特許第6972489号(P6972489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972489液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972489
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20211111BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
   C08G59/50
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-541066(P2019-541066)
(86)(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公表番号】特表2020-507807(P2020-507807A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】KR2018007241
(87)【国際公開番号】WO2019004708
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0083850
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、サン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハン ア
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヒョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジュン ヨン
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0095801(KR,A)
【文献】 特開2015−040950(JP,A)
【文献】 特開2017−049576(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/054858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
C08G 59/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)下記の化学式1で表される繰り返し単位を含み、さらに下記の化学式2で表される繰り返し単位および下記の化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を含み、下記の化学式1〜3で表される全体繰り返し単位に対して下記の化学式1で表される繰り返し単位を20モル%〜60モル%含む第1液晶配向剤用重合体、
ii)下記の化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体、
iii)分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物および
iv)1アミンまたは2アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物
を含み、
前記1アミンまたは2アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物は、tert−ブトキシカルボニルイミダゾールであり
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物は、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含む、
液晶配向剤組成物:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
上記化学式1〜4中、
およびRのうちの少なくとも一つがC1−10アルキルであり、残りは水素であり、
およびRは、それぞれ独立して水素、またはC1−10アルキルであり、
は、下記の化学式5で表される4価の有機基であり、
[化学式5]
【化5】
上記化学式5中、
〜Rは、それぞれ独立して水素、またはC1−6アルキルであり、
、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数4〜20の炭化水素に由来した4価の有機基であるか、または前記4価の有機基中の一つ以上のHがハロゲンで置換されるかまたは一つ以上の−CH−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−または−CONH−で代替された4価の有機基であり、
、Y、YおよびYは、それぞれ独立して下記の化学式6で表される2価の有機基であり、
[化学式6]
【化6】
上記化学式6中、
およびR10は、それぞれ独立してハロゲン、シアノ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、C1−10フルオロアルキル、またはC1−10フルオロアルコキシであり、
pおよびqは、それぞれ独立して0〜4の間の整数であり、
は、単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−O(CH−、−OCH−C(CH−CHO−、−COO−(CH−OCO−、または−OCO−(CH−COO−であり、
前記zは、1〜10の間の整数であり、
mは、0〜3の間の整数である。
【請求項2】
前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、
90℃以上の温度で水素原子で置換される、
請求項1に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項3】
前記1アミンまたは2アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物は、
前記第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体の重量合計100重量部に対して0.03重量部〜30重量部で含まれる、
請求項1または2に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項4】
前記1アミンまたは2アミンは、それぞれ独立して線状または環状構造である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項5】
前記X、XおよびXは、それぞれ独立して下記の化学式7に記載された4価の有機基である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式7]
【化7】
上記化学式7中、
11〜R14は、それぞれ独立して水素、またはC1−6アルキルであり、
は、単一結合、−O−、−CO−、−S−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−COO−(CH−OCO−であり、
zは、1〜10の間の整数である。
【請求項6】
第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体の重量比は、
1:9〜9:1である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項7】
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物の分子量が100〜10,000である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項8】
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物は、
シクロアリファティック系エポキシ、ビスフェノール系エポキシ、またはノボラック系エポキシである、
請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項9】
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物は、
前記第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体の重量合計100重量部に対して0.1重量部〜30重量部で含まれる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項10】
1)請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;
2)前記塗膜を乾燥する段階;
3)前記乾燥する段階の直後に塗膜を配向処理する段階;および
4)前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階
を含む、
液晶配向膜の製造方法。
【請求項11】
前記液晶配向剤組成物は、第1液晶配向剤用重合体、第2液晶配向剤用重合体、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物および1アミンまたは2アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物が有機溶媒に溶解または分散させたものである、
請求項10に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項12】
前記塗膜を乾燥する段階2の乾燥は、50℃〜130℃で行われる、
請求項10または11に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項13】
前記配向処理する段階3の配向処理は、150nm〜450nm波長の偏光された紫外線を照射することである、
請求項10から12のいずれか1項に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項14】
前記硬化する段階4は、
4−1)前記配向処理された塗膜を200℃以下で低温熱処理する段階;および
4−2)前記熱処理された塗膜を前記低温熱処理より高い温度で熱処理して硬化する段階を含む、
請求項10から13のいずれか1項に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項15】
前記低温熱処理する段階4−1の低温熱処理は、110℃〜200℃で行われる、
請求項14に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理して硬化する段階4−2の熱処理は、200℃〜250℃で行われる、
請求項14または15に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか1項の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、
液晶配向膜。
【請求項18】
請求項17の液晶配向膜を含む
液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本出願は、2017年6月30日付韓国特許出願第10−2017−0083850号に基づいた優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、保存安定性に優れ、高いイミド化率を確保することができ、液晶配向特性と共に膜強度が向上した液晶配向膜を製造することができる液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0004】
液晶表示素子において、液晶配向膜は、液晶を一定の方向に配向させる役割を担当している。具体的に、液晶配向膜は液晶分子の配列に方向子(director)役割を果たして、電場(electric field)によって液晶が動いて画像を形成する時に、適当な方向を取るようにする。一般に、液晶表示素子で均一な輝度(brightness)と高い明暗比(contrast ratio)を得るためには液晶を均一に配向することが必須である。
【0005】
液晶を配向させる通常の方法で、ガラスなどの基板にポリイミドのような高分子膜を塗布し、この表面をナイロンやポリエステルのような繊維を用いて一定の方向に擦るラビング(rubbing)方法が用いられた。しかし、ラビング方法は、繊維質と高分子膜が摩擦する時に微細な埃や静電気(electrical discharge:ESD)が発生することがあるため、液晶パネル製造時に深刻な問題点を引き起こすことがある。
【0006】
前記ラビング方法の問題点を解決するために、最近は摩擦でない光照射によって高分子膜に異方性(非等方性、anisotropy)を誘導し、これを用いて液晶を配列する光配向法が研究されている。
【0007】
前記光配向法に使用できる材料としては多様な材料が紹介されており、その中でも液晶配向膜の良好な諸般性能のためにポリイミドが主に使用されている。しかし、通常ポリイミドは溶媒溶解性が劣るため溶液状態でコーティングして配向膜を形成させる製造工程上に直ぐに適用するのには困難がある。したがって、溶解性に優れたポリアミック酸またはポリアミック酸エステルのような前駆体形態でコーティングをした後に高温の熱処理工程を経てポリイミドを形成させ、ここに光照射を実行して配向処理をする。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くのエネルギーが必要であって実際生産性確保に困難が生じるだけでなく、光照射後に配向安定性を確保するために追加的な熱処理工程も必要であるという限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
保存安定性に優れ、相対的に温和な硬化条件で高いイミド化率を確保することができ、液晶配向特性と共に膜強度が向上した液晶配向膜を製造することができる液晶配向剤組成物を提供するためのものである。
【0009】
また、本発明は、前記の液晶配向剤組成物を用いた液晶配向膜の製造方法を提供するためのものである。
【0010】
また、本発明は、前記の製造方法で製造される液晶配向膜およびこれを含む液晶表示素子を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、i)下記の化学式1で表される繰り返し単位、下記の化学式2で表される繰り返し単位および下記の化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された2種以上の繰り返し単位を含み、下記の化学式1〜3で表される全体繰り返し単位に対して下記の化学式1で表される繰り返し単位を5〜74モル%含む第1液晶配向剤用重合体、ii)下記の化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体、iii)分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物、およびiv)1次アミンまたは2次アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物を含む液晶配向剤組成物を提供する:
【0012】
[化学式1]
【化1】
【0013】
[化学式2]
【化2】
【0014】
[化学式3]
【化3】
【0015】
[化学式4]
【化4】
【0016】
上記化学式1〜4中、
およびRのうちの少なくとも一つがC1−10 アルキルであり、残りは水素であり、
およびRは、それぞれ独立して水素、またはC1−10アルキルであり、
は、下記の化学式5で表される4価の有機基であり、
[化学式5]
【化5】
上記化学式5中、
〜Rは、それぞれ独立して水素、またはC1−6アルキルであり、
、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数4〜20の炭化水素に由来した4価の有機基であるか、または前記4価の有機基中の一つ以上のHがハロゲンで置換されるかまたは一つ以上の−CH−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−または−CONH−で代替された4価の有機基であり、
、Y、YおよびYは、それぞれ独立して下記の化学式6で表される2価の有機基であり、
[化学式6]
【化6】
上記化学式6中、
およびR10は、それぞれ独立してハロゲン、シアノ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、C1−10フルオロアルキル、またはC1−10フルオロアルコキシであり、
pおよびqは、それぞれ独立して0〜4の間の整数であり、
は、単一結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−O(CH−、−OCH−C(CH−CHO−、−COO−(CH−OCO−、または−OCO−(CH−COO−であり、
前記zは、1〜10の間の整数であり、
mは、0〜3の間、または1〜3の整数である。
【0017】
本発明による液晶配向剤組成物は、部分イミド化されたポリイミド前駆体である第1液晶配向剤用重合体、そして一般的なポリイミド前駆体である第2液晶配向剤用重合体と共に分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物およびtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された1次アミンまたは2次アミン化合物を含むことを主要特徴とする。
【0018】
既存のポリイミドを液晶配向膜として使用する場合、溶解性に優れたポリイミド前駆体、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを塗布し乾燥して塗膜を形成した後、高温の熱処理工程を経てポリイミドに転換させ、ここに光照射を実行して配向処理をした。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くの光照射エネルギーが必要であるだけでなく、光照射後に配向安定性を確保するために追加的な熱処理工程も経るようになる。このような多くの光照射エネルギーと追加的な高温熱処理工程は工程費用と、工程時間の面から非常に不利なので、実際大量生産工程に適用するのには限界があった。
【0019】
よって、本発明者らは実験を通じて、前記化学式1で表される繰り返し単位を必須的に含み、化学式2で表される繰り返し単位および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を追加的に含む第1液晶配向剤用重合体と、前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を混合して用いれば、前記第1重合体が既にイミド化されたイミド繰り返し単位を一定含量含むので、塗膜形成後に熱処理工程無く直ぐに光を照射して異方性を生成させ、以後に熱処理を行って配向膜を完成できるため、光照射エネルギーを大きく減らすことができるだけでなく、配向性と安定性に優れているだけでなく、電圧保持率と電気的特性も優れた液晶配向膜を製造することができるのを確認した。
【0020】
また、本発明者らは前記液晶配向剤用重合体以外に、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を液晶配向剤組成物に含ませることによって、これから製造される液晶配向膜は高い電圧維持率を示すことができるだけでなく、熱ストレスによる配向安定性および配向膜の機械的強度も改善されるのを確認した。理論的に制限されるのではないが、光照射による異方性生成後に熱処理過程でエポキシ基を有する化合物とポリイミド前駆体または部分イミド化された高分子のカルボン酸基と熱架橋反応が起こり、これによって電圧維持率を上昇させる。また、特に分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を使用するため、このような特性がさらに向上するだけでなく、ポリイミド前駆体または部分イミド化された高分子鎖間の架橋反応を起こして配向安定性および配向膜の機械的強度も向上させることができる。
【0021】
特に、本発明では、液晶配向剤組成物内にtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された1次アミンまたは2次アミン化合物を添加することによって、前記液晶配向剤組成物を室温で保管時、アミン化合物の反応性を低めて保存安定性が向上できるのを実験を通じて確認して発明を完成した。
【0022】
特に、前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、室温ではアミン化合物の窒素原子に結合した状態で維持されてアミン化合物の反応性を低めるが、90℃以上の温度で熱処理される場合、水素原子で置換されアミン化合物の反応性が向上できる。
【0023】
前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基が水素原子で置換されながら、アミン化合物がアミノ基を含むようになり、前記アミノ基が露出されることによって第1重合体および第2重合体のような液晶配向剤用重合体の焼結によるイミド化反応が促進されイミド化転換率が向上できる。
【0024】
即ち、室温の液晶配向剤組成物内では、1次アミンまたは2次アミン化合物に含まれているアミノ基の水素原子を前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換させて反応性を低め、液晶配向剤用重合体の焼結が行われる高温では前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基を再び水素原子に還元させてアミノ基による反応性を向上させることが本技術の核心原理である。
【0025】
このようにアミン化合物に含まれているアミノ基の水素原子を置換させなければならないため、最初使用されるアミン化合物はアミノ基の水素原子、即ち、窒素原子に結合した水素原子を少なくとも一つ以上含む1次アミン、または2次アミンを使用しなければならなく、このような1次アミンまたは2次アミンをそのまま室温に放置する場合、液晶配向剤組成物の粘度が大きく増加するか、望まない副反応生成物が発生するなど保存安定性が著しく減少する恐れがある。
【0026】
一方、前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、液晶配向剤用重合体の焼結が行われる高温で水素原子で置換されながら、アミン化合物から分離され、高温の焼結条件で除去され得る。
【0027】
前記アミン化合物から分離された前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、90℃以上の温度で熱分解されることによって除去され得ると見られる。
【0028】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0029】
用語の定義
【0030】
本明細書で特別な制限がない限り、次の用語は下記のように定義される。
【0031】
本明細書で、ある部分がある構成要素を"含む"という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0032】
本明細書で、"置換"という用語は、化合物内の水素原子または一官能基の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子または一官能基が置換される位置、即ち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか異なってもよい。
【0033】
本明細書で、炭素数4〜20の炭化水素は、炭素数4〜20のアルカン(alkane)、炭素数4〜20のアルケン(alkene)、炭素数4〜20のアルキン(alkyne)、炭素数4〜20のシクロアルカン(cycloalkane)、炭素数4〜20のシクロアルケン(cycloalkene)、炭素数6〜20のアレーン(arene)であるか、あるいはこれらのうちの1種以上の環状炭化水素が2以上の原子を共有する縮合環(fused ring)であるか、あるいはこれらのうちの1種以上の炭化水素が化学的に結合された炭化水素であってもよい。具体的に、炭素数4〜20の炭化水素としては、n−ブタン、シクロブタン、1−メチルシクロブタン、1,3−ジメチルシクロブタン、1,2,3,4−テトラメチルシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロヘキセン、1−メチル−3−エチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル、ベンゼン、ビフェニル、ジフェニルメタン、2,2−ジフェニルプロパン、1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンまたは1,6−ジフェニルヘキサンなどを例示することができる。
【0034】
本明細書で、炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であってもよい。具体的に、炭素数1〜10のアルキル基は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基;炭素数1〜5の直鎖アルキル基;炭素数3〜10の分枝鎖または環状アルキル基;または炭素数3〜6の分枝鎖または環状アルキル基であってもよい。より具体的に、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基またはシクロヘキシル基などを例示することができる。
【0035】
本明細書で、炭素数1〜10のアルコキシ基は、直鎖、分枝鎖または環状アルコキシ基であってもよい。具体的に、炭素数1〜10のアルコキシ基は、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基;炭素数1〜5の直鎖アルコキシ基;炭素数3〜10の分枝鎖または環状アルコキシ基;または炭素数3〜6の分枝鎖または環状アルコキシ基であってもよい。より具体的に、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、neo−ペントキシ基またはシクロヘプエトキシ基などを例示することができる。
【0036】
本明細書で、炭素数1〜10のフルオロアルキル基は前記炭素数1〜10のアルキル基の一つ以上の水素がフッ素で置換されたものであってもよく、炭素数1〜10のフルオロアルコキシ基は前記炭素数1〜10のアルコキシ基の一つ以上の水素がフッ素で置換されたものであってもよい。
【0037】
本明細書で、炭素数2〜10のアルケニル基は、直鎖、分枝鎖または環状アルケニル基であってもよい。具体的に、炭素数2〜10のアルケニル基は、炭素数2〜10の直鎖アルケニル基、炭素数2〜5の直鎖アルケニル基、炭素数3〜10の分枝鎖アルケニル基、炭素数3〜6の分枝鎖アルケニル基、炭素数5〜10の環状アルケニル基または炭素数6〜8の環状アルケニル基であってもよい。より具体的に、炭素数2〜10のアルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基またはシクロヘキセニル基などを例示することができる。
【0038】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが炭素数6〜60であるのが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6〜30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6〜20である。前記アリール基が、単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などであってもよいが、これに限定されるのではない。前記多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0039】
本明細書で、ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨード(I)であってもよい。
【0040】
任意の化合物に由来した多価有機基(multivalent organic group)は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基を意味する。一例として、シクロブタンに由来した4価の有機基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4つが除去された形態の残基を意味する。
【0041】
本明細書で、化学式中の
【化7】
は、該当部位の水素が除去された形態の残基を意味する。例えば、
【化8】
は、シクロブタンの1、2、3および4番炭素に結合された水素原子4つが除去された形態の残基、即ち、シクロブタンに由来した4価の有機基のうちのいずれか一つを意味する。
【0042】
液晶配向剤用重合体
【0043】
前記液晶配向剤組成物は、液晶配向剤用重合体としてi)前記化学式1で表される繰り返し単位、前記化学式2で表される繰り返し単位、および前記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された2種以上の繰り返し単位を含み、前記化学式1〜3で表される全体繰り返し単位に対して前記化学式1で表される繰り返し単位を5〜74モル%含む第1液晶配向剤用重合体、およびii)前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体を共に含んでもよい。
【0044】
前記化学式1〜4の繰り返し単位で、Xは前記化学式5で表される4価の有機基であり、X〜Xはそれぞれ独立して炭素数4〜20の炭化水素に由来した4価の有機基であるか、或いは前記4価の有機基中の一つ以上のHがハロゲンで置換されるかまたは一つ以上の−CH−が酸素または硫黄原子が直接連結されないように−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−または−CONH−で代替された4価の有機基であってもよい。
【0045】
一例として、前記X〜Xは、それぞれ独立して下記の化学式7に記載された4価の有機基であってもよい。
【0046】
[化学式7]
【化9】
【0047】
上記化学式7中、
11〜R14はそれぞれ独立して水素、または炭素数1〜6のアルキルであり、Lは単一結合、−O−、−CO−、−S−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−COO−(CH−OCO−であり、zは1〜10の間の整数である。
【0048】
一方、前記Y〜Yは前記化学式6で表される2価の有機基と定義され、前述の効果を発現できる多様な構造の液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0049】
前記化学式6中、RまたはR10で置換されない炭素には水素が結合されており、pまたはqが2〜4の整数である時、複数のRまたはR10は同一であるか互いに異なる置換基であってもよい。そして、前記化学式6中、mは0〜3の整数あるいは0または1の整数であってもよい。
【0050】
具体的に、前記第1液晶配向剤用重合体は、前記化学式1、化学式2および化学式3で表される繰り返し単位のうち、イミド繰り返し単位である化学式1で表される繰り返し単位を全体繰り返し単位に対して10モル%〜74モル%、または20モル%〜60モル%含んでもよい。前述のように、前記化学式1で表されるイミド繰り返し単位を特定含量含む第1液晶配向剤用重合体を用いれば、前記重合体が既にイミド化されたイミド繰り返し単位を一定含量含むので、高温の熱処理工程を省略し、直ぐに光を照射しても配向性と安定性に優れ電圧保持率と電気的特性も優れた液晶配向膜を製造することができる。前記化学式1で表される繰り返し単位が前記含量範囲より少なく含まれれば十分な配向特性を示さず、配向安定性が低下することがあり、前記化学式1で表される繰り返し単位の含量が前記範囲を超過すれば溶解度が低くなってコーティング可能な安定的な配向液を製造しにくいという問題が発生することがある。これにより、前記化学式1で表される繰り返し単位を前述の含量範囲で含むことが、保管安定性、電気的特性、配向特性および配向安定性が全て優れた液晶配向剤用重合体を提供することができるため好ましい。
【0051】
また、前記第1液晶配向剤用重合体は、化学式2で表される繰り返し単位または化学式3で表される繰り返し単位を目的とする特性によって適切な含量で含んでもよい。具体的に、前記化学式2で表される繰り返し単位は、前記化学式1〜3で表される全体繰り返し単位に対して0モル%〜40モル%、または0モル%〜30モル%、または0.1モル%〜30モル%含まれてもよい。前記化学式2で表される繰り返し単位は光照射後高温熱処理工程中にイミドに転換される比率が低いため、前記範囲を超える場合、全体的なイミド化率が不足して配向安定性が低下することがある。したがって、前記化学式2で表される繰り返し単位は、前述の範囲内で適切な溶解度を示して工程特性に優れると共に高いイミド化率を実現できる液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0052】
また、前記第1液晶配向剤用重合体で、前記化学式3で表される繰り返し単位は、前記化学式1〜3で表される全体繰り返し単位に対して0モル%〜95モル%、または10モル%〜90モル%含まれてもよい。このような範囲内で優れたコーティング性を示して工程特性に優れると共に高いイミド化率を実現できる液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0053】
一方、前記第2液晶配向剤用重合体は、部分イミド化された重合体である前記第1液晶配向剤用重合体と混合して液晶配向剤として使用することによって、第1液晶配向剤用重合体のみ使用する場合に比べて電圧保持率 (Voltage Holding Ratio)のような配向膜の電気的特性を大きく改善することができる。
【0054】
このような効果を示すために、前記化学式4で表される繰り返し単位中、Xは芳香族構造に由来したものが電圧保持率を改善する面から好ましい。
【0055】
また、前記化学式4で表される繰り返し単位中、Yは前記化学式6で表される2価の有機基であるのが好ましく、この時、RおよびR10はそれぞれ独立して炭素数3以下の短い官能基であるか側鎖構造のRおよびR10を含まないこと(pおよびqが0)がさらに好ましい。
【0056】
好ましくは、前記X、XおよびXは、それぞれ独立して下記の化学式7に記載された4価の有機基である:
【0057】
[化学式7]
【化10】
【0058】
上記化学式7中、
11〜R14は、それぞれ独立して水素、またはC1−6アルキルであり、
は、単一結合、−O−、−CO−、−S−、−C(CH−、−C(CF−、−CONH−、−COO−、−(CH−、−O(CHO−、−COO−(CH−OCO−であり、
zは、1〜10の間の整数である。
【0059】
また、前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体は1:9〜9:1、または15:85〜85:15、または2:8〜8:2の重量比で混合することができる。前述のように、前記第1液晶配向剤は既にイミド化されたイミド繰り返し単位を一定含量含むので、塗膜形成後に高温の熱処理工程無く直ぐに光を照射して異方性を生成させ、以後に熱処理を行って配向膜を完成することができる特徴があり、第2液晶配向剤用重合体は電圧保持率のような電気的特性を向上させる特徴がある。このような特徴を有する前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体を前記重量比範囲で混合して使用する場合、第1液晶配向剤用重合体が有する優れた光反応特性および液晶配向特性に第2液晶配向剤用重合体が有する優れた電気的特性を相互補完することができるので、より優れた配向性と電気的特性を同時に有する液晶配向膜を製造することができる。
【0060】
分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物
【0061】
前述の液晶配向剤用重合体以外に、本発明は、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を液晶配向剤組成物に含ませることによって、これから製造される液晶配向膜の高い電圧維持率を示すことができるようにする。
【0062】
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物の分子量は、100g/mol〜10,000g/molであるのが好ましい。本明細書で、分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、流量(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流量(flow rate)が挙げられる。
【0063】
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物として、シクロアリファティック系エポキシ、ビスフェノール系エポキシ、またはノボラック系エポキシを使用することができる。このような具体的な例としては、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4'−メチレンビス(N,N'−ジグリシジルアニリン)、または2,2'−(3,3'、5,5'−テトラメチルビフェニル−4,4'−ジイル)ビス(オキシ)ビス(メチレン)ジオキシランを使用することができる。
【0064】
また、前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物は、前述の第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体の総重量100重量部に対して0.1重量部〜30重量部で含まれるのが好ましい。
【0065】
官能基で置換された1次アミンまたは2次アミン化合物
【0066】
前述の液晶配向剤用重合体および分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物以外に、本発明は、官能基で置換された1次アミンまたは2次アミン化合物、具体的に、1次アミンまたは2次アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物を液晶配向剤組成物に含ませることによって、保存安定性に優れ、高いイミド化率を確保できる液晶配向剤組成物を製造し、これから液晶配向特性と共に膜強度が向上した液晶配向膜を製造することができる。
【0067】
前記アミン化合物で窒素原子に結合した水素原子が前記官能基で置換されるために、前記アミン化合物は窒素原子に結合した水素原子を少なくとも一つ以上に含まなければならない。この時、窒素原子に結合した水素原子が2つであるアミン化合物を1次アミン、窒素原子に結合した水素原子が1つであるアミン化合物を2次アミンと言い、前記アミン化合物は1次アミンまたは2次アミンであってもよい。
【0068】
前記アミン化合物に置換される官能基はtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、カルボキシベンジル基またはこれらの2種以上の混合官能基を使用することができ、2種以上の混合官能基とは窒素原子に結合した2つの水素原子を有する1次アミンで2つの水素原子それぞれを2種の互いに異なる官能基で置換させた場合を意味することができる。
【0069】
前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、90℃以上、または90℃〜300℃の温度で水素原子で置換されてもよい。即ち、前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、90℃以上の温度でアミン化合物に含まれている窒素原子から分離され、水素原子が窒素原子に代わりに結合することができる。
【0070】
このように90℃以上の温度でアミン化合物から分離された前記tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基は、90℃以上の温度で熱分解されることによって除去され、液晶配向膜の物性に影響を与えないことになる。
【0071】
前記1次アミンまたは2次アミンは、それぞれ独立して線状または環状構造であってもよい。前記線状または環状構造を有する1次アミンまたは2次アミンの具体的な種類の例は、ポリイミド系液晶配向剤合成分野でイミド化反応触媒として広く知られた多様な線状または環状アミンを制限なく使用することができ、好ましくは前記環状構造の2次アミンとしてイミダゾールを使用することができる。
【0072】
また、前記1次アミンまたは2次アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物は、前述の第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体の総重量100重量部に対して0.03重量部〜30重量部で含まれるのが好ましい。
【0073】
液晶配向剤組成物
【0074】
前記液晶配向剤組成物は、下記の数式で表される粘度変化率が10%以下、または1%〜10%であってもよい。
【0075】
[数式]
粘度変化率(%)=(常温で30日保管後液晶配向剤組成物の粘度−最初液晶配向剤組成物の粘度)/最初液晶配向剤組成物の粘度*100
【0076】
前記粘度を測定する方法の例が大きく限定されるのではないが、例えば、25℃の温度、0.5rpmの回転速度およびRV−7番スピンドルでブルックフィールド粘度計で回転力(torque)によって測定することができる。
【0077】
液晶配向膜の製造方法
【0078】
また、本発明は、1)液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;2)前記塗膜を乾燥する段階;3)前記乾燥段階直後の塗膜を配向処理する段階;および4)前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階を含む液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0079】
既存のポリイミドを液晶配向膜として使用する場合、溶解性に優れたポリイミド前駆体、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを塗布し乾燥して塗膜を形成した後、高温の熱処理工程を経てポリイミドに転換させ、ここに光照射を実行して配向処理をした。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くの光照射エネルギーが必要であるだけでなく、光照射後配向安定性を確保するために追加的な熱処理工程も経るようになる。このような多くの光照射エネルギーと追加的な高温熱処理工程は工程費用と、工程時間面から非常に不利なので、実際大量生産工程に適用するのには限界があった。
【0080】
よって、本発明者らは実験を通じて、前記化学式1で表される繰り返し単位、化学式2で表される繰り返し単位、および化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された2種以上の繰り返し単位を含み、特に前記繰り返し単位のうちの化学式1で表されるイミド繰り返し単位を5〜74モル%含む重合体を用いれば、前記重合体が既にイミド化されたイミド繰り返し単位を一定含量含むので、塗膜形成後に高温の熱処理工程無く直ぐに光を照射して異方性を生成させ、以後に熱処理を行って配向膜を完成することができるため、光照射エネルギーを大きく減らすことができるだけでなく、1回の熱処理工程を含む単純な工程でも配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができるのを確認して発明を完成した。
【0081】
以下、各段階別に本発明を詳しく説明する。
【0082】
1)液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)
【0083】
前記段階1は、液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。
【0084】
前記液晶配向剤組成物は、前述のi)前記化学式1で表される繰り返し単位、前記化学式2で表される繰り返し単位および前記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選択された2種以上の繰り返し単位を含み、前記化学式1〜3で表される全体繰り返し単位に対して前記化学式1で表される繰り返し単位を5〜74モル%含む第1液晶配向剤用重合体、ii)前記化学式4で表される繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体、およびiii)分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物およびiv)1次アミンまたは2次アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物を含み、前記液晶配向剤組成物については前述の内容を全て含む。
【0085】
一方、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法を用いることができる。
【0086】
また、前記液晶配向剤組成物は、前記第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体、そして、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物および1次アミンまたは2次アミンに含まれている窒素原子に結合した1以上の水素原子がtert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、およびカルボキシベンジル基からなる群より選択された1種以上の官能基で置換された化合物を有機溶媒に溶解または分散させたものであってもよい。前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、混合して使用されてもよい。
【0087】
また、前記液晶配向剤組成物は、液晶配向剤用重合体および有機溶媒以外に他の成分を追加的に含むことができる。非制限的な例として、液晶配向剤組成物が塗布された時、膜厚の均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは光配向膜と基板の密着性を向上させるか、あるいは光配向膜の誘電率や導電性を変化させるか、あるいは光配向膜の緻密性を増加させることができる添加剤が追加的に含まれてもよい。このような添加剤としては、各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などを例示することができる。
【0088】
2)塗膜を乾燥する段階(段階2)
【0089】
前記段階2は、前記段階1で製造した塗膜を乾燥する段階である。
【0090】
前記塗膜を乾燥する段階は、前記液晶配向剤組成物に使用された溶媒などを除去するためのものであって、例えば、塗膜の加熱または真空蒸発などの方法を用いることができる。前記乾燥は、50℃〜130℃で、または70℃〜120℃の温度で行われるのが好ましい。
【0091】
3)前記乾燥段階直後の塗膜を配向処理する段階(段階3)
【0092】
前記段階3は、前記段階2で乾燥された塗膜に光を照射するかラビング処理して配向処理する段階である。
【0093】
本明細書で、前記"乾燥段階直後の塗膜"は乾燥段階以後に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階を行うことなく直ぐに光照射することを意味し、熱処理以外の他の段階は付加が可能である。
【0094】
より具体的に、既存にポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤を使用して液晶配向膜を製造する場合にはポリアミック酸のイミド化のために必須的に高温の熱処理を行った後に光を照射する段階を含むが、前述の一実施形態の液晶配向剤組成物を用いて液晶配向膜を製造する場合には前記熱処理段階を含まず、直ぐに光を照射して配向処理した後、配向処理された塗膜を熱処理して硬化することによって、小さい光照射エネルギー下でも十分な配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0095】
そして、前記配向処理する段階で、光照射は150nm〜450nm波長の偏光された紫外線を照射するのが好ましい。この時、露光の強さは液晶配向剤用重合体の種類によって異なり、10mJ/cm〜10J/cmのエネルギー、または30mJ/cm〜2J/cmのエネルギーを照射することができる。
【0096】
前記紫外線としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、微細にアルミニウムまたは金属ワイヤーが蒸着された偏光板、または石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線のうちから選択された偏光紫外線を照射して配向処理を行う。この時、偏光された紫外線は基板面に垂直に照射してもよく、特定の角で入射角を傾斜して照射してもよい。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に付与されるようになる。
【0097】
また、前記配向処理する段階で、ラビング処理はラビング布を用いる方法を使用することができる。より具体的に、前記ラビング処理は、金属ローラーにラビング布の生地を付けたラビングローラーを回転させながら熱処理段階以後の塗膜の表面を一方向にラビングすることができる。
【0098】
4)前記配向処理された塗膜を熱処理する段階(段階4)
【0099】
前記段階4は、前記段階3で配向処理された塗膜を熱処理する段階である。
【0100】
前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施され、100℃〜300℃で行われるのが好ましい。
【0101】
一方、前記段階4は、4−1)前記配向処理された塗膜を200℃下で低温熱処理する段階;および4−2)前記熱処理された塗膜を前記低温熱処理より高い温度で熱処理して硬化する段階を含んでもよい。
【0102】
一般に、液晶配向剤内にエポキシ物質が含まれれば配向膜の強度および高い電圧保持率が向上すると知られており、エポキシ物質の含量が多いほどその程度が高まると知られている。しかし、エポキシ物質の含量が多くなれば、液晶セルの高温AC輝度変動率が高まる問題がある。高温AC輝度変動率特性が悪くなる理由は、理論的に制限されるのではないが、液晶配向剤の配向が高温で行われるため液晶配向剤の配向とエポキシ反応が同時に行われることに起因する。
【0103】
よって、液晶配向剤組成物を使用して、基板に塗布し乾燥させて塗膜を形成した後、イミド化工程無く直ぐに直線偏光を照射して初期異方性を誘導し、次いで、低温熱処理を通じて配向膜一部を再配向(reorientation)し分解物を安定化させる。次いで、前記低温熱処理より高い温度で高温熱処理してイミド化を行いながら、同時にエポキシ反応による配向安定化を達成することができる。これにより、初期異方性はエポキシ反応無く行われ配向が効果的に行われながらもエポキシ物質の含量を高めることができる利点がある。
【0104】
このような液晶配向膜の製造方法によって製造された液晶配向膜は、優れた配向特性を示すだけでなく、高温AC輝度変動率に優れ、また高い電圧保持率を長時間維持することができるという特徴がある。
【0105】
具体的に、前記段階4−1は、前記段階3でイミド化工程無く直ぐに直線偏光を照射して初期異方性を誘導したため、低温熱処理を通じて配向膜一部を再配向(reorientation)し分解物を安定化させるための段階である。また、このような低温熱処理する段階は、後述する配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と区分される。
【0106】
前記低温熱処理温度は、塗膜を硬化しないながらも配向膜一部を再配向(reorientation)し分解物を安定化させることができる温度であって、200℃以下が好ましい。または、前記低温熱処理温度は110℃〜200℃であり、または130℃〜180℃である。この時、前記熱処理手段は特に制限されず、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施できる。
【0107】
前記段階4−2)は、前記段階4−1で低温熱処理された塗膜を高温熱処理して硬化する段階である。
【0108】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、既存にポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤用重合体を用いて液晶配向膜を製造する方法でも光照射以後に実施する段階であって、液晶配向剤組成物を基板に塗布し、光を照射する以前に、または光を照射しながら液晶配向剤組成物をイミド化させるために実施する熱処理段階とは区分される。
【0109】
また、前記熱処理時に分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ反応が行われ、配向安定性が向上できる。したがって、前記熱処理温度は、液晶配向剤用重合体のイミド化および分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ反応が行われる温度であって、前記段階4−1の低温熱処理温度より高いのが好ましい。前記段階4−2の熱処理温度は、200℃〜250、または210℃〜240℃で行うのが好ましい。この時、前記熱処理手段は特に制限されず、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施できる。
【0110】
液晶配向膜
【0111】
また、本発明は、前述の液晶配向膜の製造方法によって製造された液晶配向膜を提供することができる。具体的に、前記液晶配向膜は、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含むことができる。前記配向硬化物とは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向工程および硬化工程を経て得られる物質を意味する。
【0112】
前述のように、第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体を混合して用いれば、配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。また、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ反応を通じて配向安定性が向上できる。
【0113】
そして、前記液晶配向膜は、1次アミンまたは2次アミンによって第1重合体または第2重合体のイミド化反応が促進され、最終製造された液晶配向膜内でのイミド化転換率が90%以上で高くて、液晶配向性および安定性が向上できる。
【0114】
前記液晶配向膜の厚さが大きく限定されるのではないが、例えば、0.001μm〜100μm範囲内で自由に調節可能である。前記液晶配向膜の厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、配向膜で測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0115】
液晶表示素子
【0116】
また、本発明は、前述の液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【0117】
前記液晶配向膜は公知の方法によって液晶セルに導入でき、前記液晶セルは同様に公知の方法によって液晶表示素子に導入できる。前記液晶配向膜は前記化学式1で表される繰り返し単位を必須に含む重合体と化学式4で表される繰り返し単位を含む重合体を混合して製造されて、優れた諸般物性と共に優れた安定性を実現することができる。これにより、高い信頼度を示すことができる液晶表示素子を提供するようになる。
【発明の効果】
【0118】
本発明によれば、保存安定性に優れ、高いイミド化率を確保することができ、液晶配向特性と共に膜強度が向上した液晶配向膜を製造することができる液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0119】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0120】
製造例1:ジアミンの合成
【0121】
製造例1−1)ジアミンDA−1の合成
【0122】
ジアミンDA−1を下記の反応式によって合成した。
【化11】
【0123】
具体的に、1,3−ジメチルシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(1,3−dimethylcyclobuthane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride、DMCBDA)と4−ニトロアニリン(4−nitroaniline)をDMF(Dimethylformamide)に溶解させて混合物を製造した。次いで、前記混合物を約80℃で約12時間反応させてアミック酸を製造した。その後、前記アミック酸をDMFに溶解させ、酢酸無水物および酢酸ナトリウムを添加して混合物を製造した。次いで、前記混合物に含まれているアミック酸を約90℃で約4時間イミド化させた。このように得られたイミドをDMAc(Dimethylacetamide)に溶解させた後、Pd/Cを添加して混合物を製造した。これを45℃および6barの水素圧力下で20分間還元させてジアミンDA−1を製造した。
【0124】
製造例1−2)ジアミンDA−2の合成
【化12】
【0125】
1,3−ジメチルシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物の代わりに、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(cyclobuthane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride、CBDA)を使用したことを除いては、前記製造例1と同様な方法で前記構造を有するDA−2を製造した。
【0126】
製造例2:液晶配向剤用重合体の製造
【0127】
製造例2−1)液晶配向剤用重合体P−1の製造
【0128】
(段階1)
【0129】
前記製造例1−2で製造したDA−2の5.0g(13.3mmol)を無水N−メチルピロリドン(anhydrous N−methyl pyrrolidone:NMP)71.27gに完全に溶かした。そして、氷浴(ice bath)下で1,3−ジメチル−シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)2.92g(13.03mmol)を前記溶液に添加して16時間常温で攪拌した。
【0130】
(段階2)
【0131】
前記段階1で得られた溶液を過量の蒸留水に投入して沈殿物を生成させた。次いで、生成された沈殿物をろ過して蒸留水で2回洗浄し、再びメタノールで3回洗浄した。このように得られた固体生成物を40℃の減圧オーブンで24時間乾燥して液晶配向剤用重合体P−1の6.9gを収得した。
【0132】
GPCを通じて前記P−1の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が15,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が31,000g/molであった。そして、重合体P−1のモノマー構造は使用したモノマーの当量比によって決定されるものであって、分子内イミド構造の比率が50.5%、アミック酸構造の比率が49.5%であった。
【0133】
製造例2−2)液晶配向剤用重合体P−2の製造
【0134】
前記製造例1−1で製造したDA−15.0g、p−フェニレンジアミン(p−phenylenediamine、PDA)1.07gをNMP103.8gに完全に溶かした。そして、氷浴(ice bath)下でシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(CBDA)2.12gと4,4'−オキシジフタル酸二無水物(OPDA)3.35gを前記溶液に添加して16時間常温で攪拌した。次いで、前記製造例2−1の段階2と同様な方法を使用して重合体P−2を製造した。
【0135】
GPCを通じて前記P−2の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が18,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が35,000g/molであった。そして、重合体P−2は、分子内イミド構造の比率は36.4%、アミック酸構造の比率は63.6%であった。
【0136】
製造例2−3)液晶配向剤用重合体P−3の製造
【0137】
前記製造例1−2で製造したDA−2の6.0g、4,4'−オキシジアニリン(4,4'−oxydianiline、ODA)1.37gをNMP110.5gに完全に溶かした。そして、氷浴(ice bath)下でDMCBDA3.47gとピロメリト酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)1.44gを前記溶液に添加して16時間常温で攪拌した。次いで、前記製造例2−1の段階2と同様な方法を使用して重合体P−3を製造した。
【0138】
GPCを通じて前記P−3の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が14,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が29,000g/molであった。そして、重合体P−3は、分子内イミド構造の比率は41.9%、アミック酸構造の比率は58.1%であった。
【0139】
製造例2−4)液晶配向剤用重合体Q−1の製造
【0140】
4,4'−メチレンジアニリン(4,4'−methylenedianiline)5.00gと4,4'−オキシジアニリン(4,4'−oxydianiline)5.05gをNMP221.4gに完全に溶かした。そして、氷浴(ice bath)下で4,4'−ビフタル酸無水物(4,4'−biphthalic anhydride)14.55gを前記溶液に添加して16時間常温で攪拌した。次いで、前記製造例2−1の段階2と同様な方法を使用して重合体Q−1を製造した。
【0141】
GPCを通じて前記Q−1の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が25,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が40,000g/molであった。
【0142】
実施例:液晶配向剤組成物の製造
【0143】
実施例1
【0144】
前記製造例2−1で製造したP−1の5重量部、前記製造例2−4で製造したQ−1の5重量部、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Daicel社、Celloxide2021P)0.5重量部およびtert−ブトキシカルボニルイミダゾール1重量部をNMPとn−ブトキシエタノールの重量比率が8:2である混合溶媒に完全に溶解させた。次いで、ポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.2μmであるフィルターで加圧ろ過して液晶配向剤組成物を製造した。
【0145】
実施例2
【0146】
前記製造例2−1で製造したP−1の代わりに前記製造例2−2で製造したP−2を使用したことを除いて、前記実施例1と同様な方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0147】
実施例3
【0148】
前記製造例2−1で製造したP−1の代わりに前記製造例2−3で製造したP−3を使用したことを除いて、前記実施例1と同様な方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0149】
比較例:液晶配向剤組成物の製造
【0150】
比較例1
【0151】
tert−ブトキシカルボニルイミダゾールを使用しないことを除いて、前記実施例1と同様な方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0152】
比較例2
【0153】
Celloxide2021Pを使用しないことを除いて、前記実施例1と同様な方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0154】
比較例3
【0155】
前記製造例2−1で製造したP−1の代わりに前記製造例2−4で製造したQ−1を使用したことを除いて、前記実施例1と同様な方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0156】
比較例4
【0157】
tert−ブトキシカルボニルイミダゾールの代わりにイミダゾールを使用したことを除いて、前記実施例1と同様な方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0158】
実験例1
【0159】
1)液晶配向セルの製造
【0160】
前記実施例および比較例で製造した液晶配向剤組成物を用いて液晶配向セルを製造した。
【0161】
具体的に、2.5cm×2.7cmの大きさを有する四角形ガラス基板上に厚さ60nm、電極幅3μm、そして電極間間隔が6μmであるくし目形状のIPS(in−plane switching)モード型ITO電極パターンが形成されている基板(下板)と、電極パターンの無いガラス基板(上板)にそれぞれスピンコーティング方式を用いて実施例および比較例で製造した液晶配向剤組成物を塗布した。
【0162】
次いで、液晶配向剤組成物が塗布された基板を約70℃のホットプレートの上に置いて3分間乾燥して溶媒を増発させた。このように得られた塗膜を配向処理するために、上/下板それぞれの塗膜に直線偏光子が付着された露光器を用いて254nmの紫外線を1J/cmの露光量で照射した。
【0163】
その後、前記塗膜を約230℃のオーブンで30分間焼成(硬化)して膜厚0.1μmの塗膜を得た。その後、3μm大きさのボールスペーサが含浸されたシーリング剤(sealing agent)を液晶注入口を除いた上板の周縁に塗布した。そして、上板および下板に形成された配向膜が互いに対向し配向方向が互いに並んでいるように整列させた後、上下板を合着してシーリング剤を硬化することによって空のセルを製造した。そして、前記空のセルに液晶を注入してIPSモードの液晶セルを製造した。
【0164】
2)イミド化転換率(%)
【0165】
前記実施例および比較例の液晶配向剤組成物から得られた液晶配向膜に対して、ATR法でFT−IRスペクトルを測定して、前記配向膜に含まれている重合体分子内イミド構造比率を測定した。
【0166】
3)液晶配向特性評価
【0167】
前記製造した液晶配向セルの上板および下板に偏光板を互いに垂直になるように付着した。そして、偏光板が付着された液晶配向セルを明るさ7,000cd/mのバックライトの上に置いて肉眼で光漏れを観察した。この時、液晶配向膜の配向特性が優れていて液晶をよく配列させれば、互いに垂直に付着された上、下の平光板によって光が通過せず不良無く暗く観察される。このような場合の配向特性を'良好'と、液晶流れ跡や輝点のような光漏れが観察されれば'不良'と評価し、その結果を下記の表1に示した。
【0168】
4)配向膜強度評価
【0169】
前記実施例および比較例で製造された液晶配向剤組成物から得られた配向膜に対して、前記配向膜表面をsindo engineering社のラビングマシン(rubbing machine)を用いて850rpmで回転させながらラビング処理した後、ヘイズメーター(hazemeter)を使用してヘイズ値を測定し、下記の数式1のようにラビング処理前のヘイズ値との差を計算して膜強度を評価した。前記ヘイズ変化値が1未満であれば、膜強度が優れているのである。
【0170】
[数式1]
膜強度(%)=ラビング処理後の液晶配向膜のヘイズ(%)−ラビング処理前の液晶配向膜のヘイズ(%)。
【0171】
5)保存安定性
【0172】
前記実施例1および比較例4の液晶配向剤組成物に対して、最初の粘度と、常温で30日間保管した以後の粘度をそれぞれ測定して、下記の数式2によって粘度変化率を測定した。30日間の粘度変化が10%以下であれば、保存安定性に優れているのである。
【0173】
前記液晶配向剤組成物の粘度は、25℃の温度、0.5rpmの回転速度およびRV−7番スピンドルでブルックフィールド粘度計で回転力(torque)によって測定することができる。
【0174】
[数式2]
粘度変化率(%)=(常温で30日保管後の液晶配向剤組成物の粘度−最初液晶配向剤組成物の粘度)/最初液晶配向剤組成物の粘度*100.
【0175】
実験例2
【0176】
1)液晶配向セルの製造
【0177】
前記塗膜を約230℃のオーブンで30分間焼成(硬化)する前に、塗膜を130℃のホットプレートの上に500秒間置いて低温熱処理する段階をさらに含むことを除いて、前記実験例1と同様に液晶セルを製造した。
【0178】
実施例および比較例の実験例測定結果
【0179】
【表1】
【0180】
上記表1に示されているように、製造例2−1で合成された重合体、エポキシ添加剤、触媒が含まれている実施例の液晶配向剤組成物は、230℃の硬化温度でもイミド化率がそれぞれ93.1%、92.7%、92%であって、90%以上の非常に高い値を示した。これによって、前記実施例の液晶配向剤組成物から製造された配向セルは優れた配向特性を実現すると同時に、ラビング処理前後のヘイズ値変化が1未満であって非常に低くて膜強度性能が改善された。
【0181】
特に、実施例1の液晶配向剤組成物の場合、触媒化合物の反応性官能基にtert−ブトキシカルボニル基のような保護官能基を結合させることによって、液晶配向剤組成物の保存安定性が8.3%と示され、安定性が大きく向上し、熱処理工程を経た最終液晶配向膜が優れた配向性、ラビング耐性を確保することができるのを確認した。これに比べて、比較例4の液晶配向剤組成物は保護官能基を結合させない触媒を使用することによって、液晶配向剤組成物の保存安定性が20.8%であって、実施例に比べて大きく増加して安定性が減少したのを確認することができた。
【0182】
反面、触媒が含まれていない比較例1の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、230℃の硬化温度でイミド化率が80.5%と示され、前記実施例に比べて減少したのを確認した。
【0183】
また、エポキシ添加剤が含まれていない比較例2の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、ラビング処理前後のヘイズ値変化値が5であって大きく増加して、膜強度が実施例に比べて顕著に不良であるのを確認した。
【0184】
また、製造例2−1で合成された重合体が含まれていない比較例3の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、配向特性において実施例に比べて顕著に不良であるのを確認した。