(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブロック重合体内における前記親水性ブロックと疎水性ブロックは、1:0.001〜1:100のモル比率で含まれるものである、請求項1から4のいずれか一項に記載のブロック重合体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0016】
本明細書において、「単位」とは、単量体が重合体に含まれる繰り返しの構造であって、単量体が重合によって重合体内に結合した構造を意味する。
【0017】
本明細書において、「単位を含む」の意味は、重合体内の主鎖に含まれるとの意味である。
【0018】
本明細書において、
【化2】
は、隣接した置換基または重合体の主鎖と結合することを意味する。
【0019】
本明細書において、前記ブロック重合体とは、1つのブロックと、該ブロックと異なる1または2以上のブロックとが互いに高分子の主鎖に連結されて構成された高分子を意味する。
【0020】
本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体は、親水性ブロックと、疎水性ブロックとを含むことができる。具体的には、一つの実施態様において、前記ブロック重合体は、前記化学式1で表される単位を含む親水性ブロックと、陽イオン性基とハロゲン基を含む疎水性ブロックとを含むことができる。
【0021】
本明細書の「親水性ブロック」は、官能基としてイオン交換基を有するブロックを意味する。ここで、前記官能基は、−SO
3H、−SO
3−M
+、−COOH、−COO
−M
+、−PO
3H
2、−PO
3H
−M
+、−PO
32−2M
+、−O(CF
2)
mSO
3H、−O(CF
2)
mSO
3−M
+、−O(CF
2)
mCOOH、−O(CF
2)
mCOO
−M
+、−O(CF
2)
mPO
3H
2、−O(CF
2)
mPO
3H
−M
+、および−O(CF
2)
mPO
32−2M
+からなるグループより選択された少なくともいずれか1つであってもよい。ここで、Mは、金属性元素であってもよい。すなわち、官能基は、親水性でありうる。
【0022】
本明細書の一実施態様に係る化学式1で表される第1単位は、Aの官能基を含むことにより、親水性を示すことができる。
【0023】
本明細書の前記「イオン交換基を有するブロック」とは、当該ブロックを構成する構造単位1個あたりにあるイオン交換基数で示して平均0.5個以上含まれているブロックであることを意味し、構造単位1個あたり、平均1.0個以上のイオン交換基を有していれば、より好ましい。
【0024】
本明細書の一実施態様において、前記疎水性ブロックは、陽イオン性基およびハロゲン基を含む。この場合、ブロック重合体の耐酸性および/または耐久性の向上を期待することができる。
【0025】
本明細書の一実施態様は、疎水性ブロックと、
親水性ブロックとを含み、
前記親水性ブロックは、下記化学式1で表される化合物に由来する単位を含み、
前記疎水性ブロックは、陽イオン性基およびハロゲン基を含むものであるブロック重合体を提供する。
[化学式1]
【化3】
化学式1において、
Aは、−SO
3H、−SO
3−M
+、−COOH、−COO
−M
+、−PO
3H
2、−PO
3H
−M
+、−PO
32−2M
+、−O(CF
2)
mSO
3H、−O(CF
2)
mSO
3−M
+、−O(CF
2)
mCOOH、−O(CF
2)
mCOO
−M
+、−O(CF
2)
mPO
3H
2、−O(CF
2)
mPO
3H
−M
+、または−O(CF
2)
mPO
32−2M
+であり、
mは、2〜6の整数であり、
Mは、1族元素であり、
R
1〜R
5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;ハロゲン基;またはヒドロキシ基であり、
R
1〜R
5のうちの少なくとも2つは、ハロゲン基;またはヒドロキシ基であり、
R
6およびR
7は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にハロゲン基であり、
L
1は、直接結合;−S−;−O−;−N(R)−;−SO
2−;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキレン基であり、
aは、0〜2の整数であり、aが2の場合、括弧内の構造は、互いに同一または異なり、
Rは、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
nは、2〜10の整数であり、nが2以上の場合に、括弧内の構造は、互いに同一または異なる。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記陽イオン性基は、−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;または下記化学式2で表されてもよい。
【化4】
化学式2において、
L
2は、直接結合;−O−;−N(R
14)−;−S−;−SO
2−;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキレン基であり、
bは、1〜10の整数であり、
bが2以上の場合に、2以上のL
2は、互いに同一または異なり、
R
11〜R
15は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0027】
本明細書の一実施態様において、前記疎水性ブロックは、下記化学式3で表される化合物、および化学式4で表される化合物のうちの1種以上に由来する単位を含む。
[化学式3]
【化5】
[化学式4]
【化6】
化学式3および化学式4において、
A
1およびA
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にヒドロキシ基;チオール基;またはハロゲン基であり、
S
1およびS
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;または下記化学式2で表される構造であり、
cおよびdは、それぞれ1〜4の整数であり、
cおよびdがそれぞれ2以上の整数の場合、2以上の括弧内の構造は、互いに同一または異なり、
S
3およびS
4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;ハロゲン基;アルキル基;またはハロアルキル基であり、
E
1およびE
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にヒドロキシ基;チオール基;またはハロゲン基であり、eは、1〜4の整数であり、
fは、1〜3の整数であり、
eおよびfがそれぞれ2以上の整数の場合に、括弧内の構造は、互いに同一または異なり、
S
5は、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;または下記化学式2で表される構造であり、
S
3およびS
4がそれぞれ独立にハロゲン基またはハロアルキル基であるか、S
5がハロゲン基またはハロアルキル基であり、
前記疎水性ブロックは、−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;および下記化学式2で表される構造を1または2以上含み、
[化学式2]
【化7】
化学式2において、
L
2は、直接結合;−O−;−N(R
14)−;−S−;−SO
2−;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキレン基であり、
bは、1〜10の整数であり、
bが2以上の場合に、2以上のL
2は、互いに同一または異なり、
R
11〜R
15は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0028】
一実施態様において、前記化学式4は、下記化学式4−A〜化学式4−Hのうちのいずれか1つで表されてもよい。
【化8】
【化9】
化学式4−A〜4−Hにおいて、
S
5およびeの定義は、化学式4におけるのと同じであり、
S
5'の定義は、S
5と同じであり、S
5とS
5'は、互いに同一または異なり、
e'の定義は、eと同じであり、eとe'は、互いに同一または異なる。
【0029】
本明細書の一実施態様において、前記疎水性ブロックは、下記化学式3−1で表される単位、および下記化学式4−1で表される単位のうちの少なくとも1つ以上を含む。
[化学式3−1]
【化10】
[化学式4−1]
【化11】
化学式3−1および化学式4−1において、
S
1、S
2、c、dおよびfの定義は、前記化学式3または化学式4におけるのと同じである。
【0030】
一実施態様において、前記化学式3−1は、下記化学式3−1−1で表されてもよい。
[化学式3−1−1]
【化12】
化学式3−1−1において、
S
1、S
2、cおよびdの定義は、前記化学式3におけるのと同じである。
【0031】
一実施態様において、前記化学式4−1は、下記化学式4−1−1で表されてもよい。
[化学式4−1−1]
【化13】
化学式4−1−1において、
fの定義は、前記化学式4におけるのと同じである。
【0032】
もう一つの実施態様において、前記化学式4は、下記化学式4−A−1、4−B−1、4−C−1、4−D−1、4−E−1、4−F−1、4−G−1、および4−H−1のうちのいずれか1つで表されてもよい。
【化14】
【化15】
【0033】
本明細書の一実施態様において、前記疎水性ブロックは、下記化学式5で表される単位を含むことができる。
[化学式5]
【化16】
化学式5において、
X
1は、直接結合;−CO−;−SO
2−;またはハロゲン基で置換されたアルキレン基であり、
X
2は、−O−;または−S−であり、
X
3は、直接結合またはハロゲン基で置換されたアルキレン基であり、
kは、0または1であり、
p、q、rおよびsは、それぞれ独立に0〜4の整数であり、
t、u、vおよびwは、それぞれ独立に0または1であり、
t、u、vおよびwの合計は、1以上であり、
pとtの合計、qとuの合計、rとvの合計、およびsとwの合計は、それぞれ4であり、
p、q、rおよびsがそれぞれ2以上の場合に、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
R
21〜R
24は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素またはハロゲン基であり、
X
1およびX
3のうちの少なくとも1つがハロゲン基で置換されたアルキレン基であるか、R
21〜R
24のうちの少なくとも1つがハロゲン基であり、
R
31〜R
34は、水素;−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;または下記化学式2で表される陽イオン性基であり、
R
31〜R
34のうちの少なくとも1つは、−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;または下記化学式2で表される陽イオン性基であり、
[化学式2]
【化17】
化学式2において、
L
2は、直接結合;−O−;−N(R
14)−;−S−;−SO
2−;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキレン基であり、
bは、1〜10の整数であり、
bが2以上の場合に、2以上のL
2は、互いに同一または異なり、
R
11〜R
15は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;または置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基である。
【0034】
一実施態様において、前記R
31およびR
32のうちの少なくとも1つが−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13;−(L
2)
b−P
+R
11R
12R
13;または下記化学式2で表される陽イオン性基である。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記aは、1である。
【0036】
本明細書の一実施態様において、前記L
1は、−S−である。前記化学式1中、−[C(R
6)(R
7)]
n−Aの構造とベンゼン環のリンカーとしてS原子を用いる。この場合、S原子に連結された−[C(R
6)(R
7)]
n−Aの電子求引性質(electron withdrawing character)によって、重合体の形成に容易であり、安定した重合体を提供することができる。
【0037】
本明細書の一実施態様において、前記R
6およびR
7は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にハロゲン基である。具体的には、前記R
6およびR
7は、それぞれ独立にF;Cl;Br;およびIからなる群より選択されてもよい。
【0038】
本明細書の前記化学式1で表される単位を含む重合体が高分子電解質膜に含まれる場合、化学式1のR
6およびR
7がハロゲン基であれば、電子をよく求引して水素イオンの移動を容易にすることができ、高分子電解質膜の構造を強くできるという利点がある。具体的には、本明細書の一実施態様によれば、前記R
6およびR
7がフッ素の場合、前記利点が極大化できる。
【0039】
本明細書の一実施態様において、前記nは、2〜10の整数である。本明細書の他の実施態様において、前記nは、2〜6の整数である。
【0040】
本明細書の一実施態様に係る化学式1の単位を含む単量体は、nの個数を調節することができる。この場合、前記括弧内の構造の長さを調節して、高分子電解質膜の相分離現象を容易にする役割を果たすことができ、高分子電解質膜の水素イオンの移動を容易にすることができる。また、化学式1の単位を含む単量体は、括弧内の構造の長さの調節により、反応性の差および最終重合体の物性を必要に応じて調節可能である。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記nは、2である。
【0042】
他の実施態様において、前記nは、3である。
【0043】
さらに他の実施態様において、前記nは、4である。
【0044】
他の実施態様において、前記nは、5である。
【0045】
もう一つの実施態様において、前記nは、6である。
【0046】
他の実施態様において、前記nは、7である。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記nは、8である。
【0048】
他の実施態様において、前記nは、9である。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記nは、10である。
【0050】
本明細書の一実施態様において、前記Aは、−SO
3Hまたは−SO
3−M
+である。
【0051】
もう一つの実施態様において、前記Aは、−SO
3Hである。
【0052】
前記のように、化学式1中、Aが−SO
3Hまたは−SO
3−M
+の場合、化学的に安定した重合体を形成することができる。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記Mは、1族元素である。
【0054】
本明細書において、1族元素は、Li、Na、またはKであってもよい。
【0055】
本明細書の一実施態様において、前記R
1〜R
5のうちの少なくとも2つは、ハロゲン基;またはヒドロキシ基である。
【0056】
本明細書の一実施態様において、R
1〜R
5のうちの少なくとも2つは、ハロゲン基;またはヒドロキシ基であり、残りは、水素である。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記R
1およびR
3は、ハロゲン基またはヒドロキシ基であり、R
2、R
4およびR
5が水素の場合が、重合性の面で優れている。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物に由来する第1単位は、下記化学式1−1〜1−9のうちのいずれか1つで表される。
【化18】
【化19】
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記親水性ブロックは、前記化学式1で表される単位;および前記化学式4で表される化合物に由来する単位を含む。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記S
1は、−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13である。
【0061】
もう一つの実施態様において、前記S
2は、−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13である。
【0062】
本明細書の一実施態様において、前記S
5は、−(L
2)
b−N
+R
11R
12R
13である。
【0063】
本明細書の一実施態様において、前記親水性ブロックは、前記化学式1で表される単位を含み、他の単位をさらに含んでもよい。例えば、前記親水性ブロックは、下記化学式3'で表される化合物に由来する単位をさらに含んでもよい。
[化学式3']
【化20】
化学式3'において、
A'
1およびA'
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にヒドロキシ基;チオール基;またはハロゲン基であり、
S'
1およびS'
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
c'およびd'は、それぞれ1〜4の整数であり、
c'およびd'がそれぞれ2以上の整数の場合、2以上の括弧内の構造は、互いに同一または異なり、
S'
3およびS'
4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;ハロゲン基;アルキル基;またはハロアルキル基である。
【0064】
本明細書の一実施態様において、前記疎水性ブロックは、陽イオン性基およびハロゲン基を含めば良いし、その位置は限定されない。
【0065】
本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体は、下記化学式A、B、C、またはDで表される単位を含む。
【化21】
化学式A〜Dにおいて、
X
1、X
2、L
1、L
2、a、bおよびnは、前述したものと同じであり、
Gは、前記陽イオン性基と同じであり、
xおよびyは、それぞれ独立にブロック重合体のモル比率であって、0超過1未満の実数であり、
x+y=1である。
【0066】
もう一つの実施態様において、前記化学式A〜DのGは、
【化22】
または
【化23】
であってもよい。
【0067】
本明細書の一実施態様において、前記R
11〜R
13およびR
15は、アルキル基である。
【0068】
本明細書の一実施態様において、前記R
11〜R
13およびR
15は、メチル基である。
【0069】
もう一つの実施態様において、前記化学式A〜DのGは、
【化24】
または
【化25】
であってもよい。
【0070】
本発明の一実施態様に係る高分子は、以下のような構造を有することができる。
【化26】
【化27】
【0071】
本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体内における前記親水性ブロックと疎水性ブロックは、1:0.001〜1:100のモル比率で含まれる。本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体内における前記親水性ブロックと疎水性ブロックは、1:1〜1:0.001のモル比率で含まれる。さらに他の実施態様において、前記ブロック重合体内における前記親水性ブロックと疎水性ブロックは、1:0.1〜1:0.01のモル比率で含まれる。
【0072】
本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体の全体重合体を基準として、疎水性ブロックが0.1モル%〜50モル%含まれることが好ましく、1モル%〜10モル%含まれることがさらに好ましい。
【0073】
この場合、ブロック重合体のイオン伝達能力を上昇させることができる。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記親水性ブロック内で前記化学式1で表される単位は、前記親水性ブロックを基準として、0.01モル%〜100モル%含まれる。
【0075】
本明細書の一つの実施態様において、前記親水性ブロックの数平均分子量は、1,000g/mol〜300,000g/molである。具体的な実施態様において、2,000g/mol〜100,000g/molである。さらに他の実施態様において、2,500g/mol〜50,000g/molである。
【0076】
本明細書の一つの実施態様において、前記疎水性ブロックの数平均分子量は、1,000g/mol〜300,000g/molである。具体的な実施態様において、2,000g/mol〜100,000g/molである。さらに他の実施態様において、2,500g/mol〜50,000g/molである。
【0077】
本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体は、ブランチャー(brancher)をさらに含んでもよい。本明細書において、ブランチャーとは、重合体の鎖を連結または架橋する役割を果たす。
【0078】
本明細書において、前記ブランチャーをさらに含むブロック重合体の場合には、ブランチャーが直接重合体の主鎖を構成することができ、薄膜の機械的集積度を向上させることができる。具体的には、本発明のブランチされたブロック重合体は、酸置換体(acid substituents)を含まないブランチされた疎水ブロック(branched hydrophobic block)と、酸置換体を含むブランチされた親水ブロック(branched hydrophilic block)とを重合することにより、後処理スルホン化反応(post−sulfonation)やスルホン化された重合体(sulfonated polymer)の架橋反応(cross−linking)を実施せず、ブランチャー(brancher)が重合体の主鎖を直接構成し、薄膜の機械的集積度を維持させる疎水ブロックと、薄膜にイオン伝導性を付与する親水ブロックとが交互に化学的結合でつながるようになる。
【0079】
本明細書の一実施態様において、前記ブロック重合体は、下記化学式6で表される化合物に由来するブランチャー;または下記化学式7で表されるブランチャーをさらに含む。
[化学式6]
【化28】
[化学式7]
【化29】
化学式6および7において、
Xは、−S−;−O−;−CO−;−SO−;−SO
2−;−NR'−;炭化水素系またはフッ素系結合体であり、
lは、0〜10の整数であり、
lが2以上の場合、2以上のXは、互いに同一または異なり、
Y
1およびY
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にNR'R"、ヒドロキシ基およびハロゲン基からなる群より選択される置換基で1または2以上置換された芳香族環;またはヒドロキシ基およびハロゲン基からなる群より選択される置換基で1または2以上置換された脂肪族環であり、
R'およびR"は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;ハロゲン基で置換された芳香族環;またはハロゲン基で置換された脂肪族環であり、
Zは、3価の有機基である。
【0080】
本明細書の前記置換基の例示は以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0081】
本明細書において、前記「由来」とは、化合物の結合が切れたり、置換基が離れていきながら新しい結合が生じたりすることを意味し、前記化合物に由来する単位は、重合体の主鎖に連結される単位を意味することができる。前記単位は、重合体内の主鎖に含まれて重合体を構成することができる。
【0082】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物に由来する単位とは、R
1〜R
5のうちの少なくとも2つがハロゲン基の場合、ハロゲン基が離れていきながら、重合体の主鎖と連結されることを意味することができる。さらに他の実施態様において、前記化学式1で表される化合物に由来する単位とは、R
1〜R
5のうちの少なくとも2つがヒドロキシ基の場合、ハロゲン基を有している共単量体(comonomer)のハロゲン基を離して重合体の主鎖と連結されることを意味することができる。
【0083】
本明細書の一実施態様において、前記化学式4で表される化合物に由来する単位とは、E
1およびE
2がヒドロキシ基;チオール基;またはハロゲン基であり、チオール基またはヒドロキシ基が脱水素化されながら、重合体の主鎖と連結されることを意味することができる。前記由来する単位は、脱水素化されながら重合体の主鎖と連結されることを意味するものも含み、酸処理、熱処理などの後処理により主鎖と連結される部位を変形させるものも含むことができる。
【0084】
例えば、本明細書の一実施態様において、E
1またはE
2がヒドロキシ基の場合には、重合体の主鎖において−O−の連結基が備えられ、E
1およびE
2がチオール基の場合には、重合体の主鎖において−S−の連結基が備えられる。さらに、必要に応じて、酸処理により重合体主鎖の−S−の連結基を−SO
2−に変換させることができる。
【0085】
また、具体的には、本明細書において、前記化学式6の化合物に由来するブランチャーは、前記Y1およびY2それぞれのハロゲン基で置換された芳香族環;またはハロゲン基で置換された脂肪族環中のハロゲン基が芳香族環または脂肪族環から離れていきながら、ブランチャーとして作用しうる。具体的には、2以上のハロゲン基が離れていきながら、重合体内でブランチャーとして作用しうる。
【0086】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0087】
本明細書において、炭化水素系は、炭素と水素のみからなる有機化合物を意味し、直鎖、分枝鎖、環状炭化水素などがあり、これを限定しない。また、単一結合、二重結合、または三重結合を含むことができ、これを限定しない。
【0088】
本明細書において、フッ素系結合体は、前記炭化水素系において炭素−水素結合が一部または全部フッ素に置換されたものを意味する。
【0089】
本明細書において、前記芳香族環は、芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環であってもよいし、単環または多環であってもよい。
【0090】
具体的には、芳香族炭化水素環としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの単環式芳香族、およびナフチル基、ビナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、フルオレニル基、アセナフタセニル基、トリフェニレン基、フルオランテン(fluoranthene)基などの多環式芳香族などがあり、これらに限定されない。
【0091】
本明細書において、芳香族ヘテロ環は、前記芳香族炭化水素環において炭素原子の代わりにヘテロ原子、例えば、O、S、N、Seなどを1以上含む構造を意味する。具体的には、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0092】
本明細書において、前記脂肪族環は、脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環であってもよいし、単環または多環であってもよい。前記脂肪族環の例示としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがあり、これを限定しない。
【0093】
本明細書において、有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。この有機基は、前記有機基中にヘテロ原子などの炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、前記有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0094】
本明細書において、3価の有機基とは、有機化合物に結合位置が3個ある3価の基を意味する。
【0095】
また、前記有機基は、環状構造を形成することもでき、発明の効果が損なわれない限り、ヘテロ原子を含めて結合を形成することができる。
【0096】
具体的には、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子などのヘテロ原子を含む結合が挙げられる。具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=CR−:Rは、水素原子または有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合などが挙げられ、これを限定しない。
【0097】
前記環状構造としては、前述の芳香族環、脂肪族環などがあり得、単環または多環であってもよい。
【0098】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1〜50のものが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびヘプチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0099】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2〜40のものが好ましい。具体例としては、ビニル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、1,3−ブタジエニル、アリル、1−フェニルビニル−1−イル、2−フェニルビニル−1−イル、2,2−ジフェニルビニル−1−イル、2−フェニル−2−(ナフチル−1−イル)ビニル−1−イル、2,2−ビス(ジフェニル−1−イル)ビニル−1−イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3〜60のものが好ましく、特に、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。
【0101】
本明細書の一実施態様において、前記lは、3以上である。
【0102】
本明細書の一実施態様において、前記Xは、−S−である。
【0103】
もう一つの実施態様において、前記Xは、ハロアルキレン基である。
【0104】
より具体的には、前記Xは、−CF
3CF
3−であってもよい。
【0105】
さらに他の実施態様において、前記Xは、−CH
2−である。
【0106】
本明細書の他の実施態様において、前記Xは、NR'である。
【0107】
本明細書の一実施態様において、前記Y1およびY2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にNR'R"である。
【0108】
本明細書の一実施態様において、前記Y1およびY2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にハロゲン置換芳香族環である。
【0109】
本明細書の一実施態様において、前記Y1およびY2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立にフッ素置換された芳香族炭化水素環である。
【0110】
もう一つの実施態様において、前記Y1およびY2は、それぞれフッ素置換されたフェニル基である。具体的には、2,4−フェニル、2,6−フェニル、2,3−フェニル、3,4−フェニルなどがあり、これを限定しない。
【0111】
本明細書の一実施態様において、前記化学式6で表される化合物は、下記構造のうちのいずれか1つで表されてもよい。
【化30】
前記構造において、Xおよびlは、化学式6で定義したものと同じであり、
R""の定義は、化学式6のRの定義と同じである。
【0112】
本明細書の一実施態様によれば、前記化学式7のZは、下記化学式7−1〜7−4のうちのいずれか1つで表されてもよい。
【化31】
前記化学式7−1〜7−4において、
L
11〜L
17は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に直接結合;−S−;−O−;−CO−;または−SO
2−であり、
R
100〜R
110は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
r100、r101、r102、r105、r107、r108およびr109は、それぞれ1〜4の整数であり、
r103、r104、r106およびr110は、それぞれ1〜3の整数であり、
r100〜r110がそれぞれ2以上の整数の場合、2以上の括弧内の構造は、互いに同一または異なる。
【0113】
本明細書の一実施態様において、前記L
11は、−CO−である。
【0114】
もう一つの実施態様において、前記L
11は、−SO
2−である。
【0115】
もう一つの実施態様において、前記L
11は、−S−である。
【0116】
さらに他の実施態様において、前記L
12は、−CO−である。
【0117】
もう一つの実施態様において、前記L
12は、−SO
2−である。
【0118】
さらに他の実施態様において、前記L
12は、−S−である。
【0119】
本明細書の一実施態様において、前記L
13は、−CO−である。
【0120】
もう一つの実施態様において、前記L
13は、−SO
2−である。
【0121】
さらに他の実施態様において、前記L
13は、−S−である。
【0122】
本明細書の一実施態様において、前記L
14は、−CO−である。
【0123】
もう一つの実施態様において、前記L
14は、−SO
2−である。
【0124】
本明細書の一実施態様において、前記L
15は、直接結合である。
【0125】
もう一つの実施態様において、前記L
16は、直接結合である。
【0126】
もう一つの実施態様において、前記L
17は、直接結合である。
【0127】
本明細書の一実施態様において、前記R
100〜R
110は、水素である。
【0128】
本明細書の一実施態様において、前記R
106は、ハロゲン基である。
【0129】
もう一つの実施態様において、前記R
106は、フッ素である。
【0130】
また、本明細書の一実施態様において、前記化学式7で表されるブランチャーは、下記構造のうちのいずれか1つで表されてもよい。
【化32】
【0131】
本明細書の一実施態様において、前記重合体の重量平均分子量は、500g/mol〜5,000,000g/molである。本明細書のもう一つの実施態様において、前記重合体の重量平均分子量は、10,000g/mol〜3,000,000g/molである。前記重合体の重量平均分子量が前記範囲の場合には、前記重合体を含む電解質膜の機械的な物性が低下せず、適切な高分子の溶解度を維持して、電解質膜の製造が容易となりうる。
【0132】
また、本明細書は、前述のブロック重合体を含む高分子電解質膜を提供する。
【0133】
本明細書の一実施態様に係る前記化学式1を表す単位を含むブロック重合体を含む場合には、高い機械的強度と高いイオン伝導度を有し、電解質膜の相分離現象を容易にすることができる。
【0134】
本明細書において、「電解質膜」は、イオンを交換できる膜であって、膜、イオン交換膜、イオン伝達膜、イオン伝導性膜、分離膜、イオン交換分離膜、イオン伝達分離膜、イオン伝導性分離膜、イオン交換電解質膜、イオン伝達電解質膜、またはイオン伝導性電解質膜などを含む。
【0135】
本明細書の一実施態様に係る高分子電解質膜は、前記化学式1で表される単位を含む親水性ブロックと、少なくとも1つの陽イオン性側鎖を含む疎水性ブロックとを含むブロック重合体を含むことを除き、当技術分野で知られた材料および/または方法を利用して製造される。
【0136】
本明細書の一実施態様によれば、前記高分子電解質膜のイオン伝導度は、0.01S/cm以上0.5S/cm以下である。もう一つの実施態様において、前記高分子電解質膜のイオン伝導度は、0.01S/cm以上0.3S/cm以下である。
【0137】
本明細書の一実施態様において、前記高分子電解質膜のイオン伝導度は、加湿条件で測定される。本明細書において、加湿条件とは、相対湿度(RH)10%〜100%を意味することができる。
【0138】
また、本明細書の一実施態様において、前記高分子電解質膜のイオン交換容量(IEC)値は、0.01mmol/g〜5mmol/gである。前記イオン交換容量値の範囲を有する場合には、前記高分子電解質膜におけるイオンチャネルが形成され、重合体がイオン伝導度を示すことができる。
【0139】
本明細書の一実施態様において、前記高分子電解質膜の厚さは、1μm〜500μmである。前記範囲の厚さの高分子電解質膜は、電気的ショート(Electric Short)および電解質物質のクロスオーバー(Cross Over)を低下させ、優れた陽イオン伝導度特性を示すことができる。
【0140】
本明細書はまた、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に備えられた、前述の高分子電解質膜とを含む膜−電極接合体を提供する。
【0141】
膜−電極接合体(MEA)は、燃料と空気の電気化学触媒反応が起こる電極(カソードとアノード)と、水素イオンの伝達が起こる高分子膜との接合体を意味するものであって、電極(カソードとアノード)と電解質膜とが接着された単一の一体型ユニット(unit)である。
【0142】
本明細書の前記膜−電極接合体は、アノードの触媒層とカソードの触媒層を電解質膜に接触させる形態であって、当分野で知られた通常の方法により製造される。一例として、前記カソードと、アノードと、前記カソードとアノードとの間に位置する電解質膜とを密着させた状態で、100℃〜400℃で熱圧着して製造される。
【0143】
アノード電極は、アノード触媒層とアノード気体拡散層とを含むことができる。アノード気体拡散層はさらに、アノード微細気孔層とアノード電極基材とを含むことができる。
【0144】
カソード電極は、カソード触媒層とカソード気体拡散層とを含むことができる。カソード気体拡散層はさらに、カソード微細気孔層とカソード電極基材とを含むことができる。
【0145】
図1は、燃料電池の電気発生原理を概略的に示すもので、燃料電池において、電気を発生させる最も基本的な単位は膜電極接合体(MEA)であるが、これは、電解質膜100と、該電解質膜100の両面に形成されるアノード200aおよびカソード200b電極とで構成される。燃料電池の電気発生原理を示す
図1を参照すれば、アノード200aでは水素またはメタノール、ブタンのような炭化水素などの燃料の酸化反応が起こり、水素イオン(H+)および電子(e−)が発生し、水素イオンは電解質膜100を介してカソード200bに移動する。カソード200bでは電解質膜100を介して伝達された水素イオンと、酸素のような酸化剤および電子が反応して水が生成される。この反応により外部回路に電子の移動が発生する。
【0146】
前記アノード電極の触媒層は、燃料の酸化反応が起こる所で、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−ルテニウム合金、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、および白金−遷移金属合金からなる群より選択される触媒が好ましく使用できる。前記カソード電極の触媒層は、酸化剤の還元反応が起こる所で、白金または白金−遷移金属合金が触媒として好ましく使用できる。前記触媒は、それ自体で使用できるだけでなく、炭素系担体に担持されて使用できる。
【0147】
触媒層を導入する過程は、当該技術分野で知られている通常の方法で行うことができるが、例えば、触媒インクを電解質膜に直接的にコーティングしたり、気体拡散層にコーティングして触媒層を形成したりすることができる。この時、触媒インクのコーティング方法は特に制限されるわけではないが、スプレーコーティング、テープキャスティング、スクリーンプリンティング、ブレードコーティング、ダイコーティングまたはスピンコーティング方法などを使用することができる。触媒インクは、代表的に、触媒、ポリマーアイオノマー(polymer ionomer)、および溶媒からなる。
【0148】
前記気体拡散層は、電流伝導体としての役割とともに、反応ガスと水の移動通路になるもので、多孔性の構造を有する。したがって、前記気体拡散層は、導電性基材を含んでなる。導電性基材としては、カーボンペーパー(Carbon paper)、カーボンクロス(Carbon cloth)、またはカーボンフェルト(Carbon felt)が好ましく使用できる。前記気体拡散層は、触媒層および導電性基材の間に微細気孔層をさらに含んでなる。前記微細気孔層は、低加湿条件での燃料電池の性能を向上させるために使用され、気体拡散層の外に抜け出る水の量を少なくして電解質膜が十分な湿潤状態にあるようにする役割を果たす。
【0149】
本明細書の一実施態様は、2以上の膜−電極接合体と、前記膜−電極接合体の間に備えられるバイポーラプレートを含むスタックと、前記スタックに燃料を供給する燃料供給部と、前記スタックに酸化剤を供給する酸化剤供給部とを含む高分子電解質型燃料電池を提供する。
【0150】
燃料電池は、燃料の化学的エネルギーを直接電気的エネルギーに変換させるエネルギー変換装置である。すなわち、燃料電池は、燃料ガスと酸化剤を用い、これらの酸化還元反応中に発生する電子を用いて電力を生産する発電方式である。
【0151】
燃料電池は、前述の膜−電極接合体(MEA)を用いて、当分野で知られた通常の方法により製造される。例えば、前記製造された膜電極接合体(MEA)とバイポーラプレート(bipolar plate)とで構成して製造される。
【0152】
本明細書の燃料電池は、スタックと、燃料供給部と、酸化剤供給部とを含んでなる。
【0153】
図3は、燃料電池の構造を概略的に示すもので、燃料電池は、スタック60と、酸化剤供給部70と、燃料供給部80とを含んでなる。
【0154】
スタック60は、上述した膜電極接合体を1つまたは2つ以上含み、膜電極接合体が2以上含まれる場合には、これらの間に介在するセパレータを含む。セパレータは、膜電極接合体が電気的に連結されるのを防ぎ、外部から供給された燃料および酸化剤を膜電極接合体に伝達する役割を果たす。
【0155】
酸化剤供給部70は、酸化剤をスタック60に供給する役割を果たす。酸化剤としては、酸素が代表的に使用され、酸素または空気をポンプ70で注入して使用することができる。
【0156】
燃料供給部80は、燃料をスタック60に供給する役割を果たし、燃料を貯蔵する燃料タンク81と、燃料タンク81に貯蔵された燃料をスタック60に供給するポンプ82とで構成される。燃料としては、気体または液体状態の水素または炭化水素燃料が使用できる。炭化水素燃料の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、または天然ガスが挙げられる。
【0157】
前記燃料電池は、高分子電解質燃料電池、直接液体燃料電池、直接メタノール燃料電池、直接ギ酸燃料電池、直接エタノール燃料電池、または直接ジメチルエーテル燃料電池などが可能である。
【0158】
本明細書の一実施態様に係る電解質膜を燃料電池のイオン交換膜として用いた時、前述の効果を奏することができる。
【0159】
また、本明細書の一実施態様は、正極および正極電解液を含む正極セルと、負極および負極電解液を含む負極セルと、前記正極セルと前記負極セルとの間に備えられる、本明細書の一実施態様に係る高分子電解質膜とを含むレドックスフロー電池を提供する。
【0160】
レドックスフロー電池(酸化−還元フロー電池、Redox Flow Battery)は、電解液に含まれている活性物質が酸化−還元されて充電−放電されるシステムで、活性物質の化学的エネルギーを直接電気エネルギーとして貯蔵させる電気化学的蓄電装置である。レドックスフロー電池は、酸化状態が異なる活性物質を含む電解液がイオン交換膜を挟んで接する時、電子をやり取りして充電と放電が行われる原理を利用する。一般的に、レドックスフロー電池は、電解液の入っているタンクと、充電および放電が起こる電池セルと、電解液をタンクと電池セルとの間に循環させるための循環ポンプとで構成され、電池セルの単位セルは、電極、電解質、およびイオン交換膜を含む。
【0161】
本明細書の一実施態様に係る電解質膜をレドックスフロー電池のイオン交換膜として用いた時、前述の効果を奏することができる。
【0162】
本明細書のレドックスフロー電池は、本明細書の一実施態様に係る高分子電解質膜を含むことを除けば、当分野で知られた通常の方法により製造される。
【0163】
図2に示すように、レドックスフロー電池は、電解質膜31によって正極セル32と負極セル33に分けられる。正極セル32と負極セル33は、それぞれ正極と負極を含む。正極セル32は、パイプを介して正極電解液41を供給および放出するための正極タンク10に連結されている。負極セル33も、パイプを介して負極電解液42を供給および放出するための負極タンク20に連結されている。電解液は、ポンプ11、21を介して循環し、イオンの酸化数が変化する酸化/還元反応(すなわち、レドックス反応)が起こることにより、正極と負極で充電および放電が起こる。
【実施例】
【0164】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0165】
<製造例1>
2−(ブロモメチル)−1−フルオロ−4−((4−フルオロフェニル)スルホニル)ベンゼンの合成
【化33】
1−フルオロ−4−((4−フルオロフェニル)スルホニル)−2−メチルベンゼン(1−fluoro−4−((4−fluorophenyl)sulfonyl)−2−methylbenzene)200g(0.75mol)をクロロホルム1500mlに溶かし、ベンゾイルパーオキサイド(Benzoyl peroxide)18.1g(74.5mmol)を添加した。N−ブロモスクシンイミド(N−bromosuccinimide)398g(2.24mol)をゆっくり滴加した後、反応物を65℃に昇温し、同じ温度で5時間撹拌した。反応終結後、反応物を室温に冷却し、エチルアセテートで希釈させた後、飽和NaHCO
3水溶液を用いて数回洗浄した。このように得た有機層を硫酸マグネシウム(MgSO
4)で乾燥し蒸留して、クルード(crude)状態の2−(ブロモメチル)−1−フルオロ−4−((4−フルオロフェニル)スルホニル)ベンゼン(2−(bromomethyl)−1−fluoro−4−((4−fluorophenyl)sulfonyl)benzene)を得た。このように得たクルード(crude)化合物を追加的な分離精製過程なく次の反応に使用した。
【0166】
<製造例2>
1−(2−フルオロ−5−((4−フルオロフェニル)スルホニル)フェニル)−N,N−ジメチルメタンアミンハイドロクロライドの合成
【化34】
製造例1で得たクルード(crude)2−(ブロモメチル)−1−フルオロ−4−((4−フルオロフェニル)スルホニル)ベンゼンをテトラヒドロフラン(THF)1500mlに溶かした後、反応物を0℃に冷却し、ジメチルアミン(Dimehtylamine 40wt% in H
2O)420g(3.73mol)をゆっくり滴加した。反応物の温度を室温に昇温した後、室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧蒸留で除去し、エチルアセテートで希釈させた後、1N HClを滴加した。このように得た水層をエチルアセテートで数回洗浄して不純物を除去し、酸性の水層を減圧蒸留によりHCl塩形態(salt form)の固体化合物を得た。このように得た固体化合物を、メチレンクロライドを入れてスラリー状に室温で撹拌した後、濾過し、N
2気体(gas)下で乾燥して、高純度の最終化合物1−(2−フルオロ−5−((4−フルオロフェニル)スルホニル)フェニル)−N,N−ジメチルメタンアミンハイドロクロライドを42%の収率(2step yield)で得ることができた。
【0167】
前記1−(2−フルオロ−5−((4−フルオロフェニル)スルホニル)フェニル)−N,N−ジメチルメタンアミンハイドロクロライドのNMRスペクトルは、
図4に示した。
【0168】
<実施例1>
【0169】
[反応式1]
【化35】
【0170】
前記反応式1のそれぞれのモノマーおよび炭酸カリウム(K
2CO
3:モル比4)をメチルピロリドン(NMP)30wt%の比率とベンゼン20wt%の比率で混合して、140℃で4時間、180℃で16時間重合して、前記反応式1の重合体を製造した。前記反応式1の重合体のH−NMRは
図5の通りであり、ジメチルアセトアミド(DMAC)に重合体を溶かした後、CDCl
3溶媒でH−NMR実験を進行させた。
【0171】
[反応式2]
【化36】
【0172】
反応式1で合成した重合体に、反応式2のそれぞれのモノマーおよび炭酸カリウム(K
2CO
3:モル比4)をメチルピロリドン(NMP)30wt%の比率とベンゼン20wt%の比率で混合して、140℃で4時間、180℃で16時間重合して、前記反応式2の重合体を製造した。
【0173】
<実施例2>
実施例1で得た反応式2の重合体を5wt%の濃度でジメチルアセトアミド(DMAC)に溶かした後、メチルアイオダイド(methyliodide)5eqを添加し、室温で6時間反応して、下記の反応式3の重合体を最終的に製造した。前記反応式3の最終重合体のNMRスペクトルは、
図6に示した。
[反応式3]
【化37】
【0174】
<比較例>
実施例2の共重合体およびナフィオン(Nafion)115をそれぞれ用いた電解質膜のバナジウム透過性(vanadium permeability)を測定して、下記表1に示した。
【表1】
【0175】
前記バナジウムイオン透過度は、一方に1M VOSO
4 in 2M H
2SO
4溶液を充填し、他の一方に1M MgSO
4 in 2M H
2SO
4溶液を充填した後、2つの溶液の間に電解質膜を設けて、時間に応じた1M MgSO
4 in 2M H
2SO
4溶液でのVO
2+濃度を測定した値である。
【0176】
活性領域(Active area)は7.69cm
2、ボリューム(volume)は200ml、常温で測定した。
【0177】
実施例2による共重合体を含む電解質膜の場合、ナフィオン(Nafion)115電解質膜に比べて、電解質膜の主鎖に陽イオン性官能基が存在することによって、バナジウムイオンの透過度が既存のナフィオン(Nafion)電解質膜に比べて大きく低下することが分かる。このような結果から、ドナン効果(Donnan effect)によるバナジウムイオン(VO
2+)のクロスオーバー(crossover)を効果的に抑制可能で、本願発明の一実施態様に係る共重合体を含む電解質膜の性能に優れていることを予測することができる。
【0178】
また、電解質膜の主鎖にフッ素元素が含まれていて、電解質膜の耐久性の向上に大きく寄与できると予測することができる。
【0179】
したがって、本明細書に係る電解質膜を用いて燃料電池またはレドックスフロー電池を製造した時、電池の効率を高めることができる。