(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テレフタレート系物質は、ジブチルテレフタレートが0.5から50重量%;ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレートが3.0から70重量%;及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートが0.5から85重量%で含まれるものである、請求項1または2に記載の可塑剤組成物。
前記トリエチレングリコールジエステル系物質は、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)が0.5から85重量%;(2−エチルヘキサノイルオキシ)トリエチレングリコールベンゾエートが3.0から70重量%;及びトリエチレングリコールジベンゾエートが0.5から50重量%で含まれるものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の可塑剤組成物。
前記樹脂は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択された1種以上のものである、請求項5に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0012】
本発明の説明及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0013】
本明細書で、「ブチル」とは、一般的に称されるn−ブチルを意味してよく、さらに「イソブチル」を意味するものであってよいので、以下、ブチルという用語は、n−ブチルに限定されるものではなく、n−ブチルとイソブチルを全て称する用語として用いられてよい。
【0014】
可塑剤組成物
本発明の一実施形態によれば、3種のテレフタレート系物質と3種のトリエチレングリコールジエステル系物質を含む混合可塑剤組成物が提供され、具体的に前記テレフタレート系物質は、ジブチルテレフタレート、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート、及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートを含むことを特徴とし、前記トリエチレングリコールジエステル系物質は、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、(2−エチルヘキサノイルオキシ)トリエチレングリコールベンゾエート、及びトリエチレングリコールジベンゾエートを含むことを特徴とする。
【0015】
前記3種のテレフタレート系物質は、透過性や透明性に優れ、機械的物性に優れるので、食品と接触する製品や人体と接触する製品への適用が有利であるが、相対的に可塑化効率が良くないという短所があり、製造工程上、工程段階がさらに追加されるので、製品単価も多少上昇することになるなどの要因によって改善が要求されてきた。
【0016】
一方、トリエチレングリコールジエステル系物質の場合、代表的な環境に優しい物質であって、可塑化効率の側面ではかなり優れるが、透明性や透過性が良くないので、食品と接触する製品または人体と接触する製品などへの適用時に致命的な短所として作用し、機械的物性がかなり低い水準である。
【0017】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、前記の問題点を解決することができる可塑剤組成物であって、トリエチレングリコールジエステル系物質のような環境問題のない物質と混合することで、可塑化効率を大幅に改善することができながらも、機械的物性と透過性及び透明性を同等以上の水準に維持することにより解決することができる。
【0018】
前記可塑剤組成物に含まれるテレフタレート系物質とトリエチレングリコールジエステル系物質の重量比は90:10から10:90であってよく、上限が90:10、85:15、80:20、70:30または60:40であってよく、下限が10:90、15:85、20:80、30:70または40:60であってよい。好ましくは、90:10から20:80、さらに好ましくは90:10から30:70、最も好ましくは90:10から50:50であってよい。
【0019】
このような重量比を満たす場合には、前述したところのように、特定の物性は各化合物が有する優れた特性の水準に維持させることができ、特定の物性はさらに改善させることができる。
【0020】
前記テレフタレート系物質は、ベンゼン環のパラ位置にジエステル基が結合された物質であって、ジエステル基には、2−エチルヘキシル基とブチル基が結合されたものであり、それぞれ2つのブチル基、2−エチルヘキシル基及びブチル基、そして2つの2−エチルヘキシル基が結合された化合物が混合されたものである。
【0021】
前記三つの化合物の組成は、好ましくはジブチルテレフタレート0.5から50重量%;ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート3.0から70重量%;及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート0.5から85重量%であってよく、前記重量比は、反応時に原料の投入量の調節を介して制御してよい。さらに、より好ましくは0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%、及び35重量%から80重量%の量で形成されてよい。
【0022】
また、トリエチレングリコールジエステル系物質は、下記化学式Aで表される化合物等が3種混合されたものであってよい。
[化学式A]
【化1】
前記化学式Aにおいて、前記Ra及びRbはそれぞれ独立して
【化2】
または
【化3】
である。
【0023】
前記トリエチレングリコールジエステル系物質は、一般的にトリエチレングリコールと安息香酸、そして2−エチルヘキサノン酸がエステル化反応して生成された化合物等の混合物であってよく、よって、前記RaとRbは、それぞれ安息香酸由来の炭化水素基または2−エチルヘキサノン酸由来の炭化水素基であってよく、3種の化合物は、Ra及びRbが全て安息香酸由来の炭化水素基であるもの、Ra及びRbが全て2−エチルヘキサノン酸由来の炭化水素基であるもの、そしてRa及びRbが2−エチルヘキサノン酸由来の炭化水素基及び安息香酸由来の炭化水素基であるものであってよい。
【0024】
具体的に、前記トリエチレングリコールジエステル系物質に含まれる3種の化合物は、下記化学式A−1からA−3であってよい。
[化学式A−1]
【化4】
[化学式A−2]
【化5】
[化学式A−3]
【化6】
【0025】
前記トリエチレングリコールジエステル系物質の三つの化合物の組成は、好ましくは、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)が0.5から85重量%;(2−エチルヘキサノイルオキシ)トリエチレングリコールベンゾエートが3.0から70重量%;及びトリエチレングリコールジベンゾエートが0.5から50重量%で含まれてよい。さらに、より好ましくは20重量%から70重量%、20重量%から70重量%、及び1重量%から40重量%の量で形成されてよい。
【0026】
前記のように前記テレフタレート系物質として3種の混合テレフタレートと、トリエチレングリコールジエステル系物質として3種の混合トリエチレングリコールジエステルとを混合して可塑剤として用いる場合には、各物質が有する優れた物性が全て得られるとともに、可塑化効率が改善される効果をみることができ、前述したところのような比率で混合重量比を調節すると、物性改善の効果が最適化され得る。
【0027】
本発明のまた他の一実施形態による可塑剤組成物は、ジブチルテレフタレート、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート、及び下記化学式1で表されるテレフタレートを含むテレフタレート系物質;及びトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、(2−エチルヘキサノイルオキシ)トリエチレングリコールベンゾエート及びトリエチレングリコールジベンゾエートを含むトリエチレングリコールジエステル系物質;を含み、前記ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート及び下記化学式1で表されるテレフタレートの混合重量100重量部に比べて、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートは99.0重量部以上であり、下記化学式1で表されるテレフタレートは1.0重量部未満であることを特徴とする。
[化学式1]
【化7】
前記化学式1において、前記R1は、炭素数1から13の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキル基であり、ただし、2−エチルヘキシル基ではない。
【0028】
前記ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート及び下記化学式1で表されるテレフタレートの混合重量100重量部に比べて、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートは99.0重量部以上であり、下記化学式1で表されるテレフタレートは1.0重量部未満であってよく、好ましくはそれぞれ99.2重量部以上及び0.8重量部未満、さらに好ましくはそれぞれ99.5重量部以上及び0.5重量部未満、最適には99.9重量部以上及び0.1重量部未満、または99.95重量部以上及び0.05重量部未満であってよい。
【0029】
[製造方法]
本発明で前記可塑剤組成物を製造する方式は、ブレンド方式を適用できるものであって、テレフタレート系物質、トリエチレングリコールジエステル系物質をそれぞれ製造した以後に混合する過程を介して、可塑剤組成物を製造することができる。
【0030】
前記テレフタレート系物質は、テレフタル酸と2種アルコールの直接エステル化反応により製造されてよく、またはジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートとブチルアルコールのトランスエステル化反応により製造されてよい。
【0031】
前記直接エステル化反応において、前記アルコールは、2−エチルヘキシルアルコールとブタノールであってよく、これらの混合アルコールが直接エステル化反応に適用されてよい。
【0032】
前記直接エステル化反応は、アルコールにテレフタル酸を投入した後、触媒を添加して窒素雰囲気下で反応させる段階;未反応アルコールを除去して未反応酸を中和させる段階;及び減圧蒸留によって脱水及び濾過する段階;で準備されてよい。
【0033】
また、前記アルコールは、テレフタル酸100モル%を基準に150から500モル%、200から400モル%、200から350モル%、250から400モル%、あるいは270から330モル%範囲内に用いられてよい。
【0034】
一方、前記エステル化反応の触媒は、一例として、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、アルキル硫酸などの酸触媒、乳酸アルミニウム、フッ化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、リン酸アルミニウムなどの金属塩、ヘテロポリ酸などの金属酸化物、天然/合成ゼオライト、陽イオン及び陰イオン交換樹脂、テトラアルキルチタネート(tetraalkyl titanate)及びそのポリマー等の有機金属の中から選択される1種以上であってよい。具体的な例として、前記触媒はテトラアルキルチタネートを用いてよい。
【0035】
触媒の使用量は種類によって異なってよく、一例として、均一触媒の場合は、反応物全体100重量%に対して0.01から5重量%、0.01から3重量%、1から5重量%あるいは2から4重量%範囲内、そして不均一触媒の場合は、反応物全体重量の5から200重量%、5から100重量%、20から200重量%、あるいは20から150重量%範囲内であってよい。
【0036】
この際、前記反応温度は180から280℃、200から250℃、あるいは210から230℃の範囲内であってよい。
【0037】
また、トランスエステル化反応が行われ、前記テレフタレート系物質が製造されるものであってよい。トランスエステル化反応の場合には、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートとブチルアルコールが反応するものであってよい。
【0038】
一方、本発明で用いられる「トランス−エステル化反応」は、下記反応式1のようにアルコールとエステルが反応し、下記反応式1で表れるところのようにエステルのR''がアルコールのR'と相互交換される反応を意味する:
[反応式1]
【化8】
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記トランス−エステル化反応が行われれば、アルコールのアルコキシドがエステル系化合物に存在する二つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合;エステル系化合物に存在する一つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合;反応が行われていない未反応の場合;のように、三つの場合の数によって3種のエステル組成物が生成されてよい。
【0040】
また、前記トランス−エステル化反応は、酸−アルコール間のエステル化反応に比べて廃水の問題を起こさないという長所があり、無触媒下で進められ得るため、酸触媒の使用時の問題点を解決できる。
【0041】
前記のようなトランスエステル化反応を介して製造されるテレフタレート系物質の組成比は、前述したところと同一であり、この組成比は、アルコールの添加量によって前記混合物の組成比を制御することができる。
【0042】
前記アルコールの添加量は、テレフタレート化合物100重量部に対して0.1から89.9重量部、具体的には3から50重量部、さらに具体的には5から40重量部であってよい。
【0043】
前記テレフタレートは、アルコールの添加量が多いほど、トランス−エステル化反応に参加するテレフタレート化合物のモル分率(mole fraction)が大きくなるはずなので、前記混合物において生成物である二つのテレフタレート化合物の含量が増加することがあり、これに相応して未反応で存在するテレフタレート化合物の含量は減少する傾向が見られる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、反応物であるテレフタレートとアルコールのモル比は、一例として1:0.005から5.0、1:0.05から2.5、あるいは1:0.1から1.0であり、この範囲内で工程効率が高く、加工性改善の効果に優れたエステル系可塑剤組成物を収得するという効果がある。
【0045】
前記組成比は、エステル化反応により生成される混合組成比であってよく、特定の化合物を付加的にさらに混合して意図された組成比であってよく、所望の物性に合うように混合組成比を適宜調節してよく、但し、前記3種のテレフタレート系物質の混合物の組成比が前記範囲に制限されるものではなく、3種のテレフタレートのいずれか一つを追加投入してその組成比を変更してよく、可能な混合組成比は前述した通りである。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、前記トランスエステル化反応は、120から190℃、好ましくは135から180℃、さらに好ましくは141から179℃の反応温度下で10分から10時間、好ましくは30分から8時間、さらに好ましくは1から6時間で行われるのが好ましい。前記温度及び時間範囲内で所望の組成比のテレフタレート系物質である混合物を効果的に得ることができる。このとき、前記反応時間は、反応物を昇温した後、反応温度に到逹した時点から計算されてよい。
【0047】
前記トランスエステル化反応は、酸触媒または金属触媒下で行われてよく、この場合、反応時間が短縮されるという効果がある。
【0048】
前記酸触媒は、一例として、硫酸、メタンスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸等であってよく、前記金属触媒は、一例として、有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒又は金属自体であってよい。
【0049】
前記金属成分は、一例として、錫、チタン及びジルコニウムからなる群から選択される何れか一つ、又はこれらのうち2種以上の混合物であってよい。
【0050】
前記直接エステル化反応とトランスエステル化反応は、前述のトリエチレングリコールジエステル系物質の製造にも用いられてよい。すなわち、具体的な反応条件やモル比などの条件は類似し得る。
【0051】
但し、トリエチレングリコールジエステル系物質の場合、一般的にトランスエステル化反応により製造されてよく、原料として安息香酸、2−エチルヘキサノン酸、そしてトリエチレングリコールを用いて製造してよく、テレフタレート系物質のようにジカルボン酸を用いるものではなく、ジアルコールを用いることに相違点があり得る。
【0052】
前記トリエチレングリコールジエステル系物質を製造する方法は、特に制限されるものではなく、3種のトリエチレングリコールジエステルが混合された物質を提供できる方法であれば、特に製造方法上の制限はない。
【0053】
このように製造されたテレフタレート系物質とトリエチレングリコールジエステル系物質は、一般的な方法を介してブレンドされてよく、ブレンド方法においては特に制限されることはない。
【0054】
樹脂組成物
本発明の他の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリケトン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、または熱可塑性エラストマー、またはこれらの混合物等の樹脂100重量部に対して、5から150重量部、10から100重量部、あるいは30から60重量部の範囲内に含まれてよく、適用される用途に応じて70から130重量部が適用されてよい。
【0055】
前記樹脂組成物は、プラスチゾル加工、押出または射出加工、カレンダリング加工など多様な方法を介して加工されてよく、電線、自動車内装材、フィルム、シート、チューブ、壁紙、玩具、床材、ワイヤまたは光ファイバの被覆材などに適用されてよい。
【0056】
また、前記樹脂組成物は、医療または食品産業で用いるために設計されたものを含んでよく、例えば、血液バッグ、静脈注射バック、食塩水バック、注射器、静脈注射管、胃管、カテーテル管、排膿管、医療用手袋、酸素マスク、補正維持装置、人工皮膚及び食品包装材(例えば、多様な飲物、肉類及び冷凍野菜のための包装材)などであってよい。
【0057】
好ましくは、環境に優しい食品包装材用樹脂または医療用樹脂に適用されてよく、これに適するように透明度と色相などの官能性評価において優れた評価を受けることができ、接着性に優れ、引張強度と伸び率、そして可塑化効率及び加熱減量のような基本的な機械的物性もやはり、既存の可塑剤と同等水準以上の物性を示すことができる。
【0058】
前記樹脂組成物は、安定剤や、防曇剤などを更に添加してよく、それ以外の他の添加剤等も更に添加してよい。
【0059】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例はいくつか異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものに解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0060】
製造例1:テレフタレート系物質の製造
撹拌機、コンデンサー及びデカンターが設けられた反応器に、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート((株)LG化学)2000g及びn−ブタノール340g(DEHTP 100重量部を基準に17重量部)を投入した後、窒素雰囲気下で160℃の反応温度で2時間トランスエステル化反応させ、ジブチルテレフタレート(DBTP)、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート(BEHTP)及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)を、それぞれ4.0重量%、35.0重量%及び61.0重量%範囲で含む組成物を得た。
【0061】
前記反応生成物を混合蒸留してブタノール及び2−エチルヘキシルアルコールを除去し、最終的に混合組成物を製造した。
【0062】
製造例2:トリエチレングリコールジエステル系物質の製造
撹拌機、コンデンサー及びデカンターが設けられた反応器に、トリエチレングリコール450.5g、2−エチルヘキサノン酸778.7g、安息香酸293.0g及び触媒としてテトラノーマルブチルチタネート2.0gを投入した後、窒素雰囲気下で220℃まで昇温して10時間エステル化反応を行った。それ以後、精製工程を経てトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、(2−エチルヘキサノイルオキシ)トリエチレングリコールベンゾエート、及びトリエチレングリコールジベンゾエートをそれぞれ42.4重量%、45.4重量%及び12.2重量%の範囲で含む組成物を得た。
【0063】
前記製造例1及び2で製造した物質を混合して実施例等の可塑剤組成物を製造し、これに対して下記表1にまとめて示しており、この可塑剤組成物の物性評価は、下記の試験項目によって行った。
【0066】
硬度(hardness)の測定
ASTM D2240を用いて、25℃でのショア(shore A及びD)硬度、3T 10sを測定し、低いほど優れるものと評価される項目である。
【0067】
引張強度(tensile strength)の測定
ASTM D638方法によって、テスト機器であるU.T.M(製造社;Instron、モデル;4466)を用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を100mm/min(0.25T)で引っ張った後、試片が切断される地点を測定した。引張強度は、TD方向とMD方向に対して測定し、次のように計算しており、高いほど優れるものと評価される項目である:
引張強度(kgf/mm
2)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(mm)×幅(mm)
【0068】
伸び率(elongation rate)の測定
ASTM D638方法によって、前記U.T.Mを用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を100mm/min(0.25T)で引っ張った後、試片が切断される地点を測定するが、TD方向とMD方向に対して測定した後、伸び率を次のように計算しており、高いほど優れるものと評価される項目である。:
伸び率(%)=[伸張後の長さ/初期の長さ]×100
【0069】
移行損失(migration loss)の測定
KSM−3156によって厚さ2mm以上の試片(1T)を得て、試片の両面にPS Plateを貼り付けた後、1kgf/cm
2の荷重を加えた。試片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出して常温で4時間冷却させた。その後、試片の両面に付着されたPSを除去した後、オーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を下記のような式によって計算しており、低いほど優れるものと評価される項目である。
移行損失量(%)=[(常温での試片の初期重量−オーブン放置後の試片の重量)/常温での試片の初期重量]x100
【0070】
加熱減量(volatile loss)の測定
製作された試片を80℃で72時間作業した後、試片の重量を測定して下記のように計算しており、低いほど優れるものと評価される項目である。
加熱減量(%)=[(初期試片の重量−作業後の試片の重量)/初期試片の重量]x100
【0071】
100%モジュラスの測定
ASTM D638方法によって、前記U.T.Mを用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を100mm/min(0.25T)で引っ張った後、TD方向とMD方向に対して100%伸張時の引張応力(100%モジュラス)を測定しており、低いほど優れるものと評価される。
【0072】
ヘイズ(Haze)及び透明度
NDH 7000 Haze Meterを用いてヘイズ及び透明度を測定しており、ヘイズは低いほど優れ、透明度は高いほど優れるものと評価される。
【0073】
粘着性及び巻き戻し性の評価
手で直接接触して粘着の優れた程度を5 Scaleとして1が優れ、5が劣悪であるものと評価しており、巻き戻しの優れた程度を5 Scaleとして1が優れ、5が劣悪であるものと評価した。
【0074】
実験例1:樹脂試片の物性の評価
前記表1に記載された実施例及び比較例の混合可塑剤組成物を用いて試片を製作した。
【0075】
前記試片の製作は、ASTM D638を参照し、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC(LS100))100重量部に対して、前記実施例及び比較例で製造された可塑剤組成物を40重量部、エポキシ化大豆油(ESO)10重量部、安定剤としてLTX−630P 1.5重量部、防曇剤としてAlmax−9280 2重量部を配合し、700rpmにて98℃で混合した。ロールミル(Roll mill)を用いて160℃で4分間作業し、プレス(press)を用いて180℃で2.5分(低圧)及び2分(高圧)作業して試片を製作した。
【0076】
前記試片に対して前記試験項目をそれぞれ評価し、その結果を下記表2に示した。
【0078】
前記表2を参照すれば、実施例1から4の場合、硬度値が優れた比較例2のトリエチレングリコールジエステル系物質と同等水準に評価され、可塑化効率が優れた方の特性を取っていることが分かり、機械的特性である引張強度、伸び率及びモジュラス値は、比較例1と同等水準に評価され、これもまた優れた方の特性を取っていることが確認され、移行損失と加熱減量の場合にもさらに低い数値を有する比較例1と同等なのでより優れた値を有するという点が確認でき、ヘイズ値と透明度もまた優れた方の数値と同等水準であることが確認できる。
【0079】
特に、引張強度と伸び率の場合には、テレフタレート系物質にトリエチレングリコールジエステル系物質を混合した場合が、テレフタレート系物質を単独使用した場合に比べて、引張強度と伸び率が劣悪なトリエチレングリコールジエステル系物質を混合したにもかかわらず、その数値がより向上し得るという点もまた確認することができる。
【0080】
また、前記実施例1から5の可塑剤組成物をWrap加工してフィルムの粘着性及び巻き戻し性を官能評価したとき、比較例1のテレフタレート系物質の劣悪な特性を全般的に改善する効果が得られることが確認できた。
【0081】
すなわち、二つの物質の混合により予測される効果として、各物性が線形変化を示すものではなく、各物質が有する優れた物性は、その水準が同等以上に維持され、一部の物性の場合にはより向上する結果を示したと言える。
【0082】
これを介して、テレフタレート系物質とトリエチレングリコールジエステル系物質を混合する場合には、各物質が有する優れた物性は同等以上の水準に維持するとともに、機械的物性及び官能特性の場合にはより向上した値を示し得るということが分かるので、本発明に係る可塑剤組成物は、可塑化効率が優れ、かつ機械的物性が向上し、加熱減量、移行損失、ヘイズ及び透過率が全て優れた樹脂を提供できることが分かる。
【0083】
以上で本発明の好ましい実施例に対して詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者のいくつかの変形及び改良形態もまた、本発明の権利範囲に属するものである。