(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出装置、液体吐出方法及び記録媒体支持装置の実施の形態を説明する。以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。なお、各実施の形態は、内容を矛盾させない範囲で、適宜組み合わせることができる。
【0010】
(実施の形態1)
図1を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置1のハードウェア構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置1は、制御部100を備える。また、液体吐出装置1は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)101を備える。液体吐出装置1は、CPU101に対して、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、不揮発性メモリ(NVRAM:Non‐Volatile RAM)104と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105とを接続する。また、液体吐出装置1は、CPU101に対して操作パネル114を接続する。
【0012】
ROM102は、CPU101が実行するプログラム、その他の固定データを格納する。RAM103は、画像データ等を一時格納する。不揮発性メモリ104は、液体吐出装置1の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能なメモリである。ASIC105は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0013】
また、液体吐出装置1は、ホストI/F106と、印刷制御部107と、副走査モータ駆動部108と、I/O109とを備える。
【0014】
ホストI/F106は、ホスト側との間で、データや信号を送受する。具体的には、ホストI/F106は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読取装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホストのプリンタドライバが生成した印刷データ等を、ケーブルやネットワーク等を介して受信する。
【0015】
印刷制御部107は、液体吐出ヘッド10を駆動するための駆動波形を生成するとともに、液体吐出ヘッド10が液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を選択駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データを、ヘッドドライバ111に出力する。
【0016】
印刷制御部107は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ構成となっている。印刷制御部107は、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することによって所望の機能を発揮する。
【0017】
印刷制御部107のCPUが実行するプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0018】
さらに、印刷制御部107のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供するように構成しても良い。また、印刷制御部107のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0019】
副走査モータ駆動部108は、副走査モータ112を駆動する。シャフト12は、副走査モータ112によって副走査方向に回転駆動する。I/O109は、エンコーダ113からの検出パルスや、その他の各種センサからの検知信号を入力する。なお、液体吐出装置1は、液体の吐出において液体吐出ヘッド10を移動させる場合、液体吐出ヘッド10を搭載したキャリッジと、キャリッジを主走査方向に移動させるための主走査モータと、主走査モータを駆動する主走査モータ駆動部とを備える。
【0020】
ここで、液体吐出装置1における印刷制御処理の概略について説明する。
【0021】
液体吐出装置1のCPU101は、ホストI/F106の受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行なって印刷制御部107に転送する。
【0022】
印刷制御部107は、所要のタイミングでヘッドドライバ111に画像データや駆動波形を出力する。より詳細には、印刷制御部107は、ROM102に格納されてCPU101で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換して増幅することにより、1つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成する。
【0023】
なお、画像出力するための画像データ(ドットパターンデータ)の生成は、例えばROM102にフォントデータを格納して行なっても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップに展開して液体吐出装置1に転送するようにしても良い。
【0024】
ヘッドドライバ111は、入力される画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて、印刷制御部107から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを、選択的に液体吐出ヘッド10の圧力発生手段に対して印加することにより、液体吐出ヘッド10を駆動する。
【0025】
次に、
図2を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置1の要部構成の概要を説明する。
図2は、実施の形態1に係る液体吐出装置1の要部構成例の概要を説明する図である。
【0026】
図2に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10と、シャフト12と、エアーパック13と、チューブ14と、電動エアーポンプ15とを有する。シャフト12が通ったエアーパック13には、布地(例えば、Tシャツ等の加工品を含む)等の中空の記録媒体11が固定される。つまり、エアーパック13は、中空の記録媒体11の内部の空洞部分に配置される。
【0027】
液体吐出ヘッド10は、記録媒体11にインク等の液体を吐出する。エアーパック13は、全面が液体吐出ヘッド10によるインク等の液体の吐出対象となる中空の記録媒体11を支持する。エアーパック13は、「支持部材」に対応する。シャフト12は、液体吐出ヘッド10によるインク等の液体の吐出に合わせて、エアーパック13を回転させる回転軸である。シャフト12は、「回転部材」に対応する。電動エアーポンプ15は、空気を出力する。チューブ14は、電動エアーポンプ15と、エアーパック13とを接続する。電動エアーポンプ15は、エアーパック13と同様に、「支持部材」に対応する。
【0028】
図3は、実施の形態1に係る中空の記録媒体11を固定する方法の例を説明する図である。
図3に示すように、中空の記録媒体11を固定する方法は、空気が入れられる前のしぼんだ状態のエアーパック13にTシャツ等の中空の記録媒体11を被せ、チューブ14を介して、電動エアーポンプ15からエアーパック13に空気を送り、膨らませることで実現する。つまり、エアーパック13の膨らもうとする力と、Tシャツ等の中空の記録媒体11の元に戻ろうとする力とが釣り合うことで、エアーパック13にTシャツ等の中空の記録媒体11を固定させることができる。なお、エアーパック13の形状は、Tシャツ等の中空の記録媒体11を固定しやすいような、人間の上半身を模倣した形をとることが好ましい。このような形状とすることで、Tシャツ等の中空の記録媒体11の皺が抑制され、より安定した印刷が可能となる。
【0029】
また、液体吐出ヘッド10は、中空の記録媒体11へのインク等の液体の吐出のために、シャフト12が通ったエアーパック13に、中空の記録媒体11を固定させた状態で、中空の記録媒体11の面に印字できる向きで設置される。そして、シャフト12を回転させることで中空の記録媒体11が回転し、液体吐出ヘッド10は、中空の記録媒体11の全面(例えば、Tシャツの表面全体)に画像をプリントすることができる。なお、チューブ14については、シャフト12を回転させる際に取り外しても良いし、エアーパック13に接続したままでシャフト12を回転可能に構成されても良い。
【0030】
次に、
図4を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置1の要部構成の詳細を説明する。
図4は、実施の形態1に係る液体吐出装置1の要部構成例の詳細を説明する図である。
【0031】
図4に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10と、シャフト12と、エアーパック13と、チューブ14と、電動エアーポンプ15とを有する。また、液体吐出装置1は、コート液タンク16と、加圧アーム17と、スポンジローラー18と、ヒーター19と、圧着ローラー20と、塗布量検知センサ21とを有する。
【0032】
コート液タンク16は、先塗り液や後塗り液といった前処理や後処理に使用されるコート液を貯蔵する。コート液タンク16には、コート液を送液するための管が取り付けられる。前処理に使用される先塗り液等のコート液は、「前処理液」に対応する。後処理に使用される後塗り液等のコート液は、「後処理液」に対応する。加圧アーム17は、スポンジローラー18を記録媒体11に押し当てる。スポンジローラー18は、加圧アーム17による加圧により、コート液タンク16から送液されたコート液を記録媒体11に塗布する。スポンジローラー18は、「塗布ローラー」に対応する。
【0033】
ヒーター19は、圧着ローラー20を加熱する。圧着ローラー20は、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出の前に先塗り液を記録媒体11へ圧着し、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出の後に後塗り液を記録媒体11へ圧着する。圧着ローラー20は、記録媒体11に押し当てられた状態で設置される。これらにより、圧着ローラー20は、ヒーター19により温められており、熱による圧着を可能とする。塗布量検知センサ21は、記録媒体11に塗布されたコート液の塗布量を検知する。例えば、コート液は、ブルーライト等の光を当てると、発色する特殊な塗料であるものとする。塗布量検知センサ21は、専用の光源を備え、光源の光を記録媒体11に当てて、発色した面積や濃度を検知する。
【0034】
上述した構成において、エアーパック13は、Tシャツ等の中空の記録媒体11が被せられ、電動エアーポンプ15から出力され、チューブ14を介して送られた空気により膨らむ。ここで、Tシャツ等の中空の記録媒体11は、エアーパック13が空気により膨らもうとする力と、自身が元の大きさに戻ろうとする力とが釣り合うことにより、エアーパック13に固定される。
【0035】
そして、加圧アーム17は、加圧により、エアーパック13に固定された中空の記録媒体11に対して、スポンジローラー18を押し当てる。スポンジローラー18には、コート液タンク16から管を介して送液されたコート液を染み込ませることができる。また、中空の記録媒体11が固定されたエアーパック13は、シャフト12の回転により回転する。これらにより、コート液が染み込んだスポンジローラー18は、記録媒体11に押し当てられ、記録媒体11の全面(表面の全体)に、一度の回転(エアーパック13の回転による記録媒体11の360度の回転)でコート液(例えば、先塗り液)を塗布する。なお、シャフト12等の回転部材の回転角は、シャフト12付近に取り付けられたエンコーダ113により検出される。これにより、液体吐出装置1は、エアーパック13に固定された記録媒体11を360度回転させることができる。
【0036】
スポンジローラー18によるコート液(例えば、先塗り液)の塗布後、塗布量検知センサ21は、Tシャツ等の記録媒体11に塗布されたコート液の塗布量を検知する。上述したように、塗布量検知センサ21は、シャフト12の回転によりエアーパック13が回転している状態で、ブルーライト等の光を記録媒体11に当てて、発色した面積や濃度を検知する。これにより、液体吐出装置1では、記録媒体11に塗布されたコート液(例えば、先塗り液)の塗布量が狙いの塗布量に対して適切であるか否かを判定する。
【0037】
図5は、実施の形態1に係る液体吐出装置1の機能構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、液体吐出装置1は、塗布量検知制御部121と、判定部122と、記録制御部123とを有する。例えば、これらの各部は、CPU101やASIC105、印刷制御部107のCPU等で実行される機能である。
【0038】
塗布量検知制御部121は、塗布量検知センサ21の動作を制御する。より具体的には、塗布量検知制御部121は、スポンジローラー18によるコート液(例えば、先塗り液)の記録媒体11への塗布が完了したタイミングで、塗布量検知センサ21を動作させる。コート液の記録媒体11への塗布の完了は、コート液の塗布が開始されてから、記録媒体11が360度回転したタイミングである。そして、塗布量検知制御部121は、塗布量検知センサ21によって検知された、発色した面積や濃度の検知情報を受け取る。
【0039】
判定部122は、塗布量検知センサ21によって検知された塗布量が所定値以上であるかを判定する。より具体的には、判定部122は、塗布量検知制御部121から検知情報を取得し、記録媒体11に塗布されたコート液(例えば、先塗り液)の塗布量が所定値以上であるか否かを判定する。ここで、液体吐出装置1は、判定部122によって塗布量が所定値以上であると判定された場合に、コート液(例えば、先塗り液)の上に、液体吐出ヘッド10からインクを吐出するための制御に移行する。
【0040】
記録制御部123は、記録媒体11に対するコート液の記録動作を制御する。より具体的には、記録制御部123は、判定部122によって塗布量が所定値未満であると判定された場合に、コート液(例えば、先塗り液)の塗布が不足している記録媒体11の位置に対して、コート液を再度塗布するための制御を行なう。例えば、記録制御部123は、シャフト12を回転させ、スポンジローラー18によるコート液の塗布を実施するための制御を行なう。これにより、液体吐出装置1は、コート液(例えば、先塗り液)の塗布が不足することによるインクの定着不足を抑制することができる。
【0041】
コート液(例えば、先塗り液)の塗布が完了した後、液体吐出ヘッド10は、シャフト12の回転によりエアーパック13が回転している状態で、インクを吐出する。液体吐出ヘッド10によるインクの吐出では、スポンジローラー18によるコート液の塗布と同様に、記録媒体11の全面(表面の全体)に、一度の回転で記録することができる。
【0042】
インクの吐出により記録媒体11の全面への記録が完了した後は、コート液(例えば、後塗り液)が塗布される。先塗り液の塗布と同様に、スポンジローラー18は、Tシャツ等の記録媒体11に押し当てられ、記録媒体11の全面に、一度の回転でコート液(例えば、後塗り液)を塗布する。
【0043】
コート液(例えば、後塗り液)の塗布が完了した後、ヒーター19は、圧着ローラー20を加熱する。そして、圧着ローラー20は、シャフト12の回転によりエアーパック13が回転している状態で、熱による圧着を実施する。なお、上述したように、圧着ローラー20による圧着は、インクの吐出の前後で行なわれても良い。液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10からインクを吐出する前後で、一つの圧着ローラー20による圧着を可能とするため、圧着において、記録媒体11への記録の前後で異なる機構を設けなくて良く、省スペース化を実現することができる。
【0044】
次に、
図6を用いて、実施の形態1に係る液体吐出処理の流れを説明する。
図6は、実施の形態1に係る液体吐出処理の流れの例を示すフローチャートである。なお、
図6では、エアーパック13にTシャツ等の中空の記録媒体11が固定されたうえで液体吐出処理を実行する場合を例に挙げる。
【0045】
図6に示すように、液体吐出装置1は、シャフト12の回転開始に応じて、エンコーダ113によるシャフト12の回転角の検出を開始し、エアーパック13に固定された中空の記録媒体11の初期位置を検出する(ステップS101)。そして、液体吐出装置1は、記録媒体11が初期位置から360度以上回転したか否かを判定する(ステップS102)。
【0046】
このとき、液体吐出装置1は、記録媒体11が初期位置から360度以上回転していない場合に(ステップS102:No)、スポンジローラー18によりコート液(例えば、先塗り液)を塗布する(ステップS103)。続いて、液体吐出装置1は、シャフト12を回転させ、記録媒体11をN度回転させる(ステップS104)。なお、N度は、360度未満の所定角度である。液体吐出装置1は、記録媒体11をN度回転させた後、ステップS102の処理を再度実行する。すなわち、液体吐出装置1は、記録媒体11を初期位置から360度回転させるまで(記録媒体11が一回転するまで)、コート液(例えば、先塗り液)を塗布する。
【0047】
液体吐出装置1は、記録媒体11が初期位置から360度以上回転した場合に(ステップS102:Yes)、シャフト12を回転させ、記録媒体11へのコート液(例えば、先塗り液)の塗布量を塗布量検知センサ21により検知する(ステップS105)。そして、液体吐出装置1は、塗布量検知センサ21によって検知された記録媒体11の位置ごとの発色した面積と濃度とから、塗布量が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0048】
このとき、液体吐出装置1は、塗布量が所定値未満である箇所が存在する場合に(ステップS106:No)、ステップS101の処理を再度実行し、塗布量が不足している記録媒体11の位置に対して、コート液(例えば、先塗り液)の塗布を行なう。一方、液体吐出装置1は、記録媒体11の全ての箇所において塗布量が所定値以上である場合に(ステップS106:Yes)、シャフト12を回転させ、液体吐出ヘッド10からインクを吐出し、記録媒体11の全面に記録する(ステップS107)。
【0049】
その後、液体吐出装置1は、エアーパック13に固定された中空の記録媒体11の初期位置を検出する(ステップS108)。そして、液体吐出装置1は、記録媒体11が初期位置から360度以上回転したか否かを判定する(ステップS109)。このとき、液体吐出装置1は、記録媒体11が初期位置から360度以上回転していない場合に(ステップS109:No)、スポンジローラー18によりコート液(例えば、後塗り液)を塗布する(ステップS110)。続いて、液体吐出装置1は、シャフト12を回転させ、記録媒体11をN度回転させる(ステップS111)。液体吐出装置1は、記録媒体11をN度回転させた後、ステップS109の処理を再度実行する。すなわち、液体吐出装置1は、記録媒体11を初期位置から360度回転させるまで(記録媒体11が一回転するまで)、コート液(例えば、後塗り液)を塗布する。
【0050】
液体吐出装置1は、記録媒体11が初期位置から360度以上回転した場合に(ステップS109:Yes)、ヒーター19により圧着ローラー20を加熱する(ステップS112)。そして、液体吐出装置1は、ヒーター19によって加熱された圧着ローラー20により、記録媒体11に、インクやコート液を圧着する(ステップS113)。
【0051】
液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10からのインクの吐出対象となるTシャツ等の中空の記録媒体11を支持するエアーパック13を、記録媒体11の全面に記録可能に、シャフト12の回転により回転させる。この結果、液体吐出装置1は、記録媒体11の全面に対する印刷を連続して行なうことができる。換言すると、液体吐出装置1は、シャフト12の回転により、中空の記録媒体11が固定されたエアーパック13を回転させ、記録媒体11を一回転させながら液体吐出ヘッド10からインクを吐出して記録するので、記録媒体11の全面に対する印刷を連続して行なうことができる。つまり、液体吐出装置1は、Tシャツ等への印刷において、ある面を印刷した後にTシャツを取り外し、裏返してから未印刷の面を印刷する従来技術と比較して、記録媒体11の全面に対する印刷を連続して行なうことができる。
【0052】
また、液体吐出装置1は、回転させることで記録媒体11の全面に対する印刷を連続して行なうので、ある面ごとに記録する場合に記録媒体の固定のために取り込まれていた領域に記録することが困難である従来技術と比較して、全面に容易に記録することが可能となる。
【0053】
(実施の形態1の変形例1)
図7を用いて、実施の形態1の変形例1に係る液体吐出装置1の要部構成の詳細を説明する。
図7は、実施の形態1の変形例1に係る液体吐出装置1の要部構成例の詳細を説明する図である。
図7では、液体吐出ヘッド10からコート液を吐出する構成を例に挙げる。なお、実施の形態1の変形例1では、実施の形態1に係る液体吐出装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0054】
図7に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10aと、シャフト12と、エアーパック13と、チューブ14と、電動エアーポンプ15とを有する。また、液体吐出装置1は、コート液タンク16aと、ヒーター19と、圧着ローラー20と、塗布量検知センサ21とを有する。
【0055】
コート液タンク16aは、上記実施の形態1と同様に、先塗り液や後塗り液といった前処理や後処理に使用されるコート液を貯蔵する。コート液タンク16aには、コート液を送液するための管が取り付けられる。コート液を送液するための管は、液体吐出ヘッド10aに接続される。すなわち、液体吐出ヘッド10aは、インクの吐出に加えて、コート液タンク16aから管を介して送液されたコート液(例えば、先塗り液や後塗り液)を吐出する。液体吐出ヘッド10aによるコート液の吐出タイミングは、実施の形態1と同様に、インクの吐出の前後である。
【0056】
液体吐出ヘッド10aから吐出されるコート液は、先塗り液と後塗り液とで異なるものであっても良い。例えば、先塗り液はインクの発色を良くするためのものを使用し、後塗り液はインクの耐擦性を高めるためのものを使用しても良い。
【0057】
また、液体吐出ヘッド10aからコート液を吐出する状況において、塗布量検知センサ21による塗布量の検知により、コート液の塗布量が不足していることが分かった場合は、液体吐出ヘッド10aから吐出するコート液の量を調節しても良い。つまり、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10aから吐出するコート液の量を調節することで、コート液を過度に吐出することによるコストの増大を抑制することができる。
【0058】
液体吐出装置1は、コート液とインクとの吐出を液体吐出ヘッド10aで行なうため、コート液を塗布するための機構を設けなくて良く、さらなる省スペース化を実現することができる。
【0059】
(実施の形態1の変形例2)
図8を用いて、実施の形態1の変形例2に係る液体吐出装置1の要部構成の詳細を説明する。
図8は、実施の形態1の変形例2に係る液体吐出装置1の要部構成例の詳細を説明する図である。
図8では、実施の形態1とは異なる回転部材や支持部材を使用する構成を例に挙げる。なお、実施の形態1の変形例2では、実施の形態1に係る液体吐出装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、
図8では、コート液タンク16や加圧アーム17、スポンジローラー18、ヒーター19、圧着ローラー20、塗布量検知センサ21について図示を省略する。また、実施の形態1の変形例2では、チューブ14や電動エアーポンプ15を使用しない。
【0060】
図8に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10と、ローラー22と、無限軌道23とを有する。また、液体吐出装置1は、シャフト24と、距離センサ25と、保持・固定具26と、ロッド収納部27と、ロッド28とを有する。
【0061】
液体吐出装置1には、回転する複数のローラー22が設置される。ローラー22は、「回転部材」に対応する。ロッド収納部27やロッド28は、複数のローラー22の位置を調整する。ロッド収納部27やロッド28は、「支持部材」、「位置調整機構」に対応する。
図8では、2つのロッド収納部27と、5つのロッド28とを有する場合を例に挙げるが、ロッド収納部27やロッド28の数はこれに限られるものではない。また、ローラー22の数についても図示した数に限られるものではない。
【0062】
例えば、ロッド28は、ねじ軸である。ねじ軸であるロッド28を収納するロッド収納部27には、例えば、ロッド28に対してナットを構成するギアが設置される。ロッド28は、モータ等の駆動に応じたギアの回転に伴って
図8中の矢印方向に移動する。これらにより、位置調整機構としてのロッド収納部27やロッド28は、複数のローラー22の位置を調整する。また、ロッド収納部27間に設置されたロッド28の矢印方向への移動により、ロッド収納部27自体の位置も調整される。
【0063】
無限軌道23は、伸縮可能な無限軌道である。例えば、無限軌道23は、ゴム製のキャタピラー(登録商標)である。従って、無限軌道23は、ロッド収納部27やローラー22の位置の調整により伸縮する。これにより、ローラー22等の位置の調整による無限軌道23の外側に広がる力と、Tシャツ等の中空の記録媒体11の元に戻ろうとする力とが釣り合うことで、無限軌道23に、Tシャツ等の中空の記録媒体11を固定させることができる。なお、無限軌道23は、「支持部材」に対応する。
【0064】
また、無限軌道23と、無限軌道23に固定されたTシャツ等の中空の記録媒体11とは、一部がクリップのような保持・固定具26で固定されている。さらに、無限軌道23と、ローラー22のそれぞれとがかみ合い、複数のローラー22が回転することにより、無限軌道23が回転する。保持・固定具26で固定された記録媒体11は、このように無限軌道23が回転することにより回転する。
【0065】
距離センサ25は、液体吐出ヘッド10と記録媒体11との距離を検出するセンサである。液体吐出ヘッド10と記録媒体11との距離は、無限軌道23の伸縮によって変動する。液体吐出ヘッド10からの吐出は、液体吐出ヘッド10と記録媒体11との距離が記録に好適な距離(記録可能な距離)であるときに行なわれることが好ましい。このために、液体吐出装置1は、距離センサ25からの距離情報をもとに、液体吐出ヘッド10からの吐出可否を判断し、記録媒体11への記録を行なうように制御する。シャフト24は、必要に応じて液体吐出ヘッド10を主走査方向に移動可能に保持するガイド部材である。例えば、液体吐出ヘッド10は、記録媒体11の大きさ等に応じた無限軌道23の伸縮の程度によって、液体吐出ヘッド10と記録媒体11との位置関係が一定とはならないため、シャフト24を用いてその位置が必要に応じて調整される。
【0066】
液体吐出装置1は、複数のローラー22の位置を調整することで、中空の記録媒体11が固定される無限軌道23を伸縮させ、複数のローラー22の回転により、ローラー22とかみ合う無限軌道23を回転させることで、無限軌道23に固定された中空の記録媒体11を回転させる。この結果、液体吐出装置1は、記録媒体11の全面を液体吐出ヘッド10と向き合わせることが可能となるため、記録媒体11の全面に対する印刷を連続して行なうことができる。
【0067】
(その他の変形例)
上記文書中や図面中等で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータ等を含む情報は、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、図示した装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、装置の分散又は統合の具体的形態は、図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負担や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に、分散又は統合することができる。
【0068】
例えば、上記実施の形態で説明したスポンジローラー18や圧着ローラー20等の配置位置については、図示の如く構成されていなくても良く、変更可能である。また、塗布量検知センサ21による塗布量の検知は、先塗り液の塗布後だけに実施するのではなく、後塗り液の塗布後にも実施するようにしても良く、塗布量が不足していれば再度塗布する。
【0069】
また、上記実施の形態では、エアーパック13を膨らませたり、無限軌道23を伸縮させたりすることで、支持部材に中空の記録媒体11を固定させる場合を説明した。中空の記録媒体11の固定については、これらに限られるものではない。例えば、Tシャツ等の中空の記録媒体11を固定可能な大きさの支持部材を使用しても良い。つまり、液体吐出装置1は、回転部材(例えば、シャフト12やローラー22等)の回転により、中空の記録媒体11を固定可能な大きさの支持部材を回転させながら、液体吐出ヘッド10からインクを吐出する構成としても良い。換言すると、支持部材が支持部材の面上で布地(中空の記録媒体11)に張力が発生する程度の大きさを有し、液体吐出装置1は、回転部材の回転により、このような支持部材と一体化した布地(中空の記録媒体11)を回転させながら、液体吐出ヘッド10からインクを吐出する構成としても良い。
【0070】
また、上記実施の形態で説明した液体吐出装置1が備える回転部材や支持部材は、液体吐出装置1から取り外し可能であり、中空の記録媒体11を支持したうえで回転させる「記録媒体支持装置」として実現することもできる。なお、上記実施の形態では、中空の記録媒体11の一例としてTシャツである場合を例に挙げたが、これに限られるものではなく、トレーナー等の衣服として加工された布地や、トートバッグ等の製品の一部となっている布地等であっても良い。
【0071】
また、上記実施の形態で説明した液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけではなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0072】
このような液体吐出装置1は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙にかかわる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
【0073】
例えば、液体吐出装置1として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、紛体を層状に形成した紛体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0074】
また、液体吐出装置1は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
上記の「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、紛体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
【0076】
上記の「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的にでも付着可能であれば良い。
【0077】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであれば良く、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0078】
また、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0079】
また、液体吐出装置1としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。