(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、第1実施形態にかかるめっき装置の全体配置図である。
図1に示すように、このめっき装置は、2台のカセットテーブル102と、アライナ104と、スピンリンスドライヤ106とを有する。アライナ104は、基板のオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチなどの位置を所定の方向に合わせるように構成される。スピンリンスドライヤ106は、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるように構成される。
【0014】
カセットテーブル102は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する。スピンリンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ11を載置して基板の着脱を行う基板着脱部120が設けられている。基板着脱部120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ11は
、この載置プレート152に水平状態で並列に載置される。一方の基板ホルダ11と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ11と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われる。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置122が配置されている。
【0015】
めっき装置は、さらに、ストッカ124と、プリウェット槽126と、プリソーク槽128と、第1洗浄槽130aと、ブロー槽132と、第2洗浄槽130bと、めっきユニット10と、を有する。ストッカ124では、基板ホルダ11の保管及び一時仮置きが行われる。プリウェット槽126では、基板が純水に浸漬される。プリソーク槽128では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1洗浄槽130aでは、プリソーク後の基板が基板ホルダ11と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブロー槽132では、洗浄後の基板の液切りが行われる。第2洗浄槽130bでは、めっき後の基板が基板ホルダ11と共に洗浄液で洗浄される。基板着脱部120、ストッカ124、プリウェット槽126、プリソーク槽128、第1洗浄槽130a、ブロー槽132、第2洗浄槽130b、及びめっきユニット10は、この順に配置されている。
【0016】
めっきユニット10は、例えば、隣接した複数のめっき槽14の外周をオーバーフロー槽136が取り囲んで構成されている。各めっき槽14は、内部に1つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すように構成されている。
【0017】
めっき装置は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ11を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送装置140を有する。この基板ホルダ搬送装置140は、第1トランスポータ142と、第2トランスポータ144を有している。第1トランスポータ142は、基板着脱部120、ストッカ124、プリウェット槽126、プリソーク槽128、第1洗浄槽130a、及びブロー槽132との間で基板を搬送するように構成される。第2トランスポータ144は、第1洗浄槽130a、第2洗浄槽130b、ブロー槽132、及びめっきユニット10との間で基板を搬送するように構成される。めっき装置は、第2トランスポータ144を備えることなく、第1トランスポータ142のみを備えるようにしてもよい。
【0018】
オーバーフロー槽136の両側には、各めっき槽14の内部に位置してめっき槽14内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドル16(
図3参照)を駆動する、パドル駆動部162及びパドル従動部160が配置されている。
【0019】
図2は、
図1に示した基板ホルダ11の概略斜視図である。
図2に示すように、基板ホルダ11は、例えば塩化ビニル製で略平板状の第1保持部材11Aと、この第1保持部材11Aにヒンジ部11Bを介して開閉自在に取り付けた第2保持部材11Cとを有している。第2保持部材11Cは、ヒンジ部11Bに接続される基部11Dと、基板を第1保持部材11Aに押えつけるための押えリング11Fと、リング状のシールホルダ11Eと、を有する。シールホルダ11Eは押えリング11Fに対して摺動可能に構成される。このシールホルダ11Eは、例えば塩化ビニルで構成され、これにより、押えリング11Fとの滑りがよくなっている。本実施形態では、めっき装置はウェハ等の円形の基板を処理するものとして説明するが、これに限らず、矩形状の基板を処理することもできる。
【0020】
図3は、
図1に示しためっきユニット10の1つのめっき槽14を示す概略縦断図である。図中では、オーバーフロー槽136は省略されている。めっき槽14は、内部にめっき液Qを保持し、オーバーフロー槽136との間でめっき液Qが循環するように構成され
る。
【0021】
めっき槽14には、基板Sbを着脱自在に保持した基板ホルダ11が収納される。基板ホルダ11は、基板Sbが鉛直状態でめっき液Qに浸漬されるように、めっき槽14内に配置される。めっき槽14内の基板Sbに対向する位置には、アノードホルダ28に保持されたアノード26が配置される。アノード26としては、例えば、含リン銅から成る溶解性アノード又は公知の不溶解性アノード等が使用され得る。また、めっき槽14には、基板Sbとアノード26とに電流を流すように構成されるめっき電源30(電源の一例に相当する)が設けられる。基板Sbとアノード26は、めっき電源30を介して電気的に接続され、基板Sbとアノード26との間に電流を流すことにより基板Sbの表面にめっき膜(銅膜)が形成される。
【0022】
基板Sbとアノード26との間には、基板Sbの表面と平行に往復移動してめっき液Qを攪拌するパドル16が配置される。めっき液Qをパドル16で攪拌することで、銅イオンを基板Sbの表面に均一に供給することができる。また、パドル16とアノード26との間には、基板Sbの全面に亘る電位分布をより均一にするための誘電体からなる調整板34が配置される。調整板34は、開口を有する板状の本体部52と、本体部52の開口に沿って取り付けられる筒状部50と、を有する。アノード26と基板Sbとの間の電位分布は、調整板34の開口の大きさ、形状によって調整される。
【0023】
また、めっき槽には、めっき電源30を制御して基板Sbへの電流を制御する電流制御部40が設けられる。電流制御部40は、電圧測定部42と、報知部43と、判定部44と、を有する。電圧測定部42は、基板Sbに印加される電圧値を測定するように構成される。報知部43は、光、音、振動、画面表示等により、使用者又は管理者に所定の情報を報知するように構成される。判定部44は、後述するように、電圧測定部42が測定した電圧値に基づいて、基板Sbに印加される電流の電流密度が限界電流密度以上であるか否かを判定する。
【0024】
次に、第1実施形態に係るめっき装置におけるめっき方法について説明する。上述したように、めっき装置では、電流密度を段階的に増加させてめっきを行っている。しかしながら、めっき装置で実際に基板にめっきをしているとき、めっき液の濃度変化、基板Sbの仕上がり精度、作業者のオペレーションミスなどにより、限界電流密度が想定よりも低くなり、基板Sbに印加される電流密度が限界電流密度を超えてしまう可能性があった。
【0025】
ところで、基板Sbに印加される電流密度が限界電流密度に達したとき、基板Sbに印加される電圧の値が急激に増加することが判った。そこで、本実施形態では、電流制御部40の判定部44は、基板Sbに印加される電圧値に基づいて、基板Sbに印加される電流の電流密度が限界電流密度以上であるか否かを判定する。より具体的には、予め試験により、電流密度を増加させた状態でめっきしたときに基板Sbに異常が生じた場合(電流密度が限界電流密度に達した場合)の所定時間における電圧値の増加の程度を取得しておく。本実施形態では、例えば、試験により、電流密度が限界電流密度に達した場合において、電流制御部40が電流値を変更してから15秒(所定時間)以内に電圧値が0.3V(所定値)以上変化したことが判明したとする。この場合、判定部44は、電流値が変更されてから15秒以内に0.3V以上電圧値が増加したか否かに基づいて、電流密度が限界電流密度に達したか否かを判定する。なお、この閾値とした電圧値は、基板Sbのパターン、電流密度、めっき液の組成等により変化し得るので、試験により適宜定める必要がある。
【0026】
図4は、第1実施形態に係るめっき装置における電流制御の一例を示すグラフである。図示のグラフにおいては、横軸が時間、縦軸が電流値を示す。図示のグラフでは、便宜上
仮想的な限界電流値を示す曲線L1が付記されている。なお、ここでの限界電流値は、限界電流密度に対応する電流値を意味する。
【0027】
図示のように、本めっき装置の電流制御部40は、めっき電源30を制御して、値Wの電流値でめっきした後、時刻sの時点において、電流値を段階的に値X(第1電流値の一例に相当する)まで増加させる。ここで、値Xは、限界電流値を示す曲線L1の時刻sの時点の値よりも小さい。したがって、電圧測定部42は、電流値を値Xに増加させてから15秒以内の電圧値の増加量は、0.3V未満であることを検知する。電圧測定部42によって測定された電圧値に基づいて、判定部44は、値Xに対応する電流密度(第1電流密度の一例に相当する)が限界電流密度未満であると判定する。その結果、電流制御部40は、値Xで時刻sから時刻T
*までの所定時間(第1所定時間の一例に相当する)、基板Sbにめっきを行うようにめっき電源30を制御する。図示の例では、時刻T
*の時点で電流値を0にしてめっきが終了しているが、これに限らず、時刻T
*の時点でさらに電流値を段階的に増加させてめっきを継続してもよい。
【0028】
図5は、第1実施形態に係るめっき装置における電流制御の他の一例を示すグラフである。図示のグラフにおいては、横軸が時間、縦軸が電流値を示す。
図5において、実線は本例における電流制御を示し、破線D1は
図4に示した電流制御を示す。図示のように、電流制御部40は、めっき電源30を制御して、値Wの電流値でめっきした後、時刻sの時点において、電流値を段階的に値X(第1電流値の一例に相当する)まで増加させる。ここで、値Xは、限界電流値を示す曲線L2の時刻sの時点の値よりも大きい。したがって、電圧測定部42は、電流値を値Xに増加させてから15秒以内の電圧値の増加量が、0.3V以上であることを検知する。電圧測定部42によって測定された電圧値に基づいて、判定部44は、値Xの電流値に対応する電流密度(第1電流密度の一例に相当する)が限界電流密度以上であると判定する。
【0029】
電流制御部40は、値Xの電流値に対応する電流密度が限界電流密度以上であると判定されると、時刻s´の時点において電流値を限界電流値未満まで減少させる。ここで、限界電流値の正確な値は不明であるので、図示のように、電流値を値Wに減少させることにより、確実に電流値を限界電流値未満にすることができる。
【0030】
本実施形態では、判定部44は、電圧値が0.3V増加した時点で、値Xの電流値に対応する電流密度が限界電流密度以上であると判定することができる。したがって、時刻sから時刻s´までの時間は、電圧値が0.3V増加するのに要した時間であり、且つ15秒以内となる。このとき、本実施形態のめっき装置では、時刻sから時刻s´までの間、限界電流密度を超えた電流密度で基板Sbにめっきされることになる。このため、予め試験において、電流値を値Wから値Xに増加させ、値Xの電流値で時刻sから時刻s´までに相当する時間(最大で15秒間)、基板Sbにめっきを行い、基板Sbに異常が生じないことを確認しておく必要がある。仮に基板Sbに異常が生じた場合は、電流密度が限界電流密度を超えたか否かを判定するための閾値(時間及び電圧値)を適宜修正すればよい。
【0031】
電流制御部40は、電流値を値Wまで減少させたのち、値Wを所定時間(第4所定時間の一例に相当する)維持してめっきを行う。即ち、電流制御部40は、値Wで時刻qの時点までめっきを行う。このときの所定時間(時刻s´から時刻qまでの時間)は、基板Sbに印加される電圧値が、時刻sの時点において電流値が値Xに増加する直前に基板Sbに印加される電圧値に戻るのに要する時間である。即ち、基板Sbに印加される電圧値が元の状態に戻るまで、再び値Wの電流値で基板Sbにめっきが行われる。
【0032】
続いて、電流制御部40は、時刻qの時点において、電流値を値Wから、値Xよりも小
さい値X(1−Y)(第2電流値の一例に相当する)に増加させる。その後、さらに所定時間t1(第2所定時間の一例に相当する)経過後、値Xよりも大きい値X(1+Z)(第3電流値の一例に相当する)で所定時間t2(第3所定時間の一例に相当する)めっきする。なお、時刻tは、時刻qから時間t1が経過した時点である。時刻T
*において、電流制御部40は、電流値を値X(1+Z)から0にしてめっきを終了させる。
【0033】
ここで、時間(t1+t2)は、時刻qから時刻T
*までの時間に相当する。また、値Y及び値Zは、予め試験により定められた任意の正の数である。また、値Yは1未満である。図示の例においては、値X(1−Y)及び値X(1+Z)は、限界電流値よりも低い値である。即ち、値X(1−Y)の電流値に対応する電流密度(第2電流密度の一例に相当する)、及び値X(1+Z)の電流値に対応する電流密度(第3電流密度の一例に相当する)は、限界電流密度よりも低い。
【0034】
電流制御部40は、時刻qの時点において、所定時間t1と所定時間t2とを計算する。具体的には、値Xの電流値で所定時間(時刻sから時刻T
*までの時間)めっきした場合に基板Sbに与えられるクーロン量と、
図5に示す電流値で時刻sから時刻T
*までに基板Sbに与えられるクーロン量とが同一になるように、所定時間t1と所定時間t2とを設定する。なお、図示の例において、時刻sから時刻T
*までに基板Sbに与えられるクーロン量は、値Xの電流値で時刻sから時刻s´までの時間、値Wの電流値で時刻s´から時刻qまでの時間、値X(1−Y)の電流値で所定時間t1、及び値X(1+Z)の電流値で所定時間t2、それぞれめっきした場合のクーロン量に相当する。
【0035】
以上で説明したように、
図5に示す例では、時刻sの時点で値Xが限界電流値を超えている。このため、値Xの電流値で時刻sから時刻T
*までの時間めっきすることに代えて、値Xよりも小さい値X(1−Y)で所定時間t1めっきし、その後値Xよりも大きい値X(1+Z)で所定時間t2めっきする。これにより、電流値が限界電流値を超えることなく、めっき処理を継続することができている。
【0036】
また、本実施形態では、所定時間t1及び所定時間t2を上述したように設定する。これにより、
図4に示しためっきプロセスである、値Xの電流値で時刻sから時刻T
*までの時間めっきした場合と比較して、同一のめっき時間で、同一のめっき膜厚を維持しながら、近い品質の製品基板を得ることができる。
【0037】
なお、
図5に示す例では、電流値が限界電流値を超えたと判断されたとき、電流値を変更してめっき処理を継続している。しかしながら、電流値が限界電流値を超えたと判断されたとき、めっき処理を継続する代わりに、又はこれに加えて、電流制御部40の報知部43が、その旨を使用者又は管理者に報知してもよい。
【0038】
図6は、第1実施形態に係るめっき装置における電流制御の他の一例を示すグラフである。図示のグラフにおいては、横軸が時間、縦軸が電流値を示す。
図6において、実線は本例における電流制御を示し、破線D1は
図4に示した電流制御を示し、破線D2は
図5に示した電流制御を示す。
図6の例では、時刻qまでは、
図5の例と同一の電流制御が行われるので説明を省略する。電流制御部40は、時刻qの時点において、電流値を値Wから、値Xよりも小さい値X(1−Y)(第1電流値の一例に相当する)に増加させる。ここで、値X(1−Y)は、限界電流値を示す曲線L3の時刻qにおける値よりも大きい。判定部44は、電圧測定部42によって測定された電圧値に基づいて、値X(1−Y)の電流値に対応する電流密度(第1電流密度の一例に相当する)が限界電流密度以上であると判定する。
【0039】
電流制御部40は、値X(1−Y)の電流値に対応する電流密度が限界電流密度以上で
あると判定されると、時刻q´の時点において電流値を限界電流値未満(図示の例では値W)まで減少させる。時刻qから時刻q´までの時間は、電圧値が0.3V増加するのに要した時間であり、且つ15秒以内となる。このとき、本実施形態のめっき装置では、時刻qから時刻q´までの間、限界電流密度を超えた電流密度で基板Sbにめっきされることになる。ここで、電流値X(1−Y)は値Xよりも小さいので、値Xの電流値で時刻sから時刻s´までに相当する時間(最大で15秒間)、基板Sbにめっきを行っても基板Sbに異常が生じないことが確認できていれば、時刻qから時刻q´までの時間(最大で15秒間)のめっきにより基板Sbにめっきが生じることはない。
【0040】
電流制御部40は、時刻q´において電流値を値Wまで減少させたのち、値Wを所定時間(第4所定時間の一例に相当する)維持してめっきを行う。即ち、電流制御部40は、値Wの電流値で時刻rまでめっきを行う。このときの所定時間(時刻q´から時刻rまでの時間)は、基板Sbに印加される電圧値が、時刻qの時点において電流値が値X(1−Y)に増加する直前に基板Sbに印加される電圧値に戻るのに要する時間である。即ち、基板Sbに印加される電圧値が元の状態に戻るまで、再び値Wの電流値で基板Sbにめっきが行われる。
【0041】
続いて、電流制御部40は、時刻rの時点において、電流値を値Wから、値X(1−Y)よりも小さい値X(1−Y)^
2(第2電流値の一例に相当する)に増加させる。その後、さらに所定時間t3(第2所定時間の一例に相当する)経過後、値X(1−Y)よりも大きい値X(1+Z)(1−Y)(第3電流値の一例に相当する)で所定時間t4(第3所定時間の一例に相当する)めっきする。なお、時刻vは、時刻rから時間t3が経過した時点である。時刻tにおいて、電流制御部40は、電流値を値X(1+Z)(1−Y)から値X(1+Z)にして、時間t2だけめっきを継続し、時刻T
*でめっきを終了する。
【0042】
ここで、時間(t3+t4)は、時刻rから時刻tまでの時間に相当する。図示の例においては、値X(1−Y)^
2及び値X(1+Z)(1−Y)は、限界電流値よりも低い値である。即ち、値(1−Y)^
2の電流値に対応する電流密度(第2電流密度の一例に相当する)、及び値X(1+Z)(1−Y)の電流値に対応する電流密度(第3電流密度の一例に相当する)は、限界電流密度よりも低い。
【0043】
電流制御部40は、時刻rの時点において、所定時間t3と所定時間t4とを計算する。具体的には、値X(1−Y)の電流値で所定時間(時間t1)めっきした場合に基板Sbに与えられるクーロン量と、
図6に示す電流値で時刻qから時刻tまでに基板Sbに与えられるクーロン量とが同一になるように、所定時間t3と所定時間t4とを設定する。なお、図示の例において、時刻qから時刻tまでに基板Sbに与えられるクーロン量は、値X(1−Y)の電流値で時刻qから時刻q´までの時間、値Wの電流値で時刻q´から時刻rまでの時間、値X(1−Y)^
2の電流値で時間t3、及び値X(1−Y)(1+Z)の電流値で時間t4、それぞれめっきした場合のクーロン量に相当する。
【0044】
以上で説明したように、
図6に示す例では、時刻qの時点で値X(1−Y)が限界電流値を超えている。このため、値X(1−Y)の電流値で時間t1めっきすることに代えて、値X(1−Y)よりも小さい値X(1−Y)^
2で時間t3めっきし、その後値X(1−Y)よりも大きい値X(1−Y)(1+Z)で時間t4めっきする。これにより、電流値が限界電流値を超えることなく、めっき処理を継続することができる。
【0045】
また、
図6に示す例では、時間t3及び時間t4を上述したように設定する。これにより、値X(1−Y)の電流値で時間t1めっきした場合と比較して、同一のめっき時間で、同一のめっき膜厚を維持しながら、近い品質の製品基板を得ることができる。
【0046】
なお、図示の例では、値X(1+Z)が限界電流値未満である。値X(1+Z)が限界電流値以上である場合は、値X(1+Z)の電流値で時間t2めっきすることに代えて、値X(1+Z)よりも小さい値(例えば値X(1+Z)(1−Y))で所定時間めっきし、その後値X(1+Z)よりも大きい値(例えば値X(1+Z)^
2)で所定時間めっきしてもよい。この場合、それぞれのめっき時間は、値X(1+Y)の電流値で所定時間(時間t2)めっきした場合に基板Sbに与えられるクーロン量と、時刻tから時刻T
*までに基板Sbに与えられるクーロン量とが同一になるように、設定される。
【0047】
第1実施形態において、時間に関係するs、T
*、電流に関係するW、X、Y、Zは、予め決定しておく値である。sからs´までの時間、qからq´までの時間は、電圧測定部42による電圧値の測定結果によって決まる値である。s´からqまでの時間、q´からrまでの時間は、予め決定してもよいし、電圧測定部42による電圧値の測定結果に応じて決定してもよい。時間t1、t2、t3、t4は、電流制御部40が上記の条件および電圧測定部42による電圧値の測定結果から計算により算出する値である。
【0048】
第1実施形態は、典型的には、
図4のように電流値が限界電流値を超えないという想定で電流値Xを設定するめっき方法において、何らかの理由で限界電流値が下がり、電流値Xでめっきを継続した場合にめっき異常が生じることを回避するためのめっき方法である。ただし、電流値Xに限界電流値を超えることを想定した値を設定して、
図5や
図6のような電流波形を通常の条件としてめっきすることを除外するものではない。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る限界電流密度の推定方法について説明する。なお、第2実施形態に係る限界電流密度の推定方法を実施するめっき装置及び基板ホルダ11は、
図1から
図3に示したものと同様であるので説明を省略する。
【0050】
図7は、第2実施形態に係る限界電流密度の推定方法を実施するめっき装置における電流制御の一例を示すグラフである。図示のグラフにおいては、横軸が時間、縦軸が電流密度を示す。図示のグラフでは、便宜上仮想的な限界電流密度を示す曲線L4が付記されている。図示のように、本めっき装置の電流制御部40は、めっき電源30を制御して、時間0の時点から電流密度を時間に比例して連続的に増加させる。このときのグラフの傾き(単位時間当たりの電流密度増加量)をδとする。
【0051】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、予め試験により、電流密度を増加させてめっきしたときに基板Sbに異常が生じた場合(電流密度が限界電流密度に達した場合)の所定時間における電圧値の増加の程度を取得しておく。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、例えば、電流密度が限界電流密度に達した場合において、電流制御部40がめっき電源30を制御して電流値を変更してから15秒(所定時間)以内に電圧値が所定値0.3V(所定値)以上変化したことが判明したとする。
【0052】
電流制御部40の電圧測定部42は、電流密度が増加し始めると同時に基板Sbに印加される電圧値を常時測定する。電流密度が徐々に増加すると、時間T1の時点で電流密度が限界電流密度に達する。電流密度が限界電流密度に達すると、電圧値は急激に増加する。判定部44は、電圧測定部42から常時電圧値を取得する。判定部44は、所定時間内に電圧値が所定の値増加したときに、電流密度が限界電流密度以上であると判定する。より具体的には、判定部44は、電圧測定部42から電圧値を取得するたびに、取得した電圧値と、取得した時点から15秒前までの電圧値のうちの最小電圧値との差が0.3V以上であるか否かを判定する。このとき、最小電圧値の取得時刻から、最新の電圧値の取得時刻までの時間、即ち、電圧値が0.3V増加するのに要した時間U(1)を電流制御部
40の図示しない記録手段に記録しておく。
【0053】
図示の例では、時刻T2において、判定部44が、電流密度が限界電流密度以上であると判定している。このとき、電流制御部40は、所定の値だけ、電流密度を減少させる。この減少量dは、例えば、δ×U(1)+a(aは予め定められた値)で表すことができる。
【0054】
判定部44により電流密度が限界電流密度以上であると判定された時刻T2における電流密度を電流密度B(1)としたとき、本実施形態では、電流制御部40は、B(1)−δ×U(1)を時刻T2における推定限界電流密度R(1)として推定する。言い換えれば、時刻T2において取得した電圧値よりも0.3V小さい電圧値が取得された時刻における電流密度の値が、時刻T2における推定限界電流密度R(1)とされる。
【0055】
図示のように、時刻T2において電流密度が減少量dだけ減少された後、所定時間電流密度が維持される。この所定時間は、電圧値が十分に低下するのに必要な時間であり、予め設定される。或いは、電流制御部40は、電圧測定部42が取得した電圧値が十分に低下するまで電流密度を維持するようにしてもよい。所定時間経過後、電流制御部40は再び、傾きδで電流密度を増加させ、同様のプロセスを繰り返す。これにより、推定限界電流密度R(n)の値が、時間の経過に伴って複数得られる。
【0056】
図7に示す電流制御では、時間の経過に伴った推定限界電流密度R(n)の値が複数得られる。言い換えれば、横軸が時間、縦軸が推定限界電流密度となるグラフが得られる。しかしながら、実際に基板Sbにめっきする際は、
図7に示す電流制御とは異なる電流制御が行われることがある。このため、本実施形態の方法で得られた横軸を時間とした推定限界電流密度のグラフを、横軸を電解量(又はめっき膜厚さ)とした推定限界電流密度のグラフに変換することが好ましい。具体的には、
図7に示すグラフと横軸との面積(つまり、
図7に示すグラフの積分値)が電解量に相当するので、
図7に示すグラフからそれぞれの推定限界電流密度R(n)が得られたときの電解量を読み取ることができる。これにより、
図7に示すグラフから得られる推定限界電流密度のグラフを、横軸を電解量とし、縦軸を推定限界電流密度としたグラフに変換することができる。これにより、電解量に応じた推定限界電流密度にしたがって、
図7に示す電流制御とは異なる電流制御で基板Sbにめっきをすることができる。なお、
図7に示す電流制御により基板にめっきしてもよい。この場合、限界電流密度に近い電流密度で基板にめっきすることができるので、めっき速度を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【0058】
以下に本明細書が開示する形態のいくつかを記載しておく。
第1形態によれば、電流値を所定の電流値から第1電流値に増加させて基板にめっきするめっき方法であって、前記第1電流値に対応する第1電流密度が限界電流密度よりも低い場合に前記第1電流値で第1所定時間前記基板にめっきするめっき方法が提供される。このめっき方法は、前記基板に印加される電圧値を測定する工程と、前記電流値を前記所定の電流値から前記第1電流値に増加させたときに、前記電圧値の変化量に基づいて前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であるか否かを判定する判定工程と、を有する。
【0059】
基板に印加される電流密度が限界電流密度に達してめっきしたとき、基板に印加される電圧の値が急激に増加することが判った。第1形態によれば、所定の電流値から第1電流値に電流値を増加させたときに、電圧値の変化量をみることにより第1電流密度が限界電流密度以上であるか否かを判定することができる。これにより、電流密度が限界電流密度以上であるか否かをめっき中に把握することができる。
【0060】
第2形態によれば、第1形態のめっき方法において、前記判定工程は、前記電流値が前記所定の電流値から前記第1電流値に増加してから所定時間内に前記電圧値が所定の値増加した場合、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定する。
【0061】
上述したように、基板に印加される電流密度が限界電流密度に達してめっきしたとき、基板に印加される電圧の値が急激に増加する。第2形態によれば、電圧値が所定の値増加したことを確認することにより、第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定することができる。
【0062】
第3形態によれば、第1形態又は第2形態のめっき方法において、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に、前記第1電流密度よりも低い第2電流密度に対応する第2電流値で第2所定時間めっきし、その後前記第1電流密度よりも高い第3電流密度に対応する第3電流値で第3所定時間めっきすることを含むめっき工程を有し、前記第1電流値で前記第1所定時間めっきした場合に前記基板に与えられるクーロン量と、前記めっき工程において前記基板に与えられるクーロン量とが同一である。
【0063】
第3形態によれば、第1電流値で第1所定時間めっきした場合に近い製品基板を得ることができる。
【0064】
第4形態によれば、第3形態のめっき方法において、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に、前記めっき工程の前に前記電流値を前記所定の電流値まで減少させて第4所定時間維持する工程を含む。
【0065】
第4形態によれば、電流値が第1電流値に増加したときに増加した電圧値を低下させることができる。ひいては、所定の電流値から第2電流値に電流値を増加させたときの電圧値の増加量を適切に把握することができる。
【0066】
第5形態によれば、第4形態のめっき方法において、前記第4所定時間は、前記基板に印加される電圧値が、前記電流値が前記第1電流値に増加する直前の前記基板に印加される電圧値に戻るのに要する時間である。
【0067】
第5形態によれば、電流値が第1電流値に増加する直前の基板に印加される電圧値に戻すことができるので、所定の電流値から第2電流値に電流値を増加させたときの電圧値の増加量を一層適切に把握することができる。
【0068】
第6形態によれば、第1形態から第5形態のいずれかのめっき方法において、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に、その旨を報知する工程を有する。
【0069】
第6形態によれば、第1電流密度が限界電流密度に達した場合に、その旨を使用者等に知らせることができる。それにより、使用者等は、めっきを継続するか又は停止するか等を判断することができる。
【0070】
第7形態によれば、電流値を所定の電流値から第1電流値に増加させて基板にめっきす
るめっき装置が提供される。このめっき装置は、めっき液を収容可能なめっき槽と、前記基板に電流を印加する電源と、前記基板への電流を制御する電流制御部と、を有する。前記電流制御部は、前記基板に印加される電圧値を測定する電圧測定部と、前記電流値を前記所定の電流値から前記第1電流値に増加させたときに、前記電圧値の変化量に基づいて前記第1電流値に対応する第1電流密度が限界電流密度以上であるか否かを判定する判定部を有し、前記第1電流密度が前記限界電流密度よりも低い場合に前記第1電流値で第1所定時間前記基板に電流を印加するように前記電源を制御する。
【0071】
基板に印加される電流密度が限界電流密度に達してめっきしたとき、基板に印加される電圧の値が急激に増加することが判った。第7形態によれば、所定の電流値から第1電流値に電流値を増加させたときに、電圧値の変化量をみることにより第1電流密度が限界電流密度以上であるか否かを判定することができる。これにより、電流密度が限界電流密度以上であるか否かをめっき中に把握することができる。
【0072】
第8形態によれば、第7形態のめっき装置において、前記判定部は、前記電流値が前記所定の電流値から前記第1電流値に増加してから所定時間内に前記電圧値が所定の値増加した場合、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定する。
【0073】
上述したように、基板に印加される電流密度が限界電流密度に達してめっきしたとき、基板に印加される電圧の値が急激に増加する。第8形態によれば、電圧値が所定の値増加したことを確認することにより、第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定することができる。
【0074】
第9形態によれば、第7形態又は第8形態のめっき装置において、前記電流制御部は、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に、前記第1電流密度よりも低い第2電流密度に対応する第2電流値で第2所定時間前記基板に電流を印加し、その後前記第1電流密度よりも高い第3電流密度に対応する第3電流値で第3所定時間記基板に電流を印加するように前記電源を制御し、前記第1電流値で前記第1所定時間めっきした場合に前記基板に与えられるクーロン量と、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に前記基板に与えられるクーロン量とが同一である。
【0075】
第9形態によれば、第1電流値で第1所定時間めっきした場合に近い製品基板を得ることができる。
【0076】
第10形態によれば、第9形態のめっき装置において、前記電流制御部は、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に、前記第2電流密度及び前記第3電流密度で前記基板に電流を印加する前に、前記電流値を前記所定の電流密度まで減少させて第4所定時間維持するように前記電源を制御する。
【0077】
第10形態によれば、電流値が第1電流値に増加したときに増加した電圧値を低下させることができる。ひいては、所定の電流値から第2電流値に電流値を増加させたときの電圧値の増加量を適切に把握することができる。
【0078】
第11形態によれば、第10形態のめっき装置において、前記第4所定時間は、前記基板に印加される電圧値が、前記電流値が前記第1電流値に増加する直前の前記基板に印加される電圧値に戻るのに要する時間である。
【0079】
第11形態によれば、電流値が第1電流値に増加する直前の基板に印加される電圧値に戻すことができるので、所定の電流値から第2電流値に電流値を増加させたときの電圧値の増加量を一層適切に把握することができる。
【0080】
第12形態によれば、第7形態から第11形態のいずれかのめっき装置において、前記第1電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合に、その旨を報知する報知部を有する。
【0081】
第12形態によれば、第1電流密度が限界電流密度に達した場合に、その旨を使用者等に知らせることができる。それにより、使用者等は、めっきを継続するか又は停止するか等を判断することができる。
【0082】
第13形態によれば、基板にめっきするめっき装置において限界電流密度を推定する方法が提供される。この方法は、前記基板に印加される電流の電流密度を増加させる工程と、前記基板に印加される電圧値を測定する工程と、所定時間内に前記電圧値が所定の値増加した場合、前記電流密度が前記限界電流密度以上であると判定する工程と、を有する。
【0083】
基板に印加される電流密度が限界電流密度に達してめっきしたとき、基板に印加される電圧の値が急激に増加することが判った。第13形態によれば、所定の電流値から第1電流値に電流値を増加させたときに、電圧値の変化量をみることにより第1電流密度が限界電流密度以上であるか否かを判定することができる。これにより、電流密度が限界電流密度以上であるか否かを把握することができ、ひいては限界電流密度のおよその値を推定することができる。
【0084】
第14形態によれば、第13形態の方法において、前記電流密度を増加させる工程は、前記電流密度を時間に比例して連続的に増加させる工程を含む。
【0085】
第14形態によれば、徐々に電流密度を増加させるので、電圧値の増加が確認されたときを、電流密度が限界電流密度に達したタイミングとして推定することができる。
【0086】
第15形態によれば、第13形態又は第14形態の方法において、前記判定工程において前記電流密度が前記限界電流密度以上であると判定された場合において、判定時から前記所定時間前の時点での電流密度を、前記判定時における限界電流密度と推定する。
【0087】
第15形態によれば、電流密度が限界電流密度に達したタイミングを推定することができる。その結果、そのタイミングにおける電流密度を限界電流密度として推定することができる。
【0088】
第16形態によれば、第13形態から第15形態のいずれかの方法において、前記判定工程において前記電流密度が前記限界電流密度以上であると判定されたとき、前記電流密度を減少させる工程を有する。
【0089】
第16形態によれば、電流密度が限界電流密度以上に達したときに増加した電圧値を低下させることができる。ひいては、引き続き電流密度を増加させて限界電流密度を推定する際に、電流密度を増加させたときの電圧値の増加量を適切に把握することができる。