(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0019】
本願明細書全体で使われる程度の用語「〜(する)ステップ」または「〜のステップ」は、「〜のためのステップ」を意味しない。
【0020】
本発明者らは、別途の接着剤を塗布せず、インサート射出などの加熱工法を使用しないながらも、多様な材料的物性を有する異種の素材を接合するための多様な方法を研究している途中、本発明に至るようになった。
【0021】
具体的には、本発明者らは、レーザを照射して、ガラス層の表面に1以上のエッチングラインを形成した後、前記ガラス層上に樹脂層を備え、前記樹脂層が備えられたガラス層側にレーザを照射し、前記樹脂層が備えられたガラス層側に照射されるレーザの方向および焦点を具体的に特定することにより、前記エッチングラインおよび前記ガラス層の表面に前記樹脂層が満たされて固定されるようにする異種素材接合体の製造方法に至った。
【0022】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0023】
本発明の一実施態様は、ガラス層の表面に第1レーザを照射して、前記ガラス層の表面に2以上のエッチングラインを形成するステップと、前記エッチングラインが形成されたガラス層上に樹脂層を備えるステップと、前記樹脂層が備えられたガラス層側に第2レーザを照射して、前記樹脂層が前記エッチングラインおよび前記ガラス層の表面に満たされて接合されるようにする接合ステップとを含み、前記ガラス層の1064nmの波長における光透過率に対する、前記エッチングラインが形成されたガラス層の1064nmの波長における光透過率は、40%以上98%以下であり、前記第2レーザは、前記ガラス層から前記樹脂層の方向へ、前記樹脂層と接する前記ガラス層の表面に焦点を合わせて照射されるものである異種素材接合体の製造方法を提供する。
【0024】
以下、前記製造方法の各ステップごとにより詳細に説明する。
【0025】
ガラス層の表面にエッチングラインを形成するステップ
【0026】
本発明の一実施態様によれば、前記異種素材接合体の製造方法は、ガラス層の表面に第1レーザを照射して、前記ガラス層の表面に2以上のエッチングラインを形成するステップを含む。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記ガラス層は、ホウケイ酸ガラス、鉛−アルカリガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、溶融シリカガラス、ゲルマニウム酸化物ガラス、ゲルマニウムセレン化物ガラス、熱強化ガラス、およびイオン強化ガラスのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0028】
具体的には、前記ホウケイ酸ガラスは、コーニング社の登録商標PYREXであるホウケイ酸ガラス(ケイ酸80%、ホウ酸分14%含有)であってもよく、また、前記熱強化ガラスは、板ガラス(plate glass)を熱圧処理した後、空気で急冷したものであってもよい。
【0029】
前記ガラス層がソーダライムガラスの場合、第1レーザの照射によってガラス層の表面に割れ(crack)が激しく形成される問題点が発生することがあり、これによって、製造された異種素材接合体は、引張時、ガラス層自体が破断する問題点が発生することがある。
【0030】
ただし、本発明の一実施態様に係るガラス層は、前述のように、ホウケイ酸ガラスおよび強化ガラスのうちの少なくとも1つを含むことにより、第1レーザの照射によるガラス層表面の割れ発生を最小化することができ、これによって、製造された異種素材接合体は、引張時、ガラス層自体が破断する問題点を解決することができる。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチングラインは、前記ガラス層の表面に2以上形成される。また、前記エッチングラインは、前記第1レーザの照射によってエッチングされた前記ガラス層の一領域を意味するものであってもよい。
【0032】
図1は、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法の模式図を示すものである。具体的には、前記ガラス層の表面にエッチングラインを形成するステップの模式図を
図1(a)に示した。
【0033】
図1(a)によれば、前記ガラス層の表面にエッチングラインを形成するステップは、前記ガラス層10側に第1レーザ100を照射して、前記ガラス層10の表面に2以上のエッチングライン11を形成することができる。さらに、前記第1レーザ100の照射によって形成された2以上のエッチングライン11は、
図1(a)のガラス層10の表面に相当する領域のうち実線で表した。
【0034】
また、本発明の一実施態様によれば、前記2以上のエッチングラインは、進行方向が異なる2以上の第1レーザの照射によって形成されるものであってもよい。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記2以上のエッチングラインは、離隔および/または交差するものであってもよい。具体的には、前記2以上の第1レーザの進行方向が平行な場合、前記2以上のエッチングラインは、互いに離隔して形成されるものであってもよく、前記2以上の第1レーザの進行方向が平行でない場合、前記2以上のエッチングラインは、互いに交差して形成されるものであってもよい。
【0036】
前記第1レーザの照射によって前記2以上のエッチングラインが前記ガラス層上に形成されることにより、この後、前記ガラス層の前記ガラス層上に備えられる樹脂層との接合力を向上させることができる。また、前記2以上のエッチングラインが交差する場合、前記ガラス層の表面には前記エッチングラインで取り囲まれた網パターンが形成される。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチングラインは、規則的な網パターンを形成することができる。例えば、前記網パターンは、円形、曲線形、三角形、四角形、またはハニカム(honeycomb)状のパターンであってもよい。前記ガラス層側に前述のような多様な形態の網パターンが形成されることにより、前記ガラス層上に備えられる樹脂層との接合力を向上させることができる。
【0038】
図2は、本発明の一実施態様によりエッチングラインが形成されたガラス層の表面図および側断面図を示すものである。具体的には、本発明の一実施態様によりエッチングラインが形成されたガラス層の表面図を
図2(a)に示した。
【0039】
図2(a)によれば、前記2以上のエッチングライン11が交差、具体的には、直交する場合、前記エッチングラインに沿って取り囲まれた網パターン12が前記ガラス層の表面に形成される。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、下記の接合ステップで説明するように、前記ガラス層の表面に形成された網パターンおよび前記エッチングラインに樹脂層が満たされて接合される。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記ガラス層の厚さは、1.5mm以上10mm以下、または2mm以上10mm以下であってもよい。前記範囲の厚さを有するガラス層に第1レーザを照射する場合、前記第2レーザの照射によるガラス層の強度の減少幅が少なく、この後、第2レーザを照射して樹脂層と接合する過程で樹脂層との接合力を向上させることができるという利点がある。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチングラインの前記ガラス層の表面からの深さは、10μm以上300μm以下、10μm以上260μm以下、30μm以上300μm以下、または30μm以上260μm以下であってもよい。前記エッチングラインの前記ガラス層の表面からの深さが前述した範囲内の場合、前記樹脂層が前記ガラス層の表面および前記ガラス層上のエッチングラインに十分に満たされ、これによって、前記異種素材の接合力を最大化することができる。具体的には、前記エッチングラインの前記ガラス層の表面からの深さを前述した範囲に調節することにより、前記ガラス層と樹脂層との円滑な接合が行われない問題、および前記ガラス層が破断して前記ガラス層と樹脂層との接合力が減少する問題を効果的に抑制することができる。
【0043】
ただし、前記エッチングラインの前記ガラス層の表面からの深さは、前記第1レーザの照射条件に応じて適宜調節可能である。
【0044】
本明細書において、用語「接合力」は、前記接合されたガラス層と樹脂層とを引き離すために必要な力を意味することができる。
【0045】
本発明の一実施態様によりエッチングラインが形成されたガラス層のエッチングラインに沿った側断面図を
図2(b)に示した。
図2(b)によれば、前記第1レーザの照射によって前記ガラス層10の表面に2以上のエッチング溝13が離隔して形成される。
【0046】
本明細書において、用語「エッチングラインのガラス層の表面からの深さ」は、前記エッチング溝13の一側末端から前記ガラス層10の表面までの垂直線の長さを意味するものであってもよい。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記2以上のエッチングラインのピッチ(pitch)は、50μm以上1,200μm以下、50μm以上1,000μm以下、50μm以上600μm以下、70μm以上1,200μm以下、70μm以上1,000μm以下、70μm以上600μm以下、100μm以上1,200μm以下、100μm以上1,000μm以下、または100μm以上600μm以下であってもよい。
【0048】
前記範囲で後の樹脂層の接合時、前記樹脂層が前記ガラス層の表面および前記ガラス層上のエッチングラインに十分に満たされ、これによって、前記樹脂層が前記ガラス層から容易に剥離されず、前記樹脂層と前記ガラス層との間の高い接合力を維持することができる。具体的には、前記2以上のエッチングラインのピッチを前述した範囲に調節することにより、第2レーザが重畳照射されて前記ガラス層上に形成された網パターンが損傷する問題、および第2レーザが十分に照射されず前記ガラス層と前記樹脂層との接合力が十分に確保されない問題を抑制することができる。
【0049】
ただし、前記2以上のエッチングラインのピッチは、前記照射される第1レーザの照射条件、エッチングラインが形成されるガラス層に含まれる成分および前記ガラス層の厚さに応じて適宜調節可能である。
【0050】
本明細書において、用語「エッチングラインのピッチ(pitch)」は、ガラス層の表面にエッチングラインが形成される場合、前記離隔したエッチングライン間の超短距離を意味することができる。
【0051】
また、本発明の一実施態様によれば、前記ガラス層の表面に2以上のエッチングラインが形成された後、第1レーザを追加的に照射して、前記ガラス層の表面に2以上の補強エッチングラインをさらに形成することができる。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、前記2以上の補強エッチングラインのピッチは、10μm以上100μm以下、10μm以上50μm以下、30μm以上100μm以下、または30μm以上50μm以下であってもよい。前記補強エッチングラインをさらに形成し、前記補強エッチングラインのピッチを前記範囲に調節することにより、前記ガラス層の樹脂層との接合力をさらに向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記エッチングラインの幅は、20μm以上100μm以下、20μm以上80μm以下、30μm以上100μm以下、または30μm以上80μm以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記照射される第1レーザの照射条件に応じて異なり、前記ガラス層に含まれる素材および前記ガラス層の厚さに応じて適宜調節されるものであってもよい。
【0054】
前記範囲で前記ガラス層に前記樹脂層が接合される場合、前記樹脂層が前記ガラス層の表面および前記エッチングラインに十分に満たされ、これによって、前記ガラス層と前記樹脂層との間の接合力を最大化することができる。
【0055】
本明細書において、用語「エッチングラインの幅」は、前記ガラス層の表面に形成された1つのエッチングラインの厚さ(thickness)または幅(width)を意味することができる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザは、ピコ秒パルスレーザであってもよい。
【0057】
本明細書において、用語「パルスレーザ」は、時間的に発振および停止があるレーザを意味することができる。
【0058】
本明細書において、用語「パルス幅」は、前記パルスレーザの立ち上がり時間と立ち下がり時間で振幅が半分になる時刻の間隔を意味することができる。
【0059】
本明細書において、用語「ピコ秒レーザ」は、パルス幅の単位が10
−12秒であるレーザを意味することができる。
【0060】
すなわち、本明細書において、用語「ピコ秒パルスレーザ」は、時間的に発振および停止があるレーザであって、前記レーザの立ち上がり時間と立ち下がり時間で振幅が半分になる時刻の間隔の単位が10
−12秒であるレーザを意味することができる。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記ガラス層に前記ピコ秒パルスレーザのような超短波のレーザが照射されることにより、前記ピコ秒パルスレーザの照射による前記ガラス層の損傷を最小化しながらも、前記ガラス層上に規則的な網パターンを形成するエッチングラインを形成することができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記ガラス層の表面に照射される第1レーザは、2以上の第1レーザが互いに離隔して前記ガラス層の表面に照射される。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの照射間隔は、50μm以上1,200μm以下、50μm以上1,000μm以下、50μm以上600μm以下、70μm以上1,200μm以下、70μm以上1,000μm以下、70μm以上600μm以下、100μm以上1,200μm以下、100μm以上1,000μm以下、または100μm以上600μm以下であってもよい。前記範囲において、前述したピッチを有するエッチングラインを前記ガラス層の表面に形成することができる。
【0064】
本明細書において、用語「レーザの照射間隔」は、離隔して照射されるレーザ間の最短距離を意味するものであってもよい。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの照射回数は、1回以上50回以下、または1回以上40回以下であってもよい。前記第1レーザの照射回数が前述した範囲内の場合、前記ガラス層の損傷を最小化しながらも、前記ガラス層上に規則的な網パターンを形成するエッチングラインを形成することができる。また、前記第1レーザの照射回数は、ガラス層の厚さおよびその物性に応じて適宜調節されるものであってもよい。
【0066】
本明細書において、用語「レーザの照射回数」は、レーザが同一領域に繰り返し照射される回数を意味することができる。すなわち、前記第1レーザの照射回数は、前記第1レーザが前記ガラス層の表面に形成された1つのエッチングラインに繰り返し照射される回数を意味することができる。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの出力は、10W以上50W以下、10W以上40W以下、30W以上50W以下、または30W以上40W以下であってもよい。前記第1レーザの出力が前述した範囲内の場合、前記ガラス層の損傷を最小化することができ、前記ガラス層および前記樹脂層の間の接合力を最大化することができ、前記ガラス層上に形成される網パターンを規則的に維持することができる。具体的には、前記第1レーザの出力を前述した範囲に調節することにより、前記ガラス層の表面にエッチングラインを形成するのに長い時間が必要で、この後、前記ガラス層表面の損傷の危険が発生する問題、前記第1レーザを照射できる装置の損傷が発生する問題を防止することができる。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの照射速度は、50mm/s以上500mm/s以下、50mm/s以上125mm/s以下、50mm/s以上100mm/s以下、75mm/s以上500mm/s以下、75mm/s以上125mm/s以下、75mm/s以上100mm/s以下、100mm/s以上500mm/s以下、100mm/s以上125mm/s以下、または100mm/sであってもよい。前記範囲において、前記ガラス層の損傷を最小化することができ、前記ガラス層および前記樹脂層の間の接合力を最大化することができ、前記ガラス層上に形成される網パターンを規則的に維持することができる。ただし、前記第1レーザの照射速度は、前記ガラス層の物性条件に応じて適宜調節可能である。
【0069】
本明細書において、レーザの「照射速度」は、照射されるレーザの一側末端から他側末端まで移動した距離を、照射された時間で割った値を意味することができる。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの繰り返し率は、100kHz以上300kHz以下であってもよい。前記範囲において、前記ガラス層の損傷を最小化することができ、前記ガラス層上に形成される網パターンを規則的に維持することができる。ただし、前記第1レーザの繰り返し率は、前記ガラス層の物性条件に応じて適宜調節されるものであってもよい。
【0071】
本明細書において、用語、レーザの「繰り返し率」は、照射されるレーザの単位時間あたりに被着体に繰り返し衝突する回数を意味することができる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記第1レーザの波長は、200nm以上600nm以下、200nm以上400nm以下、200nm以上360nm以下、300nm以上600nm以下、300nm以上400nm以下、300nm以上360nm以下、330nm以上600nm以下、330nm以上400nm以下、または330nm以上360nm以下であってもよい。前記範囲において、前記第1レーザの照射によって前記ガラス層にエッチングラインを形成する時、ガラス層の損傷を最小化することができる。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記ガラス層の1064nmの波長における光透過率に対する、前記エッチングラインが形成されたガラス層の1064nmの波長における光透過率は、40%以上98%以下であってもよい。
【0074】
具体的には、前記第1レーザが照射されない前記ガラス層の1064nmの波長における光透過率に対して、前記第1レーザの照射でエッチングラインが形成されたガラス層の1064nmの波長における光透過率は、40%以上98%以下であってもよい。前記範囲で後の第2レーザの照射時、前記第2レーザが十分に透過して前記樹脂層と前記ガラス層との円滑な接合が可能である。
【0075】
本明細書において、用語「光透過率」は、特定の波長を有する光(light)の被照射体に照射される光量に対する、前記被照射体を透過する光量の百分率を意味することができる。
【0076】
エッチングラインが形成されたガラス層上に樹脂層を備えるステップ
【0077】
本発明の一実施態様によれば、前記異種素材接合体の製造方法は、前記エッチングラインが形成されたガラス層上に樹脂層を備えるステップを含む。具体的には、前記樹脂層は、前記エッチングラインが形成されたガラス層の一面上に備えられるものであってもよい。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、前記樹脂層は、ポリプロピレン(Polypropylene;PP)樹脂、ポリアミド(Polyamide;PA)樹脂、ポリフェニレンオキシド(Polyphenylene Oxide;PPO)樹脂、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)[Poly(Acrylonitrile−butadiene−styrene);Poly(ABS)]樹脂、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate;PBT)樹脂、ポリカーボネート(Polycarbonate;PC)樹脂、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(Polycarbonate/Acrylonitrile−butadiene−styrene;PC/ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate;PET)樹脂、高密度ポリエチレン(High density polyethylene;HDPE)、低密度ポリエチレン(Low density polyethylene;LDPE)、ポリイミド(Polyimide;PI)樹脂、ポリスチレン(Polystyrene;PS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene;PTFE)樹脂、およびこれらの補強材添加物のうちの少なくとも1つを含むことができる。ただし、これに限定されるものではなく、レーザ照射条件に応じて溶融して前記エッチングラインおよび前記ガラス層の表面に満たされて固定できるものであれば、当業界で知られた樹脂の中から適宜選択可能である。
【0079】
また、本発明の一実施態様によれば、前記補強材は、ガラス繊維(glass fiber)、タルク(talc)、および炭素繊維(carbon fiber)のうちの少なくとも1つであってもよい。さらに、前記樹脂層は、20%タルク含有ポリプロピレン樹脂であってもよい。
【0080】
ただし、前記補強材の種類は制限されるものではなく、一般的な樹脂の強度を高めるために添加できる補強材であれば、当業界で知られたものから適宜選択されるものであってもよい。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前記樹脂層の厚さは、0.5mm以上10mm以下、または2mm以上10mm以下であってもよい。前記範囲において、前記ガラス層と前記樹脂層との十分な接合が可能でありながらも、後の第2レーザの照射によって発生しうる樹脂層の膨れ上がり現象などを防止することができる。
【0083】
本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法は、前記樹脂層が備えられたガラス層側に第2レーザを照射して、前記樹脂層が前記エッチングラインおよび前記ガラス層の表面に満たされて接合されるようにする接合ステップを含む。
【0084】
従来は、前記樹脂層および前記ガラス層のうちの少なくとも1層に粘着剤を塗布した後、前記樹脂層および前記ガラス層を貼り合わせる方法、または前記樹脂層を加熱することにより、前記ガラス層を前記ガラス層に満たして固定させる方法を用いて異種素材接合体を製造した。
【0085】
ただし、前記方法の場合、前述のように、異種素材接合体の総厚さを過度に増加させて、異種素材接合体を用いた多様な部材の軽量化および小型化の傾向に符合しない問題点があり、前記樹脂層の熱による損傷が起こる問題点があった。
【0086】
ただし、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体の製造方法は、前記ガラス層と前記樹脂層との間に別途の粘着層が備えられるか、前記樹脂層全体を別途に溶融させて前記ガラス層を接合するのではなく、前記樹脂層が備えられたガラス層側にレーザを照射して、前記樹脂層の部分的溶融を誘導して前記ガラス層と前記樹脂層を接合することにより、異種素材接合体の総厚さおよび前記樹脂層の変性を最小化することができるという利点がある。
【0087】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザは、前記樹脂層が備えられたガラス層側に照射されるものであってもよい。具体的には、前記第2レーザは、前記樹脂層が前記エッチングラインの形成された前記ガラス層の一面と接するように備えられた場合に、前記ガラス層側に照射されるものであってもよい。
【0088】
本発明の一実施態様に係る前記接合ステップの模式図を
図1(b)に示した。
図1(b)にて点線で表す領域は、前記エッチングラインが形成されたガラス層10の他側面を示すものであり、
図1(b)は、前記エッチングラインが形成されたガラス層10の一面と、前記樹脂層20とが接することを示すものである。
【0089】
また、
図1(b)によれば、前記接合ステップは、前記ガラス層10上に前記樹脂層20を備え、前記樹脂層が形成された前記ガラス層上に第2レーザ200を照射して行われるものであってもよい。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記接合ステップは、前記第2レーザの照射によって前記樹脂層が前記エッチングラインおよび前記ガラス層の表面に満たされて接合されるものであってもよく、具体的には、前記樹脂層が前記ガラス層表面のエッチングラインおよび網パターンに満たされて接合されるものであってもよい。
【0091】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザは、前記ガラス層から前記樹脂層の方向に照射されるものであってもよく、具体的には、前記第2レーザは、前記樹脂層が備えられた前記ガラス層側に、前記ガラス層から前記樹脂層の方向に照射されるものであってもよい。また、前記第2レーザは、前記樹脂層に直接照射されるものでなくてもよい。
【0092】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザが前記ガラス層から前記樹脂層の方向に照射される場合、前記第2レーザが前記樹脂層に直接照射される場合より、樹脂層の熱による損傷を減少させることができる。さらに、前記第2レーザが前記樹脂層と前記ガラス層とを接合するために必要な領域にのみ照射されるので、前記樹脂層と前記ガラス層との接合力を向上させることができるだけでなく、前記樹脂層のエネルギー供給による損傷を減少させることができる。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザは、前記樹脂層と接する前記ガラス層の表面に焦点を合わせて照射される。また、前記第2レーザは、前記樹脂層と接する前記ガラス層の表面にデフォーカシングして照射されるものであってもよい。
【0094】
具体的には、前記第2レーザがデフォーカシングして照射される場合、前記第2レーザは、前記樹脂層に接しない前記ガラス層の他面に焦点を合わせて照射されるものであってもよく、前記樹脂層には焦点が離脱して(デフォーカシング、defocusing)、前記樹脂層に広範囲に照射されるものであってもよい。
【0095】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザは、前記ガラス層を透過して照射される。すなわち、前記第2レーザは、前記ガラス層を透過して照射され、前記第2レーザの照射によるエネルギーは前記樹脂層が吸収することができる。これによって、前記吸収された第2レーザのエネルギーは熱に変換されて、前記樹脂層が部分的に溶融して前記エッチングラインが形成された前記ガラス層に接合される。
【0096】
前記第2レーザが前述した方向、前述した条件で、前記ガラス層を透過して照射されることにより、前記第2レーザが前記樹脂層に直接照射される場合の損傷などの問題点を最小化することができ、同時に、前記樹脂層と前記ガラス層との間の接合力を増大させることができる。
【0097】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザは、ファイバパルスレーザであってもよい。
【0098】
本明細書において、用語「ファイバパルスレーザ」は、当業界で通用する光ファイバパルスレーザ、具体的には、光ファイバ中に能動媒質(例えば、Yttrium Aluminium Garnetなど)を有するパルスレーザを意味することができる。
【0099】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの出力は、5W以上100W以下、5W以上60W以下、5W以上50W以下、30W以上100W以下、30W以上60W以下、30W以上50W以下、40W以上100W以下、40W以上60W以下、または40W以上50W以下であってもよい。前記範囲において、前記第2レーザが透過するガラス層および前記第2レーザが照射される前記樹脂層の損傷を最小化すると同時に、前記ガラス層および前記樹脂層の接合力を最大化することができる。
【0100】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの照射速度は、20mm/s以上500mm/s以下、20mm/s以上300mm/s以下、20mm/s以上200mm/s以下、50mm/s以上500mm/s以下、50mm/s以上300mm/s以下、50mm/s以上200mm/s以下、100mm/s以上500mm/s以下、100mm/s以上300mm/s以下、または100mm/s以上200mm/s以下であってもよい。前記範囲において、前記第2レーザが十分に前記ガラス層を透過して照射されることができ、前記ガラス層および前記ガラス層の表面上に備えられた前記エッチングラインに前記樹脂層が適切に満たされて前記樹脂層が前記ガラス層に強く接合される。ただし、前記第2レーザの照射速度は、前記ガラス層および前記樹脂層の物性に応じて適宜調節可能である。
【0101】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの照射回数は、1回以上40回以下、3回以上40回以下、1回以上20回以下、または3回以上20回以下であってもよい。前記範囲において、前記第2レーザが十分に前記ガラス層を透過して照射され、前記ガラス層および前記ガラス層の表面上に備えられた前記エッチングラインに前記樹脂層が適切に満たされて前記樹脂層が前記ガラス層に強く接合される。ただし、前記第2レーザの照射回数は、前記ガラス層および前記樹脂層の物性に応じて適宜調節可能である。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、前記照射回数に関する説明は、前述した通りである。
【0103】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの照射間隔は、100μm以上2,000μm以下、100μm以上1,000μm以下、200μm以上2,000μm以下、または200μm以上1,000μm以下であってもよい。前記範囲は、前記第1レーザの照射間隔より広い範囲であって、前記範囲で前記ガラス層と前記樹脂層との接合が均一に行われるようにできる。これによって、前記ガラス層と前記樹脂層との接合力を最大化することができ、前記第2レーザの照射による前記ガラス層および前記樹脂層の損傷を最小化することができるという利点がある。
【0104】
本発明の一実施態様によれば、前記第2レーザの波長は、800nm以上1,400nm以下、800nm以上1,200nm以下、800nm以上1,100nm以下、900nm以上1,400nm以下、900nm以上1,200nm以下、900nm以上1,100nm以下、1,000nm以上1,400nm以下、1,000nm以上1,200nm以下、または1,000nm以上1,100nm以下であってもよい。前記第2レーザの波長は、前述した第1レーザ対比長波長であって、前記第2レーザの照射によって前記ガラス層と前記樹脂層との接合が効率的に行われ、前記第2レーザの照射による前記ガラス層および前記樹脂層それぞれの損傷を最小化することができるという利点がある。
【0105】
本発明の一実施態様によれば、前記異種素材接合体の接合力は、4MPa以上10MPa以下であってもよい。
【0106】
本明細書において、前記異種素材接合体の接合力は、前記異種素材接合体を接合面積が5mm×5mmとなるように接合した後、前記異種素材接合体の両側末端を10mm/minの速度で引張した時の最大引張荷重を意味することができる。
【0107】
すなわち、前記異種素材接合体の最大引張強度、具体的には、前記異種素材接合体の接合部分が破断する最大引張荷重が4MPa以上10MPa以下のものを意味することができる。前記範囲は、通常のガラスと樹脂とが接合された異種素材接合体が実現できる範囲より、本発明の一実施態様に係る異種素材接合体がはるかに大きい値の範囲を実現可能であることを意味することができる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0109】
参考例1
【0110】
厚さ1mmのソーダライムガラスを用意した。
【0111】
製造例1−1
【0112】
厚さ1mmのソーダライムガラスに、355nmの波長、45Wの出力、100kHzの繰り返し率を有するピコ秒レーザを、TRUMPF社のTrimicro5000を用いて、100mm/sの照射速度、0.2mmの照射間隔で20回照射して、ガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0113】
製造例1−2
【0114】
照射間隔を0.6mmとしたことを除けば、製造例1−1と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0115】
製造例1−3
【0116】
照射間隔を1.0mmとしたことを除けば、製造例1−1と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0117】
参考例2
【0118】
厚さ2.2mmのホウケイ化(登録商標Pyrex、Corning社)ガラスを用意した。
【0119】
製造例2−1
【0120】
厚さ2.2mmのホウケイ化(登録商標Pyrex、Corning社)ガラスに、355nmの波長、45Wの出力、100kHzの繰り返し率を有するピコ秒レーザを、TRUMPF社のTrimicro5000を用いて、100mm/sの照射速度、0.2mmの照射間隔で20回照射して、ガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0121】
製造例2−2
【0122】
照射間隔を0.6mmとしたことを除けば、製造例2−1と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0123】
製造例2−3
【0124】
照射間隔を1.0mmとしたことを除けば、製造例2−1と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0125】
製造例2−4
【0126】
厚さ2.2mmのホウケイ化(登録商標Pyrex、Corning社)ガラスに、355nmの波長、40Wの出力、100kHzの繰り返し率を有するピコ秒レーザを、TRUMPF社のTrimicro5000を用いて、100mm/sの照射速度、0.1mmの照射間隔で10回照射して、ガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0127】
製造例2−5
【0128】
照射間隔を0.3mmとしたことを除けば、製造例2−4と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0129】
製造例2−6
【0130】
照射間隔を0.3mmとし、0.05mmで照射間隔を補強したことを除けば、製造例2−4と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0131】
製造例2−7
【0132】
照射間隔を0.6mmとしたことを除けば、製造例2−4と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0133】
参考例3
【0134】
厚さ2mmの強化ガラス(熱圧処理した後、空気で急冷した板ガラス)を用意した。
【0135】
製造例3−1
【0136】
厚さ2mmの強化ガラス(熱圧処理した後、空気で急冷した板ガラス)に、45Wの出力、355nmの波長、100kHzの繰り返し率を有するピコ秒レーザを、TRUMPF社のTrimicro5000を用いて、100mm/sの照射速度、0.2mmの照射間隔で20回照射して、ガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0137】
製造例3−2
【0138】
照射間隔を0.6mmとしたことを除けば、製造例3−1と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0139】
製造例3−3
【0140】
照射間隔を1.0mmとしたことを除けば、製造例3−1と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0141】
製造例3−4
【0142】
厚さ2mmの強化ガラスに、355nmの波長、30Wの出力、100kHzの繰り返し率を有するピコ秒レーザを、TRUMPF社のTrimicro5000を用いて、500mm/sの照射速度、0.1mmの照射間隔で20回照射して、ガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0143】
製造例3−5
【0144】
照射間隔を0.3mmとしたことを除けば、製造例3−4と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0145】
製造例3−6
【0146】
照射間隔を0.6mmとしたことを除けば、製造例3−4と同様の方法でガラス層の表面にエッチングラインを形成した。
【0147】
前記製造例1−1〜製造例1−3、製造例2−1〜製造例2−7および製造例3−1〜製造例3−4の製造条件をまとめると、下記表1の通りである。
[表1]
【表1】
【0148】
実施例1
【0149】
製造例2−4により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えた。
【0150】
前記樹脂層が備えられた前記ガラス層側に、前記ガラス層から前記樹脂層の方向へ、前記樹脂層と接する前記ガラス層の表面に焦点を合わせて照射するか、前記樹脂層と接する前記ガラス層の表面にデフォーカシングして、下記表2のような条件の第2レーザを照射して、異種素材接合体を製造した。
[表2]
【表2】
【0151】
実施例2
【0152】
製造例2−5により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0153】
実施例3
【0154】
製造例2−6により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0155】
実施例4
【0156】
製造例2−7により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0157】
実施例5
【0158】
製造例3−4により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0159】
実施例6
【0160】
製造例3−5により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0161】
実施例7
【0162】
製造例3−6により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0163】
比較例1
【0164】
製造例1−1により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0165】
比較例2
【0166】
製造例1−2により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0167】
比較例3
【0168】
製造例1−3により表面にエッチングラインが形成されたガラス層の表面上に、厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層を備えたことを除けば、実施例1と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0169】
比較例4
【0170】
参考例2によるガラスと厚さ1mmのポリプロピレン(補強材:タルク20%)樹脂層とを粘着剤(3M社製)で付着させて、異種素材接合体を製造した。
【0171】
比較例5
【0172】
参考例3によるガラスを用いたことを除けば、比較例4と同様の方法で異種素材接合体を製造した。
【0173】
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例5による異種素材接合体の情報をまとめると、表3の通りである。
[表3]
【表3】
【0174】
[実験例1−ガラス層の光透過率の測定]
【0175】
参考例2〜参考例3の1064nmの波長における光透過率を、SHIMADZU社のSolid spec−3700装置を用いて測定した。
【0176】
また、製造例2−1〜製造例2−5、製造例2−7および製造例3−1〜製造例3−6の1064nmの波長における光透過率を、SHIMADZU社のSolid spec−3700装置を用いて測定した。
【0177】
そして、参考例2の1064nmの波長における光透過率に対する、製造例2−1〜製造例2−3の1064nmの波長における相対光透過率、および参考例3によるガラス層の1064nmの波長における、光透過率に対する製造例3−1〜製造例3−3の相対光透過率を
図3に示した。
【0178】
さらに、参考例2の1064nmの波長における光透過率に対する、製造例2−4〜製造例2−5および製造例2−7の1064nmの波長における相対光透過率、および参考例3によるガラス層の1064nmの波長における光透過率に対する、製造例3−4〜製造例3−6の1064nmの波長における相対光透過率を
図4に示した。
【0179】
図3〜
図4によれば、第1レーザの照射条件が本発明の一実施態様に含まれる場合、第1レーザが照射されないガラス層の1064nmの波長における光透過率に対する、第1レーザ照射後のガラス層の1064nmの波長における光透過率は、40%以上98%以下であることを確認することができた。
【0180】
前記範囲で後の第2レーザが照射される場合、第2レーザが十分に前記ガラス層を透過可能になり、これによって、前記第2レーザが前記ガラス層を透過し、前記樹脂層に照射されて樹脂層の部分的な溶融を誘導することができ、これによって、前記樹脂層と前記ガラス層との接合が円滑に行われることを予想することができた。
【0181】
[実験例2−ガラス層の表面および側断面撮影]
【0182】
製造例2−4、製造例2−5、製造例2−7および製造例3−4〜製造例3−6それぞれの表面および側断面を、走査電子顕微鏡(TM−1000、HITACHI社)を用いて撮影したイメージを
図5に示した。
【0183】
図5に示された撮影結果をみれば、第1レーザの照射間隔が増加しても、参考例2および参考例3によるガラス層の表面および内部の損傷がほとんどないことを確認することができ、これによって、前記製造例を用いた異種素材接合体を製造する場合、滑らかな接合面を有する異種素材接合体が得られることを予想することができた。
【0184】
[実験例3−異種素材接合体の側断面撮影]
【0185】
実施例2、実施例6および比較例1〜比較例4による異種素材接合体の側断面を、前述した走査電子顕微鏡を用いて撮影した。
【0186】
比較例1〜比較例3による異種素材接合体の側断面撮影結果を
図6に示した。
【0187】
図6によれば、第1レーザの照射間隔の増加にかかわらず、前記第1レーザの照射によって前記ガラス層の表面に割れが発生したことを確認することができ、前記割れによって前記異種素材接合体に不良が発生したことを確認することができた。
【0188】
すなわち、比較例1〜比較例3のように、本発明の一実施態様に係るガラス層ではない一般的なソーダライムガラスを用いる場合、本発明の一実施態様に係る第1レーザの照射時、ガラス層に割れが起こり、樹脂層との接合が円滑に行われないことを確認することができた。
【0189】
実施例2および実施例6による異種素材接合体の側断面撮影結果を
図7に示した。
【0190】
図7によれば、前述した
図6の評価結果とは異なり、ガラス層の表面に割れがほとんど発生しないことを確認することができ、樹脂層が前記ガラス層の表面に形成されたエッチングラインに適切に浸透して前記樹脂層と前記ガラス層との接合が円滑に行われたことを確認することができた。
【0191】
前記内容をまとめてみれば、前述のように、前記ガラス層の種類をホウケイ化ガラスまたは強化ガラスに具体的に特定した本発明の場合、ソーダライムガラスを用いた比較例より、平坦な接合部を有することを確認することができた。
【0192】
また、前記実施例による異種素材接合体が高い接合力を有し得ることを予想することができた。
【0193】
[実験例4−異種素材接合体の接合力の測定]
【0194】
接合部分の面積が5mm×5mmとなるように接合した実施例1〜実施例6および比較例4〜比較例5による異種素材接合体の接合強度を、引張試験機(AGS−X、SHIMADZU社)を用いて測定した。
【0195】
前記引張試験時に用いられる測定試験片および引張試験機のデジタルカメライメージを
図8に示した。
【0196】
具体的には、
図8(a)および(b)は、引張試験機のデジタルカメライメージおよびその拡大図を示すものであり、(c)は、前記実験時に用いられる試験片のデジタルカメライメージを示すものである。
【0197】
図8(c)を説明すれば、前記異種素材接合体の両側末端が別途に固定されたことを確認することができ、
図8(b)を説明すれば、前記両側末端が前記引張試験機に固定されて引張試験に用いられることを確認することができる。
【0198】
前記引張試験機を用いて、前記実施例1〜実施例6および比較例4〜比較例5による異種素材接合体を10mm/minの速度で引張し、この時の最大引張荷重を接合強度で表現し、前記接合強度を
図9および
図10に示した。
【0199】
さらに、比較例1〜比較例3による異種素材接合体の接合強度を測定するための試験片のデジタルカメライメージを
図11に示した。
【0200】
実施例1および実施例2の場合、比較例4の場合より高い接合強度を有し、実施例5および6の場合、比較例5の場合より高い接合強度を有することを確認することができた。
【0201】
図9および
図10によれば、比較例4は、第1レーザの照射によってガラス層上にエッチングラインを形成せず、別途の接着剤を用いて接合したものであって、実施例3〜実施例4より高い接合強度を有しても、前記接着剤を硬化する別途の工程がさらに必要な問題点があった。さらに、前記実施例3〜実施例4の樹脂層とガラス層との間の接合強度が十分に実現されたことを確認することができた。
【0202】
また、比較例5も、比較例4と同じく、第1レーザの照射によってガラス層上にエッチングラインを形成せず、別途の接着剤を用いて接合したものであって、実施例7より高い接合強度を有しても、前記接着剤を硬化する別途の工程がさらに必要な問題点があった。同じく、前記実施例7の樹脂層とガラス層との間の接合強度も十分に実現されたことを確認することができた。
【0203】
参照として、比較例1〜比較例3による異種素材接合体について、前述した方法と同様の方法で接合強度を測定しようとしたが、
図11に示されるように、比較例1〜比較例3による異種素材接合体の場合、ガラス層と樹脂層との接合部ではない、ガラス層自体が破断する問題点があることを確認することができた。具体的には、破断したガラス層の両側末端を
図11の矢印で表した。
【0204】
上記の内容をまとめてみれば、比較的簡単な工程により、前記ガラス層と前記樹脂層とを損傷なく、円滑に接合するためには、本発明の一実施態様に係るガラス層の種類を選択し、本発明の一実施態様に係る照射条件の第1および第2レーザの照射によって前記ガラス層と樹脂層とを接合しなければならないことを確認することができる。