(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972386
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】吸着装置及び真空処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20211111BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20211111BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
C23C14/34 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-560499(P2020-560499)
(86)(22)【出願日】2020年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2020022121
(87)【国際公開番号】WO2021002141
(87)【国際公開日】20210107
【審査請求日】2020年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2019-123742(P2019-123742)
(32)【優先日】2019年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】阪上 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−021405(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/054776(WO,A1)
【文献】
特開平04−032230(JP,A)
【文献】
特開2008−187102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体中に基板を吸着保持するための吸着電極を有し、吸着側の部分に前記基板をガスを用いて冷却する冷却用空間が設けられた本体部と、
前記本体部の冷却用空間に連通し且つ当該本体部を貫通する貫通ガイド孔を介して前記基板を支持して昇降させる昇降部材とを有し、
前記昇降部材は、前記基板を支持する基板支持部と、当該基板支持部に連結され駆動機構によって駆動される連結部とを有するとともに、前記基板を支持しない状態において、前記基板支持部が、前記貫通ガイド孔の前記冷却用空間に連通する収容部内に配置されるとともに、前記連結部が、前記貫通ガイド孔の収容部に連通するガイド部内に配置されるように構成された吸着装置であって、
前記昇降部材の前記連結部と前記基板支持部との間には、前記基板支持部から前記連結部に向かって外径が小さくなるようにテーパ状に形成されたシール位置決め部と、前記シール位置決め部と前記連結部との間に形成された前記連結部より小径の円柱状の溝部と、が設けられ、
前記溝部には、前記シール位置決め部に密着する環状のシール部材が装着され、
前記シール部材は、前記基板を支持しない状態において、前記貫通ガイド孔の収容部から前記貫通ガイド孔のガイド部に向けて内径が小さくなるように形成されたテーパ状の支持壁部と密着することで前記貫通ガイド孔のガイド部を前記収容部に対して密閉する
吸着装置。
【請求項2】
前記昇降部材は、その自重によって前記シール部材が前記貫通ガイド孔の収容部の支持壁部と密着するように構成されている請求項1記載の吸着装置。
【請求項3】
前記シール部材がOリングである請求項1又は2のいずれか1項記載の吸着装置。
【請求項4】
真空槽と、
前記真空槽内に設けられた請求項1記載の吸着装置とを備え、
前記吸着装置によって吸着保持された基板に対して所定の処理を行うように構成されている真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で基板を吸着保持する吸着装置に関し、特に、冷却用ガスを用いて基板の冷却を行う吸着装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スパッタリング装置などでは基板の温度制御を精密に行うために吸着装置が広く用いられている。真空中でガラス等の絶縁性基板上に成膜等の処理を行う装置においては、グラディエント力によって絶縁性基板を吸着保持する吸着装置が広く用いられている。
【0003】
近年、この種の技術分野では、吸着する基板の大きさが大きくなってきたことに対応するため、吸着装置と基板との間に冷却用空間を設け、この冷却用空間にガスを導入して基板を冷却してその温度制御を行うことが提案されている。
【0004】
例えば
図3に示すように、ステージ104上に設けられた従来の吸着装置105では、図示しない孔部を介して冷却用ガスを本体部150の冷却用空間151内に導入することによって基板110の下面を冷却するようにしている。
【0005】
そして、冷却用空間151と連通する貫通ガイド孔152内に、基板110を昇降させる昇降部材115が設けられている。
【0006】
この従来技術では、冷却用ガスを冷却用空間151内に導入した後、昇降部材115の駆動部115aより外径を大きく形成した基板支持部115bの下面を貫通ガイド孔152の収容部154の底面155に押し付けた状態で、基板110の冷却を行う。
【0007】
しかし、従来技術においては、昇降部材115の基板支持部115bの下面と収容部154の底面155との間にわずかな隙間ができ、この隙間から冷却用ガスがガイド部153側に漏れることにより、冷却効率を向上させることが困難であるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4473145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、冷却用ガスを用いて基板の冷却を行う吸着装置において、冷却用ガスの漏れを防止することによって基板の冷却効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、誘電体中に基板を吸着保持するための吸着電極を有し、吸着側の部分に前記基板をガスを用いて冷却する冷却用空間が設けられた本体部と、前記本体部の冷却用空間に連通し且つ当該本体部を貫通する貫通ガイド孔を介して前記基板を支持して昇降させる昇降部材とを有し、前記昇降部材は、前記基板を支持する基板支持部と、当該基板支持部に連結され駆動機構によって駆動される連結部とを有するとともに、前記基板を支持しない状態において、前記基板支持部が、前記貫通ガイド孔の前記冷却用空間に連通する収容部内に配置されるとともに、前記連結部が、前記貫通ガイド孔の収容部に連通するガイド部内に配置されるように構成され、前記昇降部材の前記連結部と前記基板支持部との間に、前記貫通ガイド孔の収容部に設けた支持壁部と密着して支持することで前記貫通ガイド孔のガイド部を前記収容部に対して密閉するシール部材が設けられている吸着装置である。
本発明は、前記昇降部材は、その自重によって前記シール部材が前記貫通ガイド孔の収容部の支持壁部と密着するように構成されている吸着装置である。
本発明は、前記シール部材がOリングである吸着装置である。
本発明は、真空槽と、前記真空槽内に設けられた上記いずれかの吸着装置とを備え、前記吸着装置によって吸着保持された基板に対して所定の処理を行うように構成されている真空処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸着装置では、昇降部材の連結部と基板支持部との間にシール部材を設け、このシール部材を貫通ガイド孔に設けた支持壁部と密着させて支持することで貫通ガイド孔のガイド部を収容部に対して密閉するようにしたことから、冷却用ガスを用いて基板の冷却を行う吸着装置において、冷却用空間に導入された冷却用ガスが貫通ガイド孔のガイド部側に漏れることを防止することができ、これにより基板の冷却効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明においては、昇降部材側にシール部材を設けることによって、貫通ガイド孔の内径をできるだけ小さくすることができ、これにより吸着部分の有効面積を犠牲にすることなく冷却用ガスの貫通ガイド孔のガイド部側への漏れを確実に防止することができる。
【0013】
このように、本発明の吸着装置によれば、基板の冷却効率が高い真空処理装置を提供することができる。
【0014】
本発明において、昇降部材が、その自重によってシール部材が本体部の収容部の支持壁部と密着するように構成されている場合には、シール部材を収容部の支持壁部に押し付ける構成(ばね等)が不要になるので、簡素な構成の吸着装置並びに真空処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a):本発明に係る真空処理装置の一実施の形態であるスパッタリング装置の概略構成図、(b):同スパッタリング装置に用いる吸着装置の実施の形態を示す概略構成図で、貫通ガイド孔を説明するための図、(c):同スパッタリング装置に用いる吸着装置の実施の形態を示す概略構成図で、貫通ガイド孔内に昇降部材が配置された状態を説明するための図
【
図2】(a):本実施の形態の昇降部材の要部を示す断面図、(b):貫通ガイド孔内に配置された昇降部材の要部を示す断面図、(c):本実施の形態の吸着装置の要部断面図で、昇降部材を本体部の貫通ガイド孔内に配置した状態を示す図、(d):本実施の形態の吸着装置の要部断面図で、昇降部材によって基板を支持した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1(a)は、本発明に係る真空処理装置の一実施の形態であるスパッタリング装置の概略構成図である。
図1(b)は、同スパッタリング装置に用いる吸着装置の実施の形態を示す概略構成図で、貫通ガイド孔を説明するための図、
図1(c)は、同スパッタリング装置に用いる吸着装置の実施の形態を示す概略構成図で、貫通ガイド孔内に昇降部材が配置された状態を説明するための図である。
【0018】
図2(a)は、本実施の形態の昇降部材の要部を示す断面図、
図2(b)は、貫通ガイド孔内に配置された昇降部材の要部を示す断面図、
図2(c)は、本実施の形態の吸着装置の要部断面図で、昇降部材を本体部の貫通ガイド孔内に配置した状態を示す図、
図2(d)は、本実施の形態の吸着装置の要部断面図で、昇降部材によって基板を支持した状態を示す図である。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施の形態のスパッタリング装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有している。
【0020】
この真空槽2内は、スパッタガスを導入するように構成され、その内部の例えば上部に、ターゲット3が配置されている。
【0021】
このターゲット3は、図示しないスパッタ電源に接続され、負のバイアス電圧が印加されるようになっている。なお、スパッタ電源のプラス側は真空槽2と共に接地されている。
【0022】
真空槽2内のステージ4上には、基板(吸着対象物)10を吸着保持するための吸着装置5が設けられている。
【0023】
この吸着装置5は、種々のセラミックス等の誘電体からなる本体部50中に複数の吸着電極11が設けられており、これら吸着電極11に、図示しない吸着電源からそれぞれ電力を供給するように構成されている。
【0024】
図1(b)に示すように、吸着装置5の本体部50の吸着側の部分には、基板10を冷却する冷却用空間51が設けられている。
【0025】
そして、吸着装置5の本体部50内には、冷却用空間51と連通して当該空間に冷却用ガスを導入するガス導入孔(図示せず)が設けられている。
【0026】
本発明では、冷却用ガスとして、例えばアルゴン(Ar)ガス、窒素(N
2)ガス、ヘリウム(He)等の希ガスを用いることができる。
【0027】
冷却用空間51は、本体部50の吸着側の部分に凹部を形成することによって設けられ、吸着装置5上に吸着された基板10の下面と対向するように配置されている。
【0028】
吸着装置5の本体部50には、冷却用空間51に連通し且つ本体部50を貫通してステージ4に到る複数の貫通ガイド孔52が設けられている。
【0029】
これら貫通ガイド孔52の内部には、貫通ガイド孔52を介して基板10を支持して昇降させることにより基板10を吸着装置5上に載置し又は基板10を吸着装置5から離脱させるための昇降部材15がそれぞれ設けられている。
【0030】
貫通ガイド孔52は、鉛直方向に延びるように形成されたガイド部53を有し、貫通ガイド孔52の上端部には、冷却用空間51と連通する収容部54が設けられている。
【0031】
そして、貫通ガイド孔52のガイド部53と収容部54との間には、後述する昇降部材15のシール位置決め部15dと対向し、収容部54からガイド部53に向って内径が小さくなるように形成されたテーパ状の支持壁部55が設けられている(
図2(b)参照)。
【0032】
本実施の形態の昇降部材15は、例えばステンレス等の金属材料からなるもので、鉛直方向に延びるように形成され駆動機構16(
図1(a)参照)に連結された円柱状のシャフトからなる連結部15aと、この連結部15aの上端部に設けられ基板10を支持する円柱状の基板支持部15bとを有している。
【0033】
昇降部材15は、基板10を支持しない状態において、基板支持部15bが貫通ガイド孔52の収容部54内に配置されるとともに、連結部15aが貫通ガイド孔52のガイド部53内に配置されるように構成されている。
【0034】
本実施の形態の昇降部材15は、一体的に形成され、例えば
図2(a)に示すように、連結部15aの外径が基板支持部15bの外径より小さくなるようにそれぞれの寸法が設定されている。
【0035】
ここで、基板支持部15bの連結部15a側の部分には、連結部15aに向って外径が小さくなるようにテーパ状に形成されたシール位置決め部15dが設けられ、このシール位置決め部15dの連結部15a側の部分に、連結部15aより小径の円柱状の溝部15eが設けられている。
【0036】
そして、昇降部材15の連結部15aと基板支持部15bとの間に、貫通ガイド孔52の収容部54をガイド部53に対して密閉するOリング17(シール部材)が設けられている。
【0037】
本実施の形態のOリング17は、昇降部材15の溝部15eの外径より若干小さな内径を有し、かつ、基板支持部15bの外径より小さい外径を有するように形成されている。
【0038】
そして、Oリング17を昇降部材15に取り付けた場合に、Oリング17が上述したシール位置決め部15d及び溝部15eに密着するとともに、連結部15aの上部の面15fに接触するように、シール位置決め部15d、溝部15e及び連結部15aの上部の面15fの形状と寸法が設定され、またOリング17の寸法が設定されている。
【0039】
さらに、
図2(b)に示すように、Oリング17は、昇降部材15を貫通ガイド孔52内に配置した場合に貫通ガイド孔52の支持壁部55と密着するように、Oリング17の寸法並びに貫通ガイド孔52の支持壁部55の形状及び寸法が設定されている。
【0040】
なお、本実施の形態の昇降部材15は、基板支持部15bの上面に、例えば樹脂やゴム等の弾性部材からなる平板状の保護部材15cが装着されている。
【0041】
この保護部材15cは、
図2(d)に示すように、昇降部材15によって基板10を支持した場合に、基板10の裏面に傷をつけず、また、ESD(剥離帯電)等の問題を発生させない役割を果たすためのものである。
【0042】
以上述べた本実施の形態の吸着装置5では、昇降部材15の連結部15aと基板支持部15bとの間にシール部材としてOリング17が設けられ、このOリング17を貫通ガイド孔52に設けた支持壁部55と密着させて支持することで貫通ガイド孔52の収容部54をガイド部53に対して密閉するようにしたことから、冷却用ガスを用いて基板10の冷却を行う場合に、冷却用空間51に導入された冷却用ガスが貫通ガイド孔52のガイド部53側に漏れることを防止でき、これにより基板10の冷却効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、昇降部材15側にOリング17を設けることによって、貫通ガイド孔52の内径をできるだけ小さくすることができ、これにより吸着部分の有効面積を犠牲にすることなく冷却用ガスが貫通ガイド孔52のガイド部53側へ漏れることを確実に防止することができる。
【0044】
このように、本実施の形態の吸着装置5によれば、基板の冷却効率が高いコンパクトな構成の真空処理装置1を提供することができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、昇降部材15が、その自重によってOリング17が貫通ガイド孔52の収容部54の支持壁部55と密着するように構成されていることから、Oリング17を収容部54の支持壁部55に押し付ける構成が不要になり、その結果、簡素な構成の吸着装置並びに真空処理装置を提供することができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。
【0047】
例えば、上記実施の形態では、昇降部材15にテーパ状のシール位置決め部15dを設けるとともに、貫通ガイド孔52にテーパ状の支持壁部55を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、例えば昇降部材15のシール位置決め部15d及び貫通ガイド孔52の支持壁部55を、昇降部材15及び貫通ガイド孔52の長手方向と直交するように設けることもできる。
【0048】
さらに、本発明はスパッタリング装置のみならず、例えば蒸着装置やエッチング装置等の種々の真空処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…スパッタリング装置(真空処理装置)
2…真空槽
3…ターゲット
4…ステージ
5…吸着装置
10…基板
11…吸着電極
15…昇降部材
15a…連結部
15b…基板支持部
15c…保護部材
15d…シール位置決め部
15e…溝部
15f…上部の面
16…駆動機構
17…Oリング(シール部材)
50…本体部
51…冷却用空間
52…貫通ガイド孔
53…ガイド部
54…収容部
55…支持壁部