成物中、薬用人参の加工物1質量部に対してコエンザイムQ10が0.005〜0.18質量部である、項1または2に記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬用人参の加工物とマカの加工物とを特定の割合で組み合わせることにより、薬用人参に特有の不快な酸味を低減することができる。また、本発明によれば、更にコエンザイムQ10を組み合わせることにより、薬用人参に特有の不快な酸味や苦味を低減することができる。このことから、本発明によれば、薬用人参に由来する不快な風味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、薬用人参の加工物及びマカの加工物を含有し、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物が0.04〜0.18質量部である経口組成物を提供する。
【0011】
本発明の経口組成物に含有される薬用人参の加工物及びマカの加工物は次のように説明される。
薬用人参の加工物
薬用人参の加工物の原料として、薬用人参が挙げられる。本発明において薬用人参は、特に限定されないが、好ましくはウコギ科薬用人参が例示される。ウコギ科薬用人参としては、高麗人参(オタネニンジン、 朝鮮人参、Korean ginseng、Panax ginseng C. A. Meyer)、三七ニンジン(Panax notoginseng Burk.)、アメリカニンジン(Panax quinquefolium L.)、竹節ニンジン(Panax japonicus C.A.Meyer)、ヒマラヤニンジン(Panax pseudo-ginseng Wall. subsp. himalaicus Hara)、ベトナムニンジン(Panax vietnamensis Ha et Grushv)等が例示される。これらにおいて、薬用人参としてより好ましくは高麗人参が例示される。
【0012】
薬用人参の使用部位は、特に制限されず、例えば根、茎、葉、花、果実、花蕾、全草、種子等のいずれも使用することができ、好ましくは根等、より好ましくは側根、主根等、更に好ましくは側根等が例示される。
【0013】
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明において薬用人参の加工物とは、薬用人参の粉砕物、乾燥物、抽出物、発酵物、酵素分解物等が挙げられる。
【0015】
粉砕物は、ジェットミル等の本分野で公知の粉砕器により薬用人参を粉砕したものであれば特に限定されない。
【0016】
乾燥物は、薬用人参を乾燥させたものであれば特に限定されず、天日乾燥、遠赤外線照射、乾燥機(熱風乾燥、冷風乾燥、真空凍結乾燥等)等の従来公知の乾燥方法に従って得ることができる。また、乾燥物中の水分量としては、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。本発明において乾燥物の形態は問わず、薬用人参そのものの乾燥物、乾燥物の粉砕物等のいずれでもよい。乾燥粉砕物は、前記粉砕物と同様の方法に従って乾燥物を粉砕することにより得ることができる。
【0017】
抽出物の製造方法(抽出方法)及び抽出条件等は特に限定されず、従来公知の方法に従えばよい。例えば、薬用人参をそのまま、必要に応じて裁断、粉砕または乾燥等したのち、搾取または溶媒抽出によって抽出物を得ることができる。溶媒抽出の方法としては、本分野において公知の方法を採用すればよく、例えば水(温水、熱水を含む)抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の従来公知の抽出方法を利用することができる。
【0018】
溶媒抽出を行う場合、任意の溶媒を用いればよいが、溶媒としては好ましくは極性溶媒が例示され、より好ましくは水、生理食塩水等の水溶液、炭素数1〜4のアルコール、これらの任意の混合液等が例示され、更に好ましくは水、炭素数1〜4のアルコール、これらの混合液等が例示される。炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等が例示される。これらの溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明において、このように溶媒抽出を経て得た抽出物を特に溶媒抽出物と称することができる。更に、本発明を制限するものではないが、前述のように例えば溶媒として水を用いた場合は水抽出物、低級アルコールを用いた場合は低級アルコール抽出物、エタノールを用いた場合はエタノール抽出物等と称することができる。
【0020】
得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、乾燥させて粉末状や顆粒状等の固形の状態で使用してもよい。また、必要に応じて、得られた抽出物に精製、濃縮処理、高活性画分の分離処理等を施してもよい。本発明を制限するものではないが、精製処理としては、濾過、イオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理が挙げられる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を利用できる。また、高活性画分の分離処理としては、ゲル濾過、吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC(High performance liquid chromatography)等の公知の分離処理を利用できる。
【0021】
また、例えば、前述のようにして得られた抽出物(更にはその乾燥物、精製処理物、濃縮処理物、高活性画分)を、凍結乾燥処理に供して粉末化する方法、必要に応じてデキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加して、スプレードライ処理により粉末化する方法等の従来公知の方法に従って粉末化してもよい。また、該抽出物を、必要に応じて水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
【0022】
薬用人参の抽出物として好ましくは、薬用人参を乾燥、破砕及び/または裁断し、好適な溶媒を使用して抽出、濾過して得られる抽出物、また、このようにして得られる抽出物を更に乾燥させることにより得られる抽出物が例示される。本発明を制限するものではなく、使用部位に応じて当業者が適宜抽出すればよいが、薬用人参と抽出溶媒との混合割合は、薬用人参(乾燥質量)100質量部に対して、抽出溶媒は好ましくは300〜5000質量部が例示され、より好ましくは400〜3000質量部が例示される。また、抽出において加熱を行う場合、本発明の効果が得られる限り制限されないが、加熱温度として好ましくは15〜150℃程度が例示され、より好ましくは20〜121℃程度が例示される。また、加熱時間も制限されないが、好ましくは0.1〜72時間程度が例示され、より好ましくは0.3〜24時間程度が例示される。
【0023】
発酵物は、薬用人参を発酵して得られた生成物を意味する。薬用人参の発酵物を得るにあたり、薬用人参は、そのまま(生のまま)であってもよく、前述のような乾燥物、粉砕物、裁断物、抽出物、また、ペースト、懸濁物等であってもよい。また、これらは市販品であってもよく、市販品に対して更に乾燥等の処理を適宜施したものでもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
懸濁物についても一例を説明すると、懸濁物の調製においても、溶媒として前述の抽出溶媒を用いてもよい。また、薬用人参と溶媒との混合割合も前述の溶媒抽出時の条件を参考にして適宜混合すればよく、また、懸濁液の調製において加熱を行う場合は、前述する抽出時の加熱温度及び加熱時間を考慮して適宜加熱すればよい。
【0025】
発酵物は、薬用人参を発酵させることにより得ることができる。発酵は、薬用人参を発酵できる限り制限されず任意の方法を用いればよいが、好ましくは微生物を用いて発酵される。この観点から、本発明において薬用人参の発酵物として好ましくは薬用人参の微生物による発酵物(薬用人参の微生物発酵物)である。微生物を用いて発酵を行う方法は確立されており、例えば前述の特許文献1や特許第520771号公報を参考にして発酵物を得ることができる。また、このような発酵物として市販品を用いてもよい。
【0026】
薬用人参の発酵物を得る方法として、好ましくは、微生物の存在下で薬用人参を発酵させて、薬用人参の発酵物を得る方法が例示され、より好ましくは、薬用人参を含有する培地を滅菌処理し、得られた培地と微生物とを混合して薬用人参を発酵させ、薬用人参の発酵物を得る方法が例示される。滅菌は、本発明の効果が妨げられない限り、加熱滅菌、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌等の従来公知の方法に従い適宜行えばよい。
【0027】
本発明を制限するものではないが、以下に、薬用人参を含有する培地を滅菌処理し、得られた培地と微生物とを混合して薬用人参を発酵させて、薬用人参の微生物発酵物を得る方法の一例を説明する。
【0028】
本発明において培地としては、微生物を培養できる限り制限されず、窒素源、ミネラル源、pH緩衝剤、炭素源、無機物、水等の微生物の培養に通常使用される各種成分を必要に応じて含む培地が例示される。このような培地は液体培地、固体培地等のいずれであってもよいが、より効率よく薬用人参の発酵物を得る観点から、好ましくは液体培地である。
【0029】
この限りにおいて制限されないが、一部の成分について説明すると、窒素源として、ペプトン、ポリペプトン、尿素、アミノ酸、タンパク質、大豆ペプチド等のペプチド類をはじめとする有機態窒素源、アンモニア、アンモニウム塩をはじめとする無機態窒素源が例示される。窒素源として好ましくはペプトン、ポリペプトン、ペプチド類等が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。培地中の窒素源の濃度は、微生物が生育できる通常の濃度であればよく、特に限定されないが、培養開始時の窒素源の濃度として、通常、0.05〜10質量%程度が好ましく、0.1〜5質量%程度がより好ましく例示される。
【0030】
ミネラル源としては、酵母エキス、肉エキス、カリウム、リン、マグネシウム、イオウ等(例えば、リン酸一水素カリウム、硫酸マグネシウム等)が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
pH緩衝剤としては、炭酸カルシウム等が例示される。
【0032】
無機物としては、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、鉄、マンガン、モリブデン、各種ビタミン類等が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
培地のpHは、微生物を培養できる限り制限されないが、室温(25℃)において、好ましくはpH3〜7程度が例示され、より好ましくはpH5〜6.5程度が例示される。pHは必要に応じて酸やアルカリを用いて調整すればよい。
【0034】
本発明を制限するものではないが、このような培地の一例として、大豆ペプチド、酵母エキス、炭酸カルシウムを含有する培地が例示され、更には後述する実施例で使用する培地が例示される。
【0035】
薬用人参を含有する培地の滅菌処理は、前記培地と薬用人参とを混合し、滅菌処理することにより行うことができる。滅菌処理としては前述の方法が例示でき、効率良く所望の発酵物を得る観点から、好ましくは高圧蒸気滅菌が例示される。
【0036】
培地と混合する薬用人参の使用量も特に限定されず、薬用人参の種類、使用部位、培養条件等に応じて適宜決定すればよい。一例として、薬用人参/培地全量の質量比として、好ましくは1/100〜50/100程度が例示され、より好ましくは5/100〜20/100程度が例示され、更に好ましくは10/100〜15/100程度が例示される。ここで、該質量比は、薬用人参を内温約100〜180℃ で1〜6時間乾燥させた薬用人参の乾燥物に換算した値における一例である。
【0037】
培地は、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて薬用人参や前述する成分以外の添加剤等を含んでいてもよい。
【0038】
本発明において使用する微生物も、本発明の効果が得られる限り制限されない。このような微生物として、好ましくはグラム陽性菌、より好ましくは乳酸菌が例示される。この観点から、本発明の薬用人参の微生物発酵物として、好ましくは薬用人参のグラム陽性菌による発酵物(薬用人参のグラム陽性菌発酵物)が例示され、より好ましくは薬用人参の乳酸菌よる発酵物(薬用人参の乳酸菌発酵物)が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの微生物において、より好ましくはβ−グルコシダーゼ、α−アラビノシダーゼ、α−ラムノシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素を生産できる微生物であって、食品に添加することができる微生物が例示される。
【0040】
本発明はこの限りにおいて制限されないが、例えばこのような酵素を生産できる微生物として、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス ガセリ(L. gasseri)、ラクトバチルス マリ(L. mali)、ラクトバチルス プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス ジョンソニー(L. johnsonii)、ラクトバチルス ガリナラム(L. gallinarum)、ラクトバチルス アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバチルス ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス ラムノーザス(L. rhamnosus)、ラクトバチルス ケフィア(L. kefir)、ラクトバチルス パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバチルス クリスパタス(L. crispatus)等のラクトバチルス属の乳酸菌;ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属の乳酸菌;ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属の乳酸菌;ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム アドレスセンティス(B. adolescentis)、ビフィドバクテリウム インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム カテヌラータム(B. catenulatum)等のビフィドバクテリウム属の乳酸菌;バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌;サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyses cerevisiae)等のサッカロマイセス属酵母;トルラスポラ デルブルエッキー(Torulaspora delbrueckii)等のトルラスポラ属酵母;キャンジダ ケフィア等のキャンジダ属酵母等が例示される。
【0041】
これらのなかでも好ましくは乳酸菌であり、より好ましくはラクトバチルス属の乳酸菌、ストレプトコッカス属の乳酸菌、ラクトコッカス属の乳酸菌、ビフィドバクテリウム属の乳酸菌、サッカロマイセス属酵母等が例示される。
【0042】
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明を制限するものではないが、ラクトバチルス属の乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123、受託日:平成15年8月11日)、ラクトバチルス ガセリ DSM20243株、ラクトバチルス プランタラム ATCC14947株、同ATCC10241株、ラクトバチルス ブヒネリ ATCC4005株、ラクトバチルス カゼイ ATCC393株、ラクトバチルス マリ ATCC27304株、ラクトバチルス ガリナラム JCM2011株、ラクトバチルス アミロボラス JCM1126株、ラクトバチルス ブレビス ATCC14869株、ラクトバチルス ラムノーザス ATCC7469株、同ATCC53103株、ラクトバチルス ケフィア NRIC1693株、ラクトバチルス パラカゼイ NCDO−151株等が挙げられる。
【0044】
ラクトコッカス属の乳酸菌としては、例えば、ラクトコッカス ラクチス ATCC15577株等が挙げられる。
【0045】
ビフィドバクテリウム属の乳酸菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム ビフィダム JCM7002株、ビフィドバクテリウム アドレスセンティス ATCC15703株等が挙げられる。
【0046】
サッカロマイセス属酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ IFO−0309株、同IFO−2018株等が挙げられる。
【0047】
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
これらの微生物のなかでも、ラクトバチルス カゼイハセガワ菌株(受託番号:FERM BP−10123)が特に好ましく例示される。該菌株は、漬物などの一般食品から分離された微生物であり、経口摂取しても安全である。
【0049】
本発明において、前記培地と微生物とを混合する条件は、薬用人参を発酵できる限り制限されない。例えば、前述の薬用人参を含有する培地と、液体培地で微生物を予め培養した培養液とを混合する場合、前述の薬用人参を含有する培地100質量部に対して、該培養液を0.01〜10質量部程度で混合することが好ましく例示され、 0.1〜5質量部程度で混合することがより好ましく例示される。
【0050】
微生物を予め培養する液体培地は、微生物が生育できる限り制限されず、使用する微生物の種類等に応じて適宜決定すればよい。一例として、後述する実施例に記載する培地が挙げられる。
【0051】
本発明において、該混合後における培地のpHは、微生物が生育でき、薬用人参の発酵が可能である限り制限されず、使用する微生物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、一例として、pHを4〜7程度に調整することが好ましい。
【0052】
本発明において、該混合後における薬用人参の発酵温度は、発酵可能である限り制限されず、前記培地の組成、微生物の種類や混合量等に応じて適宜決定すればよいが、より効率良く発酵を行う観点から、好ましくは25〜37℃程度が例示され、より好ましくは28〜33℃程度が例示される。発酵時間も制限されず、前記培地の組成、微生物の種類や混合量、発酵温度等に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは2〜21日程度が例示され、より好ましくは7〜14日程度が例示される。発酵は、好気条件下で行ってもよく嫌気条件下で行ってもよい。発酵後、更に常法により加熱減菌することが好ましい。
【0053】
発酵後、得られた発酵液はそのまま本発明の組成物の一成分として使用してもよく、濃縮、乾燥、精製、希釈等の任意の処理を行った後に使用してもよい。例えば濃縮方法としては得られた発酵液そのものを濃縮する方法、得られた発酵液を静置して上澄み液を回収し、回収した上澄み液を濃縮する方法、上澄み液を抽出、濃縮する方法等が例示される。乾燥方法としては、発酵液そのもの、前記上澄み液、あるいはその抽出物や濃縮物を乾燥させる方法等が例示される。精製法としては、ろ過、遠心分離等が例示される。これらは従来公知の方法を参考にして適宜行えばよい。また、発酵後、得られた発酵液に、必要に応じてデキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加して、スプレードライ処理により粉末化する方法等の従来公知の方法に従って粉末化してもよい。
【0054】
本発明では、このようにして得られたものを、薬用人参の微生物発酵物と称することができる。
【0055】
本発明において薬用人参の酵素分解物は、薬用人参を酵素処理して得られた生成物を意味する。
【0056】
薬用人参の酵素分解物を得るにあたり、酵素分解は従来公知の方法に従い行えばよく、酵素分解方法は従来十分に確立されている(例えば、J. Agric. Food. Chem. 2012, 60(14):3776-81に記載の方法)。この限りにおいて制限されないが、以下に、薬用人参の酵素分解物の製造方法の一例を説明する。
【0057】
薬用人参の酵素分解は、薬用人参と酵素を接触させることにより実施できる。薬用人参の酵素分解に使用する酵素としては、好ましくはグリコシダーゼが例示され、より好ましくはβ−グルコシダーゼ、α−アラビノシダーゼ、α−ラムノシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、キシラナーゼ、ラクターゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等が例示される。酵素分解に使用する酵素として更に好ましくはβ−グルコシダーゼ、α−アラビノシダーゼ、α−ラムノシダーゼ等が例示され、特に好ましくはβ−グルコシダーゼ等が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酵素としてグリコシダーゼを用いた場合、本発明において薬用人参の酵素分解物は薬用人参のグリコシダーゼ分解物と称することができる。
【0058】
酵素分解における薬用人参と酵素との接触時の温度(反応温度)は、本発明の効果が得られる限り制限されず、使用する酵素の種類や薬用人参の種類、これらの使用量等に応じて適宜決定すればよい。該反応温度として、好ましくは10〜90℃程度が例示され、より好ましくは30〜50℃程度が例示される。
【0059】
接触時の時間(反応時間)も、本発明の効果が得られる限り制限されず、使用する酵素の種類や薬用人参の種類、これらの使用量、処理温度等に応じて適宜決定すればよい。該反応時間として、好ましくは1時間〜2週間程度が例示され、より好ましくは4時間〜1週間程度が例示される。
【0060】
このような接触(反応)後、得られた反応物はそのまま本発明の組成物の一成分として使用してもよく、濃縮、乾燥、精製、希釈等の任意の処理を行った後に使用してもよく、必要に応じて賦形剤を添加して粉末化してもよい。これらは前述の薬用人参の微生物発酵物と同様に説明される。
【0061】
薬用人参と酵素の接触をより効果的に行い、より効率良く酵素反応物を得る観点から、得られた反応物は好ましくは反応液の状態にある。このような反応液の濃縮方法としては得られた反応液そのものを濃縮する方法、得られた反応液を静置して上澄み液を回収し、回収した上澄み液を濃縮する方法、上澄み液を抽出、濃縮する方法等が例示される。乾燥方法としては、反応液そのもの、前記上澄み液、あるいはその抽出物や濃縮物を乾燥させる方法等が例示される。精製法としては、ろ過、遠心分離等が例示される。これらは従来公知の方法を参考にして適宜行えばよい。
【0062】
本発明では、このようにして得られたものを、薬用人参の酵素分解物と称することができる。
【0063】
薬用人参の加工物は市販品でもよく、市販品に対して更に乾燥等の処理を適宜施したものでもよい。市販品の一例として高麗人参エキスパウダーMF(丸善製薬社製)、M1−CD(林原社製)等が例示される。
【0064】
薬用人参の加工物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
マカの加工物
マカの加工物の原料として、マカ(Maca、Lepidium meyenii)が挙げられ、 アブラナ科レピディウム属に属する。
【0066】
マカの使用部位は、特に制限されず、例えば根、茎、葉、花、果実、花蕾、全草、種子等のいずれも使用することができ、好ましくは根等が例示される。
【0067】
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明においてマカの加工物とは、マカの粉砕物、乾燥物、抽出物、発酵物、酵素分解物等が挙げられる。
【0069】
これらの加工物は、前述の薬用人参の説明において、薬用人参をマカに代える以外は同様に説明される。マカの加工物は市販品でもよく、市販品に対して更に乾燥等の処理を適宜施したものでもよい。マカの加工物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。市販品の一例としてマカックス(TOWA CORPORATION社製)等が例示される。
【0070】
本発明の経口組成物中の薬用人参の加工物とマカの加工物の含有割合は、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物が、乾燥物換算で、0.04〜0.18質量部である。これらの含有割合として、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物が、乾燥物換算で、より好ましくは0.05〜0.18質量部、更に好ましくは0.08〜0.18質量部が例示される。2種以上の加工物を用いる場合、その総量が該値を充足する。加工物の乾燥物は、加工物を乾燥処理することにより得られる。乾燥処理は、噴霧乾燥、または、一般的なエバポレーターを用いた減圧濃縮及び真空状態での乾燥により行う。
【0071】
本発明はこの限りにおいて制限されないが、本発明の経口組成物中の薬用人参の加工物は好ましくは、乾燥物換算で、5〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは40〜60質量%が例示される。
【0072】
本発明の経口組成物は更にコエンザイムQ10を含有してもよい。コエンザイムQ10は従来公知の成分であり、別名ユビキノンとも呼ばれる。コエンザイムQ10は、酸化型、還元型の別を問わない。コエンザイムQ10も市販品であってもよく、一例としてコエンザイムQ10(エーザイフードケミカル社製)等が例示される。
【0073】
本発明の経口組成物中のコエンザイムQ10の含有割合は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、乾燥物換算で、薬用人参の加工物1質量部に対してコエンザイムQ10が、好ましくは0.005〜0.18質量部、より好ましくは0.05〜0.12質量部が例示される。乾燥物換算(加工物の乾燥物)は、前述と同様に説明される。
【0074】
また、本発明の効果が得られる限り制限されないが、本発明の経口組成物が、薬用人参の加工物とマカの加工物とコエンザイムQ10とを含有する場合、乾燥物換算で、薬用人参の加工物1質量部に対して、好ましくはマカの加工物が0.04〜0.18質量部、コエンザイムQ10が0.005〜0.18質量部、より好ましくはマカの加工物が0.05〜0.18質量部、コエンザイムQ10が0.05〜0.12質量部、更に好ましくはマカの加工物が0.08〜0.18質量部、コエンザイムQ10が0.05〜0.12質量部が例示される。乾燥物換算(加工物の乾燥物)は、前述と同様に説明される。
【0075】
本発明の経口組成物の投与(摂取)量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、対象者(対象動物)の体格、年齢、症状、適用形態、使用目的、期待される効果の程度等に応じて適宜設定すればよい。本発明を制限するものではないが、1日投与(摂取)量として、体重60kgの成人を基準として、薬用人参の加工物を(発酵物の乾燥質量換算として)、好ましくは0.01〜1000mg、より好ましくは10〜1000mg、更に好ましくは50〜1000mgが例示される。本発明の組成物は、1日あたり単回投与(摂取)であってもよく複数回投与(摂取)であってもよい。
【0076】
本発明の組成物は、経口可能である限りその形態も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよい。本発明の組成物の形態として、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エキス剤、酒精剤、エリキシル剤等の液状形態、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセルを含む)、トローチ、チュアブル、ゲル状、クリーム状、ペースト状、ムース状、シート状、液状形態の凍結乾燥物等の半固形または固形形態等の各種形態が例示される。
【0077】
また、例えば本発明の組成物が固形形態である場合、これは水等と混合して使用してもよく、また、本発明の組成物は徐放性の剤形であってもよい。また、例えば錠剤は、必要に応じて、従来公知の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0078】
また、本発明の組成物の使用態様も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよい。本発明の組成物の使用態様として、食品組成物(飲料を含む、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメント等を含む)、病者用食品を含む)、医薬組成物、飼料組成物、また、食品組成物、医薬組成物、飼料等への添加剤等として使用することができる。
【0079】
本発明の組成物は、前述の各種形態、使用態様等における従来公知の通常の手順に従い製造すればよく、必要に応じて、薬学的に許容される成分、香粧品科学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の成分と混合等して製造すればよい。該任意の成分として、溶剤(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない)等)、賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、香料、着色料、甘味料、矯味剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、コーティング剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、酸化防止剤、抗炎症剤、清涼剤、皮膜形成剤、ゲル化剤、アミノ酸、ビタミン、酵素、各種栄養成分等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
本発明において、組成物の摂取対象者(対象動物)も制限されないが、ヒト、ヒト以外の哺乳動物等が例示される。ヒト以外の哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、牛、馬等の動物が例示される。
【0081】
本発明によれば、薬用人参の加工物に由来する効果、マカの加工物に由来する効果、あるいは、コンエンザイムQ10を含有する場合にはコンエンザイムQ10に由来する効果を、獲得することが期待される。従って、本発明の経口組成物は、これらに起因する少なくともいずれかの効果を得ることを望む対象者に、好ましく適用することができる。
【0082】
本発明の経口組成物によれば、薬用人参の加工物とマカの加工物とを、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物を0.04〜0.18質量部で組み合わせて使用することにより、薬用人参に特有の不快な風味、特に不快な酸味を低減することができる。また、本発明によれば、更にコエンザイムQ10を組み合わせて使用することにより、薬用人参に特有の不快な風味、特に酸味や苦味を低減することができる。このため、本発明によれば、薬用人参に由来する不快な風味を改善することができ、薬用人参を含有しながらも一層摂取しやすい経口組成物を得ることができる。
【0083】
このことから、本発明は、薬用人参の加工物とマカの加工物とを、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物を0.04〜0.18質量部で組み合わせることを特徴とする、経口組成物の製造方法を提供するといえる。また、本発明は、薬用人参の加工物とマカの加工物を調製する工程を有し、薬用人参の加工物とマカの加工物とを、薬用人参の加工物1質量部に対してマカの加工物を0.04〜0.18質量部で組み合わせることを特徴とする、経口組成物の製造方法を提供するといえる。また、本発明は、マカの加工物を前記割合で用いることを特徴とする、薬用人参に特有の不快な風味、特に酸味の低減方法を提供するといえる。また、本発明は、マカの加工物とコエンザイムQ10を用いることを特徴とする、薬用人参に特有の不快な風味、特に酸味及び苦味の低減方法を提供するといえる。
【0084】
これらの方法において、薬用人参の加工物、マカの加工物、コエンザイムQ10、これらの含有割合、経口組成物等は、前述と同様に説明される。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
試験例1
下記の表1に従い、薬用人参の加工物及びマカの加工物を含有する経口組成物を調製した。具体的には、次の手順に従い経口組成物を調製した。
【0086】
1.薬用人参の加工物
薬用人参の加工物として、市販品の高麗人参発酵物(商品名M1−CD、林原社製、粉末乾燥物)を用いた。該発酵物は、ラクトバチルスカゼイハセガワ菌株(受託番号:FERM BP-10123)を用いて得られた薬用人参の発酵物であり、該市販品は発酵液にデキストリンを添加して乾燥したものである。
【0087】
2.マカの加工物
マカの加工物として、市販品のマカ抽出物(商品名マカックス、TOWA CORPORATION社製、粉末乾燥物)を用いた。該抽出物は、マカの根から得た抽出物であり、該市販品は抽出液にデキストリンを添加して乾燥したものである。
【0088】
3.経口組成物の調製
前述の高麗人参発酵物とマカ抽出物を、表1に示す配合割合となるようにそれぞれ袋に入れて混合し、実施例1−1〜1−5ならびに比較例1及び2の経口組成物を得た。なお、後述の摂取量20mg中に含まれる高麗人参発酵物の量は各組成物で同一(約16.2mg)であり、従って、比較例や実施例1−1等のマカ抽出物を含有しない組成物やマカ抽出物の含有割合が低い組成物では、組成物の全体量を賦形剤(デキストリン)を添加することにより調整した。
【0089】
4.評価方法
前述のようにして得た各組成物の苦味、塩味、甘味、酸味、うま味について、官能評価の専門家10名により評価を行った。具体的には、各組成物約20mgを専門家に経口摂取させ、次の表2に示す基準に従い、各組成物の苦味、塩味、甘味、酸味、うま味を評価し、その平均値を算出した。
【0090】
5.結果
結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1から明らかなように、高麗人参発酵物を含有しマカ抽出物を含有していない比較例1の組成物では、不快な苦味と酸味をはっきりと感じた。また、比較例2の組成物でも、不快な苦味と酸味をはっきりと感じた。
【0094】
これに対して、表1の実施例1−1〜1−5に示す割合で高麗人参発酵物とマカ抽出物とを併用した経口組成物では、不快な酸味が有意に改善された。
【0095】
これにより、高麗人参発酵物とマカ抽出物を特定の割合で組み合わせることにより、高麗人参に由来する、不快な酸味が改善されることが分かった。このように、本発明によれば、薬用人参に由来する独特の不快な風味が改善された、より摂取しやすい経口組成物を得られることが分かった。
【0096】
試験例2
下記の表3に従い、高麗人参発酵物、マカ抽出物及びコエンザイムQ10を含有する経口組成物を調製した。具体的には、次の手順に従い経口組成物を調製した。
【0097】
1.高麗人参の加工物
試験例1と同じ高麗人参発酵物を用いた。
【0098】
2.マカの加工物
試験例1と同じマカ抽出物を用いた。
【0099】
3.コエンザイムQ10
コエンザイムQ10として市販品(商品名コエンザイムQ10、エーザイフードケミカル社製、酸化型)を用いた。
【0100】
4.経口組成物の調製
前述の高麗人参発酵物、マカ抽出物、コエンザイムQ10を表3に示す配合割合となるように袋に入れて混合し、実施例2−1の経口組成物を得た。実施例2−2〜実施例2−7も同様に、表3に示す配合割合となるように袋に入れて混合し経口組成物を得た。なお、本試験例においても摂取量20mg中に含まれる高麗人参発酵物の量は各組成物で同一である。
【0101】
5.評価方法
試験例1と同様にして、各組成物の苦味、塩味、甘味、酸味、うま味を評価し、その平均値を算出した。
【0102】
6.結果
結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3中、比較例1は試験例1に示す比較例1と同じである。表3から明らかなように、高麗人参発酵物とマカ抽出物を含有し、更にエンザイムQ10を併用した実施例2−1〜2−7の組成物では、不快な酸味が有意に改善された。また、これら3成分の併用により、不快な苦味も有意に改善された。また、コエンザイムQ10の含有割合を高くすることにより、塩味が軽減された。
【0105】
高麗人参は独特の不快な風味、特に特有の苦味や酸味を有することから、服用し難いという問題がある。しかし、高麗人参発酵物とマカ抽出物とコエンザイムQ10とを併用することにより、高麗人参に由来する独特の苦味、酸味が改善され、すなわち独特の不快な風味が改善された、より摂取しやすい経口組成物を得られることが分かった。
試験例3
1.経口組成物の調製等
試験例2において、高麗人参発酵物、マカ抽出物及びコエンザイムQ10の配合割合を表4に示す割合となるように変更する以外は同様にして、実施例3−1〜3−3の経口組成物を袋混合にて調製し、苦味、塩味、甘味、酸味、うま味について同様に評価した。本試験例においても摂取量20mg中に含まれる高麗人参発酵物の量は各組成物で同一である。
【0106】
2.結果
結果を表4に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
表4中、比較例1は試験例1に示す比較例1と同じである。表4から明らかなように、実施例3−1〜3−3の組成物においても、不快な酸味が有意に改善され、また、不快な苦味も有意に改善された。また、実施例3−1〜3−3の組成物ではいずれも塩味も軽減された。
【0109】
このことからも、高麗人参発酵物とマカ抽出物とコエンザイムQ10とを併用することにより、高麗人参に由来する独特の不快な風味、特に特有の苦味、酸味が改善され、すなわち独特の不快な風味が改善された、より摂取しやすい経口組成物を得られることが分かった。
【0110】
処方例
表5及び6に、本発明の経口組成物の処方例を示す。これらの経口組成物では、高麗人参発酵物に由来する不快な酸味、または、不快な酸味及び苦味が低減される。
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】