(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのようなデバイスの薬物送達プロセスは、特に大容量デバイスの場合、数分またはさらには数時間にわたって続くことがある。しかし、症状の効果的な治療のため、デバイスが全薬剤用量を患者へ確実かつ完全に送達することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、薬剤送達デバイスとともに使用するための薬剤送達システムを提供し、薬剤送達システムは、支持部材と、支持部材との間に間隙を画成するように支持部材から隔置された圧縮部材と、支持部材と圧縮部材との間に延びる複数の連結部材を含む支持部材と圧縮部材との間の機械的連結と、圧縮部材に連結され、支持部材に相対する圧縮部材に対して回転力をかけるように構成された付勢要素とを含み、ここで、機械的連結は、支持部材に相対する圧縮部材の回転により圧縮部材が支持部材の方へ引き寄せられて、それらの間の間隙が低減するように構成される。
【0005】
各連結部材は、支持部材および圧縮部材に旋回可能に連結することができる。
【0006】
各連結部材は、ボールアンドソケット連結によって、支持部材および圧縮部材に旋回可能に連結することができる。これにより、有利には、支持部材に対する圧縮部材の回転運動を容易にすることができる。
【0007】
連結部材は、伸張不能な剛性ロッドを含むことができる。これにより、有利には、圧縮部材が回転したときに支持部材に対する圧縮部材の一定の並進運動を容易にすることができる。
【0008】
付勢要素はまた、圧縮部材を支持部材の方へ付勢するように構成することができる。これにより、有利には、支持部材と圧縮部材との間の本体の圧縮を容易にすることができる。
【0009】
付勢部材は、渦巻きねじりばねを含むことができる。これにより、有利には、圧縮部材の回転付勢を容易にすることができる。
【0010】
渦巻きねじりばねは、円錐形の形状とすることができる。これにより、有利には、薬剤送達デバイスなどの付勢部材の小型かつ/または空間効率的な包装を容易にすることができる。
【0011】
支持部材および圧縮部材は、実質上平行に隔置された板を含むことができる。これにより、有利には、板間での本体の保持を容易にすることができる。
【0012】
薬剤送達システムは、支持部材と圧縮部材との間の間隙内に配置された潰れ可能な薬剤リザーバをさらに含むことができる。これにより、有利には、薬剤の収容および送達を容易にすることができる。
【0013】
本発明はまた、ハウジングと、ハウジング内に配置された上記の薬剤送達システムと、薬剤リザーバに流体連通された注射針とを含む薬剤送達デバイスを提供する。
【0014】
薬剤送達デバイスは、付勢要素の付勢力に逆らって圧縮部材を保持するように構成された解放可能なロッキング機構を含むことができる。これにより、有利には、薬剤送達プロセスが開始されるまで、圧縮部材を支持部材から離れて保持することを容易にすることができる。
【0015】
ロッキング機構は、圧縮部材を解放し、付勢要素の付勢力を受けて拡張状態から圧縮状態へ動かすように動作可能なアクチュエータを含むことができる。これにより、有利には、薬剤送達プロセスの開始を容易にすることができる。
【0016】
薬剤送達デバイスは、針がハウジング内に配置されている後退位置と、針がハウジングから突出する伸長位置との間で、針を動かすように構成された針制御機構をさらに含むことができる。これにより、有利には、薬剤送達プロセスが開始されるまで、針の露出の防止を容易にすることができる。
【0017】
薬剤リザーバは、液体薬剤を収容することができる。
【0018】
本発明はまた、薬剤送達デバイスとともに使用するための薬剤送達システムを動作させる方法を提供し、薬剤送達システムは、支持部材と、支持部材との間に間隙を画成するように支持部材から隔置された圧縮部材と、前記間隙内に配置された潰れ可能な薬剤リザーバと、支持部材と圧縮部材との間に延びる複数の連結部材を含む支持部材と圧縮部材との間の機械的連結と、圧縮部材に連結された付勢要素とを含み、この方法は、付勢部材が、支持部材に相対する圧縮部材に対して回転力をかけることと、機械的連結が、支持部材に相対する圧縮部材の回転を変換して、圧縮部材を支持部材の方へ動かし、それらの間の間隙を低減させることと、薬剤リザーバを潰し、薬剤リザーバから液体薬剤を排出することとを含む。
【0019】
本発明の実施形態について、添付の図面を参照し、例示のみを目的として次に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
流体薬剤を患者へ送達する流体薬剤送達デバイス1について、以下に説明する。図示のデバイス1は、薬剤注射デバイスを含むが、他のタイプの薬剤送達デバイスも本発明の範囲内であることが意図される。デバイス1は、液体薬剤を患者へ送達するための薬剤送達システム2を含む。送達システム2は、一定量の薬剤を収納するための薬剤リザーバ3を含むことができる。デバイス1は、患者の皮膚に当て、注射によって薬剤を送達するように構成される。デバイス1について、ボーラス注射器の文脈で以下に説明するが、別法として別のタイプの大容量デバイス(LVD)または他の薬剤注射デバイスとすることもできることが理解されよう。
【0022】
図1を参照すると、デバイス1はハウジング4を含み、ハウジング4内には、デバイス1の他の構成要素(すべては図示されていない)とともに、薬剤リザーバ3を含む送達システム2が位置する。ハウジング4は、成形プラスチックまたは別の適した材料から形成される。薬剤リザーバ3は、可撓性および/または潰れ可能な容器3として提供され、単一用量の薬剤を収容することができる。薬剤リザーバ3は、デバイス1の再利用を可能にするために、交換可能とすることができる。別法として、薬剤リザーバ3は、デバイス1内で交換不可とすることもでき、したがって、薬剤リザーバ3内の薬剤が排出された後は、薬剤を送達するためにデバイス1を使用することはできなくなり、処分しなければならない。この一度だけ使用されるというデバイス1の性質により、間違った交換用薬剤リザーバ3を患者が誤って設置するおそれがないことを確実にすることによって、操作性が促進され、安全性が改善される。
【0023】
デバイス1は、デバイス1から患者の体内へ薬剤を注射するための注射要素を含む。注射要素について、
図1に示すように、中空の注射針5の文脈で以下に説明する。しかし、以下に論じるように、他の注射要素も本発明の範囲内で想定され、別法として他のタイプの注射要素を使用することもできることが理解されよう。薬剤は、針5を通って送達される。針5の近位端(図示せず)は、薬剤リザーバ3に流体連通される。したがって針5は、薬剤リザーバ3から薬剤を受けるように配置される。針5は遠位端6を含み、遠位端6は使用中、デバイス1のハウジング4を通って患者の体組織内へ突出する。
【0024】
注射針5は、使用中以外はハウジング4内に安全にしまい込むことが可能になるように、ハウジング4の外面を通って制御可能に伸長可能および/または引き込み可能とすることができる。そのような制御機構は、
図1に示されていないが、本発明の代替実施形態を示す
図7を参照して以下に説明する。そのような制御機構はまた、針5を介した薬剤リザーバ3からの薬剤の送達を制御する手段を含むことができ、かつ/または薬剤送達プログラム中に針5を自動的に伸長および後退させることができる。
【0025】
ハウジング4は、デバイス1の使用中に患者の皮膚に当てられるように配置された接触領域7を含む。
図1に示す例示的な実施形態では、接触領域7は、ハウジング4の接触面を含む。接触領域7は、患者の皮膚に当てたときに快適になるように選択された幾何学的および触覚的な特性を有することができる。接触領域7はアパーチャ8を含み、注射針5は、薬剤の送達中、アパーチャ8を通って患者の体組織内へ突出する。
【0026】
デバイス1の使用中、接触領域7は、締結具によって患者の皮膚に当てたまま保持される。締結具は、デバイス1の使用中に注射針5が患者の体に対して固定位置で維持されることを確実にするため、数時間などの長時間にわたって接触領域7を皮膚に当てて安定した位置で保持するのに適している。
図1に示す例示的な締結具は、接触領域7を患者の皮膚に一時的に粘着させるための粘着剤層9である。粘着剤層9は、一般的な絆創膏で使用されるような標準的な生体適合性の接着剤を含むことができる。粘着剤層9を損傷から保護し、患者の皮膚に取り付けられる前に望ましくない物体に付着するのを防止するために、デバイス1の接触領域7は、粘着剤層9の上に重なる保護カバー(図示せず)を含むことができる。保護カバーは、デバイス1の使用前に粘着剤層9を露出させるために、たとえばカバーを粘着剤層9から剥がすことによって、接触領域7から選択的に取り外すことができる。
【0027】
薬剤注射デバイス1の薬剤送達システム2は、支持板10の形態の支持部材と、圧縮板11の形態の圧縮部材とを含む。支持板10および圧縮板11は、互いに対して実質上平行であり、互いから隔置されている。支持および圧縮部材10、11は、好ましくは、実質上剛性の平面構成要素である。図示の実施形態では、支持および圧縮板10、11は円形であり、共通の軸X−Xに関して同軸である。支持板10と圧縮板11との間には、間隙12が画成される。薬剤リザーバ3は、間隙12内に配置され、支持板10および圧縮板11によって両側で接触される。支持部材10は、ハウジング4に対して固定されている。圧縮部材11は、支持部材10およびハウジング4に対して可動である。
【0028】
機械的連結により、圧縮板11が軸X−X周りで支持板10に対して回転することが可能になり、また圧縮板11が軸方向に支持板10に向かう方および支持板10から離れる方へ動くことが可能になるように、支持板10および圧縮板11が連結される。さらに、機械的連結は、圧縮板11が支持板10に対して回転することで圧縮板11が支持板10に向かう方および支持板10から離れる方へ動くように構成される。機械的連結は、剛性の連結ロッド13の形態の複数の連結部材を含む。各連結ロッド13は、一方の端部で支持板10に連結され、他方の端部で圧縮板11に連結される。図示の実施形態では、連結ロッド13と支持板10/圧縮板11との間の連結は、ボールアンドソケット型の継手を含む。各連結ロッド13は、各端部にボール要素14を有する。支持板10および圧縮板11は各々、連結ロッド13のボール要素14を受けて回転可能に保持するように構成された部分的に球形のソケット15を備えて形成される。
【0029】
圧縮部材11には、薬剤リザーバ3とは反対側に、付勢部材が設けられる。付勢部材は、少なくとも圧縮部材11に回転力をかけて圧縮部材11を支持部材10に対して回転させるように構成される。図示の本発明の例示的な実施形態では、付勢部材は、円錐形のねじりばね16の形態である。ねじりばね16の第1の端部17は、圧縮板11に固定されている。ねじりばね16の第2の反対側の端部18は、ハウジング4に対してしっかりと固定されている。第2の端部18は、ハウジング4自体に、またはハウジング4に対して固定された構成要素もしくは機構に、しっかりと固定することができる。円錐形のねじりばね16はまた、圧縮板11に力をかけて圧縮板11を支持板10の方へ実質上軸X−Xの方向に付勢するように構成することができる。
【0030】
デバイス1は、圧縮板11および/またはねじりばね16に係合し、ねじりばね16の力に逆らって支持板10を定位置で保持するように構成されたロッキング機構19を含む。ロッキング機構19は、ハウジング4内に設けることができ、ねじりばね16の第2の端部18をロッキング機構19に固定することができる。ロッキング機構19は、ハウジング4の外側からアクセス可能な解放ボタン20を含む。解放ボタン20は、ロッキング機構19を係合解除して圧縮板11/ねじりばね16を解放し、圧縮板11がねじりばね16の付勢力を受けて動くことを可能にするように、使用者によって動作可能とすることができる。
【0031】
薬剤送達システム2は、
図4A〜6Bに、使用中の様々な段階でより詳細に示されている。
図2と同様に、
図4A〜6Bは、図を簡単にするために、薬剤リザーバ3のない薬剤送達システム2を示す。
図4Aおよび
図4Bは、完全拡張状態にある薬剤送達システムを示す。すなわち、支持板10および圧縮板11は、連結ロッド13によって可能な最大距離だけ離して隔置されている。そのような構成では、連結ロッド13は、支持および圧縮板10、11に実質上直交して延びる。したがって、支持および圧縮板10、11内のそれぞれの球形のソケット15は、軸方向に位置合わせされる。したがって、間隙12は完全拡張状態で、その最大サイズになり、薬剤で満杯になったときの薬剤リザーバ3を収容する。この構成が
図3に示されているが、ねじりばね16は省略されている。
【0032】
図5Aおよび
図5Bは、部分圧縮状態にある薬剤送達システム2を示す。ここで、ねじりばね16は、ロッキング機構19によって解放されており、圧縮板11を軸X−X周りで回転方向に支持板10に対して付勢する。それによって圧縮板11は、矢印「A」によって示す方向に支持板10に対して回転する。これにより、支持および圧縮板10、11内のそれぞれの球形のソケット15が、軸X−X周りで回転方向にずれる。連結ロッド13は剛性かつ伸張不能であるため、これにより圧縮板11は支持板10の方へ引き寄せられて、間隙12のサイズが低減する。これにより、薬剤リザーバ3は圧縮され、薬剤リザーバ3内の薬剤が薬剤リザーバから針5を通って患者の体内へ排出される。
【0033】
図6Aおよび
図6Bは、完全圧縮状態にある薬剤送達システム2を示す。ここで、ねじりばね16は、圧縮板11を軸X−X周りで回転方向に支持板10に対して矢印「A」の方向に引き続き付勢している。圧縮板11は、支持板10の方へさらに引き寄せられて、間隙12のサイズがさらに低減している。したがって、間隙12内に配置された薬剤リザーバ3はさらに圧縮されることになり、薬剤リザーバ3内の薬剤の全用量が、薬剤リザーバ3から針5を通って患者の体内へ排出されることになる。上述したように、ねじりばね16はまた、回転力をかけるのと同様に、支持板10の方へ軸方向の力を圧縮板11にかけるように構成することができる。これは、薬剤送達システムを圧縮状態へさらに付勢し、したがって薬剤リザーバ3を圧縮して薬剤リザーバ3内の薬剤を排出するのを助けることができることが有益である。
【0034】
薬剤注射デバイス1の動作について、次に説明する。使用者は最初に、粘着剤層9から保護カバーを取り外し、接触領域7が患者の体を向くように、デバイス1を所期の注射部位に付ける。針5の遠位端6が患者の皮膚を穿孔する。これは、制御機構(図示せず)が針を伸長位置へ動かすことによって、またはデバイス1を注射部位に配置することによって行うことができる。
【0035】
解放ボタン20が押されて、ロッキング機構19を係合解除する。これにより、ねじりばね16および/または圧縮板11が解放される。ねじりばね16は、
図5Bおよび
図6Bに矢印「A」によって示すように、圧縮板11を軸X−X周りで回転方向に付勢する。圧縮板11は、軸X−X周りで支持板10に対して回転する。しかし、連結ロッド13は剛性かつ伸張不能であるため、圧縮板11はまた、
図4Aおよび
図4Bに示す拡張状態から
図5Aおよび
図5Bに示す部分圧縮状態へ、支持板10に向かって動かされる。それによって間隙12のサイズが低減し、したがって可撓性の薬剤リザーバ3は、支持板10と圧縮板11との間で押しつぶされる。これにより、薬剤リザーバ3内の薬剤は針5を通って患者の体内へ排出される。
【0036】
ねじりばね16は、圧縮板11を引き続き回転方向に付勢し、支持板10に対して回転させながら、支持板10の方へ動かす。これは、
図5Aおよび
図5Bに示す部分圧縮状態にわたって継続され、その後デバイスは、
図6Aおよび
図6Bに示す完全圧縮状態に到達する。完全圧縮状態になった後、薬剤リザーバ3は、薬剤の全用量が針5を通って患者の体内へ排出される点まで潰れる。次いでデバイス1は、患者の体から取り外して廃棄することができ、または再充填することができる/交換用薬剤リザーバを設置することができる再利用可能なデバイスである場合、再利用のために保存することができる。
【0037】
図7は、本発明の薬剤送達システム2を含む本発明の薬剤注射デバイス1’の代替実施形態を示す。
図1に示す実施形態と共通する同様の機能は同じ参照番号を保持し、その説明は繰り返さない。
図7に示す実施形態は、注射針5を伸長および後退させ、薬剤注射プロセスを制御するように構成された制御機構21示す。制御機構21は制御ユニット22を含むことができ、制御ユニット22に針5が連結される。針5は、薬剤の流れの制御を有効にするために、バルブ23を介して制御ユニット22に連結することができる。導管24が、制御ユニット22およびバルブ23を介して薬剤リザーバ3の出口を針5へ流体連結する。
【0038】
制御ユニット22は、ピストン25上に取り付けられ、
図7に矢印「B」によって示すように、針5が後退位置と伸長位置との間を動くことを有効にする。後退位置で、針はハウジング4内に収容される。伸長位置で、針5は接触領域7内の孔8を通って延びる。針5が伸長位置へ動いて患者の皮膚を穿孔するのを助けるように、追加の付勢力を提供するための注射器ばね26が設けられる。アクチュエータ27がハウジング4上に設けられ、制御ユニット22に連結される。アクチュエータは、ボタン、スイッチ、または他の適した構成要素を含むことができる。アクチュエータ27を押すことで、制御ユニット22は注射針5を伸長位置へ動かし、前述したように、解放ボタン20を押すことによって薬剤送達プロセスを開始する準備ができる。しかし代替実施形態では、ロッキング機構19を制御ユニット22に連結することもできる(
図7に破線によって示す)。そのような実施形態では、アクチュエータ27を省略することができる。そのような実施形態では、解放ボタン20を押すことで、制御ユニット22は針5を伸長位置へ動かすことになり、前述したように薬剤送達システム2によって薬剤送達も開始されることになる。針5を通る薬剤の流れは、制御ユニット22によって、針5が患者の体組織内へ完全に挿入された後にバルブ23を開くことによって制御することができる。そのような実施形態では、針注射工程および薬剤送達工程は、使用者によって実行される2つの独立した工程ではないことが理解されよう。
【0039】
制御機構21は、電動式とすることができる。たとえば、ピストン25を電動式とすることができる。また、電力を使用して、注射器ばね26、制御ユニット22、および注射針5を再び後退位置へ後退させ、それによって注射針5を引き抜くことができる。この目的で、制御機構21は、ピストン25に連結された電気モータ(図示せず)および適した駆動機構(図示せず)を含むことができる。電力は、デバイス1内の充電可能な電池(図示せず)または他の電源によって提供することができる。
【0040】
制御ユニット22は、デバイス1の様々な要素の動作を制御するように構成された電子コントローラ(図示せず)を含むことができる。代替手段は、制御ユニットが機械的タイマなどのタイミング要素の制御下で動作することである。タイミング要素は、カウントダウンタイマとすることができる。タイミング要素のカウントダウン期間の経過は、薬剤用量の注射の完了などの事象が発生したことを示すことができる。カウントダウン期間の経過により、ピストン25は、たとえば注射針をデバイス1のハウジング4内へ引き戻すことによって、注射針5を動かすことができる。
【0041】
本発明の範囲内で意図される代替注射要素の例にはカニューレが含まれ、カニューレは、患者の体組織内への挿入を容易にするために尖らせることができる。体組織内へのそのようなカニューレの遠位端の挿入を支援するために、別個の針(図示せず)またはトロカール(図示せず)を設けることができる。この針は、上記で論じた中空の注射針5と同様に、デバイス1のハウジング4から制御可能に伸長可能および/または引き込み可能とすることができる。この針は、カニューレが体組織内へ動くことを可能にするために、患者の皮膚を穿孔するように構成することができる。この針は、たとえば、カニューレの中心を通って延びるように配置することができる。皮膚が穿孔された後、デバイス1は、薬剤の送達前にこの針を再びハウジング内へ後退させるように構成することができる。デバイス1が上述したタイプの別個の針を含む場合、デバイスは、この針の伸長および後退を容易にするためのアクチュエータを含むことができる。
【0042】
本発明の薬剤送達システムの発明の概念は、LVDに適用することができることが理解されよう。しかし、本発明は、この特定のタイプの薬剤送達デバイスに限定されることを意図するものではなく、本発明は、薬剤送達デバイス内に受け入れられる薬剤容器を含む代替タイプの薬剤送達デバイスを包含することが意図され、それだけに限定されるものではないが、パッチポンプおよび注入ポンプを含むことができる。
【0043】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では区別なく使用され、少なくとも1つの医薬的に活性の化合物を含む医薬製剤を意味する。「薬物送達デバイス」という用語は、人間または人間以外の体に薬物をただちに投薬するように設計されたあらゆるタイプのデバイス、システム、または装置を包含すると理解されたい(獣医学への応用例は明らかに本開示によって企図されている)。「ただちに投薬する」とは、薬物送達デバイスからの薬物の放出と人間または人間以外の体への投与との間で、使用者による薬物のいかなる中間操作も必要ないことを意味する。限定するものではないが、薬物送達デバイスの典型的な例は、注射デバイス、吸入器、および胃管栄養供給システムに見られる。この場合も限定するものではないが、例示的な注射デバイスには、たとえば、シリンジ、自己注射器、注射ペンデバイス、および脊髄注射システムを含むことができる。
【0044】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそれらのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0045】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0046】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0047】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0048】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0049】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0050】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0051】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン−4(Exendin−4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC−2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034、MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド(Exenatide)−XTENおよびグルカゴン−Xtenである。
【0052】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0053】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0054】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0055】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG−F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0056】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)
2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0057】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0058】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0059】
例示的な抗体は、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0060】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0061】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1〜C6−アルキル基、場合により置換されたC2〜C6−アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10−アリル基、または場合により置換されたC6〜C10−ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0062】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0063】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそれらのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。