【実施例】
【0034】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した評価実験の具体例を説明する。最初に、シリコーン樹脂の消耗の抑制の効果の確認を行った評価実験の具体例を説明する。評価実験では、シリコーン樹脂のみの評価試料Aと、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bの2種類を用意した。評価試料Bでは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを10vol%含有させた。2種類の評価試料A、Bのサイズは、30mm角とする。評価実験では、評価試料A、Bを複数容易し、処理ガスの濃度を変えてプラズマエッチングのプラズマ処理を行った。プラズマエッチングの処理ガスとしては、CF4/O2の混合ガスを用い、CF4とO2の流量比を変化させた。
【0035】
図4は、プラズマ処理前後の重量変化を示した図である。
図4には、評価試料A及び評価試料Bのプラズマ処理前後の重量変化が示されている。
図4に示すように、CF4の流量比が5%の場合では、ハイドロタルサイトを含有させたことにより、重量変化が1/10程度に抑えられている。また、CF4の流量比が85%の場合では、ハイドロタルサイトを含有させたことにより、重量変化が1/2程度に抑えられている。
【0036】
このように、プラズマ処理では、ハイドロタルサイトを含有させることにより、シリコーン樹脂の消耗が抑制されることが確認できる。
【0037】
次に、ハイドロタルサイトによるFの吸着の効果の確認を行った評価実験の具体例を説明する。評価実験では、シリコーン樹脂のみ(ハイドロタルサイトなし)の評価試料Aと、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bと、ハイドロタルサイトを表面に塗布した評価試料Cの3種類を用意した。評価試料Bでは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを10vol%含有させた。3種類の評価試料A〜Cのサイズは、5mm角とする。評価実験では、ウエハWとして酸化膜が形成されたブランケットを用い、3種類の評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングの処理ガスとしては、CF4/Ar/O2の混合ガスを用いた。
【0038】
図5Aは、半導体ウエハ上のエッチングレートの測定結果を示した図である。
図5Aには、ウエハWの各位置でのエッチングレート(E/R)がパターンを変えて示されている。また、
図5Aには、ウエハW上での評価試料Aが配置された測定点PA、評価試料Bが配置された測定点PB、評価試料Cが配置された測定点PCの位置が示されている。評価試料Aが配置された測定点PAの近辺は、周囲と同程度にエッチングレートとなっている。評価試料Aは、シリコーン樹脂のみで形成されている。このことから、シリコーン樹脂のみでは、エッチングレートの変動が、小さいことが確認できる。一方、評価試料Bが配置された測定点PB及び評価試料Cが配置された測定点PCの近辺は、周囲よりも低いエッチングレートとなっている。評価試料B及び評価試料Cは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトが含有または塗布されている。このことから、ハイドロタルサイトは、エッチングレートを低下させることが確認できる。
【0039】
図5B及び
図5Cは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図5Bは、ウエハWの中心をゼロとして、
図5AのY軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。
図5Bは、ウエハWの中心をゼロとして、
図5AのX軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。なお、X軸は、評価試料Aが配置された測定点PAから若干ずれている。
【0040】
図5B及び
図5Cには、評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「今回のテスト」として示されている。また、
図5B及び
図5Cには、評価試料A〜Cを配置せずに、ウエハWに同様のプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「Ref(評価試料なし)」として示されている。
【0041】
図5Bに示すように、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bが配置された測定点PBの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、60〜75mmの幅で発生している。
【0042】
また、
図5Cに示すように、シリコーン樹脂のみの評価試料Aが配置された測定点PAの位置の近辺(−110mmの近辺)は、エッチングレートが若干低下している。エッチングレートの低下は、45mmの幅で発生している。また、ハイドロタルサイトを表面に塗布した評価試料Cが配置された測定点PCの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、130mmの幅で発生している。
【0043】
図5A〜5Cから、評価試料B及び評価試料Cの近辺は、ハイドロタルサイトがFを吸着することにより、エッチングレートが低下することが確認できる。
【0044】
次に、ウエハWとしてポリシリコーン樹脂のウエハWを用いて、3種類の評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングの処理ガスとしては、CF4/O2の混合ガスを用いた。
【0045】
図6Aは、半導体ウエハ上のエッチングレートの測定結果を示した図である。
図6Aには、ポリシリコーン樹脂のウエハWの各位置でのエッチングレート(E/R)がパターンを変えて示されている。また、
図6Aには、ウエハW上での評価試料Aが配置された測定点PA、評価試料Bが配置された測定点PB、評価試料Cが配置された測定点PCの位置が示されている。評価試料Aが配置された測定点PAの近辺は、周囲と同程度にエッチングレートとなっている。評価試料Aは、シリコーン樹脂のみで形成されている。このことから、ポリシリコーン樹脂においても、シリコーン樹脂のみでは、エッチングレートの変動が、小さいことが確認できる。一方、評価試料Bが配置された測定点PB及び評価試料Cが配置された測定点PCの近辺は、周囲よりも低いエッチングレートとなっている。評価試料B及び評価試料Cは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトが含有または塗布されている。このことから、ポリシリコーン樹脂においても、ハイドロタルサイトは、エッチングレートを低下させることが確認できる。
【0046】
図6B及び
図6Cは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図6Bは、ウエハWの中心をゼロとして、
図6AのY軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。
図6Bは、ウエハWの中心をゼロとして、
図6AのX軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。
【0047】
図6B及び
図6Cには、評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「今回のテスト」として示されている。また、
図6B及び
図6Cには、評価試料A〜Cを配置せずに、ウエハWに同様のプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「Ref(評価試料なし)」として示されている。
【0048】
図6Bに示すように、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bが配置された測定点PBの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、45mmの幅で発生している。
【0049】
また、
図6Cに示すように、シリコーン樹脂のみの評価試料Aが配置された測定点PAの位置の近辺(−110mmの近辺)は、エッチングレートが若干低下している。エッチングレートの低下は、30mmの幅で発生している。また、ハイドロタルサイトを表面に塗布した評価試料Cが配置された測定点PCの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、60〜75mmの幅で発生している。
【0050】
図6A〜6Cからも、評価試料B及び評価試料Cの近辺は、ハイドロタルサイトがFを吸着することにより、エッチングレートが低下することが確認できる。
【0051】
次に、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71による接合層70の保護効果の確認を行った評価実験の具体例を説明する。評価実験では、載置台11及び静電チャック13の側面(周面)を略半分の範囲に分け、それぞれの範囲の接合層70の表面に、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aと、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bの2種類の保護層71を形成して保護効果を確認した。保護層71bでは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを10vol%含有させた。
【0052】
図7は、2種類の保護層を形成した範囲を示す図である。
図7には、載置台11及び静電チャック13を上方から見た上面図が示されている。
図7には、載置台11及び静電チャック13の側面において、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aを形成した範囲80aと、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bを形成した範囲80bとが示さている。例えば、
図7に示すように、載置台11及び静電チャック13の中心に対して下部の位置を0°とした、中心から角度θで、載置台11及び静電チャック13の側面の位置を示すものとする。この場合、保護層71aは、角度θ=0°〜180°の範囲に形成されている。保護層71bは、角度θ=180°〜360°の範囲に形成されている。
【0053】
ここで、保護層71を形成する手順を説明する。
図8は、保護層を形成する手順の一例を示す図である。例えば、保護層71の厚さが200μmの場合、保護層71は、接合層70の側面に、400μmの幅、厚さ80μmで形成する。なお、保護層71の幅及び厚さは、一例であり、これに限定されるものではない。保護層71の幅は、接合層70の幅よりも大きく、接合層70を覆うことができる幅に形成する。保護層71の厚さは、プラズマ処理が行われる期間において、Fを取り込む特性が十分に維持される厚さに形成する。
【0054】
形成された保護層71の側面は、
図8の(A)のように、段差の無いフラットな状態とはならず、実際には、
図8の(B)のように、接合層70の部分が凹んだ状態となることもある。
【0055】
評価実験では、このような保護層71が形成されたプラズマ処理装置1を用いてプラズマ処理を繰り返し行い、保護層71の変化を評価した。
図9は、評価実験で実施したプラズマ処理の流れを示す図である。評価実験では、新規の保護層71が形成されたプラズマ処理装置1を用いて、トータルでプラズマ処理を162時間行った。評価実験では、保護層71が新規の状態(0h)と、プラズマ処理を142時間実施した状態(142h)で、保護層71の厚みを計測した。
図10は、保護層の厚みの計測を説明する図である。評価実験では、保護層71の厚みとして、静電チャック13の側面を基準(高さ0)とした保護層71の表面の高さを計測した。また、評価実験では、保護層71が新規の状態(0h)と、プラズマ処理を22時間(22h)、67時間(67h)、142時間(142h)それぞれ実施した状態で、エッチングレート、汚染量、パーティクル等を計測した。
【0056】
図11は、保護層の高さの変化を示す図である。保護層71が新規の状態(0h)と、プラズマ処理を142時間実施した状態(142h)とについて、角度θの位置で計測された保護層71の高さが示されている。
【0057】
0hの状態では、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成された角度θ=0°〜180°と、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成された角度θ=180°〜360°とで、保護層71の高さに大きな違いはない。すなわち、保護層71が新規の状態では、保護層71aと保護層71bの高さが同様の状態である。
【0058】
一方、142hの状態では、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成された角度θ=0°〜180°では、高さが大きく減少しており、平均の高さが−170μmとなっている。また、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成された角度θ=180°〜360°では、高さの減少が小さく、平均の高さが−90μmとなっている。なお、角度θ=180°〜360°の範囲についても、高さが大きく減少している位置があるが、これは、ハイドロタルサイトが不均一であり、ハイドロタルサイトが少ない位置があったためと考えられる。
【0059】
この
図11から、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが、接合層70の減少を抑制できることが確認できる。
【0060】
図12Aは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図12Aには、プラズマ処理が0時間(0h)、67時間(67h)、142時間(142h)それぞれについて、ウエハWの角度θかつ中心から半径149mmの位置のエッチングレートが示されている。角度θ=0°〜180°の範囲は、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成されている。角度θ=180°〜360°の範囲は、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成されている。
図12Aに示すように、エッチングレート(E/R)は、0時間、67時間、142時間のそれぞれで略一定となっている。
【0061】
図12Bは、プラズマ処理時間に対するエッチングレートの変化を示したグラフである。
図12Bには、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成されている範囲の半径149mmの位置のエッチングレートの平均が「ハイドロタルサイト有」として示されている。また、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成されている範囲の半径149mmの位置のエッチングレートの平均が「ハイドロタルサイト無」として示されている。なお、
図12Bでは、ハイドロタルサイト無有とハイドロタルサイト有のグラフが重なった状態となっている。
【0062】
図12A及び
図12Bから、ウエハからの距離を適宜取ってあげることで、エッチングレートに対して影響を与えない。すなわち、ハイドロタルサイトは、プロセスに影響がなく、接合層70の長寿命化に寄与できる。
【0063】
図13は、プラズマ処理時間に対する汚染量の変化を示したグラフである。
図13には、プラズマ処理を22時間、67時間、142時間それぞれ実施した状態で、Mg、Al、Ca、Fe、Niの金属汚染量を計測した結果を結んだグラフが示されている。また、
図13の左側には、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aのみを形成して際のMg、Al、Ca、Fe、Niの金属汚染量を「リファレンスデータ」として示されている。ハイドロタルサイトを含んだ保護層を形成したことによる金属汚染量は、各元素とも概ねリファレンスデータと同等の数値となっている。
【0064】
図13から、ハイドロタルサイトを保護層71に添加したとしても、金属汚染量が、プラズマ処理装置1に適用が可能なレベルであることを確認できる。
【0065】
図14は、プラズマ処理時間に対するパーティクル量の変化を示したグラフである。
図14には、プラズマ処理を22時間、67時間、142時間それぞれ実施した状態で、ウエハW上のパーティクルの個数を計測した結果を結んだグラフが示されている。なお、パーティクルとしては、直径60nm以上のものを計測した。
図14では、直径60nm以上が50個以下を基準として示している。各プラズマ処理ともパーティクル量は、概ね基準以下または基準と同程度の数値となっている。
【0066】
図14から、ハイドロタルサイトを保護層71に添加したとしても、パーティクルへの影響は少ないことを確認できる。
【0067】
このように実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマが生成される処理容器(処理室10)と、処理容器内に配置され、プラズマによる消耗の保護対象とされた接合層70と有する。接合層70は、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71が表面に設けられている。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。この結果、プラズマ処理装置1は、接合層70のメンテナンスの手間を軽減でき、プラズマ処理装置1の維持費用を安くできる。また、プラズマ処理装置1では、プラズマ処理を実施できないダウンタイムも少なくなり、生産性の低下を抑制できる。
【0068】
また、ハイドロタルサイトは、安価に入手できる。これにより、プラズマ処理装置1は、製造コストを大きく増加させずに製造できる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置及び制御方法について説明したが、これに限定されるものではない。以下では、他の実施形態について説明する。
【0070】
例えば、プラズマ処理装置1では、接合層70のサイドの表面に保護層71を設けてプラズマによる接合層70の消耗を抑制する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。実施形態の一例において、プラズマ処理装置1は、接合層70のサイドの表面に保護層71を設けずに、接合層70にハイドロタルサイトを含有させて形成されてもよい。この場合も、プラズマ処理装置1は、接合層70に含有されたハイドロタルサイトがFを吸着することで、プラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。また、プラズマ処理装置1は、接合層70にハイドロタルサイトを含有させることで、サイドのみならず、プッシャーピン66を収納するために載置台11に形成された貫通穴65などに進入するプラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。また、プラズマ処理装置1は、接合層70にハイドロタルサイトを含有させた材料で接合層70を形成すればよいため、保護層71を形成する作業の手間を軽減できる。また、既存のプラズマ処理装置1をメンテナンスする際に、ハイドロタルサイトを含有させた材料で接合層70を形成することで、既存のプラズマ処理装置1についても、プラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。
【0071】
また、プラズマ処理装置1では、実施形態の一例において、保護対象部材を接合層70とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。保護対象部材は、プラズマによる消耗から保護すべき部材であれば、何れであってもよい。例えば、保護対象部材は、プラズマを遮断するために設けられるOリング、プラズマ処理装置1内で使用されるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、シリコーン、アクリル、エポキシなどのエラストマーであってもよい。また、保護対象部材は、ウエハWを昇降させるプッシャーピン66などのブッシュパーツ、ピンパーツであってもよい。また、保護対象部材は、プラズマからパーツを保護するために表面に形成された溶射膜などの表面コーティングであってもよい。保護対象部材は、ハイドロタルサイトを含有してもよく、または、ハイドロタルサイトを含んだ保護層が表面に設けられもよい。例えば、Oリングなどのエラストマーを、ハイドロタルサイトを含有させた材料で形成してもよい。また、保護対象部材が表面に溶射膜を形成される場合、ハイドロタルサイトを含んだ溶射材料により、ハイドロタルサイトを含んだ溶射膜を保護対象部材の表面に形成してもよい。
【0072】
(基台)
また、例えば、第1の実施形態では、載置台11がアルミニウムよりも熱膨張率の低い材料で形成される場合を用いて説明したが、これに限定されるものではない。載置台11は、例えば、下部電極としてアルミニウム等の導電性部材(Alの線熱膨張率;略23.5×10−6(cm/cm/度))で形成されても良い。