【文献】
          深川  和己 ほか,エピナスチン塩酸塩点眼液ベンザルコニウム塩化物(BAK)フリー製剤のスギ花粉の抗原溶出に対する影響,アレルギー・免疫,2016年01月19日,Vol.23, No.2,p.124-129, ISSN 1344-6932,第127頁右欄第10行〜第129頁右欄第22行、第128頁の表1,2
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
  本発明の花粉破裂抑制剤は、ホウ酸及び/又はその塩を含み、且つトリエタノールアミンを実質的に含まないことを特徴とする。以下、本発明の花粉破裂抑制剤成分について詳述する。
 
【0012】
[ホウ酸及び/又はその塩]
  本発明の花粉破裂抑制剤は、花粉破裂抑制作用を発揮させる有効成分として、ホウ酸及び/又はその塩を含有する。
 
【0013】
  本発明で使用されるホウ酸塩の種類については、特に制限されず、オルトホウ酸塩、二ホウ酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩等のいずれであってもよい。また、ホウ酸塩を構成する塩基についても、特に制限されないが、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。本発明で使用されるホウ酸の塩として、好ましくはホウ砂が挙げられる。
 
【0014】
  本発明の花粉破裂抑制剤において、ホウ酸、及びホウ酸の塩は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。ホウ酸及びホウ酸の塩の中でも、花粉破裂抑制効果をより有効に奏させるという観点から、好ましくは、ホウ酸単独、又はホウ酸とホウ酸の組み合わせが挙げられる。
 
【0015】
  本発明の花粉破裂抑制剤におけるホウ酸及び/又はその塩の含有量については、特に制限されず、当該花粉破裂抑制剤の適用対象等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、ホウ酸及び/又はその塩の総量で、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは1.2〜2重量%が挙げられる。
 
【0016】
[トリエタノールアミン]
  トリエタノールアミンには、花粉破裂抑制効果を妨げる作用がある。そのため、本発明の花粉破裂抑制剤では、トリエタノールアミンを実質的に含まない。
  本発明の花粉破裂抑制剤において、「トリエタノールアミンを実質的に含まない」とは、トリエタノールアミンが、花粉破裂抑制効果を妨げる含有量以上で含まれていないことを指す。即ち、本発明の花粉破裂抑制剤には、花粉破裂抑制効果を妨げない範囲であることを限度として、トリエタノールアミンが含まれることが許容される。具体的には、本発明の花粉破裂抑制剤において許容されるトリエタノールアミンの含有量として、通常0.001nmol/g以下、好ましくは0.0005nmol/g以下、更に好ましくは0mol/gが挙げられる。
 
【0017】
[アルコール性水酸基を有する有機アミン]
  トリエタノールアミン以外のアルコール性水酸基を有する有機アミンについても、本発明の花粉破裂抑制剤による花粉破裂抑制効果を減弱させる可能性がある。そのため、本発明の花粉破裂抑制剤の好適な一態様として、アルコール性水酸基を有する有機アミンを実質的に含んでいないことが挙げられる。
 
【0018】
  アルコール性水酸基を有する有機アミンとしては、具体的には、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トロメタモール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルグルカミン、メグルミン等が挙げられる。
 
【0019】
  ここで、「アルコール性水酸基を有する有機アミンを実質的に含んでいない」とは、当該有機アミンが、花粉破裂抑制効果を妨げる含有量以上で含まれていないことを指す。即ち、本発明の花粉破裂抑制剤には、花粉破裂抑制効果を妨げない範囲であることを限度として、アルコール性水酸基を有する有機アミンが含まれることが許容される。具体的には、本発明の花粉破裂抑制剤において許容されるアルコール性水酸基を有する有機アミンの含有量として、当該有機アミンの総量で、通常0.001nmol/g以下、好ましくは0.0005nmol/g以下、更に好ましくは0mol/gが挙げられる。
 
【0020】
[花粉破裂抑制効果を増強させる成分]
  本発明の花粉破裂抑制剤には、更に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル((A)成分と表記することもある)、テルペノイド((B)成分と表記することもある)、グリチルリチン酸及び/又はその塩((C)成分と表記することもある)、クロルフェニラミン及び/又はその塩((D)成分と表記することもある)、並びにε−アミノカプロン酸及び/又はその塩((E)成分と表記することもある)の内、少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
 
【0021】
  本発明の花粉破裂抑制剤において、(A)〜(E)成分の内、1種、2種以上、3種以上、4種以上、又は5種(即ち(A)〜(E)成分の全て)を含んでいてもよいが、花粉破裂抑制効果をより一層有効に向上させるという観点から、好ましくは(A)〜(E)成分の内の1種又は5種、更に好ましくは(A)〜(E)成分の全て(即ち5種)を含んでいることが望ましい。
 
【0022】
  以下、(A)〜(E)成分について具体的に説明する。
 
【0023】
(A)成分:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
  ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレンソルビタンと脂肪酸のエステルであり、非イオン性界面活性剤として知られている化合物である。
 
【0024】
  本発明で使用されポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおいて、エチレノキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、6〜160、好ましくは6〜60、更に好ましくは6〜30が挙げられる。
 
【0025】
  ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってよい。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数については、特に制限されないが、例えば、8〜30、好ましくは10〜22、更に好ましくは12〜18が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸として、具体的には、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の単一脂肪酸;ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の動植物油由来の混合脂肪酸等が挙げられる。
 
【0026】
  本発明で使用されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、具体的には、POE(20)ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、POE(20)ソルビタンモノパルミテート(ポリソルベート40)、POE(20)ソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POE(20)ソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)、POE(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの表記において、「POE」とはポリオキシエチレンを指し、POEの後ろの括弧内の数値はエチレノキサイドの付加モル数を指す。
 
【0027】
  これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、花粉破裂抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはポリソルベート80が挙げられる。
 
【0028】
  本発明の花粉破裂抑制剤に(A)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(A)成分の総量で0.0001〜3重量%、好ましくは0.0001〜1重量%、更に好ましくは0.001〜0.1重量%が挙げられる。
 
【0029】
(B)成分:テルペノイド
  テルペノイドとは、イソプレノイド又はテルペンとも称され、通常、イソプレン単位(炭素数5)が複数個結合した化合物である。テルペノイドは、含まれるイソプレン単位の数に応じて、モノテルペン(イソプレン単位が2個)、セスキテルペン(イソプレン単位が3個)、ジテルペン(イソプレン単位が4個)、トリテルペン(イソプレン単位が6個)等に分類される。本発明の花粉破裂抑制剤では、これらのいずれのテルペノイドを使用してもよい。
 
【0030】
  モノテルペンとしては、具体的には、メントール、チモール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、シネオール、テルピネオール等のアルコール系モノテルペン;シトラール、シトロネラール、ペリルアルデヒド、サフラナール等のアルデヒド系モノテルペン;カンフル、メントン、カルボメントン、ヨノン等のケトン系モノテルペン等が挙げられる。また、セスキテルペンとしては、具体的には、カマズレン、サンタレン、パチュレン、セドロール、セドレノール、ファルネソール、オイゲノール、α−ビサボロール、β−カリオフィレンアルコール、スクラレオール、ゲラニルリナロール、イソフィトール、ネロリドール、グロブロール、グアイオール、α−サンタロール、カトロール、ファルネサール、ゲルマクロン、シペロン、ゼルンボン、ベチボン等が挙げられる。また、ジテルペンとしては、具体的には、レチナール等が挙げられる。これらのテルペノイドは、光学異性体が存在する場合には、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。
 
【0031】
  これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0032】
  これらのテルペノイドの中でも、好ましくはモノテルペン、より好ましくはアルコール系モノテルペン、特に好ましくはメントール、ボルネオールが挙げられる。
 
【0033】
  また、これらのテルペノイドは、テルペノイドを含む精油の状態で使用してもよい。テルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。
 
【0034】
  本発明の花粉破裂抑制剤に(B)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(B)成分の総量で0.0001〜1重量%、好ましくは0.0001〜0.5重量%、更に好ましくは0.001〜0.05重量%が挙げられる。
 
【0035】
(C)成分:グリチルリチン酸及び/又はその塩
  グリチルリチン酸は、20β−カルボキシ−11−オキソ−30−ノルオレアナ−12−エン−3β−イル−2−O−β−D−グルコピラヌロノシル−α−D−グルコピラノシドウロン酸とも称される公知の化合物である。
 
【0036】
  グリチルリチン酸の塩としては、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。なかでも、好ましくはアルカリ金属塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0037】
  また、グリチルリチン酸、及びグリチルリチン酸の塩は、それぞれ1種単独で使用してもよく、また、グリチルリチン酸とグリチルリチン酸の塩を組み合わせて使用してもよい。グリチルリチン酸及びその塩の中でも、好ましくはグリチルリチン酸の塩、更に好ましくはグリチルリチン酸のアルカリ金属塩、特に好ましくはグリチルリチン酸二カリウムが挙げられる。
 
【0038】
  本発明で使用されるグリチルリチン酸及び/又はその塩は、化学合成したものであってもよく、天然物由来の材料から抽出や精製等したものであってもよい。また、市販されているグリチルリチン酸又はその塩を用いてもよい。
 
【0039】
  グリチルリチン酸又はその塩を天然物由来の材料から抽出や精製等して製造する方法については、特に制限されず、例えば、天然物由来の材料から公知の方法で抽出、精製等する方法が挙げられる。グリチルリチン酸を抽出するための天然物由来の材料としては、例えば、甘草の根等が挙げられる。
 
【0040】
  本発明の花粉破裂抑制剤において(C)成分を使用する場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(C)成分の総量で0.001〜0.3重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%、更に好ましくは0.005〜0.05重量%が挙げられる。
 
【0041】
(D)成分:クロルフェニラミン及び/又はその塩
  クロルフェニラミンは、3−(4−クロロフェニル)−N,N−ジメチル−3−(2−ピリジニル)プロパン−1−アミンとも称される公知の化合物である。
 
【0042】
  クロルフェニラミンの塩としては、特に制限されないが、例えば、マレイン酸塩、塩酸塩、フマル酸塩等の有機酸塩;無機酸塩;金属塩等の各種の塩が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは有機酸塩、更に好ましくはマレイン酸塩が挙げられる。これらのクロルフェニラミンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
 
【0043】
  また、クロルフェニラミン及びその塩は、水和物の形態であってもよく、更にd体、l体、dl体のいずれであってもよい。
 
【0044】
  また、クロルフェニラミン、及びクロルフェニラミンの塩は、それぞれ1種単独で使用してもよく、またクロルフェニラミンとクロルフェニラミンの塩を組み合わせて使用してもよい。クロルフェニラミン及びその塩の中でも、好ましくはクロルフェニラミンの塩、更に好ましくはクロルフェニラミンの有機酸塩、特に好ましくはクロルフェニラミンマレイン酸塩が挙げられる。
 
【0045】
  本発明で使用されるクロルフェニラミン及び/又はその塩は、化学合成したものであってもよく、また天然物由来の材料から抽出や精製等したものであってもよい。また、試薬として市販されているクロルフェニラミン又はその塩を用いてもよい。
 
【0046】
  本発明の花粉破裂抑制剤において(D)成分を使用する場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(D)成分の総量で0.0001〜0.1重量%、好ましくは0.0001〜0.05重量%、より好ましくは0.0003〜0.03重量%が挙げられる。
 
【0047】
(E)成分:ε−アミノカプロン酸及び/又はその塩
  ε−アミノカプロン酸は、炭素数6の飽和脂肪酸の末端の水素原子がアミノ基と置換した公知の化合物である。
 
【0048】
  ε−アミノカプロン酸の塩としては、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。これらのε−アミノカプロン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0049】
  また、ε−アミノカプロン酸、及びε−アミノカプロン酸の塩は、それぞれ1種単独で使用してもよく、ε−アミノカプロン酸とε−アミノカプロン酸の塩を組み合わせて使用してもよい。ε−アミノカプロン酸及びその塩の中でも、好ましくはε−アミノカプロン酸が挙げられる。
 
【0050】
  本発明で使用されるε−アミノカプロン酸及び/又はその塩は、化学合成したものであってもよく、また、試薬として市販されているものであってもよい。
 
【0051】
  本発明の花粉破裂抑制剤において(E)成分を使用する場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(E)成分の総量で0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%が挙げられる。
 
【0052】
[コンドロイチン硫酸及び/又はその塩]
  本発明の花粉破裂抑制剤は、コンドロイチン硫酸及び/又はその塩((F)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
 
【0053】
  コンドロイチン硫酸は、N−アセチル−D−ガラクトサミンとD−グルクロン酸の2糖を反復構造単位とする糖鎖に硫酸が結合した酸性ムコ多糖類として公知の化合物である。
 
【0054】
  コンドロイチン硫酸の塩については、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0055】
  また、コンドロイチン硫酸、及びコンドロイチン硫酸の塩は、それぞれ1種単独で使用してもよく、またコンドロイチン硫酸とコンドロイチン硫酸の塩を組み合わせて使用してもよい。コンドロイチン硫酸及びその塩の中でも、好ましくはコンドロイチン硫酸の塩、更に好ましくはコンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩、特に好ましくはコンドロイチン硫酸ナトリウムが挙げられる。
 
【0056】
  本発明で使用されるコンドロイチン硫酸及び/又はその塩は、化学合成したものであってもよく、また天然物由来の材料から抽出や精製等したものであってもよい。また、市販されているコンドロイチン硫酸及び/又はその塩を使用してもよい。
 
【0057】
  コンドロイチン硫酸及び/又はその塩を天然物由来の材料から抽出や精製等して製造する方法については、特に制限されないが、例えば、天然物由来の材料から公知の方法で抽出、精製等する方法が挙げられる。コンドロイチン硫酸を抽出するための天然物由来の材料としては、例えば、哺乳動物やサケ、エイ、サメ等の魚の軟骨等が挙げられる。これらの中でも、魚類の軟骨由来のものが好ましい。
 
【0058】
  本発明の花粉破裂抑制剤において(F)成分を使用する場合、その含有量としては、特に制限されないが、例えば、(F)成分の総量で0.005〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%、より好ましくは0.01〜3重量%が挙げられる。
 
【0059】
[キレート剤]
  本発明の花粉破裂抑制剤は、更にキレート剤((G)成分と表記することもある)を含んでもよい。
 
【0060】
  本発明で使用されるキレート剤の種類については、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸)、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、酒石酸、メタ珪酸、クエン酸、オルト珪酸、グルクロン酸、及びこれらの塩が挙げられる。また、これらの化合物の塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
 
【0061】
  これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0062】
  これらのキレート剤の中でも、好ましくはエデト酸及びその塩、より好ましくはエデト酸のアルカリ金属塩、更に好ましくはエデト酸ナトリウムが挙げられる。
 
【0063】
  本発明の花粉破裂抑制剤に(G)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(G)成分の総量で0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.001〜0.3重量%が挙げられる。
 
【0064】
[(A)成分以外の界面活性剤]
  本発明の花粉破裂抑制剤は、必要に応じて、(A)成分以外の界面活性剤((H)成分と表記することもある)が含まれていてもよい。
 
【0065】
  本発明で使用される界面活性剤((A)成分以外)の種類については、特に制限されず、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを使用してもよいが、好ましくはノニオン性界面活性剤が挙げられる。
 
【0066】
  界面活性剤としては、具体的には、POE(10〜50モル)フィトステロールエーテル、POE(10〜50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10〜50モル)2−オクチルドデシルエーテル、POE(10〜50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)オレイルエーテル、POE(2〜50モル)セチルエーテル、POE(5〜50モル)ベヘニルエーテル、POE(5〜30モル)ポリオキシプロピレン(5〜30モル)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(10〜50モル)ポリオキシプロピレン(2〜30モル)セチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウムなど)、POE(10〜80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20〜100モル)・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(5〜100)、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリン等)、水素添加大豆リン脂質、水素添加ラノリンアルコール、脂肪酸ポリグリセリル(ステアリン酸ポリグリセリル等)、アミノ酸と脂肪酸のアミド結合物(ステアロイルグルタミン酸ナトリウム等)が挙げられる。
 
【0067】
  これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくはノニオン性界面活性剤が挙げられる。
 
【0068】
  本発明の花粉破裂抑制剤に(H)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(H)成分の総量で0.0001〜3重量%、好ましくは0.0001〜1重量%、より好ましくは0.001〜0.1重量%が挙げられる。
 
【0069】
[アルカリ金属の塩化物]
  本発明の花粉破裂抑制剤にアルカリ金属の塩化物が含まれている場合、花粉破裂抑制効果が減弱されることがある。そのため、本発明の花粉破裂抑制剤の好適な一態様として、アルカリ金属の塩化物を実質的に含んでいないことが挙げられる。
 
【0070】
  アルカリ金属塩としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化フランシウム等が挙げられる。
 
【0071】
  また、ここで、「アルカリ金属の塩化物を実質的に含んでいない」とは、アルカリ金属の塩化物が、花粉破裂抑制効果を減弱させる含有量以上で含まれていないことを指す。即ち、本発明の花粉破裂抑制剤には、花粉破裂抑制効果を減弱させない範囲であることを限度として、アルカリ金属の塩化物が含まれることが許容される。具体的には、本発明の花粉破裂抑制剤において許容されるアルカリ金属の塩化物の含有量として、アルカリ金属の塩化物の総量で、通常0.01重量%以下、好ましくは0.005重量%以下、更に好ましくは0.001重量%以下、より好ましくは0.0005重量%以下、特に好ましくは0.0001重量%以下、最も好ましくは0重量%が挙げられる。
 
【0072】
[他の成分]
  本発明の花粉破裂抑制剤は、ホウ酸及び/又はその塩、並びに(A)〜(H)成分の他に、本発明の効果に影響を与えない範囲で、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、特に制限されず、本発明の花粉破裂抑制剤の剤型や製品形態に応じて適宜選択すればよいが、例えば、緩衝剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤、抗菌剤、殺菌剤、酸化防止剤、充填剤、消臭剤、緩衝剤、紫外線吸収剤、香料、色素、酵素、塩類、糖類、糖アルコール、アミノ酸類等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0073】
  本発明の花粉破裂抑制剤は、前述する成分を溶解した状態で、花粉が浮遊又は付着している対象物に適用するために溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、配合成分を溶解できることを限度として特に制限されず、従来公知のものから適宜選択して用いることができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体;モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン等が挙げられる。
 
【0074】
  これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 
【0075】
  これらの溶剤の中でも、好ましくは水、及び水と有機溶剤の混合液、更に好ましくは水が挙げられる。
 
【0076】
pH
  本発明の花粉破裂抑制剤のpHとしては、花粉破裂抑制効果を奏し得る範囲であれば特に制限されないが、例えば、5.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0、更に好ましくは6.5〜7.5が挙げられる。花粉破裂抑制剤のpHの調整方法は、特に制限されず、公知のpH調整剤を含むことにより調整することができる。
 
【0077】
  特に、前述する成分の内、(A)成分、(C)成分、及び(D)成分は、酸性を呈する特性があるので、本発明の花粉破裂抑制剤に、これらの成分の1種以上を含有させる場合には、pH調整剤(アルカリ)を使用してpHを前述する範囲に調整することが望ましい。また、pH調整剤(アルカリ)を使用してpHを前述する範囲に調整する場合には、pH調整剤(アルカリ)として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を使用することが好ましい。使用するpH調整剤(アルカリ)の種類によっては、花粉破裂抑制効果を減弱させることがあるが、アルカリ金属の水酸化物を使用すると、花粉破裂抑制効果が減弱されるのを抑制することができる。また、花粉破裂抑制効果が減弱されるのをより一層有効に抑制するという観点から、pH調整剤(アルカリ)として、アルカリ金属の水酸化物を使用する場合には、pH調整剤(酸)として塩酸を併用しないことが好ましい。
 
【0078】
製造方法
  本発明の花粉破裂抑制剤は、ホウ酸及び/又はその塩、必要に応じて、(A)〜(H)成分及びその他の成分を、溶剤に添加し混合することによって調製できる。
 
【0079】
形態
  本発明の花粉破裂抑制剤の形態としては、特に制限されず、液剤、エアゾール剤、固形剤、ゲル剤等、公知の製品形態が挙げられる。また、製品形態に応じて、その製品形態に一般的に含有される成分を花粉破裂抑制剤に適宜含有させてもよい。なかでも、花粉破裂抑制剤の形態としては、取扱いが容易な点で、液剤が好ましい。
 
【0080】
  本発明の花粉破裂抑制剤は、例えば、本発明の花粉破裂抑制剤をエアゾール・ディスペンサー容器に収容してスプレー剤、空中散布剤等として使用することができる。また、例えば、本発明の花粉破裂抑制剤を繊維製品に塗布、含浸等することにより、花粉症予防用の繊維製品とすることができる。花粉症予防用の繊維製品の具体例としては、例えば、花粉が付着し得る、顔や体等の身体、窓、床、壁等を拭いたりするためのシート材等が挙げられる。また、本発明の花粉破裂抑制剤は、例えば、界面活性剤等の洗浄成分とともに用いることにより、対象物に付着した花粉の破裂を抑制しつつ対象物を洗浄し得る洗浄剤として使用することができる。
 
【0081】
使用方法
  本発明の花粉破裂抑制剤は、花粉の破裂抑制が求められる対象に適用される。対象としては、花粉が浮遊、もしくは浮遊するおそれのある空間、又は花粉が付着し得る、もしくは付着するおそれのある対象であれば、特に制限されないが、例えば、室内又は車内の空間;窓;網戸;壁;床;カーテン、絨毯、布団、衣類、マスク等の繊維製品;身体(粘膜、皮膚);時計、ネックレス、ブレスレット、指輪等の装身具;家具;書籍等が挙げられる。
 
【0082】
  本発明の花粉破裂抑制剤の使用方法としては、特に制限されず、花粉破裂抑制剤の形態や適当対象の種類等に応じて適宜公知の方法を選択すればよい。例えば、本発明の花粉破裂抑制剤を適用対象に塗布したり、噴霧したり、適用対象を洗い流したりする方法等が挙げられる。
 
【0083】
  本発明の花粉破裂抑制剤の使用量としては、花粉破裂抑制効果が発揮される量であれば特に制限されず、対象に対して適量で適用すればよい。
 
【実施例】
【0084】
  次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0085】
試験例1
  表1〜3に記載の組成となるように、各成分を秤量のうえ、精製水に溶解し、液剤を調製した。得られた花粉破裂抑制剤の花粉破裂率と、花粉の抗原タンパクの溶出量について、下記の方法で評価した。
【0086】
(花粉破裂率)
  花粉の濃度が10mg/mlとなるようにスギ花粉(和光純薬工業株式会社製)を前記で得られた液剤に混濁し、37℃下でインキュベートした。5分後に混濁液10μlをスライドガラスに滴下してカバーガラスで被い、光学顕微鏡(倍率100倍)の下、花粉を200個カウントした。200個の花粉のうち破裂している花粉数をカウントし、下記式により、花粉破裂率を算出した。
【0087】
【数1】
【0088】
(抗原タンパクの放出量の定量)
  実施例9及び14の液剤については、以下の方法に従って、抗原タンパク(Cry j 1及びCry j 2)の放出量の定量を行った。スギ花粉(和光純薬工業株式会社製)を10mg/mlとなるように各液剤に混濁し、37℃下でインキュベートした。5分後に、素早く氷水で冷やし、11,000gで3分間、4℃で遠心分離を行った。上清を採取し、再び遠心分離を行った。その後、上清(回収液)を採取し、ELISA  kit(株式会社 特殊免疫研究所製)を用いてサンドイッチ法にてCry j 1を定量した。また、Cry j 2については、スギ花粉(和光純薬工業株式会社製)を200mg/mlとなるように各液剤に混濁したこと以外は、Cry j 1の場合と同条件で定量を行った。
【0089】
  得られた結果を表1〜3に示す。この結果から、ホウ酸及び/又はホウ砂を含み、且つトリエタノールアミンを含まない液剤(実施例1〜15)は、花粉破裂抑制作用を有することが確認された。また、ホウ酸及び/又はホウ砂を含み、且つトリエタノールアミンを含まない液剤において、ポリソルベート80、テルペノイド(l−メントール、d−ボルネオール)、グリチルリチン酸二カリウム、クロルフェニラミンマレイン酸塩、及びε−アミノカプロン酸の内、いずれか1つを含む場合(実施例2〜6)には、花粉破裂抑制作用が更に高まることも明らかとなった。特に、ホウ酸及び/又はホウ砂を含み、トリエタノールアミンを含まない液剤において、ポリソルベート80、テルペノイド(l−メントール、d−ボルネオール)、グリチルリチン酸二カリウム、クロルフェニラミンマレイン酸塩、及びε−アミノカプロン酸の全てを含み、且つpH調整剤として塩酸を含まない場合(実施例14及び15)には、花粉破裂抑制作用が格段に向上することも、確認された。
【0090】
  一方、ホウ酸及び/又はホウ砂を含んでいても、トリエタノールアミンを含む液剤(比較例1及び2)では、十分な花粉破裂抑制作用を発揮できていなかった。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】