特許第6969073号(P6969073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

特許6969073ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法
<>
  • 特許6969073-ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969073
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/20 20060101AFI20211111BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 18/69 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   C08G18/20
   C08G18/76 057
   C08G18/69
   C08G18/48
   C08G18/00 H
   C08G101:00
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-62655(P2016-62655)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-171863(P2017-171863A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬底 祐介
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−528726(JP,A)
【文献】 特表2001−509834(JP,A)
【文献】 特開2010−037488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08G 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミン化合物と、ポリジエン系ポリオールとを含有し、[ポリジエン系ポリオール]/[アミン化合物](重量比)が90/10〜30/70の範囲であることを特徴とする軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物[但し、上記一般式(1)で示されるアミン化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの異性体及びその混合物を含む。]。
【化1】
[上記一般式(1)中、R、R、R及びR、水素原子を表す。mは1又は2である。]
【請求項2】
一般式(1)で示されるアミン化合物のうち、mが1であることを特徴とする請求項1に記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項3】
前記ポリジエン系ポリオールが、ポリブタジエンポリオールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項4】
さらにポリエーテルポリオールを含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項5】
請求項に記載のポリエーテルポリオールの水酸基価が、20〜40mgKOH/gであることを特徴とする請求項に記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項6】
さらに水を含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項7】
一般式(1)で示されるアミン化合物が、組成物全体に対して、5〜80重量%含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項8】
ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を、請求項1乃至のいずれかに記載の軟質高弾性ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物の存在下で反応させることを特徴とする軟質高弾性ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、その重合体であるポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体であり、そのイソシアネートインデックスが60〜130であり、前記発泡剤が水であることを特徴とする請求項に記載の軟質高弾性ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂及び軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリウレタン樹脂製造の際、揮発性のアミン化合物をほとんど排出せず、十分な耐圧縮歪性を有する軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、通常、ポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。ポリウレタン樹脂の製造には、数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物が触媒として使用される。これらは単独での使用又は併用することにより工業的に多用されている。
【0003】
発泡剤として水、低沸点有機化合物、又はそれらの両方を用いるポリウレタンフォームの製造においては、生産性、成形性に優れることから、これら触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。金属系化合物としては、例えば、有機スズ化合物等の有機金属化合物がよく用いられるが、生産性、成形性が悪化するとともに、金属系触媒の中には鉛、錫、水銀等の重金属を含むものがあり、製品中に残った重金属による毒性問題や環境問題が懸念されることから、ほとんどの場合、第3級アミン触媒と併用されることが多く、単独での使用は少ない。
【0004】
これらのうち、第3級アミン化合物は、ポリウレタン製品から揮発性のアミン化合物として徐々に排出され、例えば、自動車内装材等では揮発性アミン化合物による臭気問題や他の材料(例えば、表皮塩ビ)の変色問題を引き起こす。また、第3級アミン触媒は、一般に臭気が強く、ポリウレタン樹脂製造時の作業環境が著しく悪化する。これらの問題を解決する方法として、上記した揮発性の第3級アミン触媒に替えて、分子内にポリイソシアネートと反応しうるヒドロキシ基や1級及び2級のアミノ基を有するアミン触媒(以下、「反応型触媒」と称する場合がある。)や、第3級アミノ基を分子内に有する2官能の架橋剤を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献5参照)。
【0005】
上記の反応型触媒を使用する方法は、ポリイソシアネートと反応した形でポリウレタン樹脂骨格中に固定化されるため、上記問題を回避できるとされている。この方法によれば、確かに最終樹脂製品の臭気低減には有効であるが、これらの反応型触媒は樹脂化反応(ポリオールとイソシアネートとの反応)の活性に劣るため、硬化性が低下する問題がある。
【0006】
本件出願人は、アミンの揮発性と硬化性不足の課題を同時に解決できる触媒組成物について、既に特許出願している(例えば、特許文献6〜特許文献7参照)。しかしながら、これらの触媒組成物は、他の反応型触媒と同様、ポリイソシアネートと反応するため、樹脂の高分子量化を阻害し、最終ポリウレタン樹脂製品の耐久物性(耐候性)が十分ではないという問題が残っていた。
【0007】
軟質ポリウレタンフォームの用途として大きな割合を占める自動車用クッションに使用される軟質高弾性フォームに要求される耐久物性として、永久圧縮歪が挙げられる。この永久圧縮歪が劣る場合、経時的にクッションの厚みが減じるため、車輛運転者の目の位置が変化したり、座り心地や乗り心地が悪くなったりするなどの問題が生じる。この永久圧縮歪の加速試験方法としては、耐熱老化性試験(以下、「Dry−CS」と称する場合がある。)や耐湿熱老化性試験(以下、「Wet−CS」と称する場合がある。)の他、近年、安全に対する意識の向上から、永久圧縮歪の加速試験方法の試験条件が厳しくなり、高温で長時間の加湿下で処理されたフォームの圧縮歪試験(以下、「湿熱後のDry−CS」又は「HACS」と称する場合がある。)が欧米を中心に主流になりつつある。
【0008】
従来の永久圧縮歪の改良方法としては、ポリオキシアルキレンポリオールの官能基数を高めたり、低分子量で多官能の架橋剤を用いて軟質ポリウレタンフォームの架橋度を高めたり、高い耐水性を有するポリジエン系ポリオールを添加したりする方法が知られている(例えば、特許文献8〜特許文献11参照)。
【0009】
ポリオキシアルキレンポリオールの官能基数を高める方法は、湿熱後のDry−CSの改善にも有効ではあるが、ポリオールの改良は生産コストの上昇に繋がるため、工業的方法としては好ましくない。また、低分子量で多官能の架橋剤を用いて軟質ポリウレタンフォームの架橋度を高める方法は、湿熱後のDry−CSの改善には有効ではないことが知られている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、ポリジエン系ポリオールを添加する方法は、ポリジエンポリオールのポリオキシアルキレンポリオールに対する相溶性の低さから、良好な性状のフォームが得られないため、エポキシドによるポリジエンポリオールの修飾を必要としており、非効率であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭46−4846号公報
【特許文献2】特公昭61−31727号公報
【特許文献3】特許第2971979号公報
【特許文献4】特開昭63−265909号公報
【特許文献5】特開2008−45113公報
【特許文献6】特開2010−37488公報
【特許文献7】特開2010−106192公報
【特許文献8】特開平2−115211号公報
【特許文献9】特公平6−86514号公報
【特許文献10】特開2007−332375公報
【特許文献11】特開平4−136017公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.118
【非特許文献2】J.A.Rodriguez,“POLYOLS COMPATIBLE WITH NON−FUGITIVE AMINE CATALYSTS”,UTECH(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製品中から排出されるアミン化合物がほとんどなく、十分な永久圧縮歪性を有する軟質ポリウレタンフォームの製造方法、及びそれに使用される触媒組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリウレタン樹脂製造用触媒として、特定のアミン化合物と不飽和ポリオールを併せて使用すると、フォーム製品から揮発性アミン化合物がほとんど揮発せず、永久圧縮歪を改良した軟質ポリウレタンフォーム製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【0015】
[1]下記一般式(1)で示されるアミン化合物と、不飽和ポリオールとを含有するポリウレタン樹脂製造用触媒組成物[但し、下記一般式(1)で示されるアミン化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの異性体及びその混合物を含む。]。
【0016】
【化1】
【0017】
[上記一般式(1)中、R、R、R及びRは、各々独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。mは1又は2である。]
[2]一般式(1)で示されるアミン化合物のうち、R、R、R及びRが水素原子であることを特徴とする[1]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0018】
[3]一般式(1)で示されるアミン化合物のうち、mが1であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0019】
[4]前記不飽和ポリオールが、ポリジエン系ポリオールであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0020】
[5]前記不飽和ポリオールが、ポリブタジエンポリオールであることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0021】
[6]さらにポリエーテルポリオールを含有することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0022】
[7]前記ポリエーテルポリオールの水酸基価が、20〜40mgKOH/gであることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0023】
[8]さらに水を含有することを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0024】
[9]一般式(1)で示されるアミン化合物が、組成物全体に対して、5〜80重量%含まれることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0025】
[10]ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を、[1]乃至[9]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物の存在下で反応させることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0026】
[11]前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、その重合体であるポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体であり、そのイソシアネートインデックスが60〜130であり、前記発泡剤が水であることを特徴とする[10]に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)と不飽和ポリオール(B)とを含有することを特徴とする。
【0029】
本発明において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの異性体及びその混合物が包含される。
【0030】
上記一般式(1)において、置換基R、R、R及びRは上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシ基である。
【0031】
本発明において好ましいアミン化合物(A)としては、例えば、上記一般式(1)において、置換基R、R、R及びRが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基又はヒドロキシメチル基を表す化合物(但し、R、R、R及びRの全てが同じ置換基を表すことはない)、及び上記一般式(1)において、置換基R、R、R及びRの全てが水素原子である化合物等が挙げられる。上記一般式(1)において、置換基R、R、R及びRの全てが水素原子である化合物は、ポリウレタン樹脂製造における触媒活性上も好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化2】
【0034】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010−37325公報参照)。
【0035】
また、上記一般式(1)で示されるアミン化合物は、例えば、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenil,10,1404(1980)、国際公開第95/18104号パンフレット等に記載の方法により製造可能である。さらに、Journal of Medicinal Chemistry(1993),36(15),2075−2083や、特開2010−120887公報に記載の方法等によって誘導されるヒドロキシアルキルピペラジン類のエチレンオキサイド付加物を分子内環化することによっても製造可能である。
【0036】
置換基を有する上記一般式(1)で示されるアミン化合物の製造方法については、対応する置換ピペラジンを使用することにより製造可能である。置換ピペラジンの製造方法は、上記したヒドロキシアルキルピペラジン類の合成に関する公知技術等によって製造可能である。
【0037】
上記の不飽和ポリオール(B)としては、特に限定するものではないが、cis−1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、trans−1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2−メチレン−1,3−プロパンジオール、cis−1,5−ジヒドロキシ−2−ペンテン、trans−1,5−ジヒドロキシ−2−ペンテン、ポリジエン系ポリオール等が挙げられる。凍結防止の観点から、ポリジエン系ポリオールが好ましい。ポリジエン系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、(2Z,4Z)−ヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジオール、(2E,4E)−ヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジオール、(2Z,4E)−ヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジオール等が挙げられる。ポリジエン系ポリオールの数平均分子量は、低すぎるとポリウレタンフォーム物性を悪化させる場合があり、高すぎると粘度が上昇し操作性を悪化させる場合がある。好ましくは500〜20000、より好ましくは700〜4000程度である。
【0038】
本発明において、アミン化合物(A)に対する不飽和ポリオール(B)の使用量、すなわち、[不飽和ポリオール(B)]/[アミン化合物(A)](重量比)は、特に限定するものではないが、通常95/5〜5/80の範囲であり、好ましくは90/10〜30/70の範囲であり、さらに好ましくは75/25〜60/40の範囲である。ここで、[不飽和ポリオール(B)]/[アミン化合物(A)](重量比)が20/80未満の場合には、得られるポリウレタンフォームの耐久物性改善効果が低下したり、触媒組成物中のアミン化合物(A)が長期保管中に析出したりする恐れがある。
【0039】
本発明の触媒組成物として、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、アミン化合物(A)と不飽和ポリオール(B)に、他の触媒(成分)を含有させることができる。このような触媒としては、例えば、従来公知の有機金属触媒や第3級アミン触媒等を挙げることができる。
【0040】
このような有機金属触媒としては、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0041】
また、第3級アミン触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ビス(2−アミノエチル)エーテル、N−(3−アミノプロピル)−N,N’,N’−トリメチル−2,2’−オキシビス(エチルアミン)等の第3級アミン化合物類が挙げられる。これらのうち、触媒活性の点で、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ビス(2−アミノエチル)エーテルやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。
【0042】
次に、本発明の上記した触媒組成物を用いたポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。
【0043】
本発明において、ポリウレタン樹脂とは、ポリオール類とポリイソシアネート類とを、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及び必要に応じて追加の触媒、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の原料の存在下に反応(硬化)及び発泡させることにより得られるものをいう。なお、本発明において、触媒組成物は、ポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応(樹脂化反応)、ポリイソシアネート類と水とのウレア化反応(泡化反応)等の各反応を促進させるために使用される。
【0044】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法において、本発明の触媒組成物の使用量は、特に限定するものではないが、使用されるポリオールを100重量部としたとき、通常0.01〜30重量部であり、好ましくは0.05〜15重量部である。本発明の触媒組成物を多く用いるとポリウレタンフォームの生産性は向上するが、反応性が早くなり過ぎて金型の蓋締めが間に合わなくなり好ましくない。
【0045】
本発明のポリウレタンフォームの製造に使用されるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。さらには、含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等を併用することができる。
【0046】
ポリエーテルポリオールは、グリセリンやトリメチロールプロパンにエチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表されるアルキレンオキシドの付加反応により得られるものであって、例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42−53に記載の方法により製造することができる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸(主にアジピン酸)とグリコールやトリオールとの脱水縮合反応から得られるもの、さらに岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版) 日刊工業新聞社p.117に記載されているようなナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理して誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリマーポリオールとしては、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体、例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等をラジカル重合触媒の存在下に反応させた、重合体ポリオールが挙げられる。
【0049】
難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールの組み合わせが特に好ましく、また、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は3000〜15000のものがさらに好ましい。
【0051】
本発明に使用されるポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族及びこれらの異性体、多核体及びその混合体が挙げられる。TDIとその誘導体としては、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、MDIとその重合体のポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。これらのうち、TDI又はその誘導体とMDI又はその誘導体を混合して用いるか、MDI又はその誘導体を単独で用いると生産性が向上するため特に好ましい。
【0052】
これらポリイソシアネートとポリオールの使用比率としては、特に限定されるものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、60〜130の範囲である。
【0053】
本発明の製造方法において、必要であれば発泡剤を使用することができる。発泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)等のフロン系化合物、HFE−254pc等のハイドロフルオロエーテル類、低沸点炭化水素、水、液化炭酸ガス、ジクロロメタン、ギ酸、アセトン等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。低沸点炭化水素としては、通常、沸点が−30〜70℃の炭化水素が使用され、その具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
発泡剤の使用量は、所望の密度やフォーム物性に応じて決定されるため、特に限定するものではないが、一般的には、得られるフォーム密度が、通常5〜1000kg/m、好ましくは10〜500kg/mの範囲となるように選択される。
【0055】
本発明の製造方法において必要であれば、界面活性剤を用いることができる。本発明において使用される界面活性剤としては、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤であり、その使用量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0056】
本発明の製造方法において、必要であれば架橋剤又は鎖延長剤を添加することができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、低分子量の多価アルコール(例えば、1,4−ブタンジオール、グリセリン等)、低分子量のアミンポリオール(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、又はポリアミン(例えば、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等)を挙げることができる。これらのうち、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0057】
本発明の製造方法において、上記したとおり、本発明の触媒組成物を単独で、又は上記した他の触媒(成分)と混合して使用することができるが、これらを混合調整するにあたり、必要ならば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類又は水を溶媒として使用することができる。本発明の製造方法においては、このように調整された触媒組成物をポリオール類に添加して使用してもよいし、個々の成分を別々にポリオール類に添加して使用してもよく、特に制限はない。
【0058】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、着色剤、難燃剤、老化防止剤、連通化剤、その他公知の添加剤等も使用することができる。これらの添加剤の種類、添加量は公知の形式と手順を逸脱しないならば、通常使用される範囲で十分使用することができる。
【0059】
本発明の製造方法は、通常、上記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は、一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すればよい。ポリウレタン発泡機としては、例えば、高圧、低圧、又はスプレー式の機器が使用される。
【0060】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法にて製造される製品は、種々の用途に使用できる。具体的な用途としては、クラッシュパッド、マットレス、シート、自動車関連のシート、ヘッドレスト等が挙げられる。
【0061】
なお、本発明において、軟質ポリウレタンフォームとは、一般的にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.161〜233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.150〜221の記載参照]。軟質ウレタンフォームの物性としては、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度(ILD25%)が200〜8000kPa、伸び率が80〜500%の範囲である。
【発明の効果】
【0062】
ポリジエン系ポリオール等の不飽和ポリオールが耐水性向上効果を有することは知られていたが、ポリオキシアルキレンポリオールとの相溶性の低さから、良好な性状の軟質ポリウレタンフォームを製造することができなかった。しかし、不飽和ポリオールを含有する本発明の触媒組成物は、従来公知の触媒組成物により製造された軟質ポリウレタンフォームに比べ顕著に改善された永久圧縮歪を有する良好な性状の軟質ポリウレタンフォームを与える。さらに、本発明の触媒組成物は、耐水性との相関がないと考えられるDry−CSの改善効果をも有する。本発明の触媒組成物を用いれば、フォームから排出されるアミン化合物がほとんどなく、十分な耐圧縮歪性を有する軟質ポリウレタンフォームが得られる。よって、本発明の製造方法は、塩化ビニル樹脂の汚染抑制及び圧縮歪の改善が要求される軟質ポリウレタンフォーム製造の際に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】実施例、比較例及び参考例において、ライズタイムを測定する方法を示す図である。
【実施例】
【0064】
本発明を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、表中の(pbw)はポリオールを100重量部とした時の他の剤の重量部を示す。
【0065】
製造例1
2Lのセパラブルフラスコに、ピペラジン43.1g(0.5mol)、トリエチルアミン151.8g(1.5mol)を仕込み、トルエンで希釈した。窒素置換後、これにトルエンで希釈した2,3−ジブロモプロピオン酸エチル(東京化成工業社製)を攪拌しながら添加し、100℃で24時間熟成反応を行った。析出したトリエチルアミンの臭化水素塩をろ過により除去し、得られた反応液を濃縮し、エステル体を合成した。このエステル体をテトラヒドロフランに溶解させ、氷浴下、水素化アルミニウムリチウムのテトラヒドロフラン溶液に攪拌しながら添加した。室温で2時間反応後、水、15%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、不溶物をろ過により除去した。反応液を濃縮後、酢酸エチルで抽出洗浄した。酢酸エチルを除去し、目的化合物である1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−メタノール(例示化合物1)を48g得た(収率68%)。
【0066】
実施例1〜3、比較例1
表1に示す原料配合比にてプレミックスAを調合した。
【0067】
【表1】
【0068】
本発明の触媒組成物を用い、軟質ポリウレタンフォームを製造した例を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
プレミックスA 85.0gを300mLのポリエチレンカップに取り、さらに触媒組成物を、各々反応性が下記のゲルタイムで59±2秒となる量を添加し、20℃に温度調節した。別容器で20℃に温度調節したポリイソシアネート液(東ソー社製、コロネート1334)をイソシアネートインデックス〔[イソシアネート基]/[OH基](モル比)×100)〕が100となる量だけプレミックスAのカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで5秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を60℃に温度調節した2Lのポリエチレンカップに移し、発泡中の反応性を以下に示す方法で測定した。
【0071】
なお、実施例、比較例における測定方法、評価方法は以下のとおりである。
【0072】
[反応性の測定]
・クリームタイム:
発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定した。
【0073】
・ゲルタイム:
反応が進行し、液状物質から樹脂状物質に変わる時間を測定した。
【0074】
・ライズタイム:
フォームの上昇が停止する時間を変位センサ(キーエンス社製、型式:LF−2510)を用いて測定した(図1参照)。
【0075】
次に、原料スケールをアップさせ、同様な操作にて60℃に温度調節したモールド(内寸法、25×25×8cmのアルミ製)内にフォーム全密度が51±2kg/mとなるように混合液を入れ、蓋をして発泡成形を行った。混合液を入れた時点から7分後にフォームを脱型した。成型フォームの物性を以下に示す方法で測定した。
【0076】
[フォームの物性]
・全体密度:
成型フォームの重量を測定し、体積で除した。
【0077】
・ILD:
ISO2439Bに則って実施した。成型フォームをクラッシング(75%で3回)した後、25%、又は65%に圧縮するのに要する荷重を測定した。
【0078】
・反発弾性:
直径16mm、質量16gの鋼球を470mmの高さから成型フォームに落下させ、跳ね返った最高の高さを記録する。反発弾性を以下の式により計算した。
【0079】
反発弾性(%)=D/C×100
C:鋼球を落下させる高さ(mm)
D:跳ね返った最高の高さ(mm)
[フォームの臭気]
成型フォームの中心部から5×5×3cm寸法のフォームをカットし、900mLのマヨネーズ瓶の中に入れ蓋をした。この瓶を80℃で1時間加熱後室温に戻し、5人のモニターがそのフォームの臭いをかぎ、臭いの強さを測定した。
【0080】
○:ほとんど臭気無し、△:わずかに臭気有り、×:臭気有り
[フォームの耐久物性]
フォームの耐久物性(耐候性)として、HACSを測定した。これは、湿熱劣化させた軟質ポリウレタンフォームを一定時間圧縮した際にどれだけ永久圧縮歪みが残るかを測定するものである。よって、この値が小さいほど、耐久物性が良いといえる。
【0081】
・Dry−CS:
成型フォームの中心部から20×20×5cmをカットしたコア部分から、縦5cm、横5cm、厚さ2.5cmの寸法でフォームをカットし、これを70℃、相対湿度5%の条件下、22時間、厚さ方向に50%の圧縮試験を行い、寸法変化率を測定した。Dry−CSを以下の式により計算した。
【0082】
Dry−CS(%)=(E−F)/E×100
E:初期の厚さ(cm)
F:圧縮試験後の厚さ(cm)
・Wet−CS:
上記コア部分から、縦5cm、横5cm、厚さ2.5cmの寸法でフォームをカットし、これを50℃、相対湿度95%の条件下、22時間、厚さ方向に50%の圧縮試験を行い、寸法変化率を測定した。Wet−CSを以下の式により計算した。
【0083】
Wet−CS(%)=(G−H)/G×100
G:初期の厚さ(cm)
H:圧縮試験後の厚さ(cm)
・HACS:
上記コア部分から、縦5cm、横5cm、厚さ2.5cmの寸法でフォームをカットし、これを90℃、相対湿度100%で100時間処理した。その後、70℃、相対湿度5%の条件下、22時間、厚さ方向に50%の圧縮試験を行い、寸法変化率を測定した。HACSを以下の式により計算した。
【0084】
HACS(%)=(I−J)/I×100
I:初期の厚さ(cm)
J:圧縮試験後の厚さ(cm)
表2の実施例1〜3と比較例1との比較から明らかなように、例示化合物1と不飽和ポリオールとを含有する本発明の触媒組成物を使用した実施例1〜3では、耐久物性が良好な軟質ポリウレタンフォームを製造することができた。しかも、これらのフォームは硬度や反発弾性等の物性を悪化させることがなかった。さらに、耐水性との相関を有すると考えられるWet−CS及びHACSのみならず、耐水性との相関がないと考えられるDry−CSをも改善した。不飽和ポリオールの含有量の増加に応じて耐久物性の向上が見られた。これに対し、不飽和ポリオールを用いない比較例1は、実施例1〜3に比べて耐久物性が劣った。また、例示化合物1を用いた実施例1〜3及び比較例1はほとんど臭気がなかったが、別種の反応型アミン触媒を用いた参考例1はわずかに臭気があった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の触媒組成物を用いて製造される軟質ポリウレタンフォームは、自動車内装材として用いられるカーシートの製造等に有用である。
図1