(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価指標作成部はさらに、隣接する前記スキャンエリアの移動速度の基準値の差分に基づいて、前記評価指標を設定することを特徴とする、請求項1または2記載の研磨装置。
前記表面高さの測定値より前記研磨部材のカットレートを記憶する記憶部を備え、当該記憶されたカットレートに基づいて前記研磨部材の高さプロファイルを推定することを特徴とする、請求項6のいずれか記載の研磨装置。
前記ドレッサの揺動速度の算出条件として、前記ドレッサが各スキャンエリアに滞在する時間の合計時間に制約を持たせることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか記載の研磨装置。
前記ドレスモデル行列は、カットレートモデル、ドレッサ径、スキャン速度制御の少なくとも1つの要素に基づいて設定されることを特徴とする、請求項1記載の研磨装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、ウェハなどの基板を研磨する研磨装置を示す模式図である。研磨装置は、ウェハを研磨し、洗浄し、乾燥させる一連の工程を行うことができる基板処理装置に設けられる。
【0017】
図1に示すように、研磨装置は、ウェハWを研磨するための研磨ユニット10と、研磨パッド(研磨部材)11を保持する研磨テーブル12と、研磨パッド11上に研磨液を供給する研磨液供給ノズル13と、ウェハWの研磨に使用される研磨パッド10をコンディショニング(ドレッシング)するドレッシングユニット14とを備えている。研磨ユニット10およびドレッシングユニット14は、ベース15上に設置されている。
【0018】
研磨ユニット10は、トップリングシャフト21の下端に連結されたトップリング(基板保持部)20を備えている。トップリング20は、その下面にウェハWを真空吸着により保持するように構成されている。トップリングシャフト21は、図示しないモータの駆動により回転し、このトップリングシャフト21の回転により、トップリング20およびウェハWが回転する。トップリングシャフト21は、図示しない上下動機構(例えば、サーボモータおよびボールねじなどから構成される上下動機構)により研磨パッド11に対して上下動するようになっている。
【0019】
研磨テーブル12は、その下方に配置されるモータ22に連結されている。研磨テーブル12は、その軸心まわりにモータ22によって回転される。研磨テーブル12の上面には研磨パッド11が貼付されており、研磨パッド11の上面がウェハWを研磨する研磨面11aを構成している。
【0020】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。トップリング20および研磨テーブル12をそれぞれ回転させ、研磨パッド11上に研磨液を供給する。この状態で、ウェハWを保持したトップリング20を下降させ、さらにトップリング20内に設置されたエアバッグからなる加圧機構(図示せず)によりウェハWを研磨パッド11の研磨面11aに押し付ける。ウェハWと研磨パッド11とは研磨液の存在下で互いに摺接され、これによりウェハWの表面が研磨され、平坦化される。
【0021】
ドレッシングユニット14は、研磨パッド11の研磨面11aに接触するドレッサ23と、ドレッサ23に連結されたドレッサ軸24と、ドレッサ軸24の上端に設けられたエアシリンダ25と、ドレッサ軸24を回転自在に支持するドレッサアーム26とを備えている。ドレッサ23の下面にはダイヤモンド粒子などの砥粒が固定されている。ドレッサ23の下面は、研磨パッド11をドレッシングするドレッシング面を構成する。
【0022】
ドレッサ軸24およびドレッサ23は、ドレッサアーム26に対して上下動可能となっている。エアシリンダ25は、研磨パッド11へのドレッシング荷重をドレッサ23に付与する装置である。ドレッシング荷重は、エアシリンダ25に供給される空気圧により調整することができる。
【0023】
ドレッサアーム26はモータ30に駆動されて、支軸31を中心として揺動するように構成されている。ドレッサ軸24は、ドレッサアーム26内に設置された図示しないモータにより回転し、このドレッサ軸24の回転により、ドレッサ23がその軸心まわりに回転する。エアシリンダ25は、ドレッサ軸24を介してドレッサ23を所定の荷重で研磨パッド11の研磨面11aに押圧する。
【0024】
研磨パッド11の研磨面11aのコンディショニングは次のようにして行われる。研磨テーブル12および研磨パッド11をモータ22により回転させ、図示しないドレッシング液供給ノズルからドレッシング液(例えば、純水)を研磨パッド11の研磨面11aに供給する。さらに、ドレッサ23をその軸心まわりに回転させる。ドレッサ23はエアシリンダ25により研磨面11aに押圧され、ドレッサ23の下面(ドレッシング面)を研磨面11aに摺接させる。この状態で、ドレッサアーム26を旋回させ、研磨パッド11上のドレッサ23を研磨パッド11の略半径方向に揺動させる。研磨パッド11は、回転するドレッサ23により削り取られ、これにより研磨面11aのコンディショニングが行われる。
【0025】
ドレッサアーム26には、研磨面11aの高さを測定するパッド高さセンサ(表面高さ測定機)32が固定されている。また、ドレッサ軸24には、パッド高さセンサ32に対向してセンサターゲット33が固定されている。センサターゲット33は、ドレッサ軸24およびドレッサ23と一体に上下動し、一方、パッド高さセンサ32の上下方向の位置は固定されている。パッド高さセンサ32は変位センサであり、センサターゲット33の変位を測定することで、研磨面11aの高さ(研磨パッド11の厚さ)を間接的に測定することができる。センサターゲット33はドレッサ23に連結されているので、パッド高さセンサ32は、研磨パッド11のコンディショニング中に研磨面11aの高さを測定することができる。
【0026】
パッド高さセンサ32による研磨面11aの高さの測定は、研磨パッドの半径方向において区分された複数の所定の領域(モニタエリア)にて行われる。パッド高さセンサ32は、研磨面11aに接するドレッサ23の上下方向の位置から研磨面11aを間接的に測定する。したがって、ドレッサ23の下面(ドレッシング面)が接触している領域(あるモニタエリア)研磨面11aの高さの平均がパッド高さセンサ32によって測定され、複数のモニタエリアにおいて研磨パッドの高さを測定することで、研磨パッドのプロファイル(研磨面11aの断面形状)を得ることができる。パッド高さセンサ32としては、リニアスケール式センサ、レーザ式センサ、超音波センサ、または渦電流式センサなどのあらゆるタイプのセンサを用いることができる。
【0027】
パッド高さセンサ32は、ドレッシング監視装置35に接続されており、パッド高さセンサ32の出力信号(すなわち、研磨面11aの高さの測定値)がドレッシング監視装置35に送られるようになっている。ドレッシング監視装置35は、研磨面11aの高さの測定値から、研磨パッド11のプロファイルを取得し、さらに研磨パッド11のコンディショニングが正しく行われているか否かを判定する機能を備えている。
【0028】
研磨装置は、研磨テーブル12および研磨パッド11の回転角度を測定するテーブルロータリエンコーダ36と、ドレッサ23の旋回角度を測定するドレッサロータリエンコーダ37とを備えている。これらテーブルロータリエンコーダ36およびドレッサロータリエンコーダ37は、角度の絶対値を測定するアブソリュートエンコーダである。これらのロータリエンコーダ36,37はドレッシング監視装置35に接続されており、ドレッシング監視装置35はパッド高さセンサ32による研磨面11aの高さ測定時における、研磨テーブル12および研磨パッド11の回転角度、さらにはドレッサ23の旋回角度を取得することができる。
【0029】
ドレッサ23は、自在継ぎ手17を介してドレッサ軸24に連結されている。ドレッサ軸24は図示しないモータに連結されている。ドレッサ軸24はドレッサアーム26に回転自在に支持されており、このドレッサアーム26により、ドレッサ23は研磨パッド11に接触しながら、
図2に示すように研磨パッド11の半径方向に揺動するようになっている。自在継ぎ手17は、ドレッサ23の傾動を許容しつつ、ドレッサ軸24の回転をドレッサ5に伝達するように構成されている。ドレッサ23、自在継ぎ手17、ドレッサ軸24、ドレッサアーム26、および図示しない回転機構などにより、ドレッシングユニット14が構成されている。このドレッシングユニット14には、ドレッサ23の摺動距離や摺動速度を算出するドレッシング監視装置35が電気的に接続されている。このドレッシング監視装置35としては、専用または汎用のコンピュータを用いることができる。
【0030】
ドレッサ23の下面にはダイヤモンド粒子などの砥粒が固定されている。この砥粒が固定されている部分が、研磨パッド11の研磨面をドレッシングするドレッシング面を構成している。ドレッシング面の態様としては、円形ドレッシング面(ドレッサ23の下面全体に砥粒が固定されたドレッシング面)、リング状ドレッシング面(ドレッサ23の下面の周縁部に砥粒が固定されたドレッシング面)、あるいは、複数の円形のドレッシング面(ドレッサ23の中心まわりに略等間隔に配列された複数の小径ペレットの表面に砥粒が固定されたドレッシング面)を適用することができる。なお、本実施例におけるドレッサ23には、円形ドレッシング面が設けられている。
【0031】
研磨パッド11をドレッシングするときは、
図1に示すように、研磨パッド11を矢印の方向に所定の回転速度で回転させ、ドレッサ23を図示しない回転機構によって矢印の方向に所定の回転速度で回転させる。そして、この状態で、ドレッサ23のドレッシング面(砥粒が配置された面)を研磨パッド11に所定のドレッシング荷重で押圧して研磨パッド11のドレッシングを行う。また、ドレッサアーム26によってドレッサ23が研磨パッド11上を揺動することによって、研磨パッド11の研磨で使用される領域(研磨領域、すなわちウェハ等の研磨対象物を研磨する領域)をドレッシングすることができる。
【0032】
ドレッサ23が自在継ぎ手17を介してドレッサ軸24に連結されているので、ドレッサ軸24が研磨パッド11の表面に対して少し傾いていても、ドレッサ23のドレッシング面は研磨パッド11に適切に当接される。研磨パッド11の上方には、研磨パッド11の表面粗さを測定するパッド粗さ測定器38が配置されている。このパッド粗さ測定器38としては、光学式などの公知の非接触型の表面粗さ測定器を使用することができる。パッド粗さ測定器38はドレッシング監視装置35に接続されており、研磨パッド11の表面粗さの測定値がドレッシング監視装置35に送られるようになっている。
【0033】
研磨テーブル12内には、ウェハWの膜厚を測定する膜厚センサ(膜厚測定機)39が配置されている。膜厚センサ39は、トップリング20に保持されたウェハWの表面を向いて配置されている。膜厚センサ39は、研磨テーブル12の回転に伴ってウェハWの表面を横切って移動しながら、ウェハWの膜厚を測定する膜厚測定機である。膜厚センサ39としては、渦電流センサ、光学式センサなどの非接触タイプのセンサを用いることができる。膜厚の測定値は、ドレッシング監視装置35に送られる。ドレッシング監視装置35は、膜厚の測定値からウェハWの膜厚プロファイル(ウェハWの半径方向に沿った膜厚分布)を生成するように構成されている。
【0034】
次に、ドレッサ23の揺動について
図2を参照して説明する。ドレッサアーム26は、点Jを中心として時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ旋回する。この点Jの位置は
図1に示す支軸31の中心位置に相当する。そして、ドレッサアーム26の旋回により、ドレッサ23の回転中心は、円弧Lで示す範囲で研磨パッド11の半径方向に揺動する。
【0035】
図3は、研磨パッド11の研磨面11aの拡大図である。
図3に示すように、ドレッサ23の揺動範囲(揺動幅L)は、複数の(
図3の例では7つの)スキャンエリア(揺動区間)S1〜S7に分割されている。これらのスキャンエリアS1〜S7は、研磨面11a上に予め設定された仮想的な区間であり、ドレッサ23の揺動方向(すなわち研磨パッド11の概ね半径方向)に沿って並んでいる。ドレッサ23は、これらスキャンエリアS1〜S7を横切って移動しながら、研磨パッド11をドレッシングする。これらスキャンエリアS1〜S7の長さは、互いに同一であってもよく、または異なっていてもよい。
【0036】
図4は、研磨パッド11のスキャンエリアS1〜S7とモニタエリアM1〜M10の位置関係を示す説明図であり、図の横軸は研磨パッド11の中心からの距離を表している。本実施形態では、7つのスキャンエリアと10のモニタエリアが設定された場合を例にしているが、これらの数は適宜変更することができる。また、スキャンエリアの両端からドレッサ23の半径に相当する幅の領域においては、パッドプロファイルの制御が困難であることから、内側(パッド中心からR1〜R3の領域)と外側(パッド中心からR4〜R2の領域)にモニタ除外幅を設けているが、必ずしも除外幅を設ける必要はない。
【0037】
研磨パッド11上を揺動しているときのドレッサ23の移動速度は、スキャンエリアS1〜S7ごとに予め設定されており、また適宜調整することができる。ドレッサ23の移動速度分布は、それぞれのスキャンエリアS1〜S7でのドレッサ23の移動速度を表している。
【0038】
ドレッサ23の移動速度は、研磨パッド11のパッド高さプロファイルの決定要素のうちの1つである。研磨パッド11のカットレートは、単位時間あたりにドレッサ23によって削り取られる研磨パッド11の量(厚さ)を表す。等速でドレッサを移動させた場合、通常、各スキャンエリアにおいて削り取られる研磨パッド11の厚さはそれぞれ異なるため、カットレートの数値もスキャンエリアごとに異なる。しかし、パッドプロファイルは、通常、初期形状を維持することが好ましいため、スキャンエリア毎の削れ量の差が小さくなるように移動速度を調整する。
【0039】
ここで、ドレッサ23の移動速度を上げるということは、ドレッサ23の研磨パッド11上での滞在時間を短くすること、すなわち研磨パッド11の削り量を下げることを意味する。一方、ドレッサ23の移動速度を下げるということは、ドレッサ23の研磨パッド11上での滞在時間を長くすること、すなわち研磨パッド11の削り量を上げることを意味する。したがって、あるスキャンエリアでのドレッサ23の移動速度を上げることにより、そのスキャンエリアでの削れ量を下げることができ、あるスキャンエリアでのドレッサ23の移動速度を下げることにより、そのスキャンエリアでの削れ量を上げることができる。これにより、研磨パッド全体のパッド高さプロファイルを調節することができる。
【0040】
図5に示すように、ドレッシング監視装置35は、ドレスモデル設定部41、ベースプロファイル算出部42、カットレート算出部43、評価指標作成部44、移動速度算出部45、設定入力部46、メモリ47、パッド高さ検出部48を備えており、研磨パッド11のプロファイルを取得するとともに、所定のタイミングで、スキャンエリアにおけるドレッサ23の移動速度が最適になるように設定する。
【0041】
ドレスモデル設定部41は、スキャンエリアでの研磨パッド11の研磨量を算出するためのドレスモデルSを設定する。ドレスモデルSは、モニタエリアの分割数をm(本実施例では10)、スキャンエリアの分割数をn(本実施例では7)としたときのm行n列の実数行列であり、後述する各種パラメータによって決定される。
【0042】
研磨パッド11で設定された各スキャンエリアにおけるドレッサのスキャン速度をV=[v
1、v
2、…、v
n]、各スキャンエリアの幅をW=[w
1、w
2、…、w
n]としたとき、各スキャンエリアでのドレッサ(の中心)の滞在時間は、
T=W/V=[w
1/v
1、w
2/v
2、…、w
n/v
n]
で表される。このとき、各モニタエリアにおけるパッド摩耗量をU=[u
1、u
2、…、u
m]としたとき、前述のドレスモデルSと各スキャンエリアでの滞在時間Tとを用いて、
U=ST
の行列演算を行うことで、パッド摩耗量Uが算出される。
【0043】
ドレスモデル行例Sの導出においては、例えば、1)カットレートモデル、2)ドレッサ径、3)スキャン速度制御の各要素を考慮し、適宜組み合わせることができる。カットレートモデルに関しては、ドレスモデル行列Sの各要素が、モニターエリアでの滞在時間に比例する、あるいは、引っ掻き距離(移動距離)に比例することを前提として設定する。
【0044】
また、ドレッサ径に関しては、ドレッサの径を考慮(ドレッサの有効エリア全体にわたって同一のカットレートに従い研磨パッドが摩耗する)、あるいは考慮しない(ドレッサの中心位置のみでのカットレートに従う)ことを前提に、ドレスモデル行列Sの各要素を設定する。ドレッサー径を考慮すると、例えばダイヤモンド粒子がリング状に塗布されたドレッサーに対しても適切なドレスモデルを定義することができる。さらに、スキャン速度制御に関しては、ドレッサの移動速度の変化がステップ状か、スロープ状のいずれかに応じて、ドレスモデル行列Sの各要素を設定する。これらのパラメータを適宜組み合わせることにより、ドレスモデルSからより実態に合致したカット量を算出して、正しいプロファイル予想値を求めることができる。
【0045】
パッド高さ検出部48は、パッド高さセンサ32によって連続的に測定された研磨パッドの高さデータと、当該研磨パッド上の測定座標データとを対応づけて、各モニターエリアにおけるパッド高さを検出する。
【0046】
ベースプロファイル算出部42は、収束時におけるパッド高さの目標プロファイル(ベースプロファイル)を算出する(
図6参照)。ベースプロファイルは、後述する移動速度算出部45で使用する目標カット量の計算に用いられる。ベースプロファイルは、パッド初期状態における研磨パッドの高さ分布(Diff(j))と測定されたパッド高さとに基づき計算しても良いし、あるいは、設定値として与えても良い。また、ベースプロファイルを設定しない場合には、研磨パッドの形状がフラットになる目標カット量を計算しても良い。
【0047】
目標カット量のベースは、現時点でのモニタエリア毎のパッド高さを示すパッド高さプロファイルH
p(j)[j=1, 2…m]と、別途設定された収束時目標減摩量A
tgを用いて、次式にて算出される。
min[H
p(j)] −A
tg
また、各モニタエリアの目標カット量は、前述したベースプロファイルを考慮して、次式にて算出することができる。
min[H
p(j)] −A
tg+Diff(j)
【0048】
カットレート算出部43は、各モニタエリアにおけるドレッサのカットレートを算出する。例えば、各モニタエリアにおけるパッド高さの変化量の傾きからカットレートを算出しても良い。
【0049】
評価指標作成部44は、後述する評価指標を用いて、スキャンエリアでの最適な滞在時間(揺動時間)を算出して補正することで、各スキャンエリアでのドレッサの移動速度を最適化するものである。この評価指標は、1)目標カット量からの偏差、2)基準レシピでの滞在時間からの偏差、及び、3)隣接するスキャンエリア間での速度差に基づく指標であり、各スキャンエリアでの滞在時間T=[w
1/v
1、w
2/v
2、…、w
n/v
n]の関数となる。そして、当該評価指標が最小となるように各スキャンエリアでの滞在時間Tを定めることで、ドレッサの移動速度が最適化される。
【0050】
1)目標カット量からの偏差
ドレッサの目標カット量をU
0=[U
01、U
02、…、U
0m]としたとき、前述した各モニタエリアでのパッド摩耗量U(=ST)との差の二乗値(|U−U
0|
2)を求めることで、目標カット量からの偏差を算出する。なお、目標カット量を決めるためのターゲットプロファイルは、研磨パッドの使用開始後の任意のタイミングで決定することができ、あるいは手動で設定された値に基づいて決定するようにしても良い。
【0051】
2)基準レシピでの滞在時間からの偏差
図7に示すように、各スキャンエリアで設定された基準レシピに基づくドレッサの移動速度(基準速度(基準滞在時間T
0))と、各スキャンエリアにおけるドレッサの移動速度(ドレッサの滞在時間T)との差(ΔT)の二乗値(ΔT
2=|T−T
0|
2)を求めることで、基準レシピでの滞在時間からの偏差を算出することができる。ここで、基準速度とは、各スキャンエリアにおいてフラットのカットレートが得られると見込まれる移動速度であり、予め実験やシミュレーションによって得られた値である。基準速度をシミュレーションによって求める場合は、例えば、ドレッサの引っ掻き距離(滞在時間)と研磨パッドのカット量が比例するとして、求めることができる。なお、基準速度は、同一の研磨パッドの使用中に、実際のカットレートに応じて適宜更新するようにしても良い。
【0052】
3)隣接するスキャンエリア間での速度差
本実施形態に係る研磨装置では、さらに、隣接するスキャンエリアでの速度差を抑えることで、移動速度の急激な変化に伴う研磨装置への影響を抑制している。すなわち、隣接するスキャンエリアでの速度の差の二乗値(|ΔV
inv|
2)を求めることで、隣接するスキャンエリア間での速度差の指標を算出することができる。ここで、
図7に示すように、スキャンエリア間の速度差としては、基準速度の差(Δ
inv)又はドレッサの移動速度(Δ
v)のいずれかを適用することができる。なお、スキャンエリアの幅は固定値であるため、速度差の指標は、各スキャンエリアでのドレッサの滞在時間に依存する。
【0053】
評価指標作成部44は、これら3つの指標に基づき、次式で示される評価指標Jを定義する。
J=γ|U−U
0|
2+λ|T−T
0|
2+η|ΔV
inv|
2
ここで、評価指標Jの右辺の第1項、第2項及び第3項は、それぞれ、目標カット量からの偏差、基準レシピでの滞在時間からの偏差、隣接するスキャンエリア間での速度差に起因する指標であり、いずれも各スキャンエリアでのドレッサの滞在時間Tに依存する。
【0054】
そして、移動速度算出部45では、評価指標Jの値が最小値をとるような最適化演算を行って、各スキャンエリアでのドレッサの滞在時間Tを求め、ドレッサの移動速度を補正する。最適化演算の手法としては、二次計画法を用いることができるが、シミュレーションによる収束演算やPID制御を用いてもよい。
【0055】
上記の評価指標Jにおいて、γ、λ及びηは所定の重み付け値であり、同一の研磨パッドの使用中に適宜変更することができる。これら重み付け値を変更することで、研磨パッドやドレッサの特性や装置の稼働状況に応じて、重視すべき指標を適宜調整することができる。
【0056】
なお、ドレッサの移動速度を求める際に、合計ドレス時間が所定値以内になるようにすることが好ましい。ここで、合計ドレス時間とは、ドレッサによる全揺動区間(本実施例ではスキャンエリアS1〜S7)の移動時間である。合計ドレス時間(ドレッシングに要する時間)が長くなると、ウェハの研磨行程や搬送行程等の他の行程に影響を与える可能性があるため、この値が所定値を超えないように、各スキャンエリアでの移動速度を適宜補正することが好ましい。また、装置の機構上の制約があるため、ドレッサの最大(及び最小)移動速度、並びに、初期速度に対する最大速度(最小速度)の割合についても、設定値以内になるように、ドレッサの移動速度を設定することが好ましい。
【0057】
なお、移動速度算出部45は、新しいドレッサと研磨パッドの組み合わせで適切なドレス条件が不明な場合や、ドレッサや研磨パッドの交換直後のようにドレッサの基準速度(基準滞在時間T
0)が決まっていない場合には、目標カット量からの偏差の条件のみを用いて評価指標J(下記)を定め、各スキャンエリアでのドレッサの移動速度を最適化(初期設定)するようにしても良い。
J=|U−U
0|
2
【0058】
設定入力部46は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスであり、ドレスモデル行列Sの各成分の値、制約条件の設定、カットレート更新サイクル、移動速度更新サイクルといった各種パラメータを入力する。また、メモリ47は、ドレッシング監視装置35を構成する各構成要素を動作するためのプログラムのデータや、ドレスモデル行列Sの各成分の値、ターゲットプロファイル、評価指標Jの重み付け値、ドレッサの移動速度の設定値といった各種データを記憶する。
【0059】
図8は、ドレッサの移動速度を制御する処理手順を示すフローチャートである。研磨パッド11が交換されたことが検知されると(ステップS11)、ドレスモデル設定部41は、カットレートモデル、ドレッサ径、スキャン速度制御のパラメータを考慮して、ドレスモデル行例Sを導出する(ステップS12)。なお、同一種類のパッドの場合、ドレスモデル行列を継続して使用することもできる。
【0060】
次に、ドレッサの基準速度の計算を行うかどうか(基準速度計算を行う旨の入力が設定入力部46によりなされたかどうか)を判定する(ステップS13)。基準速度の計算を行う場合には、移動速度算出部45において、ドレッサの目標カット量U
0と各モニタエリアでのパッド摩耗量Uより、次の評価指標Jが最小値となるように、各スキャンエリアでのドレッサの移動速度(滞在時間T)を設定する(ステップS14)。計算された基準速度を移動速度の初期値として設定してもよい
J=|U−U
0|
2
【0061】
その後、ウェハWの研磨処理が行われるのに伴い、研磨パッド11へのドレッシング処理が行われると、パッド高さセンサ32による研磨面11aの高さ(パッド高さ)の測定が行われる(ステップS15)。そして、ベースプロファイルの取得条件(例えば、所定枚数のウェハWの研磨)が満たされたか否かを判定し(ステップS16)、条件を満たした場合には、ベースプロファイル算出部42において、収束時におけるパッド高さの目標プロファイル(ベースプロファイル)を算出する(ステップS17)。
【0062】
その後も、ウェハWの研磨処理が行われるのに伴い、研磨パッド11へのドレッシング処理が行われると、パッド高さセンサ32による研磨面11aの高さ(パッド高さ)の測定が行われる(ステップS18)。そして、所定のカットレート計算サイクル(例えば、所定枚数のウェハWの研磨)に達したか否かを判定し(ステップS19)、達した場合には、カットレート更新部43において、各スキャンエリアにおけるドレッサのカットレートが算出される(ステップS20)。
【0063】
さらに、ドレッサの移動速度更新サイクル(例えば、所定枚数のウェハWの研磨)に達したか否かを判定し(ステップS21)、達した場合には、移動速度設定部45において、評価指標Jが最小となるドレッサの滞在時間を算出することで、各スキャンエリアにおけるドレッサ移動速度の最適化を行う(ステップS22)。そして、最適化された移動速度の値が設定され、ドレッサの移動速度が更新される(ステップS23)。以後は、ステップS18に戻されて、研磨パッド11が交換されるまで、上記の処理が繰り返される。
【0064】
上記実施形態では、ウェハWへの研磨処理に伴い研磨パッドの高さが低下することを前提にして説明しているが、ウェハWの処理が暫く行われない場合には、研磨パッドが水分を含んで膨潤することで、見かけ上の研磨パッドの高さが増加する場合がある。研磨パッドの膨潤量は、研磨パッドの種類や装置の使用状態により変動するが、膨潤により研磨パッドの高さが変動すると、評価指標Jの算定に用いるべきカットレートが負の値となってしまい、その結果、ドレッサの移動速度の算出が不能となり、あるいは算出値が異常な値となる可能性がある。そのような場合には、研磨装置の性能に影響を与え得る。
【0065】
そこで、
図9に示すように、研磨パッドの(実際の)カットレートは急激に変化しないと仮定し、カットレート算出部43において最新の(直前の)カットレートの計算値を保持しておき、当該カットレートの値と前回のパッド高さの値を用いて、現在のパッド高さを推定するようにしても良い。これにより、ドレッサの移動速度の算出とカットレート計算とを非同期にすることで、カットレートが正確に計算できない状況を回避することができる。
【0066】
なお、カットレートの計算間隔は、研磨パッドとドレッサの組み合わせにより決定することが好ましい。また、カットレートの計算方法につき、初期のパッド高さと現在の研磨パッドの高さ(測定値)から算出する方法と、前回カットレート計算を行ったときのパッド高さと現在の研磨パッドの高さから算出する方法のいずれかを選択するようにしても良い。
【0067】
さらに、モニターの対象は研磨パッド高さに限定されず、研磨パッドの表面粗さを測定して当該表面粗さを均一にするような移動速度を計算するようにしても良い。
【0068】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。