(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フォーカスリングは、前記第1側面及び前記第2側面並びに前記突起部を覆う筒状の本体と、前記本体の上部から前記静電チャックの上面外縁部に環状に延在する延在部と、を有している請求項2に記載の基板固定装置。
前記静電チャックにおいて前記接着層の一方の面に接する部分は円盤状であり、前記静電チャックは前記円盤状の部分の上側に前記円盤状の部分の外縁部を環状に露出する第2の円盤状の部分を備え、
前記フォーカスリングは、前記第1側面及び前記第2側面並びに前記突起部を覆う筒状の本体と、前記本体の上部から前記円盤状の部分の外縁部に環状に延在する延在部と、を有している請求項2に記載の基板固定装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1の実施の形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図1を参照するに、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電チャック30とを有している。
【0011】
ベースプレート10は、静電チャック30を搭載するための部材である。ベースプレート10は、略円盤状の下部101と、下部101上に略同心的に配置された略円盤状の上部102とを備えている。上部102は、下部101よりも小径であり、下部101上に突起している。下部101と上部102とは、一体に形成することができる。
【0012】
ベースプレート10の厚さ(下部101と上部102の総厚)は、例えば、20〜50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金から形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック30上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0013】
ベースプレート10の内部には、水路15を設けることができる。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック30上に吸着されたウェハを冷却することができる。ベースプレート10には、水路15の他に、静電チャック30上に吸着されたウェハを冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0014】
静電チャック30は、接着層20を介して、ベースプレート10上に固着されている。接着層20については、後述する。静電チャック30は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック30の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチ程度とすることができる。
【0015】
静電チャック30は、基体31と、静電電極32と、発熱体33とを有している。静電チャック30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック30は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0016】
基体31は誘電体であり、基体31としては、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。
【0017】
基体31は、例えば、ベースプレート10の上部102と同径の略円盤状とすることができる。基体31の厚さは、例えば、1〜10mm程度とすることができる。基体31の比誘電率(1kHz)は、例えば、9〜10程度とすることができる。
【0018】
静電電極32は、薄膜電極であり、基体31に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力が発生し、静電チャック30上にウェハを吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0019】
発熱体33は、基体31に内蔵されている。発熱体33としては、タングステン等を用いることができる。発熱体33は、基板固定装置1の外部に設けられた制御回路等に接続され、吸着対象物の温度制御に用いることができる。
【0020】
接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、例えば、1mm〜3mm程度とすることができる。
【0021】
静電チャック30において接着層20の上面に接する部分の側面(基体31の側面)と、ベースプレート10において接着層20の下面に接する部分の側面(上部102の側面)とは、平面視で(基体31の上面の法線方向から視て)重複する位置にある。そして、接着層20は、基体31の側面及び上部102の側面から外側に突起する突起部20Aを備えている。
【0022】
突起部20Aは、基体31の側面及び上部102の側面から水平方向(上部102の上面に略平行な方向)に環状に突起している。すなわち、接着層20の上面は、基体31の側面及び上部102の側面の内側から外側まで水平方向に延びる平面を有している。又、接着層20の下面は、基体31の側面及び上部102の側面の内側から外側まで水平方向に延びる平面を有している。
【0023】
接着層20を形成するには、例えば、予めベースプレート10の上部102及び基体31よりも大径に形成されたフィルム状のシリコーン樹脂等を準備する。そして、準備したシリコーン樹脂等をベースプレート10の上部102と基体31により挟持し、硬化させればよい。このとき、接着層20に圧力を加えてもよい。
【0024】
或いは、予めベースプレート10の上部102及び基体31と同径又は小径に形成されたフィルム状のシリコーン樹脂等を準備する。そして、準備したシリコーン樹脂等をベースプレート10の上部102と基体31により挟持し、圧力を加えて接着層20の端部を基体31の側面及び上部102の側面から水平方向にはみ出させ、硬化させてもよい。
【0025】
なお、必要に応じ、フィルム状のシリコーン樹脂等に代えて、液状又はペースト状のシリコーン樹脂等を用いてもよい。
【0026】
図2は、接着層が突起部を有することにより生じる効果について説明する図であり、
図2(a)は接着層20の突起部20A近傍の部分拡大断面図である。
図2(b)は、比較例1に係る接着層20Xの端部近傍の部分拡大断面図であり、接着層20Xの端面が基体31の側面及び上部102の側面よりも内方に窪んだ例である。
図2(c)は、比較例2に係る接着層20Yの端部近傍の部分拡大断面図であり、接着層20Yの端面が基体31の側面及び上部102の側面と略面一である例である。
【0027】
図2(a)に示すように接着層20が突起部20Aを有することにより、基板固定装置1に熱負荷が加わった際に接着層20に加わる応力を、
図2(b)や
図2(c)の場合と比べて低減することができる。その結果、接着層20にクラックや剥離が生じるおそれを低減できる。特に、突起部20Aの基体31の側面及び上部102の側面からの突起量L
1を接着層20の厚さの半分以上とすることが、応力を低減する観点から好ましい。
【0028】
[シミュレーション]
接着層に生じる応力シミュレーションを行った。シミュレーションは、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、実際の基板固定装置の1/4のモデルを用いて行った。なお、
図3(a)はシミュレーションモデルの斜視図、
図3(b)はシミュレーションモデルのX方向から視た側面図である。
【0029】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ベースプレート10の下部101の半径を150mm、ベースプレート10の上部102の半径を130mm、基体31の半径を130mmとした。又、ベースプレート10の下部101の厚さを30mm、ベースプレート10の総厚(下部101の厚さと上部102の厚さの合計)を37mm、基体31の厚さを5mm、接着層20の厚さを2mmとした。又、突起部20Aの突起量L
1は1.3mm(接着層20の半径が131.3mm)とした。
【0030】
又、ベースプレート10(下部101及び上部102)、基体31、及び接着層20について、ヤング率とポアソン比と線膨張係数のシミュレーション条件を表1に示すように設定した。そして、ストレスフリー温度を170℃とし、25℃に温度を下げたときに接着層に生じる応力をシミュレーションにより求めた(温度負荷:145℃)。
【0031】
【表1】
なお、比較例として突起部20Aを有さない
図2(c)の構造についてもシミュレーションを行った。比較例の構造は、接着層20Yが突起部20Aを有していない点を除いて、
図3(a)及び
図3(b)と同様の寸法である。又、比較例についても表1と同様の条件を設定した。
【0032】
図4は、シミュレーション結果について示す図であり、
図4(a)は比較例に係る接着層20Yの結果を、
図4(b)は本実施の形態に係る接着層20の結果を示している。なお、
図4(a)及び
図4(b)では、接着層のみを図示している。
【0033】
図4(a)に示す接着層20Yでは、接着層20Yの外縁部に最大応力部が存在し、最大応力値は1.77[MPa]であった。これに対して、
図4(b)に示す接着層20では、接着層20の外縁部よりも40mm程度中心側に最大応力部が存在し、最大応力値は1.12[MPa]であった。
【0034】
このように、接着層20が突起部20Aを有することにより、基板固定装置1に熱負荷が加わった際に接着層20に加わる応力を、突起部20Aを有しない場合と比べて低減できることが確認された。又、接着層20が突起部20Aを有することにより、最大応力部が接着層20の外縁部よりも中心側に移動するため、接着層20の外縁部で生じやすいクラックや剥離を防止することができる。
【0035】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、フォーカスリングを有する基板固定装置の例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0036】
図5は、第2の実施の形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図5を参照するに、基板固定装置2は、フォーカスリング50が設けられた点が基板固定装置1(
図1参照)と相違する。
【0037】
フォーカスリング50は、ベースプレート10の側面、接着層20の突起部20A、及び静電チャック30の側面(基体31の側面)を保護する筒状の本体501と、本体501の上部から静電チャック30の上面外縁部(基体31の上面外縁部)に環状に延在する延在部502とを有している。本体501と延在部502とは一体に構成することができる。
【0038】
フォーカスリング50は、例えば、ベースプレート10や基体31に対して、ボルトやねじ等の締結部材や接着剤等により固定することができる。 フォーカスリング50の材料としては、例えば、接着層20や基体31よりも耐プラズマ性が高い材料を用いることができる。フォーカスリング50の材料としては、例えば、シリコン、石英、セラミック、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0039】
フォーカスリング50を設けることにより、接着層20の突起部20Aがプラズマに曝されないように保護することができる。
【0040】
〈第2の実施の形態の変形例1〉
第2の実施の形態の変形例1では、フォーカスリングを有する基板固定装置の他の例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0041】
図6は、第2の実施の形態の変形例1に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図6を参照するに、基板固定装置2Aは、基体31及びフォーカスリング50が基体31A及びフォーカスリング50Aに置換された点が基板固定装置2(
図5参照)と相違する。
【0042】
基体31Aは、略円盤状である下部311と、下部311よりも小径の略円盤状である上部312とを備えている。上部312は、下部311上に略同心的に配置され、下部311の外縁部を環状に露出するように下部311上に突起している。下部311と上部312とは、一体に形成することができる。
【0043】
基体31Aの下部311は、例えば、ベースプレート10の上部102と同径とすることができる。基体31Aの材料や基体31Aの厚さ(下部311と上部312の総厚)は、例えば、基体31の材料や基体31の厚さと同様とすることができる。
【0044】
フォーカスリング50Aは、ベースプレート10の側面、接着層20の突起部20A、及びを静電チャック30の側面(基体31Aの側面)を保護する筒状の本体501Aと、本体501Aの上部から基体31Aの下部311の上面外縁部に環状に延在する延在部502Aとを有している。本体501Aと延在部502Aとは一体に構成することができる。延在部502Aの上面は、例えば、基体31Aの上部312の上面と面一か、基体31Aの上部312の上面よりも低い位置とすることができる。
【0045】
フォーカスリング50Aは、例えば、ベースプレート10や基体31Aに対して、ボルトやねじ等の締結部材や接着剤等により固定することができる。 フォーカスリング50Aの材料としては、例えば、接着層20や基体31Aよりも耐プラズマ性が高い材料を用いることができる。フォーカスリング50Aの材料としては、例えば、シリコン、石英、セラミック、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0046】
フォーカスリング50Aを設けることにより、接着層20の突起部20Aがプラズマに曝されないように保護することができる。
【0047】
又、下部311と上部312により基体31Aの側面に段差を形成することで、フォーカスリング50Aの延在部502Aの上面を基体31Aの上部312の上面よりも突出させないようにすることができる。これにより、基体31Aの上部312の上面に、吸着対象物を容易に配置することができる。
【0048】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0049】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。