特許第6972400号(P6972400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972400
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】小麦粉製品及びこれを用いた食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20211111BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20211111BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20211111BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20211111BHJP
   A23L 23/10 20160101ALI20211111BHJP
   A21D 13/41 20170101ALI20211111BHJP
【FI】
   A23L7/10 H
   A21D2/36
   A21D13/80
   A23L7/109 C
   A23L23/10
   A21D13/41
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-16087(P2021-16087)
(22)【出願日】2021年2月3日
(65)【公開番号】特開2021-122275(P2021-122275A)
(43)【公開日】2021年8月30日
【審査請求日】2021年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2020-16979(P2020-16979)
(32)【優先日】2020年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美恵子
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 祐希
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−229832(JP,A)
【文献】 特開平04−011857(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2018−0018057(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有するパフ小麦粉を用いる、菓子類、麺類、調味料類、パン類又は粉物料理類である、食品。
【請求項2】
パフ小麦粉ではない小麦粉をさらに用いる食品であって、用いられる小麦粉全体の重量に対して1重量%〜50%の量でパフ小麦粉を含む組成物から得られる、請求項に記載の食品。
【請求項3】
強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有する、パフ小麦粉を組成物に含有させることを含む、菓子類、麺類、調味料類、パン類又は粉物料理類である食品の食感を向上させる方法。
【請求項4】
菓子類、麺類、調味料類、パン類又は粉物料理類である食品の食感を向上するための、強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有するパフ小麦粉の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉製品及びこれを用いた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉はパン類、菓子類、麺類、揚げ物類、調味料類、粉物料理類といった食品に汎用される食材である。
これらの食品においては、他の食品と同様に食感を向上するために各種の添加剤が用いられる。
【0003】
小麦粉を用いた食品のうち、例えばパン類の食感の低下に対処するための技術として、乳化剤や加工澱粉といった添加剤を添加して品質の低下を防ぐといった方法が知られている。
【0004】
また、特許文献3にはパフ現象を伴いながら焙煎した小麦を用いた小麦粉を用いたパンについての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−11857号公報
【特許文献2】特開2006−025678号公報
【特許文献3】特開2005−229832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり従来技術においては、乳化剤や加工澱粉といった添加剤の添加により小麦粉を用いた食品類の品質を保つ試みはなされている。しかしながら、小麦粉を用いた食品類の原料に添加剤を使用した場合は、食品表示関連法規の規定に基づき、原材料にこれら添加剤の表示が必須となる。近年、例えば「乳化剤不使用」と表示されたパンに、実は乳化剤と同じ成分が入っている報告がされており、パン製造業界や添加物表示を見直す政府の検討会においても、「無添加」や「不使用」の表示に関する是非が論点となっている。
このような背景から、品質を保つために先行技術を利用した小麦粉を用いた食品類は「無添加」や「不使用」を謳うことが難しく、天然志向、自然志向の消費者に対しては訴求力が弱い。そのため添加剤を用いない小麦粉を用いた食品への需要は常に存在する。
このような背景のもと、本発明においては、添加剤の使用量が低減されているにもかかわらず食感が向上した、小麦粉を用いた食品類を製造するための技術を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明者は上記のような技術について検討したところ、小麦粉を用いた食品類に用いる素材として、これまで優位性が知られていなかった特定の素材を用いることにより上記課題が解決できる可能性があることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも下記の各発明に関する:
[1]
強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有する、小麦粉。
[2]
パフ小麦粉である、[1]に記載の小麦粉。
[3]
菓子類、麺類、調味料類、パン類、粉物料理類又は揚げ物類に用いられる[2]に記載のパフ小麦粉。
[4]
4700cp〜5900cpの粘度を有する[3]に記載のパフ小麦粉。
[5]
7.5重量%〜11.3重量%のタンパク含量を有する[3]又は[4]に記載のパフ小麦粉。
[6]
[2]〜[5]のいずれかに記載のパフ小麦粉及びパフ小麦粉でない小麦粉を含む小麦粉製品。
[7]
強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有するパフ小麦粉を用いる食品。
[8]
パフ小麦粉ではない小麦粉をさらに用いる食品であって、用いられる小麦粉全体の重量に対して1重量%〜50%の量でパフ小麦粉を含む組成物から得られる、[6]に記載の食品。
[9]
菓子類、麺類、調味料類、パン類、粉物料理類又は揚げ物類である、[6]又は[7]に記載の食品。
[10]
強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有する、パフ小麦粉を組成物に含有させることを含む、食品の食感を向上させる方法。
[11]
食品の食感を向上するための、強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有するパフ小麦粉の使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、添加剤の使用量が低減されているにもかかわらず食品の食感を向上する小麦粉、とくにパフ小麦粉が提供される。
同パフ小麦粉は、菓子類、麺類、調味料類、パン類、粉物料理類又は揚げ物類、といった広範な種類の食品に用いることができるといった効果を奏する。
同パフ小麦粉のうち、4700cp〜5900cpの粘度を有するもの、又は7.5重量%〜11.3重量%のタンパク含量を有するものによれば、上記食品の食感をより確実に付与することができるという効果を奏する。
また本発明のパフ小麦粉を、用いられる小麦粉全体の重量に対して1重量%〜50重量%の量で含む組成物(生地)を用いることにより、食品類の食感をより確実に付与することができるという効果が奏される。
【0009】
パフ小麦粉は、唐揚げ粉やてんぷら粉に用いることが知られている(特許文献1又は2)。前記唐揚げ粉においては唐揚げにクリスピーな食感を付与するに留まるものであり、前記てんぷら粉は、てんぷらの花咲きを向上する効果を奏するとされている。
一方、パフ小麦粉として薄力粉又は強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有するものは知られていないし、かかるパフ小麦粉を菓子類、麺類、調味料類、パン類、粉物料理類又は揚げ物類といった食品にも用いることについても知られていない。
本発明においては、パフ小麦粉は、揚げ物のクリスピー感や好ましい外観を与えるために用いられるのみならず、柔らかい食感を有することが好ましい食品における柔らかい食感を向上するためのものである。パフ小麦粉がかかる食品類における柔らかい食感を向上することは、従来技術からは予測することができなかった効果である。
さらに、本実施形態の小麦粉を用いた食品であれば原材料名に添加物の表示が不要なため、自然志向、天然指向の消費者に対し付加価値を訴求できるといった効果も奏される。
【0010】
理論に拘泥するものではないが、本発明の小麦粉は強力粉の吸水率の4.5倍以上の高い吸水率を有するため吸水力が高く、小麦粉が用いられる食品に用いられた際に通常の小麦粉より多い量の水を抱き込むことにより、食品における水分又は油分を保持し、パサつかない柔らかさ、くちどけのよさ、なめらかさ、あるいはカリカリ及び/又はサクサクとした軽さといった、優れた食感を付与・向上する効果を奏する可能性がある。
とくに本発明の小麦粉のうちパフ小麦粉においては、以下の物理的な特性や化学的な特性が単独で、又は複合的に作用することにより、上記の優れた食感を付与・向上する効果を奏する可能性がある:
1.膨化によるポーラスな組織(かさ密度及び粒度が小さくなり、保水性・保油性に寄与)
2.でん粉のα化、及びでん粉粒の構造変化(損傷でん粉の度合いの変化に寄与)
3.グルテンなどのタンパク質の変性
さらに小麦原料臭の低減(香りが食感にも影響する共感覚性の影響)、及び低水分性(より多くの水分や油分の保持に寄与)による作用も、上記パフ小麦粉が奏する効果に寄与している可能性がある。
本発明の小麦粉のうちパフ小麦粉は、パフ加工を経ているため吸水力及び吸油力が確実に担保され、また、保水性・保油性に優れる。
なお、特許文献3に記載されている焙煎小麦粉は、少なくとも、パフ化前に水に浸漬させること、加熱処理は常圧であること、及び焙煎するといった製造方法に起因して、本発明の小麦粉とは吸水率やα化度が異なる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明についてさらに説明する。
食品の「食感」とは一般に食品を食した際に感じられる固い、柔らかい、しっとりしている、といった感覚である。各食品の食感に関する評価用語は、早川の食感用語に体系化に関する方法(早川文代、日本語テクスチャー用語の体系化と官能評価への利用、日本食品科学工学会誌、60(7)、311-322 (2013))を参考に設定した。
本発明における食品の「食感」のうち、柔らかさを有することが好ましい食品においては、喫食時の力学的特性のうち変形のしやすさを示す感覚である。かかる食品において「食感」が「向上する」とは、同食品における喫食時の柔らかさが、本発明の小麦粉を用いることにより増大することを意味する。かかる食品には例えば、麺類、パン類、及び粉物料理類が包含される。
【0012】
本発明における食品の「食感」のうち、クッキー類においては喫食時のくちどけの良さである。本発明における食品のうちクッキー類において「食感」が「向上する」とは、クッキー類における喫食時の幾何学的特性のうちなめらかさとくちどけ及び/又は水分・油脂に関する特性のうち油脂のくちどけに属する感覚であり、本発明の小麦粉を用いることにより増大することを意味する。
本発明における食品の「食感」のうち、揚げ物類やクラッカー類においては喫食時のカリカリ及び/又はサクサクとした軽さである。本発明における食品のうち揚げ物類やクラッカー類において「食感」が「向上する」とは、揚げ物類やクラッカー類における喫食時の力学的特性のうち、切れやすさ・破砕や折れやすさに属する感覚であり、本発明の小麦粉を用いることにより増大することを意味する。
本発明における食品の「食感」のうち、調味料類においては喫食時の自然ななめらかさである。本発明における食品のうち調味料類において「食感」が「向上する」とは、調味料類における喫食時の幾何学的特性のうちなめらかさと細かさに属する感覚であり、本発明の小麦粉を用いることにより増大することを意味する
本発明における食品の「食感」のうち、パン類・ケーキ類においては喫食時のしっとり感及び又はもちもち感である。本発明における食品のうちパン類・ケーキ類において「食感」が「向上する」とは、パン類・ケーキ類における喫食時の力学的特性のうちほどよい噛み応えのある弾力に属する感覚であり、本発明の小麦粉を用いることにより増大することを意味する。
【0013】
本発明における食品の「食感」には、例えば以下のものが包含される:
・菓子類(例:クッキー・クラッカー類、ケーキ類)における、くちどけの良さ及び/又はカリカリ(カリッ)とした軽さ
・麺類における、柔らかさ及び/又は歯切れの良さ
・調味料類(ソース・たれ類)における、自然ななめらかさ
・パン類・ケーキ類における、しっとり感及び/又はもちもち感(もちっ)及び/又は柔らかさ
・粉物料理類(お好み焼き・たこ焼き類)における、柔らかさ
・揚げ物類(バッター粉を用いる唐揚げ・天ぷら類)における、カリカリ(カリッ)及び/又はサクサクとした軽さ
【0014】
本発明において「パフ小麦粉」とは、内部に多数の細孔を有する(パフ化された/膨化された)小麦を粉砕して得られる小麦粉を意味する。小麦粉とは、小麦を挽いて作った穀粉である
【0015】
本発明のパフ小麦粉を含む食品は、パフ小麦粉をパフ小麦粉でない通常の小麦粉に適量に添加したり、通常の小麦粉の一部を代替してなる生地を焼成して得られる食品である。
【0016】
●本発明の小麦粉及びパフ小麦粉
本発明の小麦粉は、強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有する小麦粉であり、パフ小麦粉であるものは保水性及び/又は保油性に優れ、また微生物汚染も少ないため好ましい。なお、上記パフ小麦において微生物汚染が少ないのは、パフ小麦における水分活性が約0.05と小さいからである。
本発明の小麦粉又はパフ小麦粉のうち、吸水率が薄力粉の6倍以上であるものは好ましく、7倍以上であるものはより好ましい。
本発明の小麦粉のうち、パフ小麦粉であって、吸水率が薄力粉の7倍以上であり、かつ強力粉の4.5倍以上であるものは好ましく、薄力粉の7倍以上であり、かつ強力粉の4.6倍以上であるものはより好ましい。
【0017】
本発明の小麦粉のうち、例えばパフ小麦粉における吸水率は約3.5以上である。これに対し一般的な薄力粉及び強力粉の吸水率はそれぞれ約0.5及び約0.7である。したがって本発明の小麦粉のうち、パフ小麦粉は好ましい。
本発明の小麦粉のうち、吸水率が3.7以上であるパフ小麦粉はより好ましい。
【0018】
本発明における「吸水率」とは、例えば以下の方法により測定される物性である:
・粉体に所定の量(例えば5〜10倍量)の水を加える。
・粉体を十分に水に溶解させ、溶解後所定時間(例えば30分間〜60分間)静置する。
・得られた粉体の水溶液を所定の回転数、時間及び温度(例えば2500rpm、10分、4℃)において遠心分離する。
・上澄みを捨て、沈殿量を測定する。
・計算式:
(沈殿量(g)−最初に加えた粉体の量(g))/最初に加えた粉体の量(g)
により得られる数値を吸水率とする。
【0019】
本発明のパフ小麦粉の粘度は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。本発明のパン類において用いられるパフ小麦粉の粘度は、4700cp〜5900cpが例示される。粘度はパフ小麦粉に5.5倍量の水を加え十分に均質化した溶液を、15℃にて、B型粘度計によって計測(測定条件:No.3ローター、10rpm)した粘度である。かかる粘度を有するパフ小麦粉を食品に用いることにより、食品の食感が向上するため好ましい。
本発明の小麦粉又はパフ小麦粉のうち、粘度が4700cp〜5700cpであるものは好ましい。粘度を4700cp以上にすることにより、食パンのような食品に好ましい歯切れが付与され、粘度を5700cp以下にすることにより好ましいもちもち感が前記食品に付与される。
【0020】
本発明のパフ小麦粉のタンパク含量は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。
本発明のパフ小麦粉のうち、乾燥固形分あたり7.5重量%〜11.3重量%のタンパク含量を有するものは、食品の製造を行いやすいため好ましい。
【0021】
本発明のパフ小麦粉が用いられる食品は限定されず、菓子類、麺類、調味料類、パン類、粉物料理類又は揚げ物類が例示される。
【0022】
本発明のパフ小麦粉は、食品の製造に通常用いられる小麦粉(薄力粉、中力粉又は強力粉等)とともに用いてることが好ましい。本発明のパフ小麦粉を薄力粉、中力粉又は強力粉等の食品の製造に通常用いられる小麦粉とともに含んでなる組成物を本明細書においては小麦粉製品と称することがある。
本発明の小麦粉製品のうち、本発明のパフ小麦粉の小麦粉全体に対する割合は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。
本発明の小麦粉製品には、さらに米粉やコーン粉といった小麦粉以外の穀物粉を、本発明の所期の効果が奏される範囲で含んでよい。
【0023】
本発明のパフ小麦粉のα化度は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。本発明のパン類において用いられるパフ小麦粉のα化度として、60%以上が例示され、パフ小麦粉としてα化度が70%以上であるパフ小麦粉を用いる本発明のパン類は好ましい。
【0024】
本発明のパフ小麦粉の最大粒径やメディアン径は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。
本発明のパフ小麦粉の粒径として、最大粒径500μm未満及び/又はメディアン径20〜120μmが例示される。最大粒径を500μm未満及び/又はメディアン径20〜120μmとすることにより、パンのような食品に用いた際の他の粉成分とのなじみをよくし、食感のよさ(滑らかさ)を好適に保つことができる。本発明のパフ小麦粉の粒径として、メディアン径20〜100μmはより好ましく、メディアン径20〜70μmは一層より好ましい、メディアン径20〜40μmはさらにより好ましい。 前記最大粒径及びメディアン径を測定する方法は限定されず、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた粒子径解析−レーザ回折・散乱法(ISO13320、ISO9276、JISZ8825:2013)など本技術分野における通常の方法により行ってよい。
また、粒度を規定する特徴は、最大粒径やメディアン径に加え、他の粒子特性を特徴付けるものであってもよい。
そのような粒子特性(粒子平均)としては、
アスペクト比、表面積、最大長、最大垂直長、周囲長、包絡周囲長、円相当径、円形度、凹凸度など
が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のパフ小麦粉のかさ密度は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。本発明のパフ小麦粉のかさ密度として、膨化度が約1.5〜約3.5の場合、300〜450g/L(緩密度)、及び550〜760g/L(緩密度)が例示される。
前記緩密度及び密密度を測定する方法は限定されず、POWDER TESTER(TYPE PT-E SERNo.911402、ホソカワミクロン株式会社製)を用いる方法などの本技術分野における通常の方法により行ってよい。
【0025】
本発明のパフ小麦粉のうち、保油性が高いものは揚げ物類(バッター粉を用いる唐揚げ・天ぷら類)への適用が好ましくなされる。
また本発明のパフ小麦粉のうち、組成物の粘度を付与・向上するものは、菓子類(ケーキ、クッキー等)、麺類、調味料類、粉物料理類(たこ焼き、お好み焼き等)、パン類等への適用が好ましくなされる。
【0026】
本発明の小麦粉又はパフ小麦粉の製造方法は限定されず、従来技術による製造方法を用いてよい。
本発明のパフ小麦粉の製造における膨化処理を行う場合の温度や圧力等の条件は、使用する装置に応じ適宜設定してよく、例えば、気流加熱方式による膨化食品製造装置(特公昭46−34747号参照)を使用する場合においては、ゲージ圧力4〜7kg/cmの範囲で、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い加熱水蒸気を用いて、原料である小麦を数秒間加圧加熱すればよい。
【0027】
なお、本発明により、食品の食感を向上するためのパフ小麦粉の使用方法も提供される。すなわち、本発明の方法は、パフ小麦粉を通常の小麦粉に配合して用いることにより食品の食感を向上を増強し維持する、パフ小麦粉の使用方法である。
【0028】
●食品
本発明の食品は、強力粉の吸水率の4.5倍以上の吸水率を有する小麦粉、とくにパフ小麦粉、を用いた、
・そのまま喫食される食品、又は
・かかる食品を調製するための組成物(プレミックス粉及び生地などの半完成品、ならびに焼成や茹でなどの加熱工程を経ていない中間製品等)である。
前記中間製品には、お惣菜の素のような、同中間製品自体にさらに具材を追加して調理した後に食されることが企図されているものも包含される。
本発明の食品のうち、上記そのまま喫食される食品(以下において単に「本発明の食品」と記載することがある)の種類は限定されず、菓子類(ケーキ、クッキー等)、麺類、調味料類、粉物料理類(たこ焼き、お好み焼き等)、パン類及び揚げ物類(バッター粉を用いる唐揚げ・天ぷら類)、が例示される。
パン類としては食パン、イギリスパン、フランスパン、ライ麦パン、デニッシペストリー、イングリッシュマフィン、フォカッチャ、コッペパン、ロールパン、クロワッサン、菓子パン、調理パン、ピザ、パイ、ピタ、ナン、蒸しパン、ドーナッツ、ワッフル、パイなどが例示される。
本発明のパン類として、焼成後の成形性や柔らかさを商品価値とするもの、スライスした状態で提供される食パン、イギリスパン、フランスパンなどのパン類は、本発明の効果がより効率よく奏されるため好ましい。
【0029】
本発明のパフ小麦粉に用いられる小麦の種類は、本発明の所期の効果が奏されるものであれば限定されない。このような小麦として、軟質小麦、中間質小麦、硬質小麦などが例示される。
【0030】
本発明の食品のうち、小麦粉全体の重量に対して本発明のパフ小麦粉を1重量%〜50重量%の量で含む組成物(生地)から得られる食品は食感が向上し、さらに5重%重量〜20重量%は作業性がよく焼成後の膨らみや食感がより優れるため一層好ましい。
パフ小麦粉の重量/小麦粉全体の重量を(A)とし、全生地の水分含量を(B)とした場合、(A)/(B)の値が約0.1以上の生地を用いて食品を製造することは好ましい。かかる食品においては、食感を向上する効果が一層明瞭に奏されるからである。
【0031】
本発明の食品における、小麦粉全体の重量に対する本発明のパフ小麦粉の重量割合として以下の重量割合が例示される:
・菓子類(例:クッキー・クラッカー類):5重量%〜40重量%
・麺類:5重量%〜20重量%
・調味料類(ソース・たれ類):2重量%〜10重量%
・パン類・ケーキ類:5重量%〜40重量%
・粉物料理類(お好み焼き・たこ焼き類):5重量%〜20重量%
・揚げ物類(バッター粉を用いる唐揚げ・天ぷら類):1重量%〜20重量%
【0032】
本発明によれば、これらの食品の材料となる、パフ小麦とともにパフ小麦粉ではない小麦粉をさらに用いる小麦粉、及び用途に応じてかかる小麦粉にさらなる食品素材を加えたプレミックス粉も与えられる。かかるプレミックス粉としてケーキミックス、ホットケーキミックス、お好み焼き粉、たこ焼き粉、唐揚げ粉、天ぷら粉などが例示される。
これらのプレミックス粉の製造方法は限定されず、本技術分野において通常用いられる方法において、通常用いられる小麦粉に対して所定の割合の本発明の小麦粉を配合して製造してよい。
【0033】
本発明の食品の製造方法は限定されない。例えば本発明の菓子類(ケーキ、クッキー等)、麺類、調味料類、パン類、粉物料理類(たこ焼き、お好み焼き等)及び揚げ物類(バッター粉を用いる唐揚げ・天ぷら類)は、それぞれ自体公知の方法により製造してよい。
【0034】
本発明の食品の製造方法は、以下の材料・工程を含むものであってよい:
・菓子類(例:クッキー・クラッカー類):それぞれ所定量の、本発明の小麦粉、薄力粉、卵黄、食塩、砂糖、バター及び水等(クッキーの場合)、又は本発明の小麦粉、薄力粉、食塩、及びサラダ油等(クラッカーの場合)を混和し、オーブンで焼成する。
・麺類(例:うどん):それぞれ所定量の、本発明の小麦粉、中力粉、食塩、打ち粉(中力粉)及び水等を混練した後寝かせた後、延展して適宜の太さに切る。
・調味料類(例:ホワイトソース):それぞれ所定量の、本発明の小麦粉、薄力粉、バターを、弱火でバターを煮とかしながらからめペースト状にし、牛乳、塩を加えてホワイトソースを得る。
・パン類・ケーキ類(例:ピザ):それぞれ所定量の、強力粉、本発明の小麦粉、バター、砂糖、スキムミルク、食塩、水及びドライイーストを混練し発酵させた後、丸めてから円盤状に延ばし、オーブンで焼成してピザを得る。
・粉物料理類(例:お好み焼き):それぞれ所定量の、中力粉、本発明の小麦粉、卵及び水と、所望により米粉を刻んだ野菜類及びその他の食材とともに混和し、延展して両面を焼成してお好み焼きを得る。
・揚げ物類(例:唐揚げ・天ぷら):唐揚げについては、それぞれ所定量の、薄力粉、本発明の小麦粉及び水を、塩、こしょう、しょうが、にんにく、酒、醤油とともに混和し、鶏肉に被覆して油調して唐揚げを得る。
天ぷらについては、それぞれ所定量の、薄力粉、本発明の小麦粉及び水を混和してバッター液を得て、予め打ち粉(薄力粉)をまぶした食材を前記バッター液に漬けた後油で揚げて天ぷらを得る。
【0035】
本発明の食品のうち、パン類である食パンの製造においては、通常の小麦粉と前記パフ小麦粉とを混合し、該混合物に砂糖、食塩、イーストフード、ショートニング、生イースト等の副材料を添加し、水とともに混捏してパン生地を調製にする。かかるパン生地を本技術分野における通常の方法により醗酵させ、焼成することにより本発明の食パンを製造してよい。また、最終的なパン生地を得た後、常法により一次発酵、分割、成型、二次発酵、焼成の工程を経て食パンを製造してよい。
その他のパン類についても、上記の食パンの製造方法に準じて、各種パン類の通常の製造方法により製造してよい。
【0036】
より具体的には、以下の工程を含む製造方法であってよい:
(a)パフ小麦粉を小麦粉全体の重量に対して1重量%〜50重量%の量で含む組成物を調製する工程;
(b)工程(a)において得られる組成物を食品に調製して食品を得る工程。
また、本発明の食品の製造方法として、(A)/(B)の値が0.1以上の組成物を用いる方法は好ましい。かかる製造方法により製造される食品においては、食感の向上についての効果が一層明瞭に奏されるからである。
なお、上記式において(A)及び(B)はそれぞれ下記の意味を有する:
(A):パフ小麦粉の重量/小麦粉全体の重量
(B):組成物の水分含量。
【0037】
食品の食感を向上させる方法
本発明は食品の食感を向上させる方法も提供するところ、該方法はパフ小麦粉を食品の生地に含有させることを含む、食品のしっとり感を向上させる方法である。該方法によれば、食品の生地を調製するいずれかのタイミングにおいてパフ小麦粉を他の材料と配合して生地を得て、該生地を用いて得られる食品におけるしっとり感を向上させることができる。
該方法に用いられるパフ小麦粉、生地を調製する方法、及び食品を製造する方法等については、上記した事項をそれぞれに適用してよい。
【実施例】
【0038】
以下に具体的な例により本発明をより詳細に説明するが、これは如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
[実施例1]菓子類(1)(クッキー)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのクッキーを製造した。パフ小麦粉として、下記の製造条件により実機にて製造したものを用いた:
小麦を、膨化食品製造装置(特公昭46−34747号公報記載)を用いて、ゲージ圧力4〜7kg/cm、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い過熱水蒸気により数秒間加熱し、これら膨化条件を調整することで本願発明のパフ小麦を得た。これを粉砕機で粉砕してパフ小麦粉(吸水率3.75)とした。なお、以下における「Ct」の表記はコントロールであることを示す。

【表1】
【0039】
Ct-1を対照とし、各サンプルについて、喫食時のくちどけの良さ(ほろほろ感)に関する食感、バターの風味、クッキーの表面のひび割れや焼成後の形くずれに関する成形性の評価を含む評価を3名の訓練されたパネルにより行った。
【0040】
<結果>
バターを増量したCt−2のクッキーは、Ct−1に比べ、喫食時のくちどけの良さが高くほろほろ感やバター風味は向上するが、焼成後のクッキー表面のひび割れや形くずれなどの成形性が劣っていた。一方、本発明のクッキーは、Ct−1およびCt−2に比べて、くちどけの良さやバター風味に優れ、ほろほろ感がさらに向上していた。また、Ct−2で製品上問題となっていた成形性について、本発明のクッキーではCt−2より表面のひび割れや形くずれが減少しており、Ct−1と同等以上の効果であった。
【0041】
[実施例2]菓子類(2)(クラッカー)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのクラッカーを製造し食感を確認した。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:

【表2】
【0042】
<結果>
パフ小麦粉を添加した試験区のクラッカーは、Ctに比べカリカリとした食感に優れ、また、成形性が向上していた。
【0043】
[実施例3]菓子類(3)(スポンジケーキ)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのスポンジケーキを製造した。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:
【表3】
【0044】
<結果>
パフ小麦粉を含む試験区のスポンジケーキは、他の試験区に比べて、口溶けにぐれ、また成形性も向上していた。
【0045】
[実施例4]麺類(うどん)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのクラッカーを製造し食感および成形性を確認した。用いたパフ小麦粉吸水率は3.75であった:
【表4】
【0046】
<結果>
パフ小麦粉を含む試験区は、Ctよりも柔らかさや歯切れの良さに優れ、かつ成形性も向上していた。
【0047】
[実施例5]調味料類(ホワイトソース)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのホワイトソースを製造し食感の調査行った。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:
【表5】
【0048】
<結果>
各サンプルについて食感の評価を3名の訓練されたパネルにより行ったところ、本発明のホワイトソースにおいては、Ctより自然ななめらかさに優れていた。
【0049】
[実施例6]パン類(ピザ)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのピザを製造し成形性を確認した。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:
【表6】
【0050】
<結果>
各サンプルについて食感の評価を3名の訓練されたパネルにより行ったところ、本発明のピザはCtより柔らかい良好な食感であった。
【0051】
[実施例7]粉物料理類(お好み焼き)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としてのお好み焼きを製造し成形性及び食感を確認した。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:
【表7】
【0052】
<結果>
各サンプルについて食感の評価を3名の訓練されたパネルにより行ったところ、本発明のお好み焼きはCtより柔らかい良好な食感であった。
【0053】
[実施例8]揚げ物類(1)(唐揚げ)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としての唐揚げを製造し食感を確認した。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:
【表8】
【0054】
<結果>
各サンプルについて食感の評価を3名の訓練されたパネルにより行ったところ、本発明の唐揚げはCtよりカリッとして軽い、良好な食感であった。
【0055】
[実施例9]揚げ物類(2)(天ぷら)
<材料と方法>
以下の配合及び作り方により本発明の食品としての天ぷらを製造し食感を確認した。用いたパフ小麦粉の吸水率は3.75であった:
【表9】
【0056】
<結果>
各サンプルについて食感の評価を3名の訓練されたパネルにより行ったところ、本発明の天ぷらは製造2時間後及び4時間後のいずれにおいてもCtよりカリッとサクサクした軽さが、良好な食感であった。
【0057】
[実施例10]パン類(食パン)
<材料と方法>
Ctの配合に対して、強力粉をパフ小麦粉に5重量%、10重量%、15重量%、20重量%置き換え、さらに下表に示す他の成分を添加してパン生地を調製し、それらのパン生地を用いて食パンを作製した。
水の量について、強力粉の量とは無関係に一定量(200g)を用いた区とともに、パフ小麦粉の含量に合わせて、Ctの水の量に一定割合で水を加えた区を設けた。
パン生地の組成は以下のとおりであった:
【表10】

パン生地の焼成にはホームベーカリー(SD-BH103-P、Panasonic製)を用い、食パンの早焼きコース、すなわち、ねり⇒ねかし⇒ねり⇒発酵⇒ねり⇒発酵⇒焼き、の工程を経て作製した。
食パンに焼き上がり後、取り出して1時間静置してあら熱をとり、ジッパー付きのポリエチレン製の袋に密閉し、常温で保存した。
作製された食パンのしっとり感及びもちもち感の評価を、3名の訓練された構成員からなる分析型官能評価パネル(訓練期間:2〜45年)により、製造1日後、製造2日後及び製造3日後に行った。
<評価方法>
各パンの評価は、以下の方法で実施した。官能評価におけるパネルのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプルは、各保存期間の焼成パンをスライサーで2.5cmにスライスし、クラスト(皮)を除き、クラム(内層)部分を一口大にカットし、これを官能評価に供した。その際、サンプルの試験区番号や配合組成はパネルに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。また、評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。官能評価の指標についても、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネル全体で事前に協議した上で設定した。
しっとり感及びもちもち感の評価は、製造1日後、製造2日後及び製造3日後の各Ctとの比較により行った。比較の指標は下記のとおりであり、「0」はCtと同程度であったことを示す:
【表11】
【0058】
パフ小麦粉として、下記の製造条件により実機にて製造したものを用いた:
小麦を、膨化食品製造装置(特公昭46−34747号公報記載)を用いて、ゲージ圧力4〜7kg/cm、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い過熱水蒸気により数秒間加熱し、パフ小麦を得た(吸水率3.75)。これを粉砕機で粉砕してパフ小麦粉(最大粒径500μm未満)とした。
【0059】
<結果>
結果は下表に示すとおりであった(各表における下段に記載した「しっとり感」及び「もちもち感」は各パネリストの評点の合計値)。本発明の食パンはいずれも、パフ小麦粉を含まない食パンより、いずれの調査日においてもしっとり感及びもちもち感が優れていた。
本発明の食パンにおいては、製造3日後においてもしっとり感及びもちもち感が良好であった。
また、試験区1及び試験区2以外のサンプルにおいては、製造時の作業性、焼成直後のパンの膨らみや柔らかさ、パンをスライスした断面のキメの細かさについても、本発明の食パンにおいて問題はなかった。
一方、試験区1は、焼成前の生地がべたつき、作業性が悪化し、キメが粗くなりパンが備えるべき品質が損なわれていた。また、試験区2は、試験区1と同等のしっとり感及びもちもち感であり、パフ化小麦粉を添加することによる食感の改善は見られなかった。
本試験に加え、強力粉をパフ小麦粉に30重量%および40重量%にそれぞれ置き換えたパン生地を調製し、これらパン生地を用いて食パンを作製した。その結果、試験区8に比べて食パンの膨らみは若干小さいものの、いずれも保存期間中のしっとり感は試験区8と同等の結果であり、食パンとしての品質を保持していた。
なお、パフ小麦粉の重量/小麦粉全体の重量を(A)重量%とし、全生地の水分含量を(B)重量%とし、(A)/(B)の値としっとり感又はもちもち感との関係をみると、(A)/(B)の値が大きいほうがしっとり感及びもちもち感は良好であった。また、(A)/(B)の値が0.132の場合にはしっとり感又はもちもち感が向上した一方、0.105の場合にはしっとり感及びもちもち感はいずれも向上しなかった(表15)。したがって、(A)/(B)の値が約0.1以上のパン生地から得られる本発明のパン類においては、所期の効果が一層明瞭に奏されると推察された。
【表12】

【表13】

【表14】

【表15】
【0060】
[参考試験例1]吸水性(吸水率)
[材料と方法]
本発明のパフ小麦粉、薄力粉及び強力粉の吸水率を測定した。
本発明のパフ小麦粉として、下記の製造条件により実機にて製造したものを用いた:
小麦を、膨化食品製造装置(特公昭46−34747号公報記載)を用いて、ゲージ圧力4〜7kg/cm、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い過熱水蒸気により数秒間加熱し、パフ小麦を得た。これを粉砕機で粉砕してパフ小麦粉とした。
薄力粉及び強力粉として、それぞれ市販のものを用いた。
【0061】
吸水性の測定は以下のようにして行った:
粉体(各小麦粉)3gに水30gを加える。
粉体:水=1:10の条件下で粉体を十分に水に溶解させ、溶解後30分間静置。
得られた粉体の水溶液をファルコンチューブに33g入れ(粉体を3gを含む量)、2500rpm、10分、4℃で遠心分離する。
上澄みを捨て、沈殿量を測定する。
計算式:
(沈殿量(g)−最初に加えた粉体の量(g))/最初に加えた粉体の量(g)
により、吸水率を求め吸水性とする。
試験は2回行った。
【0062】
<結果>
本発明のパフ小麦粉の吸水率は3.75であった。これに対し薄力粉及び強力粉の吸水率はそれぞれ0.5及び0.74であった。
【0063】
[参考試験例2]粒子径(メディアン径)
[材料と方法]
本発明のパフ小麦粉、薄力粉及び強力粉の粒子径(メディアン径)を測定した。
本発明のパフ小麦粉として、下記の製造条件により実機にて製造したものを用いた:
小麦を、膨化食品製造装置(特公昭46−34747号公報記載)を用いて、ゲージ圧力4〜7kg/cm、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い過熱水蒸気により数秒間加熱し、パフ小麦を得た。これを粉砕機で粉砕してパフ小麦粉とした。
薄力粉及び強力粉として、それぞれ市販のものを用いた。
【0064】
粒子径の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた粒子径解析−レーザ回折・散乱法(ISO13320、ISO9276、JISZ8825:2013)により3回行った。
試験は3回行った。
【0065】
<結果>
本発明の小麦粉(パフ小麦粉)のメディアン径は39.39μmであった。これに対し薄力粉及び強力粉のメディアン径はそれぞれ70.68μm及び72.27μmであった。
【0066】
[参考試験例3]かさ密度
[材料と方法]
本発明のパフ小麦粉として、下記の製造条件により実機にて製造したものを用いた:
小麦を、膨化食品製造装置(特公昭46−34747号公報記載)を用いて、ゲージ圧力4〜7kg/cm、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い過熱水蒸気により数秒間加熱し、パフ小麦を得た。これを粉砕機で粉砕してパフ小麦粉とした。
薄力粉及び強力粉として、それぞれ市販のものを用いた。
【0067】
かさ密度として、緩密度及び密密度を、POWDER TESTER(TYPE PT-E SERNo.911402、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて常法により測定した。
測定は3回行った。
【0068】
<結果>
それぞれの小麦粉のかさ密度は下表に示すとおりであり、本発明の小麦粉(パフ小麦粉)については、緩密度及び密密度のいずれについても薄力粉及び強力粉より小さかった:
【表16】
【0069】
[実施例11]吸水率の影響の検討
<材料と方法>
実施例10に準じて、パン類(食パン)に対する、小麦粉の吸水率の影響を検討する試験を行った。

下表に示すコントロール、実施例10における試験区4(パフ小麦粉25g)、実施例10における試験区8(パフ小麦粉50g)の配合に相当する配合を、それぞれCt、配合A、配合Bとした。
【表17】
これらの配合物を用いて、表18に示す各試験区を設定した。吸水率の異なる小麦粉は、実施例10において用いたパフ小麦粉と同じパフ小麦粉(吸水率3.75)と膨化前の剥皮小麦を粉砕したもの(吸水率0.60)とを、表18に示す吸水率になるように混合することにより調製した。
なお、強力粉(市販品)の吸水率は、0.75であった。
表18中の「パフ小麦粉」の表記は、上記吸水率の異なる小麦粉であることを示す。
【0070】
<評価方法>
実施例10と同じ方法を採用した。
【0071】
<結果>
下記表に示すとおりであった。試験区101および試験区105はそれぞれ、実施例10の試験区4および8と同様の試験条件(配合)による試験区である。
【0072】
【表18】
本発明の小麦粉(吸水率:3.4、3.8;それぞれ強力粉の4.5倍、5.0倍)を用いた食パンにおいては、比較例の小麦粉(吸水率1.8、2.6;それぞれ強力粉の2.4倍、3.5倍)を用いた食パンを上回る食感が、少なくとも3に日間維持された。
吸水率が同じ試験区同士を比較すると、配合Bを用いた試験区の方が、配合Aを用いた試験区より食感が優れていた。配合Bを用いた試験区においては、少なくとも、配合Aを用いた試験区に比較してパフ小麦粉の配合量が2倍であり(50gと25g)より多かったことにより、より良好な食感が得られたと推測される。
【0073】
[実施例12]粘度
<材料と方法>
実施例10に準じて、パン類(食パン)に対する、小麦粉の粘度の影響を検討する試験を行った。
粘度の異なる小麦粉は、膨化のゲージ圧および加熱条件を調整して調製した。
下表に示すコントロール(「Ct」)及び実施例11における配合Aを用いた。
【表19】
これらの配合物を用いて、表20に示す各試験区を設定した。吸水率の異なる小麦粉は、実施例10において用いたパフ小麦粉と同じパフ小麦(吸水率3.75)と膨化前の剥皮小麦を粉砕したもの(吸水率0.60)とを、表18に示す吸水率になるように混合することにより調製した。
なお、強力粉(市販品)の吸水率は、0.75であった。
表20中の「パフ小麦粉」の表記は、上記吸水率の異なる小麦粉であることを示す。
【0074】
<結果>
下記表に示すとおりであった。
本発明の小麦粉(粘度:4700cp、5700cp)を用いた食パンにおいては、比較例の小麦粉(粘度:3860cp、6400cp)を用いた食パンを上回る食感(もちもち感)が得られた。
なお、粘度が低い試験区203においては、食パンの歯切れも本発明の小麦粉(粘度:4700cp、5700cp)より悪かった。したがって、本発明の効果をより好適にするには、粘度を4700cp〜5900cpに調整することが望ましいと考えられた。
【表20】
【0075】
[実施例13]しっとり感の持続(焙煎小麦粉との対比)
[材料と方法]
コントロールの配合に対して、強力粉を本発明のパフ小麦粉(吸水率3.75)または焙煎小麦粉(吸水率3.28、対強力粉に対して4.4倍)に10重量%置き換え、さらに下表に示す他の成分を添加してパン生地を調製し、それらのパン生地を用いて食パンを作製した。
焙煎小麦粉の製造は特許文献2に記載の方法に従って行った。参考試験例1に示した方法と同様な方法により求めた当該焙煎小麦粉の吸水率は、上記のとおり、本発明において用いられるパフ小麦粉より低かった。
なお、焙煎小麦粉の粘度は検出限界(50cp)未満、メディアン径は171μmであり、これらの点においても、焙煎小麦粉は本願発明の小麦粉と相違する。
水の量について、強力粉の量とは無関係に一定量(200g)を用いた。
パン生地の組成は以下のとおりであった:
【表21】
パン生地の焼成にはホームベーカリー(SD-BH103-P、Panasonic製)を用い、食パンの早焼きコース、すなわち、ねり⇒ねかし⇒ねり⇒発酵⇒ねり⇒発酵⇒焼き、の工程を経て作製した。
食パンに焼き上がり後、取り出して1時間静置してあら熱をとり、ジッパー付きのポリエチレン製の袋に密閉し、常温で保存した。
作製された食パンのしっとり感及びもちもち感の評価を、3名の訓練された構成員からなるパネルにより、製造1日後、製造2日後、製造3日後及び製造4日後に行った。
しっとり感及びもちもち感の評価は、コントロールとの比較により行った。比較の指標は実施例1において用いた指標と同じ指標を用いた。
【0076】
[結果]
結果は下表に示すとおりであった。本発明の食パンはいずれも、コントロール及び焙煎小麦粉を含む食パンより、いずれの調査日においてもしっとり感及びもちもち感が優れていた。
本発明の食パンにおいては、製造4日後においてもしっとり感及びもちもち感が良好であり、すべての調査時点において焙煎小麦粉を使用した食パン及びコントロールを上回った。
製造時の作業性、焼成直後のパンの膨らみや柔らかさ、パンをスライスした断面のキメの細かさについても、本発明の食パンにおいて問題はなかった。
これに対し焙煎小麦粉を使用した試験区302は、焼成前の生地がべたつき、作業性が悪化し、キメが粗くなりパンが備えるべき品質が損なわれていた。このことは、焙煎小麦粉は、少なくとも、パフ化前に水に浸漬させること、加熱処理は常圧であること、及び焙煎するといった製造方法に起因して、本発明の小麦粉とは吸水率やα化度が異なることによると考えられた。
また、試験区302は焙煎小麦粉の粒径が大きいことによるざらつきや後味に残るえぐみも感じられた。
【表22】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば食品の食感を向上する小麦粉及び同小麦粉を用いた食感を向上した食品が提供される。
したがって本発明は、小麦粉製造産業及び食品産業の発展に寄与するところ大である。