特許第6968627号(P6968627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968627
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】流量調節弁
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/35 20210101AFI20211108BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20211108BHJP
   F16K 3/316 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   F25B41/35
   F16K31/04 K
   F16K3/316
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-167683(P2017-167683)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-45058(P2019-45058A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】奥 達也
(72)【発明者】
【氏名】志賀 元泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴美
【審査官】 飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−108763(JP,A)
【文献】 特開平07−310844(JP,A)
【文献】 特開平05−288286(JP,A)
【文献】 特開2009−150555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/30−41/39
F16K 3/00− 3/36,31/00−31/05,31/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ネジ部が形成された出口流路を有するハウジングと、
前記ハウジングに内蔵され、一端側の外周に流路形成用溝と雄ネジ部とが形成された弁体と、
前記弁体の他端側に回転力を付加して前記弁体を回動させるための駆動部と、
を備え、
前記流路形成用溝は、前記雄ネジ部のネジ溝を横切るように前記弁体の軸方向に沿って形成され、
前記出口流路に対する前記弁体の軸方向位置によって流量調節が可能に構成されることを特徴とする流量調節弁。
【請求項2】
前記ハウジングに固定され、前記弁体の前記他端側を前記弁体の軸方向に沿って移動可能に支持するための支持部を備えることを特徴とする請求項1に記載の流量調節弁。
【請求項3】
前記支持部は、前記弁体の前記他端側に前記弁体の軸方向に沿って形成された凹部に挿入されるガイド軸で構成されることを特徴とする請求項2に記載の流量調節弁。
【請求項4】
前記弁体と前記ガイド軸との間に設けられ、前記弁体を支持可能な滑り軸受を備えることを特徴とする請求項3に記載の流量調節弁。
【請求項5】
前記駆動部は、
前記弁体の前記他端側の外周に固定されるロータと、前記ロータの外周側に配置されるステータコイルと、を有するモータで構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の流量調節弁。
【請求項6】
前記弁体に流体を流入するための流体流入路を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の流量調節弁。
【請求項7】
記流路形成用溝は前記弁体の先端側ほど横断面が大きくなるように構成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の流量調節弁。
【請求項8】
冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられる冷凍サイクル構成機器と、
を備え、
前記冷凍サイクル構成機器は、冷媒膨張弁として前記冷媒循環路に設けられる請求項1乃至7の何れか一項に記載の流量調節弁を含むことを特徴とする冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流量調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発圧縮式冷凍サイクルを構成する冷凍機に使われる冷媒膨張弁は、精密な流量調節を行う必要があり、例えば、ニードル弁などの流量調節弁が用いられる。特許文献1には、冷媒膨張弁にニードル弁を用いた冷凍機が開示されている。
【0003】
冷媒膨張弁などにおいて、精密な流量制御を行うためには、バルブスピンドルや弁体の移動量に対して流体通路断面積をわずかずつ変化させる必要があり、そのために、ニードル弁体を細くし、かつニードル弁体のテーパを緩やかにする必要がある。しかし、緩やかなテーパを有するニードル弁体は加工が困難であり、かつ流路を構成するオリフィス孔とニードル弁体との位置関係が安定しないという問題がある。即ち、流体の流れで細いニードル弁体が振動しやすく、オリフィス孔の内面に接触し損傷するおそれがある。
【0004】
特許文献2には、弁体の先端をオリフィス孔に嵌合させると共に、弁体の周面に形成された溝によって流路を形成する流量調節弁が開示されている。この流量調節弁によれば、弁体がオリフィス孔に嵌合するため、ニードル弁体が流体の流れで振動する問題は解消されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/063876号公報
【特許文献2】特許第4932670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたニードル弁では、弁体が細くなると、加工可能な材料は靭性がある材料に限られる。また、所望の流量とするためには、ニードル弁体の針先形状に精密加工を必要とし、加工に要するコストが増大する。
特許文献2に開示された流量調節弁は、弁体の先端をオリフィス孔に嵌合させるために、粘性が高い流体の場合、流路に詰まりが生じるおそれがある。また、弁体の先端とオリフィス孔との間でかじりが生じるおそれがある。
【0007】
一実施形態は、上記課題に鑑み、弁体に精密加工を必要とせずに精度良い流量調節が可能であると共に、流路に詰まりが生じない簡単な構成の流量調節弁を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一実施形態に係る流量調節弁は、
雌ネジ部が形成された出口流路を有するハウジングと、
前記ハウジングに内蔵され、一端側の外周に流路形成用溝と雄ネジ部とが形成された弁体と、
前記弁体の他端側に回転力を付加して前記弁体を回動させるための駆動部と、
を備え、
前記出口流路に対する前記弁体の軸方向位置によって流量調節が可能に構成される。
【0009】
上記(1)の構成において、出口流路に形成された雌ネジ部と弁体に形成された雄ネジ部とが螺合するために、上記駆動部によって弁体を回動させることで、弁体を軸方向へ移動できる。
上記(1)の構成によれば、上記弁体と上記出口流路とはネジ部を介して螺合しているので、弁体が出口流路の中で偏心又は振動することはなく、弁体を安定支持できる。また、流路形成用溝の形状で流量を調節するので、精密な流量制御が可能であると共に、弁体の精密加工は不要であり、かつ弁体を太くできるので、材料選定の自由度を広げることができる。
【0010】
さらに、弁体の雄ネジ部が出口流路に形成された雌ネジ部と螺合するので、弁体と出口流路との間で詰まりやかじりが生じない。また、弁体の軸方向移動は上記駆動部によって弁体を回動させるだけでよいので、駆動部から弁体への駆動力の伝達機構を簡素化できる。
【0011】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記ハウジングに固定され、前記弁体の前記他端側を前記弁体の軸方向に沿って移動可能に支持するための支持部を備える。
上記(2)の構成によれば、上記支持部で弁体の他端側を支持するので、弁体を両端で支持することになり、弁体を安定支持できる。従って、弁体は安定した回転運動が可能になる。
【0012】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記支持部は、前記弁体の前記他端側に前記弁体の軸方向に沿って形成された凹部に挿入されるガイド軸で構成される。
上記(3)の構成によれば、弁体を上記ガイド軸で支持するため、弁体の回転運動に支障なく支持でき、かつガイド軸に弁体の重量が加わらないため、ガイド軸の強度を低減できる。
【0013】
(4)一実施形態では、前記(3)の構成において、
前記弁体と前記ガイド軸との間に設けられ、前記弁体を支持可能な滑り軸受を備える。
上記(4)の構成によれば、上記滑り軸受を備えることで、弁体の回転運動に支障をきたすことなく弁体を安定支持できる。
【0014】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記駆動部は、
前記弁体の前記他端側の外周に固定されるロータと、前記ロータの外周側に配置されるステータコイルと、を有するモータで構成される。
上記(5)の構成によれば、駆動部が上記構成を有するモータで構成されるため、弁体を上記ロータと連動させて回転させればよい。従って、駆動部から弁体への動力伝達機構を簡易かつ低コスト化できる。
【0015】
(6)一実施形態では、前記(1)〜(5)の何れかの構成において、
前記弁体に流体を流入するための流体流入路を備える。
上記(6)の構成によれば、弁体に流体流入路を設けることで、流量調節弁のハウジングを小型化できる。
【0016】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(6)の何れかの構成において、
前記流路形成用溝は前記弁体の軸方向に沿って形成され、
前記流路形成用溝は前記弁体の先端側ほど横断面が大きくなるように構成される。
上記(7)の構成によれば、上記流路形成用溝は弁体の先端側ほど横断面が大きくなるので、弁体の軸方向の位置を調節することで、流量調節弁の流量を高精度で調節できる。
【0017】
(8)一実施形態に係る冷凍機は、
冷媒循環路と、
前記冷媒循環路に設けられる冷凍サイクル構成機器と、
を備え、
前記冷凍サイクル構成機器は、冷媒膨張弁として前記冷媒循環路に設けられる前記(1)〜(7)の何れかの構成を有する流量調節弁を含む。
上記(8)の構成によれば、冷媒膨張弁として上記構成の流量調節弁を備えることで、流量の精密な制御が可能であると共に、弁体の偏心又は振動を抑制でき、かつ弁体の材料選定の自由度が広がるので低コスト化できる。
従って、冷媒膨張弁を低コスト化できると共に、冷媒循環路を循環する冷媒の流量制御の精度を向上できるので、冷凍機のCOP(成績係数)を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
一実施形態によれば、弁体に精密加工を必要とせずに精密な流量制御が可能であり、かつ流路に詰まりやかじりが生じない簡易かつ低コストな流量調節弁が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る流量調節弁の縦断面図である。
図2】一実施形態に係る弁体の斜視図である。
図3】一実施形態に係る流量調節弁の縦断面図である。
図4】一実施形態に係る冷凍機の系統図である。
図5】従来のニードル弁の流量特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0021】
図1図3は、幾つかの実施形態に係る流量調節弁10(10A、10B)をしめす。
図1図3において、弁本体を内蔵するハウジング12に出口流路14が形成され、出口流路14を形成するハウジング壁12aの壁面には雌ネジ部16が形成されている。弁体18はハウジング12に内蔵され、弁体18の一端側(先端側)の外周面に流路形成用溝20と雄ネジ部22とが形成されている。弁体18の他端側に弁体18に回転力を付加して弁体18を回動させるための駆動部24が設けられる。
【0022】
駆動部24によって弁体18に回転力を付加し弁体18を回動させると、弁体18と出口流路14を形成するハウジング壁12aとはネジ部16,22を介して螺合しているので、弁体18が出口流路14に対して軸方向へ移動する。流路形成用溝20の横断面積は弁体18の軸方向位置によって異なる。従って、ハウジング壁12aと流路形成用溝20との間に形成される流路面積は、弁体18の軸方向位置によって異なるため、出口流路14に対して弁体18を軸方向へ移動させることによって、出口流路14の流量調節が可能になる。
【0023】
上記構成によれば、弁体18と出口流路14を形成するハウジング壁12aとはネジ部16,22を介して螺合しているので、弁体18が出口流路14の中で偏心又は振動することはなく、弁体18を安定支持できる。また、流路形成用溝20の形状で流量を調節するので、精密な流量制御が可能であると共に、弁体18の外形の精密加工は不要であり、かつ弁体18を太くできるので、材料選定の自由度を広げることができる。
弁体18の材質として、例えば、タングステンカーバイドなどの超硬合金や、PPS材、PEEK材などの樹脂を用いることができる。
【0024】
さらに、弁体18の雄ネジ部22が出口流路14に形成された雌ネジ部16と螺合するので、弁体18と出口流路14との間で詰まりやかじりが生じない。また、弁体18の軸方向移動は駆動部24によって弁体18を回動させるだけでよいので、駆動部24から弁体18への駆動力の伝達機構を簡素化できる。
【0025】
図5に基づいて従来のニードル弁の流量特性を示す。
図5において、縦軸は弁開度を示し、0.0が全閉状態を示し、1.0が全開状態を示す。横軸は従来のニードル弁体100のストロークを示す。このニードル弁は約15mmのストロークを有し、約15mmのストロークで流路断面変化をラインaのように直線的にするには、ニードル弁体100の形状をラインbのようにする必要がある。ニードル弁体の直径が約1mm程度の細い直径を有するとき、先端形状の設計の自由度は限られ、製造には高度な加工技術が必要となる。
【0026】
これに対して、一実施形態に係る弁体18は、比較的太い丸棒の外形に流路形成用溝20を加工すればよいので、弁体18の外形自体は高度な加工技術を必要としない。また、加工後の形状検査及び計測も容易である。
【0027】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、出口流路14はハウジング壁12aに一体形成された出口管15の内部に形成される。
【0028】
一実施形態では、図1に示す流量調節弁10(10A)において、ハウジング12に入口管26が設けられ、流体fは入口管26からハウジング12の内部に流入する。ハウジング12の内部に流入した流体fは、流路形成用溝20を通り出口流路14に流出する。
一実施形態では、入口管26はハウジング12に対して横向きにかつハウジング12の内周面に対し接線方向に沿うように接続される。
この実施形態によれば、入口管26からハウジング12に流入した流体fは、ハウジング12の内周面に沿って旋回するので、ハウジング12の中心に設けられハウジング12の軸方向に延在する弁体18に妨げられずに出口流路14に向かうことができる。これによって、流れの乱れの発生を抑制できるので、流量制御精度を向上できる。
【0029】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、弁体18は棒状に形成され、棒状体の一端側で棒状体の外周に流路形成用溝20及び雄ネジ部22が形成される。流路形成用溝20は、図2に示すように、弁体18の一端側で弁体18の軸方向に沿って設けられる。一実施形態では、複数の流路形成用溝20が弁体18の周方向に沿って並列に設けられる。
【0030】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、弁体18の他端側を支持部28で支持する。支持部28は、支持部28の外側に設けられる圧力隔壁44に固定され、弁体18の他端側を弁体18の軸方向に沿って移動可能に支持する。
この実施形態によれば、支持部28によって弁体18の他端側を支持するので、弁体18は安定支持され、安定した回転運動が可能になる。弁体18の一端側は出口管15と共に出口流路14を形成するハウジング壁12aで支持されるので、弁体18は両端で支持され、安定した回転運動が可能になる。
【0031】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、弁体18の他端側に弁体18の軸方向に沿って凹部30が形成され、支持部28は凹部30に挿入されるガイド軸32で構成される。
この実施形態によれば、弁体18はガイド軸32で支持されるため、弁体18の回転運動に支障とはならない。また、ガイド軸32に弁体18の重量が加わらないので、ガイド軸32の強度を低減でき低コスト化できる。
【0032】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、凹部30は弁体18の軸方向に沿って弁体18の中心に形成される。また、ガイド軸32はハウジング12の軸方向に沿ってハウジング12の中心に設けられる。従って、ガイド軸32は弁体18の回転運動に全く支障とはならない。また、ガイド軸32は弁体18の回転中心で弁体18を支持するため、弁体18の回転運動によって発生する遠心力が加わらないので、ガイド軸32の強度を低減できる。
【0033】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、弁体18とガイド軸32との間に滑り軸受34が設けられる。弁体18は滑り軸受34によって支持される。
この実施形態によれば、滑り軸受34を備えることで、弁体18の回転運動に支障をきたすことなく弁体18を安定支持できる。
【0034】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、滑り軸受34は弁体18に固定され、ガイド軸32に対して摺動可能に設けられる。このように、摺動面を中心側に位置させることで、摺動面の面積を低減でき、摺動による摩擦抵抗を低減できる。
【0035】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、駆動部24は、弁体18の他端側の外周に固定される磁石ロータ36と、磁石ロータ36の外周側に配置されるステータコイル38と、を有するモータで構成される。
この実施形態によれば、駆動部24が上記構成を有するモータで構成されるため、弁体18を磁石ロータ36と連動させて回転させればよい。従って、磁石ロータ36の回転運動を弁体18の回転運動に変換すればよいので、動力の伝達効率を高く維持でき、かつ弁体18の回転機能を簡易かつ低コスト化できる。
【0036】
一実施形態では、図1及び図3に示すように、圧力隔壁(非磁性体の薄肉パイプ)44が磁石ロータ36の外側でハウジング12に設けられる。磁石ロータ36は圧力隔壁44で囲まれ、ステータコイル38は圧力隔壁44の外側に配置される。電気絶縁性を有するコイルカバー13が圧力隔壁44及びステータコイル38の外側に設けられ、ステータコイル38はコイルカバー13の内側に固定される。ステータコイル38が発する電磁気力によって磁石ロータ36及び弁体18を回転させる。
流体fが高圧の冷媒である場合、圧力隔壁44を設けることで、流体fを圧力隔壁44の内部に密封できるので、ステータコイル38側は流体f(例えば冷媒)の圧力や接触による影響を受けない。
【0037】
一実施形態では、上記モータをステッピングモータで構成することができる。
一実施形態では、圧力隔壁44はハウジング12の延長上に固定され、支持部28は圧力隔壁44の内面に固定される。
【0038】
一実施形態では、図3に示す流量調節弁10(10B)において、弁体18に流体fを流入するための流体流入路40を備える。
この実施形態によれば、弁体18に流体流入路40を設けることで、流量調節弁10(10B)の弁本体を小型化できる。
【0039】
一実施形態では、図3に示すように、流体流入路42が支持部28及びガイド軸32に形成され、流体流入路42は弁体18に形成された流体流入路40に連通する。これによって、流量調節弁10(10B)の弁本体を小型化できる。
一実施形態では、流体流入路40は、弁体18の軸方向でかつ軸中心に形成される。これによって、流体流入路40を流れる流体fには弁体18の回転運動によって発生する遠心力が付加されないので、流体fは流れが乱れずに出口流路14側へ流れることができる。
【0040】
一実施形態では、図2に示すように、流路形成用溝20は弁体18の軸方向に沿って形成される。また、流路形成用溝20は弁体18の先端側ほど横断面が大きくなるように構成される。
この実施形態によれば、流路形成用溝20は弁体18の先端側ほど横断面が大きくなるので、弁体18の軸方向の位置を調節することで、流量調節弁10の流量を高精度で調節できる。
【0041】
一実施形態に係る冷凍機50は、図4に示すように、冷媒循環路52と、冷媒循環路52に設けられる冷凍サイクル構成機器と、を備える。
冷凍サイクル構成機器は、冷媒膨張弁として冷媒循環路52に設けられる上記構成を有する流量調節弁10を含む。
上記構成によれば、冷媒膨張弁として上記構成の流量調節弁10を備えることで、流量の精密な制御が可能であると共に、弁体18の偏心又は振動を抑制でき、かつ弁体18の材料選定の自由度が広がるので低コスト化できる。
従って、冷媒膨張弁を低コスト化できると共に、冷媒循環路52を循環する冷媒の流量制御の精度を向上できるので、冷凍機50のCOP(成績係数)を向上できる。
【0042】
一実施形態では、図4に示すように、冷凍サイクル構成機器として、さらに、冷媒循環路52に設けられた圧縮機54、凝縮器56及び蒸発器58を含む。
圧縮機54に供給された冷媒ガスは圧縮機54で圧縮され高圧となる。高圧となった冷媒ガスは凝縮器56で冷却水などの冷却媒体wで冷却され液化する。凝縮器56で液化した冷媒液は膨張弁としての流量調節弁10を経て減圧され一部が気化した気液二相流となる。流量調節弁10で減圧され気液二相流となった冷媒は蒸発器58で被冷却媒体cを冷却し被冷却媒体cから蒸発潜熱を得て気化する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
一実施形態によれば、弁体に精密加工を必要とせずに精密な流量制御が可能であり、かつ流路に詰まりやかじりが生じない簡単な構成の流量調節弁を実現できる。
【符号の説明】
【0044】
10(10A、10B) 流量調節弁
12 ハウジング
12a ハウジング壁
13 コイルカバー
14 出口流路
15 出口管
16 雌ネジ部
18 弁体
20 流路形成用溝
22 雄ネジ部
24 駆動部
26 入口管
28 支持部
30 凹部
32 ガイド軸
34 滑り軸受
36 磁石ロータ
38 ステータコイル
40、42 流体流入路
44 圧力隔壁
50 冷凍機
52 冷媒循環路
54 圧縮機
56 凝縮器
58 蒸発器
c 被冷却媒体
f 流体
w 冷却媒体
図1
図2
図3
図4
図5