特許第6970287号(P6970287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6970287-高吸水性樹脂シートの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970287
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20211111BHJP
   C08F 20/04 20060101ALI20211111BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20211111BHJP
   C08F 6/14 20060101ALI20211111BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20211111BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C08J9/06CEY
   C08F20/04
   C08F2/44 A
   C08F6/14
   C08J9/32
   C08L33/02
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-518770(P2020-518770)
(86)(22)【出願日】2019年4月30日
(65)【公表番号】特表2020-536149(P2020-536149A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】KR2019005222
(87)【国際公開番号】WO2019216591
(87)【国際公開日】20191114
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0054364
(32)【優先日】2018年5月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049877
(32)【優先日】2019年4月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、キヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム、キチョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソンキュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チューウン
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第96/017884(WO,A3)
【文献】 特表2007−514833(JP,A)
【文献】 特表2012−522880(JP,A)
【文献】 特表2014−533530(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0354757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/02
C08F 20/04
C08F 2/44
C08F 6/14
C08J 9/06
C08J 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)を含む共単量体、内部架橋剤、カプセル化した発泡剤、平均粒径1〜100μmの無機発泡剤、および重合開始剤を混合してモノマー組成物を製造する段階と;
前記モノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階と;
前記含水ゲル重合体を乾燥して高吸水性樹脂シートを形成する段階と;を含む高吸水性樹脂シートの製造方法であって、
前記カプセル化した発泡剤は、炭化水素を含むコアと、前記コアを囲み、熱可塑性樹脂で形成されるシェルとを含む構造を有し、
前記ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5〜40重量部で含まれ、
前記カプセル化した発泡剤は、アクリル酸系単量体100重量部に対して0.3〜20重量部で含まれ、
前記無機発泡剤は、アクリル酸系単量体100重量部に対して0.1〜10重量部以上含まれ、
前記カプセル化した発泡剤と無機発泡剤は3:1〜1:1の重量比で含まれる、高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記カプセル化した発泡剤は、平均粒径が2〜50μmである、請求項1に記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記カプセル化した発泡剤は、空気中の最大膨張比率が3〜15倍である、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記炭化水素は、n−プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、iso−オクタンおよびシクロオクタンからなる群より選ばれた1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンからなる群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記無機発泡剤は、炭酸カルシウム(CaCO3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸アンモニウム((NH42CO3)、亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)、ホウ素化水素ナトリウム(NaBH4)および炭酸ナトリウム(Na2CO3)の中から選ばれる1種以上である、請求項1〜のいずれかに記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項7】
前記無機発泡剤の平均粒径は、5〜20μmである、請求項1〜のいずれかに記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項8】
前記カプセル化した発泡剤と無機発泡剤は、2:1〜1:1の重量比で含まれる、請求項1〜のいずれかに記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【請求項9】
前記カプセル化した発泡剤および無機発泡剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.4〜20重量部で含まれる、請求項1〜のいずれかに記載の高吸水性樹脂シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年5月11日付の韓国特許出願第10−2018−0054364号および2019年4月29日付の韓国特許出願第10−2019−0049877号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは、自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なるように命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつや生理用ナプキンなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使われている。
【0004】
一般的に各種おむつ、生理用ナプキンまたは失禁パッドなどの衛生用品には、高吸水性樹脂粒子を含む吸収体が含まれるが、このような吸収体は、主として前記高吸水性樹脂粒子と、このような高吸水性樹脂粒子を適宜固定しながらも前記吸収体および衛生用品の形態を維持させるためにフラッフパルプ(fluff pulp)を使用するのが一般的であった。
【0005】
しかし、このようなフラッフパルプの存在によって吸収体および衛生用品のスリム化および薄型化が難しく、ユーザの皮膚と衛生用品との間に汗が溜まるなど着用感が劣る問題があった。しかも、主として木材を原料として得られる前記フラッフパルプの多量使用の必要性により、最近の環境保護の時流に逆行するところもあり、前記吸収層および衛生用品の製造単価を高める主な原因の一つとなっている。
【0006】
そのため、前記吸収層および衛生用品において、フラッフパルプの使用量を減らすか、またはフラッフパルプを使わないいわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの衛生用品を提供するための多くの試みがなされている。
【0007】
一方、現在の高吸水性樹脂は、ほとんどの粉末(powder)形態で製造されて使われている。このような粉末形態の高吸水性樹脂は衛生材を製造するときや実際の使用時に飛散するか漏出し得、特定形態の基質(substrate)と共に使用されなければならないので使用範囲の制限がある実情である。
【0008】
そこで、最近では高吸水性樹脂を繊維(fiber)または不織布の形態で製造する方法が提案されている。しかし、吸収性能の低下がなくパルプレス吸収体として使用することができ、十分な柔軟性を現わす高吸水性樹脂を確保するための方案が不十分であるため、その製造方法に対する研究がまだ求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような課題を解決するためのものとして、本発明は、高い可撓性および速い吸収速度を示す高吸水性樹脂シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような課題を解決するために本発明の一側面は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)を含む共単量体、内部架橋剤、カプセル化した発泡剤、平均粒径1〜100μmの無機発泡剤、および重合開始剤を混合してモノマー組成物を製造する段階と;
前記モノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階と;
前記含水ゲル重合体を乾燥して高吸水性樹脂シートを形成する段階と;を含む高吸水性樹脂シートの製造方法であって、
前記カプセル化した発泡剤と無機発泡剤は、3:1〜1:1の重量比で含まれる高吸水性樹脂シートの製造方法を提供する。
【0011】
前記ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して5〜40重量部で含まれ得る。
【0012】
前記カプセル化した発泡剤は、平均粒径が2〜50μmであり得、空気中の最大膨張比率が3〜15倍であり得る。

【0013】
また、前記カプセル化した発泡剤は、炭化水素を含むコアと、前記コアを囲み、熱可塑性樹脂で形成されるシェルとを含む構造を有し得る。
【0014】
この時、前記炭化水素は、n−プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、iso−オクタンおよびシクロオクタンからなる群より選ばれた1種以上であり得、前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンからなる群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーであり得る。
【0015】
前記無機発泡剤は、炭酸カルシウム(CaCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸アンモニウム(NHHCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)、ホウ素化水素ナトリウム(NaBH)および炭酸ナトリウム(NaCO)の中から選ばれる1種以上であり得る。
【0016】
好ましくは、前記無機発泡剤の平均粒径は、5〜20μmであり得る。
【0017】
また好ましくは、前記カプセル化した発泡剤と無機発泡剤は、2:1〜1:1の重量比で含まれ得る。
【0018】
一方、前記カプセル化した発泡剤は、アクリル酸系単量体100重量部に対して0.3〜20重量部で含まれ得、前記無機発泡剤は、アクリル酸系単量体100重量部に対して0.1重量部以上含まれ得る。
【0019】
また、前記カプセル化した発泡剤および無機発泡剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.4〜20重量部で含まれ得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によって収得される高吸水性樹脂シートは、粉末状態の通常の高吸水性樹脂とは異なり、シートまたはフィルム形態で得られ、すぐに製品への適用が可能であり、飛散または漏出の恐れがなく柔軟性を現わすことができる。
【0021】
また、本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法によって収得される高吸水性樹脂シートは、気孔が互いに連結されている開気孔チャネル(open pore channel)構造を有し、これによって毛細管圧力(capillary pressure)による水の吸収が可能であるため、吸収速度および透過性が向上することができる。
【0022】
このように、柔軟性と可撓性を有し、かつ高吸水性樹脂本来の物性で速い吸収速度を示し、可撓性および高い吸水性を必要とする多様な製品に適用可能である。
【0023】
また、前記高吸水性樹脂シートは、パルプレス吸収体として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例により製造された高吸水性樹脂シートの断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0026】
本明細書における粒子の粒径Dnは、粒径による粒子個数累積分布のn体積%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は、粒子の粒径を昇順に累積させた時、粒子個数累積分布の50%地点での粒径であり、D90は、粒径による粒子個数累積分布の90%地点での粒径であり、D10は、粒径による粒子個数累積分布の10%地点での粒径である。本発明で平均粒径とは、前記D50粒径を意味する。前記Dnは、レーザ回折法(Laser Diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、前記粒径Dnは、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Mastersizer3000)に導入して粒子がレーザビームを通過する時、粒子サイズに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出することによって測定することができる。
【0027】
以下、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂シートの製造方法を説明する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)を含む共単量体、内部架橋剤、カプセル化した発泡剤、平均粒径(D50)1〜100μmの無機発泡剤、および重合開始剤を混合してモノマー組成物を製造する段階と;前記モノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階と;前記含水ゲル重合体を乾燥して高吸水性樹脂シートを形成する段階とを含み、前記カプセル化した発泡剤と無機発泡剤は3:1〜1:1の重量比で含まれる、高吸水性樹脂シートの製造方法が提供される。
【0029】
本発明の製造方法において、前記高吸水性樹脂の原料物質であるモノマー組成物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)を含む共単量体、内部架橋剤、カプセル化した発泡剤、平均粒径(D50)1〜100μmの無機発泡剤、および重合開始剤を含む。
【0030】
まず、前記アクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物である:
[化学式1]
−COOM
前記化学式1において、
は不飽和結合を含む炭素数2〜5のアルキル基であり、
は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0031】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0032】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用され得る。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は、40〜95モル%、または40〜80モル%、または45〜75モル%であり得る。前記中和度の範囲は、最終物性に応じて調節され得る。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出して重合が円滑に行われることが難しく、逆に、中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく劣るだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を現し得る。
【0033】
前記アクリル酸系単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含むモノマー組成物に対して約20〜約60重量%、好ましくは約40〜約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度であり得る。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が生じ得、逆に、濃度が過度に高くなると単量体の一部が析出するか、または重合された含水ゲル状重合体の粉砕時に低い粉砕効率を示すなど工程上の問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0034】
本発明のモノマー組成物は、共単量体としてポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)を含む。
【0035】
前記ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレートは、重合過程でアクリル酸系単量体とともに共重合されて柔軟性のある高分子構造の高吸水性樹脂の重合を可能にする。
【0036】
最適化された高分子構造を形成するために、前記ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレートにおいてエチレングリコール繰り返し単位数は、3〜100、または3〜80、または3〜50であるものを使用し得る。
【0037】
前記ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレートの含有量は、アクリル酸系単量体100重量部に対して5〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜30重量部を使用し得る。前記共単量体の含有量が過度に少ないと柔軟性改善の効果がなく、過度に多く含まれる場合、吸収速度、および吸収能が低下し得るため、このような観点から上記の含有量の範囲が好ましい。
【0038】
本発明において、内部架橋剤としては、例えば、ポリオールのポリ(メタ)アクリレート系化合物、例えば、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート系化合物を使用し得る。より具体的な例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレートまたはペンタエリストールテトラアクリレートを使用し得、好ましくは、ポリエチレングリコールジアクリレートを使用し得る。
【0039】
前記内部架橋剤は、モノマー組成物に対して約0.01〜約2重量%、または0.1〜0.5重量%の濃度で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。
【0040】
本発明のモノマー組成物は発泡剤を含み、この時、カプセル化した発泡剤および平均粒径(D50)1〜100μmの無機発泡剤を同時に含む。このように二種類の発泡剤を混合して使用する場合、高吸水性樹脂シートの高い気孔度および開気孔を得ることができる効果がある。すなわち、本発明のようにカプセル化した発泡剤および無機発泡剤を同時に使用する場合、カプセル化した発泡剤によって高吸水性樹脂シートの内部に高い気孔度を確保するのに適切な大きさの主孔が形成され、このような主孔の間に無機発泡剤による微細気孔チャネルが形成されることにより主孔が互いに連結されている開気孔チャネル(open pore channel)構造を確保することができる。したがって、微細気孔チャネル構造によって毛細管圧力(capillary pressure)による水の迅速な吸収が可能であり、それぞれの発泡剤を単独で使用する場合に比べて製造される高吸水性樹脂の遠心分離保持能および加圧吸水能に優れている。
【0041】
前記カプセル化した発泡剤は、モノマー組成物の重合時にはカプセル化された状態で存在して熱によって膨張し、後述する乾燥工程時に加わる高温の熱によって発泡するようになり、これにより、高吸水性樹脂の高分子構造間に適切な大きさの気孔を形成して高吸水性樹脂シートが開気孔チャネル(open pore channel)構造を有し得るようにする。
【0042】
前記カプセル化した発泡剤は、炭化水素を含むコアと、前記コアを囲み、熱可塑性樹脂で形成されるシェルとを含む構造を有し得る。このようなカプセル化した発泡剤は、前記コアとシェルをなす成分と各成分の重量、平均粒径に応じて膨張特性が変わり、これを調節することによって所望の大きさに膨張が可能であり、前記高吸水性樹脂シートの多孔性を調節することができる。
【0043】
一方、所望の大きさの気孔が形成されるかどうかを把握するために、まずカプセル化した発泡剤の膨張特性を把握する必要がある。しかし、高吸水性樹脂内でカプセル化した発泡剤が発泡された形態は、高吸水性樹脂の製造条件に応じて変わるので一つの形態で定義するのは難しい。したがって、まずカプセル化した発泡剤を空気中で発泡させて最大膨張比率および大きさを確認することによって、所望の気孔を形成するのに適するかどうかを確認することができる。
【0044】
具体的には、ガラスペトリ皿の上にカプセル化した発泡剤を塗布した後、空気中で180℃の熱を5分間加えてカプセル化した発泡剤を膨張させる。この時、カプセル化した発泡剤が3〜15倍、5〜15倍あるいは8.5〜10倍の空気中での最大膨張比率を示すとき、本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法において適切な開気孔構造を形成するのに好適であると判断できる。
【0045】
前記カプセル化した発泡剤は平均粒径、すなわち、D50粒径が2〜50μm、または5〜50μm、または5〜30μm、または5〜20μm、または7〜17μmであり得る。前記カプセル化した発泡剤が上記のような平均粒径を示すとき、適切な空隙率を達成するのに好適であると判断できる。
【0046】
また、前記カプセル化した発泡剤が空気中での20〜190μm、または50〜190μm、または70〜190μm、または75〜190μmの最大膨張直径を示すとき、本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法において適切な開気孔構造を形成するのに好適であると判断できる。
【0047】
また、カプセル化した発泡剤の最大膨張比率および最大膨張直径は、製造された高吸水性樹脂シートに形成された気孔の形状を走査電子顕微鏡(SEM)で分析する方法によって測定することもできる。
【0048】
前記カプセル化した発泡剤のコアを構成する炭化水素は、n−プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、iso−オクタンおよびシクロオクタンからなる群より選ばれた1種以上であり得る。その中でも炭素数3〜5の炭化水素(n−プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン)が上述した大きさの気孔形成に好適であり、iso−ブタンが最も好適である。
【0049】
そして、前記カプセル化した発泡剤のシェルを構成する熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンからなる群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーであり得る。その中でも(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体が、上述した大きさの気孔を形成するのに最も好適である。
【0050】
前記カプセル化した発泡剤は、全体カプセル化した発泡剤重量に対して炭化水素を10〜30重量%で含み得る。このような範囲内で開気孔構造を形成するのが最も好適である。
【0051】
前記カプセル化した発泡剤は製造して使用するか、または上述した条件を満たす商用化された発泡剤を使用し得る。
【0052】
また、前記カプセル化した発泡剤の含有量は、アクリル酸系単量体の100重量部に対して0.3〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜10重量部を使用し得る。前記カプセル化した発泡剤の含有量が過度に少ないと開気孔構造が正しく形成されず、適切な気孔度を確保することができないし、過度に多く含まれる場合、多孔性が高すぎて高吸水性樹脂シートの強度が弱くなるため、このような観点から上記の含有量の範囲が好ましい。
【0053】
前記無機発泡剤は平均粒径、すなわち、D50粒径が1〜100μmであることが好ましく、3〜50μm、または5〜20μmがより好ましい。このようなマイクロサイズの無機発泡剤は、発泡剤としての役割と高吸水性樹脂シートに機械的強度を付与する無機支持体としての役割を同時に果たすことができる。仮に、無機発泡剤の平均粒径が1μm未満であると多くの核点による高い気孔度の形成で開気孔を形成することはできるが、無機支持体としての役割が微々で高吸水性樹脂シートの強度が確保されにくく、逆に、100μmを超えて大きすぎると微細気孔を形成するための発泡剤としての役割がうまくできず、無機支持体としてのみ作用することができる。したがって、開気孔を有し、かつ適切な強度を有する高吸水性シートを製造するためには上記範囲内の粒子を使用することが好ましい。
【0054】
前記無機発泡剤は、通常発泡剤として知られている物質を制限なしに使用可能であり、具体的には、炭酸カルシウム(CaCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸アンモニウム(NHHCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)、ホウ素化水素ナトリウム(NaBH)および炭酸ナトリウム(NaCO)の中から選ばれる1種以上を使用し得る。その中で、中和液内での安定性特性を考慮すると炭酸カルシウムが好ましく使用される。
【0055】
前記無機発泡剤の含有量は、アクリル酸系単量体の100重量部に対して0.1重量部以上を使用し得、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部を使用し得る。前記無機発泡剤の含有量が少なすぎると閉気孔が形成される問題があり得、過度に多く含まれる場合、高い気孔度によって機械的強度が低くなる問題があり得る。
【0056】
前記カプセル化した発泡剤および無機発泡剤の混合使用比は、3:1〜1:1の重量比が好ましく、2:1〜1:1の範囲がさらに好ましい。上記範囲内において高い気孔度および機械的強度の向上効果を得ることができ、これにより製造される高吸水性樹脂シートの遠心分離保持能および加圧吸水能が向上する。
【0057】
また、前記カプセル化した発泡剤および無機発泡剤は、アクリル酸単量体100重量部に対して20重量部以下で含まれ、0.4〜20重量部、0.7〜10重量部、または1〜5重量部の範囲で含まれることがより好ましい。発泡剤の総含有量が多すぎると発泡度が高すぎて高吸水性樹脂の強度が低下し得、過度に少なく含まれる場合、開気孔構造が形成されにくいので、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0058】
本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法において重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造で通常使用されるものであれば特に限定されない。
【0059】
具体的には、前記重合開始剤は、重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用し得る。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤をさらに含むこともできる。
【0060】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用することができる。
【0061】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα−アミノケトン(α−aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上を使用し得る。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のルシリン(lucirin)TPO、すなわち、2,4,6−トリメチル−ベンゾイル−トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6−trimethyl−benzoyl−trimethyl phosphine oxide)を使用し得る。より多様な光開始剤に対しては、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0062】
前記光重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して約0.01〜約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になる。
【0063】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用し得る。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2−azobis(2−amidinopropane)dihydrochloride)、2,2−アゾビス−(N,N−ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロリド(2,2−azobis−(N,N−dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2−(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2−azobis[2−(2−imidazolin−2−yl)propane]dihydrochloride)、4,4−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)(4,4−azobis−(4−cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤に対しては、Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」,p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0064】
前記熱重合開始剤は、前記モノマー組成物に対して約0.001〜約0.5重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合はほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微小であり、熱重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になる。
【0065】
本発明の製造方法において、前記モノマー組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0066】
上述したアクリル酸系不飽和単量体、共単量体、内部架橋剤、重合開始剤、および添加剤などの原料物質は、溶媒に溶解したモノマー組成物溶液の形態で準備され得る。前記溶媒は、モノマー組成物の総含有量に対して上述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0067】
使用できる前記溶媒は、上述した成分を溶解できるものであればその構成の限定なく使用し得、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどから選ばれた1種以上を組み合わせて使用し得る。
【0068】
次に、前記モノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する。
【0069】
一方、このようなモノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する方法は、高吸水性樹脂の製造技術分野で通常使われる重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0070】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源によって大きく熱重合および光重合に分けられる。通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行われる。これに対し、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0071】
前記モノマー組成物の熱重合または光重合反応温度は、特に制限されないが、一例として80〜120℃、好ましくは90〜110℃であり得る。
【0072】
この時、このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は、約40〜約80重量%であり得る。一方、本明細書全体で「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後に180℃に維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含んで20分に設定して含水率を測定する。
【0073】
次に、前記含水ゲル重合体をシート状に成形し乾燥して高吸水性樹脂シートを形成する。
【0074】
この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約120〜約250℃であり得る。乾燥温度が約120℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が約250℃を超える場合、過度に重合体表面だけ乾燥され、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは前記乾燥は約120〜約250℃の温度、より好ましくは約140〜約200℃の温度で行われ得る。このような乾燥段階で発泡剤の発泡により主孔間に微細気孔チャネルが形成され、開気孔チャネル構造が得られる。
【0075】
一方、乾燥時間の場合には工程効率などを考慮して約20〜約90分間行われるが、これに限定されない。
【0076】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル重合体の乾燥工程で通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して用いられる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。
【0077】
このような乾燥段階の進行後の高吸水性樹脂シートの含水率は、約10重量%以上であり、例えば約10〜約40重量%、または約15〜約30重量%であり得る。前記高吸水性樹脂シートの含水率が上述した範囲にあるとシートの柔軟性を確保することができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記のような工程で収得された高吸水性樹脂シートの厚さは、約100μm以上、または1,000μm以上、または5,000μm以上であり、かつ約10cm以下、または約5cm以下、または約1cm以下であり得る。前記高吸水性樹脂シートの厚さが過度に薄いと強度が低くてシートが破れ得、過度に厚い場合は、乾燥および加工が難しい。このような観点から上述した厚さ範囲を有することが好ましい。
【0079】
前記のような本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法によれば、前記高吸水性樹脂シートにおいて、気孔の少なくとも一部分が互いに連結されている開気孔チャネル(open pore channel)構造のシート状態であるため、毛細管圧力(capillary pressure)による水の吸収が可能なので、吸収速度および透過性が向上することができ、パルプレス吸収体としてそのまま提供することができる。
【0080】
本発明により製造された高吸水性樹脂シートは、気孔(pore)の少なくとも一部分が互いに連結された開気孔チャネル(open pore channel)構造を有し、これによって毛細管圧力(capillary pressure)による水の吸収が可能である。これにより、従来の粉末形態の高吸水性樹脂より吸収速度および透過性が向上する。
【0081】
前記高吸水性樹脂シートは、EDANA法WSP 241.2の方法により測定された遠心分離保持能(CRC)が約10〜約40g/g、好ましくは約15〜約40g/g、より好ましくは約25〜約40g/gの範囲を有し得る。
【0082】
前記高吸水性樹脂シートは、EDANA法WSP 242.2の方法により測定された0.7psiの加圧吸水能(AUP)が約5〜約20g/g、好ましくは約7〜約15g/g、より好ましくは約10〜約15g/gの範囲を有し得る。
【0083】
上記のように、本発明の高吸水性樹脂シートは、優れた吸収特性および透過性を有してパルプレス吸収体として用いられる。
【実施例】
【0084】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されるものであり、発明の権利範囲はこれによっていかなる意味でも限定されない。
【0085】
以下の実施例でカプセル化した発泡剤および無機発泡剤の粒径は、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定した。具体的には、測定対象粉末1mgを蒸留水30g中に分散させた後、レーザ回折粒度測定装置(Mastersizer 3000)に導入して粒子がレーザビームを通過するとき粒子の大きさによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出した。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子直径を算出してD50を求めた。
【0086】
(高吸水性樹脂シートの製造)
(実施例1)
アクリル酸27.5g、苛性ソーダ(NaOH、30重量%溶液)35.7gおよび水5.7gを混合して前記アクリル酸の約70モル%が中和した中和液(固形分含有量:50重量%)を準備した。
【0087】
前記中和液に共単量体として、ポリエチレングリコール(メチルエーテル)(メタ)アクリレート(Polyethylene glycol(methyl ether)(meth)acrylate)(商品名:FA−401,韓農化成社製)5.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(MW=330,aldrich社製)0.08g、過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)0.06g、カプセル化した発泡剤(Akzonobel社製、Expancel 031 DU 40,平均粒径(D50)16μm)0.41g、無機発泡剤として炭酸カルシウム(CaCO)(平均粒径(D50)12μm)0.41gを添加してモノマー組成物を製造した。
【0088】
前記モノマー組成物をメカニカルミキサー(mechanical mixer)を用いて500rpmの速度で約10分間高剪断混合した。
【0089】
その後、重合器の供給部を介して投入して重合を実施して含水ゲル重合体を形成した。この時、重合器の温度は100℃を維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は10分であった。
【0090】
次いで、前記含水ゲル重合体に対して180℃温度で5分間乾燥し、これを裁断機を用いてシート形態(厚さ:2mm前後)に切断した。
【0091】
(実施例2)
前記実施例1で、アクリル酸100重量%に対してカプセル化した発泡剤および炭酸カルシウム発泡剤をそれぞれ0.75重量%を使用したことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0092】
(実施例3)
前記実施例1で、アクリル酸100重量%に対してカプセル化した発泡剤および炭酸カルシウム発泡剤をそれぞれ1.5重量%、0.75重量%を使用してことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0093】
(実施例4)
前記実施例1で、アクリル酸100重量%に対してカプセル化した発泡剤および炭酸ナトリウム(NaCO)発泡剤(平均粒径(D50)12μm)をそれぞれ0.75重量%を使用したことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0094】
(比較例1)
前記実施例1で、炭酸カルシウム発泡剤を使用しないことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0095】
(比較例2)
前記実施例1で、カプセル化した発泡剤を使用しないことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0096】
(比較例3)
前記実施例1で、カプセル化した発泡剤および炭酸カルシウム発泡剤を使用しないことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0097】
(比較例4)
前記実施例1で、アクリル酸100重量%に対してカプセル化した発泡剤4.5重量%および炭酸カルシウム発泡剤1.5重量%を使用したことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0098】
(比較例5)
前記実施例1で、アクリル酸100重量%に対してカプセル化した発泡剤1.5重量%および炭酸カルシウム発泡剤3.0重量%を使用したことを除いて実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂シートを製造した。
【0099】
<実験例>
高吸水性樹脂シートの特性評価
(1)高吸水性樹脂シートの断面
本発明の実施例1による高吸水性樹脂シート断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示した。図1を参照すると、本発明の実施例1による高吸水性樹脂シートの表面には開気孔チャネル構造が形成されていることを確認することができた。
【0100】
(2)遠心分離保持能(CRC)および加圧吸水能(AUP)の測定
各実施例および比較例の高吸水性樹脂シートに対し、EDANA法WSP 241.2の方法により遠心分離保持能(CRC)を測定し、EDANA法WSP 242.2の方法により0.7psi下での加圧吸水能(AUP)を測定してその結果を下記表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
前記表1を参照すると、カプセル化した発泡剤および無機発泡剤を3:1〜1:1の重量比で同時に使用して製造された高吸水性樹脂シートの場合、それぞれの発泡剤を単独で使用するか、発泡剤を使用しない高吸水性樹脂シートに比べて優れた遠心分離保持能および加圧吸水能を示すことを確認することができた。一方、カプセル化した発泡剤と無機発泡剤の重量比が3:1を超える比較例4および1:1未満である比較例5の場合、遠心分離保持能および加圧吸水能の両方とも実施例に比べて顕著に低く示した。したがって、高吸水性樹脂シートの開気孔構造による優れた物性を得るためには、本発明のカプセル化した発泡剤および無機発泡剤の重量比を満足すべきであることが確認できた。
図1