特許第6970286号(P6970286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6970286ブテンの酸化的脱水素化反応用触媒およびその製造方法
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  • 特許6970286-ブテンの酸化的脱水素化反応用触媒およびその製造方法 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970286
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ブテンの酸化的脱水素化反応用触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/887 20060101AFI20211111BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20211111BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20211111BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B01J23/887 Z
   B01J37/04 102
   B01J37/03 B
   B01J37/10
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-517315(P2020-517315)
(86)(22)【出願日】2018年11月27日
(65)【公表番号】特表2020-535002(P2020-535002A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(86)【国際出願番号】KR2018014726
(87)【国際公開番号】WO2019107880
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年3月25日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160634
(32)【優先日】2017年11月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、アラ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、ヨン−チョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、キョ−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パン、チョンオプ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、チョルオク
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0073733(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0078040(KR,A)
【文献】 特開昭55−013187(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161703(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0061144(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0131861(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07C 1/00−409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式1で表され、
触媒表面にコバルトを含み、
XPSで測定した触媒表面での組成分析結果、ビスマス(Bi)のモル含量(atomic ratio、%)がコバルト(Co)のモル含量より高い、
ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒:
【化1】
上記組成式1で、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Coはコバルトであり、Oは酸素であり、
M1は、1種以上の第1族金属元素であり、
M4は、コバルト(Co)を除いた、1種以上の第4周期遷移金属元素であり、
aは9〜25であり、bは0.5〜2であり、cは1〜10であり、dは0.01〜1であり、eは、0.5〜5であり、
fは、30〜50であって、前記Mo、Bi、Co、M1、およびM4の原子価によって決められる値である。
【請求項2】
前記第4周期遷移金属は、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、および亜鉛からなる群より選択された1種以上を含む、
請求項1に記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒。
【請求項3】
前記1族金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選択された1種以上を含む、
請求項1または2に記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒。
【請求項4】
下記計算式1を満足する、請求項1〜3のいずれかに記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒:
【数1】
上記計算式1で、
BARSは、前記触媒表面で、XPSで測定した、ビスマスのモル含量(atomic ratio、%)/コバルトのモル含量(atomic ratio、%)であり、
BARTは、前記触媒全体で、ICP−OESで測定した、ビスマスのモル含量(atomic ratio、%)/コバルトのモル含量(atomic ratio、%)である。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法であって、
A)コバルト塩およびコバルト以外の第4周期遷移金属の塩を含む水溶液と、モリブデン酸アンモニウム水溶液を混合し、共沈させて(co−precipitate)、第1共沈液を製造する、第1共沈段階;
B)ビスマス(Bi)塩水溶液およびモリブデン酸アンモニウム水溶液を混合し、共沈させて、第2共沈液を製造する、第2共沈段階;および
前記第1共沈液と前記第2共沈液を混合する段階を含み;
前記第1共沈段階または、前記第2共沈段階は、それぞれ独立して、1族金属の塩をさらに含む水溶液をさらに混合して共沈させる;
ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法。
【請求項6】
前記第1および第2共沈段階は、それぞれ独立して、30〜50℃の温度条件で、30分〜2時間攪拌下に行われる、
請求項5に記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法。
【請求項7】
前記第4周期遷移金属は、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、および亜鉛からなる群より選択された1種以上を含む、
請求項5または6に記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法。
【請求項8】
前記1族金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選択された1種以上を含む、
請求項5〜7のいずれかに記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法。
【請求項9】
前記第1共沈液と前記第2共沈液を混合する段階以後、
乾燥、粉砕、および分級する段階をさらに含む、
請求項5〜8のいずれかに記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法。
【請求項10】
前記分級する段階では、355μm以下大きさの粒子のみ収集する、
請求項9に記載のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2017年11月28日付韓国特許出願第10−2017−0160634号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ブテンの酸化的脱水素化反応用触媒およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
1,3−ブタジエンは、無色、無臭の可燃性気体であり圧力を加えれば簡単に液化され、引火されやすい物質であって、多様な石油化学製品、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム(ABS)など合成ゴムの原料になる非常に重要な基礎物質である。
【0004】
1,3−ブタジエンを製造する方法には、大きく、ナフサ(Naphtha)クラッキング、ブテンの直接脱水素化反応、ブテンの酸化的脱水素化反応がある。
【0005】
このうち、ナフサクラッキング工程は、市場に供給される1,3−ブタジエンの90%以上を担当しており、エチレン生産のためのスチームクラッキング工程でクラッカーから生産される基礎油分から1,3−ブタジエンを選択的に抽出する形態に構成される。
【0006】
しかし、スチームクラッキング工程の主目的は、1,3−ブタジエンでないエチレンなどの他の基礎油分を生産することであるため、1,3−ブタジエンを生産するのに効果的でなく、高い反応温度によってエネルギー消費量が多いという問題点を有している。
【0007】
よって、スチームクラッキング工程で有用な基礎油分を全て抽出して残ったC4混合物中のブテンから水素を除去して1,3−ブタジエンを得る、脱水素化反応(Dehydrogenation)が注目を浴びつつある。
【0008】
ブテンの脱水素化反応には、直接脱水素化反応と酸化的脱水素化反応がある。この時、前記反応は、n−ブテン(normal butene、1−butene)、あるいは(cis、trans)−2−ブテンが全て可能である。
【0009】
ブテンの直接脱水素化反応は、ブテンから水素を脱離させて1,3−ブタジエンを得る反応であり、高度の吸熱反応であるため、熱力学的に不利である。したがって、高温の反応条件が要求され、温度を高めて転換率を高めても温度上昇によって副反応が増加され1,3−ブタジエンの収率が低まるという問題がある。
【0010】
ブテンの酸化的脱水素化反応は、ブテンと酸素を反応させて、1,3−ブタジエンと水を生成する反応であり、直接脱水素化反応と異なり発熱反応であるため、熱力学的に非常に有利である。したがって、直接脱水素化反応に比べて、相対的に低い反応温度でも高い収率の1,3−ブタジエンを得ることができる。
【0011】
現在まで知られたブテンの酸化的脱水素化反応に使用される触媒としては、フェライト(ferrite)系触媒、錫系触媒、ビスマス−モリブデン系触媒などがある。
【0012】
この中で、ビスマス−モリブデン系触媒には、ビスマスとモリブデン金属酸化物のみからなるビスマス−モリブデン触媒と、ビスマス、モリブデンを基にして多様な金属成分が追加された多成分ビスマス−モリブデン触媒がある。
【0013】
多成分ビスマス−モリブデン触媒は、ビスマスを含む多様な金属の硝酸塩前駆体とモリブデン酸アンモニウム水溶液の共沈で製造されている。しかし、構成成分が複雑な多成分ビスマス−モリブデン触媒を一般的な共沈法で製造する場合、触媒活性相が効率的に形成されにくい。
【0014】
したがって、相対的に低温である反応条件で高い触媒活性を示すことができるブテンの酸化的脱水素化反応用触媒を効率的に合成するための方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本明細書では、相対的に低温である反応条件で高い触媒活性を示すことができるブテンの酸化的脱水素化反応用触媒を提供しようとする。
【0016】
また、本明細書では、前記ブテンの酸化的脱水素化反応用触媒を製造することができる方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、
下記組成式1で表され、
XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)で測定した触媒表面での組成分析結果、ビスマス(Bi)のモル含量(atomic ratio、%)がコバルト(Co)のモル含量より高い、
ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒を提供する。
【0018】
【化1】
【0019】
上記組成式1で、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Coはコバルトであり、Oは酸素であり、
M1は、1種以上の第1族金属元素であり、
M4は、コバルト(Co)を除いた、1種以上の第4周期遷移金属元素であり、
aは9〜25であり、bは0.5〜2であり、cは1〜10であり、dは0.01〜1であり、eは、0.5〜5であり、
fは、30〜50であって、前記他の金属の原子価によって決められる値である。
【0020】
また、本発明は、
A)コバルト塩およびコバルト以外の第4周期遷移金属の塩を含む水溶液と、モリブデン酸アンモニウム水溶液を混合し、共沈させて(co−precipitate)、第1共沈液を製造する、第1共沈段階;
B)ビスマス(Bi)塩水溶液およびモリブデン酸アンモニウム水溶液を混合し、共沈させて、第2共沈液を製造する、第2共沈段階;および
前記第1共沈液と前記第2共沈液を混合する段階を含み;
前記第1共沈段階または、前記第2共沈段階は、それぞれ独立して、1族金属の塩をさらに含む水溶液をさらに混合して共沈させる;
ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のブテンの酸化的脱水素化反応用触媒は、反応活性相の役割を果たすMo−Bi相が表面に相対的に多く存在し、ブテンの酸化的脱水素化反応で、相対的に低温条件でも高い触媒活性、高い転換率および高いブタジエン選択度を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1および比較例1による触媒のX−ray diffraction(XRD)イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明で、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0024】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本明細書で、“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0025】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるので、特定実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0026】
本明細書で、ブテンの酸化的脱水素化反応とは、下記反応式で表示できる反応を意味し、反応に使用されるブテンは、1−butene、およびcis、trans−2−buteneを全て意味する。
【0027】
【化2】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明の一側面によれば、
下記組成式1で表され、
XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)で測定した触媒表面での組成分析結果、ビスマス(Bi)のモル含量(atomic ratio、%)がコバルト(Co)のモル含量より高い、
ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒が提供される。
【0030】
【化3】
【0031】
上記組成式1で、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Coはコバルトであり、Oは酸素であり、
M1は、1種以上の第1族金属元素であり、
M4は、コバルト(Co)を除いた、1種以上の第4周期遷移金属元素であり、
aは9〜25であり、bは0.5〜2であり、cは1〜10であり、dは0.01〜1であり、eは、0.5〜5であり、
fは、30〜50であって、前記他の金属の原子価によって決められる値である。
【0032】
本発明者らが研究した結果によれば、ビスマス−モリブデン系触媒において、全体組成が類似していても、添加される金属の種類、製造方法、製造条件によって、触媒活性に大きな差が発生することがある。
【0033】
よって、本発明の一実施形態による、ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒は、
下記組成式1で表され、その触媒の表面をXPSで測定した時、ビスマス(Bi):コバルト(Co)のモル比率が既存の一般的な共沈法で製造した触媒に比べて大きい値を有するようになる。
【0034】
【化4】
【0035】
上記組成式1で、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Coはコバルトであり、Oは酸素であり、
M1は、1種以上の第1族金属元素であり、
M4は、コバルト(Co)を除いた、1種以上の第4周期遷移金属元素であり、
aは9〜25であり、bは0.5〜2であり、cは1〜10であり、dは0.01〜1であり、eは、0.5〜5であり、
fは、30〜50であって、前記他の金属の原子価によって決められる値である。
【0036】
この時、前記第4周期遷移金属は、周期律表上の第4周期金属元素のうち、コバルトを除いた金属元素を意味し、具体的に、例えば、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、および亜鉛からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよく、好ましくは、鉄、マンガン、銅のうち、1種以上であってもよい。
【0037】
そして、前記1族金属は、周期律表上のアルカリ金属元素を意味し、具体的に、例えば、ソジウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選択された1種以上を含むものであってもよく、好ましくは、カリウムおよび/またはセシウムであってもよい。
【0038】
この時、前記1族金属として、2種の金属元素が含まれるか、前記第4周期遷移金属として、2種の金属元素が含まれる場合、前述の組成式1は、それぞれ下記組成式1−1〜1−3で表示できる。
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
【化7】
【0042】
上記組成式1で、Moはモリブデンであり、Biはビスマスであり、Coはコバルトであり、Oは酸素であり、
M1は、第1族金属元素であり、M11およびM12は、それぞれ互いに異なる第1族金属元素であり、
M4は、コバルト(Co)を除いた、第4周期遷移金属元素であり、M
41およびM42は、コバルト(Co)を除いた、互いに異なる第4周期遷移金属元素であり、
aは9〜25であり、bは0.5〜2であり、cは1〜10であり、dは0.01〜1であり、eは、0.5〜5であり、
d1およびd2は、それぞれ、互いに独立して、0.01〜0.99であり、e1およびe2は、それぞれ、互いに独立して、0.5〜4.5であり、
fは、30〜50であって、前記他の金属の原子価によって決められる値である。
【0043】
ビスマス−モリブデン系の多成分金属酸化物触媒は、ブテンの酸化的脱水素化反応に効果的であると知られている。ビスマス−モリブデンのα−、β−、γ−相が部分酸化反応用触媒に与える影響に対する多様な意見があるが、一般にビスマス−モリブデンの酸素移動度はMars−van Krevelen反応機構と同様にブテンの酸化的脱水素化反応に影響を与えると知られている。
【0044】
このような触媒での酸素拡散速度および反応活性は結晶相によって異なり、γ−相で最も高いと報告している。また、α−相とγ−相、そしてβ相とγ−相が共に存在する時、synergetic effectによって優れた活性および選択度を示すと報告されたことがある。
【0045】
多成分ビスマス−モリブデン触媒が単一ビスマス−モリブデンに比べて活性に優れた理由は大きく二つである。第一は表面積増加であり、第二は酸化反応機構と関連がある。プロピレン部分酸化反応で、酸素の活性化とプロピレン反応はそれぞれ異なる活性点で起こり、活性化された酸素原子はCo−Fe−Mo−O相を通じてBi−Mo−O相にある反応活性点に“バルク拡散(bulk diffusion)”すると知られている。このような形態の酸素移動は、格子空孔(lattice vacancy)を形成できる2価と3価金属陽イオン、特にFe3+を含む触媒システムで起こることが可能である。このようなシステムでは活性酸素が円滑に供給され触媒の活性が増進され、反応活性相の数も増加する。
【0046】
したがって、反応活性と選択度を増進させるためには、酸素活性点と反応活性点が効果的に作用できるようにする構造の触媒を製造することが必要である。ビスマス−モリブデン系の多成分金属酸化物触媒の構造は、組成、各成分の元素比だけでなく、製造方法、製造条件にも大きく影響を受ける。
【0047】
本発明の触媒は、反応活性点の役割を果たすビスマス−モリブデン相と酸素活性化および酸素を活性点に供給する役割を果たすコバルト−モリブデン相をそれぞれ共沈して混合することによって触媒の表面で、相対的にビスマス−モリブデン相を多量で含むので、このような特有の組成によって、高い触媒活性を実現することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記ブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒は、下記計算式1を満足するのが好ましい。
【0049】
【数1】
【0050】
上記計算式1で、
BARSは、前記触媒表面で、XPSで測定した、ビスマスモル含量(atomic ratio、%)/コバルトのモル含量(atomic ratio、%)であり、
BARTは、前記触媒全体で、ICP−OESで測定した、ビスマスのモル含量(atomic ratio、%)/コバルトのモル含量(atomic ratio、%)である。
【0051】
即ち、本発明の一実施形態による触媒は、触媒全体組成に比べて、表面で相対的に高い量、具体的には約6倍以上、または約6〜約20倍以上の相対含量で、ビスマスを含む形態を備えて、従来のビスマス−モリブデン系触媒に比べて、高い反応活性およびブタジエン選択度を実現することができるようになる。
【0052】
また、前記式によれば、本発明の触媒は表面を除いた部分で相対的に多い量のコバルトを含むことができるようになって(酸素活性部)、反応進行によって反応活性部に酸素の供給を円滑にし、ビスマス−モリブデン−酸素結晶構造の再生を促進させて、全体反応の活性を顕著に増加させることができるようになる。
【0053】
一方、前述のブテンの酸化的脱水素化反応用(Oxidative dehydrogenation)触媒は、
A)コバルト塩およびコバルト以外の第4周期遷移金属の塩を含む水溶液と、モリブデン酸アンモニウム水溶液を混合し、共沈させて(co−precipitate)、第1共沈液を製造する、第1共沈段階;
B)ビスマス(Bi)塩水溶液およびモリブデン酸アンモニウム水溶液を混合し、共沈させて、第2共沈液を製造する、第2共沈段階;および
前記第1共沈液と前記第2共沈液を混合する段階を含み;
前記第1共沈段階または、前記第2共沈段階は、それぞれ独立して、1族金属の塩をさらに含む水溶液をさらに混合して共沈させる;
製造方法によって製造できる。
【0054】
本発明の一実施形態による製造方法によれば、互いに前駆体化合物を異にした、2段階共沈法によって、高い再現性で触媒を製造することができ、また、部分酸化反応が起こる反応活性部および酸素活性化が起こる酸素活性部をそれぞれ共沈して合成して、各活性部を効率的に合成し、特に従来の触媒より表面でビスマスの相対的含量の高い触媒を製造することができ、前述のように、高い活性およびブタジエン選択度を実現できる触媒を製造することができるようになる。
【0055】
発明の一実施形態によれば、前記第1および第2共沈段階は、それぞれ独立して、約30〜約50℃の温度条件で、約0.5〜約2時間攪拌下に行うことができて、相対的に温和な条件で容易に行うことができる。
【0056】
この時、前記第4周期遷移金属は、周期律表上の4周期金属元素のうち、コバルトを除いた金属元素を意味し、具体的に、例えば、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、および亜鉛からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよ、好ましくは、鉄、マンガン、銅のうち、1種以上であってもよい。
【0057】
この時、前記1族金属は、周期律表上のアルカリ金属元素を意味し、具体的に、例えば、ソジウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選択された1種以上を含むものであってもよく、好ましくは、カリウムおよび/またはセシウムであってもよい。
【0058】
このような方法によって、多成分ビスマス−モリブデン触媒を製造することができ、前述の、ビスマス、コバルト、モリブデン以外に各金属元素は、触媒成分として共に含まれて、触媒中の活性金属の酸化数変化による触媒の安定性を高める役割を果たすことができる。
【0059】
この時、前述の金属の塩とは、硝酸塩、シュウ酸塩、塩化塩、などをいうものであって、水溶液製造時溶解度および反応性を考慮して、硝酸塩および/または塩化塩を使用するのが好ましい。
【0060】
そして、前記第1共沈液と前記第2共沈液を混合する段階以後、
乾燥、粉砕、および分級する段階をさらに含んでもよい。
【0061】
乾燥段階は、第1および第2共沈液を混合して製造されたスラリーから溶媒を除去して、触媒活性成分を得る段階であって、約100〜約150℃の条件で約1〜約48時間行うことができる。
【0062】
また、前記粉砕および分級段階は、触媒粒子の大きさを調節して、ブテンの酸化的脱水素化反応で反応サイトの表面積を広め、反応活性を高めることができる。
【0063】
具体的に、前記分級段階では、粉砕以後、約355μm以下大きさの粒子を収集して、触媒として使用することができる。
【0064】
前記のように得られた触媒粒子は、反応器など、ブテンの酸化的脱水素化反応条件によって、一定の形態に成形して使用することもでき、以後、焼成する段階をさらに含むことができる。
【0065】
焼成は、空気雰囲気下で約400〜約600で熱処理する方式で行うことができる。
【0066】
一方、本発明の触媒は、ブテンの酸化的脱水素化反応に使用できる。
【0067】
前記原料物質として使用するブテンは、ナフサクラッキング工程で副生されるC4混合物に含まれたものであってもよい。C4混合物は、1−ブテンを約30重量%以上、イソブタンを含むブタン類約25重量%以上を含み、その他、イソブテンなどの不純物を含む。
【0068】
ブテンの酸化的脱水素化反応の反応温度は約250〜約450、または、約350〜420範囲で維持するのが、触媒の活性化を最適化させるのに好ましい。
【0069】
また、反応圧力は、約0気圧〜約10気圧とするが、万一その範囲を外れる場合、1,3−ブタジエンの選択度が減少する問題が発生することがある。
【0070】
反応時、反応物であるブテンと酸素は、窒素およびスチームと共に供給されるのが反応効率および温度調節側面から好ましく、その比率は本発明の属する技術分野で一般に実施する方法によってもよい。
【0071】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるのではない。
【実施例】
【0072】
<実施例>
(触媒製造)
実施例1(サンプル1対応)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、Fe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにBi(NO33・5H2Oを58.6g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを10.7g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40℃の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた(第1共沈液)。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌させた後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0073】
比較例1(サンプル2対応)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、Fe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水56gが入っているビーカーにBi(NO33・5H2Oを58.6gを入れて攪拌しながら、硝酸を17.6g添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水1020gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを255.9g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液AとBを混合して1時間攪拌した後、滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた。滴下(dropping)は2時間行い、滴下(dropping)完了後に1時間同一条件で攪拌した。
エージングを終えたパイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0074】
実施例2(サンプル3)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、Fe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにBi(NO33・5H2Oを29.3g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを5.4g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた(第1共沈液)。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌させた後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0075】
実施例3(サンプル4)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、Fe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにBi(NO33・5H2Oを70.3g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを12.8g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した(第1共沈液)。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌させた後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0076】
実施例4(サンプル5)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、Fe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにBi(NO33・5H2Oを82g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを14.5g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた(第1共沈液)。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌させた後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0077】
実施例5(サンプル6対応)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、Fe(NO33・9H2Oを73.2g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにBi(NO33・5H2Oを58.6g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを10.7g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた(第1共沈液)。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌させた後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0078】
実施例6(サンプル7対応)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにFe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、そしてBi(NO33・5H2Oを58.6g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを10.7g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた(第1共沈液)。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌した後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に470で熱処理して触媒を製造した。
【0079】
実施例7(サンプル8対応)
前駆体水溶液A:蒸留水183gが入っているビーカーにFe(NO33・9H2Oを63.4g、そしてCo(NO32・6H2Oを281.2g順次に投入した後、攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液B:蒸留水100gが入っているビーカーにKNO3を0.2g、CsNO3を11.7g、そしてBi(NO33・5H2Oを58.6g入れて攪拌しながら、硝酸14gを添加した。
前駆体水溶液C:蒸留水900gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2Oを245.2g入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液C’:蒸留水180gが入っているビーカーに(NH46Mo724・4H2O 10.7gを入れて攪拌しながら溶かした。
前駆体水溶液Aは滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液Cに投入して沈殿させた(第1共沈液)。滴下(Dropping)は約1時間行い、その後、約30分程度同一条件で攪拌した。
これと同時に、前駆体水溶液Bを滴下漏斗(dropping funnel)を用いて攪拌中である40の前駆体水溶液C’に添加した(第2共沈液)。滴下(Dropping)は約30分間行い、その後、約1時間程度同一条件で攪拌した。
エージングを終えた第2共沈液を第1共沈液に添加し、同じ条件で約40分間さらに攪拌させた後、パイレックス(登録商標)トレイ(pyrex tray)に移し替えて、120で24時間乾燥した。
乾燥されたサンプルを粉砕機で粉砕した後、標準ふるいを用いて355μm以下大きさの粒子のみ収集してイソプロピルアルコール:蒸留水=1:1の重量比で混合した溶液を噴霧しながら粉末をこねた。
こねられた粉末は円筒形ペレットに押出成形した(直径=0.6cm)。成形を終えたペレットを乾燥した後、空気を流しながら最終的に450で熱処理して触媒を製造した。


【0080】
(XRD測定)
図1は、本発明の実施例1および比較例1による触媒のX線回折(X−ray diffraction、XRD)イメージである。
【0081】
図1を参照すれば、本発明の実施例1によって製造された触媒で、コバルト−モリブデン−酸素結晶構造と、ビスマス−モリブデン−酸素結晶構造、それぞれによるピークを明確に確認することができ、特に、本発明の実施例1でβ−CoMoO4(a)に該当する回折ピーク(diffraction peak)が相対的に広く現れるのを明確に確認することができ、これはβ−CoMoO4相が高分散されているということを意味する。
【0082】
(元素含量測定)
前記実施例1および比較例1による触媒に対して、各元素別表面組成と全体組成を測定した。
表面組成はXPSを用いて測定し、全体組成はICP−OESを用いて測定した。
【0083】
測定された組成を下記表1に整理した。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1を参照すれば、本発明の実施例による触媒は、表面で相対的に多い量のビスマスを含み、深部で相対的に多い量のコバルトを含むのを明確に確認することができ、特に、下記計算式1で表される値が約11.2であるのを明確に確認することができる。
【0086】
【数2】
【0087】
上記計算式1で、
BARSは、前記触媒表面で、XPSで測定した、ビスマスのモル含量(atomic ratio、%)/コバルトのモル含量(atomic ratio、%)であり、
BARTは、前記触媒全体で、ICP−OESで測定した、ビスマスのモル含量(atomic ratio、%)/コバルトのモル含量(atomic ratio、%)である。
【0088】
(ブテン酸化脱水素化反応)
前記実施例および比較例で製造した触媒を用いて、ブテン酸化脱水素反応を実施した。
反応器は内径3/4インチ、長さ55cmであり、溶融塩(molten salt)によって温度が調節されるチューブ反応器で行った。この時、溶融塩(molten salt)の温度は320であった。
反応機内部は不活性アルミナボール、触媒、不活性アルミナボールを順次に28、20、59ccずつ充填した。
GHSV(gas hourly space velocity)は1−butene基準に100h-1であった。
生成物は、熱伝導度検出器(thermal conductivity detector、TCD)および水素炎イオン化検出器(flame ionization detector、FID)が装着されたガスクロマトグラフ(gas chromatograph、GC)を用いて分析した。
【0089】
実験結果を表2に示した。
【0090】
【表2】
【0091】
上記表2を参照すれば、本願発明の実施例によって製造された触媒は、比較例に比べて、転換率において、約10%ポイント以上優れた効果を示すのを確認することができ、COx選択度においても、大体比較例より優れているのを確認することができる。
図1