特許第6971135号(P6971135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971135
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20211111BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 21/683 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H05H1/46 M
   !H01L21/68 R
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-229534(P2017-229534)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-102548(P2019-102548A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉虫 元
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】横田 聡裕
(72)【発明者】
【氏名】檜森 慎司
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0379806(US,A1)
【文献】 特開2009−224385(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0323772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
H01L 21/683
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマが生成される処理容器と、
前記処理容器内に配置され、プラズマによる消耗の保護対象とされ、ハイドロタルサイトを含有する、または、ハイドロタルサイトを含んだ保護層が表面に設けられた保護対象部材と、
を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記保護対象部材は、体積パーセント濃度で0.5〜90vol%の範囲でハイドロタルサイトを含有する、または、体積パーセント濃度で、0.5〜90vol%の範囲でハイドロタルサイトを含有する保護層が表面に設けられている
ことを特徴とする請求項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記保護対象部材は、エラストマーである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記エラストマーは、PEEK、シリコーン、アクリル、エポキシの何れかである
ことを特徴とする請求項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記保護対象部材は、Oリング、ブッシュパーツ、ピンパーツ、表面コーティングのいずれかである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基台(サセプタ)と静電チャックとの間に、基台と静電チャックとを接合する接合層を有するプラズマ処理装置がある。このようなプラズマ処理装置では、プラズマにより接合層がサイドから消耗する。プラズマ処理装置では、接合層が消耗してサイドが減少すると空間が発生し、空間が発生した部分の温度制御が十分にできなくなり、エッチングレートの面内の均一性が低下する。そこで、プラズマ処理装置では、基台及び接合層の露出面を覆うように、静電チャックの下部と接触するOリングを設けてプラズマが届かないようにして、接合層を保護している(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−53482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、Oリングは、高価であり、プラズマ処理装置の製造コストが増加する。また、プラズマによりOリングが消耗し、交換に手間がかかる。
【0005】
なお、プラズマによる消耗の問題は、接合層に限定されるものではなく、プラズマによる消耗を保護すべき保護対象部材全般に発生する問題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示するプラズマ処理装置は、1つの実施態様において、処理容器と、保護対象部材とを有する。処理容器は、プラズマが生成される。保護対象部材は、処理容器内に配置され、プラズマによる消耗の保護対象とされている。保護対象部材は、ラジカル及び陰イオンの少なくとも一方を取り込む特性を有する材料を含有する、または、材料を含んだ保護層が表面に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
開示するプラズマ処理装置の1つの態様によれば、プラズマによる保護対象部材の消耗を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、基台及び静電チャックの要部構成の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、ハイドロタルサイトの構造を模式的に示した図である。
図4図4は、プラズマ処理前後の重量変化を示した図である。
図5A図5Aは、半導体ウエハ上のエッチングレートの測定結果を示した図である。
図5B図5Bは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図5C図5Cは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図6A図6Aは、半導体ウエハ上のエッチングレートの測定結果を示した図である。
図6B図6Bは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図6C図6Cは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図7図7は、2種類の保護層を形成した範囲を示す図である。
図8図8は、保護層を形成する手順の一例を示す図である。
図9図9は、評価実験で実施したプラズマ処理の流れを示す図である。
図10図10は、保護層の厚みの計測を説明する図である。
図11図11は、保護層の高さの変化を示す図である。
図12A図12Aは、エッチングレートの変化を示したグラフである。
図12B図12Bは、プラズマ処理時間に対するエッチングレートの変化を示したグラフである。
図13図13は、プラズマ処理時間に対する汚染量の変化を示したグラフである。
図14図14は、プラズマ処理時間に対するパーティクル量の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。また、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
[プラズマ処理装置の構成]
最初に、実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成について説明する。プラズマ処理装置は、半導体ウエハ(以下、ウエハと言う)等の被処理体に対してプラズマ処理を行うシステムである。本実施形態では、プラズマ処理として、プラズマエッチングを行う場合を例に説明する。図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【0011】
プラズマ処理装置1は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の電気的に接地された密閉構造の円筒型をした処理室10を有している。この処理室10内に、被処理基板としてのウエハWを載置させる円柱形状の載置台(下部電極)11が配設されている。この載置台11は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなる載置台本体12と、載置台本体12の上部に配置された、ウエハWを吸着するための例えばAl2O3等の絶縁材料からなる静電チャック13を備えている。載置台11と静電チャック13とは、接合層70によって接合されている。載置台本体12は、絶縁材を介して、処理室10の底から垂直上方に延びる筒状支持部15に支持されている。
【0012】
処理室10の側壁と筒状支持部15との間には排気路16が形成され、この排気路16の底部に連通する排気管17が排気装置18に接続されている。排気装置18は、真空ポンプを有し、処理室10内を所定の真空度まで減圧する。また、排気管17は可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(automatic pressure control valve)19を有し、その自動圧力制御弁19によって処理室10内の圧力が制御されている。
【0013】
載置台本体12には、プラズマ生成およびイオン引き込み用の高周波電圧を印加する高周波電源21が、整合器22および給電棒23を介して電気的に接続されている。この高周波電源21は、所定の高周波、例えば、60MHzの高周波電力を載置台11に印加する。なお、高周波電源21は、複数設けられ、周波数の異なる複数の高周波を載置台11へ供給してもよい。例えば、高周波電源21は、複数設けられ、プラズマ生成用の高周波電力と、ウエハWへイオンを引き込むための高周波電力とを載置台11へ供給してもよい。
【0014】
処理室10の天井部には、接地電極としてのシャワーヘッド24が配設されている。上述の高周波電源21により、載置台11とシャワーヘッド24との間に高周波電圧が印加される。シャワーヘッド24は、多数のガス通気孔25を有する下面の電極板26と、電極板26を着脱可能に支持する電極支持体27とを有する。また、電極支持体27の内部にバッファ室28が設けられ、このバッファ室28のガス導入口29には処理ガス供給部30からのガス供給配管31が接続されている。
【0015】
載置台本体12の内部には、例えば、円周方向に配置される環状の冷媒室35が設けられている。この冷媒室35には、チラーユニット36から配管37、38を介して所定温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給される。これにより、載置台本体12は所定の温度に冷却されている。
【0016】
載置台本体12の上部に配置された静電チャック13は、適当な厚さを持った円板形状をなしており、静電チャック13の内部には、タングステン等の導電材料からなる電極板40が埋め込まれている。電極板40には直流電源41が電気的に接続されている。そして、静電チャック13は、直流電源41から電極板40に直流電圧を印加することにより、クーロン力でウエハWを吸着保持することができる。
【0017】
上述のように所定の温度に冷却された載置台本体12の熱は、この静電チャック13を介して、静電チャック13上面に吸着したウエハWに伝達される。この場合、処理室10内が減圧されても熱を効率よくウエハWに伝達させるために、静電チャック13上面に吸着したウエハWの裏面に向けて、Heなどの熱伝達用ガスが、第1ガス供給ライン46を介して、第1の熱伝達用ガス供給部52から供給されている。
【0018】
また、上述したように、載置台本体12の熱は静電チャック13を介してウエハWに伝達されるが、その際、温度変化によって、静電チャック13に変形が生じて静電チャック13上面の平面度が悪化する場合がある。静電チャック13上面の平面度が悪化すると、ウエハWを確実に吸着できなくなってしまう。そこで、接合層70の厚さを調整することにより、温度変化によって生ずる静電チャック13の変形を接合層70で吸収し、このような静電チャック13上面の平面度の悪化を防止することが望ましい。そのためには、例えばウエハWの直径が200mmの場合は、接合層70の厚さを60μm以上、ウエハWの直径が300mmの場合は、接合層70の厚さを90〜150μmとすることが好ましい。
【0019】
載置台11は、静電チャック13を取り囲むように、環状のフォーカスリング60が上部に配置されている。また、処理室10の側壁には、ウエハWの搬入出口62を開閉するゲートバルブ63が取り付けられている。また、処理室10の周囲には、環状又は同心状に延びる磁石64が配置されている。
【0020】
また、載置台11を構成する載置台本体12と接合層70と静電チャック13には、貫通穴65が設けられる。貫通穴65の内部には、電気的に抵抗又はインダクタンスを介して接地されたプッシャーピン66が設けられる。なお、図1では、貫通穴65およびプッシャーピン66を1つ図示したが、貫通穴65およびプッシャーピン66は、載置台11の周方向に均等な間隔で、3つ以上設けられる。プッシャーピン66は、処理室10を気密にするとともに伸縮可能としたべローズ67を介してエアーシリンダ68にそれぞれ接続される。プッシャーピン66は、ロードロック室の搬送装置よりウエハWの受渡しを行い、静電チャック13にウエハWを接離する際に、エアーシリンダ68により上下移動する。ウエハWを処理室10内に受け渡す場合の搬入動作を説明する。ゲートバルブ63が開き、搬入出口62より搬送装置がウエハWを処理室10内に搬入する。次に、プッシャーピン66が貫通穴65を介して上昇しウエハWの裏面を支持し、搬送装置からウエハWを持ち上げる。その後、搬送装置は搬入出口62よりロードロック室へ戻り、プッシャーピン66が貫通穴65を介して下降することでウエハWが静電チャック13上に載置される。最後にゲートバルブ63が閉まることでウエハWが処理室10内に受け渡される。ウエハWを処理室10内から取り出す際の搬出動作を説明する。ゲートバルブ63が開き、プッシャーピン66が貫通穴65を介して上昇することでウエハWが静電チャック13上から持ち上げられる。搬入出口62から搬送装置が処理室10内に入り、プッシャーピン66上に支持されているウエハWの下側まで来る。次に、プッシャーピン66が貫通穴65を介して下降しウエハWが搬送装置に載置される。その後、搬送装置は搬入出口62よりロードロック室へ戻り、ウエハWがチャンバー内から搬出される。
【0021】
プラズマ処理装置の処理室10内では、磁石64によって一方向に向かう水平磁界が形成されると共に、載置台11とシャワーヘッド24との間に印加された高周波電圧によって鉛直方向のRF電界が形成され、これにより、処理室10内において処理ガスを介したマグネトロン放電が行われ、載置台11の表面近傍において処理ガスから高密度のプラズマが生成される。
【0022】
プラズマ処理装置1の各構成要素、例えば、排気装置18、高周波電源21、処理ガス供給部30、静電チャック13用の直流電源41および第1の熱伝達用ガス供給部52等は、制御部69によって動作が制御されている。
【0023】
[載置台11及び静電チャック13の部分の要部構成]
次に、載置台11及び静電チャック13の部分の要部構成について説明する。図2は、基台及び静電チャックの要部構成の一例を示す概略断面図である。
【0024】
載置台11は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなる載置台本体12と、載置台本体12の上部に配置された、ウエハWを吸着するための例えばAl2O3等の絶縁材料からなる静電チャック13を備えている。載置台本体12は、上下方向に底面を向けた略円柱状を呈しており、上側の底面の中央部分12aが周辺部分12bよりも高さが高く形成されている。中央部分12aは、ウエハWと同程度のサイズとされている。
【0025】
載置台11の中央部分12aの上部には、静電チャック13が設けられている。載置台11と静電チャック13とは、接合層70によって接合されている。接合層70は、静電チャック13と載置台11との応力緩和の役割を果たすとともに、載置台11と静電チャック13とを接合する。接合層70は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル、エポキシなどのエラストマーを用いて形成される。
【0026】
ここで、プラズマ処理装置1では、プラズマエッチングを行った場合、ラジカルや陰イオンにより、接合層70を構成するエラストマーの鎖状結合手が攻撃される。これにより、プラズマ処理装置1では、エラストマーの低分子化が進行して、接合層70がサイドから消耗する。プラズマ処理装置1では、接合層70が消耗してサイドが減少すると、接合層70のサイドの部分に空間が発生する。そして、プラズマ処理装置1では、空間が発生した部分の静電チャック13の温度制御が十分にできなくなり、エッチングレートの面内の均一性が低下する。
【0027】
このため、従来、プラズマ処理装置1では、定期的にメンテナンスを行う。例えば、プラズマ処理装置1では、接合層70の消耗に応じて、静電チャック13を交換して、接合層70を再形成するなどのメンテナンスを行う。プラズマ処理装置1では、短い期間でメンテナンスが必要となると、メンテナンスの手間が多くなり、プラズマ処理装置1の維持費用も高くなる。また、プラズマ処理装置1では、短い期間でメンテナンスが必要となると、プラズマ処理を実施できないダウンタイムも多くなり、生産性も低下する。
【0028】
そこで、プラズマ処理装置1では、処理室10内に配置される、プラズマによる消耗の保護対象とされた保護対象部材に、ラジカル及び陰イオンの少なくとも一方を取り込む特性を有する材料に含有をさせる、または、当該材料を含んだ保護層71を保護対象部材の表面に設ける。ラジカル及び陰イオンの少なくとも一方を取り込む特性を有する材料としては、例えば、ハイドロタルサイト、無機ナノシート、層状ニオブ・チタン酸塩、イオン吸着性を有する鉱物などが挙げられる。
【0029】
実施形態に係るプラズマ処理装置1では、接合層70のサイド側の表面にハイドロタルサイトを含んだ保護層71を設ける。保護層71は、例えば、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを添加した材料を用いて形成する。ハイドロタルサイトの添加量は、例えば、体積パーセント濃度で、0.5〜90vol%の範囲であればよく、好ましくは、0.5〜40vol%の範囲であり、さらに好ましくは、5〜15vol%の範囲である。
【0030】
ハイドロタルサイトは、例えば、下記式(1)で表わされる化合物である。
【0031】
Mg1-xAlx(OH)2(Cl)x-ny・(An-y・mH2O (1)
(式中、xは0.15<x<0.34を満足する正数であり、An-はCl-以外のn価の陰イオンであり、yは正数であり、mは0.1<m<0.7を満足する正数である。)
【0032】
図3は、ハイドロタルサイトの構造を模式的に示した図である。ハイドロタルサイトは、Mg/Al系層状化合物であり、層状構造を持ち、層間に陰イオンを取り込む性質を持つ。例えば、ハイドロタルサイトは、例えば、CHF3、CF4などの処理ガスをプラズマ化した場合、Fを吸着し、一旦吸着したFを放出しない性質を持つ。ハイドロタルサイトに関する詳細は、例えば、特開2009−178682号公報に記載されている。
【0033】
実施形態に係るプラズマ処理装置1では、接合層70のサイド側の表面にハイドロタルサイトを含んだ保護層71を設けることにより、接合層70の消耗を抑制できる。これは、ハイドロタルサイトがFを吸着することで、接合層70のサイド付近のFの密度が減り、消耗の進行速度が減少するためと考えられる。
【実施例】
【0034】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した評価実験の具体例を説明する。最初に、シリコーン樹脂の消耗の抑制の効果の確認を行った評価実験の具体例を説明する。評価実験では、シリコーン樹脂のみの評価試料Aと、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bの2種類を用意した。評価試料Bでは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを10vol%含有させた。2種類の評価試料A、Bのサイズは、30mm角とする。評価実験では、評価試料A、Bを複数容易し、処理ガスの濃度を変えてプラズマエッチングのプラズマ処理を行った。プラズマエッチングの処理ガスとしては、CF4/O2の混合ガスを用い、CF4とO2の流量比を変化させた。
【0035】
図4は、プラズマ処理前後の重量変化を示した図である。図4には、評価試料A及び評価試料Bのプラズマ処理前後の重量変化が示されている。図4に示すように、CF4の流量比が5%の場合では、ハイドロタルサイトを含有させたことにより、重量変化が1/10程度に抑えられている。また、CF4の流量比が85%の場合では、ハイドロタルサイトを含有させたことにより、重量変化が1/2程度に抑えられている。
【0036】
このように、プラズマ処理では、ハイドロタルサイトを含有させることにより、シリコーン樹脂の消耗が抑制されることが確認できる。
【0037】
次に、ハイドロタルサイトによるFの吸着の効果の確認を行った評価実験の具体例を説明する。評価実験では、シリコーン樹脂のみ(ハイドロタルサイトなし)の評価試料Aと、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bと、ハイドロタルサイトを表面に塗布した評価試料Cの3種類を用意した。評価試料Bでは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを10vol%含有させた。3種類の評価試料A〜Cのサイズは、5mm角とする。評価実験では、ウエハWとして酸化膜が形成されたブランケットを用い、3種類の評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングの処理ガスとしては、CF4/Ar/O2の混合ガスを用いた。
【0038】
図5Aは、半導体ウエハ上のエッチングレートの測定結果を示した図である。図5Aには、ウエハWの各位置でのエッチングレート(E/R)がパターンを変えて示されている。また、図5Aには、ウエハW上での評価試料Aが配置された測定点PA、評価試料Bが配置された測定点PB、評価試料Cが配置された測定点PCの位置が示されている。評価試料Aが配置された測定点PAの近辺は、周囲と同程度にエッチングレートとなっている。評価試料Aは、シリコーン樹脂のみで形成されている。このことから、シリコーン樹脂のみでは、エッチングレートの変動が、小さいことが確認できる。一方、評価試料Bが配置された測定点PB及び評価試料Cが配置された測定点PCの近辺は、周囲よりも低いエッチングレートとなっている。評価試料B及び評価試料Cは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトが含有または塗布されている。このことから、ハイドロタルサイトは、エッチングレートを低下させることが確認できる。
【0039】
図5B及び図5Cは、エッチングレートの変化を示したグラフである。図5Bは、ウエハWの中心をゼロとして、図5AのY軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。図5Bは、ウエハWの中心をゼロとして、図5AのX軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。なお、X軸は、評価試料Aが配置された測定点PAから若干ずれている。
【0040】
図5B及び図5Cには、評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「今回のテスト」として示されている。また、図5B及び図5Cには、評価試料A〜Cを配置せずに、ウエハWに同様のプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「Ref(評価試料なし)」として示されている。
【0041】
図5Bに示すように、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bが配置された測定点PBの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、60〜75mmの幅で発生している。
【0042】
また、図5Cに示すように、シリコーン樹脂のみの評価試料Aが配置された測定点PAの位置の近辺(−110mmの近辺)は、エッチングレートが若干低下している。エッチングレートの低下は、45mmの幅で発生している。また、ハイドロタルサイトを表面に塗布した評価試料Cが配置された測定点PCの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、130mmの幅で発生している。
【0043】
図5A〜5Cから、評価試料B及び評価試料Cの近辺は、ハイドロタルサイトがFを吸着することにより、エッチングレートが低下することが確認できる。
【0044】
次に、ウエハWとしてポリシリコーン樹脂のウエハWを用いて、3種類の評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングの処理ガスとしては、CF4/O2の混合ガスを用いた。
【0045】
図6Aは、半導体ウエハ上のエッチングレートの測定結果を示した図である。図6Aには、ポリシリコーン樹脂のウエハWの各位置でのエッチングレート(E/R)がパターンを変えて示されている。また、図6Aには、ウエハW上での評価試料Aが配置された測定点PA、評価試料Bが配置された測定点PB、評価試料Cが配置された測定点PCの位置が示されている。評価試料Aが配置された測定点PAの近辺は、周囲と同程度にエッチングレートとなっている。評価試料Aは、シリコーン樹脂のみで形成されている。このことから、ポリシリコーン樹脂においても、シリコーン樹脂のみでは、エッチングレートの変動が、小さいことが確認できる。一方、評価試料Bが配置された測定点PB及び評価試料Cが配置された測定点PCの近辺は、周囲よりも低いエッチングレートとなっている。評価試料B及び評価試料Cは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトが含有または塗布されている。このことから、ポリシリコーン樹脂においても、ハイドロタルサイトは、エッチングレートを低下させることが確認できる。
【0046】
図6B及び図6Cは、エッチングレートの変化を示したグラフである。図6Bは、ウエハWの中心をゼロとして、図6AのY軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。図6Bは、ウエハWの中心をゼロとして、図6AのX軸に沿ったエッチングレートの変化を示している。
【0047】
図6B及び図6Cには、評価試料A〜CをウエハWの表面に配置してプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「今回のテスト」として示されている。また、図6B及び図6Cには、評価試料A〜Cを配置せずに、ウエハWに同様のプラズマエッチングを行った際のエッチングレートが「Ref(評価試料なし)」として示されている。
【0048】
図6Bに示すように、ハイドロタルサイトを含有させた評価試料Bが配置された測定点PBの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、45mmの幅で発生している。
【0049】
また、図6Cに示すように、シリコーン樹脂のみの評価試料Aが配置された測定点PAの位置の近辺(−110mmの近辺)は、エッチングレートが若干低下している。エッチングレートの低下は、30mmの幅で発生している。また、ハイドロタルサイトを表面に塗布した評価試料Cが配置された測定点PCの位置の近辺(+110mmの近辺)は、エッチングレートが大きく低下している。エッチングレートの低下は、60〜75mmの幅で発生している。
【0050】
図6A〜6Cからも、評価試料B及び評価試料Cの近辺は、ハイドロタルサイトがFを吸着することにより、エッチングレートが低下することが確認できる。
【0051】
次に、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71による接合層70の保護効果の確認を行った評価実験の具体例を説明する。評価実験では、載置台11及び静電チャック13の側面(周面)を略半分の範囲に分け、それぞれの範囲の接合層70の表面に、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aと、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bの2種類の保護層71を形成して保護効果を確認した。保護層71bでは、シリコーン樹脂にハイドロタルサイトを10vol%含有させた。
【0052】
図7は、2種類の保護層を形成した範囲を示す図である。図7には、載置台11及び静電チャック13を上方から見た上面図が示されている。図7には、載置台11及び静電チャック13の側面において、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aを形成した範囲80aと、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bを形成した範囲80bとが示さている。例えば、図7に示すように、載置台11及び静電チャック13の中心に対して下部の位置を0°とした、中心から角度θで、載置台11及び静電チャック13の側面の位置を示すものとする。この場合、保護層71aは、角度θ=0°〜180°の範囲に形成されている。保護層71bは、角度θ=180°〜360°の範囲に形成されている。
【0053】
ここで、保護層71を形成する手順を説明する。図8は、保護層を形成する手順の一例を示す図である。例えば、保護層71の厚さが200μmの場合、保護層71は、接合層70の側面に、400μmの幅、厚さ80μmで形成する。なお、保護層71の幅及び厚さは、一例であり、これに限定されるものではない。保護層71の幅は、接合層70の幅よりも大きく、接合層70を覆うことができる幅に形成する。保護層71の厚さは、プラズマ処理が行われる期間において、Fを取り込む特性が十分に維持される厚さに形成する。
【0054】
形成された保護層71の側面は、図8の(A)のように、段差の無いフラットな状態とはならず、実際には、図8の(B)のように、接合層70の部分が凹んだ状態となることもある。
【0055】
評価実験では、このような保護層71が形成されたプラズマ処理装置1を用いてプラズマ処理を繰り返し行い、保護層71の変化を評価した。図9は、評価実験で実施したプラズマ処理の流れを示す図である。評価実験では、新規の保護層71が形成されたプラズマ処理装置1を用いて、トータルでプラズマ処理を162時間行った。評価実験では、保護層71が新規の状態(0h)と、プラズマ処理を142時間実施した状態(142h)で、保護層71の厚みを計測した。図10は、保護層の厚みの計測を説明する図である。評価実験では、保護層71の厚みとして、静電チャック13の側面を基準(高さ0)とした保護層71の表面の高さを計測した。また、評価実験では、保護層71が新規の状態(0h)と、プラズマ処理を22時間(22h)、67時間(67h)、142時間(142h)それぞれ実施した状態で、エッチングレート、汚染量、パーティクル等を計測した。
【0056】
図11は、保護層の高さの変化を示す図である。保護層71が新規の状態(0h)と、プラズマ処理を142時間実施した状態(142h)とについて、角度θの位置で計測された保護層71の高さが示されている。
【0057】
0hの状態では、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成された角度θ=0°〜180°と、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成された角度θ=180°〜360°とで、保護層71の高さに大きな違いはない。すなわち、保護層71が新規の状態では、保護層71aと保護層71bの高さが同様の状態である。
【0058】
一方、142hの状態では、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成された角度θ=0°〜180°では、高さが大きく減少しており、平均の高さが−170μmとなっている。また、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成された角度θ=180°〜360°では、高さの減少が小さく、平均の高さが−90μmとなっている。なお、角度θ=180°〜360°の範囲についても、高さが大きく減少している位置があるが、これは、ハイドロタルサイトが不均一であり、ハイドロタルサイトが少ない位置があったためと考えられる。
【0059】
この図11から、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが、接合層70の減少を抑制できることが確認できる。
【0060】
図12Aは、エッチングレートの変化を示したグラフである。図12Aには、プラズマ処理が0時間(0h)、67時間(67h)、142時間(142h)それぞれについて、ウエハWの角度θかつ中心から半径149mmの位置のエッチングレートが示されている。角度θ=0°〜180°の範囲は、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成されている。角度θ=180°〜360°の範囲は、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成されている。図12Aに示すように、エッチングレート(E/R)は、0時間、67時間、142時間のそれぞれで略一定となっている。
【0061】
図12Bは、プラズマ処理時間に対するエッチングレートの変化を示したグラフである。図12Bには、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71bが形成されている範囲の半径149mmの位置のエッチングレートの平均が「ハイドロタルサイト有」として示されている。また、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aが形成されている範囲の半径149mmの位置のエッチングレートの平均が「ハイドロタルサイト無」として示されている。なお、図12Bでは、ハイドロタルサイト無有とハイドロタルサイト有のグラフが重なった状態となっている。
【0062】
図12A及び図12Bから、ウエハからの距離を適宜取ってあげることで、エッチングレートに対して影響を与えない。すなわち、ハイドロタルサイトは、プロセスに影響がなく、接合層70の長寿命化に寄与できる。
【0063】
図13は、プラズマ処理時間に対する汚染量の変化を示したグラフである。図13には、プラズマ処理を22時間、67時間、142時間それぞれ実施した状態で、Mg、Al、Ca、Fe、Niの金属汚染量を計測した結果を結んだグラフが示されている。また、図13の左側には、ハイドロタルサイトを含まない保護層71aのみを形成して際のMg、Al、Ca、Fe、Niの金属汚染量を「リファレンスデータ」として示されている。ハイドロタルサイトを含んだ保護層を形成したことによる金属汚染量は、各元素とも概ねリファレンスデータと同等の数値となっている。
【0064】
図13から、ハイドロタルサイトを保護層71に添加したとしても、金属汚染量が、プラズマ処理装置1に適用が可能なレベルであることを確認できる。
【0065】
図14は、プラズマ処理時間に対するパーティクル量の変化を示したグラフである。図14には、プラズマ処理を22時間、67時間、142時間それぞれ実施した状態で、ウエハW上のパーティクルの個数を計測した結果を結んだグラフが示されている。なお、パーティクルとしては、直径60nm以上のものを計測した。図14では、直径60nm以上が50個以下を基準として示している。各プラズマ処理ともパーティクル量は、概ね基準以下または基準と同程度の数値となっている。
【0066】
図14から、ハイドロタルサイトを保護層71に添加したとしても、パーティクルへの影響は少ないことを確認できる。
【0067】
このように実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマが生成される処理容器(処理室10)と、処理容器内に配置され、プラズマによる消耗の保護対象とされた接合層70と有する。接合層70は、ハイドロタルサイトを含んだ保護層71が表面に設けられている。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。この結果、プラズマ処理装置1は、接合層70のメンテナンスの手間を軽減でき、プラズマ処理装置1の維持費用を安くできる。また、プラズマ処理装置1では、プラズマ処理を実施できないダウンタイムも少なくなり、生産性の低下を抑制できる。
【0068】
また、ハイドロタルサイトは、安価に入手できる。これにより、プラズマ処理装置1は、製造コストを大きく増加させずに製造できる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置及び制御方法について説明したが、これに限定されるものではない。以下では、他の実施形態について説明する。
【0070】
例えば、プラズマ処理装置1では、接合層70のサイドの表面に保護層71を設けてプラズマによる接合層70の消耗を抑制する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。実施形態の一例において、プラズマ処理装置1は、接合層70のサイドの表面に保護層71を設けずに、接合層70にハイドロタルサイトを含有させて形成されてもよい。この場合も、プラズマ処理装置1は、接合層70に含有されたハイドロタルサイトがFを吸着することで、プラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。また、プラズマ処理装置1は、接合層70にハイドロタルサイトを含有させることで、サイドのみならず、プッシャーピン66を収納するために載置台11に形成された貫通穴65などに進入するプラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。また、プラズマ処理装置1は、接合層70にハイドロタルサイトを含有させた材料で接合層70を形成すればよいため、保護層71を形成する作業の手間を軽減できる。また、既存のプラズマ処理装置1をメンテナンスする際に、ハイドロタルサイトを含有させた材料で接合層70を形成することで、既存のプラズマ処理装置1についても、プラズマによる接合層70の消耗を抑制できる。
【0071】
また、プラズマ処理装置1では、実施形態の一例において、保護対象部材を接合層70とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。保護対象部材は、プラズマによる消耗から保護すべき部材であれば、何れであってもよい。例えば、保護対象部材は、プラズマを遮断するために設けられるOリング、プラズマ処理装置1内で使用されるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、シリコーン、アクリル、エポキシなどのエラストマーであってもよい。また、保護対象部材は、ウエハWを昇降させるプッシャーピン66などのブッシュパーツ、ピンパーツであってもよい。また、保護対象部材は、プラズマからパーツを保護するために表面に形成された溶射膜などの表面コーティングであってもよい。保護対象部材は、ハイドロタルサイトを含有してもよく、または、ハイドロタルサイトを含んだ保護層が表面に設けられもよい。例えば、Oリングなどのエラストマーを、ハイドロタルサイトを含有させた材料で形成してもよい。また、保護対象部材が表面に溶射膜を形成される場合、ハイドロタルサイトを含んだ溶射材料により、ハイドロタルサイトを含んだ溶射膜を保護対象部材の表面に形成してもよい。
【0072】
(基台)
また、例えば、第1の実施形態では、載置台11がアルミニウムよりも熱膨張率の低い材料で形成される場合を用いて説明したが、これに限定されるものではない。載置台11は、例えば、下部電極としてアルミニウム等の導電性部材(Alの線熱膨張率;略23.5×10−6(cm/cm/度))で形成されても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 プラズマ処理装置
10 処理室
11 載置台
13 静電チャック
12 載置台本体
70 接合層
71 保護層
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14