特許第6969944号(P6969944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969944
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】板状物の切削方法及び切削措置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20211111BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20211111BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   B24B55/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-179301(P2017-179301)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-57525(P2019-57525A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝田 友春
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
【審査官】 三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−031639(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0259483(US,A1)
【文献】 特開2011−142126(JP,A)
【文献】 特開平07−115075(JP,A)
【文献】 特開2003−179002(JP,A)
【文献】 特開2017−092362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段と、切削ブレードを回転可能に保持する切削手段と、切削水供給手段と、を少なくとも有する切削装置を用いて、板状物を任意の分割予定ラインに沿って分割する切削方法であって、
該分割予定ラインの延長線上に三枚以上の板状物が隣接しないように、複数枚の該板状物を該保持手段に保持する保持ステップと、
切削点に供給される切削水を該切削ブレードの回転方向につれ回って排出しながら該板状物を切削する切削ステップと、を備え、
該切削ステップにおいて、
該切削点から排出される該切削水が該切削点から該保持手段の外周に向かう方向に回転された該切削ブレードを該保持手段の外周側から該板状物の該分割予定ラインに切り込ませて、該切削ブレードが該保持手段の中心に向かうように該保持手段を移動させることで、該切削水が排出される方向が、隣接する他の該板状物でなく該保持手段の外周に向かうように、該切削ブレードを回転させながら切削する事を特徴とする、板状物の切削方法。
【請求項2】
少なくとも一つの板状物の分割予定ラインの延長線上に他の板状物が位置する状態で複数枚の板状物を保持する保持手段と、
切削ブレードを回転可能に保持する切削手段と、
該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段と、
該保持手段と該切削手段とを相対的に移動させる移動手段と、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備えた切削装置であって、
該制御ユニットは、該切削手段が複数枚の該板状物を切削する際に、切削点から排出される該切削水が該切削点から該保持手段の外周に向かう方向に回転された該切削ブレードを該保持手段の外周側から該板状物の該分割予定ラインに切り込ませて、該移動手段に該切削ブレードが該保持手段の中心に向かうように該保持手段を移動させることで、切削中に該切削ブレードの回転によって該切削ブレードから該切削水が排出される方向が、他の該板状物でなく該保持手段の外周に向かうように、該切削手段と該移動手段との少なくとも一方を制御する、
ことを特徴とする切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の板状物を同時に保持手段に保持して分割する板状物の切削方法及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小型な板状物を切削して個々のデバイスに分割する際には、複数枚の板状物を一つの保持手段に保持し、切削ユニットの切削ブレードと各板状物とを分割予定ラインに沿って相対的に移動させることで、切削ブレードにより各板状物を個々のデバイスに分割する加工方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−92362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す加工方法は、板状物の切削中に切削ブレードの回転によって切削水が切削ブレードから他の板状物に向かって飛散する虞があり、切削水中の切削屑が他の板状物に付着する虞があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削水中の切削屑が板状物に付着することを抑制することができる板状物の切削方法及び切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の板状物の切削方法は、保持手段と、切削ブレードを回転可能に保持する切削手段と、切削水供給手段と、を少なくとも有する切削装置を用いて、板状物を任意の分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、該分割予定ラインの延長線上に三枚以上の板状物が隣接しないように、複数枚の該板状物を該保持手段に保持する保持ステップと、切削点に供給される切削水を該切削ブレードの回転方向につれ回って排出しながら該板状物を切削する切削ステップと、を備え、該切削ステップにおいて、該切削点から排出される該切削水が該切削点から該保持手段の外周に向かう方向に回転された該切削ブレードを該保持手段の外周側から該板状物の該分割予定ラインに切り込ませて、該切削ブレードが該保持手段の中心に向かうように該保持手段を移動させることで、該切削水が排出される方向が、隣接する他の該板状物でなく該保持手段の外周に向かうように、該切削ブレードを回転させながら切削することを特徴とする。
本発明の切削装置は、少なくとも一つの板状物の分割予定ラインの延長線上に他の板状物が位置する状態で複数枚の板状物を保持する保持手段と、切削ブレードを回転可能に保持する切削手段と、該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に移動させる移動手段と、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備えた切削装置であって、該制御ユニットは、該切削手段が複数枚の該板状物を切削する際に、切削点から排出される該切削水が該切削点から該保持手段の外周に向かう方向に回転された該切削ブレードを該保持手段の外周側から該板状物の該分割予定ラインに切り込ませて、該移動手段に該切削ブレードが該保持手段の中心に向かうように該保持手段を移動させることで、切削中に該切削ブレードの回転によって該切削ブレードから該切削水が排出される方向が、他の該板状物でなく該保持手段の外周に向かうように、該切削手段と該移動手段との少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、切削水中の切削屑が板状物に付着することを抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る板状物の切削方法が用いる切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る板状物の切削方法の加工対象の被加工物の平面図である。
図3図3は、実施形態1に係る板状物の切削方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示された板状物の切削方法の切削ステップの一つの板状物の分割予定ラインを切削する状態を一部断面で示す側面図である。
図5図5は、図4に示された板状物を示す平面図である。
図6図6は、図4に示す一つの板状物の分割予定ラインの切削が完了した状態を一部断面で示す側面図である。
図7図7は、図6に示す一つの板状物の分割予定ラインの切削が完了した切削ユニットを上昇させた状態を一部断面で示す側面図である。
図8図8は、図7に示す状態から他の板状物の分割予定ラインを切削する状態を一部断面で示す側面図である。
図9図9は、図8に示された板状物を示す平面図である。
図10図10は、実施形態2に係る板状物の切削方法の切削ステップにおいて、一つの板状物の分割予定ラインの切削の終了後に他の板状物の分割予定ラインを切削する状態を一部断面で示す側面図である。
図11図11は、図10に示された板状物を示す平面図である。
図12図12は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る板状物の切削方法の加工対象の被加工物の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る板状物の切削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る板状物の切削方法が用いる切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る板状物の切削方法の加工対象の被加工物の平面図である。
【0011】
実施形態1に係る板状物の切削方法は、図1に示す切削装置1を用いて板状物100を分割する方法である。実施形態1に係る板状物の切削方法の加工対象である板状物100は、平板状に形成され、例えば、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ基板である。板状物100は、図2に示すように、表面101に互いに交差(実施形態1では、直交)する複数の分割予定ライン102によって区画された複数の領域にデバイス103が配設されている。板状物100は、表面101の裏面104に粘着テープ110が貼着され、粘着テープ110の外周に環状フレーム111が貼着されることで、環状フレーム111と一体となっている。
【0012】
また、板状物100は、一つの粘着テープ110に複数枚貼着されて、複数枚の板状物100が環状フレーム111と一体となっている。一つの粘着テープ110に貼着される複数枚の板状物100は、互いに交差する分割予定ライン102のうちいずれの延長線上にも三枚以上の板状物100が隣接しないように配置されている。即ち、一つの粘着テープ110に貼着される複数枚の板状物100は、互いに交差する分割予定ライン102のうちいずれの延長線上に最大で二枚並ぶように配置されている。
【0013】
なお、実施形態1において、板状物100は、図2に示すように、互いに交差する分割予定ライン102の双方の延長線上に二つ並ぶように一つの粘着テープ110に4枚貼着されているが、本発明では、板状物100が一つの粘着テープ110に貼着される数は、4枚に限定されないとともに、粘着テープ110に対する複数枚の板状物100の配置は、図2に示された配置に限定されない。なお、実施形態1において、板状物100は、パッケージ基板であるが、本発明では、パッケージ基板に限定されることなく、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハ、セラミックス板又はガラス板でも良い。
【0014】
実施形態1に係る板状物の切削方法で用いられる切削装置1は、図1に示すように、板状物100を保持面11で吸引保持する保持手段であるチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持した板状物100をスピンドル21に装着した切削ブレード22で切削する切削手段である切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された板状物100を撮像する撮像ユニット30と、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動手段である移動ユニット40と、各構成要素を制御する制御ユニット50とを少なくとも有する。
【0015】
移動ユニット40は、チャックテーブル10を鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転駆動源41と、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット42と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りする図示しないY軸移動ユニットと、切削ユニット20をZ軸方向に切り込み送りする図示しないZ軸移動ユニットとを少なくとも備える。
【0016】
チャックテーブル10は、板状物100を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成された円盤形状である。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット42によりX軸方向に移動自在で回転駆動源41によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、ポーラスセラミック等から形成された保持面11が図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10は、保持面11に環状フレーム111に一体となった板状物100が粘着テープ110を介して載置され、保持面11が真空吸引源により吸引されることで、環状フレーム111に一体となった複数枚の板状物100を吸引保持する。なお、チャックテーブル10は、環状フレーム111に一体となった複数枚の板状物100を分割予定ライン102の延長線上に三枚以上の板状物100が隣接しない状態で複数枚の板状物100を保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、環状フレーム111をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0017】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された板状物100を切削する切削ブレード22を装着するスピンドル21を備えるものである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された板状物100に対して、Y軸移動ユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0018】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット及びZ軸移動ユニットにより、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード22を位置付け可能となっている。切削ブレード22は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドル21は、切削ブレード22を回転させることで板状物100を切削する。スピンドル21は、スピンドルハウジング23内に回転自在に収容されている。切削ユニット20は、スピンドル21に切削ブレード22を装着することにより、切削ブレード22を回転可能に保持する。切削ユニット20のスピンドル21及び切削ブレード22の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニットによりY軸方向に割り出し送りされるとともにZ軸移動ユニットに切り込み送りされながら、X軸移動ユニット42によりチャックテーブル10がX軸方向に切削送りされることにより、板状物100を切削する。
【0019】
また、切削ユニット20には、切削中に切削ブレード22の板状物100を切削する切削点25(図4に示す)に純水からなる切削水26(図4に示す)を供給する切削水供給手段である切削水供給ノズル24が取り付けられている。即ち、切削装置1は、切削水供給手段である切削水供給ノズル24を備えている。なお、切削点25とは、切削ブレード22の外縁の切り刃のうちの板状物100を切削している部分をいう。切削水供給ノズル24から切削ブレード22の切削点25に供給された切削水26は、切削点25から切削ブレード22の回転方向に連れ回って切削点25での接線方向に沿うようにして排出される。
【0020】
また、切削装置1は、切削前後の板状物100を収容するカセット60が載置されかつカセット60をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ70と、切削後の板状物100を洗浄する洗浄ユニット80と、板状物100をカセット60とチャックテーブル10と洗浄ユニット80との間で搬送する搬送ユニット90とを備える。
【0021】
撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された板状物100の表面101を撮像する。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持した板状物100の表面101を撮像する図示しないCCD(Charge Coupled Device)撮像素子を備えている。撮像ユニット30は、板状物100を撮像して、板状物100と切削ブレード22との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット50に出力する。
【0022】
制御ユニット50は、切削装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、板状物100に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット50は、コンピュータである。制御ユニット50は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット50の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。また、制御ユニット50は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニット及びオペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0023】
次に、切削装置1を用いた板状物の切削方法、即ち切削装置1の加工動作について説明する。図3は、実施形態1に係る板状物の切削方法の流れを示すフローチャートである。図4は、図3に示された板状物の切削方法の切削ステップの一つの板状物の分割予定ラインを切削する状態を一部断面で示す側面図である。図5は、図4に示された板状物を示す平面図である。図6は、図4に示す一つの板状物の分割予定ラインの切削が完了した状態を一部断面で示す側面図である。図7は、図6に示す一つの板状物の分割予定ラインの切削が完了した切削ユニットを上昇させた状態を一部断面で示す側面図である。図8は、図7に示す状態から他の板状物の分割予定ラインを切削する状態を一部断面で示す側面図である。図9は、図8に示された板状物を示す平面図である。なお、図5及び図9に示す板状物100の平面図は、切削前の分割予定ライン102を点線で示し、切削済の分割予定ライン102を実線で示す。
【0024】
実施形態1に係る板状物の切削方法(以下、単に切削方法と記す)は、図1に示す切削装置1を用いて、板状物100を任意の分割予定ライン102に沿って分割する方法である。切削方法は、オペレータが加工内容情報を制御ユニット50に登録し、板状物100を収容したカセット60をカセットエレベータ70に設置し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1により開始される。
【0025】
切削方法は、図3に示すように、保持ステップST1と、切削ステップST2とを備える。保持ステップST1は、複数枚の板状物100をチャックテーブル10の保持面11に保持するステップである。保持ステップST1では、制御ユニット50は、搬送ユニット90に切削前の板状物100をカセット60から取り出させてチャックテーブル10に載置させ、チャックテーブル10の保持面11に板状物100を吸引保持するとともに、クランプ部12に環状フレーム111をクランプさせる。保持ステップST1は、一つの粘着テープ110に貼着された複数枚の板状物100をチャックテーブル10に保持することにより、分割予定ライン102の延長線上に三枚以上の板状物100が隣接しないように、即ち、互いに交差する分割予定ライン102のうち少なくとも一方の延長線上に二枚並ぶように複数枚の板状物100をチャックテーブル10に保持する。切削方法は、チャックテーブル10の保持面11に複数枚の板状物100を吸引保持すると、切削ステップST2に進む。
【0026】
切削ステップST2は、切削点25に供給される切削水26を切削ブレード22の回転方向につれ回って排出しながら板状物100を切削するステップである。切削ステップST2では、制御ユニット50は、加工内容情報に基づいて、X軸移動ユニット42とY軸移動ユニットとZ軸移動ユニットと回転駆動源41により、切削水供給ノズル24から切削水26を供給しながら切削ユニット20の回転する切削ブレード22と板状物100とを分割予定ライン102に沿って相対的に移動させて、切削ブレード22を各板状物100の分割予定ライン102に粘着テープ110まで切り込ませて、板状物100を切削して、個々のデバイス103に分割する。
【0027】
切削ステップST2では、制御ユニット50は、粘着テープ110に貼着されたすべての板状物100のすべての分割予定ライン102を切削して、粘着テープ110に貼着されたすべての板状物100を個々のデバイス103に分割すると、チャックテーブル10を切削ユニット20の下方から退避させた後、チャックテーブル10の吸引保持を解除させるとともにクランプ部12のクランプを解除させる。制御ユニット50は、搬送ユニット90に切削後の板状物100を洗浄ユニット80に搬送させ、洗浄ユニット80で洗浄した後カセット60に収容する。制御ユニット50は、カセット60に収容されたすべての板状物100を切削するまで、保持ステップST1と切削ステップST2とを繰り返し、カセット60に収容されたすべての板状物100を切削すると、切削方法を終了する。
【0028】
また、切削ステップST2では、制御ユニット50は、粘着テープ110に貼着された複数枚の板状物100それぞれの最初の分割予定ライン102を切削する前に、各板状物100を撮像ユニット30に撮像させる。制御ユニット50は、各板状物100の分割予定ライン102と、切削ユニット20の切削ブレード22との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を施し、各板状物100と切削ユニット20との相対位置を調整するアライメントを遂行する。
【0029】
また、切削ステップST2では、例えば、粘着テープ110に貼着された複数枚の板状物100のうちの図2中左上の板状物100(以下、符号100−1で示す)のX軸方向と平行な図2中の最も上方に位置する分割予定ライン102(以下、符号102−1で示す)を切削した直後に、図2中右上の板状物100(以下、符号100−2で示す)のX軸方向と平行な図2中の最も上方でかつ分割予定ライン102−1と同一線上又は略同一線上に位置する分割予定ライン102(以下、符号102−2で示す)を連続して切削する際には、制御ユニット50は、以下のように各構成要素を制御する。
【0030】
板状物100−1の分割予定ライン102−1を切削する際には、制御ユニット50は、切削点25から排出される切削水26が、切削点25からチャックテーブル10の外周に向かう方向に切削ブレード22を回転させる。切削点25から排出される切削水26が切削点25からチャックテーブル10の外周に向かう方向とは、切削点25からチャックテーブル10の中心に近付くことなく、常にチャックテーブル10の中心から離れてチャックテーブル10の外周に向かう方向をいう。
【0031】
また、板状物100−1の分割予定ライン102−1を切削する際には、制御ユニット50は、図4に示すように、切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から板状物100−1の分割予定ライン102−1に切り込ませて、図1に示すX軸移動ユニット42に切削ブレード22がチャックテーブル10の中心に向かうようにチャックテーブル10をX軸方向に沿ってカセット60から離れる方向に移動させる。すると、切削水26が排出される方向である排出方向200(図5に矢印で示す)は、板状物100−1から板状物100−2に向かうことなく、チャックテーブル10の外周に向かうこととなる。
【0032】
制御ユニット50は、図6に示すように、板状物100−1の分割予定ライン102−1を切削し終えると、図1に示すX軸移動ユニット42にチャックテーブル10の移動を停止させる。制御ユニット50は、図7に示すように、Z軸移動ユニットに切削ユニット20を上昇させて切削ブレード22をチャックテーブル10から退避させる。制御ユニット50は、回転駆動源41にチャックテーブル10を軸心回りに90度回転させた後、図1に示すX軸移動ユニット42にチャックテーブル10をカセット60に近づく方向に移動させる。制御ユニット50は、図8に示すように、切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から板状物100−2の分割予定ライン102−2に切り込ませて、X軸移動ユニット42に切削ブレード22がチャックテーブル10の中心に向かうようにチャックテーブル10をX軸方向に沿ってカセット60から離れる方向に移動させる。すると、切削水26が排出される排出方向200(図9に矢印で示す)は、板状物100−2から板状物100−1に向かうことなく、チャックテーブル10の外周に向かうこととなる。このように、本発明において、切削水26が排出される方向である排出方向200が、板状物100−1,100−2から板状物100−2,100−2に向かうことなく、チャックテーブル10の外周に向かうとは、排出方向200が、切削点25からチャックテーブル10の中心に近付くことなく、常にチャックテーブル10の中心から離れてチャックテーブル10の外周に向かう方向であることを示している。
【0033】
こうして、切削ステップST2では、切削方法及び制御ユニット50は、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から内周側に切り込ませた後、分割予定ライン102−1の切削直後に連続して直前に切削済の分割予定ライン102−1と同一線上に位置する他の板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する。切削ステップST2では、切削方法及び制御ユニット50は、分割予定ライン102−1の切削直後に連続して、板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する際に、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1の切削後に切削ブレード22をチャックテーブル10から上昇させて退避させた後、チャックテーブル10を軸心回りに90度回転させる。そして、切削ステップST2では、切削方法及び制御ユニット50は、他の板状物100−2の分割予定ライン102−2に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から内周側に切り込ませる。
【0034】
こうして、実施形態1に係る切削方法において、制御ユニット50は、切削ユニット20が複数枚の板状物100,100−1,100−2を切削する際に、切削中に切削ブレード22の回転によって切削ブレード22から切削水26が排出される排出方向200が、他の板状物100,100−1,100−2でなくチャックテーブル10の外周に向かうように、切削ユニット20と移動ユニット40とのうちの少なくとも一方を制御する。即ち、実施形態1に係る切削方法は、切削ステップST2において、切削水26が排出される排出方向200が、隣接する他の板状物100でなくチャックテーブル10の外周に向かうように、切削ブレード22を回転させながら切削する。なお、実施形態1に係る切削方法において、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1の切削後に切削ブレード22をチャックテーブル10から退避させて、チャックテーブル10を90度回転するが、本発明では、切削ブレード22の退避後のチャックテーブル10を回転する角度は、90度に限定されることなく、粘着テープ110に貼着された複数の板状物100,100−1,100−2同士の位置関係により適宜変更しても良い。例えば、本発明は、板状物100−1及び板状物100−1の図5中の下方に保持される板状物100の分割予定ライン102−1と同一方向の分割予定ライン102を全て切削した後に、チャックテーブル10を180度回転させ、板状物100−2及び板状物100−2の図5中の下方に保持された板状物100の分割予定ライン102−2と同一方向の分割予定ライン102を全て切削する。その後、本発明は、チャックテーブル10を90度回転させて同一の工程を繰り返しても良い。
【0035】
実施形態1に係る切削方法は、切削ステップST2において、切削水26が排出される排出方向200が、隣接する他の板状物100でなくチャックテーブル10の外周に向かうように、切削ブレード22を回転させながら切削するので、切削中に切削水26が板状物100,100−1,100−2に付着することを抑制することができる。その結果、切削方法は、切削水26中の切削屑が板状物100,100−1,100−2に付着することを抑制することができる。
【0036】
また、実施形態1に係る切削方法は、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から切り込ませて、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1の切削直後に連続して他の板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する前に、切削ブレード22を退避させた後、チャックテーブル10を軸心回りに回転して、他の板状物100−2の分割予定ライン102−2に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から切り込ませる。このために、切削方法は、常に、板状物100,100−1,100−2の分割予定ライン102,102−1,102−2に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から切り込ませることとなり、切削水26が板状物100,100−1,100−2に付着することを抑制することができる。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る板状物の切削方法を図面に基づいて説明する。図10は、実施形態2に係る板状物の切削方法の切削ステップにおいて、一つの板状物の分割予定ラインの切削の終了後に他の板状物の分割予定ラインを切削する状態を一部断面で示す側面図である。図11は、図10に示された板状物を示す平面図である。なお、図11に示す板状物100,100−1,100−2の平面図は、切削前の分割予定ライン102,102−2を点線で示し、切削済の分割予定ライン102−1を実線で示す。また、図10及び図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
実施形態2に係る板状物の切削方法(以下、単に切削方法と記す)は、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1の切削直後に連続して他の板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する際の切削ユニット20及び移動ユニット40の動作が異なること以外、実施形態1の切削方法と同じである。
【0039】
実施形態2に係る切削方法の切削ステップST2では、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1を切削し終えて、Z軸移動ユニットに切削ユニット20を上昇させて切削ブレード22をチャックテーブル10から退避させた後、制御ユニット50は、切削ユニット20のスピンドル21に切削ブレード22を逆向きに回転させると共に、X軸移動ユニット42にチャックテーブル10をカセット60から離れる方向に移動させる。制御ユニット50は、図10に示すように、切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から板状物100−2の分割予定ライン102−2に切り込ませて、X軸移動ユニット42に切削ブレード22がチャックテーブル10の中心に向かうようにチャックテーブル10をX軸方向に沿ってカセット60に近付く方向に移動させる。すると、切削水26が排出される排出方向200−2(図11に矢印で示す)は、板状物100−2から板状物100−1に向かうことなく、チャックテーブル10の外周方向に向かうこととなる。
【0040】
こうして、切削ステップST2では、切削方法及び制御ユニット50は、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から内周側に切り込ませた後、分割予定ライン102−1の切削直後に連続して直前に切削済の分割予定ライン102−1と同一線上に位置する他の板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する。切削ステップST2では、切削方法及び制御ユニット50は、分割予定ライン102−1の切削直後に連続して、板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する際に、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1の切削後に切削ブレード22をチャックテーブル10から上昇させて退避させた後、切削ブレード22を逆向きに回転させる。そして、切削ステップST2では、切削方法及び制御ユニット50は、他の板状物100−2の分割予定ライン102−2に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から内周側に切り込ませる。
【0041】
こうして、実施形態2に係る切削方法において、制御ユニット50は、切削ユニット20が複数枚の板状物100,100−1,100−2を切削する際に、切削中に切削ブレード22の回転によって切削ブレード22から切削水26が排出される排出方向200−2が、チャックテーブル10の外周に向かうように、切削ユニット20と移動ユニット40とのうちの少なくとも一方を制御する。即ち、実施形態2に係る切削方法は、切削ステップST2において、切削水26が排出される排出方向200−2が、隣接する他の板状物100でなくチャックテーブル10の外周に向かうように、切削ブレード22を回転させながら切削する。
【0042】
実施形態2に係る切削方法は、切削ステップST2において、切削水26が排出される排出方向200−2が、隣接する他の板状物100でなくチャックテーブル10の外周に向かうように、切削ブレード22を回転させながら切削するので、切削中に切削水26が板状物100に付着することを抑制することができる。その結果、切削方法は、実施形態1と同様に、切削水26中の切削屑が板状物100に付着することを抑制することができる。
【0043】
また、実施形態2に係る切削方法は、一つの板状物100の分割予定ライン102に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から切り込ませて、一つの板状物100−1の分割予定ライン102−1の切削直後に連続して他の板状物100−2の分割予定ライン102−2を切削する前に、切削ブレード22を退避させた後、切削ブレード22を逆向きに回転させて、他の板状物100−2の分割予定ライン102−2に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から切り込ませる。このために、切削方法は、常に、板状物100,100−1,100−2の分割予定ライン102,102−1,102−2に切削ブレード22をチャックテーブル10の外周側から切り込ませることとなり、切削水26が板状物100,100−1,100−2に付着することを抑制することができる。
【0044】
〔変形例〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例に係る板状物の切削方法を図面に基づいて説明する。図12は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る板状物の切削方法の加工対象の被加工物の平面図である。図12は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
実施形態1及び実施形態2に係る板状物の切削方法では、板状物100は、図2に示すように、互いに交差する分割予定ライン102の双方の延長線上に二枚並ぶように一つの粘着テープ110に4枚貼着されている。しかしながら、変形例に係る板状物の切削方法では、板状物100は、図12に示すように、互いに交差する分割予定ライン102の一方の延長線上に二枚並び(即ち、互いに交差する分割予定ライン102の一方の延長線上に三枚以上の板状物100が隣接せず)、かつ互いに交差する分割予定ライン102の他方の延長線上に二枚並ぶ(即ち、互いに交差する分割予定ライン102の他方の延長線上に三枚以上の板状物100が隣接しない)ように、一つの粘着テープ110に複数枚(図12に示す場合には、6枚)貼着されている。
【0046】
変形例に係る切削方法は、切削ステップST2において、切削水26が排出される排出方向200が、隣接する他の板状物100でなくチャックテーブル10の外周に向かうように、切削ブレード22を回転させながら切削するので、切削中に切削水26が板状物100に付着することを抑制することができる。その結果、切削方法は、実施形態1と同様に、切削水26中の切削屑が板状物100に付着することを抑制することができる。
【0047】
なお、前述した実施形態1、実施形態2及び変形例に係る板状物の切削方法によれば、以下の切削装置が得られる。
(付記1)
少なくとも一つの板状物の分割予定ラインの延長線上に他の板状物が位置する状態で複数枚の板状物を保持する保持手段と、
切削ブレードを回転可能に保持する切削手段と、
該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給手段と、
該保持手段と該切削手段とを相対的に移動させる移動手段と、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備えた切削装置であって、
該制御ユニットは、該切削手段が複数枚の該板状物を切削する際に、切削中に該切削ブレードの回転によって該切削ブレードから該切削水が排出される方向が、他の該板状物でなく該保持手段の外周に向かうように、該切削手段と該移動手段との少なくとも一方を制御する、
ことを特徴とする切削装置。
【0048】
上記切削装置は、実施形態1等に係る切削方法と同様に、切削ステップにおいて、切削水が排出される排出方向が、隣接する他の板状物でなくチャックテーブルの外周に向かうように、切削ブレードを回転させながら切削するので、切削中に切削水が板状物に付着することを抑制することができる。その結果、切削装置は、実施形態1等と同様に、切削水中の切削屑が板状物に付着することを抑制することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 切削装置
10 チャックテーブル(保持手段)
20 切削ユニット(切削手段)
22 切削ブレード
24 切削水供給ノズル(切削水供給手段)
25 切削点
26 切削水
100,100−1,100−2 板状物
102,102−1,102−2 分割予定ライン
200,200−2 排出方向(排出される方向)
ST1 保持ステップ
ST2 切削ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12