特許第6969322号(P6969322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6969322ペレットの製造方法、ニッケル酸化鉱の製錬方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969322
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ペレットの製造方法、ニッケル酸化鉱の製錬方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/02 20060101AFI20211111BHJP
   C22B 5/10 20060101ALI20211111BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20211111BHJP
   C22C 33/04 20060101ALI20211111BHJP
   C22C 1/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C22B23/02
   C22B5/10
   C22B1/16 101
   C22C33/04 H
   C22C1/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-228305(P2017-228305)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-99833(P2019-99833A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年5月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 義裕
(72)【発明者】
【氏名】浦 幸雄
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−010024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 23/00−23/06
C22B 1/00− 1/26
C22B 5/10
C22C 33/04
C22C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を14質量%以上の割合で含有する酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して混合物とする混合処理工程と、
得られた混合物を成形してペレットとする混合物成形工程と、
を有し、
前記混合処理工程では、水及びバインダーを添加せずに前記混合物を調製し、
前記混合物成形工程では、プレス機を用い、前記混合物を、プレス機の金型に10.0mm以上11.3mm以下の成形品の高さとなるように充填し、60kg/cm以上500kg/cm以下の成形圧力でプレス成形することによってペレットとする
ペレットの製造方法。
【請求項2】
ニッケル酸化鉱と炭素質還元剤とを含むペレットを製造するペレット製造工程と、
得られたペレットを乾燥する乾燥工程と、
乾燥されたペレットを還元炉に装入し、所定の還元温度で加熱する還元工程と、
前記還元工程で得られたメタルとスラグとの混在物からメタルを回収する回収工程と、
を有し、
前記ニッケル酸化鉱は、水分を14質量%以上の割合で含有し、
前記ペレット製造工程では、水及びバインダーを添加せずに前記ニッケル酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して混合物とし、プレス機を用い、該混合物を、プレス機の金型に10.0mm以上11.3mm以下の成形品の高さとなるように充填し、60kg/cm以上500kg/cm以下の成形圧力でプレス成形し、
前記乾燥工程で乾燥された前記還元炉に装入する前のペレットを、下記で定義される残留水分割合が0質量%のペレットとする
ニッケル酸化鉱の製錬方法。
残留水分割合=乾燥工程で乾燥された還元炉に装入する前のペレットの一部を105℃に設定した恒温槽に2時間入れ、その処理前後の質量の差を水分量として、その水分量処理前のペレットの質量に対する割合
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱等の酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して得られた混合物を成形してペレットとするペレットの製造方法、及びそのペレットを還元することによりメタルを製造するニッケル酸化鉱の製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱の製錬方法として、熔錬炉を使用してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用して鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用してミックスサルファイドを製造する湿式製錬方法等が知られている。
【0003】
上述した様々な方法の中で、特に乾式製錬法を用いてニッケル酸化鉱を還元して製錬する場合、反応を進めるために原料のニッケル酸化鉱を適度な大きさに粉砕し、その粉砕物を他の原料成分と共に混合した後に、混合物をペレット化し、あるいはスラリー化等するための前処理が行われる(例えば特許文献1)。
【0004】
具体的に、ニッケル酸化鉱をペレット化する、すなわちペレットを製造する際には、そのニッケル酸化鉱と、それ以外の成分、例えばバインダーやコークス等の還元剤と混合して混合物とし、さらに水分調整等を行った後に塊状物製造機に装入して、例えば10mm〜30mm程度の塊状物(ペレット、ブリケット等を指す。以下、単に「ペレット」という)とするのが一般的である。
【0005】
従来、ペレットを運搬したり、搬送したりするときに、ペレットが破損しない程度の強度を持たせるため、適量の水を添加してペレットを製造する必要があった。しかしながら、水を加えて製造したペレットに対して還元加熱処理を施すような場合には、その還元加熱処理に先立ち、ペレットを加熱(乾燥処理)することによって水を蒸発させる必要が生じる。そして、その乾燥処理後においても残留水分が残存していると、還元加熱処理の前に再度加熱して添加した水分を十分に除去することが必要となり、フェロニッケル等のメタルを製造するにあたって製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
また、原料の酸化鉱のなかには、その水分含有量が比較的多いものがあり、そのような原料から従来のような方法でペレットを製造した場合、より一層に乾燥処理後の残留水分が多くなる可能性があり、更に乾燥処理における負荷が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−20533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、水分含有量が多いニッケル酸化鉱等の酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して得られるペレットを用いて製錬するにあたり、残留水分を極力低減させたペレットを製造する方法、及びそのペレットを用いた安価にメタルを製造する製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、水分含有量が多い酸化鉱を用いてペレットを製造するに際して、水及びバインダーを添加せずに酸化鉱と炭素質還元剤とを含む混合物を調製し、調製した混合物を所定の成形圧力でプレス成形することによってペレットとすることで、コストを抑えながら成形性に優れ、残留水分量の少ないペレットを製造でき、また、そのペレットを用いて製錬処理を施すことで効率的にメタルを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1)本発明の第1の発明は、水分を14質量%以上の割合で含有する酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して混合物とする混合処理工程と、得られた混合物を成形してペレットとする混合物成形工程と、を有し、前記混合処理工程では、水及びバインダーを添加せずに前記混合物を調製し、前記混合物成形工程では、前記混合物を60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形することによってペレットとする、ペレットの製造方法である。
【0011】
(2)本発明の第2の発明は、ニッケル酸化鉱と炭素質還元剤とを含むペレットを製造するペレット製造工程と、得られたペレットを還元炉に装入し、所定の還元温度で加熱する還元工程と、前記還元工程で得られたメタルとスラグとの混在物からメタルを回収する回収工程と、を有し、前記ニッケル酸化鉱は、水分を14質量%以上の割合で含有し、前記ペレット製造工程では、水及びバインダーを添加せずに前記ニッケル酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して混合物とし、該混合物を60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形することによってペレットとする、ニッケル酸化鉱の製錬方法である。
【0012】
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記ペレット製造工程にて得られたペレットを乾燥する乾燥工程をさらに有し、前記乾燥工程では、100℃〜120℃の温度で前記ペレットを乾燥する、ニッケル酸化鉱の製錬方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水分含有量が多いニッケル酸化鉱等の酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して得られるペレットを用いた製錬において、残留水分を極力低減させたペレットを製造することができ、またそのペレットを用いて安価にメタルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ニッケル酸化鉱の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の整数)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0016】
≪1.本発明の概要≫
本発明に係るペレットの製造方法は、例えば、ニッケル酸化鉱の製錬方法にて用いられる、少なくとも酸化鉱と炭素質還元剤とを含むペレットの製造方法である。そして、このペレットの製造方法は、特に、水分を14質量%以上の割合で含有する酸化鉱を原料としてペレットを製造する方法であって、その酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して混合物とする混合処理工程と、得られた混合物を成形してペレットとする混合物成形工程と、を有する。なお、ここでいう酸化鉱に含まれる水分とは、鉱石の表面に付着した付着水分をいう。
【0017】
このペレットの製造方法では、混合処理工程において、水及びバインダーを添加せずに混合物を調製し、成形工程においては、その混合物を60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形することによってペレットとすることを特徴としている。
【0018】
このような方法によれば、水分を14質量%以上の割合で含有する比較的高い水分含有量の酸化鉱を原料とした場合であっても、水やバインダーを添加せずに混合物を調製し、その混合物を所定の成形圧力でプレス成形してペレットにしていることから、良好な成形性でもって効果的に成形を行うことができるとともに、残留水分量の少ないペレットを製造することができる。また、残留水分量が少ないことから、還元処理に先立って行われる乾燥処理の負荷も低減することができ、効率的な製錬処理を行うことができる。
【0019】
なお、残留水分とは、ペレットの表面に付着している水分をいい、ペレットの内部における結晶水は含まない。また、残留水分量とは、ペレット表面の付着水分量をいう。
【0020】
以下では、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)として、ニッケル酸化鉱の製錬方法を例に挙げ、製錬方法の流れを説明しながら、処理に用いるペレットの製造方法について説明する。製錬原料であるニッケル酸化鉱は、酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe)とを少なくとも含むものであり、そのニッケル酸化鉱を製錬原料として還元処理することで、メタルとして鉄−ニッケル合金(フェロニッケル)を製造することができる。
【0021】
なお、本発明は、ペレットを構成する酸化鉱としてニッケル酸化鉱に限定されるものではなく、製錬方法としても酸化ニッケル等を含むニッケル酸化鉱からフェロニッケルを製造する方法に限られるものではない。
【0022】
≪2.ニッケル酸化鉱の製錬方法≫
本実施の形態に係るニッケル酸化鉱の製錬方法は、ニッケル酸化鉱を炭素質還元剤と混合して混合物とし、その混合物に対して還元処理を施すことによって、還元物としてメタル(鉄とニッケルの合金であるフェロニッケル)とスラグとを生成させる方法である。なお、メタルであるフェロニッケルは、還元処理を経て得られたメタルとスラグとを含む混合物から、そのメタルを分離することで回収することができる。
【0023】
図1は、ニッケル酸化鉱の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。図1に示すように、この製錬方法は、ニッケル酸化鉱を含む原料を混合してペレットを製造するペレット製造工程S1と、得られたペレットを乾燥する乾燥工程S2と、ペレットを所定の還元温度で還元加熱する還元工程S3と、還元工程S3にて生成したメタルとスラグとを分離してメタルを回収する回収工程S4と、を有する。
【0024】
<2−1.ペレット製造工程>
ペレット製造工程S1は、酸化鉱であるニッケル酸化鉱を含む原料粉末を混合して混合物とし、その混合物をペレットに成形する工程である。具体的に、ペレット製造工程S1は、少なくともニッケル酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して混合物とする混合処理工程S11と、得られた混合物を成形してペレットする混合物成形工程S12と、を有する。
【0025】
(1)混合処理工程
混合処理工程S11では、少なくともニッケル酸化鉱と炭素質還元剤とを混合して原料粉末から構成される混合物を得る。具体的には、原料鉱石であるニッケル酸化鉱に、炭素質還元剤を添加して混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分等の、例えば粒径が0.1mm〜0.8mm程度の粉末を添加して混合して混合物とする。
【0026】
ニッケル酸化鉱としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱は、酸化ニッケル(NiO)と、酸化鉄(Fe)とを少なくとも含有する。
【0027】
ここで、本実施の形態においては、原料鉱石であるニッケル酸化鉱として、水分(付着水分)を14質量%以上の割合で含有する、いわゆる高水分含有のニッケル酸化鉱を用いる。具体的に、このニッケル酸化鉱の水分含有量は、14質量%以上17質量%以下程度である。
【0028】
炭素質還元剤としては、特に限定されないが、例えば、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。この炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱の粒度や粒度分布と同等の大きさのものであると、均一に混合し易く、後述する還元工程S3での還元反応も均一に進みやすくなるため好ましい。
【0029】
炭素質還元剤の混合量としては、ニッケル酸化鉱を構成する酸化ニッケルの全量をニッケルメタル還元するのに必要な化学当量と、酸化鉄(酸化第二鉄)を金属鉄に還元するのに必要な化学当量との両者合計値(便宜的に「化学当量の合計値」ともいう)を100質量%としたときに、好ましくは5質量%以上60質量%以下の炭素量の割合、より好ましくは10質量%以上40質量%以下の炭素量の割合となるように調整することができる。このように、炭素質還元剤の混合量を、化学当量の合計値100質量%に対して5質量%以上の割合とすることで、ニッケルの還元を効率的に進行させることができ生産性が向上する。一方で、化学当量の合計値100質量%に対して60質量%以下の割合とすることで、鉄の還元量を抑えて、ニッケル品位の低下を防ぎ、高品質のフェロニッケルを製造することができる。なお、炭素質還元剤を混合して得られた混合物からペレットを製造し、そのペレットに対して還元処理(還元工程S3)を実施する際の還元炉への酸素の混入等による酸化を防ぐ観点から、混合物の調製にあたっての炭素質還元剤の混合量としては、過剰量を混合してもよい。そのときも、鉄の還元を抑制し得る量に適宜調整する。
【0030】
また、任意成分の添加剤である鉄鉱石としては、例えば、鉄品位が50質量%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
【0031】
また、フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。
【0032】
さて、上述したように本実施の形態においては、高水分含有のニッケル酸化鉱を原料鉱石として用いる。このような原料成分を用いて混合物を調製してペレットとした場合、その含有水分によって優れた成形性を奏して、強度の高いペレットを得ることができる。しかしながら一方で、鉱石中に含まれる水分量が多いと、ペレットに成形し、所定の乾燥処理を施した後も残留する水分量が多くなり、そのままでは高温条件での還元処理において割れや損壊等が生じやすくなる。そのため、再度の乾燥処理を行って水分を十分に蒸発させることが必要になり、その結果、乾燥処理における負荷が増大する。
【0033】
そこで、混合処理工程S11においては、水及びバインダー成分を添加せずに原料粉末の混合物を調製することを特徴としている。このように、水やバインダー成分を添加することなく混合物を調製することによって、次工程の混合物成形工程S12を経て得られるペレットの乾燥処理後の残留水分を少なくすることができる。また、詳しくは後述するが、水やバインダー成分を添加せずに調製した混合物に対する成形処理において、所定に成形圧力でプレス成形してペレットを製造することにより、より一層に残留水分を少なくすることができ、これらの作用により、乾燥処理の負荷を低減させることができる。
【0034】
これにより、乾燥加熱のための処理コストを有効に減らすことができ、効率的な製錬方法を実現することができる。具体的には、後述する乾燥工程S3における乾燥加熱処理の温度を、例えば100℃〜120℃程度の低温とすることができ、処理コストを有効に減少させることができる。なお、従来では、水やバインダー成分を添加して得られた混合物により構成されるペレットに対し、そのペレットに付着した付着水を蒸発させるために、少なくとも150℃〜400℃の高温の熱風を吹き付ける等して乾燥させていた。
【0035】
原料粉末の混合処理は、その原料粉末が均一に混合されるように行うことが好ましく、混合機等を用いて公知の方法により行うことができる。また、この混合処理に際しては、混合性を高めるために混練を同時に行ってもよく、あるいは混合処理後に混練を行ってもよい。具体的に、混練は、例えば二軸混練機等を用いて行うことができ、混合物を混練することによってその混合物にせん断力を加え、炭素質還元剤や原料粉末等の凝集を解いて均一に混合させるとともに、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができる。これにより、得られた混合物に基づいて成形したペレットに対する還元反応が起りやすくなるとともに、均一に反応を生じさせることができ、還元反応の反応時間を短縮することができる。また、品質のばらつきを抑えることもでき、安定的に高い生産性でもって高品質のフェロニッケルを製造することができる。
【0036】
また、混練した後、押出機を用いて押出してもよい。このように押出機で押出すことによって、より一層高い混練効果を得ることができる。
【0037】
なお、下記表1に、混合処理工程S11にて混合する、一部の原料粉末の組成(質量%)の一例を示すが、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
【0038】
【表1】
【0039】
(2)混合物成形工程
混合物成形工程S12では、混合処理工程S11で調製して得られた混合物を、ある程度の大きさ以上の塊(塊状物、以下「ペレット」という)に成形する。なお、この混合物成形工程S12にて得られるペレットが、還元工程S3における所定の温度での還元処理(還元加熱処理)の処理対象となる。
【0040】
ここで、上述したように混合処理工程S11における混合物の調製は、水及びバインダー成分を添加せずに行っている。そのため、成形後に得られるペレット中の水分量は有効に減少し、乾燥加熱処理の負荷を低減させることができるものの、一方で、結着作用を有する水やバインダー成分を添加しないことにより、ペレットの強度が低下する可能性がある。ペレットは、還元工程S3において還元炉に装入され、1200℃〜1450℃程度の高温で加熱処理される。そのため、ペレットの強度が弱いと還元炉への装入時や還元反応時に破損が生じてしまい、高品質なメタルを生成させることができないことがある。
【0041】
そこで、本実施の形態では、混合物に対する成形処理において、所定の圧力を混合物に加えてプレス成形することによってペレットを製造することを特徴としている。具体的には、60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形することでペレットを製造する。このように、混合物をプレス成形してペレット化することで、より成形性を高めて、ペレットに対して適切な強度を付与することができる。したがって、混合処理工程S11にて水やバインダー成分を添加しなくても、良好なペレットを製造することができる。
【0042】
また、混合物を60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形してペレットとすることで、所定の圧力を混合物に加える過程でその混合物中に含まれる水分を効果的に除去することができる。このことにより、水分含有量が14質量%以上である高水分含有のニッケル酸化鉱を原料鉱石として用いた場合であっても、乾燥処理後のペレット中の残留水分をほとんど減らすことができ、ペレットに対する乾燥処理負荷を低減することができる。
【0043】
具体的に、成形処理においては、調製した混合物をプレス機の金型に充填し、充填した混合物に対して所定以上の圧力をプレス機に加えてペレットに成形する。
【0044】
プレス機による圧力(面圧)としては、上述したように、60kg/cm以上とする。また、好ましく100kg/cm以上とし、より好ましく200kg/cm以上とする。ここで、面圧とは、プレス面に印加する圧力を混合物に対する接触面積で割ったときの単位面積当たりの荷重をいい、単に「成形圧力」ともいう。このように圧力を混合物に付加することで、混合物の成形性を高めることができるとともに、混合物に含まれる水分を有効に除去することができる。なお、プレス機面圧の上限については、特に限定されない。
【0045】
プレス機によってプレス成形するに際して、プレス機の金型への混合物の充填高さは、製造するペレットの大きさに依存するが、プレス機に加えられる圧力にも影響するため、適切に調整することが好ましい。具体的に、充填高さとしては、10mm以上とすることが好ましく、15mm以上とすることがより好ましい。また、充填高さは、60mm以下とすることが好ましく、50mm以下とすることがより好ましい。このように、プレス機への混合物の充填高さを10mm以上60mm以下の範囲とすることで、プレス機による圧力を均一に付与することができ、成形性を高めることができる。
【0046】
また、プレス機の金型に混合物を充填した後、その充填部に超音波等を用いて振動を加え、混合物の周辺に存在する空気を排出する処理を施すことが好ましい。なお、振動を加えて空気を効率的に排出できれば、上述した超音波を用いた処理に限られない。
【0047】
混合物を成形して得られるペレットの形状としては、例えば、直方体状、円柱状、球状等とすることができる。このような形状とすることにより、混合物を成形し易くし、成形にかかるコストを抑えることができる。また、上述した形状は簡易な形状であって複雑なものではないため、不良品の発生を防ぐことができ、得られるペレットの品質を均一にすることもできる。なお、ペレットの形状が、直方体状、円柱状等であれば、還元工程S3において、還元炉内にペレットを積層させて載置することもでき、還元処理に供する処理量を多くすることができる。
【0048】
<2−2.乾燥工程>
乾燥工程S2は、ペレット製造工程S1にて製造したペレットを乾燥して、そのペレットに含まれる水分(付着水)を蒸発させ除去する工程である。このように、製造したペレットに対して乾燥処理を施すことにより、次工程の還元工程S3における還元処理に際して急激な昇温によってペレット内部の水分が一気に膨張することで、粉々に破損してしまう事態を防ぐことができる。
【0049】
なお、この乾燥工程S2については、上述したペレット製造工程S1に含まれる処理工程として位置付けることもできる。すなわち、混合物成形工程S12により得られた成形物であるペレットに対して乾燥処理を施すことによって、還元工程S3における還元処理に供するペレットを製造するという態様とすることができる。
【0050】
乾燥処理としては、特に限定されないが、例えば、所定の温度に加熱した熱風をペレットに吹き付けることによって行うことができる。また、所定の温度に加熱した加熱雰囲気下にペレットを保持することによって乾燥処理を行ってもよい。
【0051】
ここで、本実施の形態では、ペレット製造工程S1において水やバインダー成分を添加せずに混合物を調製し、そして、その混合物を60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形してペレットにすることを特徴としている。そのため、製造されるペレット中の水分を極めて少ない状態とすることができ、乾燥処理後の残留水分をほとんど無くすことができる。したがって、そのようなペレットに対して乾燥処理(乾燥工程S2)を施す場合、水分を蒸発させるための乾燥温度を低く設定することができ、乾燥処理の負荷を有効に低減できる。具体的には、熱風の温度や乾燥のための雰囲気温度を、100℃〜120℃程度の比較的低温の条件とすることができる。
【0052】
また、例えばプレス成形の条件によっては、乾燥処理の省略することもでき、より効率的に製錬処理を実行することができる。
【0053】
<2−3.還元工程>
還元工程S3は、製造したペレットを還元炉内に装入して、所定の還元温度で還元加熱する工程である。この還元工程S3における還元加熱処理により、製錬反応(還元反応)が進行して、還元物であるメタルとスラグとが生成する。
【0054】
還元加熱処理においては、ペレット中のニッケル酸化鉱に含まれる酸化ニッケルは可能な限り完全に優先的に還元し、一方で、ニッケル酸化鉱に含まれる酸化鉄は一部だけ還元して、目的とする高いニッケル品位のフェロニッケルが得られる、いわゆる部分還元を施す。そして、この還元加熱処理により、ペレット中のスラグは熔融して液相となっているが、還元処理により既に分離して生成したメタルとスラグとは、混ざり合うことがなく、その後の冷却によってメタル固相とスラグ固相との別相として混在する混合物となる。このときのペレットの体積は、還元炉に装入したときペレットと比較すると、50%〜60%程度の体積に収縮している。
【0055】
還元工程S3においては、混合物を還元炉内に装入するにあたって、予めその還元炉の炉床に炭素質還元剤(以下、「炉床炭素質還元剤」ともいう)を敷き詰め、その敷き詰められた炉床炭素質還元剤の上にペレットを載置させて処理するようにしてもよい。また、炉床の上にアルミナ、ジルコニア、マグネシア等の床敷材を敷いて、その上にペレットを載置させて処理してもよい。なお、床敷材としては、酸化物を主成分とするものを用いることができる。このように還元炉の炉床に炭素質還元剤や床敷材等を敷き、その上にペレットを載置して還元処理を施すことで、炉床とペレットとの直接の反応を抑制することができ、炉床への融着を防ぐとともに、その炉床の寿命を延ばすことができる。
【0056】
還元炉としては、特に限定されないが、例えばロータリーキルンや移動炉床炉を用いることができる。例えば、還元炉として移動炉床炉を使用することで、連続的に還元反応が進行し、一つの設備で反応を完結させることができ、各工程における処理を別々の炉を用いて行うよりも処理温度の制御を的確に行うことができる。また、移動炉床炉を使用することにより、各処理間での熱の損失(ヒートロス)を低減して、より効率的な操業が可能となる。つまり、別々の炉を使用した反応を行った場合、混合物を封入した容器を、炉と炉との間を移動させる際に、外気あるいはそれに近い状態に露出することで、一時的に温度が低下してヒートロスが生じ、また反応雰囲気に変化が生じる。この結果次の処理を行うために、炉に再装入した際に即座に反応が始まらない。これに対し、移動炉床炉を使用して一つの設備で各処理を行うことで、ヒートロスが低減されるとともに炉内雰囲気も的確に制御できるため、反応をより効果的に進行させることができる。
【0057】
なお、移動炉床炉としては、例えば、円形状であって複数の処理領域に区分けされた回転炉床炉を用いることができる。回転炉床炉では、所定の方向に回転しながら、各領域においてそれぞれの処理を行う。移動炉床炉は、ローラーハースキルン等であってもよい。
【0058】
還元温度としては、特に限定されないが、1200℃以上1450℃以下の範囲とすることが好ましく、1300℃以上1400℃以下の範囲とすることがより好ましい。このような温度範囲で還元することによって、均一に還元反応を生じさせることができ、品質のばらつきを抑制したメタル(フェロニッケル)を生成させることができる。また、より好ましくは1300℃以上1400℃以下の範囲の還元温度で還元することで、比較的短時間で所望の還元反応を生じさせることができる。
【0059】
なお、還元処理においては、上述した範囲の還元温度になるまでバーナー等により還元炉の内部温度を上昇させ、昇温後にその温度を維持する。
【0060】
<2−4.回収工程>
回収工程S4では、還元工程S3にて生成したメタルとスラグとを分離してメタルを回収する。具体的には、混合物に対する還元加熱処理によって得られた、メタル相(メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混合物(混在物)からメタル相を分離して回収する。
【0061】
固体として得られたメタル相とスラグ相との混在物からメタル相とスラグ相とを分離する方法としては、例えば、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。
【0062】
また、得られたメタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから容易に分離することができ、上述した還元工程S3における処理で得られた、大きな混在物に対して、例えば、所定の落差を設けて落下させる、あるいは篩い分けの際に所定の振動を与える等の衝撃を与えることで、その混在物からメタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。
【0063】
このようにしてメタル相とスラグ相とを分離することによって、メタル相を回収する。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0065】
≪試験例1〜試験例5≫
以下のようにしてフェロニッケル製錬に用いるペレットを製造した。
【0066】
[混合処理工程]
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:85質量%、平均粒径:約90μm)を、混合機を用いて混合して混合物を得た。このとき、水及びバインダー成分を添加せずに混合物を調製した。
【0067】
ここで、原料鉱石のニッケル酸化鉱としては、水分(付着水分)を14質量%〜17質量%の割合で含む、比較的高水分含有のものを用いた。
【0068】
また、炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe)とを過不足なく還元するのに必要な量の合計値を100質量%としたときに30質量%〜33質量%の割合となる量で含有させた。
【0069】
[混合物成形工程]
次に、得られた混合物を、プレス成形してペレットを製造した。具体的には、混合物をプレス機の金型に下記表2に示す成形品の高さとなるように充填した。その後、下記表2に示す圧力(面圧)を混合物に加えることによってプレス成形した。
【0070】
[乾燥工程]
次に、得られたペレットに対して105℃〜110℃程度の雰囲気温度で乾燥処理を施した。乾燥処理後、そのペレットに含まれる残留水分の割合を測定した。なお、残留水分とは、ペレット表面に付着している水分をいい、ペレット内部における結晶水は含まない。また、残留水分の割合とは、ペレット表面の付着水分のペレット中の質量割合をいう。
【0071】
[還元工程]
次に、乾燥後のペレットを、炉内温度を1300℃に加熱した還元炉に装入した。そして、その還元温度を保持して30分間に亘って還元処理を施した。
【0072】
≪評価≫
混合物成形工程において混合物を成形してペレットとしたときの成形性について評価した。下記表2では、所定の形状に成形でき、1時間後に形状が保持された場合を良好な成形性を有するとして「○」と評価し、所定の形状に成形できなかった、あるいは1時間後に形状が保持されず崩れてしまった場合を成形性が不良であるとして「×」と評価した。
【0073】
また、上述した乾燥工程後に得られたペレット(還元工程にて還元炉に装入する前のペレット)の残留水分について評価した。下記表2に、各試験で得られたペレット中の残留水分割合の測定値を示す。乾燥後のペレット中の残留水分割合は、絶乾法によりペレットの水分量(保水量)を測定し、その水分量のペレットの質量に対する割合として求めた。具体的には、乾燥後のペレットの一部を105℃に設定した恒温槽に2時間入れ、その処理前後の質量の差を水分量として、その水分量を処理前のペレットの質量に対する割合(残留水分割合)として求めた。
【0074】
また、ペレットに対する還元処理の終了後、炉内に生成した還元物を回収して、損壊が生じているか否かの観察を行った。下記表2では、損壊が生じていた場合を損壊「あり」とし、損壊が生じなかった場合を損壊「なし」として評価した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果に示されるように、水及びバインダーを添加せずに混合物を調製し、その混合物に対して60kg/cm以上の成形圧力でプレス成形することでペレットを製造した実施例1〜実施例4では、乾燥処理後のペレット中の残留水分は0質量%であった。また、そのペレットに対する還元処理においては、損壊は生じず、生成したメタルを効率的に回収することができた。
【0077】
一方で、成形圧力を50kg/cmとした比較例1では、乾燥処理後の残留水分が0.5質量%であり、付着水分が残ってしまった。そして、残留水分が存在したためか、還元処理により損壊が生じてしまい、メタルの回収作業が困難となった。また、成形圧力を40kg/cmとした比較例2では、成形性が不良となり、混合物をペレットに成形することができなかった。なお、比較例2では、ペレットへの成形が不可であったため、残留水分、損壊の有無の評価を行うことができなかった。
図1