(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パルス光ビームに関連付けられた中心波長と、前記パルス光ビームの第1の複数のパルスの実際の波長とに基づく、前記パルス光ビームの第1の波長エラーを決定することと、
光源内のファンによって引き起こされる外乱の周波数を決定することであって、前記周波数は前記パルス光ビームの時間繰り返し率に伴って変動するエイリアシングされた周波数であることと、
前記エイリアシングされた周波数に基づく補正を前記パルス光ビームに適用することと、
前記中心波長と、前記補正が前記パルス光ビームに適用された後に生じる前記パルス光ビームの第2の複数のパルスの実際の波長とに基づく、前記パルス光ビームの第2の波長エラーを決定することと、を含む方法であって、
前記第2の波長エラーの変動が、前記第1の波長エラーの変動より小さい、
方法。
前記パルス光ビームに補正を適用することは、前記光源内を伝搬する光と相互作用するように位置決めされた光学素子を含む光学アセンブリに前記決定された補正波形を適用することを含み、前記光学アセンブリに対する前記補正波形の適用は、前記光学素子を移動させるために十分な適用である、請求項2に記載の方法。
パルス光ビームを生成するように構成された光源であって、前記パルス光ビームは中心波長に関連付けられ、前記光源は、チャンバと、前記チャンバ内のガス状利得媒体と、少なくとも1つの光学素子を含む光学アセンブリと、前記チャンバ内で前記ガス状利得媒体を循環させるように構成されたファンとを備える、光源と、
前記光源と通信するように構成された制御システムと、を備えるシステムであって、
前記制御システムは、
前記中心波長と、パルス光ビームの第1の複数のパルスの実際の波長とに基づく、前記パルス光ビームの第1の波長エラーを決定することと、
前記光源内の前記ファンによって引き起こされる外乱の周波数を決定することであって、前記周波数は前記パルス光ビームの時間繰り返し率に伴って変動するエイリアシングされた周波数であることと、
前記エイリアシングされた周波数に基づく補正を前記パルス光ビームに適用することと、
前記中心波長と、前記補正が前記パルス光ビームに適用された後に生じる前記パルス光ビームの第2の複数のパルスの実際の波長とに基づく、前記パルス光ビームの第2の波長エラーを決定することと、を行うように動作可能であり、
前記第2の波長エラーの変動が、前記第1の波長エラーの変動より小さい、
システム。
前記制御システムは、前記ライン中心解析モジュールから、前記第1の複数のパルスにおける前記パルスの波長が示されることに基づいて、前記第1の複数のパルスの前記実際の波長を決定するように動作可能であり、かつ、前記制御システムは、前記ライン中心解析モジュールから、2度目に前記パルス光ビームの波長が示されることに基づいて、前記第2の複数のパルスの前記第2の実際の波長を決定するように動作可能である、請求項13に記載のシステム。
前記制御システムが前記パルス光ビームに補正を適用するように動作可能であることは、前記制御システムが前記光源の前記光学アセンブリに補正波形を適用するように動作可能であることを含み、前記補正波形は、前記光学アセンブリの前記少なくとも1つの光学素子を移動させるために十分なものである、請求項12に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
光源(または光放射源)における外乱を能動的かつ継続的に補償および/または排除するための技術が開示される。そのような外乱は、1つまたは複数の周波数またはトーンからなる狭帯域の外乱とすることができ、各周波数またはトーンは、単一の周波数に存在するか、またはいくつかの周波数からなる帯域にまたがって存在する。光源が生成する光が有する波長は、名目上は中心波長にある。光学的光放射源の動作中、生成された光の波長は、この中心波長から外れる場合がある。ある期間にわたって放射源から放出される光の一部分における実際の波長と中心波長との差が、時間の関数としての波長エラーとなる。この波長エラーは、周波数の関数としての波長エラーに変換することができ、これは、各周波数が波長エラーにどのように寄与しているかを示す尺度をもたらす。波長シグマとは、光源から放出された光の決められたパルス数における波長エラーの変動(標準偏差)である。以下で説明する補償技術は、波長シグマを低減し、それに応じて、光源を使用してマイクロ電子フィーチャのパターンをウェーハ上に形成するフォトリソグラフィシステムにおけるコントラストおよび画像品質を向上させる。
【0019】
図1を参照すると、フォトリソグラフィシステム100は、ウェーハ120に光ビーム160を供給する光源(または光放射源)105を含む。フォトリソグラフィシステム100は、ウェーハ120を収容するリソグラフィ露光装置115も含む。リソグラフィ露光装置115は、投影光学システム125を含む。例えば、放射感応性フォトレジスト材料層をウェーハ120上に堆積し、マスクされたフォトレジスト層を光ビーム160で露光することで、ウェーハ120上にマイクロ電子フィーチャが形成される。リソグラフィ露光装置115は、液浸システムとすることも乾式システムとすることもできる。フォトリソグラフィシステム100は、光放射源105からの光の放出を制御するコントローラ170も含む。
【0020】
光ビーム160は、中心波長を中心として分散された複数の波長からなる帯域に放射される。フォトリソグラフィシステム100によってウェーハ120上に印刷可能な最小フィーチャサイズであるクリティカルディメンジョン(CD)は、光ビーム160の波長に依存する。ウェーハ120に印刷されたマイクロ電子フィーチャと、フォトリソグラフィシステム100によって露光された他のウェーハに印刷されたマイクロ電子フィーチャに関して均一のCDを維持するためには、光ビーム160の波長が中心波長に留まるか、または、中心波長から一定の波長範囲に留まる必要がある。光ビーム160の公称または所望の中心周波数と、実際の周波数または測定周波数との差が波長エラーとなる。
【0021】
光ビーム160の一部分について、波長エラーは時間の関数として求めることができる。例えば、複数の異なる時点で光ビーム160の波長をサンプリングし、その都度、測定された周波数を中心周波数と比較することで波長エラーを求めることができる。光ビーム160がパルスビームである実施態様においては、多数の、場合により、例えば、数百ものパルスを含む1バースト中の全てのパルスまたはその一部分について波長エラーを求めることができる。この時間ブロックまたはバーストに関する波長エラーの周波数成分は、例えば、時間的波長エラーデータにフーリエ変換を適用することで、時間の関数としての波長エラーを周波数の関数に変換することによって求めることができる。この変換の結果から、異なる周波数における波長エラーの相対的寄与(または相対的パワー)が明らかになり、これは、波長エラーのパワースペクトル密度(PSD)と呼ばれる。波長エラーのPSDの標準偏差が波長シグマとなる。スリット内(in-slit)帯域幅の変動と同様に、波長シグマの変動はコントラストに影響し、したがって、画像品質に影響を及ぼす。そのため、波長シグマの低減は、フォトリソグラフィシステム100の性能を向上させる。
【0022】
光源105における狭帯域の外乱は、波長シグマの増加を引き起こす場合がある。この狭帯域の外乱は、周波数スペクトルのうちの1つの周波数にのみ存在するか、またはいくつかの周波数からなる帯域内に存在するいずれかの外乱である。例えば、狭帯域の外乱は、単一周波数(単位:ヘルツ(Hz))のみを含む帯域内に存在する場合がある。別の例では、狭帯域の外乱は、中心周波数と関連付けられ、かつ、ある周波数範囲にわたって広がる帯域を有する外乱であり得る。狭帯域の外乱の最大振幅は中心周波数において生じる場合があり、中心周波数以外の周波数においては、外乱の大きさが著しく減衰し、急激に減少し、かつ/または、存在しない場合がある。狭帯域の外乱の帯域は、例えば、中心周波数の両側に位置する2つの周波数(第1の周波数および第2の周波数)の間の連続する周波数範囲または周波数域とすることができ、ここで、第1の周波数は中心周波数よりも低い周波数であり、第2の周波数は中心周波数より高い周波数である。例えば、第1および第2の周波数は、中心周波数にもっとも近く、中心周波数における狭帯域の外乱の大きさより3デシベル(dB)小さい外乱の大きさとなる周波数とすることができる。この場合、第1の周波数と第2の周波数の差の絶対値が狭帯域の外乱の帯域(ヘルツ)となる。この帯域は、例えば、10ヘルツ以下とすることができる。いくつかの実施態様では、狭帯域の外乱は、各々が異なる別個の中心周波数と帯域とを有する複数のトーンからなる。
【0023】
狭帯域の外乱は、例えば、周期的または規則的に移動する光源105内のコンポーネントによって引き起こされる場合があり、これがビーム経路に外乱を誘発しパルスビームの波長エラーを増加させ得る。狭帯域の外乱は、その外乱に関連付けられる周波数において波長エラーのスパイクまたは急上昇をもたらすため、狭帯域の外乱が存在すると、波長エラーのPSDは、この外乱の周波数にスパイクを含むことになる。このスパイクのため、光源105に狭帯域の外乱がある場合、PSDの標準偏差が増加する傾向にあり、したがって、波長シグマも増加する傾向にある。
【0024】
上述のように、狭帯域の外乱は、各々が異なる別個の中心周波数と帯域とを有する複数のトーンからなる場合がある。その例として、基本周波数と、該基本周波数の高調波を有する狭帯域の外乱がある。この場合、波長エラーのPSDは、基本周波数および基本周波数の高調波の出力(dB/ヘルツ)にスパイクを含む。
【0025】
狭帯域の外乱の特性は、光源105の動作中に変化する場合がある。例えば、外乱の性質が音響的である場合、周波数に加えて、狭帯域の外乱の振幅および位相に対し、温度が影響を及ぼす場合がある。そのため、光源105の動作中、狭帯域の外乱の特性が動的に推定される。狭帯域の外乱の特性としては、外乱の振幅、位相および周波数が含まれ得る。これらの特性は、時間とともに変動し得る推定値を有する状態としてモデル化することができる。
【0026】
狭帯域の外乱は、単一周波数か、または数ヘルツの帯域内にのみ存在するので、いったん狭帯域の外乱の特性が推定されると、推定された特性に基づく対応する補正波形によってこの狭帯域の外乱を打ち消すことができる。補正波形は、例えば、狭帯域の外乱と同じ周波数および大きさを有し、かつ狭帯域の外乱に対して180度ずれた位相を有する正弦曲線とすることができる。補正波形が適用されると、波長エラーのPSDに見られる、外乱の周波数での寄与は減少する。このようにして、波長シグマを低減することができる。
【0027】
いくつかの実施態様では、制御システム170は、光ビーム160の波長エラーを低減する別の補正または補償に加えて上記の補正波形を適用することで、結果として、システム全体のさらなる性能向上が図られる。
【0028】
図4A、
図4Bおよび
図5において狭帯域の外乱の影響を打ち消すための補正波形について説明する前に、
図2により光放射源105の例を示す。
【0029】
図2も参照すると、例示的な光放射源205が、フォトリソグラフィシステム200の光放射源105(
図1)として使用されている。光放射源205は、パルス光ビーム260を生成し、生成されたパルス光ビームがリソグラフィ装置115に供給される。フォトリソグラフィシステム200には、光放射源205のコンポーネントやリソグラフィ露光装置155に接続されて、該システム200の様々な動作を制御する制御システム270も含まれる。
【0030】
光放射源205は、例えば、(レーザビームとすることができる)パルス光ビーム260を出力するエキシマ光放射源とすることができる。パルス光ビーム260は、リソグラフィ装置115に入射すると、投影光学システム125を通って誘導され、ウェーハ120上に投影される。このようにして、1つまたは複数のマイクロ電子フィーチャのパターンがウェーハ120のフォトレジスト上に形成され、その後、エッチングおよびクリーニングが行われ、そして、このプロセスが繰り返される。
【0031】
図2の例では、光放射源205は、出力増幅器(PA)230にシード光ビーム224を提供する主発振器(MO)212を含む2段式のレーザシステムである。主発振器212は、比較的低出力のパルスエネルギー、例えば、出力増幅器230によって約10〜15ミリジュール(mJ)に増幅される1〜1.5mJのパルスエネルギーで、中心周波数や帯域幅等のパラメータの精細な調整を可能にする。出力増幅器230は、主発振器212からシード光ビーム224を受け取り、これを増幅して、リソグラフィ装置115において使用される光ビーム260を生成する。
【0032】
主発振器212は、2つの細長い電極217と、混合ガスである利得媒体219と、電極217の間にガスを循環させるためのファンまたは送風機とを有する放電チャンバ214を含む。放電チャンバ214の一方の側にあるライン狭幅化モジュール216と、放電チャンバの第2の側にある出力カプラ218との間に共振器が形成される。ライン狭幅化モジュール216は、放電チャンバ214のスペクトル出力を精細に調整する回折格子等の回折型光学部品を含むことができる。また、主発振器212は、出力カプラ218からの出力光ビームを受け取るライン中心解析モジュール220と、出力光ビームのサイズまたは形状を必要に応じて修正してシード光ビーム224を形成するビーム修正光学システム222とを含む。ライン中心解析モジュール220は、シード光ビーム224の波長を測定または監視するために使用することのできる測定システムである。ライン中心解析モジュール220は、光放射源205内の別の位置に配置することも、光放射源205の出力部に配置することもできる。
【0033】
放電チャンバ214で使用される混合ガスは、その用途によって必要となる波長および帯域幅で光ビームを生成するのに適した任意のガスとすることができる。例えば、エキシマ放射源の場合、混合ガスは、バッファガスとしてのヘリウムおよび/またはネオンの他に、アルゴン、クリプトンまたはキセノン等の貴ガス(希ガス)と、フッ素または塩素等のハロゲンとを含むことができる。具体例として、混合ガスは、約193nmの波長の光を放出するフッ化アルゴン(ArF)、約248nmの波長の光を放出するフッ化クリプトン(KrF)、または約351nmの波長の光を放出する塩化キセノン(XeCl)を含む。エキシマ利得媒体(混合ガス)は、細長い電極217に電圧を印加することによる高圧放電における短い(例えば、ナノ秒の)電流パルスによって励起される。
【0034】
出力増幅器230は、主発振器212からのシード光ビーム224を受け取り、この光ビームを放電チャンバ240に通してビーム転向光学素子252まで誘導するビーム修正光学システム232を含み、ビーム転向光学素子252は、シード光ビーム224が放電チャンバに戻るようにシード光ビーム224の方向を修正または変更する。
【0035】
放電チャンバ240は、一対の細長い電極241と、混合ガスである利得媒体249と、電極241の間に混合ガスを循環させるためのファンとを含む。
【0036】
出力光ビーム260は、帯域幅解析モジュール262を通過するように誘導され、ここでビーム260の各種パラメータ(例えば、帯域幅または波長)の測定を行うことができる。出力光ビーム260は、パルス伸長器を通過するように誘導することもでき、ここでは、リソグラフィ装置115に入射する光ビームの性能特性に合わせて調節するため、例えば、光遅延ユニットにおいて出力光ビーム260の各パルスが時間的に引き伸ばされる。
【0037】
制御システム270は、光放射源205の様々なコンポーネントに接続されている。例えば、制御システム270は、主発振器212内の電極217と出力増幅器230内の電極241にそれぞれ結合されて、主発振器212および出力増幅器230それぞれのパルスエネルギーを制御し、さらにパルス繰り返し率も制御する。かかるパルス繰り返し率の範囲は約500Hz〜12,000Hz以上とすることができる。したがって、制御システム270は、パルスおよびドーズエネルギーのフィードバック制御およびフィードフォワード制御によって、主発振器212のチャンバにおける放電と、出力増幅器230のチャンバにおける放電とを相互に繰り返し起動させる。繰り返しパルス光ビーム260は、数ワットから数百ワット、例えば、約40W〜約200Wの平均出力パワーを有することができる。出力部における光ビーム260の照射量(すなわち、単位面積あたりの平均パワー)は、少なくとも約60W/cm
2または少なくとも約80W/cm
2とすることができる。
【0038】
光放射源205の出力パワーは、100%のデューティサイクル(すなわち、光放射源205の主発振器212および出力増幅器230内の電極が連続的に点火されている状態)にて、公称パルス繰り返し率および公称パルスエネルギーで算出することができる。したがって、例えば、公称パルス繰り返し率が6,000Hz、公称パルスエネルギーが15mJの場合、光放射源205の出力パワー(すなわち、光ビーム260のパワー)は、90Wとなる。別の例として、公称パルス繰り返し率が6,000Hz、公称パルスエネルギーが20mJの場合、光放射源205の出力パワー(すなわち、光ビーム260のパワー)は、120Wとなる。
【0039】
さらに、コントローラ270は、光放射源205に1つまたは複数の信号を送信することで、いつ、光放射源205が1パルスの光を放出するか、または1つまたは複数の光パルスを含むバーストを放出するかを制御する。光ビーム260は、互いに時間的に区切られる1つまたは複数のバーストを含むことができる。各バーストは、1つまたは複数の光パルスを含むことができる。いくつかの実施態様においては、1バーストが数百パルス、例えば、100〜400パルスを含む。
【0040】
さらに
図3を参照すると、コントローラ270は、光放射源205を制御して光ビーム260でウェーハ120を露光するため、光放射源205にウェーハ露光信号300を送信するように構成することができる。このウェーハ露光信号300は、ウェーハ120の露光中は高い値305(例えば、1)を、ウェーハ120の非露光中は低い値310(例えば、0)を有することができる。また、コントローラ270は、光放射源205にゲート信号315を送信する。このゲート信号315は、パルスのバースト中には高い値320(例えば、1)を、連続するバーストとバーストの間の時間においては低い値325(例えば、0)を有する。また、コントローラは、光放射源205にトリガ信号330を送信する。このトリガ信号330は、光放射源205の各パルス中には高い値335(例えば、1)を、連続するパルスとパルスの間の時間においては低い値340(例えば、0)を有する。
【0041】
上述の通り、電極217に電圧が印加されることで利得媒体219が励起されると、利得媒体219は光を放出する。電極217にパルス状の電圧が印加されると、利得媒体219から放出される光もまたパルス状となる。そのため、パルス光ビーム260の繰り返し率は、1回の電圧印加によって1パルスの光が生成される状態での電極217に対する電圧の印加率によって決まる。例えば、トリガ信号330は、電極217に対する電圧の印加とパルス率とを制御するために用いることができる。光パルスは、利得媒体219を通って伝搬し、出力カプラ218を通ってチャンバ214を出る。したがって、電極217への電圧印加を周期的に繰り返すことでパルス列が作り出される。
【0042】
さらに
図4Aを参照すると、例示的な光学システム400のブロック図が示される。この光学システム400は、(例えば、エキシマレーザとすることができる)光源405と、制御システム450とを含む。光源405は、システム100の光放射源105またはシステム200の主発振器211として用いることができる。制御システム450は、補正波形を含む信号457(U)を光源405に提供することで、光源405によって生成される光ビーム424における波長エラー(中心波長またはその他の所望の波長とのずれ)を最小化または低減する。
【0043】
制御システム450は、測定データに基づいて狭帯域の外乱の外乱状態を動的に推定し、推定された状態に基づいて狭帯域の外乱の影響を低減または排除する補正波形を作成する狭帯域外乱モジュール470を含む。推定される外乱状態は、狭帯域の外乱の特性を表す。例えば、外乱の大きさに関する値を含む状態や、外乱の位相に関する値を含む状態によって狭帯域の外乱を表すことができる。これらの状態は、各制御事象の前に推定される。制御システム450が光源405に対して信号457を供給すると、ある制御事象が発生する。なお、以下の説明において、個々の制御事象は「k」で示される。各制御事象について外乱状態を推定することで、状態の推定値は動的なものとなる。それにより、狭帯域外乱モジュール470は、光源405に生じる狭帯域の外乱の特性が時間とともに変化する場合であってもそのような外乱を能動的に補償することが可能となる。この狭帯域外乱モジュール470を用いることで、スペクトル中の任意の周波数に存在する狭帯域の外乱を、この周波数に関する事前の情報と、光源405によって該周波数で補正波形を適用できるかに関する事前の情報とに基づいて補償することができる。
【0044】
狭帯域の外乱に加えて、光源405に生じる様々なその他の外乱や物理的影響が波長エラーに寄与する場合がある。例えば、波長エラーは、光源405内で光と交差する光学素子442の位置、ドリフト、または過渡的作用によって引き起こされる場合がある。いくつかの実施態様では、制御システム450は、狭帯域の外乱以外の影響を説明する波長推定モジュール460をさらに含む。これらの実施態様では、制御システム450は、狭帯域の外乱の影響を低減する出力を生成するとともに、追加の補償も提供する。
【0045】
光源405は、放電チャンバ414を含む発振器412を含み、放電チャンバ414は、2つの細長い電極417と、混合ガスである利得媒体419と、このガス媒体419を循環させるためのファン(または送風機)421とを有する。
図4Aの例では、ファン421が一方の電極417の下に位置決めされているが、その他の位置も可能である。例えば、ファン421は、一方の電極417の上に配置することもできる。ファン421は、チャンバ414内に利得媒体419を循環させることが可能となる任意の位置に配置することができる。
【0046】
いくつかの実施態様では、ファン421は、表面上に周方向に存在する複数のブレードを含み、これらのブレードがその中心まわりに周期的または規則的に回転する。そのような実施態様の例が
図4Cおよび
図4Dに示されており、
図4Cは、ファン421として使用することのできるファン521の斜視図を、
図4Dは、ファン521の側面斜視図を示している。ファン521は、長軸523を中心に回転する回転式ファンである。ファン521は、それぞれ隔壁526によって区切られた複数の区画524を有する外側部分522を含む。この例示的なファン521では18区画であるが、その他の数の区画を使用することも可能である。各区画524には複数のブレード528がある。ブレード528は、様々な配置が可能であり、また、様々な形状とすることが可能である。例えば、ブレード528はらせん状とすることができる。また、各区画524が同数のブレードを有することも、複数の区画においてブレード数が異なるものとすることもできる。ブレードは、規則的な配置とすることも、ランダムな位置に配置することもできる。
図4Cおよび
図4Dの例示的なファン521では、ブレード528は、二重の山形または二重のらせん状のファンブレード構成に配置されている。ファン521がファン421として使用される場合、このブレード528の配置により、ファン521の回転が利得媒体419等に与える音響上の影響を低減することができる。ファンの別の実施例が米国特許第8,855,166号に開示されており、同特許の
図13〜18等に関連して記載および説明されている。
【0047】
電極417が点火されている間に生成される音波は、ファン421の動作ブレード(ファン421がファン521として実施される場合はブレード524)に反射し、ブレードの回転周波数およびその高次高調波において利得媒体419の密度の変動をもたらす場合がある。利得媒体419におけるそのような変動は、放電チャンバ414を伝搬する光を偏向させ、それにより光の周波数を変化させ、波長エラーを引き起こす場合がある。
【0048】
放電チャンバ414の一方の側にあるライン狭幅化モジュール416と、放電チャンバ414の第2の側にある出力カプラ418との間に共振器が形成される。電極417に電圧が印加されると、利得媒体419が光を放出し、この光は、ビーム経路413に沿って共振器内を伝搬し、パルス光ビーム424を形成する。ライン狭幅化モジュール416は、例えば、共振器内を伝搬する光を反射および/または屈折させることで、かかる光と相互に作用する光学素子442を含む。光学素子442は、光ビーム424のスペクトル出力を精細に調整する回折格子等の回折型光学部品とすることができる。いくつかの実施態様では、光学素子442は、プリズム等の、光をその波長に基づいて拡散させる反射型素子である。光学素子442は、屈折型コンポーネントと反射型コンポーネントの両方を含むこともできる。光学素子442は、一部が屈折型で一部が反射型であるか、または、全てが同じタイプの素子である、光学素子群とすることもできる。
【0049】
光学素子442は、光学素子442を移動させるか、またはその形状を修正するように制御可能なアクチュエータ444に結合される。アクチュエータ444は、光学素子442を移動または形状変更させることが可能な任意のタイプのアクチュエータとすることができる。例えば、アクチュエータ444は、電圧の印加に応じて形状および/または大きさを変更する圧電型変換器(PZT)とすることができる。この場合、アクチュエータ444の形状を変更するように電圧を印加することで、光学素子442を移動させる。光学素子442は、直接的または間接的な物理的接点を介してアクチュエータ444に結合させることができる。例えば、アクチュエータ444は、光学素子442に接することも、光学素子442に接する素子(例えば、マウント等)に接することもできる。いくつかの実施態様では、アクチュエータ444は、物理的接触なしに光学素子442を移動させる。
【0050】
光源405は、出力カプラ418からの出力光ビームを受け取ってパルス光ビーム424を形成するライン中心解析モジュール420も含む。ライン中心解析モジュール420は、パルス光ビーム424のパルス波長を監視および/または測定する測定システムである。いくつかの実施態様では、ライン中心解析モジュール420は、パルス光ビーム424における各パルスの波長を測定し、その波長測定値を信号Y(458)によって制御システム450に提供する。そのような波長測定値は、測定された波長と中心波長との差を表す波長エラーとすることができる。波長測定値は、パルス光ビーム424の時間繰り返し率で提供される。パルス光ビーム424の時間繰り返し率は、制御事象の発生率とは異なるものとすることができる。
【0051】
光学システム400には、制御システム450も含まれる。制御システム450は、ライン中心解析モジュール420からのデータおよび/または信号、例えば、パルス光ビーム中の1つまたは複数のパルスの波長、または、パルス光ビーム424の時間繰り返し率を示す信号458によってもたらされるデータを受信する。このデータは、制御システムにおいて、光ビーム424の時間繰り返し率で受信される。
【0052】
制御システム450は、推定モジュール451および駆動制御装置455を含む。推定モジュール451は、時間変動アレイXとして表される、波長に影響を及ぼす外乱状態や、光源405内のコンポーネント(例えば、光学素子442)の状態を推定し、その推定値を駆動制御装置455に提供する。推定された状態に基づいて、駆動制御装置455は、光源405に印加された場合に、光源405に存在すると予測される狭帯域の外乱を補償するようにアクチュエータ444を移動させる信号U(457)を決定する。信号457は、現在印加されている信号または最近印加された信号に対する変化量を表すことができる。
【0053】
狭帯域外乱モジュール470は、狭帯域の外乱の状態を推定し、推定された状態はXに含められる。いくつかの実施態様では、2つの外乱状態、すなわち、同相成分の状態(x
i)と、直交成分の状態(x
q)とによって狭帯域の外乱をモデル化することができる。同相成分と直交成分の和は、ベクトル的に加算された場合、狭帯域の外乱を表す波形をもたらす。このようにして、狭帯域の外乱の特性化を含む状態Xを決定することで、駆動制御装置455は、他の外乱および影響の中からとくに狭帯域の外乱を打ち消す補正信号を生成することができる。
【0054】
次の制御事象(k+1)、すなわち、現在の制御事象(k)の直後に生じる制御事象が発生した際のチャンバ414内の狭帯域の外乱の状態は、以下の式(1)に示す形態の直交発振器モデルにより推定することができる。
【数1】
式(1)中、T
pは予測周期であり、wはノイズ成分であり、kは制御事象(光源405に対する信号457の供給)を示し、ωは(エイリアシングされた周波数とすることができる)狭帯域の外乱の周波数(単位:1秒あたりラジアン)である。制御事象は、例えば、6250Hzの周波数(0.16ミリ秒ごとに制御が発生)で発生し得る。予測周期T
pは、状態Xの推定値と推定値の間の時間であり、制御事象が発生する周波数の逆数に等しいか、またはそれ以上であってよい。したがって、制御事象よりも多くの予測が生じ得る。
【0055】
狭帯域の外乱の周波数(ω)は、外乱を引き起こすコンポーネントの速さ、該コンポーネントの設計、および/または時間繰り返し率に依存する。例えば、狭帯域の外乱がファン421に起因する場合、かかる狭帯域の外乱の周波数は、以下の式(2)によって与えられる。
【数2】
式(2)中、ωは狭帯域の外乱のエイリアシングされた周波数(単位:Hz)であり、hは高調波を表す1以上の整数(h=1の場合、基本周波数を表す)であり、bはファン421の周方向のブレード数を表す整数である。
【0056】
式(2)で得られるωを(適切な単位変換とともに)式(1)に用いることで、次の制御事象(k+1)が発生した場合に光源405に存在すると予測される(Xに含められる)狭帯域の外乱の状態を表す値の推定値が得られる。これら2つの推定された状態を有することとなる波形の大きさは、以下の式3から求めることができる。
【数3】
また、これら2つの状態を有することとなる波形の位相は、以下の式(4)から求めることができる。
【数4】
【0057】
したがって、式(3)および式(4)から、狭帯域の外乱と同じ大きさと、異なる位相とを有する補正波形を求めることができる。この補正波形を表すデータは、例えば、狭帯域の外乱について推定または決定されたものと等しい周波数および大きさと、狭帯域の外乱の推定された位相から180度ずれた位相とを有する正弦波電圧信号とすることができる。さらに、狭帯域の外乱の任意の次数の高調波についても補正波形を求めることができる。
【0058】
いくつかの実施態様では、推定モジュール451は、狭帯域外乱モジュール470によって与えられるモデル化以外に、外乱とシステム変動性とをモデル化する波長推定モジュール460も含む。そのような実施態様の例が
図4Bに示されている。同図は、波長推定モジュール460と狭帯域外乱モジュール470の両方を含むモデル456を有する推定モジュール451の実施態様を示すブロック図である。
【0059】
波長推定モジュール460は、アクチュエータ動態モジュール461と、二次外乱モジュール463とを含む。アクチュエータ動態モジュール461は、光学素子442および/またはアクチュエータ444の挙動を表すモデルを提供する。このモデルは、光学素子442および/またはアクチュエータ444の状態を周期的に予測するために用いることができる。光学素子442の状態としては、例えば、光学素子442の位置および/または速度を表す1つまたは複数の数値を含むことができる。
【0060】
アクチュエータ動態モジュール461は、アクチュエータ444に対する入力に応じたアクチュエータ444の物理的移動または動作を表すモデルを提供する。例えば、アクチュエータ444がPZTである場合、アクチュエータ動態モジュール461は、アクチュエータ444を二次系としてモデル化する。アクチュエータ444の状態は、時間とともに変動し得る、アクチュエータ444に関連付けられた任意の量または質とすることができる。例えば、そのような状態は、アクチュエータ444に印加される電圧とすることができる。アクチュエータ444の状態は、2以上の量または質を含むこともできる。例えば、アクチュエータの状態は、1つまたは複数の次元におけるアクチュエータの現在位置および現在速度と、アクチュエータ444に印加された直近の電圧とすることができる。二次外乱モジュール463は、狭帯域の外乱以外の、光源405における十分解明された外乱をモデル化する。例えば、二次外乱モジュール463は、経時的な波長ドリフトをモデル化することができる。
【0061】
推定モジュール451において、波長推定モジュール460の出力は、狭帯域外乱モジュール470の出力中に、または、狭帯域外乱モジュール470の出力とともに使用されて、動的状態−空間モデル480を形成する。この状態−空間モデル480は、狭帯域外乱モジュール470および波長推定モジュール460をその要素として含む行列Aおよび行列Bを含む。行列AおよびBは、更新モジュール485に提供され、更新モジュール485は、現在の制御事象におけるX
kの値と駆動信号U
kとに基づいて、次の制御事象(k+1)に関する状態アレイXを予測または推定する。状態X
k+1の推定値は、以下の式(5)から得られる。
【数5】
式(5)中、kは制御事象を表し(kは現在の制御事象であり、k+1は次の事象または直後に続く事象である)、Uは駆動制御装置455によって決定される制御信号457を表す。したがって、X
kは光源405における1つまたは複数のコンポーネントまたは条件の現在の状態であり、U
kは駆動制御装置455から直近に与えられた出力か、または駆動制御装置455からの現在の出力(信号457)である。X
kの以前の値は、電子記憶装置453に保存され、この電子記憶装置453から取得することができ、U
kの値は、駆動制御装置455から取得することができる。これにより、X
k+1を式(5)から求めることができる。
【0062】
上述の方法は、例えば、モデル456および動的状態−空間モデル480に含まれる情報等の、光源405に関する既知の先験的情報に基づいている。しかしながら、光源405に関する正確な情報であるとみなされるこの先験的情報は、システム間の違いやその他の捕捉されていない情報により完全に正確ではない場合もある。更新モジュール485の第2の機能は、ライン中心解析モジュール420から信号458を介して受け取った以前の波長測定値を使用して、状態推定値X
kを実際の値により近づくように更新し、測定データに基づく更新された測定値
【数6】
を生成することである。この測定値の更新は、例えば、カルマンフィルタを用いて行ってよい。これにより、狭帯域の外乱の大きさおよび/または位相が時間とともに変化した場合、制御システム450は狭帯域の外乱の大きさおよび/または位相を変更することが可能となる。そして、状態X
k+1の推定値は以下の式(6)から得ることができる。
【数7】
【0063】
X
k+1が求められると、推定モジュール451は、X
k+1を駆動制御装置455に提供する。駆動制御装置455は、次の制御事象(k+1)において光源405に与えられた場合、光源405および/または光源405のコンポーネントに作用して、所定の制約を充足しつつ光ビーム424の所望の波長に近い波長を達成するための信号457(U)を決定する。この所望の波長は、例えば、中心波長とすることができる。信号457を決定することは、例えば、制約を説明するXに含まれる値を考慮の上、波長エラーを最小化するように(光源405に与えられる信号)Uの値を最適化することを含み得る。この最適化に用いられる制約の例としては、Uの絶対値が閾値未満であることを挙げることができる。例えば、Uは、光学素子442を移動するためにアクチュエータ444に印加される電圧または電流を表すことができる。Uの値が大きいことを禁止する制約によれば、大電流または大電圧がアクチュエータに印加されるのを防ぐことができる。さらに、この場合、Uの値が大きいことは、狭帯域の外乱以外のものに起因するエラーがあることを示している可能性がある。上記最適化は、例えば、線形二次レギュレータ(linear quadratic regulator:LOR)として実施することができる。駆動制御装置455の出力は、現在値U
kに線形に加えられることとなる、Uに対する増分変化としてもよい。
【0064】
したがって、駆動制御装置455は、次の値の制御信号457、または制御信号457における増分変化(この場合、いずれもU
k+1で表す)を決定し、その制御信号457を光源405に提供する。U
k+1は、X
k+1(波長エラーの原因であるコンポーネントおよび/または条件の状態)と、U
k(以前に印加された制御信号457の値)とから求められるため、U
k+1を含む信号を光源405に印加することで、中心波長により近い波長を有し、したがって、波長エラーが低減されたビームが得られる。さらに、推定モジュール451は狭帯域外乱モジュール470を含むため、U
k+1は狭帯域の外乱を低減または除去する補正波形も含む。
【0065】
また、制御システム450は、電子プロセッサ452、電子記憶装置453、および入出力(I/O)インタフェース454も含む。電子プロセッサ452は、汎用または専用マルチプロセッサ等のコンピュータプログラムの実行に適した1つまたは複数のプロセッサと、任意の種類のデジタルコンピュータの1つまたは複数の任意のプロセッサとを含む。一般的に、プロセッサは、読取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリ、あるいはその両方から指示およびデータを受け取る。電子プロセッサ452は、任意のタイプの電子プロセッサとすることができる。
【0066】
電子記憶装置453は、RAM等の揮発性メモリ、または不揮発性メモリとすることができる。いくつかの実施態様では、電子記憶装置453は不揮発性の部分またはコンポーネントと揮発性の部分またはコンポーネントの両方を含むことができる。電子記憶装置453には、実行されると、プロセッサ452に制御システム450のその他のコンポーネントおよび/または光源405と通信させる指示が、場合により、例えば、コンピュータプログラムとして保存される。例えば、そのような指示は、パルス光ビーム424のパルスの波長に関するデータを電子記憶装置453に保存させる指示とすることができる。また、電子プロセッサ452に対して、保存されたデータを解析し、保存されたデータに基づいて電圧信号を生成させる指示とすることもできる。
【0067】
I/Oインタフェース454は、制御システム450が、オペレータ、光源405、および/または別の電子デバイス上で動作する自動化プロセスとの間でデータおよび信号の受信および/または提供を行うことを可能にする任意の種類の電子インタフェースである。例えば、I/Oインタフェース454は、画像表示装置、キーボード、または通信インタフェースのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0068】
図5を参照すると、例示的なプロセス500のフローチャートが示されている。このプロセス500は、狭帯域の外乱を能動的に補償および/または排除する。
【0069】
図4Aおよび
図4Bに記載される制御システム450および光源405に関してプロセス500を説明するが、その他の実施態様も可能である。例えば、プロセス500は、制御システム170または270内の1つまたは複数の電子プロセッサによって実行することができる。いくつかの実施態様では、プロセス500は、光源405の内部および/または光源405の外部に分散された電子プロセッサによって実行される。さらに、コンピュータ可読媒体に保存することができる機械読取り可能な実行可能命令としてプロセス500を実施し、光放射源に関する既存の制御システムにアップグレードまたは組み込みとしてプロセス500をインストールすることもできる。例えば、プロセス500は、波長推定モジュール460等のモジュールを既に含んだ制御システムに追加の機能を与えるソフトウェア更新としてインストールすることができる。
【0070】
パルス光ビームが受信される(505)。このパルス光ビームは、発振器412から放出され、ある時間繰り返し率を有するビームである。時間繰り返し率とは、パルス光ビームの連続する2つの光パルスの間の時間である。この時間繰り返し率は、例えば、500Hzより大きいか、500〜6,000Hzであるか、5,990〜6,000Hzであるか、または6,000Hzより大きいものとすることができる。
【0071】
光ビームは、ライン中心解析モジュール420で受信するか、または、パルス光ビームの特性、例えば、その波長を測定、監視、または決定する別のモジュールにおいて受信することができる。この光ビームは、パルス光ビーム424とすることができる。別の例では、この光ビームを、エキシマレーザによって生成されたパルスレーザビームか、増幅されたパルス光ビームか、または、レーザ以外の光源からのパルス光ビームとすることができる。
【0072】
光ビームは、中心波長と関連付けられている。光ビームの波長を表す信号458が制御システム450に供給される。信号458のインスタンスは、1パルスの光が受信されるたびに供給されるものとすることができる。そのため、制御システム450は、ライン中心解析モジュール420でパルスが受け取られる周波数と等しい周波数で更新された信号458を受け取ることができる。
【0073】
光ビームは、光源405がその波長で光を生成すると考えられる、公称波長または中心波長と関連付けられている。光ビームは、チャンバ414内の外乱によってこの中心波長からずれる場合がある。例えば、光学発振器412や、光源405のいずれかのコンポーネントにおいて狭帯域の外乱が発生する可能性がある。狭帯域の外乱とは、スペクトル全体に対して単一の周波数または小さい周波数帯域にのみ存在する外乱である。狭帯域の外乱の大きさは、その外乱が波長に及ぼす影響を示している。光源405における狭帯域の外乱は、それぞれ別個の異なる周波数または別個の異なる周波数帯域に発生し、異なる大きさを有する複数の狭帯域の外乱を含み得る。それぞれの狭帯域の外乱は、利得媒体419において、その外乱の周波数でビーム経路に密度の違いをもたらす。このことが、発振器412における光の伝搬に影響し、例えば、光を偏向させ、ライン狭幅化モジュール416に対する入射角が変更されることで、光の波長が変更され、それによって波長エラーが増加する。
【0074】
発振器における狭帯域の外乱の周波数が決定される(510)。狭帯域の外乱の物理的発現は時間的に一定の周波数を有し得るが、波長エラーから測定される外乱の周波数は、パルス光ビームの時間繰り返し率と伴って変動するエイリアシングされた周波数として現れる場合がある。チャンバ414内のビーム経路413に沿って進む光は、光ビームの繰り返し率に等しい周波数で発生するパルスを有する。したがって、ビーム経路413を伝搬するこの光によって、狭帯域の外乱の基本周波数および高調波周波数が時間繰り返し率でサンプリングされる。基本周波数および/または高調波周波数が繰り返し率の半分より大きい場合、基本周波数および/または高調波周波数は、その限定的なサンプリング率のためエイリアシングされる。
【0075】
基本周波数および高調波周波数がエイリアシングされるそれぞれの周波数は、光ビームの時間繰り返し率(サンプリング率)に依存し、エイリアシングされた周波数は時間繰り返し率に基づいて求めることができる。例えば、エイリアシングされた周波数は、実際の外乱周波数と時間繰り返し率との間の数学的関係から求めることができる。式2(
図4Aおよび
図4Bに関して上述したものであり、以下に再掲する)は、ファン421によって引き起こされる狭帯域の外乱に関連付けられたエイリアシングされた周波数を求めるために使用することができる式の例を示している。
【数8】
【0076】
狭帯域の外乱の周波数は、時間繰り返し率、システム設計の詳細、および/または光源405のコンポーネントの移動周波数に依存するその他の式から求めることが可能である。
【0077】
いくつかの実施態様においては、式(例えば、式2)および/または観測されるデータを用いて、狭帯域の外乱のエイリアシングされた周波数を光ビーム424の時間繰り返し率と関係付ける周波数マップ600が作成される。この周波数マップ600を用いて、狭帯域の外乱の(基本的および/または高調波)周波数のエイリアシングされた値を求めることができる。
図6も参照すると、光ビームの時間繰り返し率の関数としてエイリアシングされた周波数(Hz)をグラフ化した例示的な周波数マップ600が示されている。
【0078】
周波数マップ600に示されたデータは、速度5,000rpmで回転する23枚のブレードを有する送風機(ファン)に関して推定されたものである。基本周波数(Hz)と、この基本周波数の高調波の周波数(Hz)(いずれの周波数もファンによって引き起こされる狭帯域の音響外乱を表す)は、ファンの幾何学的配置とその回転速度に依存し、以下の式(7)によって与えられる。
【数9】
式(7)中、hは高調波(1以上の整数)であり、bはファンにおけるブレード数である。その他の狭帯域の音響外乱源を、該外乱を生成するコンポーネントの設計、幾何学的配置、および動きを説明する式によって表すことができる。
【0079】
周波数マップ600を作成するためにモデル化された狭帯域の外乱の周波数は、式7で与えられるfの値からエイリアシングされている。式7によって示されるように、エイリアシングがなければ、狭帯域の外乱の基本周波数および高調波周波数は一定であり、時間繰り返し率に依存しない。
図6は、周波数が光ビームの時間繰り返し率に依存することを示しており、この
図6からエイリアシングの存在が明らかである。
【0080】
さらに、時間繰り返し率によっては、エイリアシングされた高調波同士が交差しており、これは異なる高調波が同じ周波数にエイリアシングされることを示している。周波数マップ600では、これが、例えば3,500Hz等の多くの時間繰り返し率において発生している。3,500Hzの時間繰り返し率でパルス光ビームを生成する光源の場合、5次高調波と6次高調波の周波数がともに1,000Hzにエイリアシングされることが周波数マップ600から分かる。
【0081】
光ビームの時間繰り返し率は、既知であるか、または、電極417に印加される電圧のパターンから光源405の動作中に求めることができる。既知の時間繰り返し率を用いると、狭帯域の外乱の周波数を周波数マップ600から求めることができる。例えば、時間繰り返し率が6,000Hzの場合、周波数マップ600から、2次高調波(エイリアシングされない周波数は3,833Hz)が約2,166Hzの周波数にエイリアシングされる(周波数マップ600において符号605で示される)ことが分かる。また、外乱の5次高調波(エイリアシングされない値は9,585Hz)は、2,415Hzの周波数にエイリアシングされる(周波数マップ600において符号610で示される)。
【0082】
このように、狭帯域の外乱に関連付けられた1つまたは複数の周波数を周波数マップ600から求めることができる。周波数マップ600は、
図6の例のようにグラフとして実施することができる。いくつかの実施態様では、参照テーブルに保存された数値の集合として周波数マップを表すこともできる。またいくつかの実施態様では、狭帯域の外乱の1つの周波数(または複数の周波数)が、オペレータまたは自動化プロセスからの入力として受信される。
【0083】
狭帯域の外乱の1つまたは複数の周波数は、その他の方法で求めることもできる。例えば、波長エラーのパワースペクトル密度(PSD)から狭帯域の外乱の周波数を求めることができる。
図7も参照すると、測定された波長エラーに基づく周波数(Hz)の関数としての波長エラーの片側パワースペクトル密度(デシベル/Hz)の例が示されている。このパワースペクトル密度は、時間の関数としての波長エラーデータの高速フーリエ変換(FFT)を1024カ所で行い、そのFFTの大きさを計算することで求められたものである。波長エラーデータには、光ビームにおける数百または数千パルスからなるパルス群のうちの各パルスに対する波長エラーが含まれている。
【0084】
図7に示された例では、光ビームの時間繰り返し率は6,000Hz、ファン421に含まれるブレード数は23、回転速度は5,000rpmであった。ピーク値705、710および715がそれぞれ、ファン421によって引き起こされた狭帯域の外乱の基本周波数、2次高調波および5次高調波の寄与のパワーを示している。この例では、パワースペクトル密度におけるスパイクが狭帯域の外乱を表しており、そのようなスパイクがファン421の動きの基本周波数で発生するとともに、この基本周波数の高調波に相当する周波数で追加のピークが発生している。その他の物理的影響、例えば、ファン421以外のコンポーネントからの振動が光源405内に狭帯域の外乱を引き起こす場合もある。その原因にかかわらず、狭帯域の外乱は、波長エラーのパワースペクトル密度において、該外乱の1つまたは複数の周波数でスパイク(単一周波数またはいくつかの周波数を含む帯域にわたって集中したパワーの上昇)を発生させ、かつ、これに伴う波長シグマの上昇を発生させる。
【0085】
いくつかの実施態様において、波長エラーのPSD(例えば、PSD700)は、場合により、例えば、自動化された電子プロセスでこれを分析することでピーク(PSDの極大値)を特定することができ、そのピークが該当の周波数に狭帯域の外乱が存在することを示している。ピークが発生する1つまたは複数の周波数は、狭帯域外乱モジュール470および状態・空間モデル480において、式1を用いて狭帯域の外乱の状態Xを求めるために使用することができる。
【0086】
図5に戻って、エイリアシングされた周波数に基づいて補正波形が生成される(515)。この補正波形は、複数の状態に基づくことができ、かかる状態のベクトル和によって、補正波形が光源405に適用された場合にチャンバ内に存在すると予測される狭帯域の外乱が表される。式1に関して上述したように、そのような状態の推定は狭帯域の外乱の周波数に基づき、該周波数はエイリアシングされた周波数とすることができる。外乱の状態には、同相成分と直交成分とを含むことができる。いくつかの実施態様において、外乱の状態のうちの1つは、狭帯域の外乱の大きさを表し、別の1つは、狭帯域の外乱の位相を表す。
【0087】
外乱の状態の推定値は、光ビームの時間繰り返し率以上の割合で動的に更新することができる。こうすることで、外乱の状態の推定値によって、光源405の動作中に発生する変化が説明される。
【0088】
補正波形は、推定された狭帯域の外乱と同じ周波数、同じ大きさ、および異なる位相をもつ。したがって、補正波形は、狭帯域の外乱を取り消す、または低減するように作用する。いくつかの実施態様では、補正波形は、狭帯域の外乱の位相に対して180度反対の位相をもつ。
【0089】
いくつかの実施態様において、補正波形は、狭帯域の外乱に関する情報を含むことに加えて、波長エラーを引き起こす可能性のある光源405中のその他の外乱および条件に関する情報も含む。これらの実施態様では、波長推定モジュール460を用いてこれらの条件および追加的外乱を表す状態を決定することができる。これらの実施態様では、プロセス500は、狭帯域の外乱と追加的な波長エラー源とを補償する。
【0090】
補正波形の形態としては、補正波形または補正波形から導出される信号が、光源405または光源405内のコンポーネントを、補正波形が適用されることに応じて狭帯域の外乱を(さらに場合によっては他の外乱をも)補償するように作用させるために十分な情報を有していれば、任意の形態をとることができる。例えば、補正波形は、追加的外乱を補償する電圧信号に加えて、狭帯域の外乱が発生する上述の1つまたは複数の周波数の正弦波を含む電圧信号とすることができる。光源405に補正波形を適用することで、アクチュエータ444および光学素子442を移動させることができる。いくつかの実施態様では、補正波形は、さらなる電子的処理によって1つまたは複数のアナログ電圧補正波形に変換されるデジタル信号群である。さらに、いくつかの実施態様では、補正波形は、以前の波形と比較した変化(または差分(デルタ))を表す波形である。
【0091】
生成された補正波形に基づいてパルス光ビームの特性を修正することで、狭帯域の外乱が補償される(520)。パルス光ビーム424の特性としては、例えば、光ビーム424の波長とすることができる。狭帯域の外乱は、例えば、基本周波数に対する複数の高調波を含む場合がある。例えば、補正波形は、基本周波数および各高調波の正弦曲線であって、各周波数において狭帯域の外乱の位相と異なる(例えば、反対の)位相を有する正弦曲線を含む電圧信号とすることができる。この電圧信号がアクチュエータ444に印加されることで、狭帯域の外乱によって引き起こされることとなる偏向を打ち消すような方法でチャンバ414内を伝搬する光が偏向されるように光学素子442を移動させることができる。このように光学素子を移動させることで、ビーム424の周波数は中心周波数に留まるか、または中心周波数に近づき、それにより波長エラーが低減されるとともに、狭帯域の外乱に関連付けられた周波数における波長エラーに対する寄与が低減される。
【0092】
図8を参照すると、波長エラーの例示的なパワースペクトル密度が曲線805および曲線810により示されている。実線で表され、「トーン補償なし」とタイプ表示された曲線805は、狭帯域の外乱に対する能動的な補償を伴わない波長エラーのPSDを表す。点線で表され、「トーン補償あり」とタイプ表示された曲線810は、同じ条件のもと、上述のプロセス500等のプロセスを使用した狭帯域の外乱に対する補償を行った後に収集された波長エラーデータから形成されたPSDを表す。
【0093】
曲線805および曲線810を作成するために収集された波長エラーデータは、時間繰り返し率5,995Hz、チャンバ温度65℃で、23枚のブレードからなる回転速度5,000rpmの送風機(ファン)を含むエキシマレーザからの150パルスバースト(各バーストは数百パルスを含む)から収集されたものである。この構成では、送風機は、3,833Hzの2次高調波を有し、これが2,157Hzにエイリアシングされる。この例では、2次高調波が引き起こす外乱が、波長エラーに対して最大の寄与をもたらす。
【0094】
図示されるように、狭帯域の外乱に対する補償を適用することで、2次高調波の波長エラーに対する寄与の大きさについて、20デシベル(dB)を超える減少がもたらされる。2次高調波の周波数における相対的寄与の減少によって、波長の標準偏差が減少し、これにより、光源によってもたらされる波長可変性が減少する。
【0095】
図9を参照すると、
図8に示されるデータから導出されるバースト数の関数として、1バーストあたりの最大波長シグマをグラフ化したものが示されている。グラフ900は、狭帯域の外乱が補償されなかった場合のデータに関する波長シグマ905と、狭帯域の外乱が補償された場合のデータに関する波長シグマ910とを含む。曲線905と曲線910との比較から分かるように、狭帯域の外乱を補償することで、観測したすべてのバーストにおいて最大波長シグマが減少している。さらに、波長シグマ905および波長シグマ910が、10回にわたる別個の実験(またはウェーハ)において収集され、その結果が反復性を有することが示されている。
【0096】
以下の特許請求の範囲には、その他の実施態様も含まれる。