特許第6970183号(P6970183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6970183固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970183
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20211111BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20211111BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20211111BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01M4/86 B
   H01M4/96 B
   H01M4/96 M
   H01M4/88 C
   H01M8/10 101
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-509440(P2019-509440)
(86)(22)【出願日】2018年4月2日
(86)【国際出願番号】JP2018014152
(87)【国際公開番号】WO2018182045
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-71626(P2017-71626)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 孝
(72)【発明者】
【氏名】田所 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】日吉 正孝
(72)【発明者】
【氏名】古川 晋也
(72)【発明者】
【氏名】小村 智子
(72)【発明者】
【氏名】正木 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】林田 広幸
(72)【発明者】
【氏名】多田 若菜
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/141810(WO,A1)
【文献】 特開2014−201463(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/075264(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/129597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/96
H01M 4/88
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素材料であって、下記(1)、(2)、(3)及び(4)を同時に満たす固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
(1)下記に示す結晶化物含有度が1.6以下である。
ここで、結晶化物含有度は、当該触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱した後の粉末X線回折法に基づき得られた(002)面の回折ピークのベースラインと、当該(002)面の回折ピークの中に現れる回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークから下した垂線との交点における強度をA値とし、前記回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークのベースラインとこの回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークから下した垂線との交点における強度をB値とし、前記回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークの強度をC値としたとき、[(C/A)−(B/A)]で表されるものである。
(2)窒素ガス吸着等温線のBET解析により求められるBET比表面積が400〜1500m/gであること。
(3)窒素ガス吸着等温線のDollimore-Heal法を用いた解析により求められる細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10が0.4〜1.5mL/gであること。
(4)窒素ガス吸着等温線において、相対圧0.95〜0.99における窒素ガス吸着量Vmacroが300〜1200cc(STP)/gであること。
【請求項2】
ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔGが、50〜70cm−1である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
【請求項3】
前記V2-10が、0.5〜1.0mL/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載
の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
【請求項4】
棒状体又は環状体が3次元的に分岐した3次元樹状構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
【請求項5】
硝酸銀のアンモニア水溶液からなる反応溶液中にアセチレンガスを吹き込んで銀アセチリドを合成する銀アセチリド生成工程と、
前記銀アセチリドを自己分解爆発反応させて炭素材料中間体を得る分解工程と、
前記炭素材料中間体を硝酸溶液と接触させてこの炭素材料中間体を清浄化する洗浄処理工程と、
清浄化された炭素材料中間体を真空中又は不活性ガス雰囲気中1400〜2100℃の温度で加熱処理して触媒担体用炭素材料を得る加熱処理工程と、
を備え、
前記銀アセチリド生成工程では、アセチレンガスと硝酸銀との物質量比(アセチレン/硝酸銀)が、0.370以上0.500以下となるように反応溶液中にアセチレンガスを吹き込む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記銀アセチリド生成工程では、アセチレンガスと硝酸銀との物質量比(アセチレン/硝酸銀)が、0.400以上0.500以下となるように反応溶液中にアセチレンガスを吹き込む、請求項5に記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、100℃以下の低温で作動可能な固体高分子形燃料電池が注目され、車両用駆動電源や定置型発電装置として開発及び実用化が進められている。そして、一般的な固体高分子形燃料電池の基本構造(単位セル)は、プロトン伝導性の電解質膜を挟んでその両外側にそれぞれアノード及びカソードとなる触媒層が配置された膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)と、この膜電極接合体を挟んでそれぞれ触媒層の外側に配置されたガス拡散層と、更にこれらガス拡散層の外側に配置されたセパレーターとからなる構造を有している。そして、通常、固体高分子形燃料電池は、必要な出力を達成するために必要な数の単位セルをスタックすることにより構成されている。
【0003】
そして、このような固体高分子形燃料電池の単位セルにおいては、アノード側とカソード側にそれぞれ配されたセパレーターのガス流路から、カソード側には酸素や空気等の酸化性ガスを、また、アノード側には水素等の燃料をそれぞれ供給する。これら供給された酸化性ガス及び燃料(これらを「反応ガス」ということがある。)を、それぞれガス拡散層を介して触媒層まで供給し、アノードの触媒層で起こる化学反応とカソードの触媒層で起こる化学反応との間のエネルギー差(電位差)を利用して仕事を取り出している。例えば、燃料として水素ガスが、また、酸化性ガスとして酸素ガスが使用される場合には、アノードの触媒層で起こる化学反応〔酸化反応:H→2H+2e(E=0V)〕と、カソードの触媒層で起こる化学反応〔還元反応:O+4H+4e→2HO(E=1.23V)〕とのエネルギー差(電位差)を仕事として取り出している。
【0004】
ここで、上記のような触媒層を形成して化学反応を生起させる触媒については、通常、触媒担体としては、電子伝導性、化学的安定性、電気化学的安定性の観点から多孔質炭素材料が用いられる。また、触媒金属としては強酸性環境下での使用が可能であって酸化反応及び還元反応に対して共に高い反応活性を示すPt又はPt合金が主として用いられている。そして、触媒金属については、一般に上記の酸化反応及び還元反応が触媒金属上で起きるので、この触媒金属の利用率を高めるためには、質量当りの比表面積を大きくすることが必要になる。そのため、通常、触媒金属としては数nm程度の大きさの粒子が用いられている。
【0005】
そして、このような触媒金属の粒子を担持する触媒担体については、担体としての担持能力を高めるために、すなわち、上記の数nm程度の触媒金属粒子を吸着して担持するためのサイトを多くするために、比表面積の大きな多孔質炭素材料であることが必要である。それと共に、上記の触媒金属粒子を可及的に高分散状態で担持するように、細孔直径2〜50nmのメソ孔の容積、すなわちメソ孔容積の大きな多孔質炭素材料であることが求められる。そして、それと同時に、アノード及びカソードとなる触媒層を形成した際には、この触媒層中に供給された反応ガスを抵抗なく拡散させ、また、この触媒層中で生成した水(生成水)を遅滞なく排出させるために、この触媒層中に反応ガスの拡散や生成水の排出に適した微細孔が形成される必要がある。
【0006】
そこで、従来においては、比較的大きな比表面積及びメソ孔容積を有し、同時に、立体的に枝が発達した樹状構造を持つ多孔質炭素材料として、例えばCABOT社製バルカンXC−72、およびライオン社製EC600JD及びライオン社製EC300が用いられている。また、触媒担体用炭素材料としてより好適な比表面積及びメソ孔容積を有すると共に、より好適な樹状構造を持つ多孔質炭素材料を開発するための試みも行われている。近年、特に注目され始めたものとして、3次元的に分岐した3次元樹状構造を持つ銀アセチリド等の金属アセチリドを中間体として製造され、この3次元樹状構造を維持した樹状炭素ナノ構造体がある。この樹状炭素ナノ構造体については、これまでにも幾つかの提案がされている。
【0007】
例えば、特許文献1には、長期に亘って電流量の低下率が低く、耐久性に優れた固体高分子形燃料電池用の触媒を調製可能な触媒担体用炭素材料が提案されている。
具体的には、特許文献1には、金属又は金属塩を含む溶液を準備する工程と、前記溶液にアセチレンガスを吹き込んで金属アセチリドからなる樹状の炭素ナノ構造体を生成させる工程と、この炭素ナノ構造体を60〜80℃で加熱して前記樹状の炭素ナノ構造体中に金属が内包された金属内包樹状炭素ナノ構造物を作製する工程と、この金属内包樹状炭素ナノ構造物を160〜200℃に加熱して金属を噴出させ、樹状の炭素メソポーラス構造体を作製する工程と、この炭素メソポーラス構造体を減圧雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で1600〜2200℃に加熱する工程とからなる製造方法で調製された多孔質炭素材料が提案されている。この多孔質炭素材料は、窒素吸着等温線をDollimore−Heal法で解析して求められる細孔径1〜20nm及び積算細孔容積0.2〜1.5cc/gを有すると共に、BET比表面積200〜1300m/gを有する。
【0008】
また、特許文献2には、高加湿条件下で高い電池性能を発揮し得る固体高分子形燃料電池用触媒を調製可能な担体炭素材料が提案されている。
具体的には、特許文献2には、金属又は金属塩を含むアンモニア性水溶液中にアセチレンガスを吹き込んで金属アセチリドを生成させるアセチリド生成工程と、前記金属アセチリドを60〜80℃の温度で加熱して金属粒子内包中間体を作成する第1の加熱処理工程と、前記金属粒子内包中間体を120〜200℃の温度で加熱してこの金属粒子内包中間体から金属粒子を噴出させ、炭素材料中間体を得る第2の加熱処理工程と、前記炭素材料中間体を熱濃硫酸と接触させてこの炭素材料中間体を清浄化する洗浄処理工程と、更に清浄化された炭素材料中間体を1000〜2100℃で加熱処理して担体炭素材料を得る第3の加熱処理工程とからなる製造方法で調製された多孔質炭素材料が提案されている。この多孔質炭素材料は、所定の水素含有量を有すると共に、BET比表面積600〜1500m/g、及びラマン分光スペクトルから得られるD−バンド1200〜1400cm−1の範囲のピーク強度(l)とG−バンド1500〜1700cm−1の範囲のピーク強度(l)との相対強度比(l/l)1.0〜2.0を有する。
【0009】
更に、特許文献3には、高い発電性能を維持しつつ電位変動に対して優れた耐久性を発現し得る固体高分子形燃料電池用触媒を調製可能な触媒担体用炭素材料が提案されている。
具体的には、特許文献3には、金属又は金属塩を含むアンモニア性水溶液中にアセチレンガスを吹き込んで金属アセチリドを生成させるアセチリド生成工程と、前記金属アセチリドを40〜80℃の温度で加熱して金属粒子内包中間体を作成する第1の加熱処理工程と、前記金属粒子内包中間体を圧密成形し、得られた成形体を毎分100℃以上の昇温速度で400℃以上まで加熱してこの金属粒子内包中間体から金属粒子を噴出させ、炭素材料中間体を得る第2の加熱処理工程と、前記炭素材料中間体を熱濃硝酸又は熱濃硫酸と接触させてこの炭素材料中間体を清浄化する洗浄処理工程と、更に清浄化された炭素材料中間体を真空中又は不活性ガス雰囲気中1400〜2100℃で加熱処理して担体炭素材料を得る第3の加熱処理工程とからなる製造方法で調製された多孔質炭素材料が提案されている。この多孔質炭素材料は、吸着過程の窒素吸着等温線をDollimore-Heal法で解析して求められる細孔直径2〜50nmのメソ孔の比表面積Sが600〜1600m/gであり、ラマン分光スペクトルにおけるG’−バンド2650〜2700cm−1の範囲のピーク強度(lG’)とG−バンド1550〜1650cm−1の範囲のピーク強度(l)との相対強度比(lG’/l)が0.8〜2.2であり、メソ孔の内の細孔直径2nm以上10nm未満のメソ孔の比細孔面積S2−10が400〜1100m/gであって比細孔容積V2-10が0.4〜1.6cc/gであり、メソ孔の内の細孔直径10nm以上50nm以下のメソ孔の比細孔面積S10-50が20〜150m/gであって比細孔容積V2-10が0.4〜1.6cc/gであり、また、吸着過程の窒素吸着等温線をHorvath-Kawazoe法で解析して求められる細孔直径2nm未満の細孔の比細孔面積Sが250〜550m/gである。
【0010】
更にまた、特許文献4には、起動・停止といった負荷変動の繰り返しに対する耐久性に優れ、また、低加湿時の運転条件下での発電性能に優れている固体高分子形燃料電池用触媒を調製可能な触媒担体用炭素材料が提案されている。
具体的には、特許文献4には、金属アセチリドを中間体として自己分解爆発反応を経て調製された樹状炭素ナノ構造を有する多孔質炭素材料〔新日鉄住金化学社製商品名:エスカーボン(ESCARBON)(登録商標)-MCND〕を原料として用い、黒鉛化処理を行った後に、更に過酸化水素、硝酸、液中プラズマ装置等を用いた酸化処理を行って得られた触媒担体用炭素材料が提案されている。この触媒担体用炭素材料は、酸素含有量OICPが0.1〜3.0質量%、不活性ガス(又は真空)雰囲気中1200℃の熱処理後に残存する酸素残存量O1200℃が0.1〜1.5質量%、BET比表面積が300〜1500m/g、ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔGが30〜70cm−1、及び不活性ガス(又は真空)雰囲気中1200℃の熱処理後に残存する水素残存量H1200℃が0.005〜0.080質量%である。
【0011】
特許文献1:WO 2014/129597 A1
特許文献2:WO 2015/088025 A1
特許文献3:WO 2015/141810 A1
特許文献4:WO 2016/133132 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の特許文献1〜4に記載された触媒担体用炭素材料は、いずれも比較的大きな比表面積やメソ孔容積を有し、また、耐久性にも優れるものであることから、特に自動車用燃料電池として利用する際に大出力を引き出す上で重要な大電流特性に優れるものである。
そして、このような手順により作製される触媒担体用炭素材料については、これを実際に触媒層に利用する際には、その粒子径が20nmから最大でも1μm程度にすることが求められている。かような範囲であれば、触媒担体用炭素材料が比較的大きな比表面積やメソ孔容積を有した場合であっても機械的強度が維持され、かつ、触媒層の厚みを適切な範囲で制御することができるとされている。このように粒子径が最大でも1μm程度である触媒担体用炭素材料を得るために、通常は、次の触媒層の作製等に使用する前には、予め、ジェットミル等の装置を用いて解砕・粉砕及び分級処理(以下、本開示においては、これらをまとめて「分級処理」と記載することとする。)を行い、それにより、1μmを超えるような比較的大きな粒子については殆ど排除している。
【0013】
ところが、上記特許文献1〜4に記載されたような従来の触媒担体用炭素材料について分級処理に関する記載は無い。本開示の発明者らの検討によれば、従来技術によって得られた触媒担体用炭素材料を上記のように分級処理した際には、意外にも、その分級処理の歩留まりが80〜90%と低くなってしまうことが分った。すなわち、当該分級処理によって排除される1μmを超えるような比較的粗大な粒子が多く含まれていることが分かり、理想とする100%の歩留まりにはどうしても及ばないといった問題があることが判明した。このような分級処理の歩留まりについては、前述の如く、触媒担体用炭素材料を実際に触媒層の作製等に使用する前に行われるものである。そのことから、歩留まりの低さは製造コストに直結することになって、本開示の発明者らによれば解決されるべき重要な課題として位置づけられてきた。
そして、このような触媒担体用炭素材料の分級処理における歩留まり低下の問題について、本開示の発明者らが更に詳細に検討した。その結果、意外なことに、このような従来の触媒担体用炭素材料においては、一部炭素粉体どうしが強固に結着されて解砕・粉砕がされ難いような粗大である上に高結晶性かつ非多孔性の塊状炭素(以下、本開示では、これを「結晶化物」と称することとする。図1を参照。)が、僅かではあるが、触媒担体用炭素材料を形成する骨格形成炭素に対して混入されていることを確認した。そして、その結晶化物が前記の分級処理によって多く排除されてしまうことが、分級処理の歩留まり低下の一因となっていることを突き止めた。
さらに、本開示の発明者らは、このような結晶化物が、如何にして生成・混入されるものであって、その生成・混入の程度を定量的に評価する方法を見出すことと共に、それを可及的に減少させることができる方法を見出すことに鋭意取り組んだ結果、以下のような知見を得た。
【0014】
すなわち、上記するような触媒担体用炭素材料を製造するには、前述の通り、先ず、金属又は金属塩、具体的には硝酸銀を含むアンモニア性水溶液中にアセチレンガスを吹き込んで銀アセチリドを生成させる。この銀アセチリドの生成に際しては、反応系内において反応する硝酸銀とアセチレンとのモル比を考慮して、収率低下かつコスト増加の要因となる未反応の銀イオンを完全に消費しつくすという側面から、反応系内に導入されるアセチレンを、モル等量(アセチレン/硝酸銀=0.5)よりも過剰となるようにアセチレンガスを吹き込んでいる。そのように硝酸銀とアセチレンとの等量点を超えてアセチレンガスを吹き込むと、過剰なアセチレンガスが、生成される銀アセチリドに吸着される。このアセチレンガスを過剰に吸着した銀アセチリドを、その後に続く自己分解爆発反応に供すると、当該触媒炭素担体用炭素材料の骨格を形成することとなる芳香族性の高い炭素の中に、一定量の“芳香族性の低い炭素”(以下、本開示では、これを「煤」と称することとする。)が不可避的に生成・混在される。そして、このように推察される“芳香族性の低い炭素(煤)”が、その後の高温の加熱処理工程を経る中で、当該芳香族性の低い炭素どうし、或いは触媒担体用炭素材料の骨格形成炭素とともに結着されて、前記のような粗大な結晶化物を形成しているものと推察している。このような機序については、後述するアセチリド生成工程におけるアセチレンガスの吹き込み量の低減によって、前記結晶化物の生成・混入が低減されることからも確認されている。
【0015】
また、このような芳香族性の低い炭素(煤)の生成に起因して結晶化物が混在している、すなわち、分級処理の歩留まりが80〜90%と比較的低いような触媒担体用炭素材料については、当該触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱した後の粉末X線回折測定により得られる(002)面の回折ピークの中において回折角25.5°〜26.5°近傍に鋭い第2のピークが得られる。実はその第2のピークが高結晶性且つ多孔性が低い当該結晶化物に由来していることを突き止めると共に、そのピーク強度(後述する結晶化物含有度)が減少するにつれて、分級処理の歩留まりが大幅に改善されることを突き止めた。前記の芳香族性の低い炭素(煤)は溶融温度が低く、加熱処理によって結晶化しやすい易黒鉛化炭素と推察される。易黒鉛化炭素の多くは2000℃付近から急激に黒鉛化が進行することが知られており〔岩下哲雄,新・炭素材料入門(炭素材料学会編)(1996)pp. 24−31.〕、芳香族性の低い炭素(煤)も同様の結晶化挙動を示すと考えられる。
一方で、本開示の発明者らの検討により、触媒担体用炭素材料の骨格を形成する芳香族性の高い炭素は2100℃付近から急激な結晶化を示すことが見出された。そのことから、不活性雰囲気下2050℃で1時間焼成することを基準とすることで、それを粉末X線回折測定により得られる回折角25.5°〜26.5°近傍の鋭い第2のピークは芳香族性の低い炭素(煤)が結晶化したものに由来することを突き止めた。そして、それとともに、そのピーク強度を用いて求められる後述の結晶化物含有度が芳香族性の低い炭素(煤)の含有量と相関することを見出した。
なお、特許文献1には炭素を含む棒状体または環状体が枝分かれした三次元構造を有する樹状の炭素メソポーラス構造体を1600℃〜2200℃熱処理し、それにより25.5°〜26.5°に半値幅がO.1〜1.0°のピークを有することを特徴とする触媒担体用炭素材料が開示されている。しかし、この特許文献1で示されている25.5°〜26.5°の間のピークは、当該触媒担体用炭素材料の骨格を形成することとなる芳香族性の高い炭素が熱処理により発達したグラフェンの積層構造のためとされている。そのため、回折角25.5°〜26.5°の間に得られるピークが、実は、芳香族性の低い炭素(煤)に由来する結晶化物を示すものであることは予見すらされていなかった。
【0016】
さらには、このような結晶化物の生成を抑制することについては、前記芳香族性の低い炭素(煤)が、前述のようなアセチリド生成工程における過剰に吹き込まれ、また、銀アセチリドに吸着されるアセチレンガスが分解工程により炭素化したものによると推察されることに着目した。この推察から、アセチレンガスの吹き込み量を鋭意検討した結果、銀アセチリドに吸着されるアセチレンガスの量を抑制することで、前記芳香族性の低い炭素(煤)の生成を抑制することができ、結果として加熱処理工程後の粗大粒子の生成を抑制できることを見出した。
このような着眼点については、前述の通り、これまでは収率低下かつコスト増加の要因となる未反応の銀イオンを消費しつくすという側面から、反応系内に導入されるアセチレンガスをモル等量(アセチレン/硝酸銀=0.5)よりも過剰となるように吹き込むとしていたところ、むしろ、吹き込むアセチレンガスの量を減らして、当該モル等量(アセチレン/硝酸銀=0.5)よりもわずかに小さくなるようにすることである。この吹き込むアセチレンガスの量を減らすことで、未反応の銀イオンによるコスト増加の影響を最小限にとどめつつ、また、触媒担体として求められる特性(比表面積、メソ孔容積、耐久性など)は維持されつつも、前記結晶化物の生成・混入が可及的に抑制されて分級処理の歩留まりも良いような触媒担体用炭素材料として得られるということは、実に意外なことである。そして、本開示の発明者らは、これらの知見に基づいて、本開示を完成するに至った。
【0017】
本開示は、上述した各知見に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、触媒担体用炭素材料において前記結晶化物の生成を可及的に抑制できて分級処理の歩留まりが良く、さらには、燃料電池としての使用する上で求められる特性(比表面積、メソ孔容積、耐久性など)にも優れるような固体高分子形燃料電池の触媒を製造する上で好適な触媒担体用炭素材料を提供することである。
さらに、本開示の他の目的は、このような固体高分子形燃料電池の触媒を製造する上で有用で、しかも分級処理の歩留まりが良い触媒担体用炭素材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本開示は以下の態様を含む。
〔1〕多孔質炭素材料であって、下記(1)、(2)、(3)及び(4)を同時に満たす固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
(1)下記に示す結晶化物含有度が1.6以下である。
ここで、結晶化物含有度は、当該触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱した後の粉末X線回折法に基づき得られた(002)面の回折ピークのベースラインと、当該(002)面の回折ピークの中に現れる回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークから下した垂線との交点における強度をA値とし、前記回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークのベースラインとこの回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークから下した垂線との交点における強度をB値とし、前記回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークの強度をC値としたとき、[(C/A)−(B/A)]で表されるものである。
(2)窒素ガス吸着等温線のBET解析により求められるBET比表面積が400〜1500m/gであること。
(3)窒素ガス吸着等温線のDollimore−Heal法を用いた解析により求められる細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10が0.4〜1.5mL/gであること。
(4)窒素ガス吸着等温線において、相対圧0.95〜0.99における窒素ガス吸着
量Vmacroが300〜1200cc(STP)/gであること。
〔2〕ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔGが、50〜70cm−1である〔1〕に記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
〔3〕前記V2-10が、0.5〜1.0mL/gである〔1〕又は〔2〕に記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
〔4〕棒状体又は環状体が3次元的に分岐した3次元樹状構造を有する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料。
【0019】
〔5〕硝酸銀のアンモニア水溶液からなる反応溶液中にアセチレンガスを吹き込んで銀アセチリドを合成する銀アセチリド生成工程と、前記銀アセチリドを自己分解爆発反応させて炭素材料中間体を得る分解工程と、前記炭素材料中間体を硝酸溶液と接触させてこの炭素材料中間体を清浄化する洗浄処理工程と、清浄化された炭素材料中間体を真空中又は不活性ガス雰囲気中1400〜2100℃の温度で加熱処理して触媒担体用炭素材料を得る加熱処理工程とを備え、前記銀アセチリド生成工程では、アセチレンガスと硝酸銀との物質量比(アセチレン/硝酸銀)が、0.370以上0.500以下となるように反応溶液中にアセチレンガスを吹き込む固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料の製造方法。
【0020】
〔6〕前記銀アセチリド生成工程では、アセチレンガスと硝酸銀との物質量比(アセチレン/硝酸銀)が、0.400以上0.500以下となるように反応溶液中にアセチレンガスを吹き込む、請求項5に記載の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本開示の触媒担体用炭素材料によれば、前述するような、粗大な結晶化物の生成を可及的に抑制できて分級処理の歩留まりが良く、さらには、燃料電池としての使用する上で求められる特性(比表面積、メソ孔容積、耐久性など)にも優れるような固体高分子形燃料電池の触媒を製造する上で好適な触媒担体用炭素材料を提供することができる。
また、本開示の製造方法によれば、このような固体高分子形燃料電池の触媒を製造する上で有用で、しかも分級処理の歩留まりが良い触媒担体用炭素材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本開示の実験例27の触媒担体用炭素材料を、TEM観察した際に確認される結晶化物(白点線内)を示すための説明図(写真)である。
図2図2は、本開示の結晶化物含有度を得るに当たり、粉末X線回折スペクトルからそれぞれA値、B値、及びC値を求める方法を説明する説明図である。
図3図3は、本開示の実験例5、試験例7及び試験例8の粉末X線回折スペクトルである。
図4図4は、本開示の実験例26、実験例27、実験例28、実験例29及び実験例30の粉末X線回折スペクトルである。
図5A図5Aは、本開示の実験例5の触媒担体用炭素材料を、SEM観察した際に確認される樹状構造を示すための説明図(写真)である(図中右下のバーは、1μm示す)。
図5B図5Bは、本開示の実験例5の触媒担体用炭素材料を、SEM観察した際に確認される樹状構造を示すための説明図(写真)である(図中右下のバーは、5μm示す)。
図6】本開示の触媒担体用炭素材料について、枝径の測定方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料及びその製造方法について、詳細に説明する。
本開示の固体高分子形燃料電池の触媒担体用炭素材料は、下記の(1)、(2)、(3)及び(4)を同時に満たす多孔質炭素材料である。
(1)下記に示す結晶化物含有度が1.6以下である。
ここで、結晶化物含有度は、当該触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱した後の粉末X線回折法に基づき得られた(002)面の回折ピークのベースラインと、当該(002)面の回折ピークの中に現れる回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークから下した垂線との交点における強度をA値とし、前記回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークのベースラインとこの回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークから下した垂線との交点における強度をB値とし、前記回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークの強度をC値としたとき、[(C/A)−(B/A)]で表されるものである。
(2)窒素ガス吸着等温線のBET解析により求められるBET比表面積が400〜1500m/gであること。
(3)窒素ガス吸着等温線のDollimore-Heal法を用いた解析により求められる細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10が0.4〜1.5mL/gであること。
(4)窒素ガス吸着等温線において、相対圧0.95〜0.99における窒素ガス吸着量Vmacroが300〜1200cc(STP)/gであること。
【0024】
先ず、上記(1)について、本開示の触媒担体用炭素材料は、前述したように、分級処理の歩留まりを低下させるような粗大な塊状炭素(結晶化物)の生成・混入が可及的に抑制されたものである。そして、このような結晶化物の存在量を表す手法として、当該触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱した後の粉末X線回折法を用いたものである。
ここで、この不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱することの意義は、前述したが、次の通りである、芳香族性の低い炭素(煤)は易黒鉛化炭素と推察されて、その易黒鉛化炭素の多くは2000℃付近から急激に黒鉛化が進行することが知られており〔岩下哲雄,新・炭素材料入門(炭素材料学会編)(1996) pp. 24−31.〕、その芳香族性の低い炭素(煤)も同様の結晶化挙動を示すと考えられる。一方で、触媒担体用炭素材料の骨格を形成する芳香族性の高い炭素は2100℃付近から急激な結晶化を示すことが見出されている。さらには、後述の加熱処理工程それ自体の温度が2000℃以下とやや低いようなものについては、仮に、当該芳香族性が低い炭素(煤)が生成・混入されていたとしても結晶化物として生成され難い。そのため、実際は、そのような芳香族性が低い炭素(煤)の生成の程度を、得られた触媒担体用炭素材料の評価として確認・検証を行うことができる点を突き止めたからである。
そして、後述の図2図3及び図4に示されている通り、得られた粉末X線回折スペクトルにおいて、ランダムに積層した数層のグラフェンシートからなる炭素に相当する比較的なだらかな(002)面の回折ピークが回折角20°〜30°の範囲に現れる。そのうち、回折角25.5〜26.5°近傍に現れる鋭いピーク(本開示では、これを「第2のピーク」と呼ぶ場合がある。)は、黒鉛構造由来の回折ピークであることが知られている。本開示においては、この回折角25.5〜26.5°近傍に現れる鋭いピークが結晶化物を示すピークであるとして、先ずは、この強度をC値としている。ただし、C値には結晶化物を示すピークの強度とランダムに積層した数層のグラフェンシートからなる炭素に相当する成分の強度が重畳していることから、これらを分離する必要がある。
一方で、本開示におけるA値に関しては、前記回折角25.5〜26.5°近傍に現れる鋭い第2のピークから真下に下した垂線と、比較的なだらかな前記(002)面の回折ピークにおけるスペクトルの回折角15°の点およびスペクトルの回折角35°の点を結んだ線との交点(図2を参照。)における強度をA値としている。(002)面の回折ピークにおけるスペクトルの回折角15°の点とスペクトルの回折角35°の点とを結んだ線は、前記(002)面の回折ピークのベースライン(図2中、BL1と表記)を表すものである。
そして、本開示におけるB値に関しては、前記スペクトルの回折角15°の点とスペクトルの回折各35°の点とを結んだ線を粉末X線回折スペクトルの回折角25°と交わる点までY軸方向に平行移動させ、回折角25.5°〜26.5°近傍の第2のピークのベースライン(図2中、BL2と表記)とし、第2のピークのベースラインと第2のピークから下した垂線との交点における強度をB値としている。B値はランダムに積層した数層のグラフェンシートからなる炭素に相当する成分の強度を現すものである。
ここで、「回折角25.5〜26.5°近傍」とは、例えば、回折角が「25.5°−0.5°から26.5°+0.5°」の範囲であることを意味する。
【0025】
そして、C値とA値との相対的な強度比(C/A)からベースラインの影響を取り除いた結晶化物を示すピークの強度とランダムに積層した数層のグラフェンシートからなる炭素に相当する成分の強度が重畳した値を求める。それとともに、B値とA値の相対的な強度比(B/A)からベースラインの影響を取り除いた結晶化物を示すピークの強度とランダムに積層した数層のグラフェンシートからなる炭素に相当する成分の強度を求める。そして、これらの差分から計算される結晶化物含有度[(C/A)−(B/A)]は、結晶化物を示すピークのみが示す強度の指標として結晶化物の存在量が少ないことを表現することとしている。このような考え方・方法は、当該結晶化物を、再現よく表すことができることに加えて、後述の実施例から把握されるように、分級処理の含有量とよく相関が採れることから見出されたものである。
本開示の触媒担体用炭素材料は、このような結晶化物の生成・混入が極力抑制されたものであることが、分級処理の歩留まりを高く維持するために好ましい。そのため、結晶化物含有度を示す[(C/A)−(B/A)]ができるだけ小さいこと、すなわち、当該結晶化物含有度[(C/A)−(B/A)]が1.6以下であることが求められ、好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.4以下、当該結晶化物含有度ができるだけゼロに近いことが最も好ましい。当該結晶化物含有度[(C/A)−(B/A)]が1.6を超えて大きくなると、結晶化物が多く分級処理の歩留まりが低下する虞がある。また、結晶化物に担持された触媒粒子は炭素材料表面との相互作用が弱く、脱落・凝集しやすくなる虞があるといった別の問題が発生する虞もある。
なお、炭素材料の結晶化度は、一般的に熱処理温度に依存することが知られており、触媒担体用炭素材料が不活性雰囲気下2050℃以上の熱処理が為されていた場合、不活性雰囲気下2050℃で1時間熱処理をしていたとしても結晶化度には殆ど影響を与えないことから、当該結晶化物含有度[(C/A)−(B/A)]は変化しない。
ここで、結晶化物含有度は、後述する実施例に示す測定方法により測定される値である。
【0026】
また、このような本開示の触媒担体用炭素材料については、上記(2)の如く、窒素ガス吸着等温線のBET解析により求められるBET比表面積が400〜1500m/g、好ましくは500m/g以上1400m/g以下であることが必要である。このBET比表面積が400m/g以上、好ましくは500m/g以上であると、数nmの触媒金属粒子は、良好に分散した状態で、すなわち、触媒金属粒子間距離が一定値以上保たれて粒子が単独で存在できる状態で担持される。反対に、このBET比表面積が400m/g未満であると、触媒粒子間距離が短くなり、触媒金属微粒子を高密度かつ均一に担持し難くなる虞がある。その結果、触媒金属粒子の有効面積が低下し、燃料電池特性が大幅に低下してしまう。また、1500m/gを超えて大きくなるようにすると、多孔質炭素材料におけるエッジ部位が増加するため、実質的な結晶性の低下が伴って耐久性が低下し易くなる虞がある。
なお、BET比表面積は、後述する実施例に示す測定方法により測定される値である。
【0027】
さらに、このような本開示の触媒担体用炭素材料は、上記(3)の如く、窒素ガス吸着等温線のDollimore-Heal法を用いた解析により求められる細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10が0.4〜1.5mL/g、好ましくは0.5〜1.0mL/gであることが必要である。このような2〜10nmの細孔径を有することにより、通常直径数nmに調製される触媒金属微粒子が高分散状態で当該細孔内に分散され、触媒利用率の観点において好ましく寄与する。当該細孔容積V2-10が0.4mL/g未満の場合には、細孔面積に対して容積が小さいため、平均的な細孔サイズが小さくなる。触媒金属である白金微粒子を細孔内に担持した際、細孔と白金微粒子の間の空隙が小さくなるため、ガス拡散が低下して大電流特性が低下してしまう虞がある。反対に、V2-10が1.5mL/g超えて大きくなると、担体用炭素材料としての骨格が肉薄になってしまい、耐酸化消耗性が低下する。それと共に、触媒層を調製するための触媒層インク液調製の際に必要な撹拌により、この担体用炭素材料の骨格が容易に破壊され、形状に由来する特性が発揮できなくなる虞がある。
なお、積算細孔容積V2-10は、後述する実施例に示す測定方法により測定される値である。
【0028】
また、本開示の触媒担体用炭素材料については、その結晶性を高めて燃料電池使用環境下における耐久性を改善するという観点から、ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔGが、50〜70cm−1であることが好ましく、より好ましくは50〜65cm−1である。このΔGは炭素材料の炭素網面の広がりを現すとされており、ΔGが50cm−1未満であると炭素網面が広がり過ぎて細孔壁を形成する炭素網面のエッジ量が減少し、細孔壁への触媒金属微粒子の担持特性が低下する傾向がある。反対に、70cm−1を超えて大きくなると炭素網面が狭く、酸化消耗しやすい炭素網面のエッジ量が増えるため、耐久性が低下する傾向がある。
なお、G−バンドの半値幅ΔGは、後述する実施例に示す測定方法により測定される値である。
【0029】
また、本開示の触媒担体用炭素材料については、触媒層中に形成される微細孔の内部におけるガス拡散性の観点から、上記(4)の如く、前記窒素ガス吸着等温線において、相対圧が0.95から0.99までの間に吸着される窒素ガス吸着量Vmacroが、300〜1200cc(STP)/gである必要がある。窒素ガス吸着量Vmacroは、より好ましくは300〜800cc(STP)/gである。この相対圧0.95〜0.99までの間における窒素ガス吸着量Vmacroは、1次粒子の間隙によって形成されるマクロ孔の大きさを示すものである。この値が上記の範囲である場合、炭素材料の3次元樹状構造が高度に発達したものとなる。3次元樹状構造を発達させることで、燃料電池とした際に原料ガス(H、O)供給が少ないことや生成するHOの排出性が悪いことに起因して発生する状況(電池反応が阻害されるような状況)を回避することができる。すなわち、大電流特性が良好な燃料電池を形成することが可能となる。一方でVmacroが1200を超えると炭素材料中の空隙が増加するため、燃料電池触媒担体とした際の触媒層の厚みが増加するため、原料ガス(H、O)の拡散距離が長くなることから、発電特性が悪化する。
なお、窒素ガス吸着量Vmacroは、後述する実施例に示す測定方法により測定される値である。
【0030】
そして、このような本開示の触媒担体用炭素材料を製造する方法については、銀アセチリドを自己分解爆発させて得られた炭素材料中間体に含まれてくる芳香族性の低い炭素(煤)を可及的に排除する必要がある。本開示の発明者らの詳細な検討によれば、次の知見した。芳香族性の低い炭素(煤)を可及的に排除するためには、前記のような芳香族性の低い炭素(煤)の生成それ自体を抑制すれば、その後の工程を経たとしても結晶化物が生成することを抑制することができる。この観点から、前述の通り、銀アセチリド生成工程において吹き込むアセチレンガス量を精度よく制御して、モル等量(アセチレン/硝酸銀=0.5)以下とする。そのことにより、その後の結晶化物の生成・混入を抑えられ、すなわち、触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下2050℃で1時間加熱した後の粉末X線回折法に基づき得られた粉末X線回折スペクトルにおける前記定義された結晶化物含有度を減少させることができる。その結果、分級処理の歩留まりを高くすることができる。
当該アセチレンガスと硝酸銀との物質量比(アセチレン/硝酸銀)は、好ましくは、0.500以下が好ましく、より好ましくは0.498以下である。当該物質量比(アセチレン/硝酸銀)が0.500より大きいと生成した銀アセチリドに吸着されるアセチレン量が過剰となり、分解工程後に生成する吸着アセチレン由来の芳香族性の低い炭素(煤)が増加するものと推察される。結果として、後述の加熱処理工程後に結晶化物が多く生成される、すなわち、分級処理の歩留まりが低下してしまう虞がある。
また、当該物質量比(アセチレン/硝酸銀)の下限値については、未反応の銀の存在が製造コスト上昇に関わることから、0.370以上とすることが好ましく、0.400以上とすることがより好ましく、0.450以上がより好ましい。
当該物質量比(アセチレン/硝酸銀)0.37より小さいと、生成する銀アセチリドの結晶サイズが小さくなり、分解して得られる銀と炭素との複合材料から銀を取り除いた多孔質炭素の比表面積およびメソ孔容積が小さくなるとともに、分級処理の歩留まりが低下する。これは、アセチレンガス吹き込み量が減少することで銀アセチリドの結晶サイズが小さくなるため、分解時に発生し銀アセチリド結晶内を伝播するエネルギー総量が低下し、グラフェン面が十分に発達せず芳香族性の低い炭素(煤)量が増加したことが原因と推測される。
ここで、アセチリド生成工程において吹き込むアセチレンガス量の調整、すなわちモル等量(アセチレン/硝酸銀)の調整方法としては、限定されるものではないが、吹き込むアセチレンガスの流量やその吹き込み時間の調整によることが好ましい。
【0031】
そして、上記のような銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス量の調整によって、芳香族性の低い炭素の生成が可及的に排除されるものと推察される。それにより結晶化物の生成・混入が可及的に排除されるが、それ以外は、従来の方法と同様の方法により、本開示の触媒担体用炭素材料を調製することができる。
すなわち、本開示の触媒担体用炭素材料は、硝酸銀のアンモニア水溶液からなる反応溶液中に所定量のアセチレンガスを吹き込んで銀アセチリドを合成し(銀アセチリド生成工程)、得られた銀アセチリドを120〜400℃の温度で自己分解爆発反応させて炭素材料中間体を回収し(分解工程)、この回収された炭素材料中間体を硝酸溶液と接触させてこの炭素材料中間体を清浄化して銀粒子を除去し(洗浄処理工程)、この清浄化された炭素材料中間体を真空中又は不活性ガス雰囲気中1400〜2100℃、好ましくは1800℃〜2100℃の温度で加熱処理(加熱処理工程)することにより製造することができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0032】
(銀アセチリド生成工程)
本開示において、銀アセチリド生成工程については、前述の通りに、アセチレンガスと硝酸銀との物質量比を調整して行われるものである。アセチレンガスの接触方法については、例えば、硝酸銀水溶液にアセチレンガスを通過させる方法、より具体的には硝酸銀水溶液にアセチレンガスを吹き込む方法が挙げられる。また、硝酸銀水溶液とアセチレンガスとの接触時において、硝酸銀水溶液に対し超音波を照射することもできる。これにより、アセチレンガスの硝酸銀水溶液への溶解と分散が促進されるという効果が得られる。その際、硝酸銀水溶液とアセチレンガスとの接触時において、硝酸銀水溶液を撹拌することが好ましい。これにより、アセチレンガスと硝酸銀水溶液との接触の接触頻度が増加する結果、効率よく銀アセチリドが生成する。撹拌は、一般的な撹拌翼を用いて行ってもよいし、マグネットスターラー等の撹拌子を用いておこなってもよい。これにより、白色結晶の嵩高い沈殿物として銀アセチリドを得ることができる。
【0033】
(分解工程)
次に、得られた銀アセチリドを加熱することにより分解させ、炭素材料中間体を得る。銀アセチリドを加熱することにより、銀アセチリドがナノスケールにて爆発し、銀と炭素とに相分離し、その際、銀はナノサイズの粒子を形成し、または反応熱によりガス化して表面部分に噴出する。炭素は、アセチレン分子等のアセチレン系化合物が3個集まってベンゼン環を形成しやすいために、芳香族性の高い構造を有する。また、銀がナノ粒子を形成するため、銀を除去した炭素相は、多孔質の構造体となる。
【0034】
銀アセチリドの加熱は、例えば、以下のように行うことができる。得られた銀アセチリドの沈殿物を、減圧雰囲気下で例えば40℃以上100℃以下で加熱(これを、「第1の加熱処理」と呼ぶこととする。)する。この加熱により、銀アセチリド中に残存した反応溶液中の溶媒を除去することができ、爆発の熱エネルギーが溶媒の気相への相転移の顕熱に費やされることを防ぎ、銀アセチリドの分解を効率化することができる。なお、この温度では、銀アセチリドは分解しない。
【0035】
次いで、溶媒が除去された銀アセチリドを、例えば140℃〜400℃で加熱する(これを、「第2の加熱処理」と呼ぶこととする。)。このように比較的高い温度まで銀アセチリドを加熱することにより、銀アセチリドがナノスケールで爆発して分解し、銀と炭素が各々ナノ構造物を形成する。これにより、銀と、炭素とを含む炭素材料中間体が得られる。
なお、同複合材料の炭素相の部分の基本構造は、前述のようにアセチレン系化合物による多環芳香族形成により、主として数層のグラフェンにより構成される。また、同複合材料においては、銀が爆発過程においてナノスケールの粒子を形成することから、銀粒子を除去した炭素材料は、比表面積が大きく、また多孔性に富んだ炭素材料を得ることができる。
【0036】
(洗浄処理工程)
炭素材料中間体から銀を取り除くには公知の方法を用いることができる。例えば、銀と炭素とを含む炭素材料中間体を熱硝酸に浸漬し、銀を溶解することで炭素材料中間体の表面及び内部に残存した銀が除かれた清浄化された炭素材料中間体を得ることができる。
【0037】
(加熱処理工程)
清浄化された炭素材料中間体を真空中又は不活性ガス雰囲気中1400〜2100℃、好ましくは1800〜2100℃の温度で熱処理し(これを、「第3の加熱処理」と呼ぶこととする。)、触媒担体用炭素材料を得る。本工程で行われる熱処理により触媒担体用炭素材料の結晶を発達させることができる、そして、焼成温度によって触媒担体用炭素材料の結晶性を調節、制御することができる。触媒担体用炭素材料が、例えば固体高分子形燃料電池の電極の触媒担体として使用される場合には、当該多孔質炭素材料は、比較的高温、例えば80℃程度であり、pH1以下の強酸性かつ1.3V vs SHEの高電位の環境下に暴露される。このような環境下では、多孔質な当該炭素材料中の炭素が酸化消耗しやすい。したがって、多孔質な当該炭素材料を触媒担体として使用する場合、本工程において結晶性を高めることが重要である。
【0038】
前述の通り、加熱処理工程の温度が2100℃を超えると、触媒担体用炭素材料の骨格を形成することとなる芳香族性の高い炭素すらも急激な結晶化が進行する。そのため、その後の分級工程で解砕・粉砕され難くなり分級処理の歩留りが低下する虞がある。よって、加熱処理工程の温度は2100℃以下が好ましい。なお、当該加熱処理工程の温度の下限側については、得られる触媒担体用炭素材料の耐久性(前述のΔG)を良好なものとするとの観点から、1400℃以上とする必要があり、好ましくは、1800℃以上とすることがよい。
加熱処理工程は、特に限定されないが、例えば減圧雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で行うことができ、好ましくは不活性ガス雰囲気下である。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等を用いることができる。
【0039】
そして、本開示の触媒担体用炭素材料は、触媒担体として、好適には、棒状体又は環状体が3次元的に分岐した3次元樹状構造を有する樹状炭素ナノ構造体からなる。この樹状炭素ナノ構造体は、従来のこの種の樹状炭素ナノ構造体と比較してBET比表面積及び耐久性において同等あるいはより優れているだけでなく、前述の通り、粗大な結晶化物が可及的に排除されているものである。そのため、この樹状炭素ナノ構造体は、分級処理の歩留まりをより高くすることができると共に、この炭素材料を触媒担体として調製された触媒層には反応ガスを抵抗なく拡散させ、また、この触媒層中で生成した水(生成水)を遅滞なく排出させるのに適したメソ細孔が形成され、更には、触媒金属の利用率が低下する虞が少なくて、燃料電池としての耐久性に優れるような固体高分子形燃料電池を得ることができる。
【0040】
ここで、樹状炭素ナノ構造体とは、例えば、枝径10nm以上数100nm以下(例えば、500nm以下(好ましくは200nm以下))で枝分かれした樹枝状の構造体を示す。
枝径は、次の通り測定する。走査型電子顕微鏡(SEM;日立ハイテク社製SU−9000)により、10万倍の倍率で5視野(大きさ2.5μm×2μm)のSEM画像を観察し、各視野の画像上でそれぞれ20ヶ所の枝径を計測し、総計100ヶ所の測定値の平均値を枝径の値とする。なお、計測する枝径は、注目する枝について、隣接する2つ分岐点間の中央部(枝分かれしている枝の中間部)の枝径(図1参照。図5B中、Dは枝径を示す)を対象とする。
ここで、図6を参照して、枝径の測定方法を説明する。図6では、1箇所の注目する枝を示している。この注目する枝について、枝分かれする分岐点BP1と分岐点BP2とを特定する。次に、特定した分岐点BP1と分岐点BP2とを結び、分岐点BP1と分岐点BP2とを結んだ垂直二等分線BCとなる位置で、枝の太さ(幅)を計測する。この計測した枝の太さ(幅)が1箇所当たりの枝径Dである。
【実施例】
【0041】
以下、実験例に基づいて、本開示の触媒担体用炭素材料及びその製造方法を具体的に説明する。
なお、以下の実験例において調製された触媒担体用炭素材料の粉末X線回折測定〔結晶化物含有度〕、BET比表面積(m/g)、細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10、窒素ガス吸着量Vmacro〔cc(STP)/g〕、ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔG(cm−1)、及び分級処理の歩留まり(%)についての測定は、それぞれ以下のようにして実施した。また、得られた触媒担体用炭素材料の一部について、透過型電子顕微鏡(TEM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行った。
【0042】
<粉末X線回折スペクトル(結晶化物含有度)の測定>
後述する各実験例で準備した試料をアルゴン雰囲気下2050℃で1時間の加熱処理を行ったものを約3mg量り採った。その後、株式会社リガク製のガラス試料板(外寸35×50mm、厚さ2mm、試料部20×20、試料部深さ0.5mm)に隙間なく充填し、試料上面がガラス上面と同一平面になるように試料を摺り切る。その試料をX線回折装置(株式会社リガク製のRINT−TTRIII)にセットし、常温下、走査ステップ0.02°、角度掃引速度1°/分、線源にCu−Kαを用いて、粉末X線回折スペクトを測定した。得られたスペクトルは、図2図4に示される通りのものである。黒鉛結晶で通常見られる(002)面の位置は回折角(2θ)≒26.5°だが、本開示においては、回折角が20°〜30°の間にグラファイトおよびそれに類する高結晶性炭素の(002)面の回折ピークが存在し、且つ回折角25.5〜26.5°近傍において、結晶化物に相当する鋭いピークが観察された。得られた粉末X線回折スペクトルから、図2の通りにA値、B値及びC値に該当する強度をそれぞれ求めて、結晶化物含有度[(C/A)−(B/A)]を算出した。
なお、結晶化物含有度の算出においてA点、B点およびC点の強度は、スペクトルの0点を基準としている。例えば、ガラス試料板のみを測定した際は炭素の回折強度に対するガラス試料板の回折強度は十分に小さく、試料板がスペクトルに与える影響は無視してよい。一方、炭素のスペクトルと同程度の回折強度を与える試料板を使用するなどバックグラウンドノイズを多く含む場合、結晶化物含有度の算出には多孔質炭素を測定したスペクトルから試料板のみを測定した際のスペクトル差し引くなど、バックグラウンドノイズの影響を適切に取り除いたスペクトルを用いなければならない。
【0043】
<BET比表面積(m/g)、細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10、及び窒素ガス吸着量Vmacro〔cc(STP)/g〕の測定>
後述する各実験例で準備した触媒担体用炭素材料を試料とし、これを約30mg測り採り、200℃で2時間真空乾燥した。その後に、自動比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン社製 AUTOSORB I−MP)を用い、窒素ガスを吸着質に用いて窒素ガス吸着等温線を測定した。吸着時の等温線の相対圧が0.05〜0.15の範囲においてBET解析を実施しBET比表面積を算出した。
また、細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10については、前記同様の窒素ガス吸着等温線を用い、それを付属のソフトを用いたDollimore−Heal法(DH法)により解析して算出した。
さらに、窒素ガス吸着量Vmacroについては、前記同様の窒素ガス吸着等温線の相対圧が0.95の時の吸着量〔cc(STP)/g〕と、0.99の時の吸着量〔cc(STP)/g〕との差を算出してVmacro〔cc(STP)/g〕の値とした。
【0044】
<ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔG(cm−1)>
後述する各実験例で準備した触媒担体用炭素材料を試料とし、これを約3mg測り採った。その後、試料をレーザラマン分光光度計(日本分光(株)製NRS−3100型)にセットし、励起レーザー:532nm、レーザーパワー:10mW(試料照射パワー:1.1mW)、顕微配置:Backscattering、スリット:100μm×100μm、対物レンズ:×100倍、スポット径:1μm、露光時間:30sec、観測波数:2000〜300cm−1、及び、積算回数:6回の測定条件で、ラマン分光スペクトルを測定した。得られた6個のスペクトルから各々1580cm−1近傍に現れるいわゆる黒鉛のG−バンドの半値幅ΔG(cm−1)を求め、その平均値を測定値とした。以下の基準にて判定した。
【0045】
<TEM観察>
結晶化物の様子を観察するために、後述する実験例27で準備した触媒担体用炭素材料を試料とし、透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。結果を図1に示す。
【0046】
<SEM観察>
樹状構造の様子を観察するため後述する実験例5で準備した触媒担体用炭素材料を試料とし、高分解能走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った。結果を図5A及び図5Bに示す。
【0047】
<分級処理の歩留まりの測定>
当該歩留まりの測定については、粉砕・分級装置として、日清エンジニアリング株式会社製の気流式粉砕分級機SJ−100GMPを用いた。後述する各実験例に係る触媒担体用炭素材料をそれぞれ100g用い、これらを粉砕圧力0.8MPa、粉挿入速度100g/hrの条件において装置に供して粉砕と同時に分級を行った。回収濾布に回収された粉末(フィルター粉)と、粗大であるために回収濾布には回収されず分級された粉末(サイクロン粉)を回収し、それぞれの重量を測定した。そして、〔(フィルター粉の重量)/(フィルター粉及びサイクロン粉の合計重量)〕×100の計算式により、分級処理の歩留まり(%)を算出した。以下の基準にて判定した。
〔合格ランク〕
良:歩留まりが95%以上であるもの。
可:歩留まりが90%以上95%未満であるもの。
〔不合格ランク〕
否:歩留まりが90%未満であるもの。
【0048】
[実験例1]
(1)銀アセチリド生成工程
硝酸銀46gに25質量%アンモニア水溶液200gを加えて溶解し、さらに水2Lを加えた後、乾燥窒素を吹き込むことで残留酸素を除去した。次いで、その溶液を攪拌すると共に超音波振動子を浸して振動を与えながら、アセチレンガスを100mL/minの流速で15分間吹き付けた。これによって、溶液中に銀アセチリドの固形物を沈殿させた。次いで、得られた沈殿物をメンブレンフィルターで濾過したが、濾過の際には、沈殿物をメタノールで洗浄し、さらに若干のメタノールを加えて沈殿物中にメタノールを含浸させた。
【0049】
(2)分解工程
上記の銀アセチリド生成工程で得られた各実験例の銀アセチリドについて、メタノールが含浸された状態のまま約0.5gを直径5cmのステンレス製円筒容器内に装入し、これを真空乾燥機に入れて、30〜40℃で1時間かけて真空乾燥し、銀アセチリド由来の銀粒子内包中間体を調製した(第1の加熱処理)。
次に、上記第1の加熱処理工程で得られた真空乾燥直後の30〜40℃の銀粒子内包中間体を、そのまま更に真空加熱電気炉から取り出すことなく160〜200℃まで急速に加熱し、20分間加熱を実施した(第2の加熱処理)。この過程で、容器内ではナノスケールの爆発反応が起こり、内包されていた銀が噴出し、表面及び内部には多数の噴出孔が形成された銀内包ナノ構造物(炭素材料中間体)を、銀と炭素とを含む複合材料として得た。
【0050】
(3)洗浄処理工程
上記第2の加熱処理で得られた銀と炭素との複合材料からなる炭素材料中間体について、その10gを濃度30質量%の硝酸溶液200mLに浸漬し、90℃で2時間洗浄することにより、残存する銀粒子を除去した。次いで、遠心分離機を用いて、上記洗浄後の炭素材料中間体から硝酸を除去し、さらに、残留する硝酸を十分に除去するために、上記遠心分離後の炭素材料中間体を再び純水中に分散させ、それを再度遠心分離機に供して、炭素材料中間体(固体)を液体から分離させた。このような水洗する操作を2回行うことにより、硝酸を除去して清浄化された炭素材料中間体として得た。
その清浄化された炭素材料中間体を、140℃、空気雰囲気下で2時間処理することにより水分を除去して乾燥させ、その後、アルゴン流通下、1100℃で2時間の熱処理を行い、多孔質な炭素材料として得た。
【0051】
(4)加熱処理工程(第3の加熱処理)
上記(3)で得られた多孔質な炭素材料を、さらに、アルゴン流通下、2050℃まで15℃/分で昇温した。そして、所定の温度に達した後、その温度にて2時間維持して加熱処理を行い、実験例1に係る触媒担体用炭素材料を得た。
【0052】
以上のようにして調製された実験例1の触媒担体用炭素材料について、前述の方法にて、粉末X線回折測定(結晶化物含有度)、BET比表面積(m/g)、細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10、窒素ガス吸着量Vmacro〔cc(STP)/g〕、ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔG(cm−1)、及び分級処理の歩留まり(%)の測定を行った。
結果を表1に示す。
【0053】
[実験例2〜8]
銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ20分、22分、23分、25分、27分、28分又は30分に変更した以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0054】
[実験例9〜11]
加熱処理工程の温度を2025℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、25分、28分又は30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0055】
[実験例12〜17]
加熱処理工程の温度を2000℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、15分、20分、23分、25分、28分又は30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0056】
[実験例18〜20]
加熱処理工程の温度を1900℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、25分、28分又は30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0057】
[実験例21〜22]
加熱処理工程の温度を1800℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、28分又は30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0058】
[実験例23〜24]
加熱処理工程の温度を1700℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、28分又は30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0059】
[実験例25]
加熱処理工程の温度を1500℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0060】
[実験例26〜27]
銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、32分又は35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0061】
[実験例28〜29]
加熱処理工程の温度を2025℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、32分又は35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0062】
[実験例30〜34]
加熱処理工程の温度を2200℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、25分、28分、30分、32分又は35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0063】
[実験例35〜36]
加熱処理工程の温度を2000℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、32分または35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0064】
[実験例37〜38]
加熱処理工程の温度を1900℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、32分または35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0065】
[実験例39〜40]
加熱処理工程の温度を1800℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、32分または35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0066】
[実験例41]
加熱処理工程の温度を1700℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、32分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0067】
[実験例42〜43]
加熱処理工程の温度を1500℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、32分または35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0068】
[実験例44]
加熱処理工程の温度を2300℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、25分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0069】
[実験例45〜46]
加熱処理工程の温度を2300℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、それぞれ、30分又は35分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0070】
[実験例47]
加熱処理工程の温度を1300℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0071】
[実験例48]
加熱処理工程の温度を1100℃に変更し、また、銀アセチリド生成工程におけるアセチレンガス吹き込み時間を、30分とした以外は、実験例1と同様の手順で各触媒担体用炭素材料を調製し、それらを同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0072】
[実験例49〜51]
また、市販の多孔質炭素材料について、実験例49〜51として検討した。
市販の多孔質炭素材料としては、樹状構造を持ち細孔も発達し比表面積が大きい多孔質炭素であるライオン社製ケッチェンブラックEC600JDをアルゴン流通下、1400℃まで15℃/分で昇温した。そして、所定の温度に達した後、その温度にて2時間維持して加熱処理を行い、実験例49に係る触媒担体用炭素材料を得た。
【0073】
また、加熱処理工程の温度を1800℃、2000℃に変更した以外は、実験例49と同様の手順で、実験例50〜51に係る触媒担体用炭素材料を調製した。
【0074】
以上のようにして調製された実験例49〜51の触媒担体用炭素材料について、前述の方法にて、BET比表面積 (m/g)、細孔径2〜10nmの積算細孔容積V2-10、窒素ガス吸着量Vmacro〔cc(STP)/g〕、ラマン分光スペクトルの1550〜1650cm−1の範囲に検出されるG−バンドの半値幅ΔG(cm−1)の測定を行った。
なお、実験例49〜51の触媒担体用炭素材料(ケッチェンブラックの焼成品)は、粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角25.5〜26.5°近傍のピークが検出されなかった。
【0075】
<触媒の調製、触媒層の作製、MEAの作製、燃料電池の組立、及び電池性能(耐久性)の評価>
次に、以上のようにして準備した分級処理後の各触媒担体用炭素材料を用い(なお、実施例49〜51の触媒担体用炭素材料については分級処理を行わず、めのう乳鉢で5分間すりつぶしたものを用いた。)、以下のようにして触媒金属が担持された固体高分子型燃料電池用触媒を調製し、また、得られた触媒を用いて触媒層インク液を調製し、次いでこの触媒層インク液を用いて触媒層を形成し、更に形成された触媒層を用いて膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)を作製し、この作製されたMEAを燃料電池セルに組み込み、燃料電池測定装置を用いて発電試験を行った。以下、各部材の調製及び発電試験によるセル評価について詳細に説明する。
【0076】
(1)固体高分子型燃料電池用触媒(白金担持炭素材料)の作製
上記で作製した各触媒担体用炭素材料を、蒸留水中に分散させ、この分散液にホルムアルデヒドを加え、40℃に設定したウォーターバスにセットし、分散液の温度がバスと同じ40℃になってから、撹拌下にこの分散液中にジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液をゆっくりと注ぎ入れた。その後、約2時間撹拌を続けた後、濾過し、得られた固形物の洗浄を行った。このようにして得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、乳鉢で粉砕し、次いで水素を5体積%含むアルゴン雰囲気中200℃で1時間熱処理をして白金触媒粒子担
持炭素材料を作製した。なお、この白金担持炭素材料の白金担持量については、触媒担体用炭素材料と白金粒子の合計質量に対して25質量%となるように調整し、誘導結合プラ
ズマ発光分光分析(ICP−AES: Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectrometry)により測定して確認した。
【0077】
(2)触媒層の調製
以上のようにして調製された白金担持炭素材料(Pt触媒)を用い、また、電解質樹脂
としてDupont社製ナフィオン(登録商標:Nafion;パースルホン酸系イオン交換樹脂)を用い、Ar雰囲気下でこれらPt触媒とナフィオンとを白金触媒粒子担持炭素材料の質量に対してナフィオン固形分の質量が1.0倍、非多孔質炭素に対しては0.5倍の割合で配合し、軽く撹拌した後、超音波でPt触媒を解砕し、更にエタノールを加えてPt触媒と電解質樹脂とを合わせた合計の固形分濃度が1.0質量%となるように調整し、Pt触媒と電解質樹脂とが混合した触媒層インク液を調製した。
【0078】
このようにして調製された固形分濃度1.0質量%の各触媒層インク液に更にエタノー
ルを加え、白金濃度が0.5質量%のスプレー塗布用触媒層インク液を作製し、白金の触
媒層単位面積当たりの質量(以下、「白金目付量」という。)が0.1mg/cmとなるようにスプレー条件を調節し、上記スプレー塗布用触媒層インクをテフロン(登録商標)シート上にスプレーした後、アルゴン中120℃で60分間の乾燥処理を行い、触媒層を作製した。
【0079】
(3)MEAの作製
以上のようにして作製した触媒層を用い、以下の方法でMEA(膜電極複合体)を作製した。
ナフィオン膜(Dupont社製NR211)から一辺6cmの正方形状の電解質膜を切り出した。
また、テフロン(登録商標)シート上に塗布されたアノード及びカソードの各触媒層については、それぞれカッターナイフで一辺2.5cmの正方形状に切り出した。
このようにして切り出されたアノード及びカソードの各触媒層の間に、各触媒層が電解質膜の中心部を挟んでそれぞれ接すると共に互いにずれが無いように、この電解質膜を挟み込み、120℃、100kg/cmで10分間プレスし、次いで室温まで冷却した後、アノード及びカソード共にテフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥ぎ取り、アノード及びカソードの各触媒層が電解質膜に定着した触媒層−電解質膜接合体を調製した。
【0080】
次に、ガス拡散層として、カーボンペーパー(SGLカーボン社製35BC)から一辺2.5cmの大きさで一対の正方形状カーボンペーパーを切り出し、これらのカーボンペーパーの間に、アノード及びカソードの各触媒層が一致してずれが無いように、上記触媒層−電解質膜接合体を挟み、120℃、50kg/cmで10分間プレスしてMEAを作製した。
なお、作製された各MEAにおける触媒金属成分、炭素材料、電解質材料の各成分の目付量については、プレス前の触媒層付テフロン(登録商標)シートの質量とプレス後に剥がしたテフロン(登録商標)シートの質量との差からナフィオン膜(電解質膜)に定着させた触媒層の質量を求め、触媒層の組成の質量比より算出した。
【0081】
(4)燃料電池の発電性能評価
各実験例に係る各触媒担体用炭素材料を用いて作製したMEAについて、それぞれセルに組み込み、燃料電池測定装置にセットして、次の手順で燃料電池の性能評価を行った。
カソード側には酸化性ガスとして空気を、また、アノード側には反応ガスとして純水素を、それぞれ利用率が40%と70%となるように、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、背圧0.05MPaで供給した。また、セル温度は80℃に設定し、また、供給する酸化性ガス及び反応ガスについては、カソード及びアノード共に、加湿器中で60℃に保温された蒸留水でバブリングを行い、低加湿状態での発電評価を行った。
【0082】
このような設定の下にセルに反応ガスを供給した条件下で、負荷を徐々に増やし、電流密度1000mA/cmにおけるセル端子間電圧を出力電圧として記録し、燃料電池の性能評価を実施した。そして、下記の合格ランクA及びBと不合格ランクCの基準で評価を行った。結果を表1に示す。
〔合格ランク〕
A:1000mA/cmにおける出力電圧が0.65V以上であるもの。
B:1000mA/cmにおける出力電圧が0.60V以上であるもの。
〔不合格ランク〕
C:合格ランクBに満たないもの。
【0083】
〔耐久性の評価〕
上記セルにおいて、アノードはそのままに、カソードには上記と同じ加湿条件のアルゴンガスを流しながら、セル電圧を1.0Vにして4秒間保持する操作とセル電圧を1.3Vにして4秒間保持する操作とを繰り返す操作(矩形波的電圧変動の繰返し操作)を1サイクルとし、この矩形波的電圧変動の繰返し操作を250サイクル実施した。その後、上記の大電流特性の評価と同様にして耐久性を調査し、下記の合格ランクA及びBと不合格ランクCの基準で評価を行った。結果を表1に示す。
〔合格ランク〕
A:1000mA/cmにおける出力電圧が0.65V以上であるもの。
B:1000mA/cmにおける出力電圧が0.60V以上であるもの。
〔不合格ランク〕
C:合格ランクBに満たないもの。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
備考欄にEと記載した実験例の触媒担体用炭素材料の枝径を既述の方法で観察したところ、いずれも枝径が500nm以下となっているのが確認された。
【0088】
なお、日本国特許出願第2017−071626号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6