【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る走査電子顕微鏡の全体構成図である。電子源101から取り出された一次電子102はコンデンサレンズ114により収束され、上段イメージシフト偏向器103、上段偏向器104、下段イメージシフト偏向器105、下段偏向器106で偏向されたのち、対物レンズコイル120と対物レンズ磁路121とで構成される対物レンズ107により縮小され、試料108に照射される。一次電子102の試料108への照射に起因して発生する二次電子109は検出器110で検出される。試料108は試料台111の上に保持されており、試料台111は電子光学系の中心軸に対して水平方向および垂直方向に移動が可能である。また、電子源101、コンデンサレンズ114、上段イメージシフト偏向器103、上段偏向器104、下段イメージシフト偏向器105、下段偏向器106、検出器110、対物レンズ107、試料台111の動作は制御部112により制御される。記憶部113はこれらの走査電子顕微鏡の各構成要素を制御するためのパラメータを保持しており、制御部112は記憶部113に保持されているパラメータを読みだして制御を行う。
【0015】
試料108上の観察領域に対して、一次電子102を2次元に走査させることにより画像を取得する。このような2次元の走査は上段偏向器104および下段偏向器106によって行う。一方、±10μm程度の視野の移動は上段イメージシフト偏向器103および下段イメージシフト偏向器105で行う。視野の移動は試料台111の移動でも行うことができるが、機械的な動作であるため高速に移動することは難しく、移動精度も低い。上段イメージシフト偏向器103および下段イメージシフト偏向器105によるイメージシフトは、広範囲の移動はできないが、±10μm程度であれば試料台111よりも高速かつ高精度に視野を移動することができる。
【0016】
図2Aに通常のイメージシフト偏向による一次電子の軌道202(以下、「対物レンズ中心軸」という)を示す。上段イメージシフト偏向器103および下段イメージシフト偏向器105で偏向された一次電子は対物レンズ中心201を通過して試料108の視野中心206に入射する。視野中心206は電子光学系の中心軸205と試料108の交点とは異なる位置にある。ここで、「対物レンズ中心」とは、対物レンズ107の主面と電子光学系の中心軸205との交点をいう。一次電子は、中心軸205に対して角度をもって対物レンズ中心201に入射されるため、イメージシフト偏向器による偏向量に応じて試料108への入射角が変化する。このため、アスペクト比の高い深孔や深溝に対する観察や計測等においては、この入射角の変化が無視できない。
【0017】
図2Bに垂直入射イメージシフト偏向による一次電子の軌道203(以下、「垂直入射軸」という)を示す。垂直入射軸203では試料108表面に対して垂直に入射するため、アスペクト比の高い深孔や深溝に対する観察や計測等に適している。垂直入射軸203は、対物レンズ中心201の外側を通すことで、上段イメージシフト偏向器103、下段イメージシフト偏向器105、対物レンズ107の偏向作用により、垂直入射を実現する。なお、対物レンズ107は磁場レンズであり一次電子102に回転作用を及ぼすため、偏向強度のみならず、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105における偏向方向も適切な値に変更する必要がある。
【0018】
発明者らは
図2Bに示す垂直入射イメージシフト偏向を実現する制御方法について鋭意検討の結果、試料108に対して減速法が適用されていない、例えば負極性のリターディング電圧が実質的に印加されないという条件下において、対物レンズ中心軸202(
図2A)から垂直入射軸203(
図2B)に移行するために加えるイメージシフト偏向器の制御量が、加速電圧に代表されるような光学条件の変更に対してわずかな違いしか生じないことを見出した。このことは、垂直入射イメージシフト偏向を、大幅に簡素化された制御により実現できることを意味する。
【0019】
減速法を適用する場合、例えばリターディング法では試料108に対して負極性のリターディング電圧を印加することにより、一次電子を対物レンズ107付近で減速させる。この場合、対物レンズ107は対物レンズコイル120と対物レンズ磁路121により形成される磁界とリターディング電圧によって形成される静電界とが重畳された電磁界重畳レンズとして作用する。このため、主要な光学条件の一つである加速電圧が変われば、静電界の大きさも変わり、その結果、対物レンズ107のレンズ主面の位置が移動する。このため、減速法が適用される電子光学系では本実施例によるイメージシフト偏向器の制御を適用することは原則できない。
【0020】
図3に、同じ視野中心206に対してそれぞれ異なった加速電圧により、対物レンズ中心軸202と垂直入射軸203に設定し、そのときのイメージシフト偏向器の制御量の差分を表301として示す。本実施例の走査電子顕微鏡では、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比および偏向方向の相対回転角により、対物レンズ107に入射する一次電子の偏向量が制御できる。表301は、対物レンズ中心軸202に設定するイメージシフト偏向器の制御量と垂直入射軸203に設定するイメージシフト偏向器の制御量の差分を、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比と偏向方向の相対回転角との、2つのパラメータについての差分として表示している。
【0021】
表301からは、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105間の強度比と偏向方向の相対回転角について、対物レンズ中心軸と垂直入射軸との差分は、加速電圧を変えてもほとんど変化していないことが分かる。これは、一旦、対物レンズ中心軸に設定するようイメージシフト偏向器を制御すれば、この後、加速電圧がどうであれ、
図3に示した差分の代表値に基づきイメージシフト偏向器を制御することにより、対物レンズ中心軸から垂直入射軸に移行させることができる可能性を示すものである。
【0022】
図4に差分の代表値を用いてイメージシフト偏向器を制御した場合の入射角を計算した結果を表401として示す。
図3と
図4とは同じ条件でのイメージシフト偏向器の制御量を示しており、カラム402は対物レンズ中心軸202に設定するイメージシフト偏向器の制御量、カラム403は対物レンズ中心軸202に設定するイメージシフト偏向器の制御量と垂直入射軸203に設定するイメージシフト偏向器の制御量との差分(
図3)の代表値、カラム404は差分の代表値(カラム404)に基づきイメージシフト偏向器を制御したときの一次電子の軌道の入射角を示している。なお、代表値としては単純平均を用いている。
【0023】
カラム404に示されるように差分の代表値による制御で得られる入射角は0.01°以下となっている。アスペクト比が50の高アスペクト形状であっても見込み角は0.57°なので、差分の代表値を用いた制御で得られる入射角は計測対象とする高アスペクト形状の見込み角に対して十分小さい値となっている。以上の知見に基づき、本実施例においては、あらかじめ対物レンズ中心軸に設定するイメージシフト偏向器の制御量と垂直入射軸に設定するイメージシフト偏向器の制御量との差分を複数の光学条件において求め、その代表値を記憶しておく。観察、計測時には、所定の光学条件においてまず、対物レンズ中心軸を与えるイメージシフト偏向器の制御量を求め、これに差分の代表値に基づく制御を加えることにより、垂直入射軸を実現する。
【0024】
具体的な制御方法を説明する。対物レンズ中心軸202に設定するイメージシフト偏向器の制御量は第1制御パラメータ(A,B,C,D)を用いて(数1)のように表せる。
【0025】
【数1】
【0026】
(数1)において、ISM1X, ISM1Yは上段イメージシフト偏向器103に印加する電流のLSB(Least Significant Bit)値であり、ISM2X, ISM2Yは下段イメージシフト偏向器105に印加する電流のLSB値である。LSB値によりそれぞれのイメージシフト偏向器の電流量が制御される。ここで、(数1)の第1制御パラメータは、対物レンズ中心軸202に設定する上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105間の強度比α
0と偏向方向の相対回転角θ
0を用いて(数2)のように表せる。
【0027】
【数2】
【0028】
具体的には、強度比α
0と偏向方向の相対回転角θ
0は、所定の光学条件における
図4のカラム402の値となる。この対物レンズ中心軸202に対して、差分(代表値)に基づく制御を行って垂直入射軸203に設定する。垂直入射軸203に設定するイメージシフト偏向器の制御量は第2制御パラメータ(a,b,c,d)を用いて(数3)のように表せる。
【0029】
【数3】
【0030】
ここで、(数3)の第2制御パラメータは、対物レンズ中心軸の場合と垂直入射軸の場合との間における、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比の差分の代表値Δαと偏向方向の相対回転角の差分の代表値Δθを用いて(数4)のように表せる。
【0031】
【数4】
【0032】
具体的には、強度比の差分の代表値Δαと偏向方向の相対回転角の差分の代表値Δθは、
図4のカラム403の値となる。したがって、走査電子顕微鏡の記憶部113に格納する第2制御パラメータとしては、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比の差分の代表値Δαと偏向方向の相対回転角の差分の代表値Δθとしてもよく、あるいは(a,b,c,d)の値としてもよい。この場合、
a=(1+Δα)cosΔθ
b=−(1+Δα)sinΔθ
c=(1+Δα)sinΔθ
d=(1+Δα)cosΔθ
となる。
【0033】
なお、(数3)は上段イメージシフト偏向器103に印加する電流のLSB値(ISM1XおよびISM1Y)を基準にして、下段イメージシフト偏向器105に印加する電流のLSB値(ISM2XおよびISM2Y)を調整することで垂直入射軸に設定する制御を示している。これに対して、下段イメージシフト偏向器105に印加する電流のLSB値(ISM2XおよびISM2Y)を基準にして、上段イメージシフト偏向器103に印加する電流のLSB値(ISM1XおよびISM1Y)を調整することも同様に可能である。
【0034】
対物レンズ中心軸に設定する第1制御パラメータは電子光学系の光学条件に依存する。しかしながら、対物レンズ中心軸の場合、試料パターンの制約が少なく、例えば、対物レンズ107の励磁強度のワブリングのような一般的な軸調整手法で調整できる。第2制御パラメータは光学条件に関わらず固定とすることで、短時間での測定が可能になる。
【0035】
次に、代表値を用いた垂直入射軸に設定するための調整シーケンスについて
図5を用いて説明する。本調整シーケンスは予備シーケンスと本シーケンスの2段階で構成される。予備シーケンスは主に装置出荷前や顧客先での装置据え付け時に実施され、本シーケンスは装置納入後にオペレータが装置を使用する際に実施される。
【0036】
まず、予備シーケンスについて説明する。ステップ502では複数の光学条件、例えば複数の加速電圧、モードにおいて、対物レンズ中心軸に設定する上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比と偏向方向の相対回転角とを求める。次に、ステップ503では、ステップ502と同じ光学条件において垂直入射軸に設定する上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比と偏向方向の相対回転角とを求める。ステップ504ではステップ502およびステップ503で得られる上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比と偏向方向の相対回転角の差分をそれぞれの光学条件に対して計算する。ステップ505ではステップ504で得られる差分値から代表値を計算する。ここで、代表値の計算方法としては、例えば平均値や中央値を用いても良いし、他の統計処理によって得られる値を用いても良い。
図4に示したように、本実施例の制御により実現される垂直入射軸の入射角は十分小さい値となっているため、代表値の計算方法の相違による入射角の相違は無視できるレベルに抑えられる。最後に、ステップ506ではステップ505で得られた代表値を第2制御パラメータとして記憶部113に格納する。
【0037】
次に、本シーケンスについて説明する。ステップ511ではオペレータが光学条件を設定する。ステップ512では対物レンズ中心軸における上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105間の強度比と偏向方向の相対回転角、即ち第1制御パラメータを記憶部113より読み込む。ステップ513では対物レンズ中心軸の軸調整により第1制御パラメータを更新する。例えば、ワブラ(Wobbler)によりレンズの焦点距離を周期的に変動させた場合に像のシフトが生じないように光軸を調整したときの調整値により第1制御パラメータを更新する。ステップ514では予備シーケンスで求めた第2制御パラメータを記憶部113より読み込む。ステップ515では先に述べた(数3)に示したように、第2制御パラメータにより第1制御パラメータを変換し、上段イメージシフト偏向器103および下段イメージシフト偏向器105に印加する電流量を算出する。
【0038】
以上のシーケンスにより垂直入射軸の制御を実現することができる。なお、予備シーケンスにて調整に用いる光学条件(ステップ502,503)は装置がもつ全ての光学条件、即ち本シーケンスにおいてオペレータが選択し得る全ての光学条件、である必要はない。例えば、予備シーケンスで代表値を求めるために実施していない加速電圧を本シーケンスでの加速電圧としても垂直入射軸が得られる。
【0039】
また、光学条件としては例示した加速電圧のみならず、モード(例えば、分解能優先モード、焦点深度優先モード)の選択なども含まれる。分解能優先モード、焦点深度優先モードなどのモードの切り替えは、具体的にはコンデンサレンズ114の励磁量を変化させ、一次電子102の物点(物面)の位置を変化させることを意味するが、モードの選択に関わりなく、本実施例の代表値制御を適用して垂直入射軸に設定することができる。
【0040】
また、代表値制御により実現される軌道は垂直入射軸に限定されるものではなく、入射角が所望の値となるような軌道を形成することも可能である。この場合の上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105の制御量を(数5)に示す。
【0041】
【数5】
【0042】
すなわち、ベクトル項(e,f)で表されるオフセット電流を上段イメージシフト偏向器103及び下段イメージシフト偏向器105に加算する。このように、予め計測して求めたオフセットのベクトル項(e,f)を第2制御パラメータとして付加することで所望の入射角をもつ軌道を実現できる。これにより、例えばエッチングでの加工において深穴および溝の側面が斜めになった場合の計測に柔軟に対応できる。
【0043】
本実施例は、加速電圧、その他の光学条件を変えることで対物レンズの主面の位置を大きく変化させてしまう電子光学系、例えば減速法を適用する電子光学系以外において適用可能である。逆に、例えば5kV以上の高加速領域かつ、試料108に印加する負電圧が−100V程度の弱リターディング条件であれば、リターディング法を適用しているといっても、その変化に伴う主面の動きは小さく、適用可能であると考えられる。また、本実施例では最初に対物レンズ中心軸の調整を行うが、対物レンズ中心から軌道のずれがあったとしても実用上問題ない程度のずれであれば許容されることはいうまでもない。また、偏向器が3段以上の構成であってもよく、制御パラメータの表現も種々変更可能である。
【実施例2】
【0044】
実施例1では代表値(固定値)を用いて垂直入射軸に設定する制御について説明した。実施例2として、補正関数を用いた制御について説明する。この機能があることで更に精度良く制御できる。
図6は、実施例2に係る走査電子顕微鏡の全体構成図であり、
図1の構成に対して補正関数計算部601が追加された構成となっている。
【0045】
図3に関して、光学条件が異なっても垂直入射軸を生成するために必要な補正量にはほとんど違いが無いことを述べたが、完全には同一ではない。所定の光学条件において、対物レンズ中心軸から垂直入射軸へ移行するためのイメージシフト偏向器の制御量が対物レンズの励磁強度によってどのように変化するかを
図7A,
図7Bに示す。
図7Aには上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比の差分について、
図7Bには上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の偏向方向の相対回転角の差分について示している。これらに示される通り、上段イメージシフト偏向器103と下段イメージシフト偏向器105との間の強度比および偏向方向の相対回転角は、励磁強度に対して適切な関数で補正できることが分かる。なお、このような励磁強度の変化は、観察する試料の高さに応じて焦点位置を変化させたり、コンデンサレンズ114の励磁強度を制御して一次電子102の物点の位置を変化させたりするときに生じるものである。
【0046】
補正関数を用いて垂直入射軸に設定するための調整シーケンスについて
図8を用いて説明する。
図5に示した調整シーケンスとの主な違いはステップ805およびステップ814である。予備シーケンスにおけるステップ805ではステップ804で得られる差分値を用いて補正関数計算部601にて補正関数を導出する。補正関数は多項式や指数関数などの関数であり、装置設計者が指定する。補正関数の各係数の導出は、例えば最小二乗法で求める。ステップ806では、導出した補正関数を第2制御パラメータとして記憶部113に格納する。本シーケンスのステップ814では対物レンズ107の励磁強度と補正関数より第2制御パラメータの値を算出する。
【0047】
図8に示す予備シーケンスも、
図5の場合と同様にオペレータが選択し得る全光学条件で実施する必要は無い。また、補正関数を用いるために、代表値を用いる実施例1よりもさらに垂直に近い入射角を得ることができる。
【0048】
また、ここでは対物レンズ107の励磁強度を変数として差分を求める補正関数を用いる例について説明したが、他のパラメータを変数とすることもできる。たとえば、一次電子102の物点位置を補正関数の変数としてもよい。
【実施例3】
【0049】
垂直入射軸の場合、対物レンズ107の励磁強度を変えると視野中心位置が動く。これは、垂直入射軸203の一次電子は対物レンズ107の対物レンズ中心201を通らないためである。一方、対物レンズ中心軸202では一次電子が対物レンズ107の対物レンズ中心201を通るため、対物レンズ107の励磁強度を変えても視野中心位置は動かない。このような垂直入射軸で一次電子の位置が移動する現象は、対物レンズ107の励磁強度を変える動作を伴うとき、例えば画像の焦点調整を実施する際に問題となる。このため、本実施例では垂直入射軸における焦点補正時には、対物レンズ中心軸の状態で焦点補正を行い、視野移動量を相殺するように一次電子の入射位置を調整した上で、垂直入射軸となるよう偏向器の制御パラメータを変更する。偏向器の制御パラメータを変えることによるビーム位置の移動量は、あらかじめ計測しておくことによりフィードバックが可能となる。
【0050】
視野移動のない焦点補正を実現するための調整シーケンスについて
図9を用いて説明する。ここで、視野移動量とは対物レンズ中心軸から垂直入射軸に移行する際に生じる視野中心の移動量のことである。本調整シーケンスは予備シーケンスと本シーケンスの2段階で構成される。
【0051】
まず、予備シーケンスについて説明する。ステップ902では複数の光学条件、例えば複数の加速電圧、において垂直入射軸の条件で、対物レンズ107の励磁強度を変えて視野移動量を計測する。ステップ903では励磁強度と視野移動量との関係式(視野移動量=係数×励磁電流変化量)を導出する。また、視野移動量はイメージシフト偏向器が一次電子102を偏向させる偏向量(視野中心位置の中心軸205からの離軸量)にも依存する。制御精度を高めるため、ステップ904において、偏向量に応じて視野移動量を補正する補正係数を導出する。ステップ905ではステップ903で得られた関係式及びステップ904で得られた補正係数を記憶部113に格納する。
【0052】
次に、本シーケンスについて説明する。ステップ911ではオペレータが光学条件を設定する。ステップ912では対物レンズ中心軸に設定し、ステップ913では焦点補正を実行する。ステップ914では焦点補正後の励磁強度を算出する。ステップ915ではステップ914で算出した励磁強度を予備シーケンスで求めた関係式に挿入して視野移動量を求める。ステップ916では、対物レンズ中心軸から垂直入射軸に移行することにより生じる視野移動量を相殺するよう視野移動量を補正する。このとき、視野移動量は偏向位置にも依存するので、ステップ916で算出した視野移動量を偏向量に応じた補正係数により補正する。ステップ917では垂直入射軸に設定する。具体的には、視野移動量を補正した対物レンズ中心軸に設定する第1制御パラメータに対して第2制御パラメータを適用する。以上のシーケンスにより視野移動の無い焦点補正を実現することができる。また、補正係数を用いて視野移動量を補正することにより、偏向量に応じたフィードバックが行われる。
【0053】
以上の実施例で用いられる走査電子顕微鏡の電子光学系の構成は
図1や
図6に示した構成例には限られない。例えば、
図1および
図6の構成では、視野の移動に用いるイメージシフト偏向器103,105と撮像に用いる偏向器104,106の両方が対物レンズ107よりも電子源101側に設置されていたが、偏向器の位置はこれに限定されない。
図10に示すように上段偏向器104と下段偏向器106が対物レンズ107と試料108、試料台111との間に設置されていてもよい。撮像に用いる偏向器104,106が対物レンズ107よりも電子源101側に設置されている構成では、対物レンズ107と試料108との間の距離を容易に短くすることができるという利点がある。一方、撮像に用いる偏向器104,106が対物レンズ107と試料108との間に設置されている場合は、視野を広く取れるという利点がある。なお、撮像に用いる偏向器は2つである必要は無く、1つでも良いし、2つ以上あっても良い。
【0054】
また、対物レンズの構成も以上の構成に限定されるものではない。例えば、
図11に示す対物レンズは、対物レンズ磁路1103と対物レンズコイル1102を有する電磁レンズと電極1101とにより試料1106上に電子ビームを結像する。
図11の対物レンズでは、電磁レンズの磁路の開口は光軸方向に向いており、
図1でのセミインレンズ方式とは異なってアウトレンズ方式となる。このような対物レンズにおいても本発明の適用は可能である。特に、アウトレンズ方式の対物レンズは、試料の高さ変動に対してレンズ主面の移動が実質的に無視できることにある。このことは、実施例1〜3の実施にあたり、試料の高さ変化に対するロバスト性を増大させることに寄与する。さらに、
図11の構成では、2段の偏向器(上段イメージシフト偏向器1104及び下段イメージシフト偏向器1105)は対物レンズの磁路開口を挟んで試料1106の反対側に位置している。この場合、2つの偏向器1104,1105に実施例1〜3の制御を適用することで、垂直入射軸に設定する偏向が可能である。