【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
<ハイビスカスの抽出物>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用いた。
【0041】
(実施例1)
<ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりヒアルロニダーゼ活性阻害作用を試験した。
【0042】
被験試料を溶解した0.1mol/L酢酸緩衝液(pH3.5)0.2mLにヒアルロニダーゼ溶液(Type IV−S(ウシ精巣由来)、400 NF units/mL;Sigma−Aldrich Japan社製)0.1mLを加え、37℃で20分間反応した。更に、活性化剤として2.5mmol/L塩化カルシウム0.2mLを加え、37℃で20分間反応した。これに0.8mg/mLヒアルロン酸ナトリウム溶液(トリ鶏冠由来ヒアルロン酸ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)0.5mLを加え、37℃で40分間反応した。その後、0.4mol/L水酸化ナトリウム0.2mLを加えて反応を止め冷却した後、各反応溶液にホウ酸溶液0.2mLを加え、3分間煮沸した。氷冷後、p−DABA試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、和光純薬工業株式会社製)6mLを加え、37℃で20分間反応した。その後、波長585nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表1に示した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)=
1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
ただし、前記式中、Stは、被験試料溶液の波長585nmにおける吸光度、Sbは、被験試料溶液ブランクの波長585nmにおける吸光度、Ctは、コントロール溶液の波長585nmにおける吸光度、Cbはコントロール溶液ブランクの波長585nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。
【0043】
【表1】
表1の結果から、ハイビスカスの抽出物が、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが認められた。
【0044】
(実施例2)
<過酸化水素消去作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により過酸化水素消去作用を試験した。
【0045】
96wellプレートに被験試料溶液25μLを入れ、0.15mMのH
2O
2を10μL、0.1mol/LのPIPES緩衝液(pH7.0)(0.5%のトライトンX−100、100 unit/mLのペルオキシダーゼ1mL含有)25μLを添加し、37℃で20分間反応した。反応後、速やかに100μMのDA−67を180μL添加した後、エタノール10μLを加え、37℃で5分間の発色反応を行った。発色反応終了後、波長650nmにおける吸光度を測定した。また、同様の方法で空試験を行い補正した。
過酸化水素消去率の計算方法は、以下のとおりである。また、50%阻害活性濃度(IC
50:μg/mL)を算出した。これらの結果を表2に示した。
過酸化水素消去率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
ただし、前記式中、Stは、被験試料溶液の波長650nmにおける吸光度、Sbは、被験試料溶液ブランクの波長650nmにおける吸光度、Ctは、コントロール溶液の波長650nmにおける吸光度、Cbは、コントロール溶液ブランクの波長650nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。
【0046】
【表2】
表2の結果から、ハイビスカスの抽出物が、過酸化水素消去作用を有することが認められた。
【0047】
(実施例3)
<B16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりB16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用を試験した。
【0048】
B16メラノーマ細胞を10体積%FBS(STANDARD FETAL BOVINE SERUM、HyClone社製)含有ダルベッコMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(1)、日水製薬株式会社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10体積%FBS及び1mmol/Lテオフィリン(Theophylline、和光純薬工業株式会社製)含有ダルベッコMEMで24.0×10
4細胞/mLの濃度に希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり300μLずつ播種し、6時間培養した。培養終了後、10体積%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで溶解した被験試料を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を取り除き、2mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。測定した吸光度の値から合成メラニン(SIGMA社製)を用いて作成した検量線を基にメラニン量を算出した。
また、細胞生存率の測定のため、同様に培養後、400μLのPBS(−)リン酸生理緩衝液で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで10体積%FBS含有ダルベッコMEMに溶解した13.8mmol/Lニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加した。2.5時間培養した後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
空試験として、10体積%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMのみで培養した細胞を同様の方法で試験した。
メラニン産生抑制率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表3に示した。
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
ただし、前記式中、Aは、被験試料を添加しない細胞での波長475nmにおける吸光度、Bは、被験試料を添加した細胞での波長475nmにおける吸光度、Cは、被験試料を添加しない細胞での波長540nmにおける吸光度、Dは、被験試料を添加した細胞での波長540nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。
【0049】
【表3】
表3の結果から、ハイビスカスの抽出物が、メラニン産生抑制作用を有することが認められた。
【0050】
(実施例4)
<エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりエンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0051】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte;NHEK)を75cm
2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO
2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10
4cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UV−B照射(50mJ/cm
2)を行い、その後KGMで必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.No.311−07361)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、エンドセリン−1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler
(R)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR
(R) PrimeScript
TM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT−PCR反応により行った。
エンドセリン−1のmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。
そして、これらの結果から、下記数式により、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制率を算出した。結果を表4に示した。
エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記数式中、Aは、「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは、「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは、「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値である。
【0052】
【表4】
表4の結果から、ハイビスカスの抽出物が、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用を有することが認められた。
【0053】
(実施例5)
<幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0054】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte;NHEK)を80cm
2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO
2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10
4cells/2mLシャーレずつ播き、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えUV−B照射(50mJ/cm
2)を行った。その後、KGMで必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.No.311−07361)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、SCF(Stem Cell Factor)及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler
(R)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR
(R) PrimeScript
TM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT−PCR反応により行った。
SCFのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。
そして、これらの結果から、下記数式により、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制率を算出した。結果を表5に示した。
幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記数式中、Aは「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値をそれぞれ表す。
【0055】
【表5】
表5の結果から、ハイビスカスの抽出物が、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現上昇抑制作用を有することが認められた。
【0056】
(実施例6)
<塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現上昇抑制作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0057】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte;NHEK)を75cm
2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞培養用増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO
2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10
4cells/2mLシャーレずつ播き、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えUV−B照射(50mJ/cm
2)を行った。その後、KGMで必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.No.311−07361)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、bFGF(basic Fibroblast Growth Factor;塩基性線維芽細胞増殖因子)及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler
(R)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR
(R) PrimeScript
TM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT−PCR反応により行った。
bFGFのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。
これらの結果から、下記数式により、bFGFmRNA発現上昇抑制率を算出した。結果を表6に示した。
bFGFmRNA発現上昇抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記数式中、Aは、紫外線未照射・被験試料無添加時の補正値、Bは、紫外線照射・被験試料無添加時の補正値、Cは、紫外線照射・被験試料添加時の補正値を表す。
【0058】
【表6】
表6の結果から、ハイビスカスの抽出物が、強いbFGFmRNA発現上昇抑制作用を有することが認められた。
【0059】
(実施例7)
<プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
【0060】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte;NHEK)を75cm
2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞培養用増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO
2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10
4cells/2mLシャーレずつ播き、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えUV−B照射(50mJ/cm
2)を行った。その後、KGMで必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.No.311−07361)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、POMC(proopiomelanocortin;プロオピオメラノコルチン)及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler
(R)(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR
(R) PrimeScript
TM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT−PCR反応により行った。
POMCのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。
これらの結果から、下記数式により、POMCmRNA発現上昇抑制率を算出した。結果を表7に示した。
POMCmRNA発現上昇抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記数式中、Aは、「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは、「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは、「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値を表す。
【0061】
【表7】
表7の結果から、ハイビスカスの抽出物が、POMCmRNA発現上昇抑制作用を有することが認められた。
【0062】
(実施例8)
<表皮ヒアルロン酸産生促進作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により表皮ヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
【0063】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10
5細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、24時間培養した。培養終了後、KGMで溶解した被験試料を各ウェルに100μL添加し、7日間培養した。培養後、各ウェルの培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸結合タンパク(HABP、生化学バイオビジネス株式会社製)を用いたサンドイッチ法により測定した。
【0064】
ヒアルロン酸産生促進率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表8に示した。
ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100
ただし、前記式中、Aは、被験試料添加時のヒアルロン酸量、Bは、被験試料無添加時のヒアルロン酸量、を表す。
【0065】
【表8】
表8の結果から、ハイビスカスの抽出物が、表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有することが認められた。
【0066】
(実施例9)
<グルタチオン産生促進作用試験(ヒト正常皮膚線維芽細胞)>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりグルタチオン産生促進作用試験(ヒト正常皮膚線維芽細胞)を試験した。
【0067】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10質量%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10
5cells/mLの濃度に10質量%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48wellプレートに1well当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。培養後、1質量%FBS含有α−MEM培地で溶解した被験試料を各wellに200μL添加し、24時間培養した。培養終了後、各wellから培地を抜き、400μLのPBS(−)にて洗浄後、150μLのM−PER
(R)(PIERCE社)を用いて細胞を溶解した。このうちの100μLを用いて総グルタチオンの定量を行った。
即ち、96wellプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mのリン酸緩衝液50μL、2mMのNADPHを25μL及びグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mMの5,5’−dithiobis(2−nitorobenzoic acid)25μLを加え、5分間後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は酸化型グルタチオンを用いて作成した検量線に基づき算出した。
得られた値は総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記数式によりグルタチオン産生促進率を算出した。試料濃度12.5μg/mL、50μg/mL、及び200μg/mLでの結果を表9に示した。
グルタチオン産生促進率(%)=(B/A)×100
ただし、前記数式中、Aは、被験試料を添加しない細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)、Bは、被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量を表す。
【0068】
【表9】
表9の結果から、ハイビスカスの抽出物が、グルタチオン産生促進作用を有することが認められた。
【0069】
(実施例10)
<セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用を試験した。
【0070】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を75cm
2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO
2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10
4cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、KGMで必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.no.311−07361)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotalRNAを調製した。
このtotalRNAを鋳型とし、SPT及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(登録商標)(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標)PrimeScript
TM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2 Step RT−PCR反応により行った。SPTの発現量は、被験試料無添加、被験試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に被験試料無添加の補正値を100とした時の被験試料添加の補正値を算出した。
SPTmRNA発現促進率の計算方法は、以下の通りである。結果を表10に示した。
SPTmRNA発現促進率(%)=A/B×100
ただし、前記式中、Aは被験試料添加時の補正値、Bは被験試料無添加時の補正値を表す。
【0071】
【表10】
表10の結果から、ハイビスカスの抽出物が、高いセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)産生促進作用を有することが認められた。
【0072】
(実施例11)
<メイラード反応阻害作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、メイラード反応阻害作用を試験した。
【0073】
被験試料の凍結乾燥品を蒸留水に溶解した被験試料溶液50μL、100mmol/LのD(−)−リボース200μL、25mg/mLのリゾチーム200μL、100mmol/Lのリン酸水素ナトリウム(pH7.4)500μL、及び滅菌蒸留水50μLを混合(全量1,000μL)し、37℃で静置した。コントロールは、被験試料溶液に代えて蒸留水とした以外は、前記と同様にして調製した。ブランクは、被験試料溶液に代えて蒸留水としたこと、37℃に代えて4℃で静置した以外は、前記と同様にして調製した。
【0074】
7日間後、ボルテックスで攪拌し、反応液40μLにSDS−PAGE用サンプルバッファー40μLを混合した後、沸騰浴中で3分間加熱し、分析サンプルとした。アクリルアミド濃度を、分離ゲル15%、濃縮ゲル4%に調製したポリアクリルアミドゲルに分析サンプル12μLをアプライし、電気泳動を行った。
泳動したゲルをクマシーブリリアントブルー染色後脱色し、画像撮影装置ChemiDocXRS Plus(Bio−Rad Laboratories社製)を用いて検出し、バンドをImage Lab Software version2.0(Bio−Rad Laboratories社製)にて定量的に測定した。
結果は、各バンドのNet intensity(バンド強度)を用いて、リゾチームの二量体及び三量体の形成阻害率を、下記式から算出した。結果を表11に示した。
メイラード反応阻害率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
ただし、前記数式中、Aは、被験試料添加時の二量体と三量体のNet intensityの和、Bは、被験試料無添加時(コントロール)の二量体と三量体のNet intensityの和、Cは、被験試料無添加時の4℃で静置(ブランク)の二量体と三量体のNet intensityの和を、それぞれ表す。
【0075】
【表11】
表11の結果から、ハイビスカスの抽出物が、メイラード反応阻害作用を有することが認められた。
【0076】
(実施例12)
<最終糖化産物(AGEs)形成抑制作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、最終糖化産物(AGEs)形成抑制作用を試験した。
【0077】
96穴のI型コラーゲンコートプレートにPBS(−)にて調製した0.2MのD(−)−リボース及び被験試料(試料濃度:6.25μg/mL、25μg/mL、100μg/mL又は400μg/mL)の混合物を100μL添加し、37℃で2週間静置し、AGEsを形成させた。このとき、陰性対照としてPBS(−)のみを添加したもの、陽性対照としてD(−)−リボースのみを添加したものを同様に静置した。17日後、抗AGEs抗体(トランスジェニック社製)を用いたELISA法によりAGEs量を測定し、AGEs形成抑制作用を評価した。
AGEs形成抑制率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表12に示した。
AGEs形成抑制率(%)={(B−C)/(B−A)}×100
ただし、前記式中、Aは陰性対照の波長405nmにおける吸光度を、Bは陽性対照の波長405nmにおける吸光度を、Cは被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度を表す。
【0078】
【表12】
表12の結果から、ハイビスカスの抽出物が、極めて強い最終糖化産物形成抑制作用を有することが認められた。
【0079】
(実施例13)
<最終糖化産物(AGEs)分解促進作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、最終糖化産物(AGEs)分解促進作用を試験した。
【0080】
96穴のI型コラーゲンコートプレートにPBS(−)にて調製した0.2MのD(−)−リボース100μLを添加し、37℃で2週間静置し、AGEsを形成させた。陰性対照として、PBS(−)を添加したものを同様に静置した。2週間後、PBS(−)にて調製した被験試料(試料濃度:6.25μg/mL、25μg/mL、100μg/mL又は400μg/mL)を100μLずつ添加し、更に16日間静置した。この時、陽性対照としてD(−)−リボース処理後被験試料の代わりにPBS(−)を添加したものを同様に静置した。また、陰性対照は引き続きPBS(−)を処理した。16日後、抗AGEs抗体(トランスジェニック社製)を用いたELISA法によりAGEs量を測定し、AGEs分解促進作用を評価した。
AGEs分解促進率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表13に示した。
AGEs分解促進率(%)={(B−C)/(B−A)}×100
ただし、前記式中、Aは陰性対照の波長405nmにおける吸光度を、Bは陽性対照の波長405nmにおける吸光度を、Cは被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度を表す。
【0081】
【表13】
表13の結果から、ハイビスカスの抽出物が、最終糖化産物分解促進作用を有することが認められた。
【0082】
(実施例14)
<クローディン−1産生促進作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法によりクローディン−1産生促進作用を試験した。
【0083】
正常ヒト皮膚表皮角化細胞(NHEK)を80cm
2のフラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)にて37℃、5%CO
2下で培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10
5個/mLの細胞密度となるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、5%CO
2下、37℃で1日間培養した。
培養終了後、KGMで溶解した被験試料の溶液を各ウェルに100μLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したクローディン−1の量をポリクローナルクローディン−1抗体を用いたELISA法により測定した。
得られた測定結果から、下記式によりクローディン−1産生促進率(%)を算出した。結果を表14に示した。
クローディン−1産生促進率(%)=A/B×100
ただし、前記式中、Aは、被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度、Bは、被験試料無添加時の波長405nmにおける吸光度を表す。
【0084】
【表14】
表14の結果から、ハイビスカスの抽出物が、有意なクローディン−1産生促進作用を有することが認められた。
【0085】
(実施例15)
<オクルディン産生促進作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、オクルディン産生促進作用を試験した。
【0086】
正常ヒト皮膚表皮角化細胞(NHEK)を80cm
3のフラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)にて37℃、5%CO
2下で培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10
5個/mLの細胞密度となるようにKGMで希釈した後、96穴プレートに1穴あたり100μLずつ播種し、5%CO
2下、37℃で一晩培養した。
培養終了後、KGMで溶解した被験試料(試料濃度:3.13μg/mL、12.5μg/mL、又は50μg/mL)を各ウェルに100μLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定し、細胞表面に発現したオクルディンの量をポリクローナル抗ヒトオクルディン抗体を用いたELISA法により測定した。
オクルディン産生促進率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表15に示した。
オクルディン産生促進率(%)=A/B×100
ただし、前記式中、Aは被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度を表し、Bは被験試料無添加時の波長405nmにおける吸光度を表す。
【0087】
【表15】
表15の結果から、ハイビスカスの抽出物が、オクルディン産生促進作用を有することが認められた。
【0088】
(実施例16)
<ヒト皮膚三次元モデルにおける表皮タイトジャンクション構成タンパク質産生促進作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、ヒト皮膚三次元モデルにおける表皮タイトジャンクション構成タンパク質産生促進作用を試験した。
【0089】
試験は正常ヒト皮膚三次元モデル(EPI−200、KURABO社製)を用いて行った。
三次元皮膚モデルを購入後、6ウェルプレートにてアッセイ培地(EPI−NMM Maintenance Medium、KURABO社製)を用いて37℃、5%CO
2の条件下で1時間培養した。培養後、1%DMSOに溶解した被験試料を含む、又は含まない(コントロール)アッセイ培地100μLを皮膚モデルの表面に供し、皮膚モデル底面にアッセイ培地(維持培地)を供し、37℃、5%CO
2条件下で7日間培養した。培養期間中は常時試験試料での曝露を行った。培養4日目に維持培地と被験試料を含むアッセイ培地を交換した。培養4日目及び培養終了後に6mmのバイオプシパンチを用いて切り抜き、プラスチック製包埋皿に包埋剤を入れ、ドライアイスと液体窒素で凍結させた。その後、クリオスタットHM550(MICROM社製)にて、4μmの厚さに切り切片をスライドグラスに貼り付け、切片を乾燥させた。
【0090】
<クローディン−4免疫蛍光染色>
切片を貼り付けたスライドグラスを染色バットに入れ、4%パラホルムアルデヒドにて固定し、PBS(−)にて切片のまわりの包埋剤を良く洗い流した。1%BSAでブロッキングを行った後、液を捨て、1次抗体であるマウス由来抗ヒトクローディン−4モノクローナル抗体(ZYMED
(R) Laboratories)を各スライドグラス上に注ぎ、室温で1時間インキュベートした。抗体液を捨て、PBS(−)にて洗浄し、2次抗体であるAlexa−Fluor 488標識ヤギ由来抗マウスIgG抗体(invitrogen社製)を処理し、4℃の暗所で1時間インキュベートした。更にPBS(−)にて洗浄し、DAPI溶液により核染色をした。蛍光顕微鏡により、目的のクローディン−4を解析した。結果を
図1A〜
図1Fに示した。
図1A〜
図1Fの画像は角質層下部〜基底層の部分を示しており、
図1Aは、培養4日目の対照、
図1Bは、培養4日目の試料濃度100μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図1Cは、培養4日目の試料濃度500μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図1Dは、培養7日目の対照、
図1Eは、培養7日目の試料濃度100μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図1Fは、培養7日目の試料濃度500μg/mLのハイビスカスの抽出物の結果を示し、クローディン−4が緑色(顆粒層の細胞膜付近)に染色されている。
また、培養4日目と培養7日目の両方において、対照と比較して、ハイビスカスの抽出物では顆粒層細胞膜付近の線状の蛍光が強くなったことから、クローディン−4産生促進作用が皮膚三次元モデルにおいて確認できた。
【0091】
<ZO−1、ZO−2免疫蛍光染色>
切片を貼り付けたスライドグラスを染色バットに入れ、4%パラホルムアルデヒドにて固定し、PBS(−)にて切片のまわりの包埋剤を良く洗い流した。1%BSAでブロッキングを行った後、液を捨て、1次抗体であるマウス由来抗ヒトZO−1モノクローナル抗体(invitrogen社製)及びウサギ由来抗ヒトZO−2ポリクローナル抗体(invitrogen社製)を各スライドグラス上に注ぎ、室温で1時間インキュベートした。抗体液を捨て、PBS(−)にて洗浄し、2次抗体であるAlexa−Fluor 488標識ヤギ由来抗マウスIgG抗体(invitrogen社製)及びAlexa−Fluor 594標識ヤギ由来抗ウサギIgG抗体(invitrogen社製)を処理し、4℃の暗所で1時間インキュベートした。更に、PBS(−)にて洗浄し、DAPI溶液により核染色をした。蛍光顕微鏡により、目的のZO−1及びZO−2を解析した。結果を
図2A〜
図2F、及び
図3A〜
図3Fに示した。
図2A〜
図2Fの写真は角質層下部〜基底層の部分を示している。
図2Aは、培養4日目の対照、
図2Bは、培養4日目の試料濃度100μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図2Cは、培養4日目の試料濃度500μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図2Dは、培養7日目の対照、
図2Eは、培養7日目の試料濃度100μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図2Fは、培養7日目の試料濃度500μg/mLのハイビスカスの抽出物の結果を示し、
図2A〜
図2FよりZO−1が緑色(顆粒層〜基底層の細胞膜付近)に染色されている。
図3A〜
図3Fの写真は角質層下部〜基底層の部分を示している。
図3Aは、培養4日目の対照、
図3Bは、培養4日目の試料濃度100μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図3Cは、培養4日目の試料濃度500μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図3Dは、培養7日目の対照、
図3Eは、培養7日目の試料濃度100μg/mLのハイビスカスの抽出物、
図3Fは、培養7日目の試料濃度500μg/mLのハイビスカスの抽出物の結果を示し、
図3A〜
図3FよりZO−2が赤色(顆粒層〜基底層の細胞膜付近)に染色されている。
培養4日目において、対照と比較して、ハイビスカスの抽出物は100μg/mLの濃度において細胞膜付近の線状の蛍光が強くなったことから、ZO−1及びZO−2の産生促進作用が三次元皮膚モデルにおいて確認できた。
【0092】
(実施例17)
<皮膚バリア機能低下抑制作用試験(電気抵抗値TER測定及びFITC−Dexによる透過性評価>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、皮膚バリア機能低下抑制作用を試験した。
【0093】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.2×10
5cells/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、12wellトランスウェル(Corning社製、直径12mm、0.4μmポア)の上層に1well当たり0.5mLずつ播種し、更に下層に0.5mLずつKGMを加え3日間培養した。培養終了後、KGMで溶解したCaCl
2(最終濃度1.8mM)を各wellの上下層に0.5mLずつ添加し、3日間培養してタイトジャンクション形成を誘導した。培養終了後、高CaCl
2培地を除去し、KGMのみ、又はKGMで溶解した被験試料を各wellの上下層に0.5mLずつ添加して低CaCl
2状態で培養を開始した。また同時に、対照として高CaCl
2培地でバリア機能を維持したwellも設定した。培養開始3日後にMillicell−ERS抵抗値測定システム(ミリポア社製)を用いて、電気抵抗値(TER)を測定し、コントロールと比較して被験試料のバリア低下抑制率(%)を算出した。
また、TER測定後、PBS(−)で上下層を洗浄し、上層にP buffer(10mM HEPES、pH7.4、1mM sodium pyruvate、10mM glucose、3mM CaCl
2、145mM NaCl)で1mg/mLとなるように溶解した4kDa FITC−Dextran(FITC−Dex、Sigma社製)を0.5mL、下層にP bufferを0.5mL添加して、37℃で90分間培養した。培養終了後、各下層から100μLずつ採取して、励起波長485nm、蛍光波長545nmにおける蛍光強度を測定し、検量線を基に上層から下層に透過したFITC−Dex量を求め、コントロールと比較して被験試料の透過抑制率(%)を算出し、透過バリア機能を評価した。
バリア低下抑制率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表16に示した。
バリア低下抑制率(%)={1−(C−A)/(C−B)}×100
ただし、前記式中、Aは、被験試料を添加した細胞での電気抵抗値(TER)、Bは、被験試料を添加しない細胞での電気抵抗値(TER)、Cは高CaCl
2培地で処理した細胞での電気抵抗値(TER)、をそれぞれ表す。
【0094】
透過抑制率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表17に示した。
透過抑制率(%)={1−(C−A)/(C−B)}×100
ただし、前記式中、Aは、被験試料を添加した細胞での透過したFITC−Dex量、Bは、被験試料を添加しない細胞での透過したFITC−Dex量、Cは、高CaCl
2培地で処理した細胞での透過したFITC−Dex量、をそれぞれ表す。
【0095】
【表16】
【0096】
【表17】
【0097】
表16及び表17の結果から、ハイビスカスの抽出物が、電気抵抗値の低下抑制作用及びFITC−Dex透過抑制作用を有することが認められた。
【0098】
(実施例18)
<テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用を試験した。
【0099】
まず、蓋付V底試験管にて、プロピレングリコールで調製した4.2mg/mLのテストステロン20μL、1mg/mL NADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)含有5mmol/mL Tris−HCl緩衝液(pH7.13)825μLを混合した。これに、エタノール、50%エタノール又は精製水で調製した被験試料80μL及びS−9(オリエンタル酵母工業株式会社)75μLを加え再び混合し、37℃にて30分間反応させた後、塩化メチレン1mLを加え反応を停止した。これを遠心(1,600×g、10分間)し、塩化メチレン層をガスクロマトグラフィーにより分析した。前記ガスクロマトグラフィーの条件は以下の通りである。また、同様の方法で空試験を行った。
なお、前記S−9とは、SDラットの雄に酵素誘導剤(フェノバルビタール、5,6−ベンゾフラボン)を腹腔内投与したのち肝臓をすりつぶして、9,000×gで遠心した上清である。
【0100】
<ガスクロマトグラフィーの条件>
使用機器 :Shimadzu GC−7A
カラム :DB−1701(直径0.53mm×30m、膜厚;1.0μm)
カラム/注入温度:240℃/300℃
検出器 :FID
キャリアガス :窒素ガス
【0101】
あらかじめ、3α−アンドロスタンジオール(SIGMA社)、ジヒドロテストステロン(DHT、東京化成工業株式会社)及びテストステロン(東京化成工業株式会社)の標準品の塩化メチレン溶液をガスクロマトグラフィーにより分析し、これら3化合物の精秤量とピーク面積よりピーク面積あたりの化合物量を算出した。
そして、S−9による反応後の3α−アンドロスタンジオール、ジヒドロテストステロン(DHT)及びテストステロンをガスクロマトグラフィーにより分析し、それぞれのピーク面積あたりの濃度を、下記の(2)式に従って算出した。次に、被験試料の変換率を下記の(3)式に従って算出した。そして、前記変換率に基づいて、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率を、下記の(4)式に従って算出した。結果を表18に示した。
【0102】
濃度(%)=(被験試料のピーク面積×標準品濃度)/標準品のピーク面積・・・(2)
変換率(%)=(A+B)/(A+B+C)・・・(3)
ただし、前記(3)式中、Aは、3α−アンドロスタンジオールの濃度、Bは、ジヒドロテストステロン(DHT)の濃度、Cは、テストステロンの濃度、を表す。
【0103】
テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率(%)=(1−E/D)×100・・・(4)
ただし、前記(4)式中、Dは、空試験での変換率、Eは、被験試料添加での変換率を表す。
【0104】
【表18】
表18の結果から、ハイビスカスの抽出物が、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用を有することが認められた。
【0105】
(実施例19)
<毛乳頭細胞増殖作用試験>
ハイビスカス花部抽出液(丸善製薬株式会社製)の凍結乾燥物を被験試料として用い、下記の試験方法により、毛乳頭細胞増殖作用を試験した。
【0106】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(東洋紡績株式会社製)を、1%FCS及び増殖添加剤を含有した毛乳頭細胞増殖培地(東洋紡績株式会社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10体積%FBS含有ダルベッコMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(1)、日水製薬株式会社製)を用いて1.0×10
4細胞/mLの濃度に希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェル当り200μL播種し、3日間培養した。培養後、培地を抜き、無血清DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(1)、日水製薬株式会社製)に溶解した被験試料を各ウェルに200μL添加し、更に4日間培養した。毛乳頭細胞増殖作用はMTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで無血清のDMEMに溶解した3−(4,5−ジメチル-チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT、株式会社同仁化学研究所製)を各ウェルに100μL添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。
【0107】
毛乳頭細胞増殖率の計算方法は、以下のとおりである。結果を表19に示した。
毛乳頭細胞増殖率(%)=A/B×100
ただし、前記式中、Aは、被験試料添加時のブルーホルマザン生成量、Bは、被験試料無添加時のブルーホルマザン生成量をそれぞれ表す。
【0108】
【表19】
表19の結果から、ハイビスカスの抽出物が、毛乳頭細胞増殖作用を有することが認められた。