【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリウレタン樹脂製造用触媒として、特定のアミン化合物と不飽和ポリオールを併せて使用すると、フォーム製品から揮発性アミン化合物がほとんど揮発せず、永久圧縮歪を改良した軟質ポリウレタンフォーム製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【0015】
[1]下記一般式(1)で示されるアミン化合物と、不飽和ポリオールとを含有するポリウレタン樹脂製造用触媒組成物[但し、下記一般式(1)で示されるアミン化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの異性体及びその混合物を含む。]。
【0016】
【化1】
【0017】
[上記一般式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。mは1又は2である。]
[2]一般式(1)で示されるアミン化合物のうち、R
1、R
2、R
3及びR
4が水素原子であることを特徴とする[1]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0018】
[3]一般式(1)で示されるアミン化合物のうち、mが1であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0019】
[4]前記不飽和ポリオールが、ポリジエン系ポリオールであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0020】
[5]前記不飽和ポリオールが、ポリブタジエンポリオールであることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0021】
[6]さらにポリエーテルポリオールを含有することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0022】
[7]前記ポリエーテルポリオールの水酸基価が、20〜40mgKOH/gであることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0023】
[8]さらに水を含有することを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0024】
[9]一般式(1)で示されるアミン化合物が、組成物全体に対して、5〜80重量%含まれることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0025】
[10]ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を、[1]乃至[9]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物の存在下で反応させることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0026】
[11]前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、その重合体であるポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体であり、そのイソシアネートインデックスが60〜130であり、前記発泡剤が水であることを特徴とする[10]に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)と不飽和ポリオール(B)とを含有することを特徴とする。
【0029】
本発明において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの異性体及びその混合物が包含される。
【0030】
上記一般式(1)において、置換基R
1、R
2、R
3及びR
4は上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシ基である。
【0031】
本発明において好ましいアミン化合物(A)としては、例えば、上記一般式(1)において、置換基R
1、R
2、R
3及びR
4が各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基又はヒドロキシメチル基を表す化合物(但し、R
1、R
2、R
3及びR
4の全てが同じ置換基を表すことはない)、及び上記一般式(1)において、置換基R
1、R
2、R
3及びR
4の全てが水素原子である化合物等が挙げられる。上記一般式(1)において、置換基R
1、R
2、R
3及びR
4の全てが水素原子である化合物は、ポリウレタン樹脂製造における触媒活性上も好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化2】
【0034】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010−37325公報参照)。
【0035】
また、上記一般式(1)で示されるアミン化合物は、例えば、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenil,10,1404(1980)、国際公開第95/18104号パンフレット等に記載の方法により製造可能である。さらに、Journal of Medicinal Chemistry(1993),36(15),2075−2083や、特開2010−120887公報に記載の方法等によって誘導されるヒドロキシアルキルピペラジン類のエチレンオキサイド付加物を分子内環化することによっても製造可能である。
【0036】
置換基を有する上記一般式(1)で示されるアミン化合物の製造方法については、対応する置換ピペラジンを使用することにより製造可能である。置換ピペラジンの製造方法は、上記したヒドロキシアルキルピペラジン類の合成に関する公知技術等によって製造可能である。
【0037】
上記の不飽和ポリオール(B)としては、特に限定するものではないが、cis−1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、trans−1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2−メチレン−1,3−プロパンジオール、cis−1,5−ジヒドロキシ−2−ペンテン、trans−1,5−ジヒドロキシ−2−ペンテン、ポリジエン系ポリオール等が挙げられる。凍結防止の観点から、ポリジエン系ポリオールが好ましい。ポリジエン系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、(2Z,4Z)−ヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジオール、(2E,4E)−ヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジオール、(2Z,4E)−ヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジオール等が挙げられる。ポリジエン系ポリオールの数平均分子量は、低すぎるとポリウレタンフォーム物性を悪化させる場合があり、高すぎると粘度が上昇し操作性を悪化させる場合がある。好ましくは500〜20000、より好ましくは700〜4000程度である。
【0038】
本発明において、アミン化合物(A)に対する不飽和ポリオール(B)の使用量、すなわち、[不飽和ポリオール(B)]/[アミン化合物(A)](重量比)は、特に限定するものではないが、通常95/5〜5/80の範囲であり、好ましくは90/10〜30/70の範囲であり、さらに好ましくは75/25〜60/40の範囲である。ここで、[不飽和ポリオール(B)]/[アミン化合物(A)](重量比)が20/80未満の場合には、得られるポリウレタンフォームの耐久物性改善効果が低下したり、触媒組成物中のアミン化合物(A)が長期保管中に析出したりする恐れがある。
【0039】
本発明の触媒組成物として、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、アミン化合物(A)と不飽和ポリオール(B)に、他の触媒(成分)を含有させることができる。このような触媒としては、例えば、従来公知の有機金属触媒や第3級アミン触媒等を挙げることができる。
【0040】
このような有機金属触媒としては、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0041】
また、第3級アミン触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ビス(2−アミノエチル)エーテル、N−(3−アミノプロピル)−N,N’,N’−トリメチル−2,2’−オキシビス(エチルアミン)等の第3級アミン化合物類が挙げられる。これらのうち、触媒活性の点で、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ビス(2−アミノエチル)エーテルやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。
【0042】
次に、本発明の上記した触媒組成物を用いたポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。
【0043】
本発明において、ポリウレタン樹脂とは、ポリオール類とポリイソシアネート類とを、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及び必要に応じて追加の触媒、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の原料の存在下に反応(硬化)及び発泡させることにより得られるものをいう。なお、本発明において、触媒組成物は、ポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応(樹脂化反応)、ポリイソシアネート類と水とのウレア化反応(泡化反応)等の各反応を促進させるために使用される。
【0044】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法において、本発明の触媒組成物の使用量は、特に限定するものではないが、使用されるポリオールを100重量部としたとき、通常0.01〜30重量部であり、好ましくは0.05〜15重量部である。本発明の触媒組成物を多く用いるとポリウレタンフォームの生産性は向上するが、反応性が早くなり過ぎて金型の蓋締めが間に合わなくなり好ましくない。
【0045】
本発明のポリウレタンフォームの製造に使用されるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。さらには、含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等を併用することができる。
【0046】
ポリエーテルポリオールは、グリセリンやトリメチロールプロパンにエチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表されるアルキレンオキシドの付加反応により得られるものであって、例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42−53に記載の方法により製造することができる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸(主にアジピン酸)とグリコールやトリオールとの脱水縮合反応から得られるもの、さらに岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版) 日刊工業新聞社p.117に記載されているようなナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理して誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリマーポリオールとしては、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体、例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等をラジカル重合触媒の存在下に反応させた、重合体ポリオールが挙げられる。
【0049】
難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールの組み合わせが特に好ましく、また、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は3000〜15000のものがさらに好ましい。
【0051】
本発明に使用されるポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族及びこれらの異性体、多核体及びその混合体が挙げられる。TDIとその誘導体としては、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、MDIとその重合体のポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。これらのうち、TDI又はその誘導体とMDI又はその誘導体を混合して用いるか、MDI又はその誘導体を単独で用いると生産性が向上するため特に好ましい。
【0052】
これらポリイソシアネートとポリオールの使用比率としては、特に限定されるものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、60〜130の範囲である。
【0053】
本発明の製造方法において、必要であれば発泡剤を使用することができる。発泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)等のフロン系化合物、HFE−254pc等のハイドロフルオロエーテル類、低沸点炭化水素、水、液化炭酸ガス、ジクロロメタン、ギ酸、アセトン等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。低沸点炭化水素としては、通常、沸点が−30〜70℃の炭化水素が使用され、その具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
発泡剤の使用量は、所望の密度やフォーム物性に応じて決定されるため、特に限定するものではないが、一般的には、得られるフォーム密度が、通常5〜1000kg/m
3、好ましくは10〜500kg/m
3の範囲となるように選択される。
【0055】
本発明の製造方法において必要であれば、界面活性剤を用いることができる。本発明において使用される界面活性剤としては、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤であり、その使用量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0056】
本発明の製造方法において、必要であれば架橋剤又は鎖延長剤を添加することができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、低分子量の多価アルコール(例えば、1,4−ブタンジオール、グリセリン等)、低分子量のアミンポリオール(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、又はポリアミン(例えば、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等)を挙げることができる。これらのうち、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0057】
本発明の製造方法において、上記したとおり、本発明の触媒組成物を単独で、又は上記した他の触媒(成分)と混合して使用することができるが、これらを混合調整するにあたり、必要ならば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類又は水を溶媒として使用することができる。本発明の製造方法においては、このように調整された触媒組成物をポリオール類に添加して使用してもよいし、個々の成分を別々にポリオール類に添加して使用してもよく、特に制限はない。
【0058】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、着色剤、難燃剤、老化防止剤、連通化剤、その他公知の添加剤等も使用することができる。これらの添加剤の種類、添加量は公知の形式と手順を逸脱しないならば、通常使用される範囲で十分使用することができる。
【0059】
本発明の製造方法は、通常、上記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は、一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すればよい。ポリウレタン発泡機としては、例えば、高圧、低圧、又はスプレー式の機器が使用される。
【0060】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法にて製造される製品は、種々の用途に使用できる。具体的な用途としては、クラッシュパッド、マットレス、シート、自動車関連のシート、ヘッドレスト等が挙げられる。
【0061】
なお、本発明において、軟質ポリウレタンフォームとは、一般的にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.161〜233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.150〜221の記載参照]。軟質ウレタンフォームの物性としては、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m
3、圧縮強度(ILD25%)が200〜8000kPa、伸び率が80〜500%の範囲である。